説明

液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】圧電部材の配置の密度が高められる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド3は、液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室14と、圧力室14の内面の側に設けられた第1電極22と、圧力室14の外側に設けられた第2電極23と、を備える圧電部材12が、複数、各圧電部材12の圧力室14を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、流れ方向と交わる第1方向と、流れ方向と交わるとともに第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列されている。第1方向に配列された複数の第1電極22と共通して接続された第1共通配線24と、第2方向に配列された複数の第2電極23と共通して接続された第2共通配線25と、をそれぞれ複数有し、複数の第1共通配線24が第2方向に関して配列され、複数の第2共通配線25が第1方向に関して配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド、及び該液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置として、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置には、インクを吐出するための液体吐出ヘッドが搭載されている。
【0003】
液体吐出ヘッドにおけるインクを吐出する機構として、液体吐出ヘッドに備えられた圧力室の容積を変化させてインクの導入及び吐出を行う圧電部材が知られている。圧力室には、インクを圧力室に供給するための液体供給路と、圧力室からインクを吐出するためのノズルとが設けられている。圧力室の容積収縮時に圧力室にあるインクをノズルから液滴として吐出し、圧力室の容積膨張時に液体供給路から圧力室にインクを導入する。
【0004】
圧電部材は、圧力室の少なくとも一つの壁面を振動板で形成して、該振動板に圧電素子を備えたものである。圧電素子を変形させることによって、圧力室の容積を拡縮させることができる。
【0005】
特に、古くから、圧力室を円筒形状の圧電素子で形成した円筒型圧電部材が提案されている。円筒型圧電部材は、円筒形状の径方向の中心に向かって収縮する。そのため、圧力室の内部に貯留されたインクは、圧電部材の外周から中心に向かう方向に一様に加圧され、より大きい飛翔力でインクをノズルから吐出することができる。
【0006】
一方、圧電部材を用いた液体吐出ヘッドによる印字において、印字速度を維持したままより高い解像度を得るには、複数のノズルをより高い密度で液体吐出ヘッドに配置する必要がある。これに伴い、各々のノズルに対応させて設けられる圧電部材は、より小型でかつ高密度に配置可能な構造が求められている。
【0007】
そこで、特許文献1では、複数の円筒型圧電部材を千鳥状の2次元マトリクス状に配列することによって、ノズルの高密度化を図った液体吐出ヘッドが開示されている。また、特許文献1では、そのような液体吐出ヘッドの製造方法として、複数の凹部を有する型へ圧電材料を充填して円筒形状の圧電部材を一体的に成形する方法が開示されている。圧電部材を一体的に成形することによって、ノズルの配置の精度の向上及び圧電部材の製造工程を簡素化することができる。
【0008】
また、特許文献2では、圧電部材が高密度で配置された液体吐出ヘッドの製造方法として、1枚に複数の溝を有するプレートを、溝の延びる方向を揃えて複数積層して、溝の延びる方向と直交する方向に切断する方法が開示されている。プレートは圧電材料で形成されており、溝の部分が圧力室となる。
【0009】
特許文献2で開示されている製造方法では、特許文献1で開示されている製造方法に比べ、ノズルの配置の密度を維持した状態で、深さがより長い圧力室を形成することができる。圧力室の深さを大きくすることによって、圧力室の容積及び収縮量を大きくすることができる。したがって、インクの飛翔力とノズルの高密度配置を両立することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−327163号公報
【特許文献2】特開2007−168319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1や特許文献2で開示されている液体吐出ヘッドでは、各々の圧電部材に設けられている電極のそれぞれに配線を接続している。配線の引き回しスペースと、電極と配線とを接続するスペースと、が必要となり、圧電部材の高密度化を阻害していた。また、圧電部材の電極と同数の配線が必要となり、コストアップの要因となっていた。
【0012】
さらに、液体吐出ヘッドの製造時に、配線を高い精度で配置することが要求され、製造歩留まりが低下していた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、圧電部材の配置の密度が高められる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明はこのような技術課題に鑑みなされたものであり、以下の構成からなるものである。
【0015】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室と、該圧力室の内面の側に設けられた第1電極と、該圧力室の外側に設けられた第2電極と、を備える圧電部材であって、第1電極及び第2電極を用いて変形することで圧力を発生する圧電部材が、複数、各圧電部材の圧力室を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、流れ方向と交わる第1方向と、流れ方向と交わるとともに第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列されている。第1方向に配列された複数の第1電極と共通して接続された第1共通配線と、第2方向に配列された複数の第2電極と共通して接続された第2共通配線と、をそれぞれ複数有し、複数の第1共通配線が第2方向に関して配列され、複数の第2共通配線が第1方向に関して配列されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室と該圧力室の内面の側に設けられた第1電極と該圧力室の外側に設けられた第2電極とを備えた圧電部材であって該第1電極及び該第2電極を用いて変形することで圧力を発生する圧電部材と、該圧電部材に隣接するベース部材と、を備え、圧電部材が、液体を圧力室へ導入するための入口を備える第1面と、該第1面と反対の側に位置し、液体を圧力室から導出するための出口を備える第2面と、を有し、ベース部材の第1面が圧電部材の第1面と隣接し、ベース部材の第1面と反対の側の第2面に圧力室のそれぞれと連通する開口を有し、圧電部材が、複数、各圧電部材の圧力室を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、流れ方向と交わる第1方向と、流れ方向と交わるとともに第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列され、第1方向に配列された複数の第1電極と共通して接続された第1共通配線と、第2方向に配列された複数の第2電極と共通して接続された第2共通配線と、をそれぞれ複数有し、複数の第1共通配線がベース部材の第2面に形成され、第2共通配線がベース部材の第1面に形成されている液体吐出ヘッドの製造方法である。圧電部材及びベース部材の全面に電極膜を形成する工程と、圧電部材の第2面における電極膜を除去して第1電極と第2電極とを分離する工程と、ベース部材の第1面とベース部材の第2面との間にあるベース部材の側面の電極膜を除去して第1共通配線と第2共通配線とを分離する工程と、ベース部材の第2面の、第2方向に隣り合う開口の間の電極膜を、第1方向に沿って除去して第1共通配線を形成する工程と、ベース部材の第1面の、第1方向に隣り合う圧電部材の間の電極膜を、第2方向に沿って除去して第2共通配線を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体吐出ヘッドは、圧電部材の配置の密度が高められる。また、該液体吐出ヘッドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係るインクジェット記録装置の斜視図。
【図2】第1の実施例に係る液体吐出ヘッドの外観斜視図及び断面図。
【図3】第1の実施例に係る液体吐出ヘッドの分解斜視図。
【図4】第1の実施例に係る圧電素子プレートの斜視図。
【図5】第1の実施例に係る圧電素子プレートの平面図及び断面図。
【図6】第1の実施例に係る圧電素子プレートの製造方法を説明する図。
【図7】第1の実施例に係る圧電素子プレートに配線を接続する工程を示す図。
【図8】第2の実施例に係る積層圧電素子プレートの斜視図。
【図9】第2の実施例に係る積層圧電素子プレートの平面図及び断面図。
【図10】第2の実施例に係る積層圧電素子プレートの製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(実施例1)
以下に、本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び液体吐出ヘッド製造方法を図面に基づき説明する。
【0021】
図1は、インクジェット記録装置1の斜視図である。インクジェット記録装置1には、記録用紙などの記録媒体(不図示)に対して走査することができるキャリッジ2が設けられている。キャリッジ2には、例えばインクなどの液体を吐出する液体吐出ヘッド3及び液体吐出ヘッド3にインクを供給するインクタンク4が搭載されている。
【0022】
インクタンク4は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)などの複数のインクを液体吐出ヘッド3に供給することができるようになっている。液体吐出ヘッド3はそれぞれのインクに対応して用意されている。液体吐出ヘッド3がキャリッジ2に搭載され、記録媒体に対して走査しながらインクを吐出することにより、記録媒体への記録が行われる。
【0023】
インクジェット記録装置1は、副走査方向(図1に示すY方向)に記録媒体を搬送させることができ、また副走査方向と交わる主走査方向(図1に示すX方向)にキャリッジ2を走査させることができる。
【0024】
インクジェット記録装置1における記録媒体への記録は、キャリッジ2を主走査方向に移動させながら、液体吐出ヘッド3からインクを吐出させることによって行われる。液体吐出ヘッド3は、画像データが変換された2値の分割記録データに基づき所定のタイミングでインクを吐出する。液体吐出ヘッド3の主走査方向への1回の走査が終了したところで、インクジェット記録装置1は記録媒体を副走査方向に所定量だけ搬送する。
【0025】
この後、主走査方向における液体吐出ヘッド3の記録媒体へのインクの吐出と、副走査方向への記録媒体の所定量の搬送を繰り返し、順次画像が完成される。
【0026】
図2(A)は、本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッド3の外観斜視図であり、図2(B)は液体吐出ヘッド3の断面図である。図3は、第1の実施例に係る液体吐出ヘッド3の分解斜視図である。
【0027】
図2及び図3に示されるように、液体吐出ヘッド3は、ノズルプレート5、圧電素子プレート6、流体制御プレート7及び液体供給ボックス8がこの順に積層され、隣接する各部材が互いに接合されることによって構成される。
【0028】
ノズルプレート5には、円形貫通孔からなるノズル9が複数形成されている。ノズル9は、第1方向(図3に示すx方向)に沿って所定の間隔x0で配列され、第1方向列10を複数構成する。また、ノズル9は、x方向と交わる第2方向(図3に示すy方向)に沿って、所定の間隔y0で配列され、第2方向列11を複数構成する。
【0029】
圧電素子プレート6は、ノズル9のそれぞれと対応する位置に配設された圧電部材12と、圧電部材12に隣接するベース部材13と、で形成されている。圧電部材12は、液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室14を備えている。また、圧電部材12は、液体を圧力室14へ導入するための入口を備える第1面15と、第1面15と反対の側に位置し、液体を圧力室14から導出するための出口を備える第2面16と、を有している。すなわち、圧力室14は第1面15と第2面16とを貫通する貫通穴によって形成されている。
【0030】
圧電部材12は、複数、圧力室12を流れる液体の流れ方向(第1面15から第2面16へ向かう方向)が互いに沿う様に配列されている。さらに、圧電部材12は、当該流れ方向と交わる第1方向(x方向)と、当該流れ方向と交わるとともに第1方向とも交わる第2方向(y方向)と、のそれぞれに関して配列されている。
【0031】
ベース部材13では、ベース部材13の第1面17と圧電部材12の第1面15とが隣接している。さらに、ベース部材13は、ベース部材13の、第1面17と反対の側に位置する第2面18に、圧力室14のそれぞれと連通する開口を有している。圧電部材12の第2面16がノズルプレート5と接合し、ベース部材13の第2面18が流体制御プレート7に接合している。
【0032】
圧力室14は、ノズル9の開口径よりも大きい径を有する円筒形状の空間により構成されている。圧力室14の、径及び吐出方向における長さを調整することによって、インクの吐出を安定させることができ、インクの吐出における限界周波数を高めることが可能になる。
【0033】
圧電部材12は、電界を印加されることによって、円筒形状に形成されている圧力室14の径方向に収縮する圧電素子で形成されている。圧電素子プレート6は、ベース部材13に圧電部材12を接合してしたり、圧電材料からなるプレートに溝を形成して残存部を圧電部材12としたりすることで得られる。
【0034】
流体制御プレート7には、圧力室14のそれぞれと対応する位置に、圧力室14の径よりも小さい径の穴からなる流量調整穴19が形成されている。圧電部材12及び流量調整穴19は、ノズル9と同様に、第1方向列10及び第2方向列11を形成している。
【0035】
液体供給ボックス8には、流体制御プレート7と接する面に開口を有する凹み部が形成されている。液体供給ボックス8を流体制御プレート7に隣接させたときに、該凹み部と流体制御プレート7との間に空間が形成される。該空間を共通液室20と称す。共通液室20は、流量調整穴19を介して圧力室14と連通されている。
【0036】
また、液体供給ボックス8の、流体制御プレート7と接する面と異なる面には、共通液室20に連通する液体供給路21が設けられている。液体供給路21はインクタンク4(図1)と接続されており、インクタンク4からインクが供給されて共通液室20にインクが貯留される。
【0037】
したがって、液体供給路21から供給されたインクは、共通液室20に貯留された後、流量調整穴19を介して圧力室14へ送られる。その後、圧力室14に貯留されたインクは、圧電部材12から圧力を付与され、ノズル9から液滴として吐出される。
【0038】
ここで、圧電素子プレート6の構成について詳述する。
【0039】
図4は、図3に示す圧電素子プレート6の、ノズルプレート5と接する面、すなわち圧電部材12の第2面16を斜め上から見た斜視図である。図4に示される圧電素子プレート6は、図3に示される圧電素子プレート6の上下を反転したときの斜視図である。
【0040】
図5(A)は、図3に示す圧電素子プレート6を、ノズルプレート5から流体制御プレート7に向かって見たときの圧電素子プレート6の平面図である。また、図5(B)及び(C)は、図5(A)に示すA−A断面及びB−B断面における圧電素子プレート6の断面図である。
【0041】
図5に示されるように、圧力室14の内面の側には第1電極22が設けられている。また、圧力室14の外側であって、圧電部材12の第2面16以外の領域には第2電極23が設けられている。圧力室14の面16側の開口縁には第2電極23が形成されていないため、第1電極22と第2電極23とは電気的に絶縁されている。
【0042】
ベース部材13の第2面18には、第1電極22と電気的に接続される第1共通配線24が配設されている。
【0043】
第1共通配線24は、x方向に配列された圧力室14のベース部材13の第2面18における開口を繋ぐように延びている。したがって、x方向に隣り合う圧電部材12に設けられた第1電極22は、第1共通配線24を介して共通して電気的に接続され、y方向に隣り合う圧電部材12に設けられた第1電極22は、電気的に絶縁されている。
【0044】
一方、ベース部材13の第1面17には第2電極23と電気的に接続される第2共通配線25が配設されている。第2共通配線25は、y方向に隣り合う圧電部材12を繋ぐように延びている。したがって、y方向に隣り合う圧電部材12に設けられた第2電極23は第2共通配線25を介して共通して電気的に接続され、x方向に隣り合う圧電部材12に設けられた第2電極23は電気的に絶縁されている。
【0045】
圧電素子プレート6は、圧電部材12の配列に合わせて、第1共通配線24及び第2共通配線25を複数有している。さらに、第1共通配線24がy方向に関して配列され、第2共通配線25がx方向に関して配列されている。すなわち、圧電素子プレート6は、第1共通配線24及び第2共通配線25により、マトリクス状の配線構造を有する。
【0046】
さらに、図3に示されるように、圧電素子プレート6には、第1共通配線24及び第2共通配線25と電気的に接続される配線部材26が設けられている。配線部材26は、x方向に延びる第1共通配線24毎に、またy方向に延びる第2共通配線25毎に電気信号を個別に送信できるようになっている。
【0047】
次に、本発明の第1の実施例における液体吐出ヘッド3の動作について図2〜図5を参照して説明する。
【0048】
図2に示されるように、共通液室20には液体供給路21からインクが供給され、さらに流量調整穴19を介して共通液室20から圧力室14にインクが供給される。したがって、圧力室14はインクが貯留される。
【0049】
液体吐出ヘッド3がインクを吐出するときに、不図示のヘッド制御部から配線部材26を通して、図5に示される所望の第1共通配線24及び第2共通配線25に電気信号が送られる。電気信号が送られた第1共通配線24に接続される第1電極22と、電気信号が送られた第2共通配線25に接続される第2電極23と、を有する圧電部材12が、電界の印加を受けて変形する。
【0050】
圧電部材12が圧力室14の径方向に変形し、圧力室14の容積が収縮するため、圧力室14に貯留されているインクを吐出するための圧力が発生する。その結果、図2に示されるノズル9からインクが液滴状に吐出され、記録媒体にインクが付着する。
【0051】
その後、ヘッド制御部から所望の第1共通配線24及び第2共通配線25への電気信号の送信が停止され、圧電部材12の形状が元に戻る。圧力室14が元の容積に戻り、流量調整穴19を介して共通液室20から圧力室14へインクが供給される。
【0052】
以上の動作を繰り返し、所定のタイミングでインクを吐出すことにより、記録媒体への記録が行われる。
【0053】
第1の実施例では、各々の圧電部材12に設けられた第1電極22及び第2電極23に、個別に配線部材26を接続する場合に比べて、配線数を大幅に減らすことが可能となり、配線の引き回しスペースを縮小することができる。その結果、隣り合う圧電部材12の間隔を小さくすることができ、ノズル9をより高い密度で配置すること可能になる。さらに配線の本数も減少するため、低コスト化にもつながる。
【0054】
また、配線部材26を個々の第1電極22及び第2電極23に接続する必要がないため、配線部材26を接続するために高い精度が要求されることがない。その結果、液体吐出ヘッドの良品率を高められるとともに、配線部材26と第1電極22及び第2電極23との接続の信頼性の向上にもつながる。
【0055】
次に、第1の実施例における圧電素子プレート6及び液体吐出ヘッド3の製造方法について図6を参照して説明する。
【0056】
図6は、圧電素子プレート6の製造方法を説明するための図である。なお、図6において、白色で示される領域は、電極、電極膜及び配線等が形成されている箇所であり、ハッチングが施されている領域は、電極等が形成されていない箇所である。
【0057】
まず、図6(A)に示されるように、圧電部材12とベース部材13とで構成され、電極等が形成されていない圧電部材プレート27を用意する。圧電部材12には圧力室14が形成されている。
【0058】
次に、図6(B)に示すように、圧電部材プレート27の全面に、第1電極22や第1共通配線24などの基となる電極膜28を形成する。電極膜28の形成は、Cu、TiやCr等の金属を、蒸着やスパッタリング等の手法により行う。さらに、電極膜28をメッキ用のシード層として、Ni、Au膜をメッキ等で形成する。
【0059】
圧電部材12の内面、すなわち圧力室14を形成する面に形成された電極膜28が第1電極22となり、圧電部材12の外面に形成された電極膜28が第2電極23となる。
【0060】
続いて、図6(C)に示すように、圧電部材12の第2面16を研磨することにより、圧電部材12の第2面16の電極膜28を除去する。また、ベース部材13の第1面17とベース部材13の第2面18との間にあるベース部材13の側面29の電極膜28を、研磨又はレーザー照射により除去する。圧電部材12の第2面16及びベース部材13の側面29の電極膜28を除去することにより、第1電極22と第2電極23とが分離され電気的に絶縁される。
【0061】
図6(D)は、図6(A)〜(C)に示される圧電部材プレート27を上下に反転した図である。図6(D)に示されるように、ベース部材13の第2面18の、y方向に隣り合う圧力室14の間の電極膜28を、レーザー照射又はダイシング等の機械加工により連続して帯状に除去する。
【0062】
ベース部材13の第2面18に残存する電極膜28が、第1共通配線24となる。x方向に帯状に電極膜28を除去することにより、y方向に隣り合う第1共通配線24が分離され電気的に絶縁される。
【0063】
図6(E)は、図6(D)に示される圧電部材プレート27をさらに上下に反転した図である。図6(E)に示されるように、ベース部材13の第1面17の、x方向に隣り合う圧電部材12の間における電極膜28を、ダイシング又はワイヤーカット等の機械加工により、y方向に沿って連続して帯状に除去する。図6(F)は、図6(E)に示すa部の拡大図であり、ベース部材13の第1面17における電極膜28の除去の状態を示す図である。
【0064】
ベース部材13の第1面17に残存する電極膜28が、第2共通配線25となる。y方向に帯状に電極膜28を除去することにより、x方向に隣り合う第2共通配線25が分離され電気的に絶縁される。
【0065】
次に、第1電極22及び第2電極23を介して、圧電部材12の分極処理を行う。分極処理は、円筒形状に形成されている圧力室14の径方向に行われる。続いて、圧力室14に供給される液体から電極膜28を保護する保護膜を形成する。分極処理工程及び保護膜形成工程の詳細については省略する。
【0066】
保護膜としては、低透水性膜を用いることができる。具体的には、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜や、パリレン膜、有機SOG膜又は有機ポリマー膜を主成分とする有機系保護膜が用いられる。パリレン膜としては、パリレン−N、パリレン−C、パリレン−D、パリレン−Fが挙げられる。有機SOG膜としては、アルキルアルコキシランや有機シロキサン樹脂をベースとしたものがある。有機ポリマー膜としては、ポリイミド等が挙げられる。
【0067】
次に、図7(A)に示されるように、圧電素子プレート6の、第1共通配線24及び第2共通配線25の各々に、配線部材26を接続する。図7は、配線部材26が接続された圧電素子プレート6における斜視図である。第1共通配線24又は第2共通配線25と、配線部材26とは、異方性導電フィルム又は異方性導電ペースト等の回路用接着剤、又はソルダーペースト印刷によるはんだを用いて接続される。配線部材26としては、柔軟性を有するフレキシブル配線基板を用いた。
【0068】
図7(B)は、配線部材26を圧電素子プレート6に接続した後、配線部材26を折り曲げた状態を示す。配線部材26を折り曲げることによって、図3に示されるノズルプレート5や流体制御プレート7を圧電素子プレート6に積層接合しやすくなる。
【0069】
続いて、図3に示されるように、圧電素子プレート6の、ベース部材13の第2面18の側に流体制御プレート7を接合する。このとき、圧力室14と流量調整穴19とが連通されるように位置合わせを行って接合する。
【0070】
さらに、圧電素子プレート6の、圧電部材12第1面15にノズルプレート5を接合する。ノズル9と圧力室14と、が連通されるように位置合わせを行って接合する。
【0071】
最後に、流体制御プレート7の、圧電素子プレート6が接合されている面とは反対の側の面に液体供給ボックス8を接合して、液体吐出ヘッド3が製造される。
【0072】
第1の実施例によれば、第1電極22と第2電極23との電気的な絶縁を、研磨やレーザー加工等の機械加工により一括で行なうことができ、第1電極22及び第2電極23を個別に設ける場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【0073】
また、第1共通配線24を、レーザー照射やダイシング等の機械加工により一括で形成することができるため、個別に第1共通配線24を配設する場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【0074】
同様に、第2共通配線25を、ダイシング又はワイヤーカット等の機械加工により一括で形成することができるため、個別に第2共通配線を配設する場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【0075】
(実施例2)
以下に、本発明の第2の実施例に係る液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法を図面に基づき説明する。
【0076】
第2の実施例における液体吐出ヘッドは、第1の実施例で示す圧電素子プレート6の代わりに、圧力室14が2つの異なる圧電部材12によって形成される積層圧電素子プレート30を備えるものである。積層圧電素子プレート30は、2つの圧電部材12により圧力室14が形成されるため、ダブルアクチュエータ型圧電素子プレートと呼ばれることもある。
【0077】
図8は、第2の実施例に係る積層圧電素子プレート30の斜視図であり、図9は、図8に示される積層圧電素子プレート30の平面図及び断面図である。
【0078】
図8及び図9に示されるように積層圧電素子プレート30は、第1の実施例に記載されている圧電素子プレート6を2つ用い、ベース部材13の第2面18を向かい合わせるように接合することによって形成される。2つの圧電素子プレート6は、互いの圧力室14の位置が一致し、且つ第1共通配線24の延在方向が一致するように配置されている。
【0079】
また、2つの圧電素子プレート6のうちの一方のx方向における幅は、他方の圧電素子プレート6のx方向における幅に比べて短くなっている。したがって、他方の圧電素子プレート6の、ベース部材13の第2面18と第1共通配線24の一部が露出している。
【0080】
位置が一致する各々の圧電部材12に設けられている第1電極22は、互いに電気的に接続され、一つの電極として機能する。したがって、第1電極22と電気的に接続される第1共通配線24は、2つの圧電素子プレート6に設ける必要はなく、少なくともベース部材13の第2面18が露出する他方の圧電素子プレート6に設けられていればよい。
【0081】
また、位置が一致する各々の圧電部材12に設けられている第2電極23は、互いに電気的に絶縁されており、2つの圧電素子プレート6に設けられている第2共通配線25も互いに電気的に絶縁されている。
【0082】
なお、第2の実施例において、他方の圧電素子プレート6に設けられている第2電極23及び第2共通配線25を、第3電極31及び第3共通配線32と称す。つまり、積層圧電素子プレート30は、第1共通配線24、第2共通配線25及び第3共通配線32の3層からなるマトリクス状の配線構造を有する。
【0083】
積層圧電素子プレート30は、不図示の配線を通して所望の第1共通配線24、第2共通配線25及び第3共通配線32に電気信号が送られる。電気信号が送られた第1共通配線に接続される第1電極22と、電気信号が送られた第2共通配線25に接続される第2電極23と、を有する圧電部材12が、電界の印加を受けて変形する。
【0084】
また、電気信号が送られた第1共通配線24に接続される第1電極22と、電気信号が送られた第3共通配線32に接続される第3電極31と、を有する圧電部材12が、電界の印加を受けて変形する。
【0085】
第1共通配線24、第2共通配線25及び第3共通配線32に電気信号を送るタイミングを制御することにより、所望のタイミングで所望の位置における圧電部材12を駆動させることができる。
【0086】
第2の実施例では、第1の実施例と同様に、各々の圧電部材12に設けられた第1電極22及び第2電極23に、個別に配線部材26を接続する場合に比べて、配線数を大幅に減らすことが可能となり、配線の引き回しスペースを縮小することができる。その結果、隣り合う圧電部材12の間隔を小さくすることができ、ノズル9をより高い密度で配置すること可能になる。さらに配線の本数も減少するため、低コスト化にもつながる。
【0087】
また、配線部材26を個々の第1電極22及び第2電極23に接続する必要がないため、配線部材26を接続するために高い精度が要求されることがない。その結果、液体吐出ヘッドの良品率を高められるとともに、配線部材26と第1電極22及び第2電極23との接続の信頼性の向上にもつながる。
【0088】
さらに、第2の実施例では、1つの圧力室14に対し、個々に加圧することのできる2つの圧電部材12を有している。一つの圧電部材12で形成される圧力室14に比べ、2つの圧電部材12で形成される圧力室14方がより低い電圧で同じ分だけ圧力室を収縮することができる。したがって、第2の実施例における液体吐出ヘッドを用いることにより、低電力化を図ることができる。2つの圧電部材12の駆動に時間差を持たせることにより、インクの吐出における限界周波数を高めることが可能となる。
【0089】
次に、第2の実施例における積層圧電素子プレート30の製造方法について、図10を用いて説明する。図10は、積層圧電素子プレート30の製造方法を説明する図である。図10において、て、白色で示される領域は、電極、電極膜及び配線等が形成されている箇所であり、ハッチングが施されている領域は、電極等が形成されていない箇所である。
【0090】
まず、図10(A)に示されるように、第1圧電部材プレート33及び第2圧電部材プレート34を用意する。第1及び第2圧電部材プレート33、34には、x方向及びy方向に二次元状に配列された貫通口35が形成されている。貫通口35は、第1及び第2圧電部材プレート33、34が接合されたときに、貫通口35の位置が一致するように配置されている。
【0091】
第2圧電部材プレート34の、第1圧電部材プレート33と接合する面には、共通電極列36が形成されている。共通電極列36は、x方向に配列された貫通口35の開口部を繋ぐように帯状に延びており、y方向に隣り合う共通電極列36は、電気的に絶縁されている。第1圧電部材プレート33は、第2圧電部材プレート34の共通電極列36に相当する電極列を備えていない。
【0092】
また、第2圧電部材プレート34のx方向における幅は、第1圧電部材プレート33のx方向における幅よりも長い。
【0093】
次に、図10(B)に示されるように、第1圧電部材プレート33と第2圧電部材プレート34とを、各々の貫通口35が連通するように、積層接合する。第2圧電部材プレート34のx方向における幅は、第1圧電部材プレート33のx方向における幅よりも長いため、共通電極列36のx方向における端部が露出する。
【0094】
次に、図10(C)に示されるように、第1圧電部材プレート33の、x方向及びy方向に隣接する貫通口35の間を通るように周囲溝37を形成する。周囲溝37は、第1圧電部材プレート33の、第2圧電部材プレート34が接する面と反対の側の面から、第2圧電部材プレート34が接する面に向かって、第1圧電部材プレート33を貫通しない深さで形成されている。
【0095】
周囲溝37を形成することにより、図8に示される圧電部材12及びベース部材13が形成される。周囲溝37の形成は、ダイシング又はワイヤーソー等の機械加工によって行うことができる。
【0096】
同様に、第2圧電部材プレート34に周囲溝37を形成する。周囲溝37は、第2圧電部材プレート34の、第1圧電部材プレート33が接する面と反対の側の面から、第1圧電部材プレート33が接する面に向かって、第2圧電部材プレート34を貫通しない深さで、x方向及びy方向に形成されている。
【0097】
続いて、図10(D)に示されるように、共通電極列36の露出している部分を遮蔽するためのレジスト材料38を塗布する。
【0098】
その後、図10(E)に示されるように、第1及び第2圧電部材プレート33、34の外面に電極膜28を形成する。第1圧電部材プレート33と第2圧電部材プレート34とが積層接合される面及びレジスト材料38が塗布されている面には電極膜28が形成されない。
【0099】
電極膜28の形成は、Cu、TiやCr等の金属を、蒸着やスパッタリング等の手法により行う。さらに、電極膜28をメッキ用のシード層として、Ni、Au膜をメッキ等で形成する。
【0100】
このときに、貫通口35の内面においても電極膜28が形成される。共通電極列36は貫通口35の周囲にも形成されているため、貫通口35の内面に形成された電極膜28と共通電極列36が電気的に接続される。
【0101】
次に、図10(F)に示されるように、第1圧電部材プレート33の、貫通口35の開口部が位置する面39に形成された電極膜28を研磨により除去する。これにより、圧電部材12の外面における電極膜28と、貫通口35の内面における電極膜28と、が分離され電気的に絶縁される。同様に、第2圧電部材プレート34の、貫通口35の開口部が位置する面39に形成された電極膜28を除去する。
【0102】
続いて、図10(G)に示されるように、第1及び第2圧電部材プレート33、34におけるベース部材13の積層接合される面と隣接する側面29に形成された電極膜28を、レーザー光またはダイシング等の機械加工により連続して帯状に除去する。
【0103】
さらに、第1圧電部材プレート33におけるベース部材13の第1面17の、x方向に隣り合う圧電部材12の間の電極膜28を、ダイシング又はワイヤーソー等の機械加工により、y方向に沿って連続して帯状に除去する。同様に、第2圧電部材プレート34におけるベース部材13の第1面17の、x方向に隣り合う圧電部材12の間の電極膜28を、y方向に沿って連続して帯状に除去する。
【0104】
その後、第1電極22及び第2電極23、または第1電極22及び第3電極31を介して、圧電部材12の分極処理を行う。分極処理は、円筒形状に形成されている貫通口35の径方向に行われる。さらに、貫通口35に供給される液体から電極膜28を保護する保護膜を形成する。分極処理工程及び保護膜形成工程の詳細については省略する。
【0105】
保護膜としては、低透水性膜を用いることができる。具体的には、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜や、パリレン膜、有機SOG膜又は有機ポリマー膜を主成分とする有機系保護膜が用いられる。パリレン膜としては、パリレン−N、パリレン−C、パリレン−D、パリレン−Fが挙げられる。有機SOG膜としては、アルキルアルコキシランや有機シロキサン樹脂をベースとしたものがある。有機ポリマー膜としては、ポリイミド等が挙げられる。
【0106】
その後、図3に示される配線部材26、ノズルプレート5、流体制御プレート7及び液体供給ボックス8が積層圧電素子プレート30に積層されて液体吐出ヘッド3となる。積層工程の詳細については第1の実施例と同じであるため省略する。
【0107】
第2の実施例によれば、第1の実施例と同様に、第1電極22と、第2電極23及び第3電極31との電気的な絶縁を、研磨やレーザー加工等の機械加工により一括で行なうことができる。したがって、第1電極22、第2電極23及び第3電極31を個別に設ける場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【0108】
また、第1共通配線24を、第1圧電部材プレート33と第2圧電部材プレート34を接合する前に、レーザーやダイシング等の機械加工により一括で形成することができる。したがって、各々の第1電極22に配線を配設する場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【0109】
同様に、第2共通配線25及び第3共通配線32を、ダイシング又はワイヤーソー等の機械加工により一括で形成することができるため、第2電極23及び第3電極31のそれぞれに配線を配設する場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上記の実施形態では、液体を吐出する液滴吐出装置としてインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置について説明し、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとして、インクを吐出して画像を記録する液体吐出ヘッドについて説明した。しかし、本発明に係る液体吐出装置及び液滴吐出ヘッドとしては、記録用紙上へ画像を記録するものに限定されるものではなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。
【0111】
例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成する装置や溶液状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置などが挙げられる。工業的に用いられる液体吐出装置及びその液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッド全般に対して、本発明を適用することができる。
【0112】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0113】
3 液体吐出ヘッド
10 第1方向列
11 第2方向列
12 圧電部材
13 ベース部材
14 圧力室
22 第1電極
23 第2電極
24 第1共通配線
25 第2共通配線
x 第1方向(x方向)
y 第2方向(y方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室と、該圧力室の内面の側に設けられた第1電極と、該圧力室の外側に設けられた第2電極と、を備える圧電部材であって、前記第1電極及び前記第2電極を用いて変形することで前記圧力を発生する圧電部材が、複数、各前記圧電部材の圧力室を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、前記流れ方向と交わる第1方向と、前記流れ方向と交わるとともに前記第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列されている液体吐出ヘッドにおいて、
前記第1方向に配列された複数の前記第1電極と共通して接続された第1共通配線と、前記第2方向に配列された複数の前記第2電極と共通して接続された第2共通配線と、をそれぞれ複数有し、複数の前記第1共通配線が前記第2方向に関して配列され、複数の前記第2共通配線が前記第1方向に関して配列されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧電部材が、前記液体を前記圧力室へ導入するための入口を備える第1面と、該第1面と反対の側に位置し、前記液体を前記圧力室から導出するための出口を備える第2面と、を有し、
前記圧電部材の第1面と隣接する第1面を有するベース部材をさらに備え、
前記ベース部材は、前記ベース部材の第1面と反対の側の第2面に前記圧力室のそれぞれと連通する開口を有し、
前記第1共通配線が前記ベース部材の第2面に形成され、前記第2共通配線が前記ベース部材の第1面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記ベース部材の2つを、前記ベース部材の第2面を向かい合せて接合して2つの前記圧電部材から1つの前記圧力室が形成される液体吐出ヘッドにおいて、
前記2つの圧電部材の前記第1電極が互いに電気的に接続されており、前記2つの前記圧電部材の第2電極が互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ベース部材の第2面において前記第1電極が前記第1共通配線と電気的に接続され、
前記2つの圧電部材のうちの一方の前記第2電極が、前記2つの圧電部材のうちの一方と隣接する前記ベース部材の第1面に形成された前記第2共通配線に接続され、
前記2つの圧電部材のうちの他方の前記第2電極が、前記2つの圧電部材のうちの他方と隣接する前記ベース部材の第1面に形成された前記第2共通配線に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室と該圧力室の内面の側に設けられた第1電極と、該圧力室の外側に設けられた第2電極とを備えた圧電部材であって該第1電極及び該第2電極を用いて変形することで前記圧力を発生する圧電部材と、該圧電部材に隣接するベース部材と、を備え、
前記圧電部材が、前記液体を前記圧力室へ導入するための入口を備える第1面と、該第1面と反対の側に位置し、前記液体を前記圧力室から導出するための出口を備える第2面と、を有し、前記ベース部材の第1面が前記圧電部材の第1面と隣接し、前記ベース部材の第1面と反対の側の第2面に前記圧力室のそれぞれと連通する開口を有し、
前記圧電部材が、複数、各前記圧電部材の圧力室を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、前記流れ方向と交わる第1方向と、前記流れ方向と交わるとともに前記第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列され、前記第1方向に配列された複数の前記第1電極と共通して接続された第1共通配線と、前記第2方向に配列された複数の前記第2電極と共通して接続された第2共通配線と、をそれぞれ複数有し、複数の前記第1共通配線が前記ベース部材の第2面に形成され、前記第2共通配線が前記ベース部材の第1面に形成されている液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記圧電部材及び前記ベース部材の全面に電極膜を形成する工程と、
前記圧電部材の第2面における前記電極膜を除去して前記第1電極と前記第2電極とを分離する工程と、
前記ベース部材の第1面と前記ベース部材の第2面との間にある前記ベース部材の側面の前記電極膜を除去して前記第1共通配線と前記第2共通配線とを分離する工程と、
前記ベース部材の第2面の、前記第2方向に隣り合う開口の間の前記電極膜を、前記第1方向に沿って除去して前記第1共通配線を形成する工程と、
前記ベース部材の第1面の、前記第1方向に隣り合う前記圧電部材の間の前記電極膜を、前記第2方向に沿って除去して前記第2共通配線を形成する工程と、を含む液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記第1共通配線を形成するとき、レーザー照射又はダイシングにより連続して帯状に前記電極膜を除去することを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記ベース部材の第2面に接合され、前記圧力室と連通する流量調整穴を有する流体制御プレートと、
前記流体制御プレートの、前記ベース部材と接合される面の反対の側の面に接合されて、前記流体制御プレートを介して前記圧力室に液体を供給するための液体供給ボックスと、
前記圧電部材の第2面に接合されて、前記液体を吐出するノズルを有するノズルプレートと、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記第2共通配線を形成する工程の後に、前記流体制御プレートを前記ベース部材の第2面に接合する工程と、前記液体供給ボックスを前記流体制御プレートの、前記ベース部材と接合される面の反対の面に接合する工程と、前記ノズルプレートを前記圧電部材の第2面に接合する工程と、を含む、請求項6または7に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】
液体を吐出するための圧力を液体に付与するための圧力室と該圧力室の内面の側に設けられた第1電極と該圧力室の外側に設けられた第2電極とを備えた圧電部材であって前記第1電極及び前記第2電極を用いて変形することで前記圧力を発生する圧電部材と、該圧電部材と隣接するベース部材と、を備え、
前記圧電部材が、前記液体を前記圧力室へ導入するための入口を備える第1面と、該第1面と反対の側に位置し、前記液体を前記圧力室から導出するための出口を備える第2面と、を有し、前記ベース部材の第1面が前記圧電部材の第1面と隣接し、前記ベース部材の第1面と反対の側の第2面に前記圧力室のそれぞれと連通する開口を有し、
前記圧電部材が、複数、各前記圧電部材の圧力室を流れる液体の流れ方向が互いに沿う様に、前記流れ方向と交わる第1方向と、前記流れ方向と交わるとともに前記第1方向とも交わる第2方向と、のそれぞれに関して配列されており、
且つ2つの前記ベース部材を、前記ベース部材の第2面を向かい合せて接合して2つの前記圧電部材から1つの前記圧力室が形成され、前記2つの圧電部材の前記第1電極が互いに電気的に接続され、前記2つの圧電部材の前記第2電極が互いに電気的に絶縁され、
前記2つのベース部材のうちの一方の前記ベース部材の第2面に設けられた第1共通配線であって、前記第1方向に配列した複数の前記第1電極と共通して接続された第1共通配線と、
前記2つのベース部材のうちの一方の前記ベース部材の第1面に設けられた第2共通配線であって、前記一方のベース部材に隣接する圧電部材の前記第2電極であって前記第2方向に配列した複数の前記第2電極と共通して接続された第2共通配線と、
前記2つのベース部材のうちの他方の前記ベース部材の第1面に設けられた第2共通配線であって、前記他方のベース部材に隣接する圧電部材の前記第2電極であって前記第2方向に配列した複数の前記第2電極と共通して接続された第2共通配線と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記圧力室となる貫通穴と、一の面に前記第1方向に配列された前記貫通穴の開口を繋ぐように帯状に延びる電極列と、を有する第1圧電部材プレートを用意する工程と、
前記圧力室となる貫通穴を有し、前記第1圧電部材プレートの前記第1方向における幅よりも小さい前記第1方向における幅を有する第2圧電部材プレートを用意する工程と、
前記第1圧電部材プレートと前記第2圧電部材プレートとを、互いの前記貫通穴が一致するように前記一の面を挟んで接合する工程と、
前記第1圧電部材プレート及び前記第2圧電部材プレートの、前記第1方向及び前記第2方向に隣接する前記貫通穴の間を通り、前記各々の圧電部材プレートを貫通しない周囲溝を形成して前記圧電部材と前記ベース部材を形成する工程と、
前記圧電部材及び前記ベース部材の全面に電極膜を形成する工程と、
前記圧電部材の第2面における前記電極膜を除去して前記第1電極と前記第2電極とを分離する工程と、
前記ベース部材の第1面と前記ベース部材の第2面との間にある前記ベース部材の側面の前記電極膜を除去して前記第1共通配線と前記第2共通配線とを分離する工程と、
前記ベース部材の第1面の、前記第1方向に隣り合う前記圧電部材の間の前記電極膜を、前記第2方向に沿って除去して前記第2共通配線を形成する工程と、を含む液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記圧電部材のうちの一方の前記圧電部材の第2面に接合され、前記圧力室と連通する流量調整穴を有する流体制御プレートと、
前記流体制御プレートの、前記圧電部材と接合される面の反対の側の面に接合され、前記流体制御プレートを介して前記圧力室に液体を供給するための液体供給ボックスと、
前記圧電部材のうちの他方の前記圧電部材の第2面に接合され、前記圧力室と連通して前記液体を吐出するノズルを有するノズルプレートと、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記前記第2共通配線を形成する工程の後に、前記流体制御プレートを前記圧電部材のうちの一方の前記圧電部材の第2面に接合する工程と、
前記液体供給ボックスを、前記流体制御プレートの、前記圧電部材と接合される面と反対の側の面に接合する工程と、
前記ノズルプレートを前記圧電部材のうちの他方の前記圧電部材の第2面に接合する工程と、を含む、請求項9に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記電極膜を形成する工程の前に、前記第1圧電部材プレートと前記第2圧電部材プレートを接合したときに露出する前記電極列を遮蔽するレジスト材料を形成する工程を含み、前記電極膜を形成する工程の後に、前記レジスト材料を除去する工程を含む、請求項9または10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極とを分離するとき、研磨により前記電極膜を除去することを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第1共通配線と前記第2共通配線とを分離するとき、研磨又はレーザー照射により前記電極膜を除去することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記第2共通配線を形成するとき、ダイシング又はワイヤーカットにより連続して帯状に前記電極膜を除去することを特徴とする請求項6乃至13のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第2共通配線を形成する工程の後に、前記第1電極及び前記第2電極を介して、前記圧電部材に分極処理を行う工程を含む、請求項6乃至14のいずれか1項に液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記電極膜を形成するとき、スパッタリング、蒸着、又はメッキにより形成することを特徴とする請求項6乃至15のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第2共通配線を形成する工程の後に、前記電極膜を前記圧力室に供給される液体から保護する保護膜を形成する工程を含む、請求項6乃至16のいずれか1項に液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記保護膜は、低透水性膜であることを特徴とする請求項17に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記保護膜は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜であることを特徴とする請求項17に記載の液体吐出ヘッド製造方法。
【請求項20】
前記保護膜は、パリレン−N、パリレン−C、パリレン−D、パリレン−F、あるいはパリレン膜、又はアルキルアルコキシランや有機シロキサン樹脂をベースとした有機SOG膜、又はポリイミドの有機ポリマー膜を主成分とする有機系保護膜であることを特徴とする請求項17に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記第2共通配線を形成する工程の後に、前記第1共通配線及び前記第2共通配線に、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト又はソルダーペーストを用いて、配線を接続する工程を含む請求項6乃至20のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255616(P2011−255616A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133020(P2010−133020)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】