液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法
【課題】アクチュエータ基板2の引出電極8とフレキシブル基板4の配線電極9との間の電気的接続を容易にする。
【解決手段】液体噴射ヘッド1は、複数の溝5を有するアクチュエータ基板2と、複数の溝5の上部開口を塞いでチャンネルを構成するカバープレート3と、アクチュエータ基板2に駆動信号を供給するフレキシブル基板4とを備えている。アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE近傍に吐出チャンネル11の駆動電極7に接続する共通引出電極8aとダミーチャンネル12の駆動電極7に接続する個別引出電極8bがそれぞれ形成され、フレキシブル基板4の共通配線電極9aと個別配線電極9bにそれぞれ接続する。更に、フレキシブル基板4の共通配線電極9aがアクチュエータ基板2の駆動電極7と交差する共通配線交差領域CRでは、ダミーチャンネルの側面の駆動電極7は、その上端部が基板表面よりも深く形成される。
【解決手段】液体噴射ヘッド1は、複数の溝5を有するアクチュエータ基板2と、複数の溝5の上部開口を塞いでチャンネルを構成するカバープレート3と、アクチュエータ基板2に駆動信号を供給するフレキシブル基板4とを備えている。アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE近傍に吐出チャンネル11の駆動電極7に接続する共通引出電極8aとダミーチャンネル12の駆動電極7に接続する個別引出電極8bがそれぞれ形成され、フレキシブル基板4の共通配線電極9aと個別配線電極9bにそれぞれ接続する。更に、フレキシブル基板4の共通配線電極9aがアクチュエータ基板2の駆動電極7と交差する共通配線交差領域CRでは、ダミーチャンネルの側面の駆動電極7は、その上端部が基板表面よりも深く形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出し、文字、図形を描画する、あるいは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜のパターンを形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、液体噴射ヘッドに形成した微小空間にこのインクを充填し、駆動信号に応じて微小空間の容積を瞬間的に縮小し溝に連通するノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
図12はこの種のインクジェットヘッド51の分解斜視図を表す。インクジェットヘッド51は、表面に多数の溝56が形成された圧電体基板52と、液体供給室62とスリット63が形成されたカバープレート54と、液体を吐出するためのノズル64を備えたノズルプレート55と、駆動回路で生成され駆動信号を圧電体基板52に供給するためのフレキシブル基板53などから構成される。各溝56はカバープレート54により上部開口を塞がれてチャンネルを構成する。各溝56は隔壁57により仕切られ、隔壁57の側面には隔壁57を駆動するための駆動電極59が形成されている。各駆動電極59は圧電体基板52の後方端REの表面に形成した引出電極60に接続されている。圧電体から成る隔壁57は垂直方向に分極されている。隔壁57の両側面に形成した駆動電極59に駆動信号を与えることにより、隔壁57は厚みすべり変形を生じる。予め溝56から成るチャンネルに液体を充填しておき、駆動時に隔壁57を変形させることにより、チャンネルの容積が変化して、圧電体基板52の前方端FEの表面に接合したノズルプレート55のノズル64からインクが吐出される。
【0004】
図13は、圧電体基板52の後方端RE近傍の表面に接着したフレキシブル基板53を圧電体基板52から分離し、下方にずらした状態の圧電体基板52とフレキシブル基板53の上面模式図である。圧電体基板52の表面には溝からなるチャンネルが形成され、各チャンネルはダミーチャンネルD1〜Dn+1と液滴を吐出する吐出チャンネルC1〜Cnが交互に配置されている。各チャンネルを区画する隔壁57の側面には隔壁57を変形駆動するための駆動電極59が形成されている。圧電体基板52の後方端RE近傍の表面には各チャンネルの駆動電極59に電気的に接続する引出電極60が形成されている。例えば、吐出チャンネルC1を構成する両隔壁57の吐出チャンネル側の両側面には駆動電極59c1が形成され、第一引出電極60c1に接続されている。ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d1が形成され、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d2が形成され、いずれも第二引出電極60d1に電気的に接続されている。他の吐出チャンネルC2〜Cnや、ダミーチャンネルD2〜Dn+1や第一及び第二引出電極60c、60dも同様の構成を備えている。
【0005】
フレキシブル基板53の圧電体基板52側の表面には駆動電極59に駆動信号を供給するための配線電極61が形成されている。フレキシブル基板53は矢印で示すように圧電体基板52の後方端RE側の表面に移動させて配線電極61d1が引出電極60d1に、配線電極61c1が引出電極60c1に、配線電極61d2が引出電極60d2にそれぞれ電気的に接続して圧電体基板52の表面に接着されている。その他の配線電極61も同様である。
【0006】
図14は、他のインクジェットヘッドを表す斜視図である(特許文献1の図1)。圧電セラミックス基板71の下面にチャンネルを構成する多数の溝が形成されている。圧電セラミックス基板71の前端部の表面74には図示しないノズルプレートが接合し、ノズルプレートのノズルに溝からなるインク室72が連通する。下面の各インク室72を区画する隔壁には駆動電極が形成され、各駆動電極は引出電極76により表面74を経由して表面75に引き出されている。表面74において電極は絶縁部73により分離され、表面75において引出電極76は絶縁部77により電気的に分離されている。引出電極76は後方端上面の電気接続端78において電気配線79と接続して図示しない駆動回路に接続している。この例においては、インク室72のピッチW1よりも電気接続端78のピッチW2を大きく形成して、外部接続回路との接続を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12及び図13に示す従来例において、フレキシブル基板53に形成した配線電極61の引出電極60との接続点のピッチP1は、圧電体基板52に形成したチャンネルの配列ピッチP2と同程度としなければならない。しかし、近年チャンネル数が増大するとともにその配列ピッチP2が狭くなってきている。そのために、フレキシブル基板53の配線電極61の引出電極60との接続点のピッチP1も狭ピッチ化しなければならず、位置合わせを行って実装する際の位置合わせ精度が厳しく、製造が困難となる、あるいは製造歩留まりが悪化する等の課題があった。
【0009】
また、図14に示すように圧電セラミックス基板71の裏面側に引出電極76を形成するためには、圧電セラミックス基板71の前方端の表面74及び上方の表面75に電極パターンを形成しなければならない。そのため、製造工程が複雑となって量産性が低下する課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡便に構成することができる液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による液体噴射ヘッドは、基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在し、前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有し、前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有し、前記共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されることとした。
【0012】
また、前記共通配線交差領域において、前記基板表面と前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されることとした。
【0013】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端の手前まで延在することとした。
【0014】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端まで延在し、前記個別引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の個別引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の個別引出電極とを含み、前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第一の個別引出電極と電気的に接続し、前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第二の個別引出電極と電気的に接続し、前記共通引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の共通引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の共通引出電極とを含み、前記吐出チャンネルを構成する溝の一方の側の側面に形成された駆動電極は前記第一の共通引出電極に電気的に接続し、前記吐出チャンネルを構成する溝の他方の側の側面に形成された駆動電極は前記第二の共通引出電極に電気的に接続し、前記共通配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の共通引出電極と前記第二の共通引出電極とを電気的に接続することとした。
【0015】
また、前記個別配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の個別引出電極と前記第二の個別引出電極とを電気的に接続することとした。
【0016】
また、前記個別配線電極と前記駆動電極とが交差する個別配線交差領域において、前記吐出チャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されることとした。
【0017】
また、前記個別配線交差領域において、前記基板表面と前記吐出チャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されることとした。
【0018】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0019】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、アクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する溝形成工程と、前記隔壁の側面と前記隔壁の上面に電極材料を堆積する電極堆積工程と、前記隔壁の側面に、上端部の一部が前記上面の高さよりも前記溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成するとともに、前記上面に引出電極を形成する電極形成工程と、配線電極を形成したフレキシブル基板を前記隔壁の上面に接着し、前記引出電極と前記配線電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接着工程と、を備えることとした。
【0020】
また、前記電極形成工程は、前記側面の上端部に堆積した電極の一部を除去して前記駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、前記隔壁の前記上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程とを含むこととした。
【0021】
また、前記駆動電極形成工程は、前記隔壁の前記上面と前記側面との間の角部を面取りする工程からなることとした。
【0022】
また、前記電極形成工程は、前記電極堆積工程の前に前記隔壁の前記上面又は前記上面の近傍にマスクを設置し、前記電極堆積工程の後に前記マスクを除去して前記駆動電極と前記引出電極を形成する工程であることとした。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体噴射ヘッドは、基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備えている。前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在している。前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有している。前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有している。前記フレキシブル基板の共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている。
【0024】
この構成により、アクチュエータ基板上の引出電極数に対し、フレキシブル基板上の配線電極数を概ね1/2に低減できる。加えて、フレキシブル基板上の配線電極と隔壁の側面上に形成した駆動電極とが平面視交差する交差部において両電極間に間隙を設けたので、両電極の絶縁性を向上させることができる。その結果、アクチュエータ基板の引出電極とフレキシブル基板の配線電極の電気的な接続が容易となり、製造歩留まりを向上させ製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドに用いるアクチュエータ基板の説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドのアクチュエータ基板にフレキシブル基板を接着した状態を表す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドに用いるアクチュエータ基板の模式的な部分斜視図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分上面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な縦断面図である。
【図8】本発明の液体噴射ヘッドの基本的な製造方法を表す工程図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図12】従来公知の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【図13】従来公知の圧電体基板とフレキシブル基板の上面模式図である。
【図14】従来公知のインクジェットヘッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<液体噴射ヘッド>
(第一実施形態)
図1〜図3は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図であり、図1は液体噴射ヘッド1の模式的な分解斜視図であり、図2はアクチュエータ基板2の説明図であり、図3はアクチュエータ基板2にフレキシブル基板4を接着した状態を表す図である。
【0027】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1はアクチュエータ基板2とカバープレート3とフレキシブル基板4とノズルプレート16を備えている。アクチュエータ基板2は、基板表面SFの前方端FEから後方端REのy方向に細長く、互いに隔壁6により離隔して上記y方向に交差するx方向に配列する複数の溝5と、隔壁6の側面に形成された駆動電極7と、駆動電極7に電気的に接続し、基板表面SFの後方端RE近傍に形成された引出電極8とを有する。カバープレート3は、基板表面SFに接合し、複数の溝5の上部開口を塞いでチャンネルを構成する。フレキシブル基板4は、基板表面SFの後方端RE近傍に接着され、引出電極8に電気的に接続する配線電極9(図3に示す共通配線電極9a及び個別配線電極9b)を有する。ノズルプレート16は、ノズル17を有し、アクチュエータ基板2及びカバープレート3の前方端FEに接合する。アクチュエータ基板2に形成した溝5は、液体を吐出する吐出チャンネル11を構成する溝5と液体を吐出しないダミーチャンネル12を構成する溝5とが交互に配列している。カバープレート3は液体供給室14を備え、液体供給室14はその底面に形成したスリット15を介して吐出チャンネル11用の溝5に連通している。つまり、液体供給室14に供給された液体は、スリット15を介して吐出チャンネル11に流入し、ノズル17から吐出される。
【0028】
図2(a)は、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の模式的な部分斜視図であり、(b)は、部分AAの縦断面模式図である。ダミーチャンネル12を構成する溝5は、アクチュエータ基板2の後方端REまで延在し、吐出チャンネル11を構成する溝5は、アクチュエータ基板2の後方端REの手前まで延在している。ダミーチャンネル12と吐出チャンネル11とは交互に配列し、各チャンネルを構成する溝5は、隔壁6を介して離隔している。各隔壁6はその側面の両方に駆動電極7を備えている。各駆動電極7は溝5の最も深い深さの略1/2よりも上部に形成されている。個別引出電極8bは、吐出チャンネル11の両側に隣接する2つのダミーチャンネル12の間の基板表面SFの後方端RE近傍に形成されている。個別引出電極8bは、吐出チャンネル11の両側に隣接する2つのダミーチャンネル12の、吐出チャンネル11側の各隔壁6の側面に形成される駆動電極7と電気的に接続している。共通引出電極8aは、個別引出電極8bよりも前方端FE側の基板表面SFに形成されており、吐出チャンネル11を構成する2つの隔壁6に形成した駆動電極7と電気的に接続している。
【0029】
共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4の共通配線電極9aとダミーチャンネル12の駆動電極7とが交差する領域を表し(図3(a)を参照。)、この領域のダミーチャンネル12の側面と基板表面SFとの角部に面取り部10を形成している。この面取り部10において、駆動電極7の上端部は基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に距離g低い。具体的には、溝5を形成し、次に駆動電極7を形成した後に、ダイシングブレードを用いて溝5の側面と上面との間の角部を面取りする。これにより、溝5の側面と基板表面SFとの間の角部が駆動電極7とともに切削されて駆動電極7の上端部は基板表面SFよりも深さ方向に深くなる。
【0030】
図3(a)は、アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端REにフレキシブル基板4を接着した液体噴射ヘッド1の模式的な部分斜視図であり、(b)は、部分BBの縦断面模式図である。フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2側の表面に形成した共通配線電極9aと複数の個別配線電極9bを備えている。共通配線電極9aは、共通配線交差領域CRにおいて各共通引出電極8aに電気的に接続し、各個別配線電極9bは、それぞれ対応する個別引出電極8bに電気的に接続している。つまり、複数の共通引出電極8aが1本の共通配線電極9aに接続するので、フレキシブル基板4上の配線電極数は略1/2に減少する。また、個別引出電極8bはx方向に1個の吐出チャンネル11の幅と2個の隔壁6の厚さの合計の長さを有し、個別引出電極8bに対する個別配線電極9bの位置合わせ精度が大幅に緩和されている。共通配線電極9aと駆動電極7が交差する共通配線交差領域CRに面取り部10を形成したので、共通配線電極9aと駆動電極7とは電気的に分離する。
【0031】
なお、本第一実施形態において、アクチュエータ基板2としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックス基板を使用し、予め基板面に垂直方向に分極処理を施している。アクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまでの距離は略11mmであり、溝5の幅は70μm〜80μmであり、溝5の深さは300μm〜500μmであり、面取り部10の長さは略2.5mmであり、距離gは20μm〜30μmである。
【0032】
この液体噴射ヘッド1は次のように動作する。まず、液体供給室14にインク等の液体を供給し、スリット15を介して吐出チャンネル11に液体を充填する。図示しない駆動回路により駆動信号を生成し、フレキシブル基板4の共通配線電極9aをGNDにして各個別配線電極9bに駆動信号が与えられる。駆動信号は個別引出電極8bからダミーチャンネル12の吐出チャンネル11側の駆動電極7に伝達し、一方、GND電位は共通配線電極9aから共通引出電極8aに伝達し、吐出チャンネル11の2つの側壁の駆動電極7に伝達する。その結果、吐出チャンネル11を構成する2つの隔壁6はその厚さ方向に印加された電界により厚み滑り変形し、吐出チャンネル11内の容積が変化してその内部に充填された液体が図示しないノズルから吐出される。
【0033】
このように、フレキシブル基板4に形成した共通引出電極8aが各吐出チャンネル11に対応する各共通引出電極8aに電気的に共通に接続するので、フレキシブル基板4上の配線電極の数を概ね1/2に減少させて配線電極のピッチが略2倍となる。これに伴い、共通引出電極8aと共通配線電極9aとの間のx方向の位置合わせがほぼ不要となり、個別引出電極8bと個別配線電極9bとの間のx方向の位置合わせ精度は従来法と比較して略1/2に緩和される。更に、共通配線交差領域CRにおいてダミーチャンネル12の側面に形成した駆動電極7の上端部を基板表面SFよりも深さ方向に深く形成したので、共通配線電極9aと駆動電極7との間の絶縁性が向上した。その結果、アクチュエータ基板2の基板表面にフレキシブル基板4を接着することが容易となり、製造歩留まりを向上させ製造コストを低減させることができる。
【0034】
なお、ノズルプレート16をアクチュエータ基板2の前方端FEに接合して−y方向に液滴を吐出する構成を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば吐出チャンネル11を構成する溝5の底面に開口部を形成し、ノズルプレート16をアクチュエータ基板2の裏面側に設置し、ノズルプレート16に形成するノズル17を上記開口部に連通させて、液滴を−z方向に吐出させてもよい。また、面取り部10のX方向の断面形状は円弧形状の他に矩形形状や傾斜形状であっても良い。
【0035】
また、面取り部10を形成して駆動電極7の上端部を基板表面SFの高さよりも低く(溝の深さ方向に深く)形成したが、本発明はこれに限定されない。例えばレーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により、共通配線交差領域CRにおける駆動電極7の上端部のみを除去し、隔壁6の上端角部を残してもよい。また、前述した実施形態では、駆動電極7を形成した後に、ダミーチャネル12の共通配線交差領域CRにて駆動電極7の上端部のみを除去する構成を示したが、この形態に限られるものではない。すなわち、駆動電極7を形成する前に、ダミーチャネル12の共通配線交差領域CRにてダミーチャネル12の側面上端部をマスクすることにより、本実施形態を実現することも可能である。つまり、ダミーチャネル12の側面上端部をマスクした上で電極材料を堆積して駆動電極7を形成し、その後にマスクを除去すれば、共通配線交差領域CRにて共通配線電極9aとダミーチャネル12の駆動電極7が接触することがない。要は、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときに、共通配線電極9aと駆動電極7が電気的に短絡しないように、駆動電極7の上端部を基板表面SFの位置よりも深さ方向に深く形成すればよい。
【0036】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1のアクチュエータ基板2の後方端RE側を表す模式的な部分斜視図である。第一実施形態と異なる部分は、吐出チャンネル11を構成する溝5が後方端REまで延在し、一つの吐出チャンネル11に対応する共通引出電極8aや個別引出電極8bがこの吐出チャンネル11の両側に位置する2つの隔壁6の上面に分割されている点である。
【0037】
液体噴射ヘッド1は、アクチュエータ基板2と、その上に接合した図示しないカバープレートと、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に接着したフレキシブル基板4(図5参照)と、アクチュエータ基板2及びカバープレートの前方端FEに接合した図示しないノズルプレートを備えている。カバープレート及びノズルプレートの構成は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、アクチュエータ基板2は、基板表面SFの前方端FEから後方端REのy方向に細長く、互いに隔壁6により離隔して上記y方向に交差するx方向に配列する複数の溝5を備えている。吐出チャンネル11を構成する溝5は前方端FEから後方端REまで延在し、ダミーチャンネル12を構成する溝5も前方端FEから後方端REまで延在し、互いに交互にx方向に配列している。各隔壁6は、その両側面の隔壁6の高さの略1/2よりも上部に駆動電極7を有しており、駆動電極7はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまで延在する。
【0039】
吐出チャンネル11の一方の側(−x方向)には隔壁6-が、他方の側(+x方向)には隔壁6+が設置され、両方の隔壁6-、6+の側面の上半分には駆動電極7が形成されている。アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE近傍には個別配線交差領域SRが設定され、個別配線交差領域SRよりも前方端FE側の基板表面SFには共通配線交差領域CRが設定されている。個別配線交差領域SRは、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときに吐出チャンネル11の側面に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4に形成した個別配線電極9bとが平面視交差する領域である。共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときにダミーチャンネル12の側面に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4に形成した共通引出電極8aとが平面視交差する領域である。
【0040】
図4に示すように、隔壁6-は、その上面、即ち基板表面SFであり、個別配線交差領域SR内の−x側には個別引出電極8b-を備え、共通配線交差領域CR内であって+x側には共通引出電極8a-を備えている。個別引出電極8b-は隔壁6-のダミーチャンネル12-に形成される駆動電極7に電気的に接続し、共通引出電極8a-は隔壁6-の吐出チャンネル11側の図示しない駆動電極に電気的に接続している。同様に、隔壁6+は、その上面、即ち基板表面SFであり、個別配線交差領域SR内の+x側には個別引出電極8b+を備え、共通配線交差領域CR内であって−x側には共通引出電極8a+を備えている。個別引出電極8b+は隔壁6+のダミーチャンネル12+側に形成される図示しない駆動電極に電気的に接続し、共通引出電極8a+は隔壁6+の吐出チャンネル11側の駆動電極7に電気的に接続している。他の吐出チャンネルやダミーチャンネルも同様の構造を備えている。
【0041】
更に、共通配線交差領域CRにおいて、ダミーチャンネル12-、12+を構成する隔壁6-、6+の側面(即ち溝5の側面)と基板表面SFとの間の角部に面取り部10を設けている。この面取り部10を形成したことにより、側面に形成した駆動電極7は、その上端部が基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に低い。同様に、個別配線交差領域SRにおいて、吐出チャンネル11を構成する溝5の両側面と基板表面SFとの間の角部に面取り部10を設けている。この面取り部10により、側面に形成した駆動電極7は、その上端部が基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に低い。他の吐出チャンネルやダミーチャンネルも同様の構造を備えている。
【0042】
図5は、液体噴射ヘッド1の模式的な部分上面図であり、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の角部を表している。カバープレート3はアクチュエータ基板2の上に接合している。カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13が設置され、吐出チャンネル11を構成する溝5を封止して、吐出チャンネル11に充填された液体が後方端RE側に漏えいすることを防止している。フレキシブル基板4はアクチュエータ基板2の後方端REから封止材13の手前までの基板表面SFに接着されている。また、封止材13について図5では、−x方向から+x方向にわたって封止材13を形成しているが、インクが充填される吐出チャンネル11のみに封止材13を形成し、吐出チャンネル11の後方端RE側を封止する構成でもかまわない。
【0043】
アクチュエータ基板2は、その基板表面に吐出チャンネル11、ダミーチャンネル12-、12+、隔壁6-、6+を備え、隔壁6-、6+の上面(即ちアクチュエータ基板2の基板表面SF)に共通引出電極8a-、8a+、個別引出電極8b-、8b+を備え、その配置は図4と同様である。フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2側の表面の外周に沿って共通配線電極9aを備え、共通配線電極9aよりも内側に複数の個別配線電極9bを備えている。共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4の共通配線電極9aとダミーチャンネル12-、12+等の両側面に形成した駆動電極7とが交差する領域である。個別配線交差領域SRは、フレキシブル基板4の個別配線電極9bと吐出チャンネル11の両側面に形成した駆動電極7とが交差する領域である。共通配線交差領域CRと個別配線交差領域SRに形成した面取り部10は図4において説明したと同様である。
【0044】
フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE領域に図示しない異方性導電膜を介して接着されている。これにより、共通配線電極9aは隔壁6-に設置される共通引出電極8a-、隔壁6+に設置される共通引出電極8a+、その他の隔壁6に設置される他の共通引出電極8aと電気的に接続する。また、個別配線電極9bは吐出チャンネル11を跨いでその両側の隔壁6-に設置される個別引出電極8b-と隔壁6+に設置される個別引出電極8b+とを電気的に接続する。その他の吐出チャンネル11も同様である。
【0045】
図6(a)は、図5に示す部分CCの縦断面の一部を表し、図6(b)は、図5に示す部分DDの縦断面の一部を表す。図6(a)を用いて説明する。吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-の上面に形成した第一の共通引出電極8a-と他方の側の隔壁6+の上面に形成した第二の共通引出電極8a+がフレキシブル基板4の共通配線電極9aに電気的に接続する。他の吐出チャンネル11の第一及び第二の両共通引出電極8a-、8a+も同じ共通配線電極9aに電気的に接続する。また、共通配線交差領域CRにおいて、吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-のダミーチャンネル12-の側面と上面の角部に面取り部10を形成し、駆動電極7の上端部と基板表面SFの位置との間に距離gを設けた。これにより、駆動電極7と共通配線電極9aとは電気的に分離する。他のダミーチャンネル12も同様の構造を有している。
【0046】
図6(b)を用いて説明する。吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-の上面に形成した第一の個別引出電極8b-と、吐出チャンネル11の他方の側の隔壁6+の上面に形成した第二の個別引出電極8b+はいずれもフレキシブル基板4の個別配線電極9bに電気的に接続する。他の吐出チャンネルの第一及び第二の個別引出電極8b-、8b+も同じ構造を有している。また、個別配線交差領域SRにおいて、吐出チャンネル11を構成する両隔壁6-、6+の側面と上面の角部に面取り部10を形成し、駆動電極7の上端部と基板表面SFの位置との間に距離gを設けて、駆動電極7と個別配線電極9bを電気的に分離させた。
【0047】
図7は、図5に示す部分EEの模式的な縦断面図である。アクチュエータ基板2の上にカバープレート3を接合し、アクチュエータ基板2に形成した溝5とカバープレート3により吐出チャンネル11を構成している。カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13をモールドし、吐出チャンネル11に充填した液体が後方側に漏洩しないようにしている。アクチュエータ基板2の基板表面の後方端RE近傍にフレキシブル基板4を接着している。フレキシブル基板4の表面には共通配線電極9aと複数の個別配線電極9bが設置され、アクチュエータ基板2の基板表面の後方端RE近傍に形成した図示しない共通引出電極と個別引出電極に図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。
【0048】
液体供給室14に供給されたインク等の液体はスリット15を介して吐出チャンネル11に充填される。図示しない駆動回路から各個別配線電極9bに駆動信号が供給されると、個別引出電極8bを介してダミーチャンネル12の吐出チャンネル11側の側面に形成された駆動電極7にその駆動信号が与えられる。一方、共通配線電極9aはGNDに接続され、共通配線電極9aに接続する共通引出電極もGNDに接続される。従って吐出チャンネル11の両側面に形成された駆動電極もGNDに接続される。吐出チャンネル11の両隔壁に駆動信号が与えられると、垂直方向に分極された隔壁は厚み滑り変形して吐出チャンネル11内の容積が変化する。これにより、吐出チャンネル11に連通する図示しないノズルから液体が吐出される。なお、本発明の液体噴射ヘッド1は駆動電極7が液体に接触する構造を有しているが、吐出チャンネル11の側面に形成した駆動電極7は全てGNDに接続される。従って、液体が導電性である場合でも、液体を介して駆動信号が漏れ出すことが無い。また配線電極9の表面には保護部材18を設置して配線電極9の劣化を防止している。
【0049】
本実施形態においては、吐出チャンネル11及びダミーチャンネル12を構成する溝5を前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成するので、アクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまでの長さを縮小させることができる。つまり、溝は円盤状のダイシングブレードを用いて形成するので、第一実施形態のようにアクチュエータ基板2の基板表面の途中まで溝を形成する場合はダイシングブレードの円弧形状が転写される。そのため、基板表面において溝の端部から溝が所定の深さとなるまでの距離が必要となったが、本実施形態の場合はこの距離を必要としないので、その分、小型化することができる。
【0050】
また、従来例と比較してフレキシブル基板4上の配線電極数が概ね1/2と減少し、配線ピッチが略2倍となる。そのため、アクチュエータ基板2上の引出電極とフレキシブル基板4上の配線電極の位置合わせ精度が緩和されて接続が容易となる。また、配線ピッチを縮小できるのでチャンネル配列の高密度化にも適する。また、共通配線交差領域CRや個別配線交差領域SRにおいて、駆動電極7の上端部を基板表面SFの高さよりも溝の深さ方向に深く形成したので、駆動電極7と共通配線電極9aや個別配線電極9bとの絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済むので、アクチュエータ基板2に対するフレキシブル基板4の接着が極めて容易になる。
【0051】
なお、上記第一及び第二実施形態において、面取り部10を形成して駆動電極7の上端部を基板表面SFの位置よりも溝の深さ方向に深く形成したが、本発明はこの構成に限定されない。例えばレーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により、共通配線交差領域CRや個別配線交差領域SRにおける駆動電極7の上端部のみを除去し、隔壁6の上端角部を残してもよい。また、駆動電極7の上端部を除去する除去工程を用いないで、隔壁6の側面の上端部にマスクを設置し、その上から電極材料を堆積し、その後マスクを除去して、基板表面SFの位置よりも溝の底面側に低い(深さ方向に深い)上端部を有する駆動電極7を形成することも可能である。この場合も隔壁6の上端角部は残る。
【0052】
<液体噴射ヘッドの製造方法>
図8は、本発明に係る液体噴射ヘッド1の基本的な製造方法を表す工程図である。
まず、溝形成工程S1において、圧電体基板又は絶縁体基板の上に圧電体を張り合わせたアクチュエータ基板を準備し、このアクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する。複数の溝は、フォトリソグラフィ及びエッチング法やサンドブラスト法により、或いはダイシングブレードを用いた切削法により形成することができる。次に、電極堆積工程S2において、隔壁の側面と隔壁の上面に電極材料を堆積する。金属等の導体をスパッタリング法や真空蒸着法、或いはめっき法により堆積することができる。次に、電極形成工程S3において、隔壁の側面に、上端部の一部が上面の高さよりも溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成し、更に、隔壁の上面に引出電極を形成する。引出電極は、隔壁の側面に形成した駆動電極と電気的に接続し、フレキシブル基板等に形成した配線電極と電気的に接続するための端子電極として機能する。次に、フレキシブル基板接着工程S4において、配線電極を形成したフレキシブル基板をアクチュエータ基板の隔壁の上面に接着し、配線電極と引出電極とを電気的に接続する。駆動電極の上端部の一部を隔壁の上面の高さよりも溝の深さ方向に低く形成する領域は、後にフレキシブル基板をアクチュエータ基板の後端部近傍の隔壁の上面に接着する際に、フレキシブル基板に形成した配線電極と隔壁の側面に形成した駆動電極が平面視交差する領域である。
【0053】
電極形成工程S3は、隔壁の側面に堆積した電極の一部を除去して駆動電極を形成する駆動電極形成工程S5と、隔壁の上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程S6とを含めることができる。この場合に、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6とを個別に実施することができる。駆動電極形成工程S5として、例えば、電極堆積工程S2の後にダイシングブレードを用いて隔壁の側面と上面の角部を面取りして隔壁の側面に堆積した電極の上端部を溝の深さ方向に除去する。また、レーザ光を照射して側面上端部の電極を蒸発させて除去する。また、フォトリソグラフィ及びエッチング法により隔壁の側面上端部の電極を除去する。また、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6とを同時に実施することができる。例えば、電極堆積工程S2の前に隔壁の側面上端部や隔壁の上面にマスクを設置し、その後電極堆積工程S2において電極材料を堆積する。次に電極形成工程S3においてマスクを除去し、上端部の一部が隔壁の上面の高さよりも溝の深さ方向に低い駆動電極を隔壁の側面に、引出電極を隔壁の上面に同時に形成することができる。
【0054】
本発明の製造方法によれば、アクチュエータ基板の隔壁に形成した駆動電極とフレキシブル基板の配線電極とが交差する交差領域では、駆動電極の上端部が隔壁の上面の高さよりも低くなり、電気的に分離されるので絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済む。以下、液体噴射ヘッドの製造方法について、具体的に説明する。
【0055】
(第三実施形態)
図9及び図10は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を説明するための液体噴射ヘッド1の断面模式図である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0056】
図9(a)及び(b)は基板準備工程を表している。圧電体基板からなるアクチュエータ基板2を準備する。圧電体基板として基板面の垂直方向に分極処理が施されたPZTセラミックス材料を使用している。図9(b)は、アクチュエータ基板2の基板表面に感光性樹脂21を塗布し、パターニングした状態を表す。感光性樹脂21のパターンは、例えば引出電極を形成する領域は感光性樹脂21を除去し、最終的に電極を形成しない領域は感光性樹脂21を残すようにパターニングする。
【0057】
図9(c)及び(d)は溝形成工程S1を表している。ダイシングブレード22を用いてアクチュエータ基板2の基板表面を切削して溝5を並列に形成する。隣接する溝5は隔壁6により離隔される。第一実施形態の液体噴射ヘッド1の場合は、ダミーチャンネル12用の溝5はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成し、吐出チャンネル11用の溝5はアクチュエータ基板2の前方端から後方端REの手前まで形成する。第二実施形態の液体噴射ヘッド1の場合は、ダミーチャンネル12用と吐出チャンネル11用のいずれの溝5も前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成する。この場合はダイシングブレード22の外形形状が転写されないのでアクチュエータ基板2の幅を狭く形成することができる。
【0058】
図9(e)及び(f)は電極堆積工程S2を表している。複数の溝5が形成された基板表面に斜め蒸着法により垂直方向nに対して角度θ傾斜する方向から導電材料を蒸着する。これにより、溝5を構成する隔壁6の側面に溝5の深さの略1/2から隔壁6の上面にかけて導体膜23を形成することができる。導電材料として、アルミニウム、金、クロム、チタン等の金属材料を使用することができる。なお、本実施形態においてはアクチュエータ基板2の基板表面の一部が隔壁6の上面を構成している。
【0059】
図10(g)は引出電極形成工程S6を表す。溝形成工程の前に形成した感光性樹脂21を除去する。これにより感光性樹脂21が形成されている領域の導体膜23が除去され、感光性樹脂21が除去された領域の導体膜23が残る。これによりアクチュエータ基板2の基板表面に引出電極を形成することができる。
【0060】
図10(h)は駆動電極形成工程S5を表している。駆動電極7とフレキシブル基板に形成した共通配線電極が交差する共通配線交差領域において、ダミーチャンネル12を構成する2つの隔壁6の側面と上面との間の角部を切削し、面取り部10を形成する。角部の面取りは溝5の幅よりもわずかに厚いダイシングブレード22’を用いた。これにより、駆動電極7の上端部を隔壁6の上面の高さよりも深さ方向に低く形成することができる。駆動電極7の上端部を隔壁6の上面の位置から溝5の底面方向に20μm〜30μm切削すれば、隔壁6の上面にフレキシブル基板の共通配線電極を接着しても、駆動電極7と共通配線電極とは電気的に短絡しない。
【0061】
なお、隔壁6の上面からの切削量が大きくなると面取り部10の長さが長くなり、個別引出電極8bの形成領域まで面取されて個別引出電極8bと駆動電極7が電気的に切断される。例えば、直径2インチ(50.8mmφ)のダイシングブレード22’を用いて深さ30μmの面取り部10を形成する場合、ダイシングブレード22’の外周の円弧分で片側1.23mm、全体で2.46mmの長さに亘って面取りされる。仮に深さ100μmの面取り部10を形成する場合はダイシングブレード22’の外周の円弧分で片側2.25mm、全体で4.5mmの長さに亘って面取りされる。つまり、個別引出電極8bと駆動電極7が電気的に切断されないようにするためには溝5の長さを長くしなければならず、従って液体噴射ヘッド1が大きくなる。そこで、液体噴射ヘッド1をコンパクトに構成でき、しかもフレキシブル基板4の共通配線電極9aと駆動電極7が短絡しない切削量(共通配線交差領域CRにおける隔壁6の上面の位置から底面方向への深さ)は15μm〜50μm、好ましくは20μm〜40μm、より好ましくは30μm程度とするのがよい。なお、面取り部10を形成する際に、溝5の幅より厚さの厚いダイシングブレードを用いたが、例えば溝5を形成したダイシングブレードを用いて溝5の一方の側面と他方の側面を順次面取りしてもよい。
【0062】
図10(i)はカバープレート3をアクチュエータ基板2の基板表面に接合するカバープレート接合工程を表す。カバープレート3はアクチュエータ基板2の吐出チャンネル11を構成する溝5を閉塞し、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に形成した共通引出電極及び個別引出電極を露出させて接着剤により接合する。カバープレート3の液体供給室14の下部に形成した各スリット15は、吐出チャンネル11に連通させて液体供給室14から液体を充填可能とし、ダミーチャンネル12はカバープレート3の底面により閉塞して液体供給室14から液体が供給されない。
【0063】
図10(j)はフレキシブル基板接着工程S4を表す。共通配線電極9a及び個別配線電極9bを形成したフレキシブル基板4をアクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に異方性導電膜24を介して接着する。これにより、アクチュエータ基板2上の共通引出電極8a及び個別引出電極8bはフレキシブル基板4上の共通配線電極9a及び個別配線電極9bに異方性導電膜24を介してそれぞれ電気的に接続する。共通引出電極8aは吐出チャンネル11の両側面に形成した駆動電極7に電気的に接続し、個別引出電極8bは吐出チャンネル11に隣接する図示しない両ダミーチャンネルの吐出チャンネル11側の側面に形成した駆動電極に電気的に接続している。アクチュエータ基板2の上にはカバープレート3が接合し、液体供給室14はスリット15を介して吐出チャンネル11に連通している。フレキシブル基板4に形成した配線電極9a、9bは保護部材18により表面が保護されている。
【0064】
このように、各吐出チャンネル11に対応する共通引出電極8aを共通配線電極9aにより接続したのでフレキシブル基板4上の配線電極を従来例と比較して略1/2に減少させることができる。更に、共通配線交差領域CRにおいて、溝5の側面に形成した駆動電極7の上端部を切削したので、駆動電極7と共通配線電極9aの絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済むので、アクチュエータ基板2に対するフレキシブル基板4の接着が極めて容易となり、製造コストを削減できる。
【0065】
なお、本実施形態では第一実施形態で説明した液体噴射ヘッド1の製造方法を説明したが、第二実施形態で説明した液体噴射ヘッド1も同様に製造することができる。この場合は、溝形成工程S1において、ダミーチャンネル12用の溝5と同様に吐出チャンネル11用の溝5をアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘って形成する。また、駆動電極形成工程S5においては、共通配線交差領域CRのダミーチャンネル12に面取り部10を形成することに加えて、個別配線交差領域SRの吐出チャンネル11にも面取り部10を形成する。また、カバープレート接合工程においては、カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13を設置して吐出チャンネル11から液体が漏洩することを防止する。
【0066】
また、本実施形態では電極のパターニングをリフトオフ法により行ったが、本発明はこれに限定されず、斜め蒸着法により電極を形成した後にフォトリソグラフィ及びエッチング工程を通して電極をパターニングしてもよい。また、駆動電極形成工程S5において、隔壁6の側面と上面の角部を切削により面取りすることに代えて、レーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により駆動電極7の上端部のみを除去しても良い。また、本実施形態では駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を個別に実施したが本発明はこれに限定されず、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を同時に実施することができる。例えば、基板準備工程において感光性樹脂21を塗布せず、電極堆積工程S2の前に隔壁6の側面上端部や隔壁の上面にマスクを設置し、その後電極堆積工程S2において電極材料を堆積する。次に電極形成工程S3においてマスクを除去し、上端部の一部が隔壁6の上面の高さよりも溝5の深さ方向に低い駆動電極7を隔壁6の側面に、引出電極を隔壁6の上面に同時に形成することができる。従って、隔壁6の側面と上面の角部を面取りする工程や側面の上端部電極を追加的に除去する工程を必要としない。
【0067】
また、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を同時に実施する他の方法として、例えば、溝形成工程S1により溝5を形成した後に感光性樹脂21を軟化させて隔壁6の側面上端部まで流動させる。次に電極堆積工程S2において電極材料を堆積し、次に電極形成工程S3において感光性樹脂21を除去する。つまり、隔壁6の上面の感光性樹脂21が流動して隔壁6の上端部を覆うので、感光性樹脂21を除去すれば上端部の一部が隔壁6の上面の高さよりも溝5の深さ方向に低い駆動電極7が形成される。従って、隔壁6の側面の駆動電極7と隔壁6の上面の引出電極とを同時に形成することができ、隔壁6の側面と上面の角部を面取りする工程や側面の上端部電極を追加的に除去する工程を必要としない。なお、上記のように感光性樹脂21のパターニング後に電極材料を堆積し、次に感光性樹脂21を除去して電極パターンを形成するリフトオフ法では感光性樹脂21はマスクとして機能している。
【0068】
<液体噴射装置>
(第四実施形態)
図11は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。
液体噴射装置30は、上記本発明に係る液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構43と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する液体供給管33、33’と、液体供給管33、33’に液体を供給する液体タンク31、31’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は本発明に係る液体噴射ヘッド1から構成される。即ち、基板表面に並列する複数の溝と、隣接する溝を離隔する隔壁を有するアクチュエータ基板と、溝を覆い、アクチュエータ基板の基板表面に接合するカバープレートと、溝に連通するノズルを有し、アクチュエータ基板の端面に接合するノズルプレートと、を備えている。このアクチュエータ基板は、液滴吐出用の吐出チャンネルと液滴を吐出しないダミーチャンネルが交互に配列している。そして、アクチュエータ基板の基板表面の後方端近傍には、吐出チャンネルの側面に形成した駆動電極に接続する共通引出電極とダミーチャンネルの当該吐出チャンネル側の側面に形成した駆動電極に接続する個別引出電極が設置されている。共通引出電極は個別引出電極よりも前方端側に位置している。フレキシブル基板には、共通引出電極に電気的に接続する共通配線電極と、個別引出電極に電気的に接続する個別配線電極が設置されている。
【0069】
具体的に説明する。液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体34を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体34に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体タンク31、31’に貯留した液体を液体供給管33、33’に押圧して供給するポンプ32、32’と、液体噴射ヘッド1を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構43等を備えている。
【0070】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体34を主走査方向に搬送する。移動機構43は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット38と、キャリッジユニット38を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト39と、この無端ベルト39を図示しないプーリを介して周回させるモータ40を備えている。
【0071】
キャリッジユニット38は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク31、31’は対応する色の液体を貯留し、ポンプ32、32’、液体供給管33、33’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット38を駆動するモータ40の回転及び被記録媒体34の搬送速度を制御することにより、被記録媒体34上に任意のパターンを記録することできる。
【0072】
この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対しフレキシブル基板上の配線電極数が低減し、配線密度が概ね1/2となる。更に、溝5に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4の配線電極とが交差する領域において駆動電極7の上端部を隔壁6の上面より深く形成したのでフレキシブル基板4の配線電極と溝5に形成した駆動電極7とが電気的に接触することがない。その結果、フレキシブル基板4のアクチュエータ基板2に対する接着が容易となり、製造歩留まり向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 液体噴射ヘッド
2 アクチュエータ基板
3 カバープレート
4 フレキシブル基板
5 溝
6 隔壁
7 駆動電極
8 引出電極
9 配線電極
10 面取り部
11 吐出チャンネル
12 ダミーチャンネル
13 封止材
14 液体供給室
15 スリット
16 ノズルプレート
17 ノズル
18 保護部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出し、文字、図形を描画する、あるいは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜のパターンを形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、液体噴射ヘッドに形成した微小空間にこのインクを充填し、駆動信号に応じて微小空間の容積を瞬間的に縮小し溝に連通するノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
図12はこの種のインクジェットヘッド51の分解斜視図を表す。インクジェットヘッド51は、表面に多数の溝56が形成された圧電体基板52と、液体供給室62とスリット63が形成されたカバープレート54と、液体を吐出するためのノズル64を備えたノズルプレート55と、駆動回路で生成され駆動信号を圧電体基板52に供給するためのフレキシブル基板53などから構成される。各溝56はカバープレート54により上部開口を塞がれてチャンネルを構成する。各溝56は隔壁57により仕切られ、隔壁57の側面には隔壁57を駆動するための駆動電極59が形成されている。各駆動電極59は圧電体基板52の後方端REの表面に形成した引出電極60に接続されている。圧電体から成る隔壁57は垂直方向に分極されている。隔壁57の両側面に形成した駆動電極59に駆動信号を与えることにより、隔壁57は厚みすべり変形を生じる。予め溝56から成るチャンネルに液体を充填しておき、駆動時に隔壁57を変形させることにより、チャンネルの容積が変化して、圧電体基板52の前方端FEの表面に接合したノズルプレート55のノズル64からインクが吐出される。
【0004】
図13は、圧電体基板52の後方端RE近傍の表面に接着したフレキシブル基板53を圧電体基板52から分離し、下方にずらした状態の圧電体基板52とフレキシブル基板53の上面模式図である。圧電体基板52の表面には溝からなるチャンネルが形成され、各チャンネルはダミーチャンネルD1〜Dn+1と液滴を吐出する吐出チャンネルC1〜Cnが交互に配置されている。各チャンネルを区画する隔壁57の側面には隔壁57を変形駆動するための駆動電極59が形成されている。圧電体基板52の後方端RE近傍の表面には各チャンネルの駆動電極59に電気的に接続する引出電極60が形成されている。例えば、吐出チャンネルC1を構成する両隔壁57の吐出チャンネル側の両側面には駆動電極59c1が形成され、第一引出電極60c1に接続されている。ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d1が形成され、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d2が形成され、いずれも第二引出電極60d1に電気的に接続されている。他の吐出チャンネルC2〜Cnや、ダミーチャンネルD2〜Dn+1や第一及び第二引出電極60c、60dも同様の構成を備えている。
【0005】
フレキシブル基板53の圧電体基板52側の表面には駆動電極59に駆動信号を供給するための配線電極61が形成されている。フレキシブル基板53は矢印で示すように圧電体基板52の後方端RE側の表面に移動させて配線電極61d1が引出電極60d1に、配線電極61c1が引出電極60c1に、配線電極61d2が引出電極60d2にそれぞれ電気的に接続して圧電体基板52の表面に接着されている。その他の配線電極61も同様である。
【0006】
図14は、他のインクジェットヘッドを表す斜視図である(特許文献1の図1)。圧電セラミックス基板71の下面にチャンネルを構成する多数の溝が形成されている。圧電セラミックス基板71の前端部の表面74には図示しないノズルプレートが接合し、ノズルプレートのノズルに溝からなるインク室72が連通する。下面の各インク室72を区画する隔壁には駆動電極が形成され、各駆動電極は引出電極76により表面74を経由して表面75に引き出されている。表面74において電極は絶縁部73により分離され、表面75において引出電極76は絶縁部77により電気的に分離されている。引出電極76は後方端上面の電気接続端78において電気配線79と接続して図示しない駆動回路に接続している。この例においては、インク室72のピッチW1よりも電気接続端78のピッチW2を大きく形成して、外部接続回路との接続を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12及び図13に示す従来例において、フレキシブル基板53に形成した配線電極61の引出電極60との接続点のピッチP1は、圧電体基板52に形成したチャンネルの配列ピッチP2と同程度としなければならない。しかし、近年チャンネル数が増大するとともにその配列ピッチP2が狭くなってきている。そのために、フレキシブル基板53の配線電極61の引出電極60との接続点のピッチP1も狭ピッチ化しなければならず、位置合わせを行って実装する際の位置合わせ精度が厳しく、製造が困難となる、あるいは製造歩留まりが悪化する等の課題があった。
【0009】
また、図14に示すように圧電セラミックス基板71の裏面側に引出電極76を形成するためには、圧電セラミックス基板71の前方端の表面74及び上方の表面75に電極パターンを形成しなければならない。そのため、製造工程が複雑となって量産性が低下する課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡便に構成することができる液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による液体噴射ヘッドは、基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在し、前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有し、前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有し、前記共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されることとした。
【0012】
また、前記共通配線交差領域において、前記基板表面と前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されることとした。
【0013】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端の手前まで延在することとした。
【0014】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端まで延在し、前記個別引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の個別引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の個別引出電極とを含み、前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第一の個別引出電極と電気的に接続し、前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第二の個別引出電極と電気的に接続し、前記共通引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の共通引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の共通引出電極とを含み、前記吐出チャンネルを構成する溝の一方の側の側面に形成された駆動電極は前記第一の共通引出電極に電気的に接続し、前記吐出チャンネルを構成する溝の他方の側の側面に形成された駆動電極は前記第二の共通引出電極に電気的に接続し、前記共通配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の共通引出電極と前記第二の共通引出電極とを電気的に接続することとした。
【0015】
また、前記個別配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の個別引出電極と前記第二の個別引出電極とを電気的に接続することとした。
【0016】
また、前記個別配線電極と前記駆動電極とが交差する個別配線交差領域において、前記吐出チャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されることとした。
【0017】
また、前記個別配線交差領域において、前記基板表面と前記吐出チャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されることとした。
【0018】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0019】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、アクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する溝形成工程と、前記隔壁の側面と前記隔壁の上面に電極材料を堆積する電極堆積工程と、前記隔壁の側面に、上端部の一部が前記上面の高さよりも前記溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成するとともに、前記上面に引出電極を形成する電極形成工程と、配線電極を形成したフレキシブル基板を前記隔壁の上面に接着し、前記引出電極と前記配線電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接着工程と、を備えることとした。
【0020】
また、前記電極形成工程は、前記側面の上端部に堆積した電極の一部を除去して前記駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、前記隔壁の前記上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程とを含むこととした。
【0021】
また、前記駆動電極形成工程は、前記隔壁の前記上面と前記側面との間の角部を面取りする工程からなることとした。
【0022】
また、前記電極形成工程は、前記電極堆積工程の前に前記隔壁の前記上面又は前記上面の近傍にマスクを設置し、前記電極堆積工程の後に前記マスクを除去して前記駆動電極と前記引出電極を形成する工程であることとした。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体噴射ヘッドは、基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備えている。前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在している。前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有している。前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有している。前記フレキシブル基板の共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている。
【0024】
この構成により、アクチュエータ基板上の引出電極数に対し、フレキシブル基板上の配線電極数を概ね1/2に低減できる。加えて、フレキシブル基板上の配線電極と隔壁の側面上に形成した駆動電極とが平面視交差する交差部において両電極間に間隙を設けたので、両電極の絶縁性を向上させることができる。その結果、アクチュエータ基板の引出電極とフレキシブル基板の配線電極の電気的な接続が容易となり、製造歩留まりを向上させ製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドに用いるアクチュエータ基板の説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドのアクチュエータ基板にフレキシブル基板を接着した状態を表す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドに用いるアクチュエータ基板の模式的な部分斜視図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分上面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な縦断面図である。
【図8】本発明の液体噴射ヘッドの基本的な製造方法を表す工程図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図12】従来公知の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【図13】従来公知の圧電体基板とフレキシブル基板の上面模式図である。
【図14】従来公知のインクジェットヘッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<液体噴射ヘッド>
(第一実施形態)
図1〜図3は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図であり、図1は液体噴射ヘッド1の模式的な分解斜視図であり、図2はアクチュエータ基板2の説明図であり、図3はアクチュエータ基板2にフレキシブル基板4を接着した状態を表す図である。
【0027】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1はアクチュエータ基板2とカバープレート3とフレキシブル基板4とノズルプレート16を備えている。アクチュエータ基板2は、基板表面SFの前方端FEから後方端REのy方向に細長く、互いに隔壁6により離隔して上記y方向に交差するx方向に配列する複数の溝5と、隔壁6の側面に形成された駆動電極7と、駆動電極7に電気的に接続し、基板表面SFの後方端RE近傍に形成された引出電極8とを有する。カバープレート3は、基板表面SFに接合し、複数の溝5の上部開口を塞いでチャンネルを構成する。フレキシブル基板4は、基板表面SFの後方端RE近傍に接着され、引出電極8に電気的に接続する配線電極9(図3に示す共通配線電極9a及び個別配線電極9b)を有する。ノズルプレート16は、ノズル17を有し、アクチュエータ基板2及びカバープレート3の前方端FEに接合する。アクチュエータ基板2に形成した溝5は、液体を吐出する吐出チャンネル11を構成する溝5と液体を吐出しないダミーチャンネル12を構成する溝5とが交互に配列している。カバープレート3は液体供給室14を備え、液体供給室14はその底面に形成したスリット15を介して吐出チャンネル11用の溝5に連通している。つまり、液体供給室14に供給された液体は、スリット15を介して吐出チャンネル11に流入し、ノズル17から吐出される。
【0028】
図2(a)は、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の模式的な部分斜視図であり、(b)は、部分AAの縦断面模式図である。ダミーチャンネル12を構成する溝5は、アクチュエータ基板2の後方端REまで延在し、吐出チャンネル11を構成する溝5は、アクチュエータ基板2の後方端REの手前まで延在している。ダミーチャンネル12と吐出チャンネル11とは交互に配列し、各チャンネルを構成する溝5は、隔壁6を介して離隔している。各隔壁6はその側面の両方に駆動電極7を備えている。各駆動電極7は溝5の最も深い深さの略1/2よりも上部に形成されている。個別引出電極8bは、吐出チャンネル11の両側に隣接する2つのダミーチャンネル12の間の基板表面SFの後方端RE近傍に形成されている。個別引出電極8bは、吐出チャンネル11の両側に隣接する2つのダミーチャンネル12の、吐出チャンネル11側の各隔壁6の側面に形成される駆動電極7と電気的に接続している。共通引出電極8aは、個別引出電極8bよりも前方端FE側の基板表面SFに形成されており、吐出チャンネル11を構成する2つの隔壁6に形成した駆動電極7と電気的に接続している。
【0029】
共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4の共通配線電極9aとダミーチャンネル12の駆動電極7とが交差する領域を表し(図3(a)を参照。)、この領域のダミーチャンネル12の側面と基板表面SFとの角部に面取り部10を形成している。この面取り部10において、駆動電極7の上端部は基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に距離g低い。具体的には、溝5を形成し、次に駆動電極7を形成した後に、ダイシングブレードを用いて溝5の側面と上面との間の角部を面取りする。これにより、溝5の側面と基板表面SFとの間の角部が駆動電極7とともに切削されて駆動電極7の上端部は基板表面SFよりも深さ方向に深くなる。
【0030】
図3(a)は、アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端REにフレキシブル基板4を接着した液体噴射ヘッド1の模式的な部分斜視図であり、(b)は、部分BBの縦断面模式図である。フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2側の表面に形成した共通配線電極9aと複数の個別配線電極9bを備えている。共通配線電極9aは、共通配線交差領域CRにおいて各共通引出電極8aに電気的に接続し、各個別配線電極9bは、それぞれ対応する個別引出電極8bに電気的に接続している。つまり、複数の共通引出電極8aが1本の共通配線電極9aに接続するので、フレキシブル基板4上の配線電極数は略1/2に減少する。また、個別引出電極8bはx方向に1個の吐出チャンネル11の幅と2個の隔壁6の厚さの合計の長さを有し、個別引出電極8bに対する個別配線電極9bの位置合わせ精度が大幅に緩和されている。共通配線電極9aと駆動電極7が交差する共通配線交差領域CRに面取り部10を形成したので、共通配線電極9aと駆動電極7とは電気的に分離する。
【0031】
なお、本第一実施形態において、アクチュエータ基板2としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックス基板を使用し、予め基板面に垂直方向に分極処理を施している。アクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまでの距離は略11mmであり、溝5の幅は70μm〜80μmであり、溝5の深さは300μm〜500μmであり、面取り部10の長さは略2.5mmであり、距離gは20μm〜30μmである。
【0032】
この液体噴射ヘッド1は次のように動作する。まず、液体供給室14にインク等の液体を供給し、スリット15を介して吐出チャンネル11に液体を充填する。図示しない駆動回路により駆動信号を生成し、フレキシブル基板4の共通配線電極9aをGNDにして各個別配線電極9bに駆動信号が与えられる。駆動信号は個別引出電極8bからダミーチャンネル12の吐出チャンネル11側の駆動電極7に伝達し、一方、GND電位は共通配線電極9aから共通引出電極8aに伝達し、吐出チャンネル11の2つの側壁の駆動電極7に伝達する。その結果、吐出チャンネル11を構成する2つの隔壁6はその厚さ方向に印加された電界により厚み滑り変形し、吐出チャンネル11内の容積が変化してその内部に充填された液体が図示しないノズルから吐出される。
【0033】
このように、フレキシブル基板4に形成した共通引出電極8aが各吐出チャンネル11に対応する各共通引出電極8aに電気的に共通に接続するので、フレキシブル基板4上の配線電極の数を概ね1/2に減少させて配線電極のピッチが略2倍となる。これに伴い、共通引出電極8aと共通配線電極9aとの間のx方向の位置合わせがほぼ不要となり、個別引出電極8bと個別配線電極9bとの間のx方向の位置合わせ精度は従来法と比較して略1/2に緩和される。更に、共通配線交差領域CRにおいてダミーチャンネル12の側面に形成した駆動電極7の上端部を基板表面SFよりも深さ方向に深く形成したので、共通配線電極9aと駆動電極7との間の絶縁性が向上した。その結果、アクチュエータ基板2の基板表面にフレキシブル基板4を接着することが容易となり、製造歩留まりを向上させ製造コストを低減させることができる。
【0034】
なお、ノズルプレート16をアクチュエータ基板2の前方端FEに接合して−y方向に液滴を吐出する構成を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば吐出チャンネル11を構成する溝5の底面に開口部を形成し、ノズルプレート16をアクチュエータ基板2の裏面側に設置し、ノズルプレート16に形成するノズル17を上記開口部に連通させて、液滴を−z方向に吐出させてもよい。また、面取り部10のX方向の断面形状は円弧形状の他に矩形形状や傾斜形状であっても良い。
【0035】
また、面取り部10を形成して駆動電極7の上端部を基板表面SFの高さよりも低く(溝の深さ方向に深く)形成したが、本発明はこれに限定されない。例えばレーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により、共通配線交差領域CRにおける駆動電極7の上端部のみを除去し、隔壁6の上端角部を残してもよい。また、前述した実施形態では、駆動電極7を形成した後に、ダミーチャネル12の共通配線交差領域CRにて駆動電極7の上端部のみを除去する構成を示したが、この形態に限られるものではない。すなわち、駆動電極7を形成する前に、ダミーチャネル12の共通配線交差領域CRにてダミーチャネル12の側面上端部をマスクすることにより、本実施形態を実現することも可能である。つまり、ダミーチャネル12の側面上端部をマスクした上で電極材料を堆積して駆動電極7を形成し、その後にマスクを除去すれば、共通配線交差領域CRにて共通配線電極9aとダミーチャネル12の駆動電極7が接触することがない。要は、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときに、共通配線電極9aと駆動電極7が電気的に短絡しないように、駆動電極7の上端部を基板表面SFの位置よりも深さ方向に深く形成すればよい。
【0036】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1のアクチュエータ基板2の後方端RE側を表す模式的な部分斜視図である。第一実施形態と異なる部分は、吐出チャンネル11を構成する溝5が後方端REまで延在し、一つの吐出チャンネル11に対応する共通引出電極8aや個別引出電極8bがこの吐出チャンネル11の両側に位置する2つの隔壁6の上面に分割されている点である。
【0037】
液体噴射ヘッド1は、アクチュエータ基板2と、その上に接合した図示しないカバープレートと、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に接着したフレキシブル基板4(図5参照)と、アクチュエータ基板2及びカバープレートの前方端FEに接合した図示しないノズルプレートを備えている。カバープレート及びノズルプレートの構成は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、アクチュエータ基板2は、基板表面SFの前方端FEから後方端REのy方向に細長く、互いに隔壁6により離隔して上記y方向に交差するx方向に配列する複数の溝5を備えている。吐出チャンネル11を構成する溝5は前方端FEから後方端REまで延在し、ダミーチャンネル12を構成する溝5も前方端FEから後方端REまで延在し、互いに交互にx方向に配列している。各隔壁6は、その両側面の隔壁6の高さの略1/2よりも上部に駆動電極7を有しており、駆動電極7はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまで延在する。
【0039】
吐出チャンネル11の一方の側(−x方向)には隔壁6-が、他方の側(+x方向)には隔壁6+が設置され、両方の隔壁6-、6+の側面の上半分には駆動電極7が形成されている。アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE近傍には個別配線交差領域SRが設定され、個別配線交差領域SRよりも前方端FE側の基板表面SFには共通配線交差領域CRが設定されている。個別配線交差領域SRは、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときに吐出チャンネル11の側面に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4に形成した個別配線電極9bとが平面視交差する領域である。共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4をアクチュエータ基板2に接着したときにダミーチャンネル12の側面に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4に形成した共通引出電極8aとが平面視交差する領域である。
【0040】
図4に示すように、隔壁6-は、その上面、即ち基板表面SFであり、個別配線交差領域SR内の−x側には個別引出電極8b-を備え、共通配線交差領域CR内であって+x側には共通引出電極8a-を備えている。個別引出電極8b-は隔壁6-のダミーチャンネル12-に形成される駆動電極7に電気的に接続し、共通引出電極8a-は隔壁6-の吐出チャンネル11側の図示しない駆動電極に電気的に接続している。同様に、隔壁6+は、その上面、即ち基板表面SFであり、個別配線交差領域SR内の+x側には個別引出電極8b+を備え、共通配線交差領域CR内であって−x側には共通引出電極8a+を備えている。個別引出電極8b+は隔壁6+のダミーチャンネル12+側に形成される図示しない駆動電極に電気的に接続し、共通引出電極8a+は隔壁6+の吐出チャンネル11側の駆動電極7に電気的に接続している。他の吐出チャンネルやダミーチャンネルも同様の構造を備えている。
【0041】
更に、共通配線交差領域CRにおいて、ダミーチャンネル12-、12+を構成する隔壁6-、6+の側面(即ち溝5の側面)と基板表面SFとの間の角部に面取り部10を設けている。この面取り部10を形成したことにより、側面に形成した駆動電極7は、その上端部が基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に低い。同様に、個別配線交差領域SRにおいて、吐出チャンネル11を構成する溝5の両側面と基板表面SFとの間の角部に面取り部10を設けている。この面取り部10により、側面に形成した駆動電極7は、その上端部が基板表面SFの高さよりも溝5の深さ方向に低い。他の吐出チャンネルやダミーチャンネルも同様の構造を備えている。
【0042】
図5は、液体噴射ヘッド1の模式的な部分上面図であり、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の角部を表している。カバープレート3はアクチュエータ基板2の上に接合している。カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13が設置され、吐出チャンネル11を構成する溝5を封止して、吐出チャンネル11に充填された液体が後方端RE側に漏えいすることを防止している。フレキシブル基板4はアクチュエータ基板2の後方端REから封止材13の手前までの基板表面SFに接着されている。また、封止材13について図5では、−x方向から+x方向にわたって封止材13を形成しているが、インクが充填される吐出チャンネル11のみに封止材13を形成し、吐出チャンネル11の後方端RE側を封止する構成でもかまわない。
【0043】
アクチュエータ基板2は、その基板表面に吐出チャンネル11、ダミーチャンネル12-、12+、隔壁6-、6+を備え、隔壁6-、6+の上面(即ちアクチュエータ基板2の基板表面SF)に共通引出電極8a-、8a+、個別引出電極8b-、8b+を備え、その配置は図4と同様である。フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2側の表面の外周に沿って共通配線電極9aを備え、共通配線電極9aよりも内側に複数の個別配線電極9bを備えている。共通配線交差領域CRは、フレキシブル基板4の共通配線電極9aとダミーチャンネル12-、12+等の両側面に形成した駆動電極7とが交差する領域である。個別配線交差領域SRは、フレキシブル基板4の個別配線電極9bと吐出チャンネル11の両側面に形成した駆動電極7とが交差する領域である。共通配線交差領域CRと個別配線交差領域SRに形成した面取り部10は図4において説明したと同様である。
【0044】
フレキシブル基板4は、アクチュエータ基板2の基板表面SFの後方端RE領域に図示しない異方性導電膜を介して接着されている。これにより、共通配線電極9aは隔壁6-に設置される共通引出電極8a-、隔壁6+に設置される共通引出電極8a+、その他の隔壁6に設置される他の共通引出電極8aと電気的に接続する。また、個別配線電極9bは吐出チャンネル11を跨いでその両側の隔壁6-に設置される個別引出電極8b-と隔壁6+に設置される個別引出電極8b+とを電気的に接続する。その他の吐出チャンネル11も同様である。
【0045】
図6(a)は、図5に示す部分CCの縦断面の一部を表し、図6(b)は、図5に示す部分DDの縦断面の一部を表す。図6(a)を用いて説明する。吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-の上面に形成した第一の共通引出電極8a-と他方の側の隔壁6+の上面に形成した第二の共通引出電極8a+がフレキシブル基板4の共通配線電極9aに電気的に接続する。他の吐出チャンネル11の第一及び第二の両共通引出電極8a-、8a+も同じ共通配線電極9aに電気的に接続する。また、共通配線交差領域CRにおいて、吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-のダミーチャンネル12-の側面と上面の角部に面取り部10を形成し、駆動電極7の上端部と基板表面SFの位置との間に距離gを設けた。これにより、駆動電極7と共通配線電極9aとは電気的に分離する。他のダミーチャンネル12も同様の構造を有している。
【0046】
図6(b)を用いて説明する。吐出チャンネル11の一方の側の隔壁6-の上面に形成した第一の個別引出電極8b-と、吐出チャンネル11の他方の側の隔壁6+の上面に形成した第二の個別引出電極8b+はいずれもフレキシブル基板4の個別配線電極9bに電気的に接続する。他の吐出チャンネルの第一及び第二の個別引出電極8b-、8b+も同じ構造を有している。また、個別配線交差領域SRにおいて、吐出チャンネル11を構成する両隔壁6-、6+の側面と上面の角部に面取り部10を形成し、駆動電極7の上端部と基板表面SFの位置との間に距離gを設けて、駆動電極7と個別配線電極9bを電気的に分離させた。
【0047】
図7は、図5に示す部分EEの模式的な縦断面図である。アクチュエータ基板2の上にカバープレート3を接合し、アクチュエータ基板2に形成した溝5とカバープレート3により吐出チャンネル11を構成している。カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13をモールドし、吐出チャンネル11に充填した液体が後方側に漏洩しないようにしている。アクチュエータ基板2の基板表面の後方端RE近傍にフレキシブル基板4を接着している。フレキシブル基板4の表面には共通配線電極9aと複数の個別配線電極9bが設置され、アクチュエータ基板2の基板表面の後方端RE近傍に形成した図示しない共通引出電極と個別引出電極に図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。
【0048】
液体供給室14に供給されたインク等の液体はスリット15を介して吐出チャンネル11に充填される。図示しない駆動回路から各個別配線電極9bに駆動信号が供給されると、個別引出電極8bを介してダミーチャンネル12の吐出チャンネル11側の側面に形成された駆動電極7にその駆動信号が与えられる。一方、共通配線電極9aはGNDに接続され、共通配線電極9aに接続する共通引出電極もGNDに接続される。従って吐出チャンネル11の両側面に形成された駆動電極もGNDに接続される。吐出チャンネル11の両隔壁に駆動信号が与えられると、垂直方向に分極された隔壁は厚み滑り変形して吐出チャンネル11内の容積が変化する。これにより、吐出チャンネル11に連通する図示しないノズルから液体が吐出される。なお、本発明の液体噴射ヘッド1は駆動電極7が液体に接触する構造を有しているが、吐出チャンネル11の側面に形成した駆動電極7は全てGNDに接続される。従って、液体が導電性である場合でも、液体を介して駆動信号が漏れ出すことが無い。また配線電極9の表面には保護部材18を設置して配線電極9の劣化を防止している。
【0049】
本実施形態においては、吐出チャンネル11及びダミーチャンネル12を構成する溝5を前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成するので、アクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまでの長さを縮小させることができる。つまり、溝は円盤状のダイシングブレードを用いて形成するので、第一実施形態のようにアクチュエータ基板2の基板表面の途中まで溝を形成する場合はダイシングブレードの円弧形状が転写される。そのため、基板表面において溝の端部から溝が所定の深さとなるまでの距離が必要となったが、本実施形態の場合はこの距離を必要としないので、その分、小型化することができる。
【0050】
また、従来例と比較してフレキシブル基板4上の配線電極数が概ね1/2と減少し、配線ピッチが略2倍となる。そのため、アクチュエータ基板2上の引出電極とフレキシブル基板4上の配線電極の位置合わせ精度が緩和されて接続が容易となる。また、配線ピッチを縮小できるのでチャンネル配列の高密度化にも適する。また、共通配線交差領域CRや個別配線交差領域SRにおいて、駆動電極7の上端部を基板表面SFの高さよりも溝の深さ方向に深く形成したので、駆動電極7と共通配線電極9aや個別配線電極9bとの絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済むので、アクチュエータ基板2に対するフレキシブル基板4の接着が極めて容易になる。
【0051】
なお、上記第一及び第二実施形態において、面取り部10を形成して駆動電極7の上端部を基板表面SFの位置よりも溝の深さ方向に深く形成したが、本発明はこの構成に限定されない。例えばレーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により、共通配線交差領域CRや個別配線交差領域SRにおける駆動電極7の上端部のみを除去し、隔壁6の上端角部を残してもよい。また、駆動電極7の上端部を除去する除去工程を用いないで、隔壁6の側面の上端部にマスクを設置し、その上から電極材料を堆積し、その後マスクを除去して、基板表面SFの位置よりも溝の底面側に低い(深さ方向に深い)上端部を有する駆動電極7を形成することも可能である。この場合も隔壁6の上端角部は残る。
【0052】
<液体噴射ヘッドの製造方法>
図8は、本発明に係る液体噴射ヘッド1の基本的な製造方法を表す工程図である。
まず、溝形成工程S1において、圧電体基板又は絶縁体基板の上に圧電体を張り合わせたアクチュエータ基板を準備し、このアクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する。複数の溝は、フォトリソグラフィ及びエッチング法やサンドブラスト法により、或いはダイシングブレードを用いた切削法により形成することができる。次に、電極堆積工程S2において、隔壁の側面と隔壁の上面に電極材料を堆積する。金属等の導体をスパッタリング法や真空蒸着法、或いはめっき法により堆積することができる。次に、電極形成工程S3において、隔壁の側面に、上端部の一部が上面の高さよりも溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成し、更に、隔壁の上面に引出電極を形成する。引出電極は、隔壁の側面に形成した駆動電極と電気的に接続し、フレキシブル基板等に形成した配線電極と電気的に接続するための端子電極として機能する。次に、フレキシブル基板接着工程S4において、配線電極を形成したフレキシブル基板をアクチュエータ基板の隔壁の上面に接着し、配線電極と引出電極とを電気的に接続する。駆動電極の上端部の一部を隔壁の上面の高さよりも溝の深さ方向に低く形成する領域は、後にフレキシブル基板をアクチュエータ基板の後端部近傍の隔壁の上面に接着する際に、フレキシブル基板に形成した配線電極と隔壁の側面に形成した駆動電極が平面視交差する領域である。
【0053】
電極形成工程S3は、隔壁の側面に堆積した電極の一部を除去して駆動電極を形成する駆動電極形成工程S5と、隔壁の上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程S6とを含めることができる。この場合に、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6とを個別に実施することができる。駆動電極形成工程S5として、例えば、電極堆積工程S2の後にダイシングブレードを用いて隔壁の側面と上面の角部を面取りして隔壁の側面に堆積した電極の上端部を溝の深さ方向に除去する。また、レーザ光を照射して側面上端部の電極を蒸発させて除去する。また、フォトリソグラフィ及びエッチング法により隔壁の側面上端部の電極を除去する。また、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6とを同時に実施することができる。例えば、電極堆積工程S2の前に隔壁の側面上端部や隔壁の上面にマスクを設置し、その後電極堆積工程S2において電極材料を堆積する。次に電極形成工程S3においてマスクを除去し、上端部の一部が隔壁の上面の高さよりも溝の深さ方向に低い駆動電極を隔壁の側面に、引出電極を隔壁の上面に同時に形成することができる。
【0054】
本発明の製造方法によれば、アクチュエータ基板の隔壁に形成した駆動電極とフレキシブル基板の配線電極とが交差する交差領域では、駆動電極の上端部が隔壁の上面の高さよりも低くなり、電気的に分離されるので絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済む。以下、液体噴射ヘッドの製造方法について、具体的に説明する。
【0055】
(第三実施形態)
図9及び図10は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を説明するための液体噴射ヘッド1の断面模式図である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0056】
図9(a)及び(b)は基板準備工程を表している。圧電体基板からなるアクチュエータ基板2を準備する。圧電体基板として基板面の垂直方向に分極処理が施されたPZTセラミックス材料を使用している。図9(b)は、アクチュエータ基板2の基板表面に感光性樹脂21を塗布し、パターニングした状態を表す。感光性樹脂21のパターンは、例えば引出電極を形成する領域は感光性樹脂21を除去し、最終的に電極を形成しない領域は感光性樹脂21を残すようにパターニングする。
【0057】
図9(c)及び(d)は溝形成工程S1を表している。ダイシングブレード22を用いてアクチュエータ基板2の基板表面を切削して溝5を並列に形成する。隣接する溝5は隔壁6により離隔される。第一実施形態の液体噴射ヘッド1の場合は、ダミーチャンネル12用の溝5はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成し、吐出チャンネル11用の溝5はアクチュエータ基板2の前方端から後方端REの手前まで形成する。第二実施形態の液体噴射ヘッド1の場合は、ダミーチャンネル12用と吐出チャンネル11用のいずれの溝5も前方端FEから後方端REに亘ってストレートに形成する。この場合はダイシングブレード22の外形形状が転写されないのでアクチュエータ基板2の幅を狭く形成することができる。
【0058】
図9(e)及び(f)は電極堆積工程S2を表している。複数の溝5が形成された基板表面に斜め蒸着法により垂直方向nに対して角度θ傾斜する方向から導電材料を蒸着する。これにより、溝5を構成する隔壁6の側面に溝5の深さの略1/2から隔壁6の上面にかけて導体膜23を形成することができる。導電材料として、アルミニウム、金、クロム、チタン等の金属材料を使用することができる。なお、本実施形態においてはアクチュエータ基板2の基板表面の一部が隔壁6の上面を構成している。
【0059】
図10(g)は引出電極形成工程S6を表す。溝形成工程の前に形成した感光性樹脂21を除去する。これにより感光性樹脂21が形成されている領域の導体膜23が除去され、感光性樹脂21が除去された領域の導体膜23が残る。これによりアクチュエータ基板2の基板表面に引出電極を形成することができる。
【0060】
図10(h)は駆動電極形成工程S5を表している。駆動電極7とフレキシブル基板に形成した共通配線電極が交差する共通配線交差領域において、ダミーチャンネル12を構成する2つの隔壁6の側面と上面との間の角部を切削し、面取り部10を形成する。角部の面取りは溝5の幅よりもわずかに厚いダイシングブレード22’を用いた。これにより、駆動電極7の上端部を隔壁6の上面の高さよりも深さ方向に低く形成することができる。駆動電極7の上端部を隔壁6の上面の位置から溝5の底面方向に20μm〜30μm切削すれば、隔壁6の上面にフレキシブル基板の共通配線電極を接着しても、駆動電極7と共通配線電極とは電気的に短絡しない。
【0061】
なお、隔壁6の上面からの切削量が大きくなると面取り部10の長さが長くなり、個別引出電極8bの形成領域まで面取されて個別引出電極8bと駆動電極7が電気的に切断される。例えば、直径2インチ(50.8mmφ)のダイシングブレード22’を用いて深さ30μmの面取り部10を形成する場合、ダイシングブレード22’の外周の円弧分で片側1.23mm、全体で2.46mmの長さに亘って面取りされる。仮に深さ100μmの面取り部10を形成する場合はダイシングブレード22’の外周の円弧分で片側2.25mm、全体で4.5mmの長さに亘って面取りされる。つまり、個別引出電極8bと駆動電極7が電気的に切断されないようにするためには溝5の長さを長くしなければならず、従って液体噴射ヘッド1が大きくなる。そこで、液体噴射ヘッド1をコンパクトに構成でき、しかもフレキシブル基板4の共通配線電極9aと駆動電極7が短絡しない切削量(共通配線交差領域CRにおける隔壁6の上面の位置から底面方向への深さ)は15μm〜50μm、好ましくは20μm〜40μm、より好ましくは30μm程度とするのがよい。なお、面取り部10を形成する際に、溝5の幅より厚さの厚いダイシングブレードを用いたが、例えば溝5を形成したダイシングブレードを用いて溝5の一方の側面と他方の側面を順次面取りしてもよい。
【0062】
図10(i)はカバープレート3をアクチュエータ基板2の基板表面に接合するカバープレート接合工程を表す。カバープレート3はアクチュエータ基板2の吐出チャンネル11を構成する溝5を閉塞し、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に形成した共通引出電極及び個別引出電極を露出させて接着剤により接合する。カバープレート3の液体供給室14の下部に形成した各スリット15は、吐出チャンネル11に連通させて液体供給室14から液体を充填可能とし、ダミーチャンネル12はカバープレート3の底面により閉塞して液体供給室14から液体が供給されない。
【0063】
図10(j)はフレキシブル基板接着工程S4を表す。共通配線電極9a及び個別配線電極9bを形成したフレキシブル基板4をアクチュエータ基板2の後方端RE近傍の基板表面に異方性導電膜24を介して接着する。これにより、アクチュエータ基板2上の共通引出電極8a及び個別引出電極8bはフレキシブル基板4上の共通配線電極9a及び個別配線電極9bに異方性導電膜24を介してそれぞれ電気的に接続する。共通引出電極8aは吐出チャンネル11の両側面に形成した駆動電極7に電気的に接続し、個別引出電極8bは吐出チャンネル11に隣接する図示しない両ダミーチャンネルの吐出チャンネル11側の側面に形成した駆動電極に電気的に接続している。アクチュエータ基板2の上にはカバープレート3が接合し、液体供給室14はスリット15を介して吐出チャンネル11に連通している。フレキシブル基板4に形成した配線電極9a、9bは保護部材18により表面が保護されている。
【0064】
このように、各吐出チャンネル11に対応する共通引出電極8aを共通配線電極9aにより接続したのでフレキシブル基板4上の配線電極を従来例と比較して略1/2に減少させることができる。更に、共通配線交差領域CRにおいて、溝5の側面に形成した駆動電極7の上端部を切削したので、駆動電極7と共通配線電極9aの絶縁性が向上した。そのため、配線電極9と駆動電極7の間の絶縁対策を必要としない、あるいは必要としても簡便な方法で済むので、アクチュエータ基板2に対するフレキシブル基板4の接着が極めて容易となり、製造コストを削減できる。
【0065】
なお、本実施形態では第一実施形態で説明した液体噴射ヘッド1の製造方法を説明したが、第二実施形態で説明した液体噴射ヘッド1も同様に製造することができる。この場合は、溝形成工程S1において、ダミーチャンネル12用の溝5と同様に吐出チャンネル11用の溝5をアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘って形成する。また、駆動電極形成工程S5においては、共通配線交差領域CRのダミーチャンネル12に面取り部10を形成することに加えて、個別配線交差領域SRの吐出チャンネル11にも面取り部10を形成する。また、カバープレート接合工程においては、カバープレート3の後方端RE側の端部に封止材13を設置して吐出チャンネル11から液体が漏洩することを防止する。
【0066】
また、本実施形態では電極のパターニングをリフトオフ法により行ったが、本発明はこれに限定されず、斜め蒸着法により電極を形成した後にフォトリソグラフィ及びエッチング工程を通して電極をパターニングしてもよい。また、駆動電極形成工程S5において、隔壁6の側面と上面の角部を切削により面取りすることに代えて、レーザビームやフォトリソグラフィ及びエッチング法により駆動電極7の上端部のみを除去しても良い。また、本実施形態では駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を個別に実施したが本発明はこれに限定されず、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を同時に実施することができる。例えば、基板準備工程において感光性樹脂21を塗布せず、電極堆積工程S2の前に隔壁6の側面上端部や隔壁の上面にマスクを設置し、その後電極堆積工程S2において電極材料を堆積する。次に電極形成工程S3においてマスクを除去し、上端部の一部が隔壁6の上面の高さよりも溝5の深さ方向に低い駆動電極7を隔壁6の側面に、引出電極を隔壁6の上面に同時に形成することができる。従って、隔壁6の側面と上面の角部を面取りする工程や側面の上端部電極を追加的に除去する工程を必要としない。
【0067】
また、駆動電極形成工程S5と引出電極形成工程S6を同時に実施する他の方法として、例えば、溝形成工程S1により溝5を形成した後に感光性樹脂21を軟化させて隔壁6の側面上端部まで流動させる。次に電極堆積工程S2において電極材料を堆積し、次に電極形成工程S3において感光性樹脂21を除去する。つまり、隔壁6の上面の感光性樹脂21が流動して隔壁6の上端部を覆うので、感光性樹脂21を除去すれば上端部の一部が隔壁6の上面の高さよりも溝5の深さ方向に低い駆動電極7が形成される。従って、隔壁6の側面の駆動電極7と隔壁6の上面の引出電極とを同時に形成することができ、隔壁6の側面と上面の角部を面取りする工程や側面の上端部電極を追加的に除去する工程を必要としない。なお、上記のように感光性樹脂21のパターニング後に電極材料を堆積し、次に感光性樹脂21を除去して電極パターンを形成するリフトオフ法では感光性樹脂21はマスクとして機能している。
【0068】
<液体噴射装置>
(第四実施形態)
図11は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。
液体噴射装置30は、上記本発明に係る液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構43と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する液体供給管33、33’と、液体供給管33、33’に液体を供給する液体タンク31、31’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は本発明に係る液体噴射ヘッド1から構成される。即ち、基板表面に並列する複数の溝と、隣接する溝を離隔する隔壁を有するアクチュエータ基板と、溝を覆い、アクチュエータ基板の基板表面に接合するカバープレートと、溝に連通するノズルを有し、アクチュエータ基板の端面に接合するノズルプレートと、を備えている。このアクチュエータ基板は、液滴吐出用の吐出チャンネルと液滴を吐出しないダミーチャンネルが交互に配列している。そして、アクチュエータ基板の基板表面の後方端近傍には、吐出チャンネルの側面に形成した駆動電極に接続する共通引出電極とダミーチャンネルの当該吐出チャンネル側の側面に形成した駆動電極に接続する個別引出電極が設置されている。共通引出電極は個別引出電極よりも前方端側に位置している。フレキシブル基板には、共通引出電極に電気的に接続する共通配線電極と、個別引出電極に電気的に接続する個別配線電極が設置されている。
【0069】
具体的に説明する。液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体34を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体34に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体タンク31、31’に貯留した液体を液体供給管33、33’に押圧して供給するポンプ32、32’と、液体噴射ヘッド1を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構43等を備えている。
【0070】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体34を主走査方向に搬送する。移動機構43は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット38と、キャリッジユニット38を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト39と、この無端ベルト39を図示しないプーリを介して周回させるモータ40を備えている。
【0071】
キャリッジユニット38は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク31、31’は対応する色の液体を貯留し、ポンプ32、32’、液体供給管33、33’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット38を駆動するモータ40の回転及び被記録媒体34の搬送速度を制御することにより、被記録媒体34上に任意のパターンを記録することできる。
【0072】
この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対しフレキシブル基板上の配線電極数が低減し、配線密度が概ね1/2となる。更に、溝5に形成した駆動電極7とフレキシブル基板4の配線電極とが交差する領域において駆動電極7の上端部を隔壁6の上面より深く形成したのでフレキシブル基板4の配線電極と溝5に形成した駆動電極7とが電気的に接触することがない。その結果、フレキシブル基板4のアクチュエータ基板2に対する接着が容易となり、製造歩留まり向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 液体噴射ヘッド
2 アクチュエータ基板
3 カバープレート
4 フレキシブル基板
5 溝
6 隔壁
7 駆動電極
8 引出電極
9 配線電極
10 面取り部
11 吐出チャンネル
12 ダミーチャンネル
13 封止材
14 液体供給室
15 スリット
16 ノズルプレート
17 ノズル
18 保護部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、
前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、
前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、
前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、
前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在し、
前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有し、
前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有し、
前記共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記共通配線交差領域において、前記基板表面と前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されている請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端の手前まで延在する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端まで延在し、
前記個別引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の個別引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の個別引出電極とを含み、
前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第一の個別引出電極と電気的に接続し、前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第二の個別引出電極と電気的に接続し、
前記共通引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の共通引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の共通引出電極とを含み、
前記吐出チャンネルを構成する溝の一方の側の側面に形成された駆動電極は前記第一の共通引出電極に電気的に接続し、前記吐出チャンネルを構成する溝の他方の側の側面に形成された駆動電極は前記第二の共通引出電極に電気的に接続し、
前記共通配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の共通引出電極と前記第二の共通引出電極とを電気的に接続する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記個別配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の個別引出電極と前記第二の個別引出電極とを電気的に接続する請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記個別配線電極と前記駆動電極とが交差する個別配線交差領域において、前記吐出チャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記個別配線交差領域において、前記基板表面と前記吐出チャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されている請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【請求項9】
アクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する溝形成工程と、
前記隔壁の側面と前記隔壁の上面に電極材料を堆積する電極堆積工程と、
前記隔壁の側面に、上端部の一部が前記上面の高さよりも前記溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成するとともに、前記上面に引出電極を形成する電極形成工程と、
配線電極を形成したフレキシブル基板を前記隔壁の上面に接着し、前記引出電極と前記配線電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接着工程と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記電極形成工程は、前記側面の上端部に堆積した電極の一部を除去して前記駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、前記隔壁の前記上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程とを含む請求項9に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記駆動電極形成工程は、前記隔壁の前記上面と前記側面との間の角部を面取りする工程からなる請求項10に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記電極形成工程は、前記電極堆積工程の前に前記隔壁の前記上面又は前記上面の近傍にマスクを設置し、前記電極堆積工程の後に前記マスクを除去して前記駆動電極と前記引出電極を形成する工程である請求項9〜11のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項1】
基板表面の前方端から後方端の方向に細長く、互いに隔壁により離隔し、前記方向に交差する方向に配列する複数の溝と、前記隔壁の側面に形成された駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、前記基板表面の後方端近傍に形成された引出電極とを有するアクチュエータ基板と、
前記基板表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、
前記基板表面の後方端近傍に接着し、前記引出電極に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、
前記複数のチャンネルは、液体を吐出する吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、
前記ダミーチャンネルを構成する溝は前記アクチュエータ基板の後方端まで延在し、
前記引出電極は、前記吐出チャンネルの両側に隣接する2つのダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記2つのダミーチャンネルの間であり、前記基板表面の後方端近傍に形成された個別引出電極と、前記吐出チャンネルの2つの側面に形成された駆動電極と電気的に接続され、前記基板表面の後方端近傍であり、前記個別引出電極よりも前方端の側に形成された共通引出電極とを有し、
前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記共通引出電極と他の吐出チャンネルに対応する他の共通引出電極とを電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する個別引出電極のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有し、
前記共通配線電極と前記駆動電極とが交差する共通配線交差領域において、前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記共通配線交差領域において、前記基板表面と前記ダミーチャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されている請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端の手前まで延在する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端まで延在し、
前記個別引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の個別引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の個別引出電極とを含み、
前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第一の個別引出電極と電気的に接続し、前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルの前記吐出チャンネル側の側面に形成された駆動電極は前記第二の個別引出電極と電気的に接続し、
前記共通引出電極は、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの一方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第一の共通引出電極と、前記吐出チャンネルと前記吐出チャンネルの他方の側に隣接するダミーチャンネルとの間に形成された第二の共通引出電極とを含み、
前記吐出チャンネルを構成する溝の一方の側の側面に形成された駆動電極は前記第一の共通引出電極に電気的に接続し、前記吐出チャンネルを構成する溝の他方の側の側面に形成された駆動電極は前記第二の共通引出電極に電気的に接続し、
前記共通配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の共通引出電極と前記第二の共通引出電極とを電気的に接続する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記個別配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する前記第一の個別引出電極と前記第二の個別引出電極とを電気的に接続する請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記個別配線電極と前記駆動電極とが交差する個別配線交差領域において、前記吐出チャンネルを構成する溝の側面に形成された駆動電極は、その上端部が前記基板表面よりも溝の深さ方向に深く形成されている請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記個別配線交差領域において、前記基板表面と前記吐出チャンネルを構成する溝の側面との間の角部が深さ方向に切削されている請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【請求項9】
アクチュエータ基板の基板表面に互いに隔壁により離隔する複数の溝を形成する溝形成工程と、
前記隔壁の側面と前記隔壁の上面に電極材料を堆積する電極堆積工程と、
前記隔壁の側面に、上端部の一部が前記上面の高さよりも前記溝の深さ方向に低い形状の駆動電極を形成するとともに、前記上面に引出電極を形成する電極形成工程と、
配線電極を形成したフレキシブル基板を前記隔壁の上面に接着し、前記引出電極と前記配線電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接着工程と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記電極形成工程は、前記側面の上端部に堆積した電極の一部を除去して前記駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、前記隔壁の前記上面に堆積した電極をパターニングして引出電極を形成する引出電極形成工程とを含む請求項9に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記駆動電極形成工程は、前記隔壁の前記上面と前記側面との間の角部を面取りする工程からなる請求項10に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記電極形成工程は、前記電極堆積工程の前に前記隔壁の前記上面又は前記上面の近傍にマスクを設置し、前記電極堆積工程の後に前記マスクを除去して前記駆動電極と前記引出電極を形成する工程である請求項9〜11のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−101437(P2012−101437A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251816(P2010−251816)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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