説明

液体吐出装置及び画像形成装置

【課題】簡易な構成によって液体の粘性の増加を抑える。
【解決手段】記録ヘッド38は、圧力室54のインクを加圧してノズル40から外部に吐出させる振動板76及び圧電素子78と、圧力室54へインクを供給する第1共通インク流路48と、第1共通インク流路48のインクを振動させる振動板72及び圧電素子74とを有している。制御ユニット15によって圧電素子74が駆動され、振動板72が振動すると、第1共通インク流路48のインクが振動して圧力波が伝播する。この圧力波によって、圧力室54のインクが振動され攪拌されるので、インクの粘性の増加が発生しにくくなる。このように、個々の圧力室54の振動を管理しなくても、第1共通インク流路48の振動のみを管理すればよいので、記録ヘッド38の構成が簡易な構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、例えば、インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドがある。インクジェットヘッドでは、圧力室に貯留されたインクを圧電素子(ピエゾ素子)を用いて加圧して、ノズルから吐出させる。吐出によって減少したインクは、適宜インクタンクから圧力室へ補給される。このようなインクジェットヘッドの一例として、圧力室としての個別液室と共通液室とを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のインクジェットヘッドでは、インクの吐出後に共通液室からインクが供給されるようになっている。
【特許文献1】特開平7−156417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡易な構成によって液体の粘性の増加を抑えられる液体吐出装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る液体吐出装置は、個別液室の液体を加圧して吐出口から吐出させる第1アクチュエータと、前記個別液室へ液体を供給する共通流路と、前記共通流路の液体を振動させる加振手段と、を有することを特徴としている。
【0005】
本発明の請求項2に係る液体吐出装置は、前記加振手段が、前記吐出口から液体が吐出しない大きさで、前記共通流路の液体を振動させることを特徴としている。
【0006】
本発明の請求項3に係る液体吐出装置は、前記加振手段が、前記共通流路に接する共通振動板と、前記共通振動板を振動させる第2アクチュエータと、を有することを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項4に係る液体吐出装置は、前記共通流路を液体の流れる方向に沿って仕切る壁体と、前記個別液室と反対側で前記壁体で仕切られた振動用共通流路と、前記振動用共通流路と各吐出口の近傍とをつなぐ連通路と、を有し、前記加振手段は、前記振動用共通流路の液体を振動させることを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項5に係る液体吐出装置は、前記加振手段は、液体の流れる方向に沿って前記共通流路を仕切る可変板と、前記個別液室と反対側で前記可変板で仕切られた空間に流体を供給して、前記可変板を変形させる流体供給手段と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項6に係る液体吐出装置は、前記流体供給手段は、前記流体の温度を変化させる調温手段を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項7に係る液体吐出装置は、前記流体が、前記液体であることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項8に係る液体吐出装置は、前記加振手段は、前記共通流路に液体を供給する液体供給室と、前記液体供給室に接する振動板と、前記振動板を振動させる第3アクチュエータと、を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項9に係る液体吐出装置は、前記加振手段の振動数が、該加振手段の固有振動数であることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項10に係る画像形成装置は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の液体吐出装置と、前記加振手段を駆動して前記個別液室内の液体を振動させながら、画像を形成するための画像情報に基づいて前記第1アクチュエータを駆動して媒体上に液体を吐出させる制御手段と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明は、個別液室毎の振動状態を管理する必要のない簡易な構成によって液体の粘性の増加を抑えられる。
【0015】
請求項2の発明は、本構成を有していない場合と比較して、液体吐出手段の駆動に必要なエネルギーを低く抑えられる。
【0016】
請求項3の発明は、簡易な構成によって液体を加振させることができる。
【0017】
請求項4の発明は、本構成を有していない場合と比較して、吐出口が詰まりにくくなる。
【0018】
請求項5の発明は、共通流路の液体を振動させることができる。
【0019】
請求項6の発明は、本構成を有していない場合と比較して、液体の粘性を保持できる。
【0020】
請求項7の発明は、吐出用の液体の他に流体を用意する必要がなくなる。
【0021】
請求項8の発明は、複数の共通流路が設けられているときに、各共通流路の液体を一括して振動させることができる。
【0022】
請求項9の発明は、本構成を有していない場合と比較して、加振手段が僅かなエネルギーで駆動されても、大きな振動を発生することができる。
【0023】
請求項10の発明は、本構成を有していない場合と比較して、液体の吐出不良による画像の乱れを抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の液体吐出装置及び画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1には、画像形成装置としてのインクジェットプリンタ10の概略構成が示されている。なお、本実施形態においては、記録媒体としての記録用紙Pの搬送方向を副走査方向(図1の矢印S方向)、副走査方向と直交する方向を主走査方向(図1の矢印M方向)とする。
【0025】
インクジェットプリンタ10は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット12を搭載するキャリッジ14を備えている。キャリッジ14の記録用紙Pの搬送方向上流側には、一対のブラケット16が突設されており、ブラケット16には、円形状の開口部16Aが設けられている。開口部16Aには、主走査方向に架設されたシャフト18が挿通されている。
【0026】
インクジェットプリンタ10の主走査方向の両端部には、キャリッジ14を移動させる主走査機構20が設けられている。主走査機構20は、駆動プーリー22と従動プーリー24が配設されており、駆動プーリー22と従動プーリー24には、タイミングベルト26が巻回されている。タイミングベルト26の一部には、キャリッジ14が固定されている。これにより、キャリッジ14は、主走査方向に往復移動可能となっている。
【0027】
インクジェットプリンタ10には、記録用紙Pを搬送して副走査方向への画像印刷(印字)を行う副走査機構32が設けられている。副走査機構32は、記録用紙Pを印字位置へ搬送する搬送ローラ28と、印字された記録用紙Pを排出する排出ローラ30とを備えている。また、副走査機構32は、印字前の記録用紙Pを束にして収容する給紙トレイ34から1枚ずつ給紙された記録用紙Pを、所定のピッチ或いは連続的に定速度で副走査方向へ搬送する。
【0028】
また、キャリッジ14の移動方向の一方端(駆動プーリー22側)には、メンテナンスステーション36が設けられている。メンテナンスステーション36は、図示しないキャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリニーニング動作等のメンテナンス動作を行う。
【0029】
各色のインクジェット記録ユニット12は、インク滴を吐出する記録ヘッド38(図2参照)と、記録ヘッド38へインクを供給するインクカートリッジ(図示せず)とが一体に構成されたものである。記録ヘッド38の下面には、インク滴を吐出する複数のノズル40(図3参照)が設けられており、ノズル40と記録用紙Pが対峙するように、インクジェット記録ユニット12がキャリッジ14上に搭載されている。
【0030】
インクジェットプリンタ10の右側部には、画像形成のためにコンピュータ等(図示せず)から送信された画像情報(画像データ)に基づいて、キャリッジ14の移動、インクジェット記録ユニット12の駆動等を行い、記録用紙P上にインクを吐出させて画像形成させる制御ユニット15が設けられている。
【0031】
ここで、記録ヘッド38(インクジェット記録ユニット12)が、主走査機構20によって主走査方向に移動しながら、記録用紙Pに対して、画像データに基づいて、ノズル40から選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域BEに対して画像が形成(印字)される。
【0032】
インクジェット記録ユニット12の主走査方向の1回の移動が終了すると、記録用紙Pは、副走査機構32によって副走査方向へ所定ピッチ搬送される。そして、再度インクジェット記録ユニット12が主走査方向に移動しながら、次のバンド領域に対して画像を形成(印字)する。これを繰り返すことで、記録用紙Pには画像データに基づく全体画像が形成されることになる。
【0033】
図2〜図4に示すように、インクジェット記録ユニット12の記録ヘッド38は、前述のインクカートリッジに接続された4箇所のインク供給部42を有している。インク供給部42には、該インク供給部42から供給されたインクが充填される4本の第2共通インク流路44がつなげられている。各第2共通インク流路44には、5箇所の連通部46を介して、第1共通インク流路48がつなげられている。なお、矢印Fはインクの流れを表している。
【0034】
第1共通インク流路48は、インクジェット記録ユニット12を平面視したとき、略長方形状となっており、各第1共通インク流路48はそれぞれ平行に伸びている。また、各第1共通インク流路48上には、各第1共通インク流路48に向けて複数の開口部50が設けられている。
【0035】
開口部50には、内側をインクが流通可能なインク供給路52の一端がつなげられている。インク供給路52の他端には、インク滴の吐出方向に平面視したときの形状が六角形であり、ノズル40からインク滴を吐出させる圧力室54がつなげられている。また、圧力室54には、ノズル40と圧力室54とを連通させるノズル連通室56がつなげられている。ここで、ノズル40、ノズル連通室56、圧力室54、及びインク供給路52によって、イジェクタ60が構成されている。なお、インクジェット記録ユニット12は、記録ヘッド38全体を平面視すると、イジェクタ60がマトリックス状に配置されている。
【0036】
インクの吐出方向を垂直方向としたとき、垂直方向に平面視すると、第1共通インク流路48、インク供給路52、及び圧力室54が重なるように配置されている。このような配置とすることで、第1共通インク流路48、インク供給路52、及び圧力室54が、水平方向に対して高密度な配置となっている。
【0037】
図4及び図5に示すように、記録ヘッド38は、ノズル40が形成されるノズルプレート58と、ノズル連通室56及び第1共通インク流路48の壁部を形成する第1壁プレート62及び第2壁プレート64と、ノズル連通室56及び開口部50の壁部を形成するスループレート66と、インク供給路52の壁部を形成する供給路プレート68と、圧力室54の壁部が形成される圧力室プレート70とを順番に積層して接合し、その後、ノズルプレート58の表面に撥水コート膜を被覆すると共に、エキシマレーザにて複数のノズル40が開けられることで形成される。なお、ノズルプレート58の材質はポリイミドであり、第1壁プレート62及び第2壁プレート64、スループレート66、供給路プレート68の材質はSUSである。
【0038】
各第1壁プレート62の下面には、各第1共通インク流路48の下面側を塞ぐようにして、薄肉厚の鉄板等からなる振動板72が取付けられている。振動板72によって、第1共通インク流路48の底面が形成されている。振動板72の下面側には、制御ユニット15(図1参照)によって駆動される圧電素子74が接着されている。圧電素子に通電を行う基板の図示は省略している。
【0039】
なお、制御ユニット15には、圧電素子74が圧電素子74及び振動板72からなる加振手段の固有振動数と等しい振動数で振動すると共に、振動板72が共振によって大きく振動しても、ノズル40からインクLが吐出されない大きさの電圧出力を行うように、予め電圧出力のパラメータが設定されている。この出力値は、予め実験等により設定されるものである。
【0040】
一方、圧力室プレート70の上面部には、圧力室54の上面を塞ぐ薄肉厚の鉄板等からなる振動板76が取付けられている。振動板76の上面側には、制御ユニット15(図1参照)によって駆動される圧電素子78が接着されている。圧電素子78上には、ボール半田80を介して駆動基板82が接続されている。制御ユニット15から圧電素子78への電圧出力量は、ノズル40からインクLが吐出される大きさとなっている。
【0041】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
【0042】
図2及び図5に示すように、インク供給部42からインク(L)が導入され、第2共通インク流路44に充填される。第2共通インク流路44に充填後、インクLは、各連通部46から各第1共通インク流路48に充填されていく。第1共通インク流路48に充填された後、図4(b)の矢印Fのように、開口部50からインク供給路52を通って各圧力室54とノズル連通室56とにインクLが充填され、ノズル40において表面が圧力室54側に僅かにへこんだメニスカスを形成する。
【0043】
続いて、図6(a)に示すように、インクLが充填された状態で、制御ユニット15(図1参照)が圧電素子74に通電すると、圧電素子74が歪む。ここで、制御ユニット15から圧電素子74への電圧出力の設定値は、圧力室54内のインクLに所定の振動を与えるものの、ノズル40からインクが吐出しない程度のエネルギー(振幅)を有する電圧出力値となっている。
【0044】
制御ユニット15が、このような振幅のパルス波形で電圧出力を行うと、圧電素子74の歪み状態が変化し、振動板72が振動する。振動板72の振動によって、インクLに圧力波Aが発生し、圧力波Aは、第1共通インク流路48からインク供給路52を通って圧力室54及びノズル連通室56に伝播する。
【0045】
ここで、ノズル40のインクLは外気に触れており、特に乾燥した環境下においては、水分が蒸発していくなどして粘性が増加する可能性がある。しかし、本発明では、圧力波Aの伝播により、第1共通インク流路48、インク供給路52、圧力室54、及びノズル連通室56のインクLが振動され攪拌されるため、ノズル40近傍のインクLが攪拌されて循環し、粘性の増加が抑えられる。これにより、ノズル40の詰まりが抑えられる。
【0046】
なお、圧電素子74は、ノズル40からインクLが吐出しない大きさの振幅で振動しているため、圧電素子74の振動のみではノズル40からインクLが吐出することはない。また、振動板72が共振するため、圧電素子74に供給される電圧出力は、必要最小限の出力となっている。
【0047】
続いて、制御ユニット15が、駆動基板82を介して圧電素子78にパルス波形状の電圧を出力して駆動すると、振動板76が振動して、圧力室54内のインクLに圧力波Bが発生する。この圧力波Bの圧力によって、ノズル40からインク(滴)Lが吐出され、図示しない記録用紙P上に画像が形成される。なお、圧電素子74の駆動が継続して行われているときは、既に圧力室54内のインクLに、ノズル40から吐出しないぎりぎりの大きさの圧力が作用している。このため、制御ユニット15は、圧電素子78のみを単独駆動するときより低い電圧を圧電素子78へ出力するだけで、インクLの吐出を行える。
【0048】
次に、本発明の液体吐出装置及び画像形成装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0049】
図7(a)には、インクジェット記録ユニット12(図1参照)の記録ヘッド38(図2参照)に換えて設けられた記録ヘッド90の断面構造が示されている。記録ヘッド90は、記録ヘッド38の第1壁プレート62に換えて、下側から下プレート83、中プレート84、上プレート86が用いられており、これらが積層された3層構造となっている。
【0050】
上プレート86と第2壁プレート64の間には、インクの流れる方向に沿って、SUS等の金属製の隔壁プレート88が設けられている。隔壁プレート88は、予め、ほとんど振動しない厚さに設定されている。隔壁プレート88によって、第1共通インク流路48は、供給用インク流路48Aと、攪拌用インク流路48Bに仕切られている。
【0051】
なお、供給用インク流路48Aと攪拌用インク流路48Bは、連通部46(図2参照)の位置では隔壁プレート88が設けられていない。これにより、連通部46では、供給用インク流路48Aと攪拌用インク流路48Bが合流して第1共通インク流路48となっており、連通部46を介してそれぞれにインクが供給されるようになっている。
【0052】
攪拌用インク流路48Bにおけるノズル40側の壁部では、中プレート84が中抜きされており、インク流路92が形成されている。インク流路92によって、攪拌用インク流路48Bと、ノズル連通室56とが連通している。また、連通部46を介して供給用インク流路48Aに供給されたインクは、矢印Cのように、インク供給路52を通って圧力室54内に供給される。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0054】
図7(b)に示すように、インクLが充填された状態で、制御ユニット15(図1参照)が圧電素子74に通電すると、圧電素子74が歪む。ここで、制御ユニット15から圧電素子74への電圧出力の設定値は、圧力室54内のインクLに所定の振動を与えるものの、ノズル40からインクが吐出しない程度のエネルギー(振幅)を有する電圧出力値となっている。
【0055】
制御ユニット15が、このような振幅のパルス波形で電圧出力を行うと、圧電素子74の歪み状態が変化し、振動板72が振動する。振動板72の振動によって、インクLに圧力波Dが発生し、圧力波Dは、攪拌用インク流路48Bからインク流路92を通ってノズル連通室56に伝播する。
【0056】
ここで、ノズル40のインクLは外気に触れており、特に乾燥した環境下においては、水分が蒸発していくなどして粘性が増加する可能性がある。しかし、本発明では、圧力波Dの伝播により、攪拌用インク流路48Bからインク流路92を介して、ノズル連通室56のインクLが振動され攪拌されるため、特にノズル40近傍のインクLが攪拌されて循環し、粘性の増加が抑えられる。これにより、ノズル40の詰まりが抑えられる。なお、圧電素子74は、ノズル40からインクLが吐出しない大きさの振幅で振動しているため、圧電素子74の振動のみではノズル40からインクLが吐出することはない。
【0057】
続いて、図7(c)に示すように、制御ユニット15(図1参照)が、駆動基板82を介して圧電素子78にパルス波形状の電圧を出力して駆動すると、振動板76が振動して、圧力室54内のインクLに圧力波Bが発生する。この圧力波Bの圧力によって、ノズル40からインク(滴)Lが吐出され、図示しない記録用紙P上に画像が形成される。
【0058】
次に、本発明の液体吐出装置及び画像形成装置の第3実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0059】
図8(a)には、インクジェット記録ユニット12(図1参照)の記録ヘッド38(図2参照)に換えて設けられた記録ヘッド100の断面構造が示されている。記録ヘッド100は、記録ヘッド38の振動板72及び圧電素子74に換えて、ノズルプレート58が取付けられている。
【0060】
また、記録ヘッド100は、第1壁プレート62と第2壁プレート64の間に、薄肉厚のSUS等の金属からなる振動板104が設けられている。第1共通インク流路48は、振動板104によって、供給用インク流路48Cと振動用インク流路48Dに仕切られている。なお、供給用インク流路48Cと振動用インク流路48Dは、連通部46(図2参照)の位置においても振動板104が設けられている。これにより、連通部46では、供給用インク流路48Cのみにインクが供給されるようになっている。連通部46を介して供給用インク流路48Cに供給されたインクは、矢印Cのように、インク供給路52を通って圧力室54内に供給される。
【0061】
一方、振動用インク流路48DにおけるインクLの流れる方向(紙面手前から奥に向かう方向)には、対向配置された一組の壁部が設けられており、それぞれの壁部には、振動用インク流路48Dの断面積よりも小さい開口面積の開口部106A、106Bが形成されている。開口部106A、106Bには、それぞれインク流路114、116の一端が接続されている。インク流路114、116の他端には、インク供給ユニット112が接続されており、振動用インク流路48Dとインク供給ユニット112の間で、インクの循環路が形成されている。
【0062】
インク供給ユニット112は、振動用インク流路48Dにインクを供給するインク供給部108と、インクを循環させる循環ポンプ110とで構成されている。
【0063】
インク供給部108は、箱状の筐体118を有しており、筐体118の内部には、インクが充填された圧力室120が形成されている。圧力室120の対向する壁部には、開口部122、124が形成されており、開口部122とインク流路114、開口部124とインク流路116がそれぞれつながっている。
【0064】
また、インク供給部108は、筐体118の上面、即ち圧力室120の上面が開放された構造となっており、開放された圧力室120の上面を覆うようにして、薄厚のSUS等の金属からなる振動板126が取付けられている。振動板126によって、圧力室120が密閉される。振動板126の上面には、制御ユニット15(図1参照)によって電圧供給されて駆動される圧電素子128が接着されている。
【0065】
圧電素子128は、圧電素子128及び振動板126からなる加振手段の固有振動数と等しい振動数で振動すると共に、振動板126が共振によって大きく振動しても、ノズル40からインクLが吐出されない大きさの電圧出力を行うように、予め電圧出力のパラメータが設定されている。
【0066】
圧力室120の内壁面の底側には、制御ユニット15によって駆動され発熱する面状のヒータ130が設けられている。なお、インク流路114の内壁面には、図示しない温度センサが設けられており、この温度センサで検知された温度に基づいて、制御ユニット15が、ヒータ130のON、OFFを行う。
【0067】
一方、循環ポンプ110は、インク供給部108の圧力室120と連通している。ここで、制御ユニット15によって循環ポンプ110が駆動されることにより、圧力室120からインク流路114を通って振動用インク流路48Dにインクが供給されるようになっている。振動用インク流路48D内のインクは、循環ポンプ110の駆動によってインク流路116へ送出され、循環ポンプ110を経由して再び圧力室120に送られる。このようにして、インクの循環路が形成されている。
【0068】
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。
【0069】
図8(b)に示すように、インクLが充填された状態で、制御ユニット15(図1参照)が圧電素子128に通電すると、圧電素子128が歪んで振動板126が振動する。振動板126の振動によって、圧力室120内のインクLに圧力波Eが発生し、圧力波Eは、インク流路114から振動用インク流路48Dに伝播する。振動用インク流路48Dでは、インクLが振動することにより、薄肉厚の振動板104が振動する。
【0070】
振動板104の振動により、供給用インク流路48Cでは、圧力波Fが発生する。圧力波Fは、供給用インク流路48Cからインク供給路52を通って圧力室54及びノズル連通室56のインクLに伝播する。圧力波Fの伝播により、供給用インク流路48Cからインク供給路52を介して、ノズル連通室56のインクLが振動され攪拌されるため、特にノズル40近傍のインクLが攪拌されて循環し、粘性の増加が抑えられる。これにより、ノズル40の詰まりが抑えられる。なお、圧電素子128は、ノズル40からインクLが吐出しない大きさの振幅で振動しているため、圧電素子128の振動のみではノズル40からインクLが吐出することはない。
【0071】
ここで、インク流路114に設けられた温度センサ(図示せず)がインクLの温度を検知して、所定の温度よりも低いとき、制御ユニット15がヒータ130を駆動し、インクLの温度を上昇させる。温度が上昇したインクLは、制御ユニット15が循環ポンプ110を駆動することにより、前述の循環路を循環して、振動板104を温める。温められた振動板104から供給用インク流路48C内のインクLに放熱が行われ、徐々にノズル40までのインクLが温められる。
【0072】
寒冷地における一般的なインクジェットプリンタの使用では、外気温が低いため、インクの温度が所定の粘性を保持できる温度よりも低くなり、粘性が増加してノズルが詰まることがある。しかし、本発明では、ヒータ130によって、最終的にノズル40までのインクLが温められるので、外気温の低下によるインクLの粘性増加を抑えられる。
【0073】
続いて、制御ユニット15(図1参照)が、圧電素子78を駆動して振動板76が振動し、圧力室54内のインクLに圧力波Bが発生する。この圧力波Bの圧力によって、ノズル40からインク(滴)Lが吐出され、図示しない記録用紙P上に画像が形成される。
【0074】
次に、本発明の液体吐出装置及び画像形成装置の第4実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0075】
図9(a)には、インクジェット記録ユニット12(図1参照)の記録ヘッド38(図2参照)に換えて設けられた記録ヘッド140の一部(第2共通インク流路44付近)が示されている。
【0076】
記録ヘッド140は、第2共通インク流路44の底面側の内壁面に取付けられた薄肉厚のSUS等の金属からなる振動板142と、振動板142の底面に接着され、制御ユニット15(図1参照)によって駆動される圧電素子144とを有している。
【0077】
圧電素子144は、圧電素子144及び振動板142からなる加振手段の固有振動数と等しい振動数で振動すると共に、振動板142が共振によって大きく振動しても、各ノズル40からインクLが吐出されない大きさの電圧出力を行うように、予め電圧出力のパラメータが設定されている。
【0078】
次に、本発明の第4実施形態の作用について説明する。
【0079】
図9(a)及び図9(b)に示すように、インクLが充填された状態で、制御ユニット15(図1参照)が圧電素子144に通電すると、振動板142が振動する。振動板142の振動によって、第2共通インク流路44内のインクLに圧力波Gが発生する。
【0080】
圧力波Gは、第2共通インク流路44から第1共通インク流路48を通って、個々のイジェクタ60(図2参照)の圧力室54及びノズル連通室56のインクLに伝播する。圧力波Gの伝播により、ノズル連通室56まで流路のインクLが振動され攪拌されるため、インクLが循環して粘性の増加が抑えられる。これにより、ノズル40の詰まりが抑えられる。
【0081】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0082】
第1共通インク流路48に相当する場所に個室を形成し、この個室に配管を接続して、さらに各個室からの配管を共通インク流路に接続して、共通インク流路内のインクを加振手段で振動させるようにしてもよい。
【0083】
ノズル40は、一列に並ぶものだけでなく、千鳥配置されるものであってもよい。振動用インク流路48Dに充填される流体は、インク以外に、空気、水、油、その他の圧力伝達可能な物質を用いることができる。振動板72は、第1共通インク流路48の底面側だけでなく、側面に取付けられていてもよい。ヒータ130だけでなく、ヒートシンク又は冷却ファンを用いて、温度上昇したインクの温度を低下させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの構成を示した模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの一部を拡大した部分図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの断面斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドにおける圧力波の伝播状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る記録ヘッドの構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 インクジェットプリンタ(画像形成装置)
15 制御ユニット(制御手段)
38 記録ヘッド(液体吐出装置)
40 ノズル(吐出口)
44 第2共通インク流路(液体供給室)
48 第1共通インク流路(共通流路)
48A 供給用インク流路(共通流路)
48B 攪拌用インク流路(振動用共通流路)
48C 供給用インク流路(共通流路)
48D 振動用インク流路(共通流路)
54 圧力室(個別液室)
72 振動板(加振手段、共通振動板)
74 圧電素子(加振手段、第2アクチュエータ)
76 振動板(第1アクチュエータ)
78 圧電素子(第1アクチュエータ)
88 隔壁プレート(壁体)
92 インク流路(連通路)
90 記録ヘッド(液体吐出装置)
100 記録ヘッド(液体吐出装置)
104 振動板(可変板)
112 インク供給ユニット(流体供給手段)
126 振動板(加振手段)
128 圧電素子(加振手段)
130 ヒータ(調温手段)
140 記録ヘッド(液体吐出装置)
142 振動板(振動板)
144 圧電素子(第3アクチュエータ)
L インク(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別液室の液体を加圧して吐出口から吐出させる第1アクチュエータと、
前記個別液室へ液体を供給する共通流路と、
前記共通流路の液体を振動させる加振手段と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記加振手段が、前記吐出口から液体が吐出しない大きさで、前記共通流路の液体を振動させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記加振手段が、
前記共通流路に接する共通振動板と、
前記共通振動板を振動させる第2アクチュエータと、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記共通流路を液体の流れる方向に沿って仕切る壁体と、
前記個別液室と反対側で前記壁体で仕切られた振動用共通流路と、
前記振動用共通流路と各吐出口の近傍とをつなぐ連通路と、
を有し、前記加振手段は、前記振動用共通流路の液体を振動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記加振手段は、
液体の流れる方向に沿って前記共通流路を仕切る可変板と、
前記個別液室と反対側で前記可変板で仕切られた空間に流体を供給して、前記可変板を変形させる流体供給手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記流体供給手段は、前記流体の温度を変化させる調温手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記流体が、前記液体であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記加振手段は、
前記共通流路に液体を供給する液体供給室と、
前記液体供給室に接する振動板と、
前記振動板を振動させる第3アクチュエータと、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記加振手段の振動数が、該加振手段の固有振動数であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の液体吐出装置と、
前記加振手段を駆動して前記個別液室内の液体を振動させながら、画像を形成するための画像情報に基づいて前記第1アクチュエータを駆動して媒体上に液体を吐出させる制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−143126(P2009−143126A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323435(P2007−323435)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】