説明

液体吐出装置

【課題】吐出口から塊を排出して吐出不良を解消する。
【解決手段】プリンタは、前処理液を吐出するヘッドと、インクを吐出するヘッドと、キャップ手段と、生成した加湿空気を吐出空間に供給する加湿空気供給機構と、吐出口からインクを排出させるパージ動作を行うポンプと、メンテナンス制御部と、ジャム検知部と、ジャム処理完了信号を出力する押ボタンと、ジャムが発生してからジャム処理が完了するまでのジャム処理時間を計測する時間計測部とを含んでいる。メンテナンス制御部は、ジャム処理時間が第1所定時間以上のときに、キャッピング状態において加湿動作を行い、この後、キャッピングを解除してからパージ動作を行うように、キャップ手段、加湿空気供給機構、及び、ポンプを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる液体を吐出する2種類の吐出ヘッドが設けられた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット式プリンタにおいて、複数のヘッドから、互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出させる技術が知られている。例えば特許文献1に記載のプリンタは、インクを吐出する記録用ヘッドと、インクとは異なる特性を持つ前処理液を吐出する処理液用ヘッドとを含む。前処理液としては、インク中の色剤(顔料色素又は染料色素)を凝集又は析出させて、発色性を向上させる機能を持つもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−157153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のプリンタにおいては、記録用ヘッドと対向する位置において、記録媒体にジャムが生じると、処理液用ヘッドから吐出され記録媒体に付着した処理液が、記録用ヘッドの吐出面に付着する虞がある。すると、当該吐出面において、インクと処理液との反応による凝集(又は析出)が生じ得る。この凝集が吐出口やその近傍で起こると、吐出不良の原因となる。このとき、処理液の吐出面への接触時間が短時間である場合は、記録用ヘッドの吐出口から液体を強制的に排出させる強制排出動作等の、メンテナンスを行うことで吐出不良を解消することが考えられる。
【0005】
しかしながら、処理液の吐出面への接触時間が所定時間以上になると、強制排出動作を繰り返し行っても、吐出口から凝集によって生じた塊が排出されず、吐出不良が解消されない問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吐出口から塊を排出して吐出状態を改善することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、記録媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送機構と、記録媒体に記録液を吐出する複数の吐出口が開口した記録用吐出面を有する記録用ヘッドと、前記記録用ヘッドよりも前記搬送方向上流に設けられ、記録液中の成分を凝集又は析出させる成分を含有した処理液を記録媒体に付与する処理液付与手段と、前記記録用吐出面と対向する吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段と、加湿空気を生成するとともに、前記封止状態の前記吐出空間内に加湿空気を供給する加湿動作を行う加湿空気供給機構と、前記記録用ヘッド内の記録液に圧力を付与し、前記吐出口から記録液を強制的に排出させる強制排出動作を行う強制排出機構と、前記搬送機構と前記記録用吐出面との間において、記録媒体のジャムが発生したことを検知するジャム検知手段と、前記搬送機構へ記録媒体の再供給が可能な前記ジャムからの回復に対応するジャム処理完了信号を出力する出力手段と、前記ジャム検知手段がジャムの発生を検知してから前記出力手段が前記ジャム処理完了信号を出力するまでの時間を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された前記時間が第1所定時間未満の場合、前記強制排出動作を行うように前記強制排出機構を制御し、前記時間が前記第1所定時間以上の場合、前記吐出空間を前記封止状態にしてから前記加湿動作を行い、この後、前記吐出空間を前記非封止状態としてから前記強制排出動作を行うように、前記キャップ手段、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御するメンテナンス制御手段とを備えている。
また、本発明の別の液体吐出装置は、搬送される記録媒体に記録液を吐出する複数の吐出口が開口した吐出面を有する記録用ヘッドと、前記記録用ヘッドによる記録液の吐出に先立って、記録媒体に対して、記録液中の成分を凝集又は析出させる成分を含有した処理液を付与する処理液付与機構と、対向部材と、前記対向部材が前記吐出面に隙間を挟んで対向したとき、前記対向部材及び前記吐出面とともに前記複数の開口を内包して外部空間から前記隙間を区画する区画部材とを備え、前記区画部材が前記隙間を外部空間から区画した区画状態(封止状態)と、前記区画部材が前記隙間を外部空間に開放した開放状態とを取り得るキャップ機構と、前記区画状態の前記キャップ機構内に加湿空気を供給する加湿動作を行う加湿空気供給機構と、前記記録用ヘッド内の記録液に圧力を付与し、前記吐出口から記録液を強制的に排出させる強制排出動作を行う強制排出機構と、記録媒体に処理液の塗布を開始した後において、当該記録媒体が前記記録用ヘッドと対向する対向領域を横切るまでに起こしたジャムに対する回復処理が完了したとき、前記キャップ機構を前記区画状態にしてから前記加湿動作を行い、この後、前記強制排出動作を行うように、前記キャップ機構、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御するメンテナンス制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体吐出装置によると、ジャムによって処理液が記録用吐出面に付着すると、加湿動作を行ってから強制排出動作を行う。このように加湿動作を行うことで、吐出口近傍に塊が形成されている場合でも、この塊に水分が供給されて軟化する。このため、強制排出動作によって塊を排出しやすくなり、吐出状態を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるヘッドのヘッド本体を示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図6】図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿空気供給機構を示す概略図である。
【図7】図6の一点鎖線で囲まれた領域を示す部分断面図であり、キャップが離隔位置にある状況を示す図である。
【図8】図1に示す制御部の機能ブロック図である。
【図9】図1のプリンタの制御部が実行するメンテナンス動作に関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【図10】ワイピング動作を説明するための動作状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0012】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部4への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのヘッド1に対してインクが供給され、空間Aのヘッド2に対して前処理液が供給される。
【0013】
空間Aには、ヘッド1(記録用ヘッド)、ヘッド2(処理液付与手段:処理液用ヘッド)、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、2つの用紙センサ26a、26b、加湿動作に用いられる加湿空気供給機構50(図6参照)、ヘッド昇降機構33(図8参照)、ワイパユニット36(図10参照)、クリーナユニット37、及び、制御部100等が配置されている。
【0014】
ヘッド1からは、ブラックインクが吐出される。ヘッド2からは、前処理液が吐出され、ヘッド1よりも搬送方向上流(搬送経路の上流側)に配置されている。これら2つのヘッド1,2は、同一構造を有しており、副走査方向に所定間隔で並び、ヘッドホルダ5を介して筐体101aに支持されている。各ヘッド1,2の下面は、複数の吐出口108(図3参照)が配列された吐出面1a,2aとなっている。ヘッドホルダ5は、吐出面1a,2aと搬送ベルト43との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1,2を保持している。
【0015】
各ヘッド1,2は、流路ユニット9及びアクチュエータユニット21からなるヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。制御基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出されることになる。
【0016】
ヘッドホルダ5には、加湿空気供給機構50を構成するキャップ60が取り付けられている。キャップ60は、ヘッド1,2毎に配設された環状部材であって、平面視で各ヘッド1,2を内包する。キャップ60の構成、動作、機能等は、後に詳述する。
【0017】
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。プラテン46は、2つのヘッド1,2に対向配置され、搬送ベルト43の上側ループを内側から支える。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。ニップローラ47は、給紙部23から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。用紙Pは、シリコン層(弱粘着性の外周面被覆層)によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド1,2に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
【0018】
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。
【0019】
2つの用紙センサ26a、26bは、図1に示すように、搬送方向両側からヘッド1、2を挟む位置に配置されている。上流側センサ26aは、用紙Pの先端を検知し、その検知信号により液体の吐出タイミングが決められる。下流側センサ26bも、用紙Pの先端検知を行うが、センサ26aとともにジャム検知手段(後述)を構成する。
【0020】
ヘッド昇降機構33は、ヘッドホルダ5を昇降させ、2つのヘッド1,2が印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、図1に示すように、2つのヘッド1,2が搬送ベルト43と印刷に適した間隔で対向する。退避位置では、2つのヘッド1,2が搬送ベル43から印刷位置以上の間隔で離隔する(図10(b)参照)。退避位置では、2つのヘッド1,2と搬送ベルト43との間の空間を、後述するワイパ36aが移動可能である。
【0021】
ワイパユニット36は、吐出面1a,2a毎に配置され、図10に示すように、ワイパ36a、これを支持する基部36bおよびワイパ移動機構27とを有している。ワイパ36aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、吐出面1a,2aの幅より若干長い。基部36bは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、両端に孔が形成されている。孔は、基部36bを主走査方向に貫通し、一方の内面には雌ねじが形成されている。ワイパ移動機構27は、主走査方向に延びた一対のガイド(例えば、丸棒)28と駆動モータ(不図示)とから構成される。一対のガイド28は、孔に貫挿された棒部材であって、ヘッド1、2の側面を副走査方向両側から挟む。一方のガイド28は、外周面に雄ねじが形成され、孔の雌ねじと螺合している。このガイド28は、駆動モータの回転力を受ける。他方のガイド28は、他の孔の内周面と摺動する。
【0022】
駆動モータの正及び逆回転によって、基部36bがガイド28に沿って往復移動する。図10(a)に示すように、ヘッド1の左側端部近傍は、基部36bの待機位置である。ワイピング時は、払拭位置のヘッド1、2に対して、ワイパ36aが図中右方に移動して、吐出面1a、2aを払拭する。払拭位置は、印刷位置と退避位置との間にある。この後、ヘッド1、2の退避位置への移動を待って、ワイパ36aは待機位置に戻される。
【0023】
クリーナユニット37は、洗浄液塗布部材37a、ブレード37b及び移動機構37c(図8参照)を有し、搬送ベルト43の外周面をクリーニングする。クリーナユニット37は、図1に示すように、搬送ベルト43の右下方であって、ベルトローラ42に対向して配置されている。洗浄液塗布部材37aは、多孔質体(例えば、スポンジ)とこれを支持する支持部材から構成され、ブレード37bは、板状弾性部材(例えば、ゴム)で構成される。共に、搬送ベルト43を全幅に亘って接触可能である。移動機構37cは、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを搬送ベルト43の外周面に離接させる。クリーニング動作において、多孔質体から外周面に洗浄液が塗布され、下流側のブレード37bにより汚れや洗浄液が外周面から掻き取られる。
【0024】
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体101aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
【0025】
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0026】
空間Cには、ブラックインク(記録液)を貯留するカートリッジ22aと、無色透明の前処理液を貯留するカートリッジ22bとが筐体101aに着脱可能に配置されている。これらカートリッジ22a,22bは、対応するヘッド1,2にチューブ(不図示)及びポンプ38(図8参照)を介して接続されている。なお、各ポンプ38(強制排出機構)は、ヘッド1,2に液体(インク及び前処理液)を強制的に送るとき以外は停止状態にあり、ヘッド1,2へのインク供給を妨げない。なお、ブラックインクは、顔料インクである。
【0027】
一般的に、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させる前処理液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させる前処理液が使用される。前処理液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。かかる前処理液とインクとが混ざると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、難溶性の金属複合体(塊)等が凝集又は析出により形成される。
【0028】
次に、制御部100について説明する。制御部100は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された印刷指令に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
【0029】
制御部100は、外部装置から受信した印刷指令に基づいて、給紙部23、搬送機構40、及び、各送りローラ対32,34,35の駆動を制御する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部10aによりガイドされ搬送機構40に送られる。搬送機構40によって搬送される用紙Pは、ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、上面の画像形成領域に前処理液が吐出される。さらに用紙Pは、ヘッド1のすぐ下方を通過する際に、上面の画像形成領域にインクが吐出される。これにより、用紙P上に所望の画像が形成される。このとき、上面の画像形成領域では、前処理液がインクの色素成分を凝集又は析出させるため、用紙Pにおけるインク滲みが防止される。画像が形成された用紙Pは、剥離プレート45によって搬送ベルト43から剥離された後、下流側ガイド部10bによりガイドされて、筐体101a上部から排紙部4に排出される。
【0030】
制御部100はまた、メンテナンス動作を制御する。メンテナンス動作では、ヘッド1,2の液体吐出特性の回復・維持や記録に係わる準備が行われる。メンテナンス動作には、パージやフラッシング動作、吐出面1a,2aのワイピング(払拭)動作、搬送ベルト43のクリーニング動作、キャッピングや加湿動作等が含まれる。
【0031】
パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108からインクが強制的に排出される。このとき、アクチュエータは駆動されない。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。インクの吐出は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。ワイピング動作では、吐出面1a,2aがワイパ36a(図10参照)によって払拭される。ワイピング動作は、パージ動作後に行われ、吐出面1a,2a上の残留した液体や異物が取り除かれる。また、クリーニング動作では、搬送ベルト43がクリーナユニット37によって払拭される。クリーニング動作は、パージ及びフラッシング動作後に行われ、搬送ベルト43上のインクや異物が除去される。
【0032】
キャッピングでは、図6に示すように、キャップ60により吐出空間(吐出面1a,2a(吐出口108)と対向する空間)S1が外部空間S2から隔離(区画)される。メニスカスの乾燥が抑制される。加湿動作では、図6に示すように、隔離された吐出空間S1に加湿空気が供給される。キャッピングにより吐出空間S1内に水蒸気が留まり、メニスカスの乾燥がさらに抑制される。また、加湿動作によって、凝集によって生じた塊が軟化される。
【0033】
次に、図2〜図5を参照しつつ各ヘッド1,2について詳細に説明する。なお、両ヘッド1,2は、同一の構造であるため、ヘッド1について説明し、ヘッド2の説明を省略する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0034】
流路ユニット9は、図4に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図2に示すように、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2〜図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口からアパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであって、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
【0035】
リザーバユニットは、流路ユニット9と同様に、インク流路が形成された流路部材である。インク流路のリザーバには、流路ユニット9へのインクが貯留される。図2〜図4に示すように、リザーバユニットのインクは、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
【0036】
ポンプ38は、ヘッド1,2毎に配置され、リザーバユニットを介して流路ユニット9に液体(インク又は前処理液)を強制的に供給する。図8においては、そのうちの1つのポンプ38が示されている。
【0037】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面に固定されて、ヘッド本体3を構成する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。
【0038】
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製であり、3枚の圧電層161〜163から構成されたピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電層161は、厚み方向に分極され、上面の個別電極135及び下面全体の共通電極134に挟まれている。図5に示すように、個別電極135は、大部分が圧力室110と対向し、平面視で圧力室外の一部が個別ランド136と接続している。この形態が、圧力室110毎に形成され、それぞれが個別のアクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110に対応した数のアクチュエータが作り込まれており、それぞれ圧力室110内のインクに選択的な吐出エネルギーを与える。
【0039】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。各アクチュエータは、いわゆるユニモルフ型アクチュエータである。圧電層161の両電極134、135で挟まれた部分は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下の圧電層162、163との間で歪み差が生じるので、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、圧力室110側に向かって突出する。これに伴い、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0040】
なお、本実施形態においては、個別電極135の電位が、予め所定の電位が付与されているところ、駆動信号が供給されて、一旦グランド電位となり、その後の所定のタイミングで再び所定電位に復帰する。いわゆる、引き打ち駆動である。グランド電位となるタイミングでは、圧力室110の容積増大に伴い、圧力室110内にインクが吸い込まれる。続く所定電位への復帰では、圧力室110の容積減少(インク圧力の上昇)により、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0041】
次に、図6及び図7を参照し、ヘッドホルダ5に取り付けられたキャップ手段の構成について説明する。
【0042】
ヘッドホルダ5は、金属等からなる枠状フレームであり、各ヘッド1,2の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ5は、ヘッド1、2の支持部材であるが、キャップ手段(キャップ機構)の構成部材でもある。ヘッドホルダ5には、キャップ60も取り付けられている。ここで、ヘッドホルダ5と各ヘッド1,2との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ5とキャップ60との当接部も、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0043】
キャップ手段は、ヘッドホルダ5及びキャップ60に加えて、昇降モータ64(図8参照)、複数のギア63を含む昇降力伝達機構、搬送ベルト(対向部材)43を含む。キャップ60が搬送ベルト43に対して離接して、吐出面1a、2aに対向する吐出空間S1を非封止状態(開放状態)あるいは封止状態(区画状態)とする。キャップ60は、矩形の環状部材であって、平面視で対応するヘッド1、2の外周全体を取り囲む。図7に示すように、キャップ60は、弾性体61と可動体62とから構成される。
【0044】
弾性体(区画部材)61は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1,2を囲んでいる。弾性体61は、図7に示すように、基部61x、基部61xの下面から突出した突出部61a、ヘッドホルダ5に固定された固定部61c、及び、基部61xと固定部61cとを接続する接続部61dを含む。突出部61aは、断面が三角形であり、下方に向かって先細である。また、固定部61cは、断面がT字状である。固定部61cの平らな上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ5に固定されている。固定部61cはまた、ヘッドホルダ5と各ジョイント51(後述)の基端部51xとで挟持されている。接続部61dは、固定部61cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面1aから離隔する方向)に延び、基部61xの下側側面に接続している。接続部61dは、可動体62の昇降に伴って変形する。基部61xの上面には、凹部61bが形成されており、可動体62の下端と嵌合している。
【0045】
可動体62は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視で対応するヘッド1,2の外周を取り囲んでいる。可動体62は、基部61xに支持され、ヘッドホルダ5に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体62は、複数のギア63を介して昇降モータ64と連結されている。制御部100による制御の下、昇降モータ64(図8参照)が駆動されると、ギア63が回転して可動体62が昇降する。これにより、突出部61aの先端61a1と吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。本実施形態では、1つの昇降モータ64から、各キャップ60用の複数のギア63に対して、その駆動力が選択的に伝達される。
【0046】
突出部61aは、先端61a1が搬送ベルト43の外周面に当接する当接位置(図6に示す位置)と、外周面から離隔した離隔位置(図7に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、キャップ60により、吐出面1aと搬送ベルト43との隙間が区画される。区画された隙間が、吐出空間S1である。このとき、吐出空間S1は、外部空間S2から隔離された封止状態にある。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された非封止状態にある。なお、封止状態の吐出空間S1は、外部空間S2に対して、密閉されていても良いし、僅かに連通していても良い。
【0047】
次に、図6を参照し、加湿空気供給機構50の構成について説明する。加湿空気供給機構50は、キャップ手段のキャップ60に加え、図6に示すように、一対のジョイント51、チューブ55、57、切換弁59、ポンプ56及びタンク54等を含む。このうち、キャップ60は閉ざされた吐出空間S1を作り、ジョイント51は空間S1内の空気を加湿空気と置換する。
【0048】
一対のジョイント51は、吐出空間S1に対する加湿空気の出入口である。一対のジョイント51は、図6に示すように、開口51aを持つ左側ジョイント51と開口51bを持つ右側ジョイント51とから構成され、ヘッド1(複数の吐出口108)を主走査方向に挟んで配置されている。加湿動作では、吐出空間S1に対し、2つの開口51a,51bのいずれか一方の開口から加湿空気が供給され、他方の開口から空気が排出される。
【0049】
ジョイント51は、方形状の基端部51xと円柱状の先端部51yとから構成され、両者を上下に貫通する中空空間51z(図7参照)が内部に形成されている。中空空間51zは、先端部51yでは円柱状空間であり、基端部51xでは扇状空間である。扇状空間は、円柱状空間に繋がる一方で、拡開して開口51aに繋がる。開口51aは、副走査方向に細長く、吐出面1aの長さとほぼ等しい。なお、外形サイズは、先端部51より基端部51xが大きい。
【0050】
ジョイント51は、図7に示すように、ヘッドホルダ5の貫通孔5aに固定されている。先端部51yが、貫通孔5aに貫挿され、両者の隙間には封止剤が充填されている。
【0051】
チューブ55、57は、共に2つのヘッド1、2に共通な主部55a、57a及び主部55a、57aから分岐した2つずつの分岐部55b、57bを含む。図6では、1組の分岐部55b、57bの接続状態が示されており、分岐部55bが一方のジョイント51(先端部51y)に嵌合され、分岐部57bが他方のジョイント51(先端部51y)に嵌合されている。このとき、2つのヘッド1、2は、主部55a、57aを共有して、並列に接続されている。
【0052】
主部55a、57aは、一端が分岐部55b、57bに接続され、他端がタンク54に接続されている。このように、チューブ55、57は、吐出空間S1とタンク54とを連通させている。ここで、キャップ60が封止状態にあるとき、ポンプ56による加湿空気の循環が可能となる。
【0053】
タンク54は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に加湿空気を貯蔵している。タンク54の上壁には、上部空間と大気とを連通する大気連通孔53が形成されている。ここで、チューブ57はタンク54の下部空間(水中)と連通し、チューブ55はタンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の水が少なくなった場合には、水補給タンク(不図示)より水がタンク54に補給される。
【0054】
ポンプ56は、図6に示すように、主部57aに設けられている。ポンプ56は、駆動されると常に一方向に送気する。この場合の送気方向は、ポンプ56からタンク54の方向である。両者間には逆止弁(不図示)が配設されており、タンク54の水はポンプ56に流れ込まない。
【0055】
切換弁59は、主部55a、57aに跨って設置されている。各主部55a、57aを、切換弁59を境にして、タンク側主部55a’、57a’とヘッド側主部55a”、57a”とに分けたとき、ヘッド側主部55a”、57a”での気流の方向が切換弁59により切り換えられる。切換弁59は、制御部100(メンテナンス制御部150:後述)の制御により、図6(a)に示すように、加湿空気を開口51aに供給する第1切換状態と、図6(b)に示すように、加湿空気を開口51bに供給する第2切換状態とを選択的に切り換える。
【0056】
このような構成において、制御部100の制御により、切換弁59が第1切換状態においてポンプ56が駆動されると、図6(a)に示すように、タンク54内の空気が白抜き矢印に沿って循環する。タンク54の上部空間の加湿空気は、開口51aから吐出空間S1に供給される。このとき、吐出空間S1は封止状態であるため、内部の空気が加湿空気と置換されながら開口51bに向かって流れる。チューブ57はタンク54と水中で連通しているため、吐出空間S1から流出した空気は、タンク54で加湿される。生成された加湿空気は、ポンプ56の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
一方、制御部100の制御により、切換弁59が第2切換状態においてポンプ56が駆動されると、図6(b)に示すように、タンク54内の空気が黒矢印に沿って循環する。このときは、加湿空気が開口51bから吐出空間S1に供給される。そして、空間内部の空気が加湿空気と置換されながら開口51aに向かって流れる。
【0057】
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、ジャム検知部144と、メンテナンス制御部150と、時間計測部151と、判定部152と、領域判定部153とを有している。
【0058】
搬送制御部141は、外部装置から受信した印刷指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部23、ガイド部10a,10b、及び、搬送機構40の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの印刷指令に含まれる画像データ(液体の吐出データ)を記憶する。なお、本実施形態において、前処理液の吐出データは、画像データに基づいて決められている。具体的には、画像データに基づいてヘッド1から吐出されるインクの着弾位置(ドット領域)に、前処理液も着弾するように決められている。すなわち、画像が記録される領域に前処理液が吐出され、画像が記録されない領域には前処理液が吐出されない。
【0059】
ヘッド制御部143は、画像形成及びメンテナンスにおいて、前処理液及びインクを吐出するようヘッド1,2を制御する。
画像形成は、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、用紙Pに対して液体を吐出するように、各ヘッド1,2からの液体吐出を制御する。液体の吐出タイミングは、用紙センサ26aによる用紙Pの先端検知に基づいて決められ、検知後の所定時間経過時である。なお、ここでいう所定時間は、各ヘッド1,2のそれぞれについて、用紙センサ26aが用紙Pの先端を検知したときの用紙Pの先端から、最も上流にある吐出口108までの搬送経路に沿った距離を、用紙Pの搬送速度で割った時間である。
メンテナンス(フラッシング動作)は、フラッシングデータに基づいて行われ、搬送ベルト43に向けて前処理液及びインクが吐出される。
【0060】
ジャム検知部144は、2つの用紙センサ26a、26bによる用紙Pの先端の検出間隔が所定時間を超えたとき、吐出面1aと搬送ベルト43との間でジャムが発生したと検知する。ここでいう所定時間は、2つの用紙センサ26a、26b間の搬送距離を用紙Pの搬送速度で割った時間である。具体的には、用紙センサ26aから用紙センサ26bまでの、搬送速度に基づいた搬送時間が経過しても、用紙センサ26aで検出された用紙Pの先端が、用紙センサ26bで検出されないとき、ジャム検知部144は、用紙Pのジャムとして検知する。
また、ジャム検知部144は、上述のようにジャムを検知したときに、ヘッド制御部143及び搬送制御部141を制御して、前処理液及びインクの吐出、及び、用紙Pの搬送を停止させる。ここで、液体の吐出の停止は、ジャム処理が完了して用紙Pの搬送が再開されるまで継続される。また、ジャム検知部144は、ジャムを検知したときに、音を発するようにブザー28(図8参照)を制御する。これにより、ジャムの発生をユーザに知らせることができる。なお、ジャム検知部144及び用紙センサ26a、26bが、ジャム検知手段を構成している。
【0061】
時間計測部(計測手段)151は、ジャム検知部144がジャムの発生を検知してから押しボタン29が押されるまでのジャム処理時間を計測する。押しボタン29は、ジャム状態の用紙Pを除去(ジャム処理)した後、ユーザにより押されるべきもので、用紙Pの給紙・搬送と画像記録の再開を可能にする。押しボタン29は、ユーザに押されることで、ジャムからの回復に対応するジャム処理完了信号を制御部100に出力する。なお、制御部100は、ジャム処理完了信号を受信すると、音が鳴るのを停止するように、ブザー28を制御する。この後、搬送制御部141及びヘッド制御部143の制御により、ジャムによって行えなかった印刷が再度行われる。
【0062】
判定部152は、ジャム処理時間の第1所定時間及び第2所定時間に対する大小関係を判定する。本実施の形態では、第1所定時間は4時間に、第2所定時間は15時間に設定されている。
【0063】
領域判定部153は、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、用紙Pに印刷された前処理液の印刷密度が、用紙Pの主走査方向中央に関して、一端側、及び、他端側のいずれが高密度領域となるかを判定する。なお、本実施形態においては、前処理液の印刷密度が、用紙Pの一端側と、他端側とで同じになる場合は、用紙Pの一端側が高密度領域になると判定する。
【0064】
メンテナンス制御部150は、ジャム処理時間が第1所定時間未満の場合に、パージ及びワイピング動作を行う。このとき、メンテナンス制御部150は、昇降モータ64、ポンプ38、ヘッド昇降機構33及びワイパユニット36を制御する。また、メンテナンス制御部150は、ジャム処理時間が第1所定時間以上であって、第2所定時間未満の場合に、キャッピング及び加湿動作を行った後、キャッピングの解除、パージ及びワイピング動作を行うように、昇降モータ64、ポンプ38、ヘッド昇降機構33、ワイパユニット36、及び、加湿空気供給機構50のポンプ56を制御する。
【0065】
メンテナンス制御部150は、ジャム処理時間が第2所定時間以上であると判定した場合に、加湿動作の後であってパージ動作の前に、キャッピングしたまま第3所定時間(本実施形態においては、第2所定時間と同じ、15時間)だけ待機する待機動作を行うように、昇降モータ64を制御する。このとき、メンテナンス制御部150は、加湿動作の後であって待機動作を行う前に、キャッピングの解除、パージ及びワイピング動作を行うように、昇降モータ64、ポンプ38、ヘッド昇降機構33及びワイパユニット36を制御する。さらにこのとき、メンテナンス制御部150は、パージ動作の後であって待機動作を行う前に、キャッピング及び加湿動作を行うように、昇降モータ64、及び、ポンプ56を制御する。
【0066】
メンテナンス制御部150は、ジャム処理時間が第1所定時間以上であって加湿動作を行う際に、2つの開口51a,51bのうち、領域判定部153が判定した高密度領域に近い方の開口から加湿空気が供給されるように、切換弁59を制御する。
以上において、各所定時間は、本実施形態に対応した時間条件の一例であって、これに限定されるものではない。
【0067】
また、メンテナンス制御部150は、吐出フラッシング及びパージ動作が行われた後に、搬送ベルト43のクリーニング動作を行う。このとき、メンテナンス制御部150は、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させるように、移動機構37cを制御するとともに、搬送制御部141を介して搬送ベルト43を時計回りに走行させるように、搬送機構40を制御する。このとき、ベルトの走行速度は、印刷時の搬送速度より小さい。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が均一に塗布され、外周面上の前処理液やインクが、洗浄液と共にブレード37bに確実に掻き取られる。
【0068】
次に、図9を参照し、印刷時に用紙Pのジャムが発生したときのメンテナンス動作について説明する。
【0069】
まず、プリンタ1は、外部装置から印刷指令を受信する(F1)。このとき、画像データ記憶部142は、印刷指令に含まれる画像データをヘッド1,2からの液体吐出データとして記憶する。続いて、搬送制御部141が、給紙部23、ガイド部10a,10b、及び、搬送機構40を制御して、給紙部23から排紙部4に向けて用紙Pの搬送を開始する。
ステップF2において、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、ヘッド1,2を制御して、用紙Pへの画像記録を開始する。これと同時に、ヘッド制御部143は、全ての画像記録が完了したか否かの判定を行う。完了しておれば(F2:YES)、印刷動作を終了する。最後の用紙Pが排紙部4に排出されるのを待って、用紙搬送系(給紙部23、搬送機構40等)を停止する。画像記録が継続中の場合(F2:NO)は、ステップF3に進む。
【0070】
ステップF3において、ジャム検知部144はジャムが生じているか否かを判定し、ジャムが生じている場合はステップF4に進み、ジャムが生じていない場合は、ステップF2に戻る。
【0071】
ステップF4においては、ジャム検知部144がブザー28を制御して、ジャムが生じていることをユーザに知らせる。このとき、ジャム検知部144は、ヘッド制御部143及び搬送制御部141を制御して、各ヘッド1,2からの液体の吐出、及び、用紙Pの搬送を停止させる。また、このとき、時間計測部151は、ジャム処理時間の計測を開始する。この後、ステップF5に移行する。
【0072】
ユーザがブザー音に気付くことで、プリンタ101に対するジャム処理が施され、ジャム状態の用紙Pが取り除かれることになる。ジャム処理後、未完了の印刷処理を継続するには、ユーザは押しボタン29を押す。このとき、ジャム処理の完了を意味するジャム処理完了信号が出力される。ステップF5において、制御部100は、ジャム処理信号の受信を待つ。この間、プリンタ101は、ステップF4で設定された状態を継続する。一方、制御部100がジャム処理完了信号を受信すると、時間計測部151はジャム処理時間の計測を完了し、制御部100は次のステップF6に進む。
【0073】
ステップF6において、判定部152は、ジャム処理時間(ジャム処理期間)が第1所定時間以上であるか否かを判定する。このとき、ジャム処理時間が、第1所定時間未満であれば、ステップF7に進む。
【0074】
ステップF7においては、パージ及びワイピング動作が行われる。パージ動作では、メンテナンス制御部150が、各ポンプ38を制御して、各ヘッド1、2へ所定量の液体を圧送する。図10(a)に示すように、この強制的送液で、各吐出口108内の液体は、異物と共に搬送ベルト43上に排出される。この後、メンテナンス制御部150は、ヘッドホルダ5の上方への移動を挟んで、ワイピング動作に移る。このとき、ヘッド1、2は、ヘッド昇降機構33により印刷位置から払拭位置に移動される。ワイピング動作では、メンテナンス制御部150が、ワイパユニット36(ワイパ移動機構27)を制御して、図10(b)に示すように各吐出面1a、2aをワイパ36aで払拭する。図中の矢印は、払拭方向を示す。払拭が完了すると、メンテナンス制御部150は、2つのヘッド1、2を一旦退避位置に移動させた後、元の印刷位置に戻す。ヘッド1、2が退避位置にある間に、メンテナンス制御部150は、ワイパユニット36を待機位置に戻す。この後、ステップF8に進む。
【0075】
用紙Pがジャムにより吐出面1aに当接すると、用紙P上の前処理液に触れたインク(吐出面1a上の残留インクや吐出口108内のインク)が凝集や析出を起し、異物を生じる。時間の経過と共に、吐出面1aへの異物の固着が進む。本実施形態では、経過時間が4時間未満であれば、固着の進行は不十分のため、上述のパージ及びワイピング動作で吐出面1aのクリーニング及び吐出特性の回復は可能である。経過時間が4時間以上になると、部分的に異物が固着してしまい、パージ及びワイピング動作だけでは異物除去は難しくなる。経過時間が15時間以上では、異物が固着してしまい、パージ及びワイピング動作による異物除去は殆ど不能となる。
【0076】
ステップF8においては、搬送ベルト43の洗浄液による清浄化(クリーニング動作)が行われる。メンテナンス制御部150が、移動機構37cを制御して洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させるとともに、搬送制御部141を介して搬送機構40を制御し、搬送ベルト43を走行させる。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が塗布され、外周面上の排出インクが、洗浄液と共にブレード37bに掻き取られる。この後、ステップF2に戻って、ジャムの発生によって行えなかった印刷を再度、実行する。
【0077】
一方、ステップF6において、ジャム処理時間が、第1所定時間以上であればステップF9に進む。ステップF9において、判定部152は、ジャム処理時間が第2所定時間以上であるか否かを判定する。ジャム処理時間が、第2所定時間未満であればステップF10に進み、第2所定時間以上であればステップF12に進む。
【0078】
ステップF10においては、キャッピング状態での加湿動作が行われる。具体的には、メンテナンス制御部150が、昇降モータ64を制御して吐出空間S1をキャッピング(封止状態に)する。このとき、キャップ60の突出部61aが搬送ベルト43の上面に当接される。そして、メンテナンス制御部150が、ポンプ56を所定時間だけ駆動し、所定の加湿動作を行う。こうして、吐出空間S1に加湿空気が充填される。
【0079】
用紙Pのジャム時に、吐出面1aに接触した用紙Pにおいて、印刷密度が高い領域ほど吐出面1a上に異物を多く生じる。一方、加湿動作において、加湿空気の供給口に近いほど、十分の水分が補給される。水分補給により、異物は軟化して、パージ及びワイピング動作で除去されやすくなる。そこで、加湿動作を行う際に、用紙P上で印刷密度の高い領域を抽出し、この高密度領域側の開口51a、51bを加湿空気の供給先としても良い。本実施の形態では、領域判定部153が、高密度領域を判定する。メンテナンス制御部150は、この判定結果に基づいて切換弁59を制御し、チューブ55のタンク側主部55a’の連通先を切り換えて加湿動作を行う。
【0080】
次に、ステップF11において、メンテナンス制御部150が、昇降モータ64を制御して、キャッピングを解除し吐出空間S1を非封止状態にする。この後、ステップF7、ステップF8へと進み、上述と同様な処理が行われる。こうして、多少異物の固着が進行していても、吐出不良による印刷品質の低下を抑制することができる。
【0081】
ステップF12〜ステップF15においては、ステップF10、ステップF11、ステップF7、ステップF8と同様に、キャッピングをした状態で加湿動作を行い、キャッピングの解除を行った後にパージ及びワイピング動作を行い、この後、クリーニング動作を行う。この一連の動作により、一部を残して、固着の進行度合いの低い異物は除去される。多くの吐出口108には、新鮮なメニスカスが作られることになる。
【0082】
次に、ステップF16において、再度、ステップF10と同様に、キャッピングをした状態で加湿動作を行い、ステップF17に進む。ステップF17においては、待機動作を行う。具体的には、メンテナンス制御部150が、キャッピングしたまま第3所定時間だけ待機するように、昇降モータ64を制御する。この後、ステップF11へと進み、上述と同様な処理が行われる。
【0083】
このように、ジャム処理時間が第2所定時間以上の場合は、待機動作を行う。待機動作は、固着した異物に対する十分な水分補給を目的とする。ステップF14でのワイピング動作により、異物表面には、払拭されるインクから直接水分が補給されている。これに加え待機動作中に、固着異物は、ステップF14で回復されたインクメニスカスとステップF16で充填された加湿空気から、継続的な水分補給を受けることになる。第3所定時間後には、固着異物は軟化して、パージ及びワイピング動作(ステップF7)で除去可能となる。
ステップF17の後、図9に示すように、ステップF11、ステップF7及びステップF8の順で処理が進む。これにより、ヘッド1全体の吐出特性を回復できる。なお、回復されたインクメニスカスは、仮に待機動作中に増粘が進んでも、ステップF7の処理により確実に特性を回復できる。
【0084】
こうして、ユーザによるジャム処理が完了した後、上述のような処理が行われ、ステップF3において、ジャムが生じていない場合は印刷が完了する。
【0085】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、ジャムによって前処理液が吐出面1aに付着し、インク中の成分の凝集又は析出による塊(異物)によって吐出口108が詰まる虞がある。このときのジャム処理時間が、第1所定時間以上の場合、加湿動作を行ってからパージ動作を行う。このように加湿動作を行うことで、吐出口近傍の塊に水分が供給され、当該塊が軟化する。このため、軟化した塊をパージ動作によって排出することが可能となり、吐出不良を解消することができる。
【0086】
また、ヘッド2が、画像データに基づいて、前処理液を用紙Pに吐出する。これにより、処理液用塗布手段が、用紙Pの画像が形成される部分に対して、処理液を塗布可能な構成となる。このため、毎回、用紙P全面に前処理液を塗布するときと比して、ジャム発生時において、吐出面1aへの前処理液の付着量が少なくなる。また、吐出口108からのインクの強制排出を、ポンプ38の駆動で行っているため、その強制排出機構の構成が簡単になる。
【0087】
また、ワイパユニット36を有していることで、パージ動作によって吐出面1a,2aに付着した液体などの異物をワイパ36aで払拭することが可能となる。このため、吐出面1a,2aに異物が残存しなくなり、吐出口108からの液体吐出特性が安定する。
【0088】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、ステップF6において、ジャム処理時間が第1所定時間以上の場合、ステップF6からステップF10に移行してもよい。つまり、ステップF9がなくてもよい。また、ステップF12〜ステップF17もなくてもよい。また、ステップF16だけがなくてもよい。さらにこのとき、ステップF14がなくてもよい。こうすると、ジャム処理完了後の制御が簡単になる。
さらに、ジャム発生時点からジャム処理完了時点までの時間間隔と所定時間との大小関係をステップF6で比較しているが、この比較ステップ自体が無くても良い。この場合、ジャム処理完了後、パージ及びワイピング動作の前に、加湿メンテナンスが実行されればよい。ジャム処理が完了するまでにインクの固着が進んでいたとしても、簡単な制御で吐出状態の改善が図られる。
ジャム処理完了信号を発生する押しボタン29は、ユーザが押すものとしたが、ジャム処理が完了してプリンタ101の状態が復帰したとき、必然的にジャム処理完了信号を発生する(例えば、押される)ものとしても良い。ジャムは、プリンタ101の内部で発生し、筐体101aの扉、壁部等の開閉動作を伴う。ジャム処理完了時の状態復帰に際して、ジャム処理完了信号の発生は、最後に開閉される部材の動作に連動するものであればよい。ジャム処理完了信号が出力されると、未完了の印刷を再開して完了することになる。
【0089】
ヘッド2に代えて、前処理液が充填されたスポンジローラが設けられていてもよい。この場合、用紙Pの印刷面全体に前処理液を塗布することになるが、構成が簡易になる。
また、2つの用紙センサは、用紙の搬送経路において、2つのヘッド1、2を挟んで配置されていたが、下流側の用紙センサが2つのヘッド1、2に挟まれて配置されていても良い。ここで、ジャム検知部144は、上流側の用紙センサから下流側の用紙センサまでの、搬送機構による搬送速度に基づいた搬送時間が経過しても、上流側の用紙センサで先端が検出された用紙Pの後端が下流側の用紙センサで検出されないとき、吐出面1aと搬送ベルト43との間でジャムが発生したと検知する。
さらに、2つのセンサは、搬送方向に関して、両ヘッド1、2を挟む位置ではなく、並列に隣接配置されていても良い。例えば、各ヘッド1、2の長手方向において、それぞれヘッドの搬送方向上流端に合わせて配置する。これにより、用紙Pが、処理液塗布領域の上流端に差し掛かった時点から、記録液の吐出領域の上流端に差し掛かった時点までの時間間隔が計測可能となる。ここで、ジャム検知部144は、上流側の用紙センサから下流側の用紙センサまでの、搬送機構による搬送速度に基づいた搬送時間が経過しても、上流側の用紙センサで先端が検出された用紙Pの先端が下流側の用紙センサで検出されないとき、吐出面1aと搬送ベルト43との間でジャムが発生したと検知する。
以上のように、いずれの用紙センサの配置形態においても、所定時間経過後に下流側センサが用紙Pを検知しないとき、ジャム検知部144は、実際のジャム位置に関係なく、ヘッド1の吐出面と搬送ベルト(対向部材)43との間のジャムとして検知信号を出力する。
【0090】
上述の実施形態においては、インクの強制排出としてパージ動作が行われているが、メンテナンス制御部150がヘッド制御部143を介してアクチュエータ(強制排出機構)を制御し、すべての吐出口108から複数のインク滴を吐出(排出)させてもよい。つまり、パージ動作に代えてフラッシング動作を行ってもよい。また、正圧を加えるパージ動作に変えて、凹形状のキャップ部材で吐出面1aを覆って吐出空間S1を封止状態とし、当該吐出空間S1の圧力を吐出口108に形成されたインクメニスカス耐圧よりも低い負圧にしてもよい。こうすることで、吐出口108内のインクを吸引パージしてもよい。このとき、加湿メンテナンスの後、吐出空間S1の封止状態が維持される。なお、加湿用と吸引パージ用に別々のキャップを採用した場合には、加湿メンテナンスに続くキャップの交換動作が行われることになる。
【0091】
また、吐出空間S1を封止状態と非封止状態とに取り得るキャップ手段として、吐出面1aと対向する底部(対向部材)及びこの底部の周縁に立設された環状部(区画部材:具体的にはリップ部材)を有するキャップと、環状部の先端が吐出面1aと当接する位置及び吐出面1aから離隔した位置にキャップを移動させる移動機構とを含んで構成されていてもよい。この場合、キャップの底部に加湿空気を供給する供給口と排出口とが設けられていてもよい。この変形例においては、パージ動作後にワイピング動作が行われるので、次回、キャップで吐出面1aを覆った際に、キャップにインクが付着しなくなる。
本実施の形態のように、ベルト搬送方式の搬送機構を採用する場合、このキャップ手段はヘッド1、2の長手方向延長線上において、ヘッド1、2の隣接位置をキャップの待機位置とすればよい。また、ローラ搬送方式の搬送機構を採用する場合には、各ヘッド1、2の吐出面に対向して、キャップの待機位置とすればよい。
【0092】
また、上述の実施形態のワイパ移動機構27においては、ワイパ36aを主走査方向に移動させているが、移動機構は、ヘッド1,2を移動させてもよいし、ワイパ36a及びヘッド1,2の両者を相対移動させてもよい。
【0093】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 ヘッド(記録用ヘッド)
1a 吐出面(記録用吐出面)
2 ヘッド(処理液用ヘッド:処理液付与手段)
2a 吐出面(処理液用吐出面)
26a、26b 用紙センサ
27 ワイパ移動機構(移動機構)
29 押しボタン(出力手段)
36a ワイパ
38 ポンプ(強制排出機構)
40 搬送機構
50 加湿空気供給機構
51a,51b 開口
59 切換弁(供給先切換手段)
100 制御部
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
108 吐出口
150 メンテナンス制御部(メンテナンス制御手段)
151 時間計測部(計測手段)
152 領域判定部(領域判定手段)
S1 吐出空間
S2 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送機構と、
記録媒体に記録液を吐出する複数の吐出口が開口した記録用吐出面を有する記録用ヘッドと、
前記記録用ヘッドよりも前記搬送方向上流に設けられ、記録液中の成分を凝集又は析出させる成分を含有した処理液を記録媒体に付与する処理液付与手段と、
前記記録用吐出面と対向する吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段と、
加湿空気を生成するとともに、前記封止状態の前記吐出空間内に加湿空気を供給する加湿動作を行う加湿空気供給機構と、
前記記録用ヘッド内の記録液に圧力を付与し、前記吐出口から記録液を強制的に排出させる強制排出動作を行う強制排出機構と、
前記搬送機構と前記記録用吐出面との間において、記録媒体のジャムが発生したことを検知するジャム検知手段と、
前記搬送機構へ記録媒体の再供給が可能な前記ジャムからの回復に対応するジャム処理完了信号を出力する出力手段と、
前記ジャム検知手段がジャムの発生を検知してから前記出力手段が前記ジャム処理完了信号を出力するまでの時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記時間が第1所定時間未満の場合、前記強制排出動作を行うように前記強制排出機構を制御し、前記時間が前記第1所定時間以上の場合、前記吐出空間を前記封止状態にしてから前記加湿動作を行い、この後、前記吐出空間を前記非封止状態としてから前記強制排出動作を行うように、前記キャップ手段、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御するメンテナンス制御手段とを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記メンテナンス制御手段は、前記計測手段によって計測された前記時間が前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上の場合、前記加湿動作の後であって前記強制排出動作の前において、前記封止状態のまま第3所定時間だけ待機する待機動作を行うように、前記キャップ手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記メンテナンス制御手段は、前記加湿動作の後であって前記待機動作を行う前に、前記吐出空間を前記非封止状態としてから前記強制排出動作を行うように、前記キャップ手段及び前記強制排出機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記メンテナンス制御手段は、前記強制排出動作の後であって前記待機動作を行う前に、前記吐出空間を前記封止状態にしてから前記加湿動作を行うように、前記キャップ手段及び前記加湿空気供給機構を制御することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記処理液付与手段は、記録媒体に処理液を吐出する複数の吐出口が開口した処理液用吐出面を有する処理液用ヘッドであり、
前記処理液用ヘッドは、記録媒体に記録される画像に関する画像データに基づいて、記録媒体に処理液を吐出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
ジャム状態の記録媒体において、前記画像データに基づいて、前記搬送方向に直交する直交方向に関して印刷密度が他に比べて高い高密度領域を判定する領域判定手段をさらに備えており、
前記加湿空気供給機構は、前記複数の吐出口を前記直交方向に挟んで配置され、前記吐出空間と連通する2つの開口と、生成された加湿空気の供給先を前記2つの開口のうちの
いずれか一方に切り換える供給先切換手段とを有し、
前記メンテナンス制御手段は、前記加湿動作を行う際に、前記2つの開口のうち前記領域判定手段が判定した前記高密度領域に近い方を加湿空気の前記供給先とするように、前記供給先切換手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記強制排出機構は、所定量の記録液を前記記録用ヘッドに送液することで前記強制排出動作を行うポンプを有し、
前記メンテナンス制御手段は、前記強制排出動作を行うように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記記録用吐出面を払拭するワイパと、
前記ワイパが前記記録用吐出面と接触しながら前記記録用吐出面に対して相対移動するように、前記ワイパ及び前記記録用ヘッドの少なくとも一方を移動させる移動機構とをさらに備えており、
前記メンテナンス制御手段は、前記強制排出動作を行った直後に、前記ワイパで前記記録用吐出面を払拭する払拭動作が行われるように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
搬送される記録媒体に記録液を吐出する複数の吐出口が開口した吐出面を有する記録用ヘッドと、
前記記録用ヘッドによる記録液の吐出に先立って、記録媒体に対して、記録液中の成分を凝集又は析出させる成分を含有した処理液を付与する処理液付与機構と、
対向部材と、前記対向部材が前記吐出面に隙間を挟んで対向したとき、前記対向部材及び前記吐出面とともに前記複数の開口を内包して外部空間から前記隙間を区画する区画部材とを備え、前記区画部材が前記隙間を外部空間から区画した区画状態と、前記区画部材が前記隙間を外部空間に開放した開放状態とを取り得るキャップ機構と、
前記区画状態の前記キャップ機構内に加湿空気を供給する加湿動作を行う加湿空気供給機構と、
前記記録用ヘッド内の記録液に圧力を付与し、前記吐出口から記録液を強制的に排出させる強制排出動作を行う強制排出機構と、
記録媒体に処理液の付与を開始した後において、当該記録媒体が前記記録用ヘッドと対向する対向領域を横切るまでに起こしたジャムに対する回復処理が完了したとき、前記キャップ機構を前記区画状態にしてから前記加湿動作を行い、この後、前記強制排出動作を行うように、前記キャップ機構、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御するメンテナンス制御手段とを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
記録媒体に処理液の付与を開始した後において、
前記ジャムが発生してから前記回復処理が完了するまでのジャム期間が第1所定時間未満の場合、前記強制排出動作を行うように前記強制排出機構を制御し、
前記ジャム期間が前記第1所定時間以上の場合、前記隙間を前記区画状態にしてから前記加湿動作を行い、この後、前記強制排出動作を行うように、前記キャップ手段、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御するメンテナンス制御手段とを備えていることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記メンテナンス制御手段は、前記ジャム期間が前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以上の場合、前記加湿動作の後であって前記強制排出動作の前において、前記封止状態のまま第3所定時間だけ待機する待機動作を行うように、前記キャップ手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記加湿動作及び当該加湿動作に続く前記強制排出動作を複数回繰り返すことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記ジャム期間中は、前記処理液付与手段は記録媒体への処理液の塗布を中止し、前記記録用ヘッドは記録媒体への記録液の吐出を中止していることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
処理液が塗布された記録媒体のジャムが発生したことを検知するジャム検知手段と、前記ジャムからの回復に対応するジャム処理完了信号を出力する出力手段と、前記ジャム検知手段がジャムの発生を検知してから前記出力手段が前記ジャム処理完了信号を出力するまでの前記ジャム期間の長さを計測する計測手段と、を備え、
前記ジャム検知手段は、
少なくとも、前記処理液付与手段により処理液が付与される付与領域の前記搬送経路における上流端から、記録ヘッドと対向する対向領域の前記搬送経路における上流端までの、前記搬送機構による記録媒体の搬送速度に基づいた搬送時間が経過しても、前記付与領域に達した記録媒体が前記対向領域に達しないとき、記録媒体のジャムとして検知することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記搬送機構に記録媒体を供給する媒体供給機構を備え、
ジャム処理完了信号は、
前記媒体供給機構から前記搬送機構へ記録媒体の再供給が可能な前記ジャムからの回復に対応する信号であることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記ジャム検知手段は、
搬送される記録媒体の端を検出する媒体センサであって、前記搬送経路において、前記処理液付与手段及び前記記録液用ヘッドを搬送の両側から挟んで配置された2つの前記媒体センサを有し、
上流側の前記媒体センサから下流側の前記媒体センサまでの、前記搬送速度の基づいた搬送時間が経過しても、前記上流側の媒体センサで検出された記録媒体の前記端が、前記下流側の媒体センサで検出されないとき、記録媒体のジャムとして検知することを特徴とする請求項14又は15に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記強制排出機構は、前記記録用ヘッド内の記録液に正圧を付与し、
前記メンテナンス制御手段は、
前記加湿動作の後、前記隙間を前記開放状態にしてから前記強制排出動作を行うように、前記キャップ機構、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御することを特徴とする請求項9〜16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記強制排出機構は、前記記録用ヘッド内の記録液に負圧を付与し、
前記メンテナンス制御手段は、
前記加湿動作の後、前記隙間を前記区画状態のままで前記強制排出動作を行うように、前記キャップ機構、前記加湿空気供給機構、及び、前記強制排出機構を制御することを特徴とする請求項9〜16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−82195(P2013−82195A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37094(P2012−37094)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】