説明

液体滴下装置

【課題】プランジャの回転動作時における遠心力による滴下への影響がなく、微量の液体を精度良く滴下することができる液体滴下装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体滴下装置1は、回転及び進退可能なプランジャロッド8と、バルブ7と、シリンジ6とを有する。シリンジ6の底部には、それぞれプランジャロッド8の回転軸O方向に延びる貫通孔からなるシリンジ供給口60とシリンジ排出口61が設けられる。バルブ7は、プランジャロッド8と共に回転動作のみするように連結され、バルブ7の底部には、それぞれ回転軸O方向に延びる貫通孔からなるバルブ供給口70とバルブ排出口71が設けられる。プランジャロッド8の回転に伴い、シリンダ供給口60及びバルブ供給口70と、シリンダ排出口61及びバルブ排出口71とが、排他的に重なり合い、それぞれ回転軸O方向に延びる液体供給流路と液体排出流路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルコールや水などの低粘度の液体から半田ペーストやシール材等の高粘度の液体まで幅広い粘度の液体を高精度に定量滴下する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を定量滴下させる液体滴下装置としては、プランジャロッドの進退動作により液体の保持体積を変動させて液体を滴下させるもの、液体を常時加圧しておき、ノズル部に接続される流路を開閉することにより、開放された時間分の液体を滴下させるもの(例えば特許文献1参照)、その他スクリューポンプやギアポンプ等によるものが開発されている。
【0003】
また、液体滴下装置の中で、プランジャポンプのようなプランジャロッドの進退動作によって液体の滴下・供給を行う構成のものでは、液体に圧力を加えるピストン部と、液体の滴下・供給を切り換えるバルブが必要になる。そして、従来より、このピストン部とバルブ部を一体化し、プランジャロッドのスクリュー動作のみで両機能を果たすものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
上述した液体滴下装置は、産業用途においてTVパネルの製作、半導体製造装置のワイヤーボンディング工程や、PC等の基板製作工程で使用される。
特に、パネル製作工程においては、携帯電話の液晶パネルに代表されるパネルの小型化に伴い、ガラス基板を均一に貼り合わせるための高さコントロールが必要になり、また、スペーサー、液晶、シール材については微量の液体を定量滴下するように制御する必要がある。
【0005】
さらに、基板配線や基板への半田塗布に関しては、基板の小型化に伴い、配線の幅を縮小することや、半田付け量を減少することが求められ、このような場合においても、微量の液体を精度よく滴下する必要がある。
一方、特許文献2に記載の液体滴下装置は、プランジャロッドのスクリュー動作により液体の滴下・供給を行うものであるが、プランジャロッドの回転軸に対して法線方向に液体供給流路と液体滴下流路が存在するため、プランジャロッドの回転と同時に遠心力が発生し、液体の滴下精度が良くないという問題がある。
また、プランジャロッドの高速回転時においてはプランジャロッドの進退動作によらない遠心力のみで液体が滴下してしまい、滴下間隔を縮めることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−308105号公報
【特許文献2】特許第4034761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、プランジャの回転動作における遠心力による滴下への影響がなく、微量の液体を精度良く滴下することができる液体滴下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、駆動源からの動力が伝達される本体部と当該本体部と一体的に構成された駆動部とを有し、一定方向に回転し、かつ、当該回転の回転軸方向へ往復移動するプランジャと、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり液体源から液体が供給される供給口と、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記液体源から供給された液体を排出する排出口とが、平面状の内側底面を有する底部に設けられたシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、前記プランジャの駆動部とはまり合うシリンダ空間を有するとともに、前記プランジャと共に回転動作のみするように当該プランジャの駆動部に連結され、さらに、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記シリンダ空間内に液体を供給する供給口と、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記シリンダ空間から液体を排出する排出口とが、平面状の外側底面を有する底部に設けられたシリンダバルブとを備え、前記プランジャの回転に伴い、前記シリンダの内側底面と前記シリンダバルブの外側底面とが摺動し、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口と、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口とが、排他的に重なり合うことによって、前記回転軸方向に延びる液体供給流路と前記回転軸方向に延びる液体排出流路がそれぞれ形成されるように構成されている液体滴下装置である。
本発明では、前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部から離れる方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合わず、前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合わず、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合うように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合わない期間を有するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記シリンダバルブのシリンダ空間の開口端部上に、前記プランジャの本体部方向への移動を拘束するカラー部材が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記シリンダバルブの供給口が、長孔円弧形状に形成され、かつ、前記シリンダの供給口の面積より面積が大きい場合にも効果的である。
【0009】
本発明は、プランジャの回転及び液体供給流路を介してシリンダ空間に自動的に液体が供給されるとともに、液体排出流路を介してシリンダ空間から液体が自動的に排出されるものである。
このような本発明にあっては、プランジャの回転に伴い、シリンダの供給口及びシリンダバルブの供給口の重なりによって形成される液体供給流路と、シリンダの排出口及びシリンダバルブの排出口の重なりによって形成される液体排出流路とが、共にプランジャの回転軸方向へ延びるように構成されることから、プランジャの回転動作における遠心力による滴下への影響がなく、精度よく液体を滴下することができる。
【0010】
また、本発明においては、プランジャとシリンダバルブとが共に回転するように連結され、駆動源から動力が伝達される駆動部分を一体化することにより駆動時の誤差はプランジャの動作のみになるため、駆動部側の誤差は一つの駆動部のみの誤差に減らすことができ、さらに、駆動部分を一体化することにより装置の小型化が可能になる。
【0011】
さらには、例えばピストン部とバルブ部が別の駆動系を使用した場合には両者の動作の同期を取るのに手間がかかるのに対し、本発明では、一体化して駆動部分を一つにすることによりプランジャの動作に同期してシリンダバルブも駆動するため、液体の滴下・供給を行う際、毎回必ず同一部位にて行うことができ、これにより液体滴下の精度をより向上させることができる。
【0012】
本発明において、プランジャがシリンダバルブのシリンダ空間の底部から離れる方向に移動する際に、シリンダの供給口及びシリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、シリンダの排出口及びシリンダバルブの排出口が重なり合わず、プランジャがシリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、シリンダの供給口及びシリンダバルブの供給口が重なり合わず、かつ、シリンダの排出口及びシリンダバルブの排出口が重なり合うように構成されている場合には、プランジャを一定方向に回転させた場合において、プランジャの駆動部がシリンダバルブのシリンダ空間の底部から離れる方向に移動する際には、シリンダバルブのシリンダ空間内の負圧によって液体供給流路を介してシリンダ空間に自動的に液体が供給され、プランジャの駆動部がシリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際には、シリンダバルブのシリンダ空間内の正圧によって液体排出流路を介してシリンダ空間から液体が自動的に排出されるため、簡素な構成の液体滴下装置を得ることができる。
【0013】
本発明において、プランジャがシリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、シリンダの供給口及びシリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、シリンダの排出口及びシリンダバルブの排出口が重なり合わない期間を有するように構成されている場合には、液体供給流路を介して液体を液体源側に戻すことができるため、液体の供給律束又は駆動源の歯車のバックラッシュ等によるプランジャの往復動作の切り換えの際における圧力の変動(上昇)を抑えて滴下・供給時の液体に与える圧力を一定にすることができ、これにより液体滴下の精度をより向上させることができる。
【0014】
本発明において、シリンダバルブのシリンダ空間の開口端部上に、プランジャ駆動部に設けられた係合突部と係合するカラー部材が設けられている場合には、プランジャの本体部方向への移動を拘束してプランジャの動作を精度良く制御することができるとともに、カラー部材の厚さを変えることによってシリンダバルブに加える予圧を調整できるので、シリンダの内側底面とシリンダバルブの外側底面の間の摺動抵抗を調整することができる。
【0015】
本発明において、シリンダバルブの供給口が、長孔円弧形状に形成され、かつ、シリンダの供給口の面積より面積が大きい場合には、シリンダバルブの供給口をシリンダの供給口と接続する際において、液体の滴下・供給時における圧力変動を抑えることができ、液体滴下の精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、プランジャの回転動作における遠心力による滴下への影響がなく、微量の液体を精度良く滴下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る液体滴下装置の実施の形態の構成を示す断面図
【図2】同実施の形態の要部を示す組立断面斜視図
【図3】(a)(b):同実施の形態におけるシリンジの供給口及び排出口の位置関係を示す図
【図4】(a)(b):同実施の形態におけるバルブの供給口及び排出口の位置関係を示す図
【図5】同実施の形態におけるシリンジの供給口とバルブの供給口との位置関係並びにシリンジの供給口とバルブの供給口との位置関係を示す図
【図6】(a)(b):同実施の形態の液体滴下装置の動作を示す図(その1)で、図6(a)は、シリンジとバルブの位置関係を示す平面図、図6(b)は、図6(a)のシリンジとバルブをA−A線で断面した部分を含む、シリンジ、バルブ及びプランジャロッドを示す図
【図7】(a)(b):同実施の形態の液体滴下装置の動作を示す図(その2)で、図7(a)は、シリンジとバルブの位置関係を示す平面図、図7(b)は、図7(a)のシリンジとバルブをB−B線で断面した部分を含む、シリンジ、バルブ及びプランジャロッドを示す図
【図8】(a)(b):同実施の形態の液体滴下装置の動作を示す図(その3)で、図8(a)は、シリンジとバルブの位置関係を示す平面図、図8(b)は、図8(a)のシリンジとバルブをC−C線で断面した部分を含む、シリンジ、バルブ及びプランジャロッドを示す図
【図9】(a)(b):同実施の形態の液体滴下装置の動作を示す図(その4)で、図9(a)は、シリンジとバルブの位置関係を示す平面図、図9(b)は、図9(a)のシリンジとバルブをD−D線で断面した部分を含む、シリンジ、バルブ及びプランジャロッドを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液体滴下装置の実施の形態の構成を示す断面図である。また、図2は、本実施の形態の要部を示す組立断面斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の液体滴下装置1は、例えばステンレス等の金属からなる有底円筒形状の本体部2を有している。なお、本明細書においては、図1に示す状態で液体滴下装置1を配置した場合を例にとって上下関係を説明する。
【0019】
本実施の形態の場合、例えば液体滴下装置1の下方に液体タンク3が配置され、この液体タンク3に接続された供給パイプ4を介して本体部2の底部から液体滴下装置1に液体を供給するように構成されている。
また、本体部2の底部には、液体を滴下するためのノズル5が、その滴下部分を例えば鉛直下方に向けて取り付けられている。
【0020】
一方、本体部2の内部には、例えばステンレス等の金属材料からなる有底円筒形状のシリンジ(シリンダ)6が設けられている。ここで、シリンジ6は、その外側底面が本体部2の内側底面に密着するとともに、その外側壁面が本体部2の内側壁面に密着するように形成されている。
シリンジ6の底部には、液体滴下装置1に液体を供給するため例えば丸形状の貫通孔からなるシリンジ供給口(シリンダの供給口)60が設けられている。このシリンジ供給口60は、上述した供給パイプ4と連結するように設けられている。
【0021】
また、シリンジ6の底部には、液体タンク3から供給された液体を排出するため例えば丸形状の貫通孔からなるシリンジ排出口(シリンダの排出口)61が設けられている。このシリンジ排出口61は、上述したノズル5と連結するように設けられている。
なお、本実施の形態の場合、シリンジ6は、その頂部(上部)側の部分である上側端部6aが、本体部2の頂部(上部)側の部分から突き出すように形成されている。
【0022】
シリンジ6内の底部、即ち平面状に形成された内側底面6bには、例えばステンレス等の金属材料からなる有底円筒形状のバルブ(シリンダバルブ)7が設けられている。
このバルブ7は、その外側底面7aが平面状に形成され、シリンジ6内の内側底面6bに対して回転摺動できるように構成されている。
【0023】
また、バルブ7は、例えば円筒凹部形状に形成されたシリンダ空間72を有している。
一方、バルブ7の底部には、シリンダ空間72内に液体を供給する例えば貫通孔からなるバルブ供給口(シリンダバルブの供給口)70が設けられている。
本実施の形態の場合、このバルブ供給口70は、後述するように、長孔円弧形状に形成されている。
【0024】
また、バルブ7の底部には、液体タンク3から供給された液体を排出するため例えば丸形状の貫通孔からなるバルブ排出口(シリンダバルブの排出口)71が設けられている。
バルブ7には、プランジャロッド(プランジャ)8が装着される。
本実施の形態のプランジャロッド8は、円柱形状の本体部80と、本体部80と一体的に構成された駆動部81とを有している。
【0025】
本体部80は、図示しない回転駆動機構からの動力により、当該円柱の回転軸Oを中心として回転するとともに、この回転軸O方向へ周期的に往復移動(進行又は退行)するように構成されている。
また、プランジャロッド8の駆動部81は、この回転軸O方向へそれぞれ延びる円柱形状の連結部82とピストン部83が設けられている。ここで、駆動部81のピストン部83は、連結部82より小径に形成されている。
【0026】
一方、駆動部81の連結部82には、本体部80の近傍に、例えば二つの駆動突部84、85が設けられている。
本実施の形態の場合、これら二つの駆動突部84、85は、プランジャロッド8の回転軸Oに対して線対称となる位置に連結部82と一体的に設けられ、それぞれ例えば平板形状に形成されている。
【0027】
一方、バルブ7に設けられたシリンダ空間72は、プランジャロッド8の駆動部81とはまり合う有底円筒穴形状に形成されている。
また、バルブ7には、シリンダ空間72の開口端部に、上述したプランジャロッド8の駆動突部84、85とそれぞれ係合する二つの係合溝部73、74が設けられている。
【0028】
そして、図1に示すように、プランジャロッド8の駆動部81をバルブ7のシリンダ空間72に挿入し、それぞれの駆動部81をシリンジ6の係合溝部に係合させた状態で、プランジャロッド8が回転軸O方向に移動できるように、バルブ7のシリンダ空間72の深さ、プランジャロッド8の駆動部81の長さ、駆動突部84、85の長さ及び位置が定められている。
【0029】
その一方で、バルブ7のシリンダ空間72の開口端部7b上にはシリンジ6の上側端部6aの内側壁にまで延びる、例えば樹脂からなるカラー部材75が取り付けられ、このカラー部材75の下面がプランジャロッド8の駆動突部84、85の上端部と当接することにより、プランジャロッド8の本体部方向(図1では上方向)への移動を拘束するように構成されている。
【0030】
また、このカラー部材75は、その厚さを変えることにより、バルブ7に加える予圧を調整できるので、シリンジ6の内側底面6bとバルブ7の下側底面7aの間の摺動抵抗を調整する機能を有している。
なお、このカラー部材75上には、シリンジ6の上側端部6aの内側壁に当接するようにシール部材76が設けられ、このシール部材76がプランジャロッド8の本体部80の側面に密着してバルブ7のシリンダ空間72が気密になるように構成されている。
【0031】
そして、シール部材76の上端部には、例えば樹脂からなるカラー部材77が設けられ、このカラー部材77の上端部には、蓋部材78が設けられている。
ここで、この蓋部材78は、プランジャロッド8の本体部80の外周面とはまり合う平板状の基部78aと、この基部78aの下方に設けられた円筒状の接合部78bとから構成され、蓋部材78の接合部78bの端部内周面には雌ねじ部(図示せず)が形成されている。
【0032】
一方、上述した本体部2の上端部2aの外周面には、蓋部材78の接合部78b雌ねじ部とはまり合う雄ねじ部(図示せず)が形成され、この上端部2aの雄ねじ部と蓋部材78の接合部78bの雌ねじ部とがはまり合うことによって、蓋部材78が本体部2に対して締結されるように構成されている。
そして、このような構成により、蓋部材78を回転させることによって、バルブ7に加える予圧を調整し、シリンジ6の内側底面6bとバルブ7の下側底面7aの間の摺動抵抗を調整するようになっている。
【0033】
図3(a)(b)は、本実施の形態におけるシリンジの供給口及び排出口の位置関係を示す図、図4(a)(b)は、本実施の形態におけるバルブの供給口及び排出口の位置関係を示す図である。図5は、シリンジの供給口とバルブの供給口との位置関係並びにシリンジの供給口とバルブの供給口との位置関係を示す図である。
【0034】
図3(a)に示すように、まず、前提として、シリンジ排出口61は、直径がd1の真円形状に形成され、プランジャロッド8の回転軸Oを中心とする円で且つシリンジ排出口61に外接する円C1によって囲まれた第1の配置領域aに配置されているものとする。
一方、シリンジ供給口60は、供給される液体と排出される液体が混ざり合うことを回避するため、上記第1の配置領域aと重ならない領域、すなわち、第1の配置領域aの外側の領域に配置される。
図3(b)に示すように、シリンジ供給口60は、直径がD1の真円形状に形成され、プランジャロッド8の回転軸Oを中心とする同心円で且つシリンジ供給口60に内接する円C2と外接する円C3とによって囲まれた領域に配置される。
【0035】
ただし、供給される液体と排出される液体が混ざり合うことを回避するためには、シリンジ排出口61を配置すべき第2の配置領域Aは、プランジャロッド8の回転軸Oを通り、シリンジ供給口60に接する二つの直線L1、L2間の領域と重なる領域を除く必要がある。
【0036】
なお、シリンジ供給口60とシリンジ排出口61の直径は同一であっても異なっていてもよい。
一方、図4(a)に示すように、バルブ7の底部には、直径がd2の真円形状に形成されたバルブ供給口70と、例えばリングを切断したような長孔円弧形状に形成されたバルブ排出口71が設けられている。
【0037】
本実施の形態においては、バルブ供給口70は、シリンジ供給口60の面積より面積が大きくなるように構成されている。
ここで、このバルブ排出口71は、プランジャロッド8の回転軸Oを中心とする同心円で且つバルブ排出口71に内接する円C4と外接する円C5とによって囲まれた領域に配置される。
【0038】
ただし、供給される液体と排出される液体が混ざり合うことを回避するためには、バルブ排出口71を配置すべき第1の配置領域bは、図4(a)に示すように、プランジャロッド8の回転軸Oを通り、バルブ供給口70の両端部に接する二つの直線L3、L4間を起点として、バルブ供給口70側の領域においてこれと重なる領域を除く必要がある。
【0039】
本発明の場合、特に限定されることはないが、円滑な液体の供給を行う観点からは、バルブ排出口71は、シリンジ排出口61の直径と同一に設定することが好ましい。
そして、同様の観点から、図3(a)及び図4(a)に示す条件において、シリンジ6とバルブ7が重なった状態で、シリンジ6の第1の配置領域aと、バルブ7の第1の配置領域bとが重なるように、各円C1、C4、C5の大きさを設定する。
その結果、図1に示すように、これら連結されたシリンジ排出口61及びバルブ排出口71によってプランジャロッド8の回転軸O方向である鉛直方向に延びる液体排出流路が形成される。
【0040】
一方、本実施の形態のバルブ供給口70は、幅がD2に形成され、その長さは、当該リングの半分より若干長くなるように形成されている。
ここで、バルブ供給口70は、プランジャロッド8の回転軸Oを中心とする同心円で且つバルブ供給口70に内接する円C6と外接する円C7とによって囲まれた第2の配置領域Bに配置されるが、供給される液体と排出される液体が混ざり合うことを回避するためには、バルブ供給口70を配置すべき第2の配置領域Bは、図4(b)に示すように、プランジャロッド8の回転軸Oを通り、バルブ供給口70に接する二つの直線L5、L6間の領域と重なる領域を除く領域となる(バルブ供給口70の部分を含む)。
【0041】
本発明の場合、特に限定されることはないが、円滑な液体の排出を行う観点からは、シリンジ供給口60の直径D1とバルブ供給口70の幅D2は、同一に設定することが好ましい。
そして、同様の観点から、図3(b)及び図4(b)に示す条件において、シリンジ6とバルブ7が重なった状態で、シリンジ6の第2の配置領域Aと、バルブ7の第2の配置領域Bとが重なるように、各円C4、C5、C6、C7の大きさを設定する。
【0042】
その結果、図1に示すように、これら連結されたシリンジ供給口60及びバルブ排出口71によってプランジャロッド8の回転軸O方向である鉛直方向に延びる液体供給流路が形成される。
なお、図1は、本発明の理解を助けるために描いたもので、本発明では、後述するように、液体供給流路と液体排出流路は、いずれか一方のみが形成される。
【0043】
例えば、本実施の形態においては、図5に示すように、バルブ7の回転に伴い、シリンジ排出口61とバルブ排出口71とが重なった状態で、シリンジ供給口60が、バルブ供給口70と重ならないように構成されている。
図6(a)(b)〜図9(a)(b)は、本実施の形態の液体滴下装置の動作を示すものである。
【0044】
図6(a)(b)は初期状態を示すもので、この状態においては、バルブ供給口70及びシリンジ供給口60、バルブ排出口71及びシリンジ排出口61は、いずれも重なり合わないため、液体の供給及び排出は行われない。
この状態から、図7(a)(b)に示すように、プランジャロッド8を90度回転させると、バルブ供給口70とシリンジ供給口60が重なり合って開放され、バルブ排出口71とシリンジ排出口61が閉じた状態でプランジャロッド8が上方に後退動作をするため、この動作に伴う負圧によって、液体タンク3内の液体が、供給パイプ4、シリンジ供給口60及びバルブ供給口70を介してシリンダ空間72内に供給される。
【0045】
なお、この状態では、プランジャロッド8の駆動突部84、85の上端部がカラー部材75の下面と当接し、プランジャロッド8の本体部80方向(図1では上方向)への移動が拘束される。
次に、図8(a)(b)に示すように、プランジャロッド8を90度回転させると、バルブ供給口70とシリンジ供給口60が重なり合って開放されるとともに、バルブ排出口71とシリンジ排出口61が閉じた状態でプランジャロッド8が下方に進行動作をするため、この動作に伴う正圧によって、シリンジ6のシリンダ空間72内の液体のうち所定量の液体が、バルブ供給口70、シリンジ供給口60及び供給パイプ4を介して液体ポンプ内に戻される。
【0046】
その後、図9(a)(b)に示すように、プランジャロッド8を90度回転させると、バルブ排出口71とシリンジ排出口61が重なり合って開放され、バルブ供給口70とシリンジ供給口60が閉じた状態でプランジャロッド8が下方に進行動作をするため、この動作に伴う正圧によって、シリンダ空間72内の液体が、バルブ排出口71、シリンジ排出口61を介して移動し、ノズル5から滴下される(符号10によって液体を示す)。
【0047】
以上述べたように、本実施の形態にあっては、それぞれ排他的に重なり合う、シリンジ供給口60とバルブ供給口70によって形成される液体供給流路と、シリンジ排出口61とバルブ排出口71によって形成される液体排出流路とが、ともにプランジャロッド8の回転軸O方向へ延びるように構成されていることから、プランジャロッド8の回転動作における遠心力による滴下への影響がなく、精度よく液体を滴下することができる。
【0048】
また、本実施の形態においては、プランジャロッド8とバルブ7とが共に回転するように連結され、駆動源から動力が伝達される駆動部分を一体化することにより駆動時の誤差はプランジャロッド8の動作のみになるため、駆動部側の誤差は一つの駆動部のみの誤差に減らすことができ、さらに、駆動部分を一体化することにより装置の小型化が可能になる。
【0049】
さらには、例えばピストン部とバルブ部が別の駆動系を使用した場合(図示せず)には両者の動作の同期を取るのに手間がかかるのに対し、本実施の形態では、一体化にして駆動部分を一つにすることによりプランジャロッド8の動作に同期してバルブ7も駆動するため、液体の滴下・供給を行う際、毎回必ず同一部位にて行うことができ、これにより液体滴下の精度をより向上させることができる。
【0050】
さらにまた、本実施の形態によれば、プランジャロッド8の回転及び進退動作のみにより、液体供給流路を介してシリンダ空間72に自動的に液体が供給されるとともに、液体排出流路を介してシリンダ空間72から液体が自動的に排出されるため、構成が簡素な液体滴下装置を得ることができる。
【0051】
さらにまた、本実施の形態によれば、プランジャロッド8がバルブ7の底部に近づく方向に移動する際に、シリンジ供給口60及びバルブ供給口70が重なり合い、かつ、シリンジ排出口61及びバルブ排出口71が重なり合わない期間を有するように構成され、これにより液体供給流路を介して所定量の液体を液体タンク3側に戻すことができるため、液体の供給律束又は駆動源の歯車のバックラッシュ等によるプランジャロッド8の往復動作の切り換えの際における圧力の変動(上昇)を抑えて滴下・供給時の液体に与える圧力を一定にすることができ、液体滴下の精度をより向上させることができる。
【0052】
さらにまた、本実施の形態においては、バルブ供給口70が長孔円弧形状に形成され、かつ、シリンジ供給口60の面積より面積が大きいことから、バルブ供給口70をシリンダの供給口と接続する際において、液体の滴下・供給時における圧力変動を抑えることができ、液体滴下の精度をより向上させることができる。
【0053】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、液体供給流路と液体排出流路とがプランジャロッド8の回転軸O方向に延びるように構成したが、必ずしも回転軸Oと平行である必要はなく、多少の角度の傾きやカーブは許容されるものである。
【0054】
また、シリンジ供給口60の径とバルブ供給口70の幅、及びシリンジ排出口61及びバルブ排出口71の径は必ずしも同一である必要はなく、円滑な液体の供給及び滴下が確保できる限り、それぞれ異ならせることも可能である。
さらに、バルブ供給口70の円弧の長さについては、円滑な液体の供給、戻し及び滴下が確保できる限り、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…液体滴下装置、2…本体部、3…液体タンク、4…供給パイプ、5…ノズル、6…シリンジ(シリンダ)、6a…上側端部、6b…内側底面、7…バルブ(シリンダバルブ)、7a…外側底面、8…プランジャロッド(プランジャ)、10…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力が伝達される本体部と当該本体部と一体的に構成された駆動部とを有し、一定方向に回転し、かつ、当該回転の回転軸方向へ往復移動するプランジャと、
前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり液体源から液体が供給される供給口と、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記液体源から供給された液体を排出する排出口とが、平面状の内側底面を有する底部に設けられたシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、前記プランジャの駆動部とはまり合うシリンダ空間を有するとともに、前記プランジャと共に回転動作のみするように当該プランジャの駆動部に連結され、さらに、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記シリンダ空間内に液体を供給する供給口と、前記回転軸方向に延びる貫通孔からなり前記シリンダ空間から液体を排出する排出口とが、平面状の外側底面を有する底部に設けられたシリンダバルブとを備え、
前記プランジャの回転に伴い、前記シリンダの内側底面と前記シリンダバルブの外側底面とが摺動し、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口と、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口とが、排他的に重なり合うことによって、前記回転軸方向に延びる液体供給流路と前記回転軸方向に延びる液体排出流路がそれぞれ形成されるように構成されている液体滴下装置。
【請求項2】
前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部から離れる方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合わず、
前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合わず、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合うように構成されている請求項1記載の液体滴下装置。
【請求項3】
前記プランジャが前記シリンダバルブのシリンダ空間の底部に近づく方向に移動する際に、前記シリンダの供給口及び前記シリンダバルブの供給口が重なり合い、かつ、前記シリンダの排出口及び前記シリンダバルブの排出口が重なり合わない期間を有するように構成されている請求項2記載の液体滴下装置。
【請求項4】
前記シリンダバルブのシリンダ空間の開口端部上に、前記プランジャの本体部方向への移動を拘束するカラー部材が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体滴下装置。
【請求項5】
前記シリンダバルブの供給口が、長孔円弧形状に形成され、かつ、前記シリンダの供給口の面積より面積が大きい請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体滴下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−125760(P2011−125760A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283518(P2009−283518)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】