説明

液体物品に隠れている麻薬を検査する方法及び装置

【課題】本発明は、液体物品のパッケージを開けないままその液体物品に麻薬が隠れているかを判断することができる、液体物品に隠れている麻薬を検査する方法及び装置を開示している。
【解決手段】前記方法は、放射線ビームを発生して前記液体物品を透過させるステップと、前記液体物品を透過した放射線ビームを受け取って多角度投影データを形成するステップと、前記液体物品の均一性に基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得するステップと、前記液体物品の識別情報を索引として、予め作成したデータベースから参照属性値を検索し、計算した属性値と参照属性値との差分値を算出するステップと、前記差分値が所定の閾値より大きいかを判断するステップと、を含み、前記差分値が所定の閾値より大きい場合には、前記液体物品に麻薬が隠れていると認める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻薬検査に関し、特に、税関等のような場所において液体物品を検査する装置及び方法に関し、液体物品に対し単一エネルギーCT結像を行うことによって、液体物品にコカイン等のような麻薬が隠れているかを判断する。
【背景技術】
【0002】
コカイン等のような麻薬を液体に隠して検査を回避することは、各国の税関が共通に直面している難題である。現在、この問題に対して、主に、サンプル分析方法等のような侵入型検査方法と、微粒検出方法等のような非侵入型検査方法とを含む2種類の方法を採用して検査する。
【0003】
サンプル分析方法は、液体物品のパッケージを開けて、液体をサンプリングし分析することによって、この液体物品に麻薬が隠れているかを判断する。このような方法には、液体物品の原始パッケージを破壊するという克服できない欠点があるので、一般的な旅客に対する通常検査に適していない。
【0004】
微粒検出方法は、パッケージ品に残される可能性がある微量の麻薬の残りを検出して識別するが、液体物品のパッケージは開けないで済む。しかしながら、このような方法には、麻薬携帯者がパッケージ品に残される麻薬を効果的に減少させることができる(例えば、麻薬を封止容器に注射する)と、この方法は失効してしまうという局限性がある。
【0005】
そこで、液体物品のパッケージを破壊することなく、液体物品に麻薬が隠れているかを判断することができる技術を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に存在している欠陥を克服するために、液体物品のパッケージを破壊せずに高速に検査して、被検液体物品に麻薬が隠れているか否かとの結論を取得することができる、単一エネルギー放射線で液体物品に隠れている麻薬を検査する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、液体物品に隠れている麻薬を検査する方法であって、放射線ビームを放射して前記液体物品を透過させるステップと、前記液体物品を透過した放射線ビームを受け取って多角度投影データを形成するステップと、前記液体物品の均一性に基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得するステップと、前記液体物品の識別情報を索引として、予め作成したデータベースから参照属性値を検索し、算出した属性値と参照属性値との差分値を計算するステップと、前記差分値が所定の閾値より大きいかを判断するステップと、を含み、前記差分値が所定の閾値より大きい場合には、前記液体物品に麻薬が隠れていると認めることを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明の他の一側面によれば、液体物品に隠れている麻薬を検査する装置であって、放射線ビームを放射して前記液体物品を透過させる放射線源と、前記液体物品を透過した放射線ビームを受け取って多角度投影データを形成する検知・採取手段と、前記液体物品の均一性に基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得する手段と、前記液体物品の識別情報を索引として、予め作成したデータベースから参照属性値を検索し、算出した属性値と参照属性値との差分値を計算する手段とを含むコンピュータデータプロセッサーと、前記差分値が所定の閾値より大きいかを判断する手段と、を含み、前記差分値が所定の閾値より大きい場合には、前記液体物品に麻薬が隠れていると認めることを特徴とする装置を提供する。
【0009】
本発明にかかる上記システム及び方法によれば、被検液体物品(例えば、酒等)に麻薬(例えば、コカイン等)のような不正な物質が隠れているかを判断することができる。また、ユーザは、具体的な応用に応じて液体物品の種類をデータベースに追加することができるので、便利に使用することができる。
【0010】
以下に添付図面を結合した詳細な説明によって、本発明の上記特徴及びメリットがより明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図面において、異なる図面に記載されている同一の符号は、同様又は近似の部材を表している。明瞭及び簡明にするために、ここに含まれる既知の機能及び構造に対する詳しい記述を省略するが、そうでなければ、これらによって本発明の主題が不明瞭になってしまう。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による検査装置の構成の概略図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による検査装置は、検査用放射線を発する、X線機器又はアイソトープソース(X線又はγ線ソース)等のような放射線源10と、被検液体物品20を載置してZ軸の周りを回動し、升降することができ、被検液体物品20を検出領域に進入させることによって、放射線源10から発せられた放射線を被検液体物品20を透過させることができる載置機構30と、一体化構造を有する検知器及びデータ採取器であって、被検液体物品20を透過した放射線を検知し、アナログ信号を取得してデジタル信号に変換することによって、被検液体物品20の走査データを出力する検知・採取手段40と、全システムの各部が同期動作するように制御する走査制御器50と、データ採取器により採取されたデータを処理して、検査結果を出力するコンピュータデータプロセッサー60とを備える。
【0014】
図1に示すように、放射線源10は、被検液体物品20が放置可能な載置機構30の一方側に位置する。検知・採取手段40は、載置機構30の他の一方側に位置し、被検液体物品20の環境初期情報と多角度投影データとを取得するための検知器及びデータ採取器を含む。データ採取器には、データ増幅成形回路が含まれ、(電流)積分モード又はパルス(計数)モードで動作し得る。検知・採取手段40のデータ出力ケーブルは、コンピュータデータプロセッサー60と接続され、採取されたデータをコンピュータデータプロセッサー60に格納する。
【0015】
また、検査装置は、金属からなる筒状体通路(図示せず)を含んでおり、この筒状物通路は載置機構30に設置され、X線の外部への放射を遮断することができる。被検液体物品は、被検体通路に放置される。
【0016】
図2は、図1に示すようなコンピュータデータプロセッサー60の構成ブロック図を示す。図2に示すように、データ採取器により採取されたデータはメモリ61に格納されている。ROM(Read Only Memory)62にはコンピュータデータプロセッサーの配置情報及びプログラムが格納されている。RAM(Random Access Memory)63は、プロセッサー66の動作過程における各種のデータを一旦格納するためのものである。また、メモリ61には、データ処理を行うためのコンピュータプログラム及び予め作成したデータベースも格納されており、このデータベースには、各種の既知の液体物品に関する情報、例えば液体の名称、種類及び物理属性等のような情報が格納されており、プロセッサー66が算出した被検液体物品20における液体のCT値等のような属性値と比較するためのものである。内部バス64には、前記メモリ61と、ROM62と、RAM63と、入力手段65と、プロセッサー66と、表示手段67とが接続されている。
【0017】
ユーザがキーボード又はマウス等のような入力手段65を介して操作コマンドを入力した後、当該コンピュータプログラムにおける命令コードは、プロセッサー66が所定のデータ処理アルゴリズムを実行するように指示し、データ処理結果を取得した後、LCDディスプレイ等のような表示手段67に表示させたり、ハードコピーの形態で直接に出力させたりする。
【0018】
通常、液体の物理属性は、麻薬を隠した後に変化する。そこで、被検液体物品のある物理属性と、標準液体物品の物理属性との差異を判断することによって、被検液体物品に麻薬が隠れているかを判断することができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、まず、被検液体物品の平均減衰係数を計算し、水に対する相対減衰係数を示すCT値に換算し、実際に測定したCT値を予め作成したデータベース中の該当する類別の液体のCTと比較し、両者の間の差分値がある所定の閾値より大きいであると、この液体物品に麻薬が隠れている可能性があると認める。
【0020】
本発明の実施形態によれば、まず画像中のすべての液体画素の平均線減衰係数を統計し、下記の式によって水減衰係数に対するCT値に変換する。
【0021】
【数1】

ただし、μは水の線減衰係数であり、μは被走査物の実測線減衰係数である。上記の(1)式は、すべての液体物品の減衰係数を水に対する値に変換することができる。なお、水の相対減衰係数が0であることが分かる。
【0022】
他の一つの選択として、算出した平均線減衰係数を直接使用して類似な操作を行っても良い。例えば、算出した平均線減衰係数と参照値との差分値を求め、差分値を他の所定の閾値と比較して、液体物品に麻薬が隠れているかを判断する。
【0023】
図3は、本発明の一実施例による検査方法のフローチャートを示している。
【0024】
図3に示すように、ステップS10において、操作員は、当該液体物品に関する識別情報を液体物品の携帯者又は液体物品の外部パッケージから取得する。例えば、この液体物品は、一本の40度のラム酒であるとする。ここで、操作員は、バイカル−−>ラム酒−−>40度とのように、この物品の先験情報を入力することができる。そして、被検液体物品20を載置機構30に放置する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、操作員が走査開始命令を発すると、走査制御器50は、放射線を発するように放射線源10を制御し、X線源10及び検知器から構成された検出空間である検出領域に進入するように載置手段30の上昇又は下降を制御する。この時、放射線源10からの放射線ビームは、被検液体物品20を透過する。走査制御器50は、被検液体物品を透過した放射線を受け取るように検知・採取手段40を制御して、被検液体物品の環境初期情報(例えば、ベース情報や幾何学境界情報)を取得する。この幾何学境界情報は、X線写真技術又はX線走査結像技術により取得される。X線走査結像技術は、平行移動方式、回転方式又は螺旋方式を採用してもよい。
【0026】
さらに、前記の処理過程において、取得された被検液体物品20の環境初期情報は、パッケージのサイズと、パッケージの材質と、被検液体物品のパッケージに対する体積比等とをさらに含む。ニューラルネットワーク識別アルゴリズムにより各種の液体物品の上記の情報と、減衰係数値又は相対減衰係数値とを予めソートして、データベースを作成すればよい。実際の検査過程において、実際に測定した各分類特徴とデータベースにおける分類特徴との差異を算出し、当該差異を所定の閾値と比較して、被検液体物品20に対する検査を実現する。
【0027】
そして、ステップS21において、載置手段30を走査制御器50の制御により回転させ、第1の角度に到達すると、放射線源10から放射線を発して、被検液体物品20を透過させる。検知・採取手段40は透過した放射線を受け取り、第1の角度の投影データを取得して、1×N次元のベクトルgとして示し、コンピュータデータプロセッサー60中のメモリ61に格納する。ただし、Nは検知器における一行の検知器ユニットの数を示す。
【0028】
載置手段30を走査制御器50の制御により続けて回転させ、第2の角度に到達すると、放射線源10から放射線を発して、被検液体物品20を透過させる。検知・採取手段40は、透過した放射線を受け取り、第2の角度投影データを取得して、1×N次元のベクトルgとして示し、コンピュータデータプロセッサー60のメモリ61に格納する。
【0029】
このように、前記の手順を繰り返し、載置手段30を走査制御器50の制御により回転させ、第Mの角度に到達すると、第Mの角度の投影データを取得して、1×N次元のベクトルgMとして示し、コンピュータデータプロセッサー60のメモリ61に格納する。前記の走査過程を介して、被検液体物品20の多角度投影データを取得し、M×N次元のベクトルgとして示す。したがって、一つの断層内において被検液体物品20の多角度投影データgを連続に取得することができる。
【0030】
ここで、多角度投影データを増加させるために、走査中に角度投影数を増加してもよいし、または検知器を構成する検知器ユニットのサイズの1/4のオフセットで検知器を装着してもよい。
【0031】
走査される被検液体物品20の線減衰係数をI次元ベクトルfとする。ただし、Iは走査される液体物品の離散化画素の次元数を示す。X線と物質との相互作用に基づき、ビルの法則に応じて、式(2)がなされる。
【0032】
g = exp(-Hf)
g = exp(-Hf)
… …
gM = exp (-HMf) ――――(2)
ただし、H1、…、HMは、いずれもN×Iのシステムマトリックスであり、それらの各エレメントHnjは、物体画像における離散画素点jの、当該対応角度時のn番目の検知器により採取される信号に対する寄与係数である。H1、… 、HMのそれぞれは、スパースマトリックス(Sparse matrix)であり、走査システムの具体的な設計により決定されるが、事前計算によりメモリ61に格納されるか、又はシステムのパラメータに基づきリアルタイムに計算し決定してもよい。そして、式(2)に対して逆演算をすることで、走査される物体の線減衰係数の情報を取得し得る。
【0033】
逆演算は、ノーマル演算の逆過程である。ノーマル演算過程とは、放射線源から発せられた初期信号が被検液体物品20を経由する時に減衰され、減衰された放射線信号が検知器により受け取られるという演算過程である。従って、検知器により受け取られる信号から被検液体物品の放射線に対する減衰情報を計算する過程は、逆演算である。
【0034】
しかし、液体物品の検査過程において、逆演算は、悪条件 (ill-conditioned)問題であり、解の有効性及び安定性を向上させるために、例えば、上述のステップS10で取得した被検液体物品20の幾何学的境界情報のような他の情報を融合する必要がある。
【0035】
そして、ステップS10で取得した被検液体物品20の幾何学境界情報を含む初期環境情報に基づいて、逆演算を求めるための境界条件及び均一性条件を設定する。被検液体物品20の空間形状は、一つの有界関数として表することができ、前記のX線写真技術又はX線走査結像技術によって被検液体物品20の幾何学境界情報を決定することができる、これによって、物体の関数の有効作用領域Ωを限定する、すなわち、
【数2】

となる。境界条件の導入は、解を求める速度を向上させ、問題の悪条件性をある程度改善させる。次に、検査システムの目標物体が液体物品部分であるので、走査される物体は、液体物品領域Ωlと非液体物品領域Ωとの2つの部分に区分される。液体物品の均一性に応じて、fi = 平滑化関数(smooth function)、i ∈Ωlがある。この平滑化関数の特徴は、液体物品領域Ωl内における全体平方偏差に制限があり、液体物品領域Ωl内における部分的な波動に制限がある、ということである。液体物品の均一性の使用は、液体物品情報の抽出を大きく最適化し、システムのロバストネス(robustness)を向上させる。
【0036】
なお、均一性を有する液体物品とは、放射線に対する減衰が均一になる溶液、懸濁液又は乳濁液である。例えば、ミルク、粥等の液体物品も、前記意味で均一性を有する液体物品である。すなわち、液体物品の均一性とは、被検液体物品の放射線減衰に対する均一性に表現される。
【0037】
従って、コンピュータデータプロセッサー60は、被検液体物品20の幾何学境界サイズを境界条件とし、液体物品の均一性を収束条件として、前記の式(2)に従い被検液体物品20の放射線減衰係数を計算する。そして、Ω領域内における画素値の統計特性に基づいて、液体物品の有効放射線減衰係数を算出する。コンピュータデータプロセッサー60は、算出した放射線減衰係数を上記の式に従い水に対する相対減衰係数のCT値に変換する。
【0038】
そして、ステップS13において、コンピュータデータプロセッサー60は、ステップS10で入力した液体物品の識別情報、例えば40度のラム酒及び容器の形状を利用して、データベースを検索してかかる基準CT値を取得する。
【0039】
ステップS14において、算出したCT値をデータベースにおける既知の液体物品のCTと比較して、当該液体物品に麻薬が隠れているかを判断する。例えば、麻薬が隠れていない40度のラム酒の相対CT値が20であり、麻薬が隠れている40度のラム酒の相対減衰係数は22であり、且つ、閾値を2に設定すると、22−20>=2であるので、この液体物品に麻薬が隠れていると認める。そして、表示手段67は警報又は検査結果を直接印刷出力する。
【0040】
前記のステップS12においては、ベイズ方法(Bayesian method)を採用して幾何学境界情報及び均一性を条件として被検液体物品20の放射線減衰係数を計算してもよいが、非統計方法を採用して、まず前記の式(2)の解を求めて、予備的な放射線減衰係数を取得した後、境界条件及び均一性を利用して最適化処理を行い、その後、fi, i ∈Ωlの分布に基づいて被検液体物品20の線減衰係数を評価して、計算の有効性と安定性を向上させるようにしてもよい。以下、例示の形態を介して、ベイズ方法と非統計方法により放射線減衰係数を計算する過程を説明する。
【0041】
[ベイズ方法による液体物品の放射線減衰係数の計算例]
1.目標関数の決定:
【数3】

ただし、Φl(g;f)は尤度関数であり、採取したデータのノイズ特性により決定され、P(f) はfi⊂Ωlに対する均一性のメトリックであり、例えば、P(f)=−variance(f)|f∈Ωl、λは経験により予め設置している調節パラメータである;
2. 数値最適化方法を利用して
【数4】

3. f⊂Ωlの確率分布であるp(μ液体) を統計し、走査される液体物品の線形減衰係数、例えば、μ液体=mean(f)|f∈Ωl又はμ液体=arg max(p(f))|f∈Ωlを取得し得る。
【0042】
[非統計方法による液体物品の線減衰係数の計算例]
1.解析方法、例えばフィルタ・バック・プロジェクション再作成方法又はART方法を利用して、放射線減衰係数fに対する予備的な評価(preliminary estimate)を取得する;
2.fi⊂Ωlの均一性の計算
a)予め設定されている均一性要求を満たす、例えば、部分的な平方偏差がある閾値よりも小さいと、f⊂Ωlとの統計特性、例えばμ液体=mean(f)|f∈Ωlに基づいて、液体物品の減衰係数を取得する;
b)均一性要求を満たさないと、放射線減衰係数fに対し境界条件処理と平滑化処理とを行い、f’を取得する。計算処理後、f’の正投影を採取されたデータgと比較し、両者の差異を再解析してfを再確立して修正し、ステップ2に戻る。
【0043】
非統計方法を実現する過程において、異なる均一性要求を設定することによって演算速度と精度を調節する。極端的な場合には、液体物品の減衰係数を逐次代入することなく、一つのステップだけで取得することができる。
【0044】
非統計方法の場合、幾何学境界情報を必要とせずに、液体物品の放射線減衰係数を計算することができるので、再作成した減衰画像から容器関連情報を計算することができ、X線写真技術により液体物品の幾何学境界情報を取得しないで済む。ここで、容器関連情報は、容器の線減衰係数、容器の半径、容器の壁厚、容器の形状を含む。容器の線減衰係数として、CT図におけるすべての容器画素の平均線減衰係数を統計する。容器画素ごとの位置座標を記録した後、容器の位置座標に基づき容器の平均壁厚と容器壁点から容器の中心までの距離を計算して取得し、容器の半径として容器壁点から容器の中心までの距離の平均値を計算し、容器形状の表面特征として容器壁点から容器の中心までの距離の平方偏差を計算する。これは、容器が標準円であると、平方偏差が0となり、異形容器であると平方偏差が非常に大きくなり、平方偏差の大きさが容器形状の標準円からずれた程度を表現するからである。
【0045】
本実施例において、走査は被検液体物品20が回転される方式によって実現される。このような走査方式を採用すると、装置の体積を減少し、装置のコストを低下させる。しかしながら、被検液体物品20が静止し、放射線源10と検知・採取手段40とが回転される走査方式を採用してもよい。
【0046】
さらに、放射線源10は、一つ又は複数のX線機器と、一つまたは複数のアイソトープソースとを含んでもよく、X線機器の放射線のエネルギーは調節できるものである。放射線源10に複数のX線機器又は複数のアイソトープソースを含む場合には、検知器の数はX線機器の数又はアイソトープソースの数と同じであってもよく、この複数の検知器は放射線源に対応付けられて設置される。ここで、検知器は気体検知器、液体検知器、固体検知器又は半導体検知器であってもよく、エネルギー選択機能を有する。さらに、検知器は、その使用方式が1次元アレイ又は2次元アレイである、即ち、ラインアレイ検知器又はエリアアレイ検知器であってもよい。
【0047】
本発明の実施形態によれば、ユーザは需要に応じてデータベースを拡張することができ、例えば、データベースに対し新規の液体物品の属性情報を追加する必要がある場合である。図4は、ユーザがデータベースを拡張する手順を詳細に説明するフローチャートである。
【0048】
ステップ20において、操作員がシステムに電源を投入すると、システムは自己検査をしてから待機状態になった後、データベース設定画面に登録する。操作員は、データベースに追加したい液体サンプルの識別子(メイングラス、サブグラス及び注釈情報)を入力する。例えば、メイングラスはラム酒であり、サブグラスは40度であり、注釈情報は製造地がブラジルであるとする。
【0049】
ステップS21において、操作員が液体サンプルを回転ステージ30上にセットし、走査ボタンを押すと、システムは、上記のようなCT走査を行い、それぞれの角度における投影値を取得する。
【0050】
ステップS22において、コンピュータデータプロセッサー60は、上記の方法に従い、CT画像の再作成を実行して、CT画像から液体物品のCT値及び容器関連情報を取得する。
【0051】
ステップS23において、液体識別子を参照CT値及び容器関連情報と関連付けて、データベースに保存する。
【0052】
他のサンプルをさらに拡張したい場合、操作員は、他のサンプルに対し上記と同様な操作手順を行う。そうでなければ、操作員はデータベースの設定画面からログアウトして、本回の拡張フローを終了する。
【0053】
以上、コンピュータデータプロセッサー60が所定のデータ処理アルゴリズムを含むコンピュータプログラムを実行させる、という実施形態を介して、放射線減衰係数の計算過程と被検液体物品20のCT値の取得過程とを説明したが、コンピュータデータプロセッサー60は他の形態で実現されてもよい。図5は、図1に示すような検査装置におけるコンピュータデータプロセッサー60の機能ブロック図を示す。
【0054】
図5に示すように、コンピュータデータプロセッサーの他の例として、このコンピュータデータプロセッサー60’は、環境初期情報と多角度投影データ及び他のデータ(例えばシステム特性を説明するシステムマトリックスH,……HM)を格納するデータメモリ71と、検査過程中の検索及び比較のために用いられる各種の液体物品のCT値、容器関連情報を格納しているデータベース74と、データメモリ71に格納されている環境初期情報、例えば被検液体物品の幾何学境界情報と多角度投影データとに基づいて、前記の式(2)に従って、液体物品の均一性を条件として、被検液体物品20の放射線減衰係数を計算してCT値に変換するCT値計算ユニット72と、CT値計算ユニット72により算出された被検液体物品20のCT値をデータベースに予め格納されている該当する液体物品の参照CT値と比較し、両者の間の差異が所定の閾値より大きい場合は、当該被検液体物品20に麻薬が隠れている可能性があると判定する判断ユニット73と、判断ユニット73により取得された判断結果を直接に操作員へ表示させる出力ユニット75(例えば、ディスプレイ又は他の出力装置)と、を備える。
【0055】
以上は、本発明の実施形態を具現するためのものであり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で行う種々の修正又は部分置換も本発明の請求保護範囲により限定される範囲に含まれるものであることは、当業者であれば理解できることであり、したがって、本発明の保護範囲は特許請求の保護範囲を基準とすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による検査装置の構成の概略図である。
【図2】図2は、図1に示すような検査装置におけるコンピュータデータプロセッサーの構成図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、液体物品に麻薬が隠れているかを検査するフローを詳細に説明するフローチャートである。
【図4】図4は、ユーザがデータベースを拡張する手順を詳細に説明するフローチャートである。
【図5】図5は、図1に示すような検査装置におけるコンピュータデータプロセッサーの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
10 放射線源
20 被検液体物品
30 載置機構
40 検知・採取手段
50 操作制御器
60 コンピュータデータプロセッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体物品に隠れている麻薬を検査する方法であって、
放射線ビームを放射して前記液体物品を透過させるステップと、
前記液体物品を透過した放射線ビームを受け取って多角度投影データを形成するステップと、
前記液体物品の均一性に基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得するステップと、
前記液体物品の識別情報を索引として、予め作成したデータベースから参照属性値を検索し、算出した属性値と参照属性値との差分値を計算するステップと、
前記差分値が所定の閾値より大きいかを判断するステップと、を含み、
前記差分値が所定の閾値より大きい場合には、前記液体物品に麻薬が隠れていると認めることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記属性値が線減衰係数であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記属性値が相対線減衰係数であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相対線減衰係数が、下記の数式に従って計算されることを特徴とする請求項3に記載の方法:
【数1】

ここで、μは水の線減衰係数であり、μは算出した線減衰係数である。
【請求項5】
前記識別情報が、被検液体物品の名称、種類、容器関連情報及び製造地の中の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被検液体物品の各位置での線減衰係数によって被検物品の画像を形成するステップと、
前記画像に基づいて、前記容器関連情報を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記データベースが拡張可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
環境初期情報を取得するステップをさらに含み、
前記環境初期情報と前記液体物品の均一性とに基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記環境初期情報が液体物品の幾何学境界情報を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法
【請求項10】
前記幾何学境界情報は、放射線写真技術又は走査結像技術により取得されるものであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液体物品に隠れている麻薬を検査する装置であって、
放射線ビームを放射して前記液体物品を透過させる放射線源と、
前記液体物品を透過した放射線ビームを受け取って多角度投影データを形成する検知・採取手段と、
前記液体物品の均一性に基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得する手段と、前記液体物品の識別情報を索引として、予め作成したデータベースから参照属性値を検索し、算出した属性値と参照属性値との差分値を計算する手段とを含むコンピュータデータプロセッサーと、
前記差分値が所定の閾値より大きいかを判断する手段と、を含み、
前記差分値が所定の閾値より大きい場合には、前記液体物品に麻薬が隠れていると認めることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記属性値が線減衰係数であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記属性値が相対線減衰係数であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記相対線減衰係数が、下記の数式に従って計算されることを特徴とする請求項13に記載の装置:
【数2】

ここで、μは水の線減衰係数であり、μは算出した線減衰係数である。
【請求項15】
前記識別情報が、被検液体物品の名称、種類、容器関連情報及び製造地の中の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記コンピュータプロセッサーが、
前記被検液体物品の各位置での線減衰係数によって被検物品の画像を形成する手段と、
前記画像に基づいて、前記容器関連情報を計算する手段と、をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記データベースが拡張可能であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記検知・採取手段がさらに環境初期情報を取得し、前記環境初期情報と前記液体物品の均一性とに基づき、前記多角度投影データに対して逆演算を行うことにより、被検液体物品の属性値を計算して取得することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記環境初期情報は、液体物品の幾何学境界情報を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記幾何学境界情報は、放射線写真技術又は走査結像技術により取得されるものであることを特徴とする請求項19に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−14705(P2009−14705A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87802(P2008−87802)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(506388336)同方威視技術股▲フン▼有限公司 (7)
【Fターム(参考)】