液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法
【課題】廃インク量の増大を伴うことなく、信頼性の高い確実なノズル回復を行うことができる液体吐出装置ノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法を提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
【解決手段】液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置等に組込むことにより、良好な機能を果たす液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体をノズルから液滴として吐出させる液体吐出装置は、種々な液体を対象にしたものが知られているが、そのなかでも代表的なものとしてインクジェット記録装置をあげることができる。そこで、ここではインクジェット記録装置に例をとって従来技術の説明をする。
【0003】
インクジェット記録装置は、記録媒体に記録ヘッドからインク滴を吐出させて画像等のデータを記録するように構成されている。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置において、安定した吐出を維持するために定期的に記録ヘッドのノズル回復の動作を行う必要がある。ノズル回復の動作は、ノズルから印字に寄与しないインクを排出させる動作であり、このインクを排出させる方法としては種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、インクジェットヘッド内インクへの加圧とポンプ等によるノズルからの吸引を同時に行うことにより差圧を大きくしてインクを排出する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、一部のノズルのみをキャップして吸引することにより一部のノズルからインクを排出する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、ノズルからの吸引を行った後、減圧したキヤップ内圧を早く大気圧に戻すために加圧を行う方法が開示されている。
【0008】
ノズル回復の動作は、ノズルから印字に寄与しないインクを排出させる動作であり、排出される廃インクの量を減らすことは、インクジェット記録装置のランニングコスト低減に極めて重要であり、かつ不可欠な技術課題である。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法では、必要以上にインクを吸引してしまい、その結果、無駄に捨ててしまう廃インクの量が多くなるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された方法では、キャップされていないノズル内のインクは記録ヘッド内に逆流することとなり、ノズルのインクメニスカスが破壊され、インク不吐出などの問題を誘発する場合があった。
【0011】
従来、このような、廃インクの量を減らすためにポンプ等による吸引を行わずにインクを排出させる方法が提案されている(特許文献4,5参照)。
【0012】
特許文献4には、ノズル部に吸収体を当接させ漏洩インクを吸収する方法が開示されている。
【0013】
特許文献5には、布テープをノズル面に押圧した状態でインクを吐出させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平1−80544号公報
【特許文献2】特開平2−525号公報
【特許文献3】特開平3−51137号公報
【特許文献4】特開平4−187447号公報
【特許文献5】特開2001−260368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4に開示された方法は、インク吸収体がノズル部に接触すると吸引効果があるが、インクメニスカスが後退しているノズルの回復はできないという問題がある。
【0015】
また、特許文献5に開示された方法は、インクメニスカスが壊れたノズルからインクを吐出させることができず、このようなノズルの回復はできないという問題がある。
【0016】
以上のように特許文献1〜3に開示された方法では、必要以上にインクを吸引してしまい、その結果、無駄に捨ててしまうインクの量が多くなるという問題がある。
【0017】
また、特許文献4,5に開示された方法では、メニスカス異常により吐出不良が生じたノズルは回復動作によっても正常状態に復帰しない事態が生じることがあった。
【0018】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、廃インク量の増大を伴うことなく、信頼性の高い確実なノズル回復を行うことができる液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、以下に示す発明により達成される。
1.
液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、
毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
2.
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成されていることを特徴とする前記1に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
3.
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うように構成されていることを特徴とする前記1または2に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
4.
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
5.
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
6.
毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記液体吐出ヘッドのノズル内の液体にノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除することを特徴とする液体吐出装置のノズル回復方法。
7,
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うことを特徴とする前記6に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
8.
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うことを特徴とする前記6または7に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
9.
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする前記6乃至8の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
10.
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする前記6乃至9の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、廃インク量の増大を伴うことなく、信頼性の高い確実なノズル回復を行うことができる液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。ノズル回復装置及び液体吐出装置の実施の形態の一例としてインクジェット記録装置を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置(液体吐出装置)の断面図である。
【0024】
Aはインクジェット記録装置全体を示し、3は画像が記録された記録媒体Pが排出され積載される排紙部である。インクジェット記録装置Aには、本発明に係る液体吐出装置を構成する、印字ユニット50、インクカートリッジ11、送液ポンプ(送液手段)13、補給流路12、中間タンク(密閉可能な容器)20、搬送部2及び記録媒体Pが収納された給紙部1等が設けられてる。
【0025】
制御部4は、例えば、ROMに記憶されたプログラムに従い、インクジェット記録装置を構成する各種手段を作動させ、原稿の画像情報を読取り、または、インターフェース(図示せず)を介して外部の情報機器から画像情報等を入力し、その情報を記憶し、そして記録媒体に記録して出力する一連の画像情報記録制御を実行させるプリンタ機能や、プリンタ機能を確実に実行できるように各種手段の調整や保全等を行うメンテナンス機能を備えている。
【0026】
印字ユニット50は、詳細は後述するが、記録媒体Pが搬送される方向に対して直交する方向つまり記録媒体Pの幅方向に延在するように配設されている。印字ユニット50の下面は記録媒体Pに指向されており、その下面(以下、ノズル面と称する。)には複数のノズルが記録媒体Pの幅方向に2列の列を成して形成されている。印字ユニット50内にはそれぞれのノズルに対応してピエゾ素子といった吐出手段とそれぞれの印字ヘッドに対応したインク吐出作動を行わせるための駆動回路等が設けられており、それぞれの吐出手段によって各ノズルからインクが液滴として吐出される。
【0027】
記録媒体Pの搬送は、給紙部1に収納されている記録媒体Pを送り出しローラR1により1枚ずつ取り出す。取り出された記録媒体Pを1対のローラR2が1対のローラR3方向に送る。ローラR3に挟持された記録媒体Pは更に搬送部2へと送られる。
【0028】
搬送部2を介して搬送される記録媒体Pは、印字ユニット50に対向して、一定の速度で搬送されながら画像が記録される。
【0029】
その後、排紙搬送動作が実行され、画像が記録された記録媒体Pが1対のローラR8により挟持され排紙部3へと排紙されるようになっている。
【0030】
図2〜図5は、印字部の構成を示す斜視図であり、それぞれ、印字時、ノズル回復動作の準備のために印字ユニット待機時(ワイプユニットの装着前)、印字ユニット待機時(ワイプユニットの装着後)、ノズル回復動作時の各状態を示している。
【0031】
また、図6は、図4における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図であり、図7は、図5における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【0032】
本実施形態においては、図2に示すように、複数個の印字ヘッド130が2列の千鳥状に配列された状態で支持体140に取り付けられて、1つの印字ユニット50を構成している。
【0033】
印字部5は、印字ユニット50と、印字ユニット50の支持体140の一部に結合されて印字ユニット50を搭載するキャリッジ120と、キャリッジ120が結合されたレール10と、レール10に案内されて、図の矢印Bで示すように、記録媒体Pの搬送方向に垂直な上下方向にキャリッジ120を移動させる上下駆動機構(不図示)と、これら各部を一体的に支持するとともに、プラテン8の上面に固定されるフレーム9とを備える。つまり、各部は、相対的な位置関係がずれないようにフレーム9によって固定されている。
【0034】
プラテン8は、印字時に印字ユニット50に対向した記録媒体Pを平らな状態に維持することで、正確な印字を可能とする。
【0035】
上下駆動機構は、印字ユニット50が搭載されたキャリッジ120を設定された所定の範囲で上下動させる。つまり、上下駆動機構は、図2に示すように、印字ユニット50のノズルから記録媒体Pにインクを吐出させて印字を行う位置(以下、印字位置と称する場合がある。)と、図3、図4に示すように、ノズル回復の動作の準備時に、印字ユニット50がプラテン8から離れて待機した位置(以下、印字ユニット待機位置と称する場合がある。)と、図5に示すように、印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる位置(以下、ノズル回復動作位置と称する場合がある。)との少なくとも3つの位置を切り換える。
【0036】
図4,図5における110は、ワイプユニットであり、このワイプユニット110は、インクジェット記録装置から着脱自在となっており、印字ユニット50のノズル回復動作を行うとき以外は、操作者が適宜に取り外すことができる。
【0037】
図2において、印字ユニット50が印字動作中であるため、ワイプユニット110は、使用されない状態で取り外されている。
【0038】
このワイプユニット110は、周囲をカバー17で覆われ、内部には印字ヘッド130のノズルから滲み出たインクを毛管力で吸収するワイパーとしての吸収部材200と、吸収部材200を支持するために、ノズル面150に対して曲面を有する凸形状となるようにノズル面150の対向位置に設けられたフィルム状の非吸収性弾性部材16と、この吸収部材200の供給部材としての巻き出しローラ19及び巻き取り部材としての巻き取りローラ18とが格納されている。
【0039】
吸収部材200は、本実施形態における毛管力を有する吸収部材に相当し、不織布を用いることが好ましい。
【0040】
フィルム状の非吸収性弾性部材16は、印字ユニット50を構成する2列の印字ヘッド130の各ノズル面150に対応して2つ設けられ、各々、各列のノズルの配列方向(印字ユニット50の長手方向)に沿って延在している、
本実施形態においては、フィルム状の非吸収性弾性部材16としてPETフィルムを用いているが、その他の材質のものとしてもよく、例えば、その他の樹脂フィルムや金属フィルムを用いても良い。
【0041】
巻き出しローラ19はその軸心回りに回転自在となって支持されており、巻き出しローラ19には吸収部材200が予めロール状に巻回されている。巻き取りローラ18はその軸心回りに回転自在となっており、操作者よって手動で回転される。
【0042】
巻き出しローラ19から図6中の矢印の方向に引き出された吸収部材200は、巻き取りローラ18に導かれている。これにより、吸収部材200の搬送される搬送経路が確立される。そして、操作者により巻き取りローラ18が回転することで、吸収部材200が巻き出しローラ19から引き出されて、引き出された吸収部材200は巻き取りローラ18に搬送される。
【0043】
吸収部材200は、必要に応じて巻き出しながら使用し、ノズルから滲み出たインクを吸収した後は巻き取りローラ18に回収される。全ての吸収部材200を使用したら、すなわち吸収部材全てが巻き取りローラ18に巻き取られたら使用済みロールとしてワイプユニット110から取り外し廃棄する。
【0044】
また、巻き出しローラ19の軸には、引き出し方向とは、逆方向に一定の負荷トルクがかけられており、巻き取りローラ18の軸には、引き出し方向に一定の負荷トルクがかけられている。このため、吸収部材200は、一定のテンションが保たれている。
【0045】
フィルム状の非吸収性弾性部材16は、巻き出しローラ19と巻き取りローラ18との間で一定のテンションで張られた吸収部材200の下方においてノズル面150に対向するように位置されている。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置においてノズル回復の動作時に印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる動作について、説明する。
【0047】
まず、ノズル回復の動作に先だって、図4に示すようにワイプユニット110を印字ユニット50とプラテン8の間に設置する。
【0048】
まず、制御部4は、上下駆動機構を制御して、キャリッジ120を上方向に移動させ、図3に示す印字ユニット待機位置まで移動させる。これは、後述するように、ワイプユニット110を設置するスペースを確保するための移動である。従って、印字ユニット50のノズル面150が、ワイプユニット110を設置した時の最上部よりも上方に位置するようセットする。
【0049】
次に、操作者は、図4に示すように、プラテン8上で、かつノズル面150に対向する位置にワイプユニット110を設置する。図4において、印字ユニット50は、印字ユニット待機動作により上方に位置しており、プラテン8とノズル面150との間には隙間ができている。そして、操作者により、ワイプユニット110は、プラテン8とノズル面150の間の隙間に設置される。この時、ワイプユニットとプラテン上の記録媒体の間には隙間がある。すなわち、記録媒体を取り外すことなくワイプユニットをセット可能な構成となっている。
【0050】
なお、ワイプユニット110は、印字動作中等の使用されないときにインクジェット記録装置内の印字ユニット50の上下方向の移動経路から退避した位置(以降退避位置と称する場合がある)で保持されるようにしてもよい。このワイプユニット110を退避位置とワイプ位置との間で移動させるために、周知の技術的手段を用いることができる。例えば、ワイプユニット110をキャリッジに固定して移動方向に設けたガイドレールに沿って移動可能として構成したり、あるいは、ワイプユニット110をアーム部材に接続して、このアーム部材を一端で支持して回動可能として構成するなどの手段がある。
【0051】
次に、ワイパーである吸収部材200を印字ヘッド130のノズルに当接させるときは、制御部4は、上下駆動機構を制御して、キャリッジ120を下方向に移動させ、図5に示すようにノズル回復動作位置まで移動させる。このとき、図7に示すように、印字ユニット50の位置は、ノズル面150がワイプユニット110の吸収部材200にある程度の圧力で押圧された状態になる。このとき、吸収部材200は、フィルム状の非吸収性弾性部材16により支持されている。この状態で加圧手段により加圧が行われ、ノズルから滲み出たインクは、吸収部材200の毛管力により吸収される。
【0052】
ノズルから滲み出たインクが吸収部材200に吸収された所定時間の経過後に、ワイパーである吸収部材200を印字ヘッド130のノズルから離間させるときは、制御部4は、キヤリッジ120を元の上方の印字ユニット待機位置に戻し、押圧状態を解除する。操作者は、ワイプユニット110をインクジェット記録装置の外に移動させる。これにより、本実施形態に係るノズル回復の動作時に印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる動作が終了し、その後は印字動作に移ることが可能となる。
【0053】
一方、押圧解除後の吸収部材200は、操作者が、巻き取りローラ18を回転させることにより所定量巻き取られ、このことにより、次回の押圧時、インクを吸収した部分の吸収部材200がノズル面150に再び接触することはない。さらに、吸収部材を搬送することでフィルム状の非吸収性弾性部材に付着したインクも拭き取ることが可能になる。
【0054】
なお、巻き取りローラ18の回転制御は、ワイプユニット110をインクジェット記録装置に設置した状態で、前述した制御部4を介して、モータ等の駆動源を駆動させ、巻き取りローラ18を回転することで、自動的に行なうように構成してもよい。
【0055】
図8は、本発明に係るインク供給系、及びノズル回復系の実施の形態を示す模式図である。
【0056】
インクカートリッジ11には、インクが貯留されている。貯留されたインクは双方向定量ポンプである送液ポンプ(送液手段)13によって中間タンク(密閉可能な容器)20に送入されたり、逆に中間タンク20からインクカートリッジ11に排出されたりする。中間タンク20には、中間タンク20と大気を連通させたり、遮断したりする弁(大気連通遮断手段)33と、中間タンク20の液面の基準位置を検知する液面検知センサ(液面検知手段)21Aと、中間タンク20の液面の上限位置を検知する液面検知センサ(液面検知手段)21Bと、中間タンク20から印字ユニット50へインクを供給する供給流路14と、が配されている。供給流路14の途中には弁(供給流路開閉手段)31が配されている。
【0057】
なお、供給流路14からインクカートリッジ11までが本実施形態における液体供給部に相当し、中間タンク20が加圧手段に相当する。また、中間タンク20から弁32までがキャリッジ120に搭載されている。
【0058】
次に、インクの圧力設定の方法について説明する。
【0059】
まず、弁31を閉鎖状態で、液面検知センサ21Aを用いて液面の高さを設定する。弁33を開いて液面検知センサ21Aで検知しながら送液ポンプ13の送入・排出により液面を初期化し、必要に応じてさらに送液ポンプ13により定量送液する。これにより、液面を液面センサ21Aの位置あるいはそれより高い位置に設定することができる。
【0060】
次に弁33を閉鎖して中間タンク20を密閉にする。この状態で中間タンク20内の気圧は1気圧である。
【0061】
中間タンク20のインクを除いた気体の体積をV1とする。初期の中間タンク20内の気圧をP1、所望の中間タンク20内の気圧をP2とする。P2とインクの送液量(送入量又は排出量)ΔDとの関係は、以下の式になる。
【0062】
【数1】
【0063】
例えば、中間タンク20内の気圧を1.5気圧にするには、送入するインクの送液量ΔDはV1/3になる。すなわち、送液ポンプ13でV1/3のインクを中間タンク20に送入すれば、1.5気圧の圧力が発生する。1.5気圧が発生した後、図7に示すようにワイプユニット110の吸収部材200を印字ユニット50のノズルに当接した状態で、弁31を開放状態にすると供給流路14を経由して印字ユニット50に瞬間的に1.5気圧の圧力が印加され、印字ユニット50のノズルからインクが押し出されて滲み出る。滲み出たインクは、吸収部材200により吸収される。
【0064】
逆に、中間タンク20内の気圧を0.995気圧にするには、排出するインクの送液量ΔDは約0.005×V1になる。すなわち、送液ポンプ13で0.005×V1のインクを中間タンク20から排出すれば、0.995気圧になる。0.995気圧が発生した後、弁31を開放状態にすると印字ユニット50のノズルは、通常印字に適した背圧に保たれ、インクメニスカスが形成される。
【0065】
中間タンク(密閉可能な容器)20に弁(空圧センサ保護弁)34を介して空圧センサ23を設け、水頭値設定および印字ユニット50への背圧制御は中間タンク20内の圧力を空圧センサ23で検知ながら送液ポンプ(送液手段)13の送液量を制御するフィードバック制御である。ノズル回復の動作の加圧は、弁(供給流路開閉手段)31を閉じ、弁(大気連通遮断手段)33を開いて液面検知センサ(液面検知手段)21Aで検知しながら送液ポンプ13の送入・排出により液面を初期化し、必要に応じてさらに送液ポンプ13により定量送液した後、弁33及び弁34を閉じて所定の圧力値に対応するインク量を送液ポンプ13により送液して中間タンク20内を加圧し、その後、所定時間の間弁(供給流路開閉手段)31を開いて供給流路14経由でノズルよりインクを強制排出する。
【0066】
インクは、インクカートリッジ11と中間タンク20との間の補給流路12を経由して送液ポンプ13により送入、または逆に排出される。補給流路12の途中にはフィルター37,インクカートリッジ11の空検知用の圧力センサ36、弁(補給流路開閉手段)35が配されている。弁(補給流路開閉手段)35は、インクカートリッジ11を交換する際に流路に空気やゴミが進入するのを防止するために設けられており、通常は開いており、インクカートリッジ11を交換するときのみ閉鎖する。
【0067】
中間タンク20には大気連通路22を介して弁33(大気連通遮断手段)を設けてある。弁(空圧センサ保護弁)34は、中間タンク20内を加圧し、ヘッドのノズルよりインクを押し出すノズル回復の動作時は空圧センサ23に過大な圧力がかかるのを避けるために閉鎖しておく。
【0068】
また、印字ユニット50は、共通流路51を備えており、共通流路51の一端にインク供給口52、他端に気泡排出口53がある。インク供給口52は、供給流路14を介して中間タンク20に接続され、中間タンク20からインクが供給される。気泡排出口53は、排出流路15を介して廃液タンク43に接続されている。共通流路51において、インク供給口52と気泡排出口53の間には、各印字ヘッド130にインクを分岐供給する分岐供給口が、各印字ヘッド130に対応した位置に、その数分だけ設けられている。
【0069】
弁(流路内エアー除去弁)32は排出流路15の途中に配され、インク供給路のインク初期導入時等に開放し、流路内のエアーをインクと共に排出流路15を経由して廃液タンク43へ排出する。図8に示すように、ワイプユニット110は、ノズル回復時に動作させる。
【0070】
次に、本実施の形態のノズル回復の動作を図9〜13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0071】
図9は本実施の形態にかかるノズル回復の動作のメインルーチンを示すフローチャート、図10は図9に示すノズル回復の動作における中間タンクへのインク導入のサブルーチンを示すフローチャート、図11は図9に示すノズル回復の動作における中間タンク与圧のサブルーチンを示すフローチャート、図12は図9に示すノズル回復の動作におけるヘッドへの加圧のサブルーチンを示すフローチャート、図13は図9に示すノズル回復の動作における印字水頭値設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0072】
<ノズル回復の動作>
印字ユニット50からの吐出に関わる印字不良、例えば、ノズルの目詰まりやインク滴の出射曲がりなどが発生した場合に以下の動作を行う。図8の模式図を参考に説明する。
【0073】
図9に示すように、ステップS1では、中間タンクへのインク導入のサブルーチンが実行される。中間タンクへのインク導入のサブルーチンの具体的な内容は図10を用いて後に詳述する。
【0074】
ステップS2では、中間タンク与圧のサブルーチンが実行される。中間タンク与圧のサブルーチンの具体的な内容は図11を用いて後に詳述する。
【0075】
ステップS3では、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルに当接させる。
【0076】
ステップS4では、ヘッドへの加圧のサブルーチンが実行される。ヘッドへの加圧のサブルーチンの具体的な内容は図12を用いて後に詳述する。
【0077】
ステップS5では、ヘッドへの加圧によりノズルから押し出されたインクが吸収部材200に吸収されるまでの所定の待ち時間(本実施形態では10秒)に達したかを判断する。所定の待ち時間に達した(ステップS5:YES)場合はステップS6へ進み、所定の待ち時間に達していない(ステップS5:NO)場合は、そのまま待機する。なお待ち時間は、デフォルト値として10秒に設定され、制御部4の記憶手段に記憶されているが、用いるインクの種類や吸収部材の種類等に応じて設定を変更することが可能である。
【0078】
この待ち時間は、後述するステップS8で、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルから離間させた際に吸収部材200で吸収しきれていないインクがノズル面に残留することを防止するために設定される。ステップS6の中間タンクへのインク導入及びステップS7の印字水頭値設定のサブルーチンを行わない場合は、加圧によりノズルから押し出されたインクが吸収部材200の毛管力により吸収されて吸収部材200へ移動する移動が終了するまでの時間に設定され、本実施形態のようにステップS6の中間タンクへのインク導入及びステップS7の印字水頭値設定のサブルーチンを行なう場合は、その分短い時間に設定される。
【0079】
ステップS6では、中間タンクへのインク導入のサブルーチンが実行される。中間タンクへのインク導入のサブルーチンの具体的な内容は図10を用いて後に詳述する。
【0080】
ステップS7では、印字水頭値設定のサブルーチンが実行される。印字水頭値設定のサブルーチンの具体的な内容は図13を用いて後に詳述する。
【0081】
ステップS8では、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルから離間させる。
【0082】
ステップS9では、ワイプユニット110の吸収部材200に対して全ノズル吐出を所定回数行うフラッシング動作を実行する。
【0083】
<中間タンクへのインク導入の動作>
次に、上述した中間タンクへのインク導入のサブルーチンを図10を用いて説明する。
【0084】
図9に示すノズル回復の動作の最初あるいは図9に示すフローチャートにおいてS5のインク吸収時間10秒が経過したと判断されると図10に示す中間タンクへのインク導入のサブルーチンは開始される。
【0085】
中間タンク20内の空気量が予め定められた所定値(本実施形態では、タンク容量113mlに対して空気量が70mlに設定)になるように、インクをインクカートリッジ11から供給系を通じて中間タンク20に導入する動作のフローチャートである。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0086】
ステップS11では、弁31、32、34を閉鎖、弁33を開放する。
【0087】
ステップS12では、基準位置の液面センサ21Aまでインクが達しているかを判断する。達している(ステップS12:YES)場合はステップS18へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、基準位置の液面センサ21Aにインクが達しない状態になるまで中間タンクからインクを排出する。ここで逆転とは、インクが中間タンク20からインクカートリッジ11へ送入される方向に回転させることである。すなわち、中間タンク11を大気と連通させてインクを排出する。達していない(ステップS12:NO)場合はステップS13へ進む。基準位置の液面センサ21Aは、予め設定された値があり液面がそれに達した時点で基準位置の信号を発する。
【0088】
ステップS13では、送液ポンプ13を正転させる。ここで正転とは、インクがインクカートリッジ11から中間タンク20へ送入される方向に回転させることである。すなわち、中間タンク11を大気と連通させてインクを送入する。
【0089】
ステップS14では、基準位置の液面センサ21Aまでインクが達したかを判断する。達した(ステップS14:YES)場合はステップS15へ進み、達していない(ステップS14:NO)場合は、中間タンク20へのインクの送入を続ける。
【0090】
ステップS15では、送液ポンプ13を所定の回転数(時間)だけ正転させる。すなわち、中間タンク20に定量送液する。ここで、空気の量が中間タンク20内の空気量が予め定められた所定値(本実施形態では、タンク容量113mlに対して空気量が70mlに設定)になるようにするためには、中間タンク内の液量は43mlにする必要がある。本実施形態においては、ステップS14で基準位置の液面センサ21Aまでインクが達している状態の液量は34mlであるため、9mlの定量送液が必要であり、送液ポンプ13を60回転させる。なお、この回転数は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0091】
ステップS16では、送液ポンプ13を停止させる。
【0092】
以上に説明した一連の動作が終了すると、中間タンクへのインク導入の動作のサブルーチンの処理(S1またはS6)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0093】
<中間タンク与圧の動作>
次に、上述した中間タンク与圧のサブルーチンを図11を用いて説明する。
【0094】
図9に示すフローチャートにおいてステップS1の中間タンクへのインク導入が終了したときから図11に示す中間タンクへのインク導入のサブルーチンは開始される。
【0095】
インクをインクカートリッジ11から供給系を通じて中間タンク20に導入して中間タンク20内の空気を圧縮する動作のフローチャートである。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0096】
ステップS31では、弁31、32、33、34を閉鎖する。
【0097】
ステップS32では、送液ポンプ13を送液ポンプ13を所定の回転数(時間)だけ正転させる。すなわち、中間タンク20に定量送液して加圧する。本実施形態では、所定の回転数は中間タンク20が500cmAqの正圧になる回転数であり、送液ポンプ13を150回転させる。なお、この回転数は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0098】
なお、500cmAqは、本実施形態の印字ヘッド130ノズルからインクが滲み出る圧力であり、印字ヘッドのメニスカス保持力から推定可能である。即ち、メニスカス保持力は(インクの表面張力の2倍)/ノズル半径で表されるので、インクの表面張力=33(mN/m)、ノズル直径27(μm)とすると、メニスカス保持力はおよそ50cmAqとなる(4.9kPa)。50cmAqより十分大きな圧力を印加してやればノズルからインクを排出できる。
【0099】
ステップS33では、送液ポンプ13を停止させる。
【0100】
以上に説明した一連の動作が終了すると、中間タンク与圧の動作のサブルーチンの処理(S2)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0101】
<ヘッドへの加圧の動作>
次に、上述したヘッドへの加圧のサブルーチンを図12を用いて説明する。
【0102】
図9に示すフローチャートにおいてS3のワイパー当接が終了したときから図12に示すヘッドへの加圧のサブルーチンは開始される。
【0103】
加圧された中間タンク20のインクを弁31および供給路14を経由して印字ユニット50のノズルから押し出させる動作のフローチャートである。その際、印字ユニット50内の流路に存在する小さなゴミや気泡はインクと共にノズルより排出される。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0104】
ステップS41では、弁31を開放、弁32、33、34を閉鎖する。
【0105】
ステップS42では、弁31の所定の開放時間(本実施形態では8秒)に達したかを判断する。所定の開放時間に達した(ステップS42:YES)場合はステップS43へ進み、所定の開放時間に達していない(ステップS42:NO)場合は、そのまま待機する。この間、加圧された中間タンク20のインクは弁31および供給路14を経由して印字ユニット50のノズルから押し出される。その際、印字ユニット50内の流路に存在する小さなゴミや気泡はインクと共にノズルより排出される。なお、この開放時間は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0106】
ステップS43では、弁31、33を開放、弁32、34を閉鎖する。この時点で印字ユニット50のノズルからのインクの押し出しは停止し、加圧が解除される。加圧が解除されたときの圧力は、ノズルからのインクの押し出しが生じない圧力、すなわち、メニスカス保持力(本実施形態ではおよそ50cmAq)より小さな圧力であればよい。
【0107】
ステップS44では、弁33の所定の開放時間(本実施形態では1秒)に達したかを判断する。所定の開放時間に達した(ステップS44:YES)場合はサブルーチンを終了し、所定の解法時間に達していない(ステップS44:NO)場合は、そのまま待機する弁33の開放時間(本実施形態では1秒)の経過を待つ。なお、この開放時間は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0108】
以上に説明した一連の動作が終了すると、ヘッドへの加圧の動作のサブルーチンの処理(S4)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0109】
<印字水頭値設定の動作>
次に、上述した印字水頭値設定のサブルーチンを図13を用いて説明する。
【0110】
図9に示すフローチャートにおいてS6の中間タンクへのインク導入が終了したときから図13に示す印字水頭値設定のサブルーチンは開始される。
【0111】
印字ユニット50のノズルでは、印字時や印字待機時のとき、インクが滲みだしたり、逆にノズル内のインクが吸い上げられたり、しないように一定の負圧の範囲に保持しておく必要がある。ノズルで一定の負圧を形成するために中間タンクの気圧を一定の範囲で制御する。上限とは、一定の範囲の中で設定された上限値を指す。基準位置とは、一定範囲の中で設定された基準位置値を指す。これらは、中間タンク20の気圧を測定する空圧センサ23を用いて測定する。
【0112】
本実施形態では、図9に示すフローチャートにおいてS7のワイパー離間の前にこの印字水頭値設定を行うことにより、ワイパー離間後のインクの滲みだしを防止する。
【0113】
ステップS51では、弁34を開放、弁31,32、33を閉鎖する。
【0114】
ステップS52では、空圧センサ23を用いて測定し、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達したかを判断する。規定値に達した(ステップS52:YES)場合はステップS53へ進み、送液ポンプ13を停止する。
【0115】
規定値に達していない(ステップS52:NO)場合は、テップS55へ進み、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)より高いか否かを判断する。規定値より高い(ステップS55:YES)場合はステップS56へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、中間タンクからインクを排出する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで排出が継続される。
【0116】
規定値より低い(ステップS55:NO)場合はステップS57へ進み、送液ポンプ13を正転させ、中間タンクへインクを送入する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで送入が継続される。なお、この規定値は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、前述の一定範囲内で設定を変更することが可能である。
【0117】
ステップS54では、弁31,弁34を開放、弁32、33を閉鎖する。
【0118】
以上に説明した一連の動作が終了すると、印字水頭値設定の動作のサブルーチンの処理(S7)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0119】
<印字中の印字水頭値設定の動作>
印字動作により中間タンク20のインクが減ってくると中間タンクの気圧が下がってくる。中間タンク20の気圧の一定の範囲を保持するために印字中の印字水頭値設定の動作が随時行われインクカートリッジ11から中間タンク20へインクの送入制御を行う。
【0120】
図14は本実施の形態にかかる印字中の印字水頭値設定の動作を示すフローチャートである。
【0121】
印字ユニット50のノズルでは、印字時のとき、インクが滲みだしたり、逆にノズル内のインクが吸い上げられたり、しないように一定の負圧の範囲に保持しておく必要がある。ノズルで一定の負圧を形成するために中間タンクの気圧を一定の範囲で制御する。上限とは、一定の範囲の中で設定された上限値を指す。基準位置とは、一定範囲の中で設定された基準位置値を指す。これらは、中間タンク20の気圧を測定する空圧センサ23を用いて測定する。
【0122】
ステップS61では、弁31、弁34を開放、32、33を閉鎖する。
【0123】
ステップS62では、空圧センサ23を用いて測定し、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達したかを判断する。規定値に達した(ステップS62:YES)場合はステップS63へ進み、送液ポンプ13を停止する。停止させた後ステップS62に進む。
【0124】
規定値に達していない(ステップS62:NO)場合は、ステップS64へ進み、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)より高いか否かを判断する。規定値より高い(ステップS64:YES)場合はステップS65へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、中間タンクからインクを排出する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで排出が継続される。
【0125】
規定値より低い(ステップS64:NO)場合はステップS66へ進み、送液ポンプ13を正転させ、中間タンクへインクを送入する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで送入が継続される。なお、この規定値は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、前述の一定範囲内で設定を変更することが可能である。
【0126】
以上の一連の動作に従って、印字動作が終了するまで印字中の印字水頭値設定の動作を繰り返し行っている。
【0127】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出装置のノズル回復装置では、液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、吸収部材の当接を解除するように構成されているので、加圧によりノズルからインクを滲み出させ、滲み出たインクを毛管力を有する吸収部材が吸収するので、確実なノズル回復が可能になるとともに、滲みださせる程度の小さな圧力の印加でノズルからインクを押し出すことができ、インクが滲み出たら加圧力を解除できるので、その結果、排出される廃インク量も少なくできる。
【0128】
また、吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成することにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0129】
また、吸収部材を前記ノズルから離間した後、吸収部材にフラッシングを行うように構成することにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0130】
また、吸収部材は、不織布であることにより、吸収部材の吸収能力を高めることができ、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0131】
また、加圧手段は、液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0132】
また、加圧手段を、供給流路開閉弁を閉じ中間タンクの内圧が所定の圧力になるまで双方向ポンプで中間タンクに補給した後、供給流路開閉弁を開きノズル内のインクにノズルから押し出す方向に圧力を印加するように構成することにより、ノズルからインクが滲み出る程度の微少圧力の設定を行う際に、より低コストかつ信頼性の高い圧力設定ができる。
【0133】
上記各実施の形態は、インクジェット記録装置を対象にしたものであるが、本発明によってえられた液体吐出装置は、インクジェット記録装置用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を吐出することができる。さらに、上記実施の形態では、液体の一つであるインクを用いたインクジェットヘッドについて説明したが、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド,有機ELディスプレー,FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッド全般に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の断面図である。
【図2】インクジェット記録装置における印字時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図3】インクジェット記録装置における印字ユニット待機時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置における印字ユニット待機時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図5】インクジェット記録装置におけるノズル回復の動作時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図6】図4における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【図7】図5における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【図8】本発明に係るインク供給系、及びノズル回復系の実施の形態を示す模式図である。
【図9】本実施の形態にかかるノズル回復の動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図9に示すノズル回復の動作における中間タンクへのインク導入のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】図9に示すノズル回復の動作における中間タンク与圧のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】図9に示すノズル回復の動作におけるヘッドへの加圧のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図13】図9に示すノズル回復の動作における印字水頭値設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】印字中の印字水頭値設定の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0135】
11 インクカートリッジ
12 補給流路
13 送液ポンプ(送液手段)
14 供給流路
15 排出流路
20 中間タンク(密閉可能な容器)
21A、21B 液面検知センサ(液面検知手段)
23 空圧センサ
31 弁(供給流路開閉手段)
32 弁(流路内エアー除去弁)
33 弁(大気連通遮断手段)
34 弁(空圧センサ保護弁)
50 印字ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置等に組込むことにより、良好な機能を果たす液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体をノズルから液滴として吐出させる液体吐出装置は、種々な液体を対象にしたものが知られているが、そのなかでも代表的なものとしてインクジェット記録装置をあげることができる。そこで、ここではインクジェット記録装置に例をとって従来技術の説明をする。
【0003】
インクジェット記録装置は、記録媒体に記録ヘッドからインク滴を吐出させて画像等のデータを記録するように構成されている。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置において、安定した吐出を維持するために定期的に記録ヘッドのノズル回復の動作を行う必要がある。ノズル回復の動作は、ノズルから印字に寄与しないインクを排出させる動作であり、このインクを排出させる方法としては種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、インクジェットヘッド内インクへの加圧とポンプ等によるノズルからの吸引を同時に行うことにより差圧を大きくしてインクを排出する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、一部のノズルのみをキャップして吸引することにより一部のノズルからインクを排出する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、ノズルからの吸引を行った後、減圧したキヤップ内圧を早く大気圧に戻すために加圧を行う方法が開示されている。
【0008】
ノズル回復の動作は、ノズルから印字に寄与しないインクを排出させる動作であり、排出される廃インクの量を減らすことは、インクジェット記録装置のランニングコスト低減に極めて重要であり、かつ不可欠な技術課題である。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法では、必要以上にインクを吸引してしまい、その結果、無駄に捨ててしまう廃インクの量が多くなるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された方法では、キャップされていないノズル内のインクは記録ヘッド内に逆流することとなり、ノズルのインクメニスカスが破壊され、インク不吐出などの問題を誘発する場合があった。
【0011】
従来、このような、廃インクの量を減らすためにポンプ等による吸引を行わずにインクを排出させる方法が提案されている(特許文献4,5参照)。
【0012】
特許文献4には、ノズル部に吸収体を当接させ漏洩インクを吸収する方法が開示されている。
【0013】
特許文献5には、布テープをノズル面に押圧した状態でインクを吐出させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平1−80544号公報
【特許文献2】特開平2−525号公報
【特許文献3】特開平3−51137号公報
【特許文献4】特開平4−187447号公報
【特許文献5】特開2001−260368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4に開示された方法は、インク吸収体がノズル部に接触すると吸引効果があるが、インクメニスカスが後退しているノズルの回復はできないという問題がある。
【0015】
また、特許文献5に開示された方法は、インクメニスカスが壊れたノズルからインクを吐出させることができず、このようなノズルの回復はできないという問題がある。
【0016】
以上のように特許文献1〜3に開示された方法では、必要以上にインクを吸引してしまい、その結果、無駄に捨ててしまうインクの量が多くなるという問題がある。
【0017】
また、特許文献4,5に開示された方法では、メニスカス異常により吐出不良が生じたノズルは回復動作によっても正常状態に復帰しない事態が生じることがあった。
【0018】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、廃インク量の増大を伴うことなく、信頼性の高い確実なノズル回復を行うことができる液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、以下に示す発明により達成される。
1.
液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、
毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
2.
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成されていることを特徴とする前記1に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
3.
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うように構成されていることを特徴とする前記1または2に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
4.
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
5.
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
6.
毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記液体吐出ヘッドのノズル内の液体にノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除することを特徴とする液体吐出装置のノズル回復方法。
7,
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うことを特徴とする前記6に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
8.
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うことを特徴とする前記6または7に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
9.
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする前記6乃至8の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
10.
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする前記6乃至9の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、廃インク量の増大を伴うことなく、信頼性の高い確実なノズル回復を行うことができる液体吐出装置のノズル回復装置及び液体吐出装置のノズル回復方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。ノズル回復装置及び液体吐出装置の実施の形態の一例としてインクジェット記録装置を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置(液体吐出装置)の断面図である。
【0024】
Aはインクジェット記録装置全体を示し、3は画像が記録された記録媒体Pが排出され積載される排紙部である。インクジェット記録装置Aには、本発明に係る液体吐出装置を構成する、印字ユニット50、インクカートリッジ11、送液ポンプ(送液手段)13、補給流路12、中間タンク(密閉可能な容器)20、搬送部2及び記録媒体Pが収納された給紙部1等が設けられてる。
【0025】
制御部4は、例えば、ROMに記憶されたプログラムに従い、インクジェット記録装置を構成する各種手段を作動させ、原稿の画像情報を読取り、または、インターフェース(図示せず)を介して外部の情報機器から画像情報等を入力し、その情報を記憶し、そして記録媒体に記録して出力する一連の画像情報記録制御を実行させるプリンタ機能や、プリンタ機能を確実に実行できるように各種手段の調整や保全等を行うメンテナンス機能を備えている。
【0026】
印字ユニット50は、詳細は後述するが、記録媒体Pが搬送される方向に対して直交する方向つまり記録媒体Pの幅方向に延在するように配設されている。印字ユニット50の下面は記録媒体Pに指向されており、その下面(以下、ノズル面と称する。)には複数のノズルが記録媒体Pの幅方向に2列の列を成して形成されている。印字ユニット50内にはそれぞれのノズルに対応してピエゾ素子といった吐出手段とそれぞれの印字ヘッドに対応したインク吐出作動を行わせるための駆動回路等が設けられており、それぞれの吐出手段によって各ノズルからインクが液滴として吐出される。
【0027】
記録媒体Pの搬送は、給紙部1に収納されている記録媒体Pを送り出しローラR1により1枚ずつ取り出す。取り出された記録媒体Pを1対のローラR2が1対のローラR3方向に送る。ローラR3に挟持された記録媒体Pは更に搬送部2へと送られる。
【0028】
搬送部2を介して搬送される記録媒体Pは、印字ユニット50に対向して、一定の速度で搬送されながら画像が記録される。
【0029】
その後、排紙搬送動作が実行され、画像が記録された記録媒体Pが1対のローラR8により挟持され排紙部3へと排紙されるようになっている。
【0030】
図2〜図5は、印字部の構成を示す斜視図であり、それぞれ、印字時、ノズル回復動作の準備のために印字ユニット待機時(ワイプユニットの装着前)、印字ユニット待機時(ワイプユニットの装着後)、ノズル回復動作時の各状態を示している。
【0031】
また、図6は、図4における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図であり、図7は、図5における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【0032】
本実施形態においては、図2に示すように、複数個の印字ヘッド130が2列の千鳥状に配列された状態で支持体140に取り付けられて、1つの印字ユニット50を構成している。
【0033】
印字部5は、印字ユニット50と、印字ユニット50の支持体140の一部に結合されて印字ユニット50を搭載するキャリッジ120と、キャリッジ120が結合されたレール10と、レール10に案内されて、図の矢印Bで示すように、記録媒体Pの搬送方向に垂直な上下方向にキャリッジ120を移動させる上下駆動機構(不図示)と、これら各部を一体的に支持するとともに、プラテン8の上面に固定されるフレーム9とを備える。つまり、各部は、相対的な位置関係がずれないようにフレーム9によって固定されている。
【0034】
プラテン8は、印字時に印字ユニット50に対向した記録媒体Pを平らな状態に維持することで、正確な印字を可能とする。
【0035】
上下駆動機構は、印字ユニット50が搭載されたキャリッジ120を設定された所定の範囲で上下動させる。つまり、上下駆動機構は、図2に示すように、印字ユニット50のノズルから記録媒体Pにインクを吐出させて印字を行う位置(以下、印字位置と称する場合がある。)と、図3、図4に示すように、ノズル回復の動作の準備時に、印字ユニット50がプラテン8から離れて待機した位置(以下、印字ユニット待機位置と称する場合がある。)と、図5に示すように、印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる位置(以下、ノズル回復動作位置と称する場合がある。)との少なくとも3つの位置を切り換える。
【0036】
図4,図5における110は、ワイプユニットであり、このワイプユニット110は、インクジェット記録装置から着脱自在となっており、印字ユニット50のノズル回復動作を行うとき以外は、操作者が適宜に取り外すことができる。
【0037】
図2において、印字ユニット50が印字動作中であるため、ワイプユニット110は、使用されない状態で取り外されている。
【0038】
このワイプユニット110は、周囲をカバー17で覆われ、内部には印字ヘッド130のノズルから滲み出たインクを毛管力で吸収するワイパーとしての吸収部材200と、吸収部材200を支持するために、ノズル面150に対して曲面を有する凸形状となるようにノズル面150の対向位置に設けられたフィルム状の非吸収性弾性部材16と、この吸収部材200の供給部材としての巻き出しローラ19及び巻き取り部材としての巻き取りローラ18とが格納されている。
【0039】
吸収部材200は、本実施形態における毛管力を有する吸収部材に相当し、不織布を用いることが好ましい。
【0040】
フィルム状の非吸収性弾性部材16は、印字ユニット50を構成する2列の印字ヘッド130の各ノズル面150に対応して2つ設けられ、各々、各列のノズルの配列方向(印字ユニット50の長手方向)に沿って延在している、
本実施形態においては、フィルム状の非吸収性弾性部材16としてPETフィルムを用いているが、その他の材質のものとしてもよく、例えば、その他の樹脂フィルムや金属フィルムを用いても良い。
【0041】
巻き出しローラ19はその軸心回りに回転自在となって支持されており、巻き出しローラ19には吸収部材200が予めロール状に巻回されている。巻き取りローラ18はその軸心回りに回転自在となっており、操作者よって手動で回転される。
【0042】
巻き出しローラ19から図6中の矢印の方向に引き出された吸収部材200は、巻き取りローラ18に導かれている。これにより、吸収部材200の搬送される搬送経路が確立される。そして、操作者により巻き取りローラ18が回転することで、吸収部材200が巻き出しローラ19から引き出されて、引き出された吸収部材200は巻き取りローラ18に搬送される。
【0043】
吸収部材200は、必要に応じて巻き出しながら使用し、ノズルから滲み出たインクを吸収した後は巻き取りローラ18に回収される。全ての吸収部材200を使用したら、すなわち吸収部材全てが巻き取りローラ18に巻き取られたら使用済みロールとしてワイプユニット110から取り外し廃棄する。
【0044】
また、巻き出しローラ19の軸には、引き出し方向とは、逆方向に一定の負荷トルクがかけられており、巻き取りローラ18の軸には、引き出し方向に一定の負荷トルクがかけられている。このため、吸収部材200は、一定のテンションが保たれている。
【0045】
フィルム状の非吸収性弾性部材16は、巻き出しローラ19と巻き取りローラ18との間で一定のテンションで張られた吸収部材200の下方においてノズル面150に対向するように位置されている。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置においてノズル回復の動作時に印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる動作について、説明する。
【0047】
まず、ノズル回復の動作に先だって、図4に示すようにワイプユニット110を印字ユニット50とプラテン8の間に設置する。
【0048】
まず、制御部4は、上下駆動機構を制御して、キャリッジ120を上方向に移動させ、図3に示す印字ユニット待機位置まで移動させる。これは、後述するように、ワイプユニット110を設置するスペースを確保するための移動である。従って、印字ユニット50のノズル面150が、ワイプユニット110を設置した時の最上部よりも上方に位置するようセットする。
【0049】
次に、操作者は、図4に示すように、プラテン8上で、かつノズル面150に対向する位置にワイプユニット110を設置する。図4において、印字ユニット50は、印字ユニット待機動作により上方に位置しており、プラテン8とノズル面150との間には隙間ができている。そして、操作者により、ワイプユニット110は、プラテン8とノズル面150の間の隙間に設置される。この時、ワイプユニットとプラテン上の記録媒体の間には隙間がある。すなわち、記録媒体を取り外すことなくワイプユニットをセット可能な構成となっている。
【0050】
なお、ワイプユニット110は、印字動作中等の使用されないときにインクジェット記録装置内の印字ユニット50の上下方向の移動経路から退避した位置(以降退避位置と称する場合がある)で保持されるようにしてもよい。このワイプユニット110を退避位置とワイプ位置との間で移動させるために、周知の技術的手段を用いることができる。例えば、ワイプユニット110をキャリッジに固定して移動方向に設けたガイドレールに沿って移動可能として構成したり、あるいは、ワイプユニット110をアーム部材に接続して、このアーム部材を一端で支持して回動可能として構成するなどの手段がある。
【0051】
次に、ワイパーである吸収部材200を印字ヘッド130のノズルに当接させるときは、制御部4は、上下駆動機構を制御して、キャリッジ120を下方向に移動させ、図5に示すようにノズル回復動作位置まで移動させる。このとき、図7に示すように、印字ユニット50の位置は、ノズル面150がワイプユニット110の吸収部材200にある程度の圧力で押圧された状態になる。このとき、吸収部材200は、フィルム状の非吸収性弾性部材16により支持されている。この状態で加圧手段により加圧が行われ、ノズルから滲み出たインクは、吸収部材200の毛管力により吸収される。
【0052】
ノズルから滲み出たインクが吸収部材200に吸収された所定時間の経過後に、ワイパーである吸収部材200を印字ヘッド130のノズルから離間させるときは、制御部4は、キヤリッジ120を元の上方の印字ユニット待機位置に戻し、押圧状態を解除する。操作者は、ワイプユニット110をインクジェット記録装置の外に移動させる。これにより、本実施形態に係るノズル回復の動作時に印字ユニット50のノズル面をワイプユニット110に当接させてノズルから滲み出たインクをワイパーとしての吸収部材200に吸収させる動作が終了し、その後は印字動作に移ることが可能となる。
【0053】
一方、押圧解除後の吸収部材200は、操作者が、巻き取りローラ18を回転させることにより所定量巻き取られ、このことにより、次回の押圧時、インクを吸収した部分の吸収部材200がノズル面150に再び接触することはない。さらに、吸収部材を搬送することでフィルム状の非吸収性弾性部材に付着したインクも拭き取ることが可能になる。
【0054】
なお、巻き取りローラ18の回転制御は、ワイプユニット110をインクジェット記録装置に設置した状態で、前述した制御部4を介して、モータ等の駆動源を駆動させ、巻き取りローラ18を回転することで、自動的に行なうように構成してもよい。
【0055】
図8は、本発明に係るインク供給系、及びノズル回復系の実施の形態を示す模式図である。
【0056】
インクカートリッジ11には、インクが貯留されている。貯留されたインクは双方向定量ポンプである送液ポンプ(送液手段)13によって中間タンク(密閉可能な容器)20に送入されたり、逆に中間タンク20からインクカートリッジ11に排出されたりする。中間タンク20には、中間タンク20と大気を連通させたり、遮断したりする弁(大気連通遮断手段)33と、中間タンク20の液面の基準位置を検知する液面検知センサ(液面検知手段)21Aと、中間タンク20の液面の上限位置を検知する液面検知センサ(液面検知手段)21Bと、中間タンク20から印字ユニット50へインクを供給する供給流路14と、が配されている。供給流路14の途中には弁(供給流路開閉手段)31が配されている。
【0057】
なお、供給流路14からインクカートリッジ11までが本実施形態における液体供給部に相当し、中間タンク20が加圧手段に相当する。また、中間タンク20から弁32までがキャリッジ120に搭載されている。
【0058】
次に、インクの圧力設定の方法について説明する。
【0059】
まず、弁31を閉鎖状態で、液面検知センサ21Aを用いて液面の高さを設定する。弁33を開いて液面検知センサ21Aで検知しながら送液ポンプ13の送入・排出により液面を初期化し、必要に応じてさらに送液ポンプ13により定量送液する。これにより、液面を液面センサ21Aの位置あるいはそれより高い位置に設定することができる。
【0060】
次に弁33を閉鎖して中間タンク20を密閉にする。この状態で中間タンク20内の気圧は1気圧である。
【0061】
中間タンク20のインクを除いた気体の体積をV1とする。初期の中間タンク20内の気圧をP1、所望の中間タンク20内の気圧をP2とする。P2とインクの送液量(送入量又は排出量)ΔDとの関係は、以下の式になる。
【0062】
【数1】
【0063】
例えば、中間タンク20内の気圧を1.5気圧にするには、送入するインクの送液量ΔDはV1/3になる。すなわち、送液ポンプ13でV1/3のインクを中間タンク20に送入すれば、1.5気圧の圧力が発生する。1.5気圧が発生した後、図7に示すようにワイプユニット110の吸収部材200を印字ユニット50のノズルに当接した状態で、弁31を開放状態にすると供給流路14を経由して印字ユニット50に瞬間的に1.5気圧の圧力が印加され、印字ユニット50のノズルからインクが押し出されて滲み出る。滲み出たインクは、吸収部材200により吸収される。
【0064】
逆に、中間タンク20内の気圧を0.995気圧にするには、排出するインクの送液量ΔDは約0.005×V1になる。すなわち、送液ポンプ13で0.005×V1のインクを中間タンク20から排出すれば、0.995気圧になる。0.995気圧が発生した後、弁31を開放状態にすると印字ユニット50のノズルは、通常印字に適した背圧に保たれ、インクメニスカスが形成される。
【0065】
中間タンク(密閉可能な容器)20に弁(空圧センサ保護弁)34を介して空圧センサ23を設け、水頭値設定および印字ユニット50への背圧制御は中間タンク20内の圧力を空圧センサ23で検知ながら送液ポンプ(送液手段)13の送液量を制御するフィードバック制御である。ノズル回復の動作の加圧は、弁(供給流路開閉手段)31を閉じ、弁(大気連通遮断手段)33を開いて液面検知センサ(液面検知手段)21Aで検知しながら送液ポンプ13の送入・排出により液面を初期化し、必要に応じてさらに送液ポンプ13により定量送液した後、弁33及び弁34を閉じて所定の圧力値に対応するインク量を送液ポンプ13により送液して中間タンク20内を加圧し、その後、所定時間の間弁(供給流路開閉手段)31を開いて供給流路14経由でノズルよりインクを強制排出する。
【0066】
インクは、インクカートリッジ11と中間タンク20との間の補給流路12を経由して送液ポンプ13により送入、または逆に排出される。補給流路12の途中にはフィルター37,インクカートリッジ11の空検知用の圧力センサ36、弁(補給流路開閉手段)35が配されている。弁(補給流路開閉手段)35は、インクカートリッジ11を交換する際に流路に空気やゴミが進入するのを防止するために設けられており、通常は開いており、インクカートリッジ11を交換するときのみ閉鎖する。
【0067】
中間タンク20には大気連通路22を介して弁33(大気連通遮断手段)を設けてある。弁(空圧センサ保護弁)34は、中間タンク20内を加圧し、ヘッドのノズルよりインクを押し出すノズル回復の動作時は空圧センサ23に過大な圧力がかかるのを避けるために閉鎖しておく。
【0068】
また、印字ユニット50は、共通流路51を備えており、共通流路51の一端にインク供給口52、他端に気泡排出口53がある。インク供給口52は、供給流路14を介して中間タンク20に接続され、中間タンク20からインクが供給される。気泡排出口53は、排出流路15を介して廃液タンク43に接続されている。共通流路51において、インク供給口52と気泡排出口53の間には、各印字ヘッド130にインクを分岐供給する分岐供給口が、各印字ヘッド130に対応した位置に、その数分だけ設けられている。
【0069】
弁(流路内エアー除去弁)32は排出流路15の途中に配され、インク供給路のインク初期導入時等に開放し、流路内のエアーをインクと共に排出流路15を経由して廃液タンク43へ排出する。図8に示すように、ワイプユニット110は、ノズル回復時に動作させる。
【0070】
次に、本実施の形態のノズル回復の動作を図9〜13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0071】
図9は本実施の形態にかかるノズル回復の動作のメインルーチンを示すフローチャート、図10は図9に示すノズル回復の動作における中間タンクへのインク導入のサブルーチンを示すフローチャート、図11は図9に示すノズル回復の動作における中間タンク与圧のサブルーチンを示すフローチャート、図12は図9に示すノズル回復の動作におけるヘッドへの加圧のサブルーチンを示すフローチャート、図13は図9に示すノズル回復の動作における印字水頭値設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0072】
<ノズル回復の動作>
印字ユニット50からの吐出に関わる印字不良、例えば、ノズルの目詰まりやインク滴の出射曲がりなどが発生した場合に以下の動作を行う。図8の模式図を参考に説明する。
【0073】
図9に示すように、ステップS1では、中間タンクへのインク導入のサブルーチンが実行される。中間タンクへのインク導入のサブルーチンの具体的な内容は図10を用いて後に詳述する。
【0074】
ステップS2では、中間タンク与圧のサブルーチンが実行される。中間タンク与圧のサブルーチンの具体的な内容は図11を用いて後に詳述する。
【0075】
ステップS3では、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルに当接させる。
【0076】
ステップS4では、ヘッドへの加圧のサブルーチンが実行される。ヘッドへの加圧のサブルーチンの具体的な内容は図12を用いて後に詳述する。
【0077】
ステップS5では、ヘッドへの加圧によりノズルから押し出されたインクが吸収部材200に吸収されるまでの所定の待ち時間(本実施形態では10秒)に達したかを判断する。所定の待ち時間に達した(ステップS5:YES)場合はステップS6へ進み、所定の待ち時間に達していない(ステップS5:NO)場合は、そのまま待機する。なお待ち時間は、デフォルト値として10秒に設定され、制御部4の記憶手段に記憶されているが、用いるインクの種類や吸収部材の種類等に応じて設定を変更することが可能である。
【0078】
この待ち時間は、後述するステップS8で、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルから離間させた際に吸収部材200で吸収しきれていないインクがノズル面に残留することを防止するために設定される。ステップS6の中間タンクへのインク導入及びステップS7の印字水頭値設定のサブルーチンを行わない場合は、加圧によりノズルから押し出されたインクが吸収部材200の毛管力により吸収されて吸収部材200へ移動する移動が終了するまでの時間に設定され、本実施形態のようにステップS6の中間タンクへのインク導入及びステップS7の印字水頭値設定のサブルーチンを行なう場合は、その分短い時間に設定される。
【0079】
ステップS6では、中間タンクへのインク導入のサブルーチンが実行される。中間タンクへのインク導入のサブルーチンの具体的な内容は図10を用いて後に詳述する。
【0080】
ステップS7では、印字水頭値設定のサブルーチンが実行される。印字水頭値設定のサブルーチンの具体的な内容は図13を用いて後に詳述する。
【0081】
ステップS8では、ワイプユニット110を印字ユニット50のノズルから離間させる。
【0082】
ステップS9では、ワイプユニット110の吸収部材200に対して全ノズル吐出を所定回数行うフラッシング動作を実行する。
【0083】
<中間タンクへのインク導入の動作>
次に、上述した中間タンクへのインク導入のサブルーチンを図10を用いて説明する。
【0084】
図9に示すノズル回復の動作の最初あるいは図9に示すフローチャートにおいてS5のインク吸収時間10秒が経過したと判断されると図10に示す中間タンクへのインク導入のサブルーチンは開始される。
【0085】
中間タンク20内の空気量が予め定められた所定値(本実施形態では、タンク容量113mlに対して空気量が70mlに設定)になるように、インクをインクカートリッジ11から供給系を通じて中間タンク20に導入する動作のフローチャートである。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0086】
ステップS11では、弁31、32、34を閉鎖、弁33を開放する。
【0087】
ステップS12では、基準位置の液面センサ21Aまでインクが達しているかを判断する。達している(ステップS12:YES)場合はステップS18へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、基準位置の液面センサ21Aにインクが達しない状態になるまで中間タンクからインクを排出する。ここで逆転とは、インクが中間タンク20からインクカートリッジ11へ送入される方向に回転させることである。すなわち、中間タンク11を大気と連通させてインクを排出する。達していない(ステップS12:NO)場合はステップS13へ進む。基準位置の液面センサ21Aは、予め設定された値があり液面がそれに達した時点で基準位置の信号を発する。
【0088】
ステップS13では、送液ポンプ13を正転させる。ここで正転とは、インクがインクカートリッジ11から中間タンク20へ送入される方向に回転させることである。すなわち、中間タンク11を大気と連通させてインクを送入する。
【0089】
ステップS14では、基準位置の液面センサ21Aまでインクが達したかを判断する。達した(ステップS14:YES)場合はステップS15へ進み、達していない(ステップS14:NO)場合は、中間タンク20へのインクの送入を続ける。
【0090】
ステップS15では、送液ポンプ13を所定の回転数(時間)だけ正転させる。すなわち、中間タンク20に定量送液する。ここで、空気の量が中間タンク20内の空気量が予め定められた所定値(本実施形態では、タンク容量113mlに対して空気量が70mlに設定)になるようにするためには、中間タンク内の液量は43mlにする必要がある。本実施形態においては、ステップS14で基準位置の液面センサ21Aまでインクが達している状態の液量は34mlであるため、9mlの定量送液が必要であり、送液ポンプ13を60回転させる。なお、この回転数は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0091】
ステップS16では、送液ポンプ13を停止させる。
【0092】
以上に説明した一連の動作が終了すると、中間タンクへのインク導入の動作のサブルーチンの処理(S1またはS6)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0093】
<中間タンク与圧の動作>
次に、上述した中間タンク与圧のサブルーチンを図11を用いて説明する。
【0094】
図9に示すフローチャートにおいてステップS1の中間タンクへのインク導入が終了したときから図11に示す中間タンクへのインク導入のサブルーチンは開始される。
【0095】
インクをインクカートリッジ11から供給系を通じて中間タンク20に導入して中間タンク20内の空気を圧縮する動作のフローチャートである。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0096】
ステップS31では、弁31、32、33、34を閉鎖する。
【0097】
ステップS32では、送液ポンプ13を送液ポンプ13を所定の回転数(時間)だけ正転させる。すなわち、中間タンク20に定量送液して加圧する。本実施形態では、所定の回転数は中間タンク20が500cmAqの正圧になる回転数であり、送液ポンプ13を150回転させる。なお、この回転数は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0098】
なお、500cmAqは、本実施形態の印字ヘッド130ノズルからインクが滲み出る圧力であり、印字ヘッドのメニスカス保持力から推定可能である。即ち、メニスカス保持力は(インクの表面張力の2倍)/ノズル半径で表されるので、インクの表面張力=33(mN/m)、ノズル直径27(μm)とすると、メニスカス保持力はおよそ50cmAqとなる(4.9kPa)。50cmAqより十分大きな圧力を印加してやればノズルからインクを排出できる。
【0099】
ステップS33では、送液ポンプ13を停止させる。
【0100】
以上に説明した一連の動作が終了すると、中間タンク与圧の動作のサブルーチンの処理(S2)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0101】
<ヘッドへの加圧の動作>
次に、上述したヘッドへの加圧のサブルーチンを図12を用いて説明する。
【0102】
図9に示すフローチャートにおいてS3のワイパー当接が終了したときから図12に示すヘッドへの加圧のサブルーチンは開始される。
【0103】
加圧された中間タンク20のインクを弁31および供給路14を経由して印字ユニット50のノズルから押し出させる動作のフローチャートである。その際、印字ユニット50内の流路に存在する小さなゴミや気泡はインクと共にノズルより排出される。図8の模式図を参考に説明を行う。
【0104】
ステップS41では、弁31を開放、弁32、33、34を閉鎖する。
【0105】
ステップS42では、弁31の所定の開放時間(本実施形態では8秒)に達したかを判断する。所定の開放時間に達した(ステップS42:YES)場合はステップS43へ進み、所定の開放時間に達していない(ステップS42:NO)場合は、そのまま待機する。この間、加圧された中間タンク20のインクは弁31および供給路14を経由して印字ユニット50のノズルから押し出される。その際、印字ユニット50内の流路に存在する小さなゴミや気泡はインクと共にノズルより排出される。なお、この開放時間は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0106】
ステップS43では、弁31、33を開放、弁32、34を閉鎖する。この時点で印字ユニット50のノズルからのインクの押し出しは停止し、加圧が解除される。加圧が解除されたときの圧力は、ノズルからのインクの押し出しが生じない圧力、すなわち、メニスカス保持力(本実施形態ではおよそ50cmAq)より小さな圧力であればよい。
【0107】
ステップS44では、弁33の所定の開放時間(本実施形態では1秒)に達したかを判断する。所定の開放時間に達した(ステップS44:YES)場合はサブルーチンを終了し、所定の解法時間に達していない(ステップS44:NO)場合は、そのまま待機する弁33の開放時間(本実施形態では1秒)の経過を待つ。なお、この開放時間は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、必要に応じて設定を変更することが可能である。
【0108】
以上に説明した一連の動作が終了すると、ヘッドへの加圧の動作のサブルーチンの処理(S4)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0109】
<印字水頭値設定の動作>
次に、上述した印字水頭値設定のサブルーチンを図13を用いて説明する。
【0110】
図9に示すフローチャートにおいてS6の中間タンクへのインク導入が終了したときから図13に示す印字水頭値設定のサブルーチンは開始される。
【0111】
印字ユニット50のノズルでは、印字時や印字待機時のとき、インクが滲みだしたり、逆にノズル内のインクが吸い上げられたり、しないように一定の負圧の範囲に保持しておく必要がある。ノズルで一定の負圧を形成するために中間タンクの気圧を一定の範囲で制御する。上限とは、一定の範囲の中で設定された上限値を指す。基準位置とは、一定範囲の中で設定された基準位置値を指す。これらは、中間タンク20の気圧を測定する空圧センサ23を用いて測定する。
【0112】
本実施形態では、図9に示すフローチャートにおいてS7のワイパー離間の前にこの印字水頭値設定を行うことにより、ワイパー離間後のインクの滲みだしを防止する。
【0113】
ステップS51では、弁34を開放、弁31,32、33を閉鎖する。
【0114】
ステップS52では、空圧センサ23を用いて測定し、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達したかを判断する。規定値に達した(ステップS52:YES)場合はステップS53へ進み、送液ポンプ13を停止する。
【0115】
規定値に達していない(ステップS52:NO)場合は、テップS55へ進み、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)より高いか否かを判断する。規定値より高い(ステップS55:YES)場合はステップS56へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、中間タンクからインクを排出する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで排出が継続される。
【0116】
規定値より低い(ステップS55:NO)場合はステップS57へ進み、送液ポンプ13を正転させ、中間タンクへインクを送入する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで送入が継続される。なお、この規定値は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、前述の一定範囲内で設定を変更することが可能である。
【0117】
ステップS54では、弁31,弁34を開放、弁32、33を閉鎖する。
【0118】
以上に説明した一連の動作が終了すると、印字水頭値設定の動作のサブルーチンの処理(S7)が終了するので、処理は図9に示すノズル回復の動作のフローチャートへ戻る。
【0119】
<印字中の印字水頭値設定の動作>
印字動作により中間タンク20のインクが減ってくると中間タンクの気圧が下がってくる。中間タンク20の気圧の一定の範囲を保持するために印字中の印字水頭値設定の動作が随時行われインクカートリッジ11から中間タンク20へインクの送入制御を行う。
【0120】
図14は本実施の形態にかかる印字中の印字水頭値設定の動作を示すフローチャートである。
【0121】
印字ユニット50のノズルでは、印字時のとき、インクが滲みだしたり、逆にノズル内のインクが吸い上げられたり、しないように一定の負圧の範囲に保持しておく必要がある。ノズルで一定の負圧を形成するために中間タンクの気圧を一定の範囲で制御する。上限とは、一定の範囲の中で設定された上限値を指す。基準位置とは、一定範囲の中で設定された基準位置値を指す。これらは、中間タンク20の気圧を測定する空圧センサ23を用いて測定する。
【0122】
ステップS61では、弁31、弁34を開放、32、33を閉鎖する。
【0123】
ステップS62では、空圧センサ23を用いて測定し、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達したかを判断する。規定値に達した(ステップS62:YES)場合はステップS63へ進み、送液ポンプ13を停止する。停止させた後ステップS62に進む。
【0124】
規定値に達していない(ステップS62:NO)場合は、ステップS64へ進み、中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)より高いか否かを判断する。規定値より高い(ステップS64:YES)場合はステップS65へ進み、送液ポンプ13を逆転させ、中間タンクからインクを排出する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで排出が継続される。
【0125】
規定値より低い(ステップS64:NO)場合はステップS66へ進み、送液ポンプ13を正転させ、中間タンクへインクを送入する。中間タンク20の気圧が規定値(本実施形態では、ー9cmAq)に達するまで送入が継続される。なお、この規定値は、制御部4の記憶手段に記憶されているが、前述の一定範囲内で設定を変更することが可能である。
【0126】
以上の一連の動作に従って、印字動作が終了するまで印字中の印字水頭値設定の動作を繰り返し行っている。
【0127】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出装置のノズル回復装置では、液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、吸収部材の当接を解除するように構成されているので、加圧によりノズルからインクを滲み出させ、滲み出たインクを毛管力を有する吸収部材が吸収するので、確実なノズル回復が可能になるとともに、滲みださせる程度の小さな圧力の印加でノズルからインクを押し出すことができ、インクが滲み出たら加圧力を解除できるので、その結果、排出される廃インク量も少なくできる。
【0128】
また、吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成することにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0129】
また、吸収部材を前記ノズルから離間した後、吸収部材にフラッシングを行うように構成することにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0130】
また、吸収部材は、不織布であることにより、吸収部材の吸収能力を高めることができ、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0131】
また、加圧手段は、液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることにより、ノズル回復の信頼性をより高めることができる。
【0132】
また、加圧手段を、供給流路開閉弁を閉じ中間タンクの内圧が所定の圧力になるまで双方向ポンプで中間タンクに補給した後、供給流路開閉弁を開きノズル内のインクにノズルから押し出す方向に圧力を印加するように構成することにより、ノズルからインクが滲み出る程度の微少圧力の設定を行う際に、より低コストかつ信頼性の高い圧力設定ができる。
【0133】
上記各実施の形態は、インクジェット記録装置を対象にしたものであるが、本発明によってえられた液体吐出装置は、インクジェット記録装置用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を吐出することができる。さらに、上記実施の形態では、液体の一つであるインクを用いたインクジェットヘッドについて説明したが、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド,有機ELディスプレー,FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッド全般に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の断面図である。
【図2】インクジェット記録装置における印字時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図3】インクジェット記録装置における印字ユニット待機時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置における印字ユニット待機時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図5】インクジェット記録装置におけるノズル回復の動作時の印字部の構成を示す斜視図である。
【図6】図4における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【図7】図5における印字ユニット50とワイプユニット110の関係を説明するための要部の拡大正面図である。
【図8】本発明に係るインク供給系、及びノズル回復系の実施の形態を示す模式図である。
【図9】本実施の形態にかかるノズル回復の動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図9に示すノズル回復の動作における中間タンクへのインク導入のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】図9に示すノズル回復の動作における中間タンク与圧のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】図9に示すノズル回復の動作におけるヘッドへの加圧のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図13】図9に示すノズル回復の動作における印字水頭値設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】印字中の印字水頭値設定の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0135】
11 インクカートリッジ
12 補給流路
13 送液ポンプ(送液手段)
14 供給流路
15 排出流路
20 中間タンク(密閉可能な容器)
21A、21B 液面検知センサ(液面検知手段)
23 空圧センサ
31 弁(供給流路開閉手段)
32 弁(流路内エアー除去弁)
33 弁(大気連通遮断手段)
34 弁(空圧センサ保護弁)
50 印字ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、
毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項2】
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項3】
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項4】
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項5】
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項6】
毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記液体吐出ヘッドのノズル内の液体にノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除することを特徴とする液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項7】
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項8】
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うことを特徴とする請求項6または7に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項9】
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項10】
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズル内の液体に、ノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段を有し、
毛管力を有する吸収部材が前記液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除するように構成されていることを特徴とする液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項2】
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項3】
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項4】
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項5】
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復装置。
【請求項6】
毛管力を有する吸収部材が液体吐出ヘッドのノズルに当接している状態で、前記液体吐出ヘッドのノズル内の液体にノズルから液体を押し出す方向に圧力を印加する加圧手段により圧力を印加し、印加した圧力を解除した後、前記吸収部材の当接を解除することを特徴とする液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項7】
前記吸収部材の解除は、ノズル内の液体にかかる圧力が負圧になった後に行うことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項8】
前記吸収部材を前記ノズルから離間した後、前記吸収部材にフラッシングを行うことを特徴とする請求項6または7に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項9】
前記吸収部材は、不織布であることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【請求項10】
前記加圧手段は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部に配設されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の液体吐出装置のノズル回復方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−238436(P2008−238436A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78519(P2007−78519)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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