説明

液体の分離方法と分離装置

【課題】エネルギー消費を少なくして霧状微粒子を効率よく発生させて、混合液体を高効率に分離する。
【解決手段】液体の分離方法は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とし、混合流体から空気を分離して霧化成分を回収して、含有成分量の異なる液体に分離する。液体の分離方法は、霧化される液体の液面に、外気の熱エネルギーで加熱された搬送気体を供給しながら液体を霧化させ、あるいは、霧化される液体の液面に外気を供給し、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら液体を霧化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分が異なる複数の液体を含む混合液体を、たとえば、含有成分量が異なる液体に分離する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、成分が異なる複数の液体を混合している混合液体を、含有成分量が異なる液体に分離する装置を開発した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−314724号公報
【0003】
この分離装置は、アルコール溶液を閉鎖構造の霧化室に充填し、霧化室のアルコール溶液を超音波振動子で超音波振動させてミストに霧化し、霧化されたミストを凝集させて回収して高濃度のアルコール溶液を分離し、アルコール溶液を分離した空気を霧化室に循環させる。この分離装置が高濃度のアルコールを分離できるのは、以下の動作による。
【0004】
速やかに表面に移行して表面過剰となる物性を示すアルコールは、表面の濃度が高くなっている。この状態で超音波振動させると、表面の溶液が超音波振動のエネルギーで空気中にミストとなって微細な粒子で放出される。空気中に放出されたミストはアルコール濃度が高くなっている。アルコール濃度の高い表面の溶液がミストとなるからである。したがって、ミストを凝集して回収すると、高濃度のアルコール溶液が分離される。この方法は、溶液を加熱しないで高濃度のアルコール溶液を分離できる。このため、高濃度なアルコール物質を分離できる。また、加熱しないのでアルコールを変質させることなく分離できる特長もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の装置は、蒸留のように、液体を気化させて分離する方法に比較して、分離のために消費するエネルギーを少なくできる。液体に大きな気化熱を与えて気化させる必要がないからである。超音波振動は、液体を沸点以下の温度で霧状微粒子に霧化する。霧化された霧状微粒子は、霧化されない液体とは含有成分量が異なる。このため、霧化された霧状微粒子を空気から分離して回収して、含有成分量の異なる液体に分離できる。
【0006】
以上の超音波振動による分離は、液体を沸点以上に加熱してさせる必要はないので、消費する熱エネルギーを少なくできる。ただ、液体を霧状微粒子に霧化させる空気の温度が低いと、霧化効率が悪くなる。このことは、霧化室に供給する空気を加熱して、霧化効率を高くすることができる。ただ、空気を加温すると、加熱のために熱エネルギーを消費するので、少ないエネルギー消費で効率よく混合液体を分離できなくなる。
【0007】
本発明は、従来のこのような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、エネルギー消費を少なくして霧状微粒子を効率よく発生させて、混合液体を高効率に分離できる分離方法と分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の液体の分離方法は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とし、混合流体から空気を分離して霧化成分を回収して、含有成分量の異なる液体に分離する。液体の分離方法は、霧化される液体の液面に、外気の熱エネルギーで加熱された搬送気体を供給しながら液体を霧化させる。
【0009】
本発明の液体の分離方法は、搬送気体が、混合流体から分離された空気を含むことができる。さらに、本発明の液体の分離方法は、搬送気体が、空気分離機50で混合流体から分離された空気を含むことができる。
【0010】
本発明の請求項4の液体の分離方法は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とし、混合流体から空気を分離して霧化成分を回収して、含有成分量の異なる液体に分離する。液体の分離方法は、霧化される液体の液面に外気を供給し、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら液体を霧化させる。
【0011】
本発明の液体の分離方法は、分離される混合液体を、原油、石油、揮発油、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油、重油、もしくはこれらを触媒でクラッキング処理したもののうちいずれか、もしくはそれらの混合物とすることができる。さらに、本発明の液体の分離方法は、混合液体を、カーボン数(n)が異なる炭化水素混合物に分離することができる。さらにまた、本発明の液体の分離方法は、混合液体をアルコール類と水の混合液体とすることができる。
【0012】
本発明の請求項8の液体の分離装置は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動させて霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とする霧化装置100と、この霧化装置100で得られる混合流体から空気を分離して霧化成分を回収する回収装置200とを備える。分離装置は、霧化装置100で混合液体を霧状微粒子に霧化して混合流体とし、この混合流体から霧化された液体を分離して、含有成分量の異なる液体に分離する。さらに、分離装置は、超音波振動で霧化される液体の液面に供給する搬送気体を加温する外気熱交換器79を設けている。分離装置は、外気熱交換器79で加温された搬送気体を霧化装置100に供給し、霧化装置100が、外気の熱エネルギーで加温された搬送気体を液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる。
【0013】
本発明の液体の分離装置は、混合流体から分離された空気を含む搬送気体を外気熱交換器79で加温して霧化装置100に供給することができる。本発明の液体の分離装置は、空気分離機50で混合流体から分離された空気を含む搬送気体を、外気熱交換器79で加温して霧化装置100に供給することができる。
【0014】
本発明の請求項11の液体の分離装置は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動させて霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とする霧化装置100と、この霧化装置100で得られる混合流体から空気を分離して霧化成分を回収する回収装置200とを備える。分離装置は、霧化装置100で混合液体を霧状微粒子に霧化して混合流体とし、この混合流体から霧化された液体を分離して、含有成分量の異なる液体に分離する。さらに、分離装置は、超音波振動で霧化される液体の液面に外気を供給する外気供給装置78を設けている。分離装置は、外気供給装置78が外気を霧化装置100に供給し、霧化装置100が、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる。
【0015】
本発明の液体の分離装置は、霧化装置100に供給される混合液体を、原油、石油、揮発油、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油、重油、もしくはこれらを触媒でクラッキング処理したもののうちいずれか、もしくはそれらの混合物とすることができる。さらに、本発明の液体の分離装置は、混合液体を、カーボン数(n)が異なる炭化水素混合物に分離することができる。さらにまた、本発明の液体の分離装置は、混合液体を、アルコール類と水の混合液体とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エネルギー消費を少なくして、霧状微粒子を効率よく発生させて、混合液体を高効率に分離できる特徴がある。それは、本発明が、混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化、回収して含有成分量の異なる液体に分離すると共に、外気の熱エネルギーを有効に利用して、効率よく分離するからである。すなわち、本発明は、従来のように混合液体を蒸留のために沸騰させて気化しないので、気化熱に匹敵する大きな熱エネルギーを供給する必要がなく、さらに、液体を霧状微粒子に霧化して分離するために、外気の熱エネルギーを有効に利用して、極めて効率よく液体を霧状微粒子に霧化して分離する。本発明は、液面に供給する空気の温度を、分離する液体の沸点よりも低い温度としながら、液体を効率よく霧状微粒子に霧化して分離できる。液体を霧状微粒子に霧化する効率が、空気温度を沸点以下の温度に加温して高くなるからである。したがって、本発明は、外気が有する熱エネルギーを有効に利用して、液体を効率よく霧状微粒子に霧化し、霧化された液体を回収して、効率よく含有成分量の違う液体に分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための液体の分離方法と分離装置を例示するものであって、本発明は液体の分離方法と分離装置を以下のものに特定しない。
【0018】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0019】
本発明の液体の分離装置は、複数の成分を含む混合液体を霧状微粒子に霧化した後、霧状微粒子を回収して含有成分量の異なる液体に分離する。本発明は混合液体を特定するものではないが、混合液体は大別するとふたつある。第1の混合液体は、複数の成分を含む混合液体が、溶媒と溶質を含む溶液、すなわち溶質を溶媒に溶解させた溶液である。本発明は、混合液体を、低濃度の溶液と高濃度の溶液に分離する。第2の混合液体は、石油のように複数の異なる成分を含有する液体である。この混合液体は、蒸留して含有成分量が異なる液体である重油、軽油、灯油、ナフサ、ガソリン等の液体に分離されるように、含有成分量が異なる石油に分離される。
【0020】
溶質に溶媒を溶解している混合液体の溶液には以下のものがある。
(1) 清酒、ビール、ワイン、食酢、みりん、スピリッツ、焼酎、ブランデー、ウイスキー、リキュール
(2) ピネン、リナロール、リモネン、ポリフェノール類などの香料、芳香成分ないし香気成分を含む溶液
(3) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合した物質を含む溶液
(4) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をハロゲンによって置き換えた物質を含む溶液
(5) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基を水酸基によって置き換えた物質を含む溶液
(6) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をアミノ基によって置き換えた物質を含む溶液
(7) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をカルボニル基によって置き換えた物質を含む溶液
(8) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をカルボキシル基によって置き換えた物質を含む溶液
(9) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をニトロ基によって置き換えた物質を含む溶液
(10) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をシアノ基によって置き換えた物質を含む溶液
(11) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をメルカプト基によって置き換えた物質を含む溶液
(12) 前述の(3)〜(11)の目的物質に含まれるいずれか一つ以上の原子を金属イオンによって置換した物質を含む溶液
(13) 先述の(3)〜(11)の目的物質に含まれる分子のうち任意の水素原子、炭素原子もしくは官能基を(3)〜(11)の分子のうち任意の分子で置き換えた物質を含む溶液
【0021】
また、複数の異なる成分を含む混合液体は、原油、軽油、重油、灯油、ガソリン等である。本発明は、混合液体の原油を、重油、軽油、灯油、ナフサ、ガソリン等に分離し、さらに、軽油や、ガソリン等を精製する。
【0022】
混合液体は、炭化水素混合物のカーボン数(n)の差、表面に移行して表面過剰となる性質等で分離される。炭化水素混合物のカーボン数(n)の差で分離される液体は、カーボン数(n)が小さいものが霧状微粒子として分離される。また、表面過剰となる性質の成分を含有する混合液体は、表面過剰になる物質が霧状微粒子として回収される。
【0023】
以下、混合液体をアルコールとする溶液から、超音波振動で霧状微粒子を発生させて高濃度なアルコールを得る装置と方法を示す。ただし、本発明は混合液体をアルコールに特定せず、前述の全ての液体とすることができる。
【0024】
図1ないし図3に示す分離装置は、複数の成分を含む混合液体を超音波振動させて霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とする霧化装置100と、この霧化装置100で得られる混合流体から空気を分離して霧化成分を回収する回収装置200と、混合流体を霧化装置100から回収装置200に移送する強制搬送機35を備える。この装置は、霧化装置100で混合液体を霧状微粒子に霧化して混合流体とし、この混合流体を回収装置200に移送し、回収装置200でもって混合流体から霧化された液体を分離して、含有成分量の異なる液体に分離する。
【0025】
図1の分離装置は、超音波振動で霧化される液体の液面に供給する搬送気体を加温する外気熱交換器79を設けている。この装置は、外気熱交換器79で加温された搬送気体を霧化装置100に供給する。霧化装置100は、外気の熱エネルギーで加温された搬送気体を液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる。
【0026】
図2の分離装置は、超音波振動で霧化される液体の液面に外気を供給する。外気を霧化室4に供給するために、この図の装置は、外気供給装置78を設けている。外気供給装置78は、外気を吸入して霧化室4に吸入するファンである。外気供給装置78は、外気を吸入して霧化装置100の霧化室4に供給する。霧化装置100は、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる。外気供給装置78は、霧化室4に外気を供給できるすべての機構とすることができる。たとえば、霧化室を負圧にする装置においては、霧化室に開口部を設けて外気を供給することができる。したがって、この装置は、開口部を外気供給装置とすることができる。開口部である外気供給装置は、開口面積を調整して、霧化室に吸入される外気量をコントロールすることができる。
【0027】
さらに、図3の装置は、外気熱交換器79で搬送気体を加温して霧化室4に供給すると共に、外気を直接に霧化装置100の霧化室4に供給する。したがって、この装置は、外気熱交換器79と外気供給装置78の両方を備えている。この分離装置は、回収装置200で一部を搬送気体である空気を外部に排気し、排気する空気量に相当する外気を霧化装置100に供給する。
【0028】
以下、以上の分離装置をさらに詳述する。図4ないし図7の分離装置は、混合液体を霧状微粒子に霧化する霧化機1を霧化装置100に設けている。回収装置200は、霧化室1で霧化された霧状微粒子と空気との混合流体から空気を分離する空気分離機50と、この空気分離機50で一部の空気を分離した混合流体をさらに凝集させて回収する回収室5と、混合流体を移送する強制搬送機35とを備える。この図の装置は、強制搬送機35を回収装置200に設けているが、強制搬送機35は、図4ないし図6に示すように、霧化装置100と回収装置200との間に設けることもできる。
【0029】
図7の装置は、混合液体を霧化室4に供給するポンプ10を備え、このポンプ10で混合液体を霧化室4に供給する。霧化室4は、供給される全ての混合液体を霧状微粒子として霧化させない。全ての混合液体を霧化して回収室5で回収すると、霧化室4に供給する混合液体と、回収室5で回収される液体のアルコール等の混合液体濃度が同じになるからである。霧化室4に供給された混合液体は、霧状微粒子として霧化して容量が少なくなるにしたがって、混合液体の濃度が低下する。このため、霧状微粒子に含まれる混合液体の濃度も次第に低下する。霧化室4の混合液体は、混合液体濃度が低下すると新しいものに入れ換えられる。
【0030】
霧化室4は、たとえば、混合液体として、溶媒に溶質を溶解している溶液を使用して、高濃度の溶液を分離する場合、溶液の濃度が10〜50重量%である混合液体を霧化して、混合液体の濃度が低下した後、混合液体を新しいものに入れ換える。混合液体に石油を使用する場合、一定時間経過して石油の一部を霧状微粒子に霧化した後、新しいものに入れ換える。この方法は、一定の時間経過すると混合液体を新しいものに入れ換える方法、すなわちバッチ式に混合液体を交換する。ただ、霧化室4に、ポンプ10を介して混合液体を蓄えている原液槽11を連結し、原液槽11から連続的に混合液体を供給することもできる。この装置は、霧化室4の混合液体を排出しながら、原液槽11から混合液体を供給して、霧化室4の液体の混合液体の濃度が低下するのを防止する。また、図7の矢印Bで示すように、霧化室4の混合液体を原液槽11に循環することなく外部に排出して、原液槽11に含まれる混合液体の濃度が低下するのを防止することもできる。
【0031】
霧化室4の混合液体は、霧化機1で霧状微粒子に霧化される。混合液体をアルコール溶液とする場合、霧化機1で霧化された霧状微粒子は、残存液体よりも高濃度となる。アルコールが溶媒である水よりも霧状微粒子になりやすいからである。したがって、霧化機1で混合液体を霧状微粒子に霧化し、霧状微粒子を凝集して回収することで、高濃度な混合液体を効率よく分離できる。混合液体を石油とする場合、霧状微粒子は残存液体よりも霧化されやすい炭化水素混合物の濃度が高くなる。したがって、霧化機1で石油を霧状微粒子に霧化し、霧状微粒子を回収すると、霧化されやすい炭化水素混合物、すなわちカーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量が多い石油を効率よく分離できる。
【0032】
霧化機1は、複数の超音波振動子2と、この超音波振動子2に高周波電力を供給する超音波電源3とを備える。霧化機1は、好ましくは1MHz以上の周波数で超音波振動されて、混合液体を霧化する。この霧化機1を使用すると、混合液体を極めて微細な霧状微粒子に霧化できる特長がある。本発明は、霧化機を超音波振動によるものに特定するものではないが、超音波振動による霧化機においては、振動周波数を1MHzよりも低くすることが可能である。
【0033】
混合液体を超音波振動させる霧化機1は、混合液体を霧状微粒子として混合液体面Wから飛散させる。混合液体が超音波振動されると、混合液体面Wに液柱Pができ、この液柱Pの表面から霧状微粒子が発生する。図8に示す霧化機1は、混合液体を充填している霧化室4の底に、霧化機1の超音波振動子2を上向きに配設している。超音波振動子2は、底から混合液体面Wに向かって上向きに超音波を放射して、混合液体面Wを超音波振動させて、液柱Pを発生させる。超音波振動子2は、垂直方向に超音波を放射する。
【0034】
図の霧化機1は、複数の超音波振動子2と、これ等の超音波振動子2を超音波振動させる超音波電源3とを備える。超音波振動子2は、霧化室4の底に水密構造に固定される。複数の超音波振動子2が混合液体を超音波振動させる装置は、より効率よく混合液体を霧状微粒子に霧化する。
【0035】
複数の超音波振動子2は、図9と図10に示すように、防水構造で脱着プレート12に固定される。複数の超音波振動子2を固定している脱着プレート12は、図11と図12に示すように、防水構造で脱着できるように霧化室4のケーシング13に装着される。この脱着プレート12が霧化室4のケーシング13に装着されて、各々の超音波振動子2は霧化室4の混合液体を超音波振動する。
【0036】
図9と図10に示す脱着プレート12は、表面プレート12Aと裏面プレート12Bを備えており、表面プレート12Aと裏面プレート12Bを積層して、表面プレート12Aと裏面プレート12Bの間に超音波振動子2を防水構造で挟着している。表面プレート12Aは貫通孔12aを開口しており、この貫通孔12aに振動面2Aを位置させて超音波振動子2を表面プレート12Aと裏面プレート12Bに挟着して固定している。裏面プレート12Bは、超音波振動子2を嵌入する凹部12bを設けて、この凹部12bに超音波振動子2を嵌入している。図9の脱着プレート12は、裏面プレート12Bに凹部12bを設けているが、表面プレートに凹部を設けて、この凹部に超音波振動子を嵌入することもできる。
【0037】
超音波振動子2と表面プレート12Aとの間を防水構造とするために、表面プレート12Aと超音波振動子2との間にパッキン16を挟着している。図9に示す霧化機1は、超音波振動子2と裏面プレート12Bとの間にもパッキン16を挟着して防水構造としている。ただし、霧化機は、必ずしも超音波振動子と裏面プレートとの間を防水構造とする必要はない。それは、超音波振動子と表面プレートとの間を防水構造とする脱着プレートを霧化室のケーシングの下面に固定して、霧化室の混合液体が漏れるのを阻止できるからである。パッキン16は、ゴム状弾性体のOリングである。Oリングのパッキン16は、超音波振動子2の振動面2Aの外周縁と表面プレート12Aとの対向面に配設されて、超音波振動子2の振動面2Aと表面プレート12Aとの間を防水構造として、この間から水が漏れるの阻止する。さらに、超音波振動子2の外周と裏面プレート12Bとの間を防水構造で連結する。
【0038】
パッキン16は、テフロン(登録商標)、シリコン、天然または合成ゴム等のゴム状弾性体である。このパッキン16は、超音波振動子2と表面プレート12Aとの間、超音波振動子2と裏面プレート12Bとの間に、弾性変形して押しつぶされる状態で挟着されて、超音波振動子2と表面プレート12A及び裏面プレート12Bの表面に隙間なく密着して連結部分を防水構造とする。ただし、パッキン16には、銅、シンチュウ、アルミニウム、ステンレス等の金属をリング状に加工した金属パッキンも使用できる。
【0039】
図9と図10に示す脱着プレート12は、表面プレート12Aと裏面プレート12Bの片側縁を蝶番17で連結している。この脱着プレート12は、裏面プレート12Bと表面プレート12Aとを開いて、超音波振動子2を簡単に脱着できる。超音波振動子2を交換するとき、裏面プレート12Bと表面プレート12Aが開かれる。この状態で、古い超音波振動子を取り出して新しい超音波振動子2とパッキン16を所定の位置に入れる。その後、裏面プレート12Bと表面プレート12Aを閉じて、超音波振動子2が交換される。閉じられた裏面プレート12Bと表面プレート12Aは、蝶番17の反対側を止ネジ(図示せず)で連結し、あるいは霧化室4のケーシング13に固定して連結される。
【0040】
以上の霧化機1は、パッキン16を使用して防水構造としているが、パッキンの位置にコーキング材を充填して防水構造とすることもできる。さらに、図9に示す霧化機1は、脱着プレート12を表面プレート12Aと裏面プレート12Bからなる2枚の金属プレート、あるいは非金属の硬質プレートで構成しているが、脱着プレート12は図13ないし図15に示すように1枚のプレートとすることもできる。この脱着プレート12は、金属プレートあるいは非金属硬質プレートで、超音波振動子2を配設する凹部12bを上方に、あるいは貫通孔12aを開口して設けている。
【0041】
図13の霧化機1は、脱着プレート12の凹部12bに超音波振動子2を入れて、超音波振動子2の外周部分の上下にパッキン16を配置している。さらに、脱着プレート12の開口部にリングプレート18を固定している。リングプレート18は、超音波振動子2の上面に配置しているパッキン16を押圧して、超音波振動子2を凹部12bに防水構造で固定する。凹部12bは底に貫通孔12cを設けて、リード線19を外部に引き出している。
【0042】
図14の霧化機1は、パッキンとリングプレートを使用することなく、脱着プレート12の凹部12bに入れた超音波振動子2をコーキング材20で接着して防水構造で固定している。この超音波振動子2もリード線19を凹部12bの底部に開口している貫通孔12cから外部に引き出している。貫通孔12cとリード線19との間にもコーキング材20を充填して、水漏れしない防水構造としている。
【0043】
図15の霧化機1は、脱着プレート12に貫通孔12aを開口しており、この貫通孔12aに振動面2Aを位置させて、超音波振動子2を脱着プレート12の下面に固定している。超音波振動子2を脱着プレート12に固定するために、脱着プレート12の底面には固定具21を固定している。超音波振動子2は、外周部分の上下に配置したパッキン16を介して防水構造で脱着プレート12に固定している。固定具21は段差凹部を有するリング状で、外周縁部を貫通する固定ネジ22が脱着プレート12にねじ込まれて脱着プレート12に固定されている。固定具21は、段差凹部の底面で超音波振動子2の下面に配置しているパッキン16を押圧して、超音波振動子2を脱着プレート12に防水構造で固定する。固定具21は、段差凹部の底面に貫通孔21Aを設けており、ここからリード線19を外部に引き出している。
【0044】
図11と図12は、霧化機1を固定する霧化室4を示す。これ等の図に示す霧化室4は、ケーシング13の底面に開口部13Aを設けて、この開口部13Aを防水構造で閉塞するように脱着プレート12を固定している。脱着プレート12は、パッキン23を介して防水構造でケーシング13に固定される。脱着プレート12を固定するために、ケーシング13の底面には固定金具24を固定している。固定金具24はL字状で、これを貫通する止ネジ25で脱着プレート12を押圧して霧化室4のケーシング13に固定する。この構造で霧化室4に固定される複数の超音波振動子2は、ケーシング13の底面から上面に向かって混合液体を超音波振動させる。この脱着プレート12は、霧化室4のケーシング13の底面に、開口部13Aを閉塞するように、しかも脱着できるように装着される。
【0045】
脱着プレート12は、図16に示すように、霧化室4の混合液体中に浸漬して、混合液体を超音波振動させることもできる。この構造は、簡単に脱着プレート12を霧化室4に脱着できるように配置できる。混合液体中に浸漬される霧化機1は、たとえば図14に示す構造として、超音波振動子2の振動面2Aを除く部分を防水構造として脱着プレート12に固定している。
【0046】
霧化室4の混合液体が超音波振動子2や超音波電源3で高温に過熱されると、品質が低下することがある。この弊害は、超音波振動子2を強制的に冷却して解消できる。さらに、好ましくは超音波電源3も冷却する。超音波電源3は直接には混合液体を加熱することはないが、周囲を加熱して間接的に混合液体を加熱する。超音波振動子2や超音波電源3は、これ等に冷却パイプを熱結合する状態で配設、すなわち、冷却パイプを接触させる状態で配設して冷却できる。冷却パイプは、冷却機で冷却した液体や冷媒、あるいは地下水や水道水等の冷却水を流して超音波振動子と超音波電源を冷却する。
【0047】
さらに、図7に示す分離装置は、霧化室4の混合液体温度を制御する温度制御機構75を備える。温度制御機構75は、混合液体温度が所定の温度となるように混合液体を加温する。この温度制御機構75は、霧化室4に貯溜された混合液体の温度を温度センサー77で検出すると共に、加温器76を制御して混合液体の温度を設定温度に保持する。このように、温度制御機構75で液体の温度を制御する分離装置は、混合液体を効率よく霧状微粒子に霧化できる。
【0048】
混合液体の温度は、超音波振動で混合液体を霧状微粒子に霧化する効率に影響を与える。混合液体の温度が低くなると、霧状微粒子に霧化する効率が低下する。アルコール等の混合液体は温度を低くして、品質の低下を少なくできる。ただ、混合液体温度が低いと霧状微粒子に霧化する効率が低下するので、混合液体の温度は、混合液体が温度で変化するものにあっては劣化を防止しながら、効率よく霧状微粒子に霧化できる温度に設定される。温度が高くなっても品質の低下が少なく、あるいは問題にならない混合液体は、液体の温度を高くして効率よく霧状微粒子に霧化することができる。
【0049】
さらに、図7に示す分離装置は、霧化室4において、超音波振動されて混合液体面Wにできる液柱Pに送風機構27から風を吹き付けている。図の送風機構27は、液柱Pに風を吹き付けるファン29を備えている。このように、送風機構27で液柱Pに風を吹き付ける分離装置は、液柱Pの表面から効率よく霧状微粒子に霧化できる特長がある。ただ、本発明の分離装置は、図4ないし図6に示すように、必ずしも送風機構を設けて液柱に風を吹き付ける必要はない。
【0050】
空気分離機50は、霧化室4から供給された混合流体から空気を分離する。この空気分離機50は、空気透過膜51で内部を一次側通路52と二次側排気路53とに区画している。一次側通路52は、霧化機1に連結されて混合流体を通過させる。二次側排気路53は、空気透過膜51に透過させて混合流体から分離した空気を排気する。
【0051】
空気透過膜51は、空気のみを通過させて、混合液体を通過させない。したがって、この空気透過膜51は、混合液体を通過させないが空気を通過させるポアサイズの膜であるモリキュラーシーブを使用する。空気は、約80%の窒素と20%の酸素からなる。したがって、空気透過膜51は、窒素と酸素を通過させるポアサイズの膜である。この空気透過膜51のポアサイズは、好ましくは0.4nm〜0.5nmである。この空気透過膜51は、ポアサイズよりも大きいエタノール等の混合液体を通過させないが、ポアサイズよりも小さい窒素と酸素からなる空気を通過させる。以上のポアサイズの空気透過膜51は、たとえば、セラミックの表面にゼオライトをコーティングして製作される。
【0052】
空気分離機50は、一次側通路52を霧化室4に連結して、空気透過膜51の一次側表面に混合流体を接触させる。さらに、図4、図6、図7の装置は、二次側排気路53を強制排気機54に連結し、図5の装置は、一次側通路52に圧縮機55を連結して、一次側表面の圧力を反対側の二次側表面よりも高くして、混合流体の空気を空気透過膜51に透過させて、混合流体の空気の一部あるいは全部を分離している。
【0053】
強制排気機54は、空気を強制的に吸引して排出する真空ポンプ等の吸引ポンプである。強制排気機54は、吸入側を二次側排気路53に連結して、二次側排気路53の空気を強制的に排気する。空気が排気される二次側排気路53は、圧力が大気圧よりも低くなって、一次側通路52よりも低くなる。すなわち、一次側通路52の圧力が二次側排気路53よりも相対的に高くなる。この状態になると、混合流体に含まれる空気は、空気透過膜51を透過して、一次側通路52から二次側排気路53に通過して、混合流体から分離される。
【0054】
図5の装置は、圧縮機55で混合流体を一次側通路52に圧入する。圧縮機55は、吸入側を霧化室4に連結している。二次側排気路53は、大気に開放している。ただし、二次側排気路に強制排気機を連結して、二次側排気路の圧力を大気圧以下に減圧することもできる。圧縮機55は、混合流体を大気圧以上に加圧して一次側通路52に圧入して、一次側通路52の圧力を二次側排気路53よりも高くする。この状態で、混合流体に含まれる空気は、一次側表面と二次側表面の圧力差で空気透過膜51を透過する。空気透過膜51を透過する空気は、一次側通路52から二次側排気路53に移送されて、混合流体から分離される。この構造は、空気透過膜51の一次側表面と二次側表面の圧力差を大きくできる。このため、混合流体の空気を速やかに分離できる。圧縮機55が、高い圧力で混合流体を一次側通路52に圧入できるからである。
【0055】
さらに、図5の装置は、前段回収室60を介して圧縮機55の吸入側を霧化室4に連結している。分離装置は、前段回収室60として、サイクロン、パンチング板、デミスター、シェブロン、スクラバー、スプレー塔、静電回収機のいずれかを連結して霧状微粒子を回収することができる。図5の分離装置は、これらの機構を、空気分離機50と霧化室4との間に配置して前段回収室60としている。この装置は、前段回収室60で一部の霧状微粒子を回収した混合流体を空気分離機50に供給する。ただ、分離装置は、図示しないが、空気分離機と回収室との間に、サイクロン、パンチング板、デミスター、シェブロン、スクラバー、スプレー塔、静電回収機のいずれを連結して霧状微粒子を回収することもできる。
【0056】
空気分離機50で分離された空気は、混合液体を含まない空気である。図4の装置は、空気分離機50で分離した空気を搬送気体として霧化室4に供給している。空気分離機50で分離した空気を霧化室4に供給する装置は、霧化室4で効率よく霧状微粒子を霧化できる。それは、空気分離機50で混合流体から分離された空気が混合液体を含まないからである。また、空気分離機50で分離された搬送気体である空気は、外気熱交換器79で加温されて霧化室4に供給され、霧化室4において、霧状微粒子を効率よく発生させる。
【0057】
空気分離機50で空気の分離された混合流体は、空気の含有量が少なく、いいかえると、空気に対する霧状微粒子量が多くなって、霧状微粒子の混合液体が過飽和な状態となるので、回収室5において効率よく霧状微粒子を回収できる。回収室5に供給される混合流体は、空気分離機50で空気を分離しているので、霧化室4から排出される混合流体に比較して空気量が少なくなっている。
【0058】
空気分離機50で一部の空気が分離された混合流体は回収室5に移送される。混合流体は、送風機又は圧縮機からなる強制搬送機35で回収室5に供給される。強制搬送機35は、空気分離機50から回収室5に混合流体を供給するために、空気分離機50と回収室5との間に連結される。強制搬送機35は、空気分離機50で空気の一部を分離した混合流体を吸収して回収室5に供給する。
【0059】
図6と図7に示す装置は、強制搬送機35に圧縮機35Aを使用している。強制搬送機35に圧縮機35Aを使用すると、混合流体を大気圧以上に加圧して回収室5に供給できる。この分離装置は、回収室5において、気相中の混合液体の飽和蒸気分圧を大気圧下における飽和蒸気分圧よりも低下させて、霧状微粒子をより効果的に凝集させて回収できる。
【0060】
圧縮機35Aには、ピストン式の圧縮機、ロータリー式の圧縮機、ダイヤフラム式の圧縮機は、リショルム式の圧縮機等を使用できる。圧縮機35Aには、好ましくは混合流体を0.2〜1MPaの圧力に圧送できるタイプのものを使用する。
【0061】
強制搬送機35に圧縮機35Aを使用して、回収室5の圧力を高くする装置は、回収室5の排出側に絞り弁36を連結する。ただし、圧縮機が回収室に供給する混合流体の流量が多い場合、必ずしも回収室の排出側に絞り弁を設ける必要はない。回収室の排出側の通過抵抗が大きい場合、圧縮機が多量の混合流体を回収室に供給して、回収室の圧力を大気圧以上にできるからである。ただ、回収室の排出側に絞り弁を連結して、効率よく回収室を大気圧以上に加圧できる。絞り弁36は、回収室35Aから排出される混合流体の通過抵抗を大きくして、回収室5の圧力を高くする。絞り弁36には、開度を調整して混合流体の通過抵抗を調整できる弁、あるいはキャピラリチューブ等の細管でもって混合流体の通過抵抗を大きくしてなる配管、あるいはまた配管内に混合流体の通過抵抗を大きくする抵抗材を充填しているもの等を使用できる。絞り弁36が通過抵抗を大きくするほど、回収室5の圧力は高くなる。
【0062】
図17は、回収室5が大気圧以上に加圧されるにしたがって、混合流体である空気に含まれる混合液体のエタノール量が減少する状態を示している。このグラフからわかるように、混合流体の空気は、温度が高くなるにしたがって、気体の状態で含有できるエタノール量が増加する。しかしながら、圧力が高くなると気体の状態で含有できるエタノール量は急激に減少する。たとえば、30℃において、乾燥空気に含有できるエタノール量は、圧力を大気圧の0.1MPaから0.5MPaと高くすると、含有できるエタノール量は約1/5と著しく少なくなる。気体の状態で含有できる最大エタノール量が少なくなると、最大エタノール量よりも多量のエタノールは、全て過飽和な霧状微粒子の状態となって、効率よく回収できる。気体の状態で含有されるエタノールは、これを霧状微粒子にしないかぎり凝集して回収できない。また、超音波振動が混合液体を霧状微粒子の状態に霧化しても、これが気体の状態に気化してしまうと、凝集して回収できなくなる。このため、超音波振動で霧状微粒子になった混合液体は、これを気化させることなく、霧状微粒子の状態として回収することが大切である。また、霧状微粒子が気化しても、過飽和な状態として再び液化させて回収できる。すなわち、混合液体を効率よく回収するためには、霧状微粒子になった混合液体を混合流体に気化させる量をできるかぎり少なくすることが大切である。本発明は、霧状微粒子を含む混合流体を大気圧以上に加圧して、混合液体の飽和蒸気分圧を低くし、これによって混合流体に含まれる混合液体を気体の状態でなくて霧状微粒子の状態として効率よく回収する。混合流体を冷却することで飽和蒸気分圧を低くすることもできるが、加圧する方法は、圧縮機でもって極めて簡単に、しかも少ないエネルギーで効率よく飽和蒸気分圧を低くできる特徴がある。さらに、冷却しながら加圧することで、混合液体の飽和蒸気分圧をさらに低くして、混合液体をさらに効率よく回収するとも可能となる。
【0063】
圧縮機35Aが混合流体を圧縮すると、混合流体は断熱圧縮されて発熱する。また、混合流体が絞り弁36を通過すると、断熱膨張して冷却される。圧縮機35Aから回収室5に供給される混合流体は、霧状微粒子を効率よく回収するために冷却するのがよく、発熱すると回収効率が悪くなる。この弊害を少なくするために、図6の装置は、絞り弁36の排出側と、圧縮機35Aの排出側であって回収室5の流入側とを熱交換する排熱用熱交換器37を設けている。この排熱用熱交換器37は、絞り弁36の排出側で断熱膨張して冷却される混合流体でもって、圧縮機35Aで断熱圧縮して加熱された混合流体を冷却する。
【0064】
排熱用熱交換器37は、循環パイプ38の内部に冷媒を循環させている。循環パイプ38は、一方を絞り弁36の排出側に熱結合して、他方を圧縮機35Aの排出側に熱結合している。循環パイプ38を循環する冷媒は、絞り弁36の排出側で冷却される。ここで冷却された冷媒が圧縮機35Aの排出側を冷却する。循環パイプ38は、図示しないが、熱結合させる部分を二重管構造として、混合流体と冷媒とを熱結合している。
【0065】
さらに、図6に示す装置は、絞り弁36の排出側を、冷却用熱交換器33を冷却する凝縮器40に連結する第2排熱用熱交換器39を備える。この第2排熱用熱交換器39は、前述の排熱用熱交換器37と同じ構造で、絞り弁36の排出側で冷媒を冷却し、この冷却された冷媒で凝縮器40を冷却して、凝縮器40の内部を循環する冷媒を液化させる。
【0066】
図5ないし図7の装置は、霧化室4と空気分離機50と回収室5とを循環ダクト30で連結して、混合流体を霧化室4と回収室5とに循環させる。さらに、外気を外気供給装置78で吸入して霧化室4に供給している。外気供給装置78が外気を霧化室4に供給する装置は、外気の熱エネルギーを利用して、霧化室4の混合液体を効率よく霧化できる。外気供給装置78で吸入された外気が有する熱エネルギーは、霧化室4の混合液体を効率よく霧状微粒子に霧化し、さらに霧化された霧状微粒子を効率よく気化させる。霧化室4の混合液体は、供給される空気温度を高くして霧化効率を向上できるからである。外気供給装置78が吸入する外気は、それ自体が熱エネルギーを有する。外気に含まれる熱エネルギーを有効に利用して霧状微粒子を気化させる装置は、外気の熱エネルギーを有効に利用して効率よく混合液体を霧状微粒子に霧化し、また霧状微粒子を効率よく気化する。したがって、この装置は、霧化室4に供給する空気をヒーターやバーナー等で加熱することなく、霧化室4の混合液体を効率よく霧状微粒子に霧化し、また霧状微粒子を効率よく気化できる。外気供給装置78は、空気分離機50で排気される空気量に相当する空気を霧化室4に供給する。いいかえると、外気供給装置78から霧化室4に吸入される空気量が、空気分離機50で混合流体から分離して外部に排気される。
【0067】
図18に示す装置は、空気分離機を設けることなく、混合流体に含まれる炭化水素混合物の分離された空気を霧化室4に循環させる。霧化室4に循環される空気は、外気熱交換器79で加温される。外気熱交換器79は、外気の熱エネルギーで霧化室4に循環される循環空気を加温する。外気熱交換器79は、循環空気を通過させる配管に多数の放熱フィン(図示せず)を固定しており、この放熱フィンに強制送風ファン80で外気を送風して、外気で循環空気を加温する。
【0068】
図4の装置は、霧化室4の排出側と空気分離機50と回収室5の供給側とを循環ダクト30で連結して、回収室5の排出側と霧化室4の供給側とを循環ダクトで連結しない。この装置は、空気分離機50で分離した空気を霧化室4に循環させて、霧化室4で効率よく石油を霧状微粒子に霧化できる。石油を含まない空気を霧化室4に供給するからである。さらに、この装置は、循環空気を外気熱交換器79で加温してさらに石油の霧化を効率よくできる。また、この装置は、図の鎖線で示すように、空気分離機50で炭化水素混合物を分離した空気と、回収室5で炭化水素混合物を分離した両方の空気を霧化室4に循環させることもできる。
【0069】
図4ないし図7に示す回収室5は、霧状微粒子を冷却して凝集させる冷却用熱交換器33を内蔵している。冷却用熱交換器33は、熱交換パイプ34にフィン(図示せず)を固定している。熱交換パイプ34に冷却用の冷媒や冷却水を循環させて、冷却用熱交換器33を冷却する。霧化室4で霧化された霧状微粒子は、一部が気化して気体となるが、気体は回収室5の冷却用熱交換器33で冷却され、結露して凝集されて回収される。回収室5に流入される霧状微粒子は、冷却用熱交換器33に衝突し、あるいは互いに衝突して大きく凝集し、または冷却用熱交換器33のフィン等に衝突して大きく凝集して混合液体として回収される。霧状微粒子と気体を冷却用熱交換器33で凝集して回収した空気は、循環ダクト30を介して再び霧化室4に循環される。
【0070】
回収室5において、霧状微粒子をより速やかに回収するために、図19の回収室5は、混合液体を噴射するノズル6を備える。ノズル6は、循環ポンプ15を介して回収室5の底部に連結される。循環ポンプ15は、回収室5に回収された混合液体を吸入して、ノズル6から噴霧させる。
【0071】
図の分離装置は、回収室5の上部にノズル6を配設している。上部のノズル6は、下向きに混合液体を噴霧する。ノズル6から噴霧される混合液体は、霧化機1で霧化された霧状微粒子に比較して充分に大きな水滴であって、回収室5の内部を速やかに落下し、落下するときに、回収室5の内部に浮遊している霧状微粒子に衝突して、霧状微粒子を回収しながら落下する。したがって、回収室5に浮遊する霧状微粒子を効率よく速やかに回収できる。
【0072】
図の分離装置は、ノズル6を上部に配設しているが、回収室5の下部にノズルを配設することもできる。下部のノズルは、上向きに混合液体を噴霧する。このノズルは、回収室5の天井に混合液体を衝突させる速度で、あるいは、天井の近傍まで上昇する速度で混合液体を噴霧する。天井の近傍まで上昇するように噴霧される混合液体は、天井の近傍で下向きに方向を変えて落下するので、上昇するときと降下するときに霧状微粒子に接触して、霧状微粒子を効率よく回収する。
【0073】
図20の回収室5は、内部に複数枚の邪魔板7を配設している。邪魔板7は、隣接するものとの間に霧状微粒子を通過できる隙間を設けて、垂直の姿勢で配設している。垂直の邪魔板7は、霧状微粒子を表面に衝突させて付着する混合液体を自然に流下させて回収できる。図の邪魔板7は、表面を凹凸面として、霧状微粒子をより効率よく接触させて回収できるようにしている。
【0074】
さらに、図20の回収室5は、霧状微粒子を強制送風して撹拌するファン9を設けている。ファン9は、回収室5の霧状微粒子を撹拌する。撹拌される霧状微粒子は、互いに衝突して凝集し、あるいは、邪魔板7の表面に衝突して凝集する。凝集する霧状微粒子は、速やかに落下して回収される。図のファン9は、回収室5の霧状微粒子を下向きに送風して循環させる。
【0075】
図21の回収室5は、霧状微粒子を振動して互いに衝突する確率を高くする霧状微粒子振動器8を設けている。霧状微粒子振動器8は、回収室5の気体を振動させる電気振動−機械振動変換器と、この電気振動−機械振動変換器を駆動する振動電源とを備える。電気振動−機械振動変換器は、可聴周波数の音を放射するスピーカーや、可聴周波数よりも高い超音波を放射する超音波振動子等である。電気振動−機械振動変換器が、霧状微粒子を効率よく振動させるために、電気振動−機械振動変換器から放射される振動を回収室5で共振させる。このことを実現するために、電気振動−機械振動変換器は、回収室5で共振する周波数で振動させる。いいかえると、回収室5を電気振動−機械振動変換器から放射される振動に共振する形状に設計する。
【0076】
超音波は人間の可聴周波数を越える高い周波数であるので、耳には聞こえない。このため、超音波を放射する霧状微粒子振動器8は、回収室5の気体を激しく振動させて、いいかえると、電気振動−機械振動変換器の出力を極めて大きくして、人間に音の害を与えることがない。このため、超音波は霧状微粒子を激しく振動して、効率よく衝突させて、速やかに回収できる特長がある。
【0077】
以上の分離装置は、回収室5に、霧状微粒子を効率よく凝集させる装置を配設するので、霧状微粒子をより速やかに凝集させて高濃度の混合液体とすることができる。さらに、図示しないが、本発明の分離装置は、回収室に、混合液体を噴霧するノズルと、霧状微粒子を撹拌するファンと、霧状微粒子を振動させる振動器の全てを内蔵させて、最も効率よく霧状微粒子を凝集できる。また、霧状微粒子を凝集させるふたつの装置を内蔵して、霧状微粒子を効率よく凝集させることもできる。
【0078】
さらに、本発明は、混合液体を石油とし、超音波振動で石油を霧状微粒子に霧化して、含有成分が異なる炭化水素混合物に分離することができる。混合液体の石油を超音波振動で霧状微粒子に霧化して、含有成分が異なる炭化水素混合物に分離できるのは、石油にはカーボン数(n)が異なる複数の炭化水素を含有しており、この炭化水素がカーボン数(n)によって霧状微粒子に霧化され、あるいは霧化された成分を凝集して回収される状態が異なるからである。たとえば、石油は、カーボン数(n)が異なる複数の炭化水素を含有しているが、超音波振動で霧状微粒子に霧化すると、カーボン数(n)の小さい炭化水素は霧状微粒子に霧化されやすく、カーボン数(n)が大きい炭化水素は霧状微粒子に霧化されにくい。
【0079】
図22は、霧状微粒子に霧化した混合流体を多段に回収する装置を示す。この装置は、石油を40℃に加温する状態で、超音波振動で霧状微粒子に霧化する。霧化室4に供給される空気は、外気熱交換器79で加温される。外気熱交換器79は、外気に含まれる熱エネルギーで空気を加温して霧化室4に供給する。霧化された霧状微粒子は、搬送気体で空気に混合されて混合流体となる。混合流体に含まれる炭化水素混合物は、気化されないで残った粒径の大きなものを第1の回収装置200Aであるデミスター81にて回収する。第1の回収装置200Aのデミスター81は、シェブロン、パンチング板、メッシュ、デミスター、サイクロン、静電場回収装置、フィルター、スクラバー、超音波振動による霧状微粒子回収装置、キャピラリーの束、ハニカムのうち一つもしくは複数の組合せでもよい。
【0080】
第1の回収装置200Aのデミスター81で炭化水素混合物の一部を分離した搬送気体である空気は、ブロアー82で次の工程である第2の回収装置200Bに供給される。ブロアー82は、サクション側を霧化室4に連結し、排出側を次段の第2の回収装置200Bに連結している。この装置は、ブロアー82で霧化室4を大気圧より減圧し、第2の回収装置200Bを大気圧より加圧する。減圧された霧化室4は、石油の気化および霧化を促進する。加圧された第2の回収装置200Bは、石油の相対的蒸気圧を減らして凝縮を促進する。回収装置200は、霧化された気化ないしエーロゾル化した気相を冷却して炭化水素混合物を空気から分離して回収する。この図の回収装置200は、主冷却機83の流入側と排出側に回収用熱交換機84を多段に連結している。主冷却機83から近い順に冷媒を循環させることによって、進入する混合流体の熱を主冷却機83の出口気相に移動させると共に、主冷却機83の出口の冷熱を霧化部出口であって回収部入口の気相に移動させることができる。このようにワンパス方式で、石油の分離プロセスを構成することができる。この構成にすることによって、装置外部の空気が持つ熱を有効利用することができる。なお、回収装置200は、霧化室4から主冷却機83にかけて、カーボン数(n)が大きい炭化水素混合物から順に回収可能である。
【0081】
さらに、図23は、霧化室4を減圧し、回収装置200を加圧してなる石油の分離装置を示す。この装置は、図22に示す装置と同じように、霧化室4を減圧することによって石油の霧化を促進して、回収装置200では効率よく凝縮させて回収を促進させる。回収装置200に供給される混合流体は、断熱圧縮されて発熱する。発熱を熱交換機で回収して、霧化室4に供給される搬送気体の空気に供給して温度を上昇させる。霧化室4に供給される搬送気体の空気は、温度を高くして石油の霧化効率を高くできる。なぜなら、超音波振動による霧化においては、搬送気体の温度を高くして霧化そのものを促進できるからである。減圧された霧化室4に供給される搬送気体の空気は、断熱膨張して温度が低下するから、この空気の温度を上昇させる熱源として、回収装置200の断熱圧縮熱を移動させることが望ましい。
【0082】
霧化された石油の霧状微粒子を含む混合流体は、第1の回収装置であるデミスター81に通過させる。デミスター81は、気化やエーロゾル化していない比較的大きな粒径の霧状微粒子を、機械的に接触させて凝集して回収する装置である。この図の装置は、図22の装置と同じように、主冷却機83の流入側と排出側に主冷却機83を挟むようにして、多段の熱交換機84からなる回収装置200を連結している。多段の熱交換器84は、熱移動させることによって、装置を運転するエネルギーを節約することができる。すなわち、主冷却機83の出口の気相が持つ冷熱を加圧回収部分入口に与えてやる。回収装置200の出力側は、調整弁85を介して霧化室4に連結している。調整弁85、85は、スプリング式のものを使用することができるが、それに限るものではない。スプリング式の調整弁は、圧力が上昇して設定した圧力に達すると開弁する。搬送気体を移送するポンプは、ダイアフラム式、あるいはピストン式のものが望ましいがそれに限定するものではない。
【0083】
最終的に回収装置から出て行く搬送気体に含まれる炭化水素混合物は、吸着装置(図示せず)にて回収することもできる。吸着装置は、活性炭、ゼオライト、シリカ、セラミックス多孔体などを充填した吸着塔を備える。吸着装置は、搬送気体に含まれる希薄な炭化水素混合物を吸着して回収する。吸着装置は、吸着した炭化水素混合物を加熱して脱着するが、この装置はスイングタイプのものが望ましい。スイングタイプの吸着装置は二塔方式として、一方の吸着塔で吸着させている間に、もう一方の吸着塔で脱着回収する。吸着装置は、吸着塔がローター式のものでも良く、ハニカムに活性炭、ゼオライト、シリカ、セラミックス多孔体を担持させ、ローターの回転中心の片側で吸着回収してもう一方で加熱脱着回収させる。
【0084】
図24は、ゼオライト膜の空気分離膜を利用した分子ふるい膜を併用したタイプの石油の分離装置を示す。この装置は、混合流体から炭化水素混合物を分離する空気分離機50を備える。空気分離機50は、空気透過膜51としてゼオライト膜を備える。空気透過膜51のゼオライト膜は、石油を構成する炭化水素混合物の分子径よりも小さく、霧化部分に導入する搬送気体である空気を構成する窒素や酸素の分子径よりも大きな細孔を有する。すなわち、搬送気体を透過させて炭化水素混合物を透過させない空気透過膜である。空気透過膜は、ゼオライト膜に代わって、シリカ、セラミックス多孔体なども使用できる。
【0085】
この装置は、霧化室4の流入側に外気熱交換器79を連結している。外気熱交換器79は、外部の余剰熱を有効利用して霧化室4に供給する搬送気体の空気を加温する。さらに、図の装置は、外気熱交換器79に余剰熱交換器86を連結している。余剰熱交換器86は、他の装置から発生する余剰熱を有効利用して外気を加温する。余剰熱交換器86で加温された外気は、外気熱交換器79で霧化室4に供給される搬送気体の空気を加温する。外気熱交換器79で加温された搬送気体の空気が霧化室4に供給されて、霧化室4が石油を霧状微粒子に霧化する。霧化された霧状微粒子は、搬送気体に拡散されて混合流体となる。この状態で、霧状微粒子は一部が気化され、またはエーロゾル化されて回収装置200に向かって移送される。混合流体に含まれる霧状微粒子であって、比較的大きな粒径のものは第1の回収装置200Aであるデミスター81で機械的に接触回収される。図の装置は、第1の回収装置200Aであるデミスター81を2段に連結している。1段目のデミスター81Aは、2段目のデミスター81Bに比較して、カーボン数(n)が大きい炭化水素混合物が回収される。デミスター81を透過した混合流体は、第2の回収装置200Bである分子ふるい効果を有する空気分離機50に供給される。空気分離機50は、空気透過膜51のゼオライト膜で混合流体から空気のみを分離して外部に排気する。空気透過膜51のゼオライト膜を透過しない炭化水素混合物は、空気分離機50で空気から分離して回収される。空気分離機50は、一次通路側を加圧しても良く、また冷却しても良い。
【0086】
さらに、図の分離装置は、太陽電池87や、燃料電池、もしくは風力発電で発電される電力を電源として使用している。この装置は、従来の蒸留装置のように、駆動するためにボイラーを使用しないので、窒素酸化物、硫黄酸化物、浮遊性粒状物質また温暖化ガスの排出をなくすることができる。また、この装置によると、各精油所ごとに、これら有害物質の対策設備を必要としないので、我が国のトータルで見た場合のコスト削減にも効果がある。火力発電所、原子力発電所など大規模な温暖化物質あるいは有害物質の対策を講じれば良く、環境対策のためのスケールメリットが生じる。また、超音波発振回路では、数10%の割合で熱が生じる。この熱は回収して霧化室4に供給する搬送気体を加温し、あるいは霧化室4の石油を加温することで有効利用することが可能になる。
【0087】
図25の石油の分離装置は、複数の霧化室4を直列に連結している。この図の装置は、霧化室4と回収装置200を直列に4段に連結している。石油は、第1、第2、第3、第4の霧化室4に順番に移送される。移送されるにしたがって、順番にカーボン数(n)の小さい炭化水素混合物が霧状微粒子として霧化室4の石油から分離される。したがって、前段の霧化室4の石油は、後段の霧化室4の石油に比較してカーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量が高くなっている。霧化室4の石油温度は、前段を後段より低くしている。後段の霧化室4の石油は、前段の霧化室4の石油に比較して、カーボン数(n)の大きい炭化水素混合物の含有量が多い石油となるので、次第に石油の温度を高くして霧状微粒子に霧化する効率を高くする。また、前段の霧化室4の石油の温度を低くして、前段の霧化室4と回収装置200では、カーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量の多い石油を分離することができる。回収装置200は、混合流体を冷却して混合流体に含まれる炭化水素混合物を空気から分離する。
【0088】
この図の分離装置は、常温の石油原料を第1の霧化室4Aに供給する。第1の霧化室4Aは、石油温度を他の霧化室4の石油温度に比較して最も低い温度として、超音波振動で霧状微粒子に霧化する。霧化された霧状微粒子を含む混合流体は、カーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量が多い。このカーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量が多い石油は、第1の回収装置200Aで空気から分離して回収される。第1の霧化室4Aでカーボン数(n)の小さい炭化水素混合物の含有量の多い石油が分離された残存石油は、第2の霧化室4Bに供給される。第2の霧化室4Bの石油は、第1の霧化室4Aの石油よりもカーボン数(n)の多い炭化水素混合物の含有量が多くなるので、第2の霧化室4Bの石油は、第1の霧化室4Aの石油よりも石油温度が高くなるように加温される。第2の霧化室4Bは、石油温度を高くして、超音波振動で霧状微粒子を発生させる。第2の霧化室4Bで発生する霧状微粒子は、第1の霧化室4Aで発生する霧状微粒子に比較して、カーボン数(n)の大きい炭化水素混合物の含有率が多くなる。第2の霧化室4Bには、第1の回収装置200Aを通過した混合流体が供給される。第2の霧化室4Bで発生する混合流体は、第2の回収装置200Bに供給される。第2の回収装置200Bは、第2の霧化室4Bで発生する霧状微粒子を回収する。ただ、第1の霧化室4Aで発生する霧状微粒子の一部は、第1の回収装置200Aを通過して第2の回収装置200Bで回収される。第2の回収装置200Bで回収される炭化水素混合物は、第1の回収装置200Aで回収される炭化水素混合物に比較してカーボン数(n)の大きい炭化水素混合物の含有量が多い石油となる。第2の霧化室4Bで炭化水素混合物が分離された残存石油は、第3の霧化室4Cに供給される。同じようにして、第3の霧化室4Cで炭化水素混合物が分離された残存石油が第4の霧化室4Dに供給される。混合流体は、第1の回収装置200A、第2の回収装置200B、第3の回収装置200C、第4の回収装置200Dを通過して、第1〜第4の回収装置200で次第にカーボン数(n)の大きい炭化水素混合物の含有量が多い石油が分離して回収される。以上のように、順に次第に石油温度を高くして、次第にカーボン数(n)が大きい炭化水素混合物の含有量の多い石油を分離できる。
【0089】
図の装置は、最後に残った残油の持つ熱を残油熱交換器88で回収される。以上の実施例は、第1の霧化室4Aの石油を加熱しないが、この石油を加熱することもできる。また、霧化室4の外側を断熱して、装置全体でのエネルギー使用を極力小さくすることができる。以上の装置は、石油をカーボン数(n)が異なる炭化水素混合物の含有量で分離するので、原油から軽油、灯油、ナフサ等に分離するのに適している。
【0090】
表1ないし表3は、本発明の分離方法で分離されたガソリンの、分離前と分離後の成分を示している。ただし、この試験は、市販ガソリンを容器に入れ、液面下から2.4MHz、16Wの超音波を照射して、石油温度を28℃から開始して霧状微粒子に霧化させて超音波霧化前後の石油成分を測定したものである。
【0091】
分離方法において、霧化室4の霧化面に搬送気体として空気を20リットル/分にて導入し、導入空気の温度を23℃とする。霧化時間は15分。硫黄分はJIS K 2541−2に規定する微量電流滴定式酸化法を使用する。ガソリン中のPONA、炭化水素成分はJIS K 2536−2に規定するガスクロマトグラフィー法にて全成分試験を行い、炭素鎖長ごと種別ごとに積算し示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
「霧化処理前のデーター」、「霧化処理後のデーター」は、超音波霧化処理前後のガソリンの測定結果を示している。「霧化部気相中濃度のデーター」は、超音波霧化前後のガソリン重量およびその組成から物質収支に基づいて計算したものである。このとき、超音波の生成条件から見てキャビテーションによるクラッキングはほとんど生じていないと思われるので、石油成分の低分子化は起こっていない。
【0096】
図26は、「霧化処理前」の各炭素鎖長の各成分濃度に対する「霧化部気相中濃度」の各炭素鎖長の各成分濃度の変化比率、すなわち分離比率を見たものである。分離度1は元の石油成分が溶液中に残留する比率と気相中に分配する比率が等しく、分離度が1を越えると成分が霧状微粒子として混合流体に移行しやすく、1以下であると残存石油側に留まりやすいことを示している。この図から明らかなように、カーボン数(n)の少ない短い炭素鎖長のものほど、霧状微粒子として混合流体に移行しやすい。
【0097】
また、「霧化部気相中濃度」と「霧化処理前」の成分組成を比較すると、気相中パラフィン類およびオレフィン類の割合が増加しており、残油中のナフテン類およびアロマ類の濃度が増加している。本発明の分離方法は、以上のように石油組成を大きく変化させることが可能である。また消費エネルギーを測定したところ、ガソリンの分離試験の場合も、超音波の振動エネルギー(16J/s)と気相エンタルピー減少(3.4J/s)の合計値がガソリンの気化エネルギー(52J/s)を下回り、省エネルギーによってガソリンの超音波霧化分離が可能である。
【0098】
同時に「霧化処理前」と「霧化気相中濃度」の硫黄濃度を比較すると、1/3程度に低減されていることがわかる。このことは、2段の霧化処理によって、ガソリン中の硫黄濃度を10ppm以下に低減できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図8】霧化室と霧化機の一例を示す概略断面図である。
【図9】超音波振動子と脱着プレートの連結構造の一例を示す拡大断面図である。
【図10】図9に示す脱着プレートの平面図である。
【図11】脱着プレートを霧化室に装着した状態を示す断面図である。
【図12】図11に示す脱着プレートと霧化室の連結構造を示す拡大断面図である。
【図13】超音波振動子と脱着プレートの連結構造の他の一例を示す拡大断面斜視図である。
【図14】超音波振動子と脱着プレートの連結構造の他の一例を示す拡大断面図である。
【図15】超音波振動子と脱着プレートの連結構造の他の一例を示す拡大断面図である。
【図16】脱着プレートを霧化室に配置する他の一例を示す断面図である。
【図17】加圧下における空気中の絶対エタノール量を示すグラフである。
【図18】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図19】回収室の一例を示す概略断面図である。
【図20】回収室の他の一例を示す概略断面図である。
【図21】回収室の他の一例を示す概略断面図である。
【図22】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図23】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図24】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図25】本発明の他の実施例にかかる液体の分離装置を示す概略構成図である。
【図26】霧化処理前に対する霧化部気相中の各炭素鎖長の各成分濃度の分離比率を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1…霧化機
2…超音波振動子 2A…振動面
3…超音波電源
4…霧化室 4A…第1の霧化室
4B…第2の霧化室
4C…第3の霧化室
4D…第4の霧化室
5…回収室
6…ノズル
7…邪魔板
8…ミスト振動器
9…ファン
10…ポンプ
11…原液槽
12…脱着プレート 12A…表面プレート 12B…裏面プレート
12a…貫通孔 12b…凹部
12c…貫通孔
13…ケーシング 13A…開口部
15…循環ポンプ
16…パッキン
17…蝶番
18…リングプレート
19…リード線
20…コーキング材
21…固定具 21A…貫通孔
22…固定ネジ
23…パッキン
24…固定金具
25…止ネジ
27…送風機構
29…ファン
30…循環ダクト
33…冷却用熱交換器
34…熱交換パイプ
35…強制搬送機 35A…圧縮機
36…絞り弁
37…排熱用熱交換器
38…循環パイプ
39…第2排熱用熱交換器
40…凝縮器
50…空気分離機
51…空気透過膜
52…一次側通路
53…二次側排気路
54…強制排気機
55…圧縮機
60…前段回収室
75…温度制御機構
76…加温器
77…温度センサー
78…外気供給装置
79…外気熱交換器
80…強制送風ファン
81…デミスター 81A…1段目のデミスター
81B…2段目のデミスター
82…ブロアー
83…主冷却機
84…熱交換機
85…調整弁
86…余剰熱交換器
87…太陽電池
88…残油熱交換器
100…霧化装置
200…回収装置 200A…第1の回収装置
200B…第2の回収装置
200C…第3の回収装置
200D…第4の回収装置
W…混合液体面
P…液柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含む混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とし、混合流体から空気を分離して霧化成分を回収して、含有成分量の異なる液体に分離する分離方法であって、
霧化される液体の液面に、外気の熱エネルギーで加熱された搬送気体を供給しながら液体を霧化させる液体の分離方法。
【請求項2】
搬送気体が、混合流体から分離された空気を含む請求項1に記載される液体の分離方法。
【請求項3】
搬送気体が、空気分離機(50)で混合流体から分離された空気を含む請求項1にに記載される液体の分離方法。
【請求項4】
複数の成分を含む混合液体を超音波振動で霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とし、混合流体から空気を分離して霧化成分を回収して、含有成分量の異なる液体に分離する分離方法であって、
霧化される液体の液面に外気を供給し、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら液体を霧化させる液体の分離方法。
【請求項5】
分離される混合液体が、原油、石油、揮発油、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油、重油、もしくはこれらを触媒でクラッキング処理したもののうちいずれか、もしくはそれらの混合物である請求項1又は4に記載される液体の分離方法。
【請求項6】
混合液体を、カーボン数(n)が異なる炭化水素混合物に分離する請求項5に記載される液体の分離方法。
【請求項7】
混合液体がアルコール類と水の混合液体である請求項1又は4に記載される液体の分離方法。
【請求項8】
複数の成分を含む混合液体を超音波振動させて霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とする霧化装置(100)と、この霧化装置(100)で得られる混合流体から空気を分離して霧化成分を回収する回収装置(200)とを備え、霧化装置(100)で混合液体を霧状微粒子に霧化して混合流体とし、この混合流体から霧化された液体を分離して、含有成分量の異なる液体に分離する分離装置であって、
超音波振動で霧化される液体の液面に供給する搬送気体を加温する外気熱交換器(79)を設けており、この外気熱交換器(79)で加温された搬送気体を霧化装置(100)に供給し、霧化装置(100)が、外気の熱エネルギーで加温された搬送気体を液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる液体の分離装置。
【請求項9】
外気熱交換器(79)が、混合流体から分離された空気を含む搬送気体を加温して霧化装置(100)に供給する請求項8に記載される液体の分離装置。
【請求項10】
外気熱交換器(79)が、空気分離機(50)で混合流体から分離された空気を含む搬送気体を加温して霧化装置(100)に供給する請求項8に記載される液体の分離装置。
【請求項11】
複数の成分を含む混合液体を超音波振動させて霧状微粒子に霧化して霧状微粒子と空気との混合流体とする霧化装置(100)と、この霧化装置(100)で得られる混合流体から空気を分離して霧化成分を回収する回収装置(200)とを備え、霧化装置(100)で混合液体を霧状微粒子に霧化して混合流体とし、この混合流体から霧化された液体を分離して、含有成分量の異なる液体に分離する分離装置であって、
超音波振動で霧化される液体の液面に外気を供給する外気供給装置(78)を設けており、この外気供給装置(78)が外気を霧化装置(100)に供給し、霧化装置(100)が、外気の熱エネルギーを液面に供給しながら超音波振動で液体を霧化させる液体の分離装置。
【請求項12】
霧化装置(100)に供給される混合液体が、原油、石油、揮発油、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油、重油、もしくはこれらを触媒でクラッキング処理したもののうちいずれか、もしくはそれらの混合物である請求項8又は11に記載される液体の分離装置。
【請求項13】
混合液体を、カーボン数(n)が異なる炭化水素混合物に分離する請求項12に記載される液体の分離装置。
【請求項14】
混合液体が、アルコール類と水の混合液体である請求項8又は11に記載される液体の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−51442(P2006−51442A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234904(P2004−234904)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(503268143)超音波醸造所有限会社 (20)
【Fターム(参考)】