説明

液中磨砕装置用付属供給装置及びこれを用いた液中磨砕装置、液中磨砕システム、液中磨砕方法

【課題】 最小限の初期投資で安定した連続運転と製品の高品質化を可能とする。
【解決手段】 液中磨砕装置に原料を投入するための供給装置である。一端が開放されるとともに他端が液中磨砕装置2の原料供給口3に連結される筒状体4を備え、当該筒状体4内に供給される固体原料6が自重により液中磨砕装置2へ導入される。筒状体4は、例えば多孔筒状体である。その周囲には、液体原料8を供給するホッパー5を備える。液体原料の液位が磨砕室内を満たし、且つホッパーの少なくとも一部を満たすように設定し、固体原料を液体原料とともに磨砕室内の磨砕部において磨砕し、スラリー状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば穀物や医薬原料等の固体原料を液中磨砕装置によって粉砕・摩砕する際に使用される液中磨砕装置用付属供給装置に関するものであり、特に、空気との接触を防いで固体原料の酸化、変質を確実に防止するための液中磨砕装置用付属供給装置に関する。さらには、この供給装置を備えた液中磨砕装置、液中磨砕システム、液中磨砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リンゴの皮を剥くと、リンゴ中のポリフェノールがポリフェノールオキシダーゼの触媒作用によって空気中の酸素を取り込む酸化反応が起こり、黒ずむことが知られている。このような酸化反応は、ほとんどの穀物や薬草等の粉砕時にも起こり、品質を低下させている。さらに、製品保管中に、前記酸化反応によって発生する過酸化物に起因して、色素の劣化や、味の低下、タンパク質のSH基の酸化等が引き起こされることも知られている。
【0003】
このような酸化反応による品質低下を防ぐには、酵素失活が有効と考えられるが、例えば豆腐製造においては、リポキシゲナーゼによる青臭みが風味の一種「コク」を与えていると言われている面もあって、あえて設備費をかけてまで完璧な酵素失活は行われていない。大豆タンパク質の凝固性・保水性向上、粉砕後の抽出効率や殺菌等の目的で行う通常の煮沸工程で、ほとんど酵素失活は成されているが、この段階では既に生ゴ中には青臭みが相当発生しており、これが最終製品にまで残留して、風味や保存性に影響している。
【0004】
一方、前記酸化反応を抑える方法として、空気を遮断する方法も考えられるが、処理能力や濃度(固体原料と液体原料の比率)の調整範囲を広くする目的を優先に、粉砕時に生ゴ(大豆を水と共に摺り潰したスラリー)に空気が混入することは、特に問題視されていない。しかしながら、生ゴに噛み混んだ微細な気泡は、前記酸化反応の原因となるばかりでなく、煮沸時の吹き上がり(膨張)やムラ煮え等の原因ともなり、自ずと消泡剤を多く用いる必要が生じ、その分、豆腐単価に占める原価が高くなり、場合によっては、味にも悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
近年、大豆製品が伝統的な健康食品として見直される中、飲みやすい豆乳やおいしい豆腐という、これまでにない高い品質が求められている。したがって、大豆等の粉砕に際しては、前記酸化反応を厳しく制限することが望まれる。
【0006】
前記の通り、例えば豆乳飲料で嫌われる大豆の青臭みはリポキシゲナーゼの作用(酸化分解反応)によって発生する。そこで、一部では、原料としてリポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆を用いることも行われている。しかしながら、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆は普通の大豆に比べて3〜4割価格が高く、大幅なコスト増に繋がる。
【0007】
このような状況から、大豆等の固体原料を粉砕、あるいは磨砕する磨砕装置の改良が進められており、例えば熱水粉砕や液中粉砕等の方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3等を参照)。特許文献1や特許文献2には、空気を混入しない密封容器内で穀物や豆類を微粉砕するポンプミルが開示されている。特許文献3には、真空又は嫌気性ガス雰囲気中において、金属粉の酸化やリンゴやバナナの褐変を抑えた液中磨砕方法が開示されている。
【特許文献1】実開昭51−74864号公報
【特許文献2】実開昭50−53481号公報
【特許文献3】特開平3−16656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、考案されていた液中粉砕法では、広い設置スペースと、容積式ポンプや熱水設備等の高額な付帯設備費用が必要である。場合によっては、真空設備や窒素ガス置換等、高価な付加設備も必要である。
【0009】
また、磨砕機の受給側に設けられるスクリュー式押し込み装置や容積式ポンプ等によって固体原料を強制的に圧入すると、粉砕状態が粗くなったり、磨砕部で抵抗となり閉塞しやすくなることもあって、安定した連続運転が難しい。さらに、モーター負荷が大きくなるので、従来に比べてモーター容量を数段階、大きくする必要があるが、液中磨砕の場合、一般にその閉塞を避けるため、より一層モータ容量を大きくする必要もある。
【0010】
特に、液体原料が固体原料に対して少ない場合、液体原料だけが先に通過しやすく、固体原料と液体原料をバランスよく1回の通過で連続磨砕することは、処理能力や濃度(固体原料と液体原料の比率)の調整範囲が狭く、安定させることは非常に難しい。そのため従来は、1バッチ毎に循環磨砕処理を断続するバッチ連続処理を行うしかないのが実情である。
【0011】
本発明は、これらの問題点を解消し市場のニーズに応えることを目的に提案されたものであり、従来通りの原料や設備を用いることができ、最小限の初期投資で安定した連続運転と製品の高品質化を実現することが可能な液中磨砕装置用付属供給装置、液中磨砕装置、及び液中磨砕方法を提供することを目的とする。また、本発明は、特に豆乳・豆腐製造等において、消泡剤を必要以上に用いる必要がなく、さらには無消泡剤化(有機農産物加工食品規格対応への一部)にも対応し易く、豆乳や豆腐の風味や保存性を改善することが可能な液中磨砕装置用付属供給装置、液中磨砕装置、及び液中磨砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、液中磨砕装置を連続運転するに当たり、固体原料を詰まらせることなく、液体原料とバランスよく供給できる、安定した、安価な供給システムについて追究した結果、液中磨砕装置の供給口において固体原料の自重を利用することが有効で、十分に酸化による影響を抑え得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の液中磨砕装置用付属供給装置は、液中磨砕装置に原料を投入するための液中磨砕装置用付属供給装置であって、一端が開放されるとともに他端が液中磨砕装置の原料供給口に連結される筒状体を備え、当該筒状体内に供給される固体原料が自重により液体原料で充満された状態で前記液中磨砕装置へ導入されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の液中磨砕装置は、少なくとも固体原料を磨砕室内の磨砕部において磨砕し、スラリー状とする液中磨砕装置であって、前記磨砕室の原料供給口に前記液中磨砕装置用付属供給装置が設置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の液中磨砕装置用付属供給装置を用いて固体原料を液中磨砕装置に供給すれば、筒状体の働きによって液体原料と共に固体原料が柱状体を形成する形になり、固体原料の自重が下方向に有効に加わるようになる。その結果、液中磨砕装置の供給口から磨砕室にかけて、固体原料が適正な力で押し込まれ、スクリュー式押し込み装置や容積式ポンプ等によって固体原料を圧入する場合と違って、固体原料の磨砕室への安定供給が実現される。なお、固体原料の押し込む圧力は、液体原料との比重差と液位以上の固体原料の高さの調整によって決定され、液体原料が固体原料に対して少ない場合(例えば、液体原料と固体原料の比率が0.1:1〜3:1程度の場合)にも、固体原料と液体原料とがバランスよく供給される。固体原料の安定供給は、液中磨砕装置の安定した連続運転に繋がる。
【0016】
本発明の液中磨砕装置用付属供給装置は、筒状体を設けるという極めて簡易な構成要素の追加で済むことから、設備投資は僅かなもので済む。また、広い設置スペースや、容積式ポンプや熱水設備等の高額な付帯設備、真空設備や窒素ガス置換等の高価な付加設備は不要である。
【0017】
本発明の液中磨砕装置用付属供給装置、あるいは液中磨砕装置を用いて固体原料の磨砕を行う場合、液中粉砕とし、空気との接触を遮断して酸化反応を抑制する。これを規定したのが本発明の液中磨砕方法である。すなわち、本発明の液中磨砕方法は、固体原料を液体原料とともに磨砕室内の磨砕部において磨砕し、スラリー状とするに際し、前記固体原料を筒状体から自重により磨砕室内に供給するとともに、液体原料をホッパーから供給し、前記液体原料の液位が前記磨砕室内を満たし、且つ前記ホッパーの少なくとも一部を満たすように設定し、前記磨砕を行うことを特徴とする。
【0018】
液体原料が磨砕室内を満たし、且つホッパーの少なくとも一部を満たすように設定することにより、いわゆる液中粉砕が実現し、固体原料が粉砕中に空気と触れることがなくなる。その結果、酸化反応による品質低下が回避される。また、空気の侵入による泡の発生が抑えられるので、消泡剤の使用も必要最低限で済む。さらに、筒状体の働きにより、固体原料と液体原料とがバランスよく供給され、例えば磨砕中に液体原料に渦が発生しても、固体原料が液中で踊ることなく効率良く磨砕室に落下することから、連続処理も実現される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来通りの原料や設備を用いることができ、最小限の初期投資で安定した連続運転と製品の高品質化を実現することが可能な液中磨砕装置用付属供給装置、液中磨砕装置、及び液中磨砕方法を提供することが可能である。また、本発明によれば、特に豆乳・豆腐製造等において、消泡剤を必要以上に用いる必要がなく、さらには無消泡剤化(有機農産物加工食品規格対応への一部)にも対応し易く、豆乳や豆腐の風味や保存性を改善することが可能な液中磨砕装置用付属供給装置、液中磨砕装置、及び液中磨砕方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を適用した液中磨砕装置用付属供給装置、液中磨砕装置、及び液中磨砕方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本発明の液中磨砕装置用付属供給装置は、液中磨砕装置の原料供給口に取り付けられて使用されるものである。図1は、液中磨砕装置用付属供給装置1の液中磨砕装置2への装着状態を示すものであり、本例では、縦型の液中磨砕装置2の上方に設けられた原料供給口3に接続する形で供給装置1が取り付けられている。
【0022】
供給装置1は、下端が前記液中磨砕装置2の原料供給口3とほぼ同じ径を有する筒状体4と、この筒状体4の周囲を囲むように設けられるホッパー5とから構成されており、前記筒状体4の下端を前記原料供給口3に連結することにより液中磨砕装置2に取り付け固定されている。
【0023】
筒状体4は、固体原料6を供給するために設けられるものであり、開放された上端部分には、固体原料6の投入を円滑に行うために、上方に向かって拡口する投入口7を備えている。また、その形状は、内径が一定のストレートな筒状体ではなく、下方に向かうにしたがって次第に内径が増大するような形状とされている。このように、筒状体4の形状を、下方に向かって拡径するテーパーを持った形状とすることにより、この中に供給された固体原料6を、自重により速やかに液中磨砕装置2の原料供給口3へと移行(落下)させることができる。例えば、これとは逆のテーパー形状とすると、固体原料6がアーチ状の堆積部が形成され、この部分で詰って効率の良い落下の妨げになるおそれがある。
【0024】
筒状体4の形状は、これに限らず、例えば図2に示すように、内径が一定のストレートな筒状体とすることも可能である。また、ここでは筒状体4を円錐台形状(図1)、あるいは円筒形状(図2)としたが、四角形、四角錐形、多角形、多角錐形等、角筒体とすることも可能である。ただし、いずれの場合にも、できるだけ固体原料6の荷重の抵抗を抑えるため、錐形(下側に広がったテーパ状)であることが好ましい。
【0025】
前記筒状体4は、ホッパー5から供給される液体原料8を透過させる必要があり、したがって、多数の孔を有する多孔質の筒状体(多孔筒状体)であることが好ましい。この場合、前記孔は、固体原料6のホッパー5内への移行を防ぐことができ、しかも目詰まりしないことが必要で、さらには固体原料6の自重によって前記液中磨砕装置2の原料供給口3に加わる荷重に対して抵抗にならないことが必要である。
【0026】
これらを考慮すると、前記筒状体4の各孔の大きさは、例えば固体原料6の短径以下、好ましくは短径の2分の1以下であることが好ましい。例えば固体原料6が大豆や小豆等の穀物原料である場合、各孔の具体的な大きさとしては、短径または最小幅が0.1mm〜10mm程度であることが好ましく、さらに好ましくは2mm〜5mmである。なお、各孔の形状は、丸形、楕円形、長穴、スリット等、任意の孔形状とすることができる。
【0027】
前記筒状体4の材質としては、金属(SUS304やSUS316等のステンレス、チタン、アルミニウム等)、樹脂[ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂(MF)、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、オキシベンソイールポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ乳酸樹脂等の生分解性プラスティック類]、天然ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、クロロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム等の合成ゴム等の部材や、これらの複合材、溶融混合材(例えば、フッ素+ポリプロピレン等)やラミネート材やFRP材や網材、発泡化(連通性のある発泡)、焼結加工品(通気性または通液性のあるもの)、細線化又は繊維又は紡糸化・中空糸化等糸状として濾布状とした加工品、板材、フィルム材、シート材、成型・切削加工品等が挙げられる。セラミック製(上薬等表面平滑化加工等)、ガラス(硬質ガラス、石英硝子等)製、木製、樹脂製濾布、網状等いずれの形態でも良い。金属製であれば、細線化し金網状にするか、内面を鏡面研磨するか、磨き板やディボット加工等固体原料の表面摩擦、転がり摩擦の少ない面を内側にする。なお、摺動性の高いフッ素樹脂等で内面をコーティングしてもよい。前記多孔を加工する際、生じるバリの除去、面取り加工は勿論であるが、レーザー加工、パンチング加工によっても板材の表裏で多少の抵抗差が生じる場合、できるだけ抵抗の少ない面を内面とする。
【0028】
ホッパー5は、前記筒状体4とは異なり、通常のホッパーと同様、金属板やプラスチック板等、液体を透過しない材質で形成され、ここから液体原料8を供給する。したがって、前記ホッパー5には、液体原料8を導入するための液体原料導入管9が設けられている。ホッパー5に供給された液体原料8は、ホッパー5内から筒状体4を透過して固体原料6とともに原料供給口3から液中磨砕装置2内へと投入される。
【0029】
なお、前記ホッパー5には、ホッパー5内の液体原料8の液位を検知する液位センサ10が設置されている。後述の通り、液中磨砕装置2においては液中粉砕が行われるが、このとき、ホッパー5内において液体原料8の液位が低下し過ぎると、液中磨砕装置2に供給される原料中に空気が混入するおそれがある。そこで、前記液位センサ10によって液体原料8の液位を監視し、空気の混入を防止する。液位センサ10としては、圧力センサ、磁歪式センサ、フロート式センサ、超音波式センサ、レーザ式センサ、レーダ波式センサ等、任意のセンサを用いることができる。液位の調整は、例えば液位センサ10の信号を調節計に入力し、後述の排水口に設けられたポンプやバルブ等の流量制御装置に対して、オン−オフ制御やPID制御を行う。なお、固体原料のレベルも、同様にレベルセンサを用いてコントロールすることも可能であり、有効である。
【0030】
また、前記液中磨砕装置に原料を投入するための筒状体4,あるいはホッパー5に対して、振動手段を設てもよい。これにより、液中磨砕装置に設ける如何なるホッパーに対しても、固体原料のブリッジ防止、器壁との摩擦軽減、自重による流入に対する補助的効果を出すことができる。振動手段は、圧電セラミック、水晶振動子、フェライト磁歪振動子等の超音波振動子や、コーン型スピーカー等の音響手段、エアーシリンダーの往復駆動による手段、回転モーターによる手段等、振動発生手段は特に限定しない。特に超音波等、高周波振動(1kHz〜100MHz)では、固体原料に接する内壁を手で触れると滑らかな状態にし、摩擦抵抗を大幅に減らすことが可能である。
【0031】
一方、液中磨砕装置2は、前記供給装置1によって供給(投入)された固体原料6を磨砕する石臼状の砥石(磨砕部)11を備えた磨砕室12を有し、ここで固体原料6を磨り潰し、スラリー状にする。液中磨砕装置2は、図1に示す例では縦型構造が採用されているが、これに限らず、例えば図3に示すような横型構造の液中磨砕装置2であってもよい。ただし、縦型構造を採用した場合の方が、設置スペースが小さくて済む。横型構造は、液中磨砕条件を得やすく、モータの交換等メンテナンスし易いという利点がある。
【0032】
液中磨砕装置2においては、例えば原料供給口3及び排出口13を塞げば、磨砕室12内は気密で漏れがない構造であることが必要条件であるが、多少漏れがあっても適用可能である。このような液中磨砕装置2の気密構造と、前記供給装置1の組み合わせにより、液中粉砕を安定して実現することができ、酸化反応を十分抑えることが可能である。したがって、真空設備や窒素ガス置換のための設備等、高価な付加設備は不要である。
【0033】
液中磨砕装置12の排出側は開放状態で落差によってバランスタンクに受けてもよい。また、磨砕装置自体に吐出能力があれば、排出口に設けたバルブ(ボールコック、バタフライ弁、コントロールバルブ(調節弁)や、前記ホッパー5内液位以上に排出口を立ち上げたり、流量調整弁・背圧弁(手動、自動)やオリフィスを設けたりしてもよい。また定量ポンプ等を排出口に連結し、粉砕物を吸い出す(又は粉砕物の吐出を抑える)ように設置しても構わない。すなわち、流体を制御できるバルブであれば特に限定されない。
【0034】
本発明における液中磨砕装置12は、連続運転を前提としているが、バッチ式運転又はバッチ連続運転でも適用できる。本発明における液中磨砕装置12の運転の際、液体原料8や固体原料6は一定流量で計量され、磨砕装置12のクリアランス(運転初期に調整し、固定)の変化がなく一定であれば、数時間〜1日程度〜数ヶ月間の連続運転中、終始、十分に安定している。必要に応じて、液体原料の液位や、固体原料のレベルをセンサーで感知し、一定に保つよう、レベル制御システムを設けてもよい。レベルセンサーは電極式、磁歪式、超音波式、レーザー方式など、特に限定されない。液中磨砕装置12の回転数や前記排出側の制御弁やポンプ回転数を手動で調整するか、自動で変速して、固体原料6と液体原料8の微妙なレベルのバランスを調整することもできる。
【0035】
液中磨砕装置2の磨砕室12に設けられる砥石11は、例えば固定砥石11aと回転砥石11bとから構成され、固定砥石11aの中央に設けられた孔11cから固定砥石11aと回転砥石11bの間に固体原料6が導入されて磨り潰される。固定砥石11a及び回転砥石11bには、金属製の砥石やセラミック製の砥石、多孔質な砥石等、任意の砥石を用いることができるが、これら固定砥石11aや回転砥石11bは、液体原料8が浸み込まないように、非浸透性材料により構成されていることが好ましい。これは、固定砥石11aや回転砥石11bが多孔質で透水性、通水性がある場合には、磨砕時、回転砥石11aの遠心力や内圧によって、固定砥石11aや回転砥石11bを液体原料8が通り抜け、固体原料6と液体原料8のバランスが崩れるおそれがあるからである。固定砥石11aや回転砥石11bを非浸透性材料により構成することにより、前記バランスの崩れを防止することができる。
【0036】
したがって、固定砥石11aや回転砥石11bの材質としては、金属や自然石、多孔質な砥石に樹脂やセラミック等を含浸させて非浸透性とした砥石等が好適である。前記含浸により非浸透性とする場合、含浸の方法としては、例えば減圧下で多孔質砥石に液状樹脂等を含浸させ、これを焼結、加温(例えば、常温〜2000℃程度)によって硬化させる。使用する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂(MF)、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、オキシベンソイールポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂等の生分解性プラスティック類、天然ゴム、合成ゴム等から適宜選択して用いることができ、特に磨砕対象が食品である場合には、食品衛生法上の規格に適合する樹脂を用いることが好ましい。あるいは、ガラス、石英ガラス、セラミック、石膏、粘土等の無機物を含浸させることも可能である。
【0037】
前記磨砕室12は、冷却手段を備えていてもよい。冷却手段による冷却温度としては、0℃未満、−276℃までであり、例えば−2℃〜−40℃のチラー水や塩化カルシウム水溶液等のブライン、−270℃の液体窒素等の冷媒、井戸水、水道水等を流通又は循環させ、間接的に磨砕室12内の被磨砕物を冷却するようにすればよい。そのための構造としては、例えば磨砕室12の外周を二重ジャケット構造とし、ここに前記ホッパー5、筒状体4を原料供給口3に連結すればよい。このような冷却手段を設けることにより、酸化酵素の至適温度を避け、酸化反応を相乗的に抑えることができる。なお、メカニカルシールの封水も、前記冷媒(例えば水)を流通させ、共用することもできる。
【0038】
前述の液中磨砕装置2では、排出口13側を密閉し、最低限、空気の侵入を遮断することが必要である。例えば排出口13を密閉せず空気の侵入を許すと、磨砕室12内で磨砕中に泡が発生し、酵素の作用等によって酸化反応が起こり、スラリーの性質が変化(劣化)してしまうおそれがある。これに対して、図1に示すように、スラリーの排出口13を密閉しながらポンプ14を連結し、空気の侵入ルートを断つことにより、ホッパー5からポンプ14までが液体原料8で満たされ、空気が侵入しなくなって液中粉砕が実現される。その結果、空気中の酸素と酵素の作用等による酸化反応が防止される。
【0039】
液中磨砕装置2の排出口13を密閉するための手段としては、前記ポンプ14に限らず、簡易なものとしては、図4に示すようなバルブ15や、図5に示すようなサイホン16等とすることも可能である。
【0040】
あるいは、固体原料6と液体原料8の比率を一定に、且つ連続運転においても安定に保ちながら液中で磨砕することを目的に、前記液中磨砕装置2の排出口13に連結した流量制御装置によって、前記ホッパー5内の液位を一定に調節するようにしてもよい。この場合、流量制御装置としては、ボールコック、バタフライバルブのようなバルブやオリフィス等、簡易なものでもよい。好ましくは、自吸力のある容積式ポンプ(ロータリーポンプ、ギヤポンプ、ベーンポンプ、バイデルポンプ、チューブ式ポンプ、モーノポンプ等)を設け、前記ホッパー5に設けた液位センサ10の検出信号に基づいて前記ポンプの回転数(吸引量)を制御する。
【0041】
前記制御を行った場合、後工程が例えば連続煮沸装置による工程の場合、煮沸時間や濃度が多少は変動するが、液中粉砕の効果を重視する。バッチ式煮沸装置の場合は問題ない。前記流量制御装置は、流量制御の他、稼動の初期段階には磨砕室12内の空気の排出、スラリーの充満に用いる。
【0042】
前記のようにホッパー5内の液位に連動して容積ポンプの吸引量を調整し得る流量制御装置を設けることにより、容積ポンプの吸引量が多すぎたり少なすぎたりして、ホッパー5内の液位が低下し過ぎたり、逆に溢れ出すことを防止することができる。その結果、安定して作業を行うことができる。
【0043】
以上のような構成を有する供給装置1及びこれを備えた液中磨砕装置2においては、液中磨砕装置2の原料供給口3にスクリュー式押し込み装置や固体原料も搬送できる容積ポンプ等の付加設備が不要であり、固体原料の圧入による閉塞の心配もない。また、液体原料が固体原料に対して少ない場合でも、供給側には特別なポンプや押し込み装置が不要であり、排出口13に連結したポンプ(通常の市販品でよく、安価である。)による微少、且つ正確な磨砕が可能である。同様に、磨砕部である砥石11の回転数制御、固体原料と液体原料のいずれか一方又は両方(両者の比を同じにして)を調整してもよい。なお、後述の粗粉砕ロールによっても効果的に固体原料の流量を調節できる。
【0044】
本発明の供給装置、液中磨砕装置の構成は、前記のものに限らず、種々の変更が可能である。そこで次に、本発明を適用した供給装置、液中磨砕装置の様々な形態について説明する。
【0045】
図6は、筒状体4とホッパー5とを別経路とし、筒状体4の下端部近傍においてホッパー5を連結した構造とした例である。この場合、先の図1〜図4の例とは異なり、筒状体4は液体原料8を透過させないようにし、当該筒状体4内において所定の液位を保つようにする。
【0046】
図7は、図6に示す例のさらに変形例であり、筒状体4とホッパー5とを並立して設け、筒状体4の下端部近傍において筒状体4に対してホッパー5を連結している。本例の場合にも、やはり筒状体4は液体原料8を透過させないようにし、当該筒状体4内において所定の液位を保つようにするが、図6に示す例に比べてホッパー5における液面制御が容易であるという利点を有する。
【0047】
図8は、固体原料供給管21及び固体原料供給ポンプ22を用いて筒状体4内に固体原料6を供給するようにした例である。供給装置1側の構成は、先の図1〜4に示すものと同様である。前記固体原料供給管21及び固体原料供給ポンプ22を利用することにより、固体原料6の連続供給が可能になり、しかも固体原料6は筒状体4内で柱状体を構成し、自重によって速やかに液中磨砕装置2内へと落下するので、固体原料6の連続且つ安定(円滑)な供給が実現される。したがって、特に、連続処理において有用である。また、従来あるようなスクリュー式押し込み方法も用いることができるが、この形態では固体原料とともに液体原料をも送る効果も有して、液体原料の先走りを助長することがある。本例では、液体原料を圧送する効果は全くないので、液体にはその液位のみがかかり、液体原料の先走りは最小限に抑えることができる。
【0048】
図9〜図13は、前記筒状体4により供給される固体原料6(液体原料を含むこともある)と前記ホッパー5により供給される液体原料8が合流した後、原料供給口3に至るまでの間に制流手段Sを設けた例である。制流手段Sを設けることで、液中磨砕装置の磨砕室において砥石や粗砕羽根等が回転することによって発生する渦流が固体原料の流入を妨げる現象、及び空気(酸素)を噛み込む現象を解消することができる。制流手段は磨砕装置の供給口付近(液中)に、例えば1〜複数の平板を設ける手段S1(図9)、2枚の平板を十字に組み合わせた渦巻き防止器を設ける手段S2(図10)、配管内に螺旋を設ける手段S3(図11)、配管を蛇行させる手段S4(図12)、ホッパーから供給口に至る部分を固体原料6が十分通過できる程度に狭く構成する手段S5(図13)等であるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
図14は、対向する粗粉砕ロール23,24間で固体原料6を予め粗粉砕し、筒状体4内へ供給するようにした例である。ただし、粗粉砕された原料が一時的にも空気(酸素)に接触するので、本粉砕手段はホッパー5にできるだけ近くに設置する。粉砕手段は乾式・湿式粉砕手段のいずれでも特に限定されない。例えば回転型(石臼式等;軸は磨砕装置の回転軸と共用しても、別駆動としてもよい)、2軸ロール型、1軸ロール型、回転カッター型、ハンマーミル型、ジェットミル型、1軸又は2軸型スクリュー型押出機(ミンチ型)等の粉砕手段である。各2軸ロール型の場合、お互いの回転数を違わせる(インバータやギヤ変速機、ベルトプーリー径等の変速手段によって)ことによって、更に粉砕効果を高めることが出きる。また本発明ではロール間やロールと器壁間の隙間は固体原料の粒子サイズより若干ないし狭く調整する。その調整幅と固体原料の弾力特性によって、粉砕がほとんど起きず、固体原料をそのまま噛み込んでホッパーに送り込む定量機能を発揮させることも可能である。2軸ロール型の場合、互いの回転数は同一の方が定量効果を得やすい。例えば、吸水した漬大豆について、その粒度にもよるが、余程の大粒でなければ、最小径10mm以下の漬大豆では、2mm以上10mm以下で主として定量機能を発揮し、2mm未満では主として粗粉砕機能を発揮する。漬大豆では、2〜8mm程度では定量機能を主として発揮し、2mm以下では粗粉砕機能を主として発揮する。スクリュー型押出機においは主として定量効果が期待できる。
【0050】
固体原料6を予め粗粉砕しておけば、液中磨砕装置2の磨砕部における粉砕負荷が下がる。その結果、例えばモータ負荷電流が低くなり、固体原料6の粉砕処理能力が向上し、調整範囲も広がる。また、モータ負荷が低下する分、回転数を上げることによっても、固体原料6の処理能力をさらに向上させることも可能である。さらに、本形態では、粗粉砕が十分でなくとも、固体原料のみの送り装置として機能させることができる。液体原料は、前記粗粉砕ロール23,24間の隙間から流通するので、従来のようなポンプによる強制的な圧入にはならない。
【0051】
次に、本発明の供給装置、液中磨砕装置を用いた磨砕システム及びこれを用いた液中磨砕方法について説明する。なお、各磨砕システムにおいて使用した供給装置、液中磨砕装置の構成は、先の図1に示すものと同様であり、ここではその説明は省略する。
【0052】
図15は、磨砕システムの第1の例を示すものである。前述の通り、供給装置1や液中磨砕装置2の構成は図1に示すものと同様であり、供給装置1は筒状体4及びホッパー5を備え、液中磨砕装置2は固定砥石11a及び回転砥石11bを備える。なお、図15においては、回転砥石11bを回転するためのモータ31が図示されている。
【0053】
ポンプ14の下流位置には、流量計32が設置されており、この流量計32により計測される流量に基づいてポンプ14の回転数(流量)を制御する調節計33及びインバータ34が設けられている。なお、ポンプ14の代わりにバルブを設ける場合には、前記インバータ34は省略可能であり、調節計33によってバルブの開度を調節する。
【0054】
このような磨砕システムによって固体原料を液体原料とともに磨砕し、スラリ状とするには、先ず、供給装置1の筒状体4に固体原料6を投入するとともに、ホッパー5内に液体原料8を供給する。
【0055】
固体原料6は、例えば穀物(大豆、胡麻、小豆、米、小麦・大麦等の麦類、とうもろこし、落花生、ココナッツ等の種子類等である。それらを、浸漬、脱皮、蒸煮、焙煎、発酵、発芽等加工されたものも含む。したがって、納豆、テンペ、麦芽、焙煎胡麻等も含まれる。)や、果物(リンゴ、ミカン等)、野菜(トマト、キャベツ、ほうれん草等)、根菜類(サツマイモ、ジャガイモ、蒟蒻芋、自然薯、タロイモ、人参、大根等)、海藻(ワカメ、ヒジキ、昆布等)、茶葉、薬草(これらの生原料や乾燥品や水戻し品等も含む。)、畜肉、鶏卵、魚肉等である。また、それらの粗粉砕物でもよい。さらには、各種加工食品の廃棄原料(例えばオカラ、リンゴ絞りカス、乾燥麺のクズや欠け等の破損品)の再利用目的であってもよいし、例えば酸化を受けやすいタンパク質、不飽和脂肪酸含有油脂等の油脂、ポリフェノール、色素、ビタミン等を含有する食品残材の再利用目的であってもよい。その他、本発明は、空気酸化等によって品質が変化するような固体原料の全てに適用できる。したがって、酸化による品質劣化を抑える目的であれば、金属、樹脂、染料、自然石、鉱石等の加工にも用いることができる。勿論、固体原料6は、これらに限定されるものではない。
【0056】
液体原料8は、固体原料6が大豆や米等の食品用原料の場合、主として水や飲料、液体油、液体状食品等を用いる。水とは温水、熱水、加圧熱水の他、リンゴ酸、酢酸(食酢も含む)、クエン酸やグルコン酸等の有機酸、あるいはこれらを含んだ酸性pH調整水溶液、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム等のアルカリ性pH調整水溶液、塩化ナトリウム等の各種塩溶液、軟水、水道水、地下水、アルカリイオン水、酸性イオン水、蒸留水、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)等のいずれか又は混合した水や水溶液を含み、飲料とは豆乳、牛乳、果実ジュース飲料等、液体油とは大豆油や菜種油等の食用油(サラダ油、白絞油、加工油脂)、乳化剤は液油状のジアシルグリセロール等融点が室温以下のものである。液体状食品は、食酢、しょうゆ、ソース、酒類等である。水の場合、いわゆる湿式粉砕になる。水は10℃以下の冷水や80℃以上の熱水や、脱気または脱酸素、脱金属イオン処理(例えば陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、逆浸透膜処理等)、pH調整(弱酸性又は弱アルカリ性:酸化酵素の至適pHを避ける処理)のいずれかを行った水を使えば一層効果的である。また、食塩、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩を含む液体でも効果的な場合がある。水分の多い固体原料(例えば果物等)では、液体原料8はあえて使用しなくてもよく、粗砕された段階で滲み出る果汁等がその代替となり得る。固体原料6が胡麻や落花生、あるいはそれらの焙煎物等の場合には、大豆油や菜種油、胡麻油等の使用温度で液状の食用油(融点が低い)等を用いれば、ペースト状の練り胡麻やピーナッツペーストとなる。食用以外であれば、様々な液状の物質を用いることもできる。場合によっては、水以外の有機化合物(エタノール等のアルコールやヘキサン等の有機溶剤等)も使用できる。液体原料8についても、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明は、特に大豆や小麦等を原料とするタンパク質のゲル化力を利用した食品である場合、青臭み等の風味改善や長期保存性向上の他、加工適性向上(タンパク質のSH基の酸化を抑え、弾力や食感を改善)の目的にも適用される。大豆の場合、豆乳や豆腐類、油揚類である。例えば、豆乳であれば、調整豆乳、豆乳飲料、豆乳ゼリー、豆乳アイスクリーム、豆乳ヨーグルト等、豆腐類であれば、絹豆腐(絹ごし豆腐)、充填豆腐、木綿豆腐、寄せ豆腐(おぼろ豆腐)等の豆腐類(冷凍製品も含む)、厚揚げ、生揚げ、薄揚げ、寿司揚げ、がんもどき等の生地類(冷凍半製品も含む)、凍り豆腐やその凍結前後の生地、揚げ物であれば、寿司揚げ、厚揚げ、生揚げ、薄揚げ、がんもどき等の油揚類、湯葉や湯葉豆腐、大豆タンパク質ゲル・豆乳ヨーグルト、豆乳ゼリー、豆花等の大豆加工食品について有効に適用される。特に揚げ物に対して適用した場合には、製品中の油脂の酸化や異臭発生等を抑制することができる。原料大豆は、国産大豆、輸入大豆、それらのリポキシゲナーゼ遺伝子欠損種や、それらの脱皮大豆・圧偏大豆・生大豆粉等、分離大豆タンパク質、濃縮大豆タンパク質等を含む。小麦の場合、SH基の多いグルテンや、超強力粉を得ることができ、腰の強い麺やパン生地、生麩等の製造に用いることができる。なお、本発明の対象になる食品が、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0058】
筒状体4に投入された固体原料6は、筒状体4の中で柱状体を構成し、自重によって原料供給口3から液中磨砕装置2内へと落下する。それとともに、ホッパー5内の液体原料8も、筒状体4を透過して原料供給口3から液中磨砕装置2内へと供給される。液中磨砕装置2内では、前記固体原料6が磨砕部、すなわち固定砥石11aと回転砥石11bの間で磨砕され、スラリー状になって排出口13からポンプ14によって排出される。前記自重による固体原料6の供給は、圧入による供給等に比べて円滑な供給が可能になる。
【0059】
なお、固体原料6の投入に際しては、固体原料6の上端レベルが液体原料8の上端液位に比べて等しいか、高い状態である場合に、固体原料6の自重が下方向に有効にかかるようになり、液中磨砕装置2の原料供給口3から磨砕室12にかけて、軽く押し込むことができる。例えば、液体原料8より固体原料6の方が比重が小さい場合であっても、固体原料6の上端レベルが液体原料8の上端液位に比べて高い状態とすれば、固体原料6の自重が下方向に有効にかかるようになる。また、固体原料6の上端レベルが液体原料8の上端レベルに比べて低い状態であっても、固体原料6の比重が液体原料8の比重よりも大きい場合、同様な効果が得られる。固体原料6を押し込む圧力は、液体原料8との比重差と液位以上の固体原料6の高さの調整によって決定される。
【0060】
また、磨砕に際しては、液面制御が重要であり、本システムにおいても、排出口13を密閉しながらポンプ14を連結し、空気の侵入を断つようにしている。さらに、流量計32により計測される流量に基づいて調節計33及びインバータ34によってポンプ14の回転数(流量)を制御し、ホッパー5内の液体原料8の液位が一定に保たれるようにしている。
【0061】
これらによって、ホッパー5からポンプ14までの経路全体が液体原料8で満たされることになり、いわゆる液中粉砕となって、例えば大豆(固体原料6)が酵素(リポキシナーゼ)の働きによって空気中の酸素と反応することを防止することができる。さらに、流量が適正になるようにポンプ14の回転数を制御しているので、前記液中粉砕を安定して行うことができる。
【0062】
図16は、磨砕システムの第2の例を示すものである。本例の磨砕システムも、基本的には先の図15に示す例と同様の構成を有するが、ホッパー5に設けた液位センサ10によって検知される液体原料8の液位に基づいて、調節計33及びインバータ34によってポンプ14の回転数(流量)を制御し、ホッパー5内の液体原料8の液位が一定に保たれるようにしている。
【0063】
本例のように、ホッパー5内の液位に連動してポンプ14の吸引量を調整することにより、ポンプ14の吸引量が多すぎたり少なすぎたりして、ホッパー5内の液位が低下し過ぎたり、逆にホッパー5から液体減量8が溢れ出すことを防止することができる。その結果、安定して液中粉砕を行うことができる
【0064】
図17は、磨砕システムの第3の例を示すものである。本例では、ポンプ14を容積式ポンプとするとともに、固体原料6及び液体原料8の供給量を適正に制御するような構成となっている。なお、容積式ポンプの代わりに、外部からの信号で動作する調節弁や、背圧調整弁等を用いることもできる。
【0065】
ここで、固体原料6に関しては、計量機41により供給量が計量され、筒状体4に供給される。計量機41における固体原料6の供給量は、インバータ42によって制御される。一方、液体原料8は、原料タンク43内の液体原料8がポンプ44、バルブ45、及び流量計46を介してホッパー5へと供給される。バルブ45には調節計47が設けられ、流量計46における計測結果に基づいて、適正な開度となるように制御される。
【0066】
また、液中磨砕装置2の回転砥石11bを回転駆動するモータ31には、調節計48及びインバータ49が設けられており、液位センサ10による検知結果に基づいて、回転数が制御される。これら機構により、固体原料6や液体原料8が安定供給されるとともに、その供給量に応じて磨砕速度が調整され、安定して液中粉砕が行われる。
【0067】
図18は、磨砕システムの第4の例を示すものである。本例では、ポンプ14を容積式ポンプとするとともに、固体原料6及び液体原料8の供給比率を適正に制御するような構成となっている。なお、本例の場合にも、容積式ポンプの代わりに、外部からの信号で動作する調節弁や、背圧調整弁等を用いることができる。
【0068】
本システムにおいても、固体原料6は計量機41により供給量が計量され、筒状体4に供給される。液体原料8も、原料タンク43内の液体原料8がポンプ44、バルブ45、及び流量計46を介してホッパー5へと供給される。ここで、固体原料6を計量する計量機41は、モータ51によって駆動され、当該モータ51は、重量計52によって計測される重量信号に基づいて、調節計53及びインバータ54によって制御される。液体原料8の供給量を調整するバルブ45には、調節計47が設けられ、流量計46における計測結果に基づいて、適正な開度となるように制御される。
【0069】
さらに、本例の磨砕システムでは、固体原料6と液体原料8の比率が適正なものとなるよう制御する比率設定器55及びその調節計56が設けられている。液位センサ10からの検出信号に基づいて、調節計56によって比率設定器55が制御され、さらにこの比率設定器55は、前記固体原料6の調節計53及び液体原料8の調節計47を制御して、固体原料6と液体原料8の比率が一定且つ適正なものとなるように制御する。これにより、安定に液中粉砕が行われるだけでなく、均一なスラリーの製造が可能になる。
【0070】
前記液中磨砕システムにおいては、前述の液中磨砕装置を連続的に運転し、その排出口を脱泡装置の流入口または加熱装置の流入口または分離装置の流入口のいずれか一つか、あるいはこれらを任意の順に連結したラインの流入口に連結することにより、一連の工程を連続的に行うことが可能である。連続運転される液中磨砕装置における排出口に磨砕処理液(スラリー状、ペースト状、乳液状等)を空気(酸素)に触れることなく、次工程の脱泡装置または加熱装置または分離装置のうち1つか、任意に連結したラインの流入口に連結することによって、磨砕処理液の変質、酸化酵素の作用や化学的酸化(光による化学的酸化も含む。)等を効果的に抑制・低減できる。該脱泡装置、該加熱装置、該分離装置は、連続式、バッチ式いずれでもよいが、連続式の方がシステムとして合理的で望ましい。即ち定置洗浄(CIP)洗浄性も良く、大量生産に向く。
【0071】
磨砕処理液は磨砕前に比べて、酸化酵素の作用や化学的酸化が非常に起こりやすい状態にあるので、液中磨砕による効果を維持する上で、気密な連結は重要である。前記連結とは如何なる連結手段でもよく、特に限定しないが、気密に連結することが望ましく、タンクに一旦受ける場合、若干空気(酸素)に触れたり、先入れ先出しが不十分になるので、液中磨砕効果はあるものの、低減する。液中磨砕による効果を維持する上で、本発明は重要である。さらに前記脱泡装置は、わずかに噛み込んだ気泡や溶存空気(溶存酸素)を除去でき、少し発生した酸化臭(例えば大豆の場合、ヘキサナール等の青臭み成分)を除去できる。前記加熱装置は、殺菌効果、タンパク質変性効果などの他に、直ちに酸化酵素活性を失活させることができるので、酸化による悪影響はほとんど発生しない。前記分離装置は、特に加熱前に行うことによって、収斂味や“あく”の成分(大豆であればサポニン等)の抽出を避け、風味・品質を向上できる。ただし、分離装置の構造は空気(酸素)との接触を抑えた構造、例えば液中分離装置が好ましい。さらに以後の工程も気密構造を維持して、可及的早くに加熱工程を設けることが望ましい。
【0072】
あるいは、液中磨砕装置を間欠的に運転し、その排出口を脱泡装置の流入口または加熱装置の流入口または分離装置の流入口のいずれか一つか、あるいはこれらを任意の順に連結したラインの流入口に連結することも可能である。間欠運転される液中磨砕装置における排出口に磨砕処理液(スラリー状、ペースト状、乳液状等)を空気(酸素)に触れることなく、次工程の脱泡装置または加熱装置または分離装置のうち1つか、任意に連結したラインの流入口に連結することによって、磨砕処理液の変質、酸化酵素の作用や化学的酸化(光による化学的酸化も含む。)等を効果的に抑制・低減できる。該脱泡装置、該加熱装置、該分離装置は、連続式、バッチ式いずれでもよいが、本発明ではバッチ式の方がシステムとして望ましい。即ち、小規模または少量多品種生産に向く。
【0073】
前記連続運転に比べて、停止中は磨砕室やホッパー等に滞留する磨砕処理液の変質の危険があるが、液中磨砕装置が気密であり、また毎回液体原料で磨砕室が置き換わるように使用することによって、液中磨砕効果の低減を抑えることができる。該磨砕処理液は磨砕前に比べて、酸化酵素の作用や化学的酸化が非常に起こりやすい状態にあるので、液中磨砕による効果を維持する上で、気密な連結は重要である。前記連結とは如何なる連結手段でもよく、特に限定しないが、気密に連結することが望ましく、タンクに一旦受ける場合、若干空気(酸素)に触れたり、先入れ先出しが不十分になるので、液中磨砕効果はあるものの、低減する。該磨砕処理液は磨砕前に比べて、酸化酵素の作用や化学的酸化が非常に起こりやすい状態にあるので、液中磨砕による効果を維持する上で、本発明は重要である。さらに次工程が脱泡装置である場合、わずかに噛み込んだ気泡や溶存空気(溶存酸素)を除去でき、少し発生した酸化臭(例えば大豆の場合、ヘキサナール等の青臭み成分)を除去できる。次工程が加熱装置である場合、殺菌効果、タンパク質変性効果などの他に、直ちに酸化酵素活性を失活させることができるので、酸化による製品品質への悪影響はほとんど発生しない。次工程が分離装置の場合、特に加熱前に行うことによって、収斂味や“あく”の成分(大豆であればサポニン等)の抽出を避け、風味・品質を向上できる。ただし、分離装置の構造は空気(酸素)との接触を抑えた構造、例えば液中分離装置が好ましい。さらに以後の工程も気密構造を維持して、可及的早くに加熱工程を設けることが望ましい。
【0074】
以上の磨砕システムにより、例えば大豆、野菜、果実、薬草を磨砕するときに、水を挽き水として用い、液中磨砕を行うことによって、大豆、野菜(根菜類も含む)、果実、薬草(ハーブ、漢方薬草等)を原料とする加工製品は、酸化が抑えられ、保存中に色素、風味の変化の少ない、高品質な製品になる。固体原料を胡麻または落花生とし、液体原料を液状食用油脂として液中磨砕を行うことによって、酸化が抑制された胡麻ペースト(練り胡麻)、ピーナッツペーストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明を適用した供給装置及びこれを装着した液中磨砕装置の一例を示す模式図である。
【図2】筒状体をストレート形状とした例を示す模式図である。
【図3】液中磨砕装置を横型とした例を示す模式図である。
【図4】ポンプの代わりにバルブを設けた例を示す模式図である。
【図5】ポンプの代わりにサイホンを設けた例を示す模式図である。
【図6】第1の変形例を示す模式図である。
【図7】第2の変形例を示す模式図である。
【図8】第3の変形例を示す模式図である。
【図9】第4の変形例を示す模式図である。
【図10】第5の変形例を示す模式図である。
【図11】第6の変形例を示す模式図である。
【図12】第7の変形例を示す模式図である。
【図13】第8の変形例を示す模式図である。
【図14】第9の変形例を示す模式図である。
【図15】磨砕システムの第1の例を示す模式図である。
【図16】磨砕システムの第2の例を示す模式図である。
【図17】磨砕システムの第3の例を示す模式図である。
【図18】磨砕システムの第4の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 供給装置、2 液中磨砕装置、3 原料供給口、4 筒状体、5 ホッパー、6 固体原料、7 投入口、8 液体原料、9 液体原料導入管、10 液位センサ、11 砥石、11a 固定砥石、11b 回転砥石、12 磨砕室、13 排出口、14 ポンプ、15 バルブ、16 サイホン、21 固体原料供給管、22 固体原料供給ポンプ、23,24 粗粉砕ロール、31 モータ、32流量計、33 調節計、34 インバータ、41 計量機、42 インバータ、43 原料タンク、44 ポンプ、45 バルブ、46 流量計、47 調節計、51 モータ、52 重量計、53 調節計、54 インバータ、55 比率設定器、56 調節計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中磨砕装置に原料を投入するための液中磨砕装置用付属供給装置であって、
一端が開放されるとともに他端が液中磨砕装置の原料供給口に連結される筒状体を備え、当該筒状体内に供給される固体原料が自重により前記液中磨砕装置へ導入されることを特徴とする液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項2】
液体原料を供給するホッパーを備えることを特徴とする請求項1記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項3】
前記ホッパーの内側に前記筒状体が設けられ、前記筒状体が通水性または透水性を有することを特徴とする請求項2記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項4】
前記筒状体が多孔筒状体とされていることを特徴とする請求項3記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項5】
前記筒状体の中途位置又は下流位置に前記ホッパーが連結されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項6】
固定原料と液体原料が合流した後、液中磨砕装置の原料供給口までの間に、制流手段が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項7】
前記筒状体は、前記一端における内径が前記他端における内径と略等しいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項8】
前記筒状体は、前記他端における内径が前記一端における内径よりも大であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項9】
前記筒状体は、前記一端から他端に向かって内径が漸増されていることを特徴とする請求項8記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項10】
前記筒状体又はホッパーに振動手段が設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の液中磨砕装置用付属供給装置。
【請求項11】
少なくとも固体原料を磨砕室内の磨砕部において磨砕し、スラリー状とする液中磨砕装置であって、
前記磨砕室の原料供給口に請求項1から10のいずれか1項記載の供給装置が設置されていることを特徴とする液中磨砕装置。
【請求項12】
前記磨砕部を構成する砥石が非浸透性材料からなることを特徴とする請求項11記載の液中磨砕装置。
【請求項13】
前記磨砕室の排出口に、前記筒状体内の固体原料のレベル及び前記ホッパー内の液体原料のレベルを制御する流量制御手段が設けられていることを特徴とする請求項11又は12記載の液中磨砕装置。
【請求項14】
前記流量制御手段は、ポンプ、バルブ、サイホン、オリフィス、背圧弁、調整弁のいずれかであることを特徴とする請求項13記載の液中磨砕装置。
【請求項15】
前記磨砕室は、冷却手段を備えることを特徴とする請求項11から14のいずれか1項記載の液中磨砕装置。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか1項記載の液中磨砕装置の排出口が、脱泡装置の流入口、加熱装置の流入口、分離装置の流入口のいずれか一つ、あるいはこれらが任意の順に連結された処理ラインの流入口に連結されていることを特徴とする液中磨砕システム。
【請求項17】
液中磨砕装置が連続的に運転されることを特徴とする請求項16記載の液中磨砕システム。
【請求項18】
液中磨砕装置が間欠的に運転されることを特徴とする請求項16記載の液中磨砕システム。
【請求項19】
固体原料を液体原料とともに磨砕室内の磨砕部において磨砕し、スラリー状とするに際し、
前記固体原料を筒状体から自重により磨砕室内に供給するとともに、液体原料をホッパーから供給し、
前記液体原料の液位が前記磨砕室内を満たし、且つ前記ホッパーの少なくとも一部を満たすように設定し、前記磨砕を行うことを特徴とする液中磨砕方法。
【請求項20】
前記固体原料の比重が前記液体原料の比重よりも小である場合、前記固体原料の上端レベルが前記液体原料の液位よりも高くなるように設定することを特徴とする請求項19記載の液中磨砕方法。
【請求項21】
前記液体原料が、水、温水、熱水、加圧熱水、飲料、液体油、乳化剤、有機溶媒、液体状食品から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項19又は20記載の液中磨砕方法。
【請求項22】
前記固体原料が大豆、野菜、果実、薬草から選ばれる少なくとも1種であり、前記液体原料が水であることを特徴とする請求項21記載の液中磨砕方法。
【請求項23】
前記固体原料が胡麻、落花生から選ばれる少なくとも1種であり、前記液体原料が液体食用油であることを特徴とする請求項21記載の液中磨砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−15206(P2006−15206A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194061(P2004−194061)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(591162631)株式会社高井製作所 (32)
【出願人】(594075260)株式会社川西 (5)
【Fターム(参考)】