説明

液体噴出ヘッドおよび該液体噴出ヘッドを備えた液体吐出具

【課題】媒体に正しく対向していないときに不用意に液滴が吐出されるのを防止する。
【解決手段】液体吐出具(1)に搭載されるように構成された液体噴射ヘッド(5)は、基板(7)と、基板(7)上に配置された液体噴出システム(9)と、媒体(8)に物理的に接触することなく動作して液体噴出ヘッド(5)と媒体(8)との間の距離を測定する測定手段(13)と、を有し、測定手段(13)は制御ユニット(10)に接続されるように構成され、測定手段(13)は基板(7)上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出ヘッド、およびその液体噴出ヘッドを備えた液体吐出具に関する。液体吐出具は、インクジェットプリンタまたは内蔵型筆記装置によって構成することができ、それらの装置は特に、筆記媒体に非接触でインクを移す方法を使用する。また、本発明は、ユーザが手で持つように構成されている液体またはインク吐出具に関する。
【0002】
より具体的には、そのような液体噴出ヘッドの中でも、本発明は液体吐出具に装着されるように構成されている液体噴出ヘッドに関し、その液体噴出ヘッドは、
液体吐出具に搭載するのに適した基板と、
基板上に配置された液体噴出システムであって、離れた場所にある媒体上に液体を吐出するのに適しており、媒体上に液体を吐出する液体噴出システムを作動させる働きをする制御ユニットにさらに接続されるように構成された液体噴出システムと、を有している。
【背景技術】
【0003】
周知のこの種の液体吐出具では、液体噴出ヘッドは、基板と、基板上に直接配置された少なくとも1つまたは複数のノズルを含む液体噴出システムとを有していることがある。液体噴出ヘッドが加熱式インクヘッドの場合、インクシステムは一般に、基板の一方の面に固定された少なくとも1つの抵抗発熱素子と、基板の同じ面に搭載されたブロックとを有する。ブロックは、入口室と少なくとも1つの抵抗発熱素子に対向する出口開口部との間に延びる少なくとも1つのインク流路を有する。出口開口部は、抵抗発熱素子に接触しているインクに蒸気の泡を爆発的に発生させることで媒体上にインク滴を吐出するのに適しているノズルを形成している。
【0004】
周知のインクジェットプリンタでは、記録媒体、すなわち紙または他の筆記面のようなインクを受ける部材がプリンタに供給され、インクジェットヘッドの動く方向に直交する方向に媒体を搬送しながら画像が形成される。このため、インクジェットシステム、特に、基板上に配置されたインクジェットシステムの少なくとも1つのノズルから、インクが不用意に吐出され得る。例えば、インクジェットシステムのノズルが媒体に正しく対向する前に、インク滴が誤って吐出され得る。
【0005】
一方、液体吐出具が、ユーザの手で握られることを意図した筒状の部材を有するインクジェットペンで構成されている場合、筒状の部材は、触覚センサを有しており、触覚センサは、筆記中に媒体と接触する働きをする第1端と、媒体に接触している触覚センサの動きを検出する運動検出機構に接続されている第2端と、を有する。運動検出機構は、液体噴出ヘッドを作動させる制御ユニットに接続されている。従って、液体噴出ヘッドは媒体に接触する必要はないが、液体の吐出の開始を可能とするためにはペンの触覚センサが媒体と接触することが不可欠である。よって、特に媒体がある程度ザラザラしている場合、ユーザが触覚センサを媒体に接触させることが不都合となる可能性がある。
【0006】
加えて、媒体に接している触覚センサの端は、媒体の液体噴出による衝突点に概ね近いため、液体が乾燥する前に触覚センサの端が液体に接触し、これによってインクジェットペンを普通に使用している際に液体を媒体じゅうに擦り付けてしまうという大きな危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液体噴出ヘッドの信頼性が十分に高く液体噴出ヘッドが媒体に正しく対向していないときに不用意に液滴が吐出されることを防ぐことが可能な、例えばインクジェットプリンタのような液体吐出具に搭載されるように構成された液体噴出ヘッドを提供し、または液体吐出具がインクジェットペンにより構成されている場合は、信頼性が高くユーザが心地よく筆記を行なえる液体噴出ヘッドを提供することによって、上記の技術的問題を緩和する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、液体吐出具に搭載されるように構成された液体噴出ヘッドであって、
液体吐出具に搭載されるように構成された基板と、
基板上に配置された液体噴出システムであって、離れた場所にある媒体上に液体を吐出するのに適しており、媒体上に液体を吐出する液体噴出システムを作動させる働きをする制御ユニットにさらに接続されるように構成された液体噴出システムと、を有し、
液体噴出ヘッドは、媒体に物理的に接触することなく動作して液体噴出ヘッドと媒体との間の距離を測定する測定手段をさらに有し、測定手段は制御ユニットに接続されるように構成されていることと、
測定手段は基板上に配置されていることと、
を特徴とする液体噴出ヘッドを提供する。
【0009】
加えて、本発明の種々の実施形態は、以下のいずれの構成も含むことができる。すなわち、
制御ユニットも基板上に配置されていること;
測定手段は、液体噴出ヘッドと媒体との間の距離を測定する働きをする光学系を有すること;
測定手段は、液体噴出ヘッドと媒体との間の距離を測定する働きをする超音波音響プローブを有すること;
基板は、液体吐出具に内蔵された液体タンクに接続されるように構成された入口端と、液体噴出システムに接続された出口端と、の間に延びる供給流路を有すること;
基板は、ガラス、シリコン、セラミックおよび高分子材料からなる群に含まれる材料で作られていること;
液体噴出システムは、液体噴出システム中にある液体に蒸気の泡を爆発的に発生させることで少なくとも1つの開口部から液滴を吐出するに適した加熱式液体噴出システムを有すること;
基板は、媒体に対向ように構成された第1の面と、第1の面の反対側の第2の面と、を有する板により構成され、
加熱式液体噴出システムは、基板の第1の面上に固定された少なくとも1つの抵抗発熱素子と、
基板の第1の面上に搭載されたブロックとを具備しており、ブロックは、入口室と、媒体上にインク滴を吐出するために少なくとも1つの抵抗発熱素子に対向する出口開口部とを有する少なくとも1つの液体流路を有すること;
運動検出手段がさらに基板上に配置され、運動検出手段は、液体噴出ヘッドの動きを検出するに適しており、運動検出手段は、制御ユニットに接続されるように構成されていることである。
【0010】
さらに本発明は、第1端と第2端との間に延びている、ユーザが手で持つように構成されている実質的に管状の部材を有する液体吐出具であって、管状の部材は、
液体タンクと、
電源と、
上記に規定した液体噴出ヘッドと、を有しており、液体噴出ヘッドは、管状の部材の第1端に搭載され、電源に接続されている液体吐出具をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付の図面を参照として本発明の非限定的な例を示す目的で与える実施形態に関する以下の記載を読むに従い、本発明の他の特徴および利点が明らかとなる。
【0012】
各図において、同じ参照符号は同一または同様の要素を示す。
【0013】
図1は、ペンを構成するため第1の端2aと第2の端2bとの間に延びる実質的に管状の部材2を有する液体吐出具1を示す。管状の部材2は、中空の内部空間の輪郭を定める内壁21と、ユーザの手で握られるように構成されている外壁22を有している。
【0014】
管状の部材2の内壁21で輪郭が定められる中空の内部空間は、電源3と、液体タンク4と、管状の部材2の開口している第1の端2aで液体噴出ヘッド5と、を収容しており、液体噴出ヘッド5は液体タンク4と液体で通じることで直接接続されている。
【0015】
管状の部材2の中空の内部空間に内蔵されている電源3は、例えば、再充電可能でもよい1つまたは複数の電池で構成することができ、管状の部材2の第2の端2bに位置するスイッチ6により液体噴出ヘッド5の各種電気素子を作動することを可能とする。電源3と液体噴出ヘッド5とは、2本の電源線31により接続されている。
【0016】
スイッチ6は、この器具のユーザによって作動できるいかなる電源投入手段で置き換えられてもよく、特に、管状の部材2がユーザの手に握られたことを感知する手段であり、例えば、管状の部材2の外壁22に配置され、ユーザが握ったとき圧力を感知する働きをする容量センサのようなものである。
【0017】
例として、管状の部材2の端2bは、電源3を新しい電源に交換できるように、管状の部材2の中央部に取り外し可能に装着されたカップの形式であってもよい。
【0018】
液体タンク4も、液体を使い切ったら他のタンクに交換できるように、管状の部材2の中空の内部空間に取り外し可能に装着されてもよい。どのような器具を使用するかによって、タンクに収容される液体は、インクで構成してもよいし、あるいは器具を修正具として使用する場合はインク消去用またはインク隠蔽用液体、器具を接着剤塗布具または散布具として使用する場合は接着剤であり、液体噴出ヘッド5より吐出されるのに十分な特性を有する液体で構成できる。
【0019】
図1および図2に示されるように、ここで例として、液体噴出ヘッド5は、管状の部材2の開口した端2aに配置されている。開口した端2aは、管状の部材2の中央部分の内壁22に直接取り付けられた末端部によって構成されてもよい。
【0020】
液体噴出ヘッド5は、管状の部材2の内壁21に搭載することができる基板7を有している。
【0021】
基板7の外形および管状の部材の内壁21は、円形、長方形、正方形または三角形とすることができる相補的な形状を有している。基板7の輪郭は、図2に示されているように、管状の部材2の内壁21に形成された段部21a上に直接固定されている。基板7の輪郭は、内壁21の段部21a上に、接着剤、溶接、留め具または他の固定手段によって固定することができる。基板7は、ガラスまたはシリコンまたはセラミック類または他の電気絶縁体で作製することができる。
【0022】
図2〜5に示されているように、第1の実施形態による基板7は、円形の水平板で構成されており、媒体8または筆記面に対向するように構成された第1の面71と、第1の面71の反対側の第2の面72とを有しており、第2の面72は液体タンク4に対向している。
【0023】
液体噴出ヘッド5は、基板7の第1の面71上に位置している液体噴出システム9をさらに有しており、液体噴出システム9は、離れた位置から媒体の上に、媒体8と物理的に接触することなく液体を吐出するのに適している。
【0024】
さらに、基板7はその第2の面72に、媒体8の上に液体を吐出するために液体噴出システム9を作動させる働きをする制御ユニット10を有することもできる。制御ユニット10は、液体噴出システム9が離れた位置にある媒体8上に液滴を吐出することを可能とするために、電気信号(または電気パルス)発生器を含むこともできる。
【0025】
液体噴出システム9は、液体噴出システム中にある液体に蒸気の泡を爆発的に発生させることで少なくとも1つの開口部から液滴を吐出するのに適した加熱式液体噴出システムにより構成できる。
【0026】
図3および図4に示されているように、加熱式液体噴出システム9は、基板7の第1の面71に固定されて制御ユニット10の電気信号発生器に接続された少なくとも1つの抵抗発熱素子91と、同じ第1の面71に搭載されて抵抗発熱素子91を覆っているブロック11と、を有していてもよい。より詳しくは、ブロック11は、底部を有する入口室12aと、基板7に固定された抵抗発熱素子91に対向するように構成された出口開口部12bと、の間に延びている少なくとも1つの液体流路12を有している。出口開口部12bは、微小な滴を吐出できるように形成され、かつ適応しており、抵抗発熱素子91の温度を瞬時に上昇させるために電気信号発生器から電気信号が抵抗発熱素子91に印加されると、それによって液体に蒸気の泡が形成され、その泡により媒体上に微小な滴が吐出される。
【0027】
また、液体流路12は、入口室12aを出口開口部12bに繋ぐ中央部分12cを有しており、それによって、液体が抵抗発熱素子91に流れる毛管流路12を提供する。
【0028】
また、ブロックが基板7の第1の面71に配置されて固定されている場合、基板7は、液体タンク4(図2)の供給路41に接続された入口端73aと、ブロック11の入口室12aに開口している出口端73bと、の間に延びている供給流路73を有する。
【0029】
本実施形態では、液体の毛管流路12は基板7とブロック11との接合部分に位置しており、基板7の第1の面71にブロックを固定することで密閉される。基板7に使用される典型的な材料は、ガラス、セラミック類、コーティングされた材料、またはシリコンなどの電気絶縁体であるが、ブロック11に使用される材料は、液体の毛管流路12の製造の容易性により一般に選ばれる。例えば、ブロック11は、成型ガラス、エッチング加工されたシリコンまたはエッチング加工されたガラスで作製できる。また、ブロック11は金属板によって構成することもできる。その構成において、基板7およびブロック11は、例えば、エポキシ、陽極結合、または封止ガラスによる種々の方法で同時に密閉することができる。しかしながら、液体噴出システム9は、抵抗発熱素子91の代わりに圧電素子を含む圧電効果噴出システムによって構成することもでき、圧電素子は、制御ユニット10の電気信号発生器から来る電気信号を受けたときに、対応して変形する。
【0030】
また、液体噴出システム9は、MEMS(微小電気機械システム)技術、または圧電、加熱および/またはMEMS技術の組合せを利用して作動することもできる。
【0031】
また、液体噴出ヘッド5は、基板7の上に直接位置している測定手段13を有する。測定手段13は、媒体8に物理的に接触することなく動作するのに適しており、液体噴出ヘッド5と媒体8との間の距離を測定する。より正確には、測定手段13は、液体噴出システム9と媒体8との間の距離を測定するのに適していてもよい。
【0032】
ここで考えている、図3および図4に示されているような例では、測定手段13は、例えば、反射光ビームFRとともに媒体8上に光点を形成するために媒体8に向けて入射光ビームFIを出射する少なくとも1つの赤外発光ダイオード(赤外LED)14を有する光学系により構成されている。光点および反射光ビームFRは、媒体に対する入射光ビームFIの傾斜角および光点の強度を測定するように、1つまたは複数の光学センサ15によって検知される。
【0033】
赤外LED14と光学センサ15との間の距離自体は既知であり、入射光ビームFIの傾斜角および光点の強度が測定されるので、媒体8と赤外LED14との間の距離、従って液体噴出システム9と媒体8との間の距離を測定するには、単に単純な三角法の関係を利用することだけが必要となる。また、計算された距離を測定する際に昼光が干渉する可能性を少なくするため、赤外光を調節してもよい。
【0034】
通常、光学センサ15は、半導体ダイオードまたはフォトトランジスタ、またはジーメンス社の商標のもとで販売されている赤外フォトダイオード SFH229等のフォトダイオードで構成される。赤外発光体は、OPTEK社の商標のもとで販売されているIR発光体 OPE5794で構成できる。
【0035】
図3に示す実施形態では、測定手段13は、制御ユニット10に接続されており、リング状に配置された複数の赤外発光ダイオード14および複数の光学センサ15を有しており、各赤外発光ダイオード14は両方の光学センサ15の間に配置されており、各光学センサは両方の発光ダイオード14の間に配置されており、発光ダイオード14と対応する光学センサとは正反対に向き合って配置されるようになっている。
【0036】
この実施形態では、3つの赤外発光ダイオード14および3つの光学センサ15がある。もちろん、測定手段は3つよりも多いダイオード14およびセンサ15を含むことができる。
【0037】
図3に示される実施形態では、測定手段13は、入射光ビームFIおよび反射光ビームが基板7を通過できるようにガラスでできている基板7の第2の面72に配置されている。
【0038】
いずれにせよ、基板7が不透明な材料でできている場合は、媒体8に直接面している基板の第1の面71上に測定手段13を配置することもできる。
【0039】
他の実施形態では、測定手段13は、光軸が管状の部材2の縦軸と実質的に一致している1つまたは複数の円錐光ビームを出射する手段を有していてもよい。その場合、測定手段13は、媒体8上の対応する円錐光ビームにより形成された対応する光点の半径を測定するのに適した1つまたは複数の光学センサを有している。光点の半径は、媒体8と、円錐光ビームを出射する発光手段との距離に比例しているため、発光手段と媒体8との間の距離を線形または非線形な方法で測定できる。同様に、円錐光ビームの対称軸が媒体に対して傾いており、媒体上に形成された1つまたは複数の光点が円ではなく楕円の場合、媒体と発光手段の発光素子との間の対応する距離を測定するために、1つまたは複数のセンサは、対応する楕円点の短軸の長さを測定するものである。この場合、液体吐出具1の傾きに関係なく、各楕円点の短軸の長さは媒体と発光手段の対応する各発光体との間の距離にのみ比例し、各楕円点の長軸の長さのみが、対応する円錐光ビームの傾斜角に比例する。
【0040】
他の方法によれば、少なくとも1つの光学センサを用いて、媒体8の表面で反射した赤外光の振幅を検知することで、液体噴出システム9と媒体との間の距離を計算することができる。
【0041】
異なる実施形態(示していないが)として、基板上に直接位置した1つまたは複数の超音波音響プローブによって測定手段13を構成することもできる。
【0042】
図5を参照して示したとおり、測定手段、より詳しくは各赤外LED14および各光学センサ15は、測定手段13によって得られた測定結果を保存できる制御ユニット10に直接接続されている。また、制御ユニット10は、決まった時間間隔で測定手段13に繰り返し測定を実行させるものであってもよい。そのような時間間隔は、例えば、1ミリ秒(ms)から0.1秒(s)の範囲とすることができる。
【0043】
この場合、制御ユニット10は、測定手段13によって複数の決まった時間間隔で測定される複数の距離の関数として、媒体8に対する液体噴出ヘッド9の変位を決定することができる。上記のとおり、3つの光学センサ15により検知される3つの反射光ビームFRにより媒体8上に3つの光点を形成させるように、3つの赤外発光ダイオード14は、媒体8に向けて3つの異なる入射光ビームFIを放出できる。このため、少なくとも1つの光学センサ15が、それに対応して正反対で向き合っている赤外LED14との組合せにおいて距離の変化を検出すると、制御ユニット10はその変化を液体噴出ヘッドの動きとして判断することができる。
【0044】
そのような相対的な移動は、液体噴出ヘッド9が媒体の面に厳密に平行な平面内で移動していないときだけ検出される。しかしながら、普通のユーザが筆記のために筆記用具を使用する場合、ユーザは管状の部材2に無意識に振動を伝え、そのような振動は、測定手段13および制御ユニットによって、動きとして自動的に検出される。
【0045】
したがって、媒体と液体噴出システム9との間の距離が適切な範囲内であると測定手段13が判断した場合、または、距離が適切な範囲内にあり、かつ制御ユニット10が測定手段13と共に液体噴出システム9の動きを検出したと測定手段が判断した場合に、制御ユニットが液体噴出システム9を作動させるものであってもよい。
【0046】
いずれにせよ、基板7は、基板7の第1および第2の面71、72の一方に直接設置された運動検出手段16(図3)を有していてもよい。運動検出手段16は、他の場所、例えば、管状の部材2の内壁21上に設置されもよい。運動検出手段16は、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、方位センサ、傾斜センサまたは振動検出器で構成できる。
【0047】
図6および図7は、本発明の他の実施形態による液体噴出ヘッド32を含む液体吐出具1を示す。また、液体噴出ヘッド32は管状の部材2の開口端2aに配置されており、その開口端は、管状の部材2の中央部分の内壁22に直接取り付けられた末端部によって構成することができる。
【0048】
この第2の実施形態では、液体噴出ヘッド32は、液体タンク4に対向する上縁33aと、媒体に対向している下縁33bと、管状の部材の開口端2a上の内壁に搭載された2つの側縁33cとを持つ垂直板で構成された基板33を有している。側縁33cの輪郭と管状の部材2の開口端2aの内壁とは相補的な形状を有しており、側縁33cは、接着剤、溶接または任意の適切な方法によって内壁に固定することができる。また、基板33は、管状の部材2の長手方向軸に沿って延びる二つの平行な面を有する。
【0049】
液体噴出ヘッド32は、基板33の下縁33bの近傍に配置された液体噴出システム34をさらに有している。液体噴出システム34は横発射方式で、基板33の一方の面上に固定された少なくとも1つの抵抗発熱素子35と、基板33の同じ面に装着されたブロック36とを有し、ブロック36は、液体タンク4の供給路41に接続された入口端と、抵抗発熱素子35にある出口端との間に延びている少なくとも1つの液体流路37を備えている。
【0050】
基板33およびブロック36は、第1の実施形態の液体噴出ヘッド5で開示したような材料によって作製できる。
【0051】
また、液体噴出ヘッド32は基板33上に配置された測定手段13を有する。本実施形態では、測定手段13は、光輸送手段39に接続された1つの赤外発光ダイオード(赤外LED)38と、光輸送手段42に接続された1つの光学センサ40とを有している。より詳しくは、基板33の下縁33bへ、および下縁33bから赤外を伝えるために、光輸送手段39および42は、1つまたは複数の光ファイバまたは成型光導管で構成することができる。このため、LED38は入射光を放出し、その光は、媒体8上に1つまたは複数の点を形成するように、光輸送手段39によって媒体8に向けて伝えられる。そして、媒体と基板の下縁33bとの間の距離を決定できるように、反射光は光輸送手段42を経由して光学センサ40に送られる。
【0052】
第1の実施形態で述べた媒体と液体システムヘッドとの間の距離を計算する各種の方法は、この第2の実施形態にも適用できる。例えば、光学センサ40を、媒体8の表面で反射した赤外光の振幅を利用した距離の計算に適応することができる。
【0053】
各光輸送手段39、42は、1つまたはそれ以上の光ファイバ、または同等の、対応するLED38または対応する光学センサ40に接続された第1端と、基板33の一方の面または管状の部材2の開口端2aの内壁に固定された第2端とを有するものを含んでいてもよい。
【0054】
また、本発明の第1の実施形態で既に述べたように、基板33は、運動検出手段16および制御ユニット10を有していてもよい。
【0055】
また、液体噴出システム34は、圧電噴出ヘッドまたはMEMSヘッドで構成されてもよい。
【0056】
以上より、本発明によれば、液体噴出ヘッド5;32を、少なくとも基板7;33と、液体噴出システム9;34と、測定手段13とを有している手持ち式の組立済みユニットとして構成することができ、その組立済みユニットは、液体吐出具1に直接搭載されており、電源線31により電源3に接続されている。
【0057】
液体吐出具が、管状の部材を有するインクジェットペン、またはインクジェットプリンタによって構成されている場合は、制御ユニット10は基板7;33上にあってもなくてもよい。
【0058】
以上より、液体吐出具が例えばインクジェットペンで構成されている場合、組立済みユニットを構成しているインクジェットヘッド5;32によって、媒体8または筆記面に物理的に一切接触する必要なく媒体上に微小なインク滴を吐出させるために、ユーザがペンを適当な距離まで持ち上げることが可能となる。
【0059】
同様に、液体吐出具がインクジェットプリンタで構成されている場合、インクジェットヘッドを構成している組立済みユニット;すなわち、基板と、インクジェットシステムと、測定手段と;によって、インクジェットシステムの範囲内での媒体の存在を検出でき、それによって、媒体以外の物体へのインクの不測の吐出を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態による液体噴出ヘッドを備える液体吐出具の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による液体噴出ヘッドを詳細に示す、図1の液体吐出具の一部の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による液体噴出ヘッドの一方の面を示す斜視図である。
【図4】図3の液体噴出ヘッドの、他方の面を示す分解斜視図である。
【図5】液体噴出ヘッドに一体化することができる種々の構成要素のブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態による液体噴出ヘッドを備える液体吐出具の断面図である。
【図7】液体噴出ヘッドを詳細に示す、図6の液体吐出具の一部の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出具(1)に搭載されるように構成された液体噴出ヘッド(5;32)であって、
前記液体吐出具(1)に搭載するのに適した基板(7;33)と、
前記基板(7;33)上に配置された液体噴出システム(9;34)であって、離れた場所にある媒体(8)上に液体を吐出するのに適しており、前記媒体(8)上に液体を吐出する前記液体噴出システム(9;34)を作動させる働きをする制御ユニット(10)にさらに接続されるように構成された前記液体噴出システム(9;34)と、を有し、
前記液体噴出ヘッド(5;32)は、前記媒体(8)に物理的に接触することなく動作して前記液体噴出ヘッド(5;32)と前記媒体(8)との間の距離を測定する測定手段(13)をさらに有し、該測定手段(13)は前記制御ユニット(10)に接続されるように構成されていることと、
前記測定手段(13)は前記基板(7)上に配置されていることと、
を特徴とする液体噴出ヘッド(5;32)。
【請求項2】
前記制御ユニット(10)も前記基板(7)上に配置されている、請求項1に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項3】
前記測定手段(13)は、前記液体噴出ヘッド(5;32)と前記媒体(8)との間の距離を測定する働きをする光学系(14,15;38,39,40,41)を有する、請求項1または2に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項4】
前記測定手段(13)は、前記液体噴出ヘッド(5;32)と前記媒体(8)との間の距離を測定する働きをする超音波音響プローブを有する、請求項1または2に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項5】
前記基板(7)は、前記液体吐出具(1)に内蔵された液体タンク(4)に接続されるように構成された入口端(73a)と、前記液体噴出システム(9)に接続された出口端(73b)と、の間に延びる供給流路(73)を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項6】
前記基板(7;33)は、ガラス、シリコン、セラミックおよび高分子材料からなる群に含まれる材料で作られている、先行する請求項のいずれか1項に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項7】
前記液体噴出システム(9;34)は、該液体噴出システム(9)中にある液体に蒸気の泡を爆発的に発生させることで少なくとも1つの開口部(12b)から液滴を吐出するのに適した加熱式液体噴出システムを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項8】
前記基板(7)は、前記媒体(8)に対向するように構成された第1の面(71)と、該第1の面(71)の反対側の第2の面(72)と、を有する板によって構成され、
前記加熱式液体噴出システム(9;34)は、
前記基板(7)の第1の面(71)上に固定された少なくとも1つの抵抗発熱素子(91)と、
前記基板(7)の第1の面(71)上に搭載されたブロック(11)とを具備しており、該ブロック(11)は、入口室(12a)と、前記媒体(8)上にインク滴を吐出するために前記少なくとも1つの抵抗発熱素子(91)に対向する出口開口部(12b)と、を有する少なくとも1つの液体流路(12)を有する、請求項7に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項9】
運動検出手段(16)がさらに前記基板(7;33)上に配置され、該運動検出手段(16)は、前記液体噴出ヘッド(5;32)の動きを検出するのに適しており、前記運動検出手段(16)は、前記制御ユニット(10)に接続されるように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の液体噴出ヘッド。
【請求項10】
第1端(2a)と第2端(2b)との間に延びている、ユーザが手で持つように構成されている実質的に管状の部材(2)を有する液体吐出具(1)であって、前記管状の部材(2)は、
液体タンク(4)と、
電源(3)と、
先行する請求項のいずれか1項に記載の液体噴出ヘッド(5;32)と、を有しており、該液体噴出ヘッド(5;32)は、前記管状の部材(2)の第1端(2a)に搭載され、前記電源(3)に接続されている液体吐出具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−516099(P2007−516099A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509583(P2005−509583)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005274
【国際公開番号】WO2005/037562
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501436665)ソシエテ ビック (73)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
【Fターム(参考)】