説明

液体吐出ヘッドおよび供給路接続部材

【課題】 供給路部材と弾性部材との接続部分からの液体漏れの発生を抑えつつ、供給路部材を弾性部材の開口部に挿入する際に要する力を低減することが可能な供給路接続部材を提供する。
【解決手段】 供給路接続部材は、液体を供給する供給路部材と、供給路部材が挿入され、供給路部材によって外周方向へ押圧される内壁を備える開口部が設けられた弾性部材と、弾性部材を収容する収容部材と、供給路部材の挿入方向に関して弾性部材を押圧する押圧部材と、を有する。ここで、弾性部材には、押圧される内壁と外周方向に関して重ならない位置に、挿入方向に関して収容部材と押圧部材とで挟持された挟持部が形成されている。更に、供給路部材が開口部に挿入された状態で、開口部に対応する弾性部材の外周部には、外周方向に関して収容部材に当接される当接部と、外周方向に関して収容部材に当接されない非当接部と、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに接続されて液体を供給する供給路接続部材と、に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェット記録ヘッドにインクを供給する際に、インクジェット記録ヘッドに対してインク供給針(供給路部材)を接続し、インク供給針を介してインクを供給する方法がある。この場合、インク供給針とインクジェット記録ヘッドとが接続されたジョイント部からインク漏れが発生しないように、ジョイント部に弾性を有するシール部材(弾性部材)を設ける構成が知られている。具体的には、シール部材に設けた開口部にインク供給針を挿入し、インク供給針によってシール部材を開口部の外周方向へ押圧する構成である。特許文献1には、インク供給針を用いてインクを供給する際に、インクを収容するインクカートリッジ側に弾性を有する部材(特許文献1におけるジョイント部材11)を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3789125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インク供給針をシール部材に設けた開口部に挿入してインク供給針でシール部材を押圧する場合には、シール部材の開口部を外周方向へ押し広げるため、インク供給針を挿入する際に力を要する。特に、シール部材をインクの色数が多い場合などはインク供給針の本数も多くなるため、インク供給針をジョイント部に挿入する際に要する力が大きくなってしまう。シール部材の押圧される部分の面積が小さいと挿入に必要な力も少なくて済むが、この部分の面積を十分に確保しないと、インク漏れが発生してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、供給路部材と弾性部材との接続部分からの液体漏れの発生を抑えつつ、供給路部材を弾性部材の開口部に挿入する際に要する力を低減することが可能な液体吐出ヘッドおよび供給路接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の供給路接続部材は、液体を供給する供給路部材と、前記供給路部材が挿入され、前記供給路部材によって外周方向へ押圧される内壁を備える開口部が設けられた弾性部材と、前記弾性部材を収容する収容部材と、前記供給路部材の挿入方向に関して前記弾性部材を押圧する押圧部材と、を有する供給路接続部材において、前記弾性部材には、前記押圧される内壁と前記外周方向に関して重ならない位置に、前記挿入方向に関して前記収容部材と前記押圧部材とで挟持された挟持部が形成されており、前記供給路部材が前記開口部に挿入された状態で、前記開口部に対応する前記弾性部材の外周部には、前記外周方向に関して前記収容部材に当接される当接部と、前記外周方向に関して前記収容部材に当接されない非当接部と、が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、供給路部材と弾性部材との接続部分からの液体漏れの発生を抑えつつ、供給路部材を弾性部材の開口部に挿入する際に要する力を低減することが可能な液体吐出ヘッドおよび供給路接続部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドとインク供給針ユニットを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドを示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る第1の実施形態におけるジョイント部を示す断面斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態におけるジョイント部を示す断面図である。
【図5】本発明に係る第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドに対してインク供給針を接続する工程を説明するための断面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施形態におけるジョイント部を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第2の実施形態におけるジョイント部を示す断面図である。
【図8】本発明に係る第2の実施形態における、インクジェット記録ヘッドに対してインク供給針を接続する工程を説明するための断面図である。
【図9】本発明に係るその他の実施形態におけるジョイント部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッド10とインク供給針ユニット90とを接続する前のそれぞれの斜視図である。図1(a)に示すように、インクジェット記録ヘッド10は、インク供給針91が挿入される開口部を形成するジョイント部20が12箇所設けられている。また、図1(b)に示すように、インク供給針ユニット90は、インクをインクジェット記録ヘッド10に供給する供給路部材としてのインク供給針91を12本有している。インクジェット記録ヘッド10には、メインタンク(不図示)と連通するインク供給針91を介して、12箇所のジョイント部20からインクが供給される。そして、供給されたインクを、インクジェット記録ヘッド10の下面に設けられた吐出部よりインク滴として吐出し、被記録媒体への印刷を行う。ジョイント部20とこれに挿入されるインク供給針91とで供給路接続部材を構成している。
【0011】
図2は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド10のジョイント部20を形成する部材を分解して示した分解斜視図である。ジョイント部20は、12個のシール部材30と、枠体40に一体的に形成され、シール部材30を収容するハウジング41と、第一の押さえ部材50と、第一の押さえ部材50の開口部51を塞ぐフィルム60と、第二の押さえ部材70で形成されている。
【0012】
後で詳細に説明するが、第一の押さえ部材50は、シール部材30の外周部をインク供給針91の挿入方向に関してハウジング41の上面45と挟んで固定し、シール部材30に挟持部32(図3)を形成する。また、第二の押さえ部材70は、第一の押さえ部材50の更に外側から、シール部材30の挟持部32と第一の押さえ部材50とを、ハウジング41と挟んで固定する。第二の押さえ部材70は、枠体40に対して7本のビス80で固定されている。
【0013】
フィルム60は、インク供給針91をジョイント部20に挿入する前は、第一の押さえ部材50の開口部51を密閉している。そのため、インクジェット記録ヘッド10の吐出部を保湿するために、インクジェット記録ヘッド10内に保湿用の液体を充填していても、ジョイント部20からのインク漏れを防ぐことができる。フィルム60は、第一の押さえ部材50に対して熱溶着により固定されている。なお、図2では、インク供給針91が挿入されて穴が開いた後のフィルム60を示している。
【0014】
本実施形態において、ジョイント部20を形成する部材に用いた材料は以下の通りである。弾性を有する弾性部材としてのシール部材30には熱可塑性エラストマーが用いられている。枠体40およびこれに一体的に形成された収容部材としてのハウジング41には変性ポリフェニレンエーテルを用いられている。押圧部材としての第一の押さえ部材50にはポリプロピレン、フィルム60にはポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの積層物、別の押圧部材としての第二の押さえ部材70にはSUS304、がそれぞれ用いられている。
【0015】
図3は、本実施形態のジョイント部20の断面斜視図である。図3は、インク供給針91がジョイント部20に挿入される前の状態を示す。シール部材30には、インク供給針91が挿入される開口部31が設けられている。なお、インク供給針91は、ポリプロピレンにより形成されている。
【0016】
図5は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド10のジョイント部20に対して、インク供給針ユニット90のインク供給針91を挿入してインクジェット記録ヘッド10に接続する工程を説明するための断面図である。
【0017】
図5(a)は、インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入される前の状態である。接続動作が開始されると、インク供給針91がフィルム60を貫通する(図5(b))。さらに進むと、インク供給針91がシール部材30の開口部31の上部に当接する(図5(c))。インク供給針91は、シール部材30の開口部31の上部及び開口部31の内壁と当接しながら、シール部材30をインク供給針91の挿入方向に関するハウジング41の下流側に引きずりこむように進む(図5(d))。図5(e)の状態で、インク供給針91がジョイント部20に挿入され、接続動作が完了となる。
【0018】
図4は、本実施形態のジョイント部20の断面図である。ここで、図4を用いて、インク供給針91、シール部材30、ハウジング41、のそれぞれの径の寸法とそれらの大小関係について説明する。
【0019】
インク供給針91の外径DnはΦ2.6mmである。ハウジング41には、第一の収容部としての第一のハウジング開口部42と、これより径の小さい第二の収容部としての第二のハウジング開口部43とが設けられている。第一のハウジング開口部42の内径Dh1はΦ5.9mm、第二のハウジング開口部43の内径Dh2はΦ4.0mmである。また、インク供給針91が挿入される前のシール部材30に設けられた、インク供給針91と当接する開口部31の内径DiはΦ1.6mmである。また、シール部材30のうちの、第一のハウジング開口部42に収められる第一の被収容部33の外径Do1はΦ5.7mm、第二のハウジング開口部43に収められる第二の被収容部34の外径Do2はΦ2.8mmである。
【0020】
すなわち、インク供給針91の外径Dnとシール部材30の開口部31の内径Diとの差Dn−Diは、1.0mmとなっており、インク供給針91によってシール部材30の開口部31は外周方向へ向かって押されることになる。これに対して、第一のハウジング開口部42の内径Dh1とこれに収められるシール部材30の第一の被収容部33の外径Do1との差は0.2mmであり、Dn−Diよりも小さい。一方で、第二のハウジング開口部43の内径Dh2とこれに収められるシール部材30の第二の被収容部34の外径Do2との差は、1.2mmであり、Dn−Diよりも大きい。
【0021】
図6は、本実施形態のジョイント部20を示す断面図であり、インク供給針91が挿入される前のシール部材30の状態を示している。また、インク供給針91については、そのジョイント部20への接続動作を完了した状態における位置に図示している。上述のジョイント部20の径の寸法によって、インク供給針91とシール部材30との干渉部分120に対して、第一の被収容部33と第一のハウジング開口部42との空間が小さく、第二の被収容部34と第二のハウジング開口部43との空間が大きくなっている。
【0022】
そのため、インク供給針91が挿入され、シール部材30の開口部31がインク供給針91によって外周方向へ押されることで、シール部材30の第一の被収容部33には、第一のハウジング開口部42と当接する当接部33aが形成される(図5(e))。この当接部33aが形成されることで、シール部材30の位置が固定される。
【0023】
また、シール部材30の第二の被収容部34は、挿入方向の下流側に引きずられるように変形される。これにより、第二の被収容部34には、第二のハウジング開口部43と当接されず、第二のハウジング開口部43との間に空間を備え、第二のハウジング開口部43に当接されない非当接部34aが形成される。
【0024】
このように、インク供給針91の挿入が完了した状態では、シール部材30の開口部31はインク供給針91に押圧される。また、開口部31に対応するシール部材30の外周部では、当接部33aと非当接部34aとが形成される。そのため、当接部33aでシール部材30の位置を固定しつつ、ハウジング41から内方へ押されない非当接部34aが形成されることにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。なお、シール部材30に第二の被収容部34が設けられていない場合の方が、インク供給針91を挿入する際に要する力を抑えることができるが、この場合は、インク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分31a(図5(e))の面積が小さくなる。そのため、インク供給針91とシール部材30の開口部31との間からインク漏れが発生する恐れが高くなってしまう。そこで、本実施形態は、インク供給針91に押圧される開口部31の内壁部分31aの面積を十分に確保しつつ、シール部材30の開口部31の外周部では、ハウジング開口部に当接されない部分が形成された構成である。したがって、インク漏れの発生を抑制しつつ、インク供給針91を挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0025】
なお、図4に示すように、第一のハウジング開口部42には、第一のハウジング開口部42と第二のハウジング開口部43との内径の差によって第一のハウジング開口部42の底面44が設けられている。インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入される前の状態では、この底面44に対して、シール部材30の第一の被収容部33が当接されている。インク供給針91が挿入されると、この当接部よりも内側のシール部材30の部分は、挿入方向の下流側に引きずられて変形して、第二のハウジング開口部43に収められることになる(図5(d)、図5(e))。
【0026】
ここで、図5(e)を用いて、第一の押さえ部材50とハウジング41の上面45とでシール部材30の外周部が挟持されて形成されている挟持部32の位置について説明する。
【0027】
挟持部32が、シール部材30の開口部31の外周方向に関して、インク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分31aと重なる位置に形成されている場合には、シール部材30の外周方向への変形がおこりにくくなる。これにより、インク供給針91を開口部31に挿入する際に要する力が大きくなってしまう。
【0028】
そのため、本実施形態では、挟持部32が、シール部材30の開口部31の外周方向に関して、シール部材30がインク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分31aと重ならない位置に形成されている。これにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0029】
さらに、上述した位置に挟持部32が形成されていることで、インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入された状態で発生する、シール部材30の開口部31の外周方向に向かう応力が、挟持部32に加わることを抑制できる。したがって、インク供給針91が挿入された状態で発生する応力による挟持部32の変形を抑え、その部分からのインク漏れの発生を抑制できる。
【0030】
また、図4や図5に示すように、インク供給針91の先端部は略円錐の形状となっており、また、シール部材30の開口部31のインク供給針91の挿入方向に関する上流側部分も、下流方向に向かって開口部の断面積が小さくなるテーパ面を有している。これにより、インク供給針91を挿入した際に、より下流側に挿入しやすい構成となっている。
【0031】
更に、剛性の高い厚み1mmのSUS304を第二の押さえ部材70として使用しているため、物流期間中に第一の押さえ部材50がシール部材30に押されてクリープ変形することを抑制することができる。また、第一の押さえ部材50とハウジング41の上面45とに挟持されたシール部材30の挟持部32からのインク漏れの発生を抑制することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、インク漏れの発生を抑制しつつ、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることが可能なインクジェット記録ヘッドを提供することができる。本実施形態のようにジョイント部20の数が12箇所と多い場合は、インク供給針91を挿入する際に要する力が大きくなってしまうため、特に本実施形態の構成が有効となる。
【0033】
本実施の形態では、インク供給針91の挿入方向に直交するインク供給針91、シール部材30の開口部31、ハウジング41の開口部の断面形状は円形であるが、同様の効果が得られれば、他の形状であってもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態のジョイント部20の断面図である。シール部材30の第二の被収容部34の外径Do2は、Φ3.3mmである。被収容部34の外径はインク供給針91の挿入方向に関する下流側に向かって小さくなっており、テーパ面34bが形成されている。第二の被収容部34の外径Do2の部分は、ハウジング41の第三の収容部としての第三のハウジング開口部46の内部に収容されている。この第三のハウジング開口部46の内径Dh3はΦ4.5mmであり、深さは0.4mmである。これらの構成が第1の実施形態と異なっているが、その他のインク供給針91、シール部材30、ハウジング41、のそれぞれの径の寸法やジョイント部20の構成などは、第1の実施形態と同様である。
【0035】
図8は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド10のジョイント部20に対して、インク供給針ユニット90のインク供給針91を挿入してインクジェット記録ヘッド10に接続する工程を説明するための断面図である。
【0036】
図8(a)は、インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入される前の状態である。接続動作が開始されると、インク供給針91がフィルム60を貫通する(図8(b))。さらに進むと、インク供給針91がシール部材30の開口部31の上部に当接する(図8(c))。インク供給針91は、シール部材30の開口部31の上部及び開口部31の内壁と当接しながら、シール部材30をインク供給針91の挿入方向に関するハウジング41の下流側に引きずりこむように進む(図8(d))。図8(e)の状態で、インク供給針91がジョイント部20に挿入され、接続動作が完了となる。
【0037】
本実施形態においても、第一のハウジング開口部42の内径Dh1とシール部材30の第一の被収容部33の外径Do1との差は0.2mmであり、インク供給針91の外径Dnとシール部材30の開口部31の内径Diとの差Dn−Diよりも小さい。また、第三のハウジング開口部46の内径Dh3とシール部材30の第二の収容部34の外径Do2との差は1.2mmで、Dn−Diよりも大きい。
【0038】
したがって、インク供給針91が挿入され、シール部材30の開口部31がインク供給針91によって外周方向へ押され、シール部材30の第一の被収容部33には、第一のハウジング開口部42と当接する当接部33aが形成される(図8(e))。この当接部33aが形成されることで、シール部材30の位置が固定される。
【0039】
また、シール部材30の第二の被収容部34は、挿入方向の下流側に引きずられるように変形される。これにより、第二の被収容部34には、第二のハウジング開口部43と当接されず、第二のハウジング開口部43との間に空間を備え、第二のハウジング開口部43に当接されない非当接部34aが形成される。
【0040】
このように、インク供給針91の挿入が完了した状態では、シール部材30の開口部31はインク供給針91に押圧される。インク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分31a(図8(e))の面積を十分確保できるので、インク漏れの発生を抑制できる。また、開口部31に対応するシール部材30の外周部では、当接部33aと非当接部34aとが形成される。そのため、当接部33aでシール部材30の位置を固定しつつ、ハウジング41から内方へ押されない非当接部34aが形成されることにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0041】
また本実施形態においても、図8(e)に示すように挟持部32が、シール部材30の開口部31の外周方向に関して、シール部材30がインク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分31aと重ならない位置に形成されている。これにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0042】
さらに、上述した位置に挟持部32が形成されていることで、インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入された状態で発生する、シール部材30の開口部31の外周方向に向かう応力が、挟持部32に加わることを抑制できる。したがって、インク供給針91が挿入された状態で発生する応力による挟持部32の変形を抑え、その部分からのインク漏れの発生を抑制できる。
【0043】
第一の実施形態と異なり、本実施形態では、図7に示すように、第一のハウジング開口部42よりも小さく第二のハウジング開口部43よりも大きい内径を有する第三のハウジング開口部46が設けられている。したがって、図8に示すように、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入した際に、シール部材30を段階的にハウジング開口部に当接させてシール部材30の位置を固定することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
図9は、その他の実施形態のジョイント部20を示す断面図である。図9では、シール部材30については、インク供給針91が挿入される前の状態を示している。また、インク供給針91については、そのジョイント部20への接続動作が完了した状態における位置に図示している。特に記載のない点については第1の実施形態と同様の構成となっている。
【0045】
図9(a)では、ハウジング41の第一のハウジング開口部42と第二のハウジング開口部43との接続部分には、インク供給針91の挿入方向下流側に向かってハウジング41の面積が小さくなるテーパ面47が形成されている。テーパ面47が形成されていることで、シール部材30が変形するための空間が増えるので、インク供給針91をシール部材30の開口部31に対して挿入しやすくなる。
【0046】
図9(b)では、シール部材30の開口部31がテーパ面になっており、その内径は、インク供給針91の挿入方向の下流側に向かってΦ1.6mm(Di1)からΦ1.4mm(Di2)と小さくなっている。また、シール部材30の第二の被収容部34の外径Do2はΦ2.4mmとなっている。シール部材30の開口部31の内径が徐々に小さくなる構成であるので、インク供給針91を挿入した際に、徐々に開口部31を広げることができ、インク供給針91を挿入しやすくなる。
【0047】
図9(c)では、インク供給針91の先端部91aが球面状となっている。インク供給針91の先端部91aにインク供給口を設けると、シール部材30の開口部31に対して内部に挿入されるインク供給針91の長さを短くでき、挿入に要する力を抑制することができる。
【0048】
なお、図9(a)〜(c)のいずれに示す実施形態においても、上述の実施形態と同様に、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入していくと、シール部材30の第二の被収容部34は、挿入方向の下流側に引きずられるように変形される。また、インク供給針91の挿入が完了した状態では、シール部材30の開口部31はインク供給針91に押圧される。インク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分の面積を十分確保できるので、インク漏れの発生を抑制できる。また、開口部31に対応するシール部材30の外周部では、ハウジング開口部に当接される当接部と当接されない非当接部とが形成される。そのため、当接部でシール部材30の位置を固定しつつ、ハウジング41から内方へ押されない非当接部が形成されることにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0049】
また本実施形態においても、シール部材30の挟持部32が、シール部材30の開口部31の外周方向に関して、シール部材30がインク供給針91によって押圧される開口部31の内壁部分と重ならない位置に形成されている。これにより、インク供給針91をシール部材30の開口部31に挿入する際に要する力を抑えることができる。
【0050】
さらに、上述した位置に挟持部32が形成されていることで、インク供給針91がシール部材30の開口部31に挿入された状態で発生する、シール部材30の開口部31の外周方向に向かう応力が、挟持部32に加わることを抑制できる。したがって、インク供給針91が挿入された状態で発生する応力による挟持部32の変形を抑え、その部分からのインク漏れの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
10 インクジェット記録ヘッド
30 シール部材(弾性部材)
31 シール部材の開口部
33 シール部材の第一の被収容部
33a 当接部
34 シール部材の第二の被収容部
34a 非当接部
41 ハウジング(収容部材)
42 第一のハウジング開口部(第一の収容部)
43 第二のハウジング開口部(第二の収容部)
50 第一の押さえ部材(押圧部材)
91 インク供給針(供給路部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する供給路部材と、
前記供給路部材が挿入され、前記供給路部材によって外周方向へ押圧される内壁を備える開口部が設けられた弾性部材と、
前記弾性部材を収容する収容部材と、
前記供給路部材の挿入方向に関して前記弾性部材を押圧する押圧部材と、
を有する供給路接続部材において、
前記弾性部材には、前記押圧される内壁と前記外周方向に関して重ならない位置に、前記挿入方向に関して前記収容部材と前記押圧部材とで挟持された挟持部が形成されており、
前記供給路部材が前記開口部に挿入された状態で、前記開口部に対応する前記弾性部材の外周部には、前記外周方向に関して前記収容部材に当接される当接部と、前記外周方向に関して前記収容部材に当接されない非当接部と、が形成されていることを特徴とする供給路接続部材。
【請求項2】
前記非当接部は、前記当接部よりも前記挿入方向に関する下流側に形成されている、請求項1に記載の供給路接続部材。
【請求項3】
液体を供給する供給路部材と、
前記供給路部材の外径よりも小さい内径を有し、前記供給路部材が挿入され、前記供給路部材によって外周方向へ押圧される内壁を備える開口部が設けられた弾性部材と、
前記弾性部材を収容する第一の収容部および第二の収容部が設けられた収容部材と、
前記供給路部材の挿入方向に関して前記弾性部材を押圧する押圧部材と、
を有する供給路接続部材において、
前記弾性部材には、前記押圧される内壁と前記外周方向に関して重ならない位置に、前記挿入方向に関して前記収容部材と前記押圧部材とで挟持された挟持部が形成されており、
前記弾性部材は、前記第一の収容部に収容され、前記第一の収容部の内径よりも小さい外径を有する第一の被収容部と、前記第二の収容部に収容され、前記第二の収容部の内径よりも小さい外径を有する第二の被収容部と、を備えており、
前記第一の被収容部および前記第二の被収容部の内部に前記開口部が形成されており、
前記第一の収容部の内径と前記第一の被収容部との外径との差は、前記供給路部材の外径と前記開口部の内径との差よりも小さく、前記第二の収容部の内径と前記第二の被収容部との外径との差は、前記供給路部材の外径と前記開口部の内径との差よりも大きいことを特徴とする供給路接続部材。
【請求項4】
前記供給路部材が前記開口部に挿入された状態で、前記第一の被収容部には、前記外周方向に関して前記第一の収容部と当接された当接部が形成され、前記第二の被収容部には、前記外周方向に関して前記第二の収容部と当接されない非当接部が形成されている、請求項3に記載の供給路接続部材。
【請求項5】
前記第一の収容部の内径は前記第二の収容部の内径よりも大きく、前記第一の被収容部の外径は前記第二の被収容部の外径よりも大きい、請求項3または請求項4に記載の供給路接続部材。
【請求項6】
前記第二の収容部は、前記第一の収容部よりも前記挿入方向に関する下流側に形成されている、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の供給路接続部材。
【請求項7】
前記収容部材には、前記挿入方向に関する前記第一の収容部と前記第二の収容部との間に、前記第一の収容部の内径よりも小さく前記第二の収容部の内径よりも大きい内径を有する第三の収容部が設けられている、請求項6に記載の供給路接続部材。
【請求項8】
前記押圧部材よりも剛性の高い別の押圧部材で、前記押圧部材を介して前記挟持部を前記挿入方向に押圧する、請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の供給路接続部材。
【請求項9】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出するための液体を供給する供給路部材の外径よりも小さい内径を有し、前記供給路部材が挿入され、前記供給路部材によって外周方向へ押圧される内壁を備える開口部が設けられた弾性部材と、
前記弾性部材を収容する第一の収容部および第二の収容部が設けられた収容部材と、
前記供給路部材の挿入方向に関して前記弾性部材を押圧する押圧部材と、
を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記弾性部材には、前記押圧される内壁と前記外周方向に関して重ならない位置に、前記挿入方向に関して前記収容部材と前記押圧部材とで挟持された挟持部が形成されており、
前記弾性部材は、前記第一の収容部に収容され、前記第一の収容部の内径よりも小さい外径を有する第一の被収容部と、前記第二の収容部に収容され、前記第二の収容部の内径よりも小さい外径を有する第二の被収容部と、を備えており、
前記第一の被収容部および前記第二の被収容部の内部に前記開口部が形成されており、
前記第一の収容部の内径と前記第一の被収容部との外径との差は、前記供給路部材の外径と前記開口部の内径との差よりも小さく、前記第二の収容部の内径と前記第二の被収容部との外径との差は、前記供給路部材の外径と前記開口部の内径との差よりも大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86431(P2013−86431A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231005(P2011−231005)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】