説明

液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置

【課題】液体材料貯留部と吐出装置を物理的に接続する必要がなく、パーティクルの発生および混入を効果的に防止することができる液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置の提供。
【解決手段】液体材料を貯留する液体貯留部と、液体貯留部に貯留された液体材料を供給する供給口を有する供給部と、供給部から排出される液体材料を受ける受給口および気泡除去機構を有する受給部と、受給部を移動させる受給部駆動装置とを備え、受給部が受給口が供給口の直下に位置する受給位置に移動して供給口から液体材料の滴下供給を受け、気泡除去機構により気泡が除去された液体材料を吐出装置に供給することを特徴とする液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体中に気泡やパーティクルが混入することを防止することができる液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイを製造する工程の中に、二枚の対向する基板を貼り合わせてその間に液晶層を形成するパネル工程(セル工程ともいう)がある。特に、大型のパネルを製造するに際して、貼り合わせる前の一方の基板に液晶を滴下してから貼り合わせる滴下注入法が行われている。
滴下注入法では、液晶を基板に滴下するのに、液晶を貯留する容器を有し、この容器に設けられたノズルから気体圧力または機械的圧力の作用により所定量ずつ吐出を行うディスペンサという装置が用いられている。
【0003】
近年、液晶ディスプレイが大型化するのに伴い、その元となる基板も大型化している。基板が大型化すると、液晶の使用量も増加するため、従来からディスペンサで用いられているような小さな貯留容器(シリンジ)では対応が難しくなってきている。なぜならば、小さな貯留容器ではすぐに液晶が無くなってしまい、容器等の交換が頻繁になるために、生産性、作業性の面で効率が低下してしまうためである。また、貯留容器を交換する際には、気泡や異物(以下、パーティクルという)が混入するおそれもある。
これに対し、装置外に大型のタンクを設置し、そこから液体材料を供給することで、これらの問題を解決しようとする試みが種々なされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、装置本体と、ワークを載置可能な載置部と、ワークに対して液滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッドを有するヘッドユニットと、ヘッドユニットを支持するヘッドユニット支持体と、ワーク載置部とヘッドユニット支持体とを相対的に移動させる移動機構と、各液滴吐出ヘッドから吐出する吐出液を貯留し、交換および/または吐出液の補充が可能な少なくとも1つの一次タンクを有する一次タンク系と、ヘッドユニット支持体に対し固定的に設置され、一次タンクから吐出液が流入する二次タンクと、一次タンク系と二次タンクとを接続し、一次タンク系から二次タンクに吐出液を供給する一次流路と、二次タンクとヘッドユニットとを接続し、二次タンクから各液滴吐出ヘッドにそれぞれ吐出液を供給する複数本の二次流路とを備え、一次流路の本数が二次流路の本数より少ないことを特徴とする液滴吐出装置、が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、基板が位置されるステージと、基板に液晶を滴下または塗布できるようにシリンジ及びノズルが備えられたディスペンサーヘッドと、ステージの周辺に備わってディスペンサーヘッドを支持するヘッド支持部材と、ディスペンサーヘッドのシリンジに基板に滴下または塗布する液晶を供給する供給ラインと、ディスペンサーヘッドのシリンジに連結される需給ラインと、供給ラインと需給ラインとの接続部で何れか一方側に備わって、それらラインが互いに連結または分離される時に異質物が流入することを防止する異質物防止キャップと、を含んで、ヘッド支持部材及びディスペンサーヘッドがステージの上部から離れて供給ラインが位置する側に移動することによって、需給ラインが供給ラインに連結されて液晶供給器からシリンジに液晶を充填できるように構成されたことを特徴とする液晶滴下装置、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−167430号公報
【特許文献2】特開2009−172585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、文献1の装置では、液体供給流路(チューブ)がタンクからヘッドまでつながっているので、液体中に気泡やパーティクルは混入しにくい反面、ヘッドが相対移動する際にチューブも一緒に動くので、移動範囲を見越してチューブを長くし、余裕を持たせて配設してやらなければならなかった。また、ヘッドが相対移動する際にチューブも一緒に動くことは、チューブの劣化が早まる原因にもなっていた。
【0008】
また、文献2の装置では、配管の途中で分離・連結できるように構成されているので、液体供給流路(チューブ)に関する上記の問題がない反面、連結部で接触する機構となっているために、この部分で擦れてパーティクル発生の原因となるという課題があった。加えて、異質物防止キャップを構成しているヒンジやカムなどの部品自体が動作部分で擦れることもパーティクル発生の原因となっていた。
さらに、文献2の装置では、連結部において、液体を上から直接シリンジに注入する機構となっているので、上から注がれる液体が下にたまっている液体の液面を叩き、このとき気泡が混入してしまうという課題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決する液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、液体材料貯留部と吐出装置を一時的または常時物理的に接続することよる弊害を解消すべく、液体材料貯留部と吐出装置を常時分離させる構成を採用した。さらに、液体材料貯留部と吐出装置を常時分離させることにより生じる気泡の弊害を解消する気泡除去機構を設けることにより、吐出装置へ気泡が流入することがない液体自動供給機構およびこれを備える塗布装置を提供することを可能とした。
【0011】
すなわち、第1の発明は、液体材料を貯留する液体貯留部と、液体貯留部に貯留された液体材料を供給する供給口を有する供給部と、供給部から排出される液体材料を受ける受給口および気泡除去機構を有する受給部と、受給部を移動させる受給部駆動装置とを備え、受給部が受給口が供給口の直下に位置する受給位置に移動して供給口から液体材料の滴下供給を受け、気泡除去機構により気泡が除去された液体材料を吐出装置に供給することを特徴とする液体自動供給機構に関する。
第2の発明は、第1の発明において、気泡除去機構が、液体材料を貯留する気泡除去用容器と、一端が気泡除去用容器に貯留された液体内に浸漬され、他端が受給口と連通される流入管と、一端が気泡除去用容器に貯留された液体内に浸漬され、他端が吐出装置と連通される流出管とを備えてなることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、気泡除去機構が、気泡除去用容器を減圧するポンプ装置と、一端がポンプ装置に接続され、他端が気泡除去用容器内の空間に配置される作動気体供給管とを備えてなることを特徴とする。
第4の発明は、第2または3の発明において、液体貯留部および/または気泡除去用容器内の液体材料の量を検知する検知装置を備えることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、受給口が、拡径された開口を有し、一定量の液体材料を一時的に貯留できる形状であることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、供給口の直下である第1の位置と、第1の位置と異なる第2の位置を進退動する液体材料受け部材を備えることを特徴とする。
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、液体貯留部から供給部への液体材料の供給量を制御するピンチバルブおよび/または受給部から吐出装置への液体材料の供給量を制御するピンチバルブを備えることを特徴とする。
【0012】
第8の発明は、ワークを保持するテーブルが配設された架台と、液体材料を吐出するノズルを有する吐出装置と、吐出装置とテーブルとを相対移動させる駆動装置と、第1ないし7のいずれかの発明に係る液体自動供給機構とを備える塗布装置に関する。
第9の発明は、第8の発明において、複数の吐出装置が配設されるビームと、各吐出装置をビームの延設方向に沿って移動自在とする吐出部駆動装置とを備え、前記受給部が、吐出装置と同数設けられることを特徴とする。
第10の発明は、第9の発明において、前記供給部が、複数配設されることを特徴とする。
第11の発明は、第8ないし10のいずれかの発明において、テーブルおよび吐出装置を覆うカバーを備えることを特徴とする。
第12の発明は、第11の発明において、前記液体貯留部が、前記カバーの外側に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体材料貯留部と吐出装置を物理的に接続する必要がなく、吐出装置の移動に伴い形状可変となる液体供給流路(チューブ)が配設されないので、液体供給流路を配設する際のスペースの問題や液体供給流路の劣化の問題を解消することができる。
また、液体材料貯留部側と吐出装置側とを接触させることなく液体材料を供給するので、パーティクルの発生および混入を効果的に防止することができる。
さらに、気泡除去機構を設けているので、吐出装置へ気泡が流入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る液体自動供給機構を説明する模式図である。
【図2】実施例に係る液体自動供給機構を備える塗布装置の概略斜視図である。
【図3】実施例に係る液体自動供給機構の主要部分を拡大した拡大図である。
【図4】実施例に係る気泡除去機構の他の態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための一形態を説明する。
図1に本発明に係る液体自動供給機構を説明する模式図を示す。同図中、黒塗りの矢印は液体の流れ、白抜きの矢印は気体の流れを表す。
【0016】
液体自動供給機構1は、液体材料26を貯留する容量の大きいタンク(液体材料貯留部)4と、タンク4から送出される液体材料26を排出する供給口12を備える供給部2と、吐出装置24上部に吐出装置24と一体に設けられ、供給部2から排出される液体材料26を受ける受給部3と、受給部3を移動させる受給部駆動装置とを主要な構成要素とする。これらのうち、タンク4から供給部2までは配管8Aでつながれ、受給部3から吐出装置24までは配管8B、8Cでつながれている。供給部2と受給部3との間は、シャッター15が自由に通過できる程度に離間している。また、タンク4と供給部2との途中の配管8Aには供給部2への流れを制御するバルブA9が供給部2近くに設けられ、タンク4にはタンク4内の液体材料26の残量を検知するための検知装置7が設けられる。検知装置7を設けることで、液体材料26が所定量を下回ったときに検知装置7からの信号に基づき警報を発することができる。ここで、検知装置7としては、例えば、重さで検知を行うロードセルなどを用いることができる。これ以外にも、超音波で液面を検知する超音波センサ、光量の違いで液体の有無を検知する光センサなどを用いることもできる。
【0017】
供給部2には、タンク4から送られてきた液体材料26を排出する供給口12を備えた供給管13が設置されている。供給管13は、排出側端で下向きに曲げられ、受給部3へと液体材料26を垂らして供給(滴下供給)する。供給部2と受給部3は配管でつながれておらず、供給部2が下降したり、受給部3が上昇したりすることもない。すなわち、供給口12を受給口16を接続することなく、離れた位置から非接触状態で液体材料を供給することで、パーティクルの発生自体を防止し、パーティクルが液体材料26に混入することを防いでいる。また、供給管13下方には、供給口12から余分な液体材料26が垂れてきたときにこれを受けるためのシャッター15を備えている。シャッター15は上面が開口した貯留用凹部を有しており、水平方向にスライド動作をして、供給時以外は供給口12の真下に位置するようになっている。また、シャッター15は供給口12および受給口16には接触しないようになっている。これも前述と同様、パーティクルを発生させないためである。
【0018】
受給部3は、供給部2から供給される液体材料26を受ける受給口16を有する漏斗17、供給された液体材料26を一時的に溜め込み、気泡除去を行う気泡除去用ボトル18、液体の流れを制御するバルブB10およびバルブC11が配設され、それぞれ配管8でつながれている。バルブA〜Cには、メンテナンス性を考慮に入れて、配管を挟み込むことにより配管を弾性変形させて流路の開閉を行うピンチバルブを用いるのが好ましい。ピンチバルブは、バルブ自体が液体に触れないので、配管の交換などを行うときは作業が容易になる。また、バルブ動作で発生することがあるパーティクルが混入することもない。ここでは、バルブB10がボトル18への流入、バルブC11がボトル18からの流出を制御する。漏斗17からボトル18への液体材料26の流入は流入管19を経て行い、ボトル18から吐出装置24への液体材料26の送出は流出管20を経て行われる。また、漏斗17をボトル18より高い位置に配設しているので、液体材料26は圧力等の助けを借りずとも自然に流下し、タンク4よりも容量の小さいボトル(気泡除去用容器)18に溜め込むことができる。
【0019】
気泡除去用のボトル18は、作動気体供給管21に接続された加減圧ポンプ(図示せず)とともに気泡除去機構41を構成する。加減圧ポンプは、ボトル18から吐出装置24へと液体材料26を送出する際に作用する圧縮気体、およびボトル18内の液体材料26の気泡を除去する際に作用する真空を供給する。加減圧ポンプは、テーブル上にワークを吸着するための真空源として併用することも可能である。また、吐出装置側の吸引手段(例えば、プランジャ)によりボトル18内の液体材料を吸引することができる場合には、加減圧ポンプに代えて減圧ポンプを用いてもよい。ボトル18は、ガラスや硬質の樹脂等の透明な材質により作製されており、内部に満たされた液材材料の液面位置の確認や気泡混入状況を確認することができる。また、ボトル18の外側面近傍には、ボトル18内の液面を検知するセンサが上限位置(符号22)および下限位置(符号23)に設けられている。ここで、センサとしては、光量の違いで液体の有無を検知する光センサなどを用いることができる。後述するように、ボトル18に接続されている各種の管の関係上、液面の位置が正確に捉えられるものであることが好ましい。
【0020】
受給部3は、受給部駆動装置により水平方向に移動することができ、供給口12の直下に受給口16の中央が位置する供給位置をとることができる。受給部3の下方には、吐出装置24が配設され、受給部3と配管8Cでつながれている。吐出装置24は、受給部3にて気泡が除去された液体材料26を供給され、ノズル38より液体材料26の吐出を行う。
【0021】
続いて、上述までの液体自動供給機構1がどのように動作するのかについて説明する。
まず、タンク4に液体材料26を充填し、圧縮気体供給管5および液体送出管6を接続する(STEP1)。タンク4へ液体材料26を直接充填するのではなく、液体材料26を充填済みのタンク4を設置することでもよい。ついで、タンク4に圧縮気体を供給して加圧する(STEP2)。このとき、バルブA9は閉じておく。そして、受給部3および吐出装置24を供給部2の下の供給位置へ移動させる(STEP3)。移動後、シャッター15を後退させ、バルブA9を開く(STEP4)。すると、供給口12から液体材料26が排出され、受給部3の受給口16を経て漏斗17へ注がれる(STEP5)。このとき、バルブB10およびバルブC11は開いておく。その後、液体材料26はバルブB10を通り、流入管19からボトル18へ流入する(STEP6)。ここで、前述のように、液体材料26は自然に流下するが、バルブC11を閉じておき、ボトル18内を真空引きすると供給スピードを速めることができる。次に、ボトル18内の液体材料26が上限センサ22位置まで達したら、バルブA9、バルブB10およびバルブC11を閉じ、シャッター15を進出させ、タンク4への加圧をオフにする(STEP7)。そして、作動気体供給管21より真空引きを行い、ボトル18内の液体材料26の気泡除去を行う(STEP8)。気泡除去終了後、今度は作動気体供給管21より圧縮気体を供給して加圧する(STEP9)。ついで、バルブC11を開き、流出管20からボトル18内の液体材料26を吐出装置24へ送出する(STEP10)。吐出装置24での液体材料26の充填が完了したら、バルブC11を閉じ、ボトル18への加圧をオフにする(STEP11)。そして、吐出装置24にて吐出実行をする(STEP12)。このとき、ボトル18内の液体材料26が下限センサ23位置に達するまでは、吐出装置24内の液体材料26が少なくなる度に上記STEP9からSTEP11を繰り返し、吐出装置24へ液体材料26を充填する。また、ボトル18内の液体材料26が下限センサ23位置に達したら、上記STEP2からSTEP8を再び実行し、液体材料26を受給部3へ供給する(STEP13)。タンク4内の液体残量の管理は検知装置7で行う。タンク4の液体材料26の補充は、供給動作時以外であれば可能である。
【0022】
以上のように、配管8をつなぐことなく、上から垂らすように供給していたとしても、一旦、受給部3のボトル18にて気泡除去を行ってから吐出装置24へ供給するようにしているので、吐出装置24に気泡が流入することはない。また、配管8をつなぐことなく、上から垂らすように供給することで、供給する際に接触や擦れ等がなくなり、パーティクルが発生することがない。これにより、気泡やパーティクルが混入していない液体を用いることができるので、精密な量の吐出や正確な位置への塗布が行える。
【0023】
本発明は、液晶、インク、有機EL材料、溶剤(アルコール、アセトンなど)、紫外線硬化樹脂などの粘度が10000cps以下の液体材料に適用することができ、特に粘度が1000cps以下の液体材料に好適である。気泡除去機構においては、液体材料の種類に応じて、約50〜90kPaの負圧を約1〜5分印加する。
【0024】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例は、吐出装置とワークを保持するテーブルとを相対移動しながら液晶をワークに塗布する塗布装置であって、テーブル上をビームが移動するいわゆるガントリ型と呼ばれる塗布装置に関する。
図2に実施例に係る液体自動供給機構を備える塗布装置の概略斜視図、図3に実施例に係る自動供給機構の主要部分を拡大した図を示す。以下では、図2を説明する際に、タンク4が設けられている側を「左」その反対側(符号9側)を「右」、吐出装置24が設けられている側を「前」、その反対側を「後」ということがある。また、左右方向を「X方向」、前後方向を「Y方向」とする。
【0026】
塗布装置25は、図2に示すように、液体材料26を塗布する塗布対象物27(以下、ワークという)を載置するテーブル28を架台29上に備え、液体材料26を吐出する吐出装置24をテーブル28に対して相対移動させるビーム駆動装置(Y駆動装置)44および受給部駆動装置(X駆動装置)43を備える。Y駆動装置44は、ビーム30を支持するスライダーと架台29上に配設されたスライドベースを有し、テーブル28上でビーム30を前後方向(符号31)に移動可能とする。吐出装置24は、ビーム30に設置されたX駆動装置43によりビーム30上を左右方向(符号32)に移動可能とされる。吐出装置24は同じものを複数備えており、全ての吐出装置がビームに沿って移動可能とされる。なお、吐出装置24の数は、ワーク27への塗布の仕方により決まるものであり、図2に示す数に限定されるものではない。
【0027】
さらに塗布装置25は、これら各装置の外周を覆うカバー33を備える。点線で図示したカバー33には、作業者が内部に進入するための扉(図示せず)が前面側に設けられており、吐出装置24などのメンテナンス作業を行う際に用いられる。また、カバー33の天井部分に設置され、パーティクルを除去した空気をカバー33内へ供給する空気清浄装置34とを備える。ここで、空気清浄装置34としては、例えば、ファンフィルタユニット、すなわちHEPA、ULPAフィルタなどを備える小型送風機などを用いることができる。これにより、カバー33内、特に、テーブル28より上の空間は、クリーン度が保たれる。ただし、塗布装置25がクリーンルーム内に設置されるような場合、あるいはそれと同等に清浄な空間に設置されるような場合には、空気清浄装置34を設けずに天井を大きく開口あるいは撤去し、クリーン度の保たれた空気を取り入れることでもよい。なお、カバー33と架台29とを一体的に構成し、架台29上の各要素を覆うようにしてもよい。
【0028】
液体自動供給機構1は、前述の図1の構成を有するものであり、液体材料26を収納するタンク4と、タンク4から送出される液体材料26を排出する供給口12を備える供給部2と、吐出装置24上部に吐出装置24と一体に設けられ、供給部2から排出される液体材料26を受ける受給部3と、受給部3および吐出装置24を相対移動させるX駆動装置43およびY駆動装置44とを主要な構成要素とする。液体自動供給機構1のうち、液体材料26を収納するタンク4がカバー33の外側に取り外し可能に固設され、液体材料26を排出する供給口12を備える供給部2がカバー33の内側に固設される。また、図3に示すように、吐出装置24の上方には、供給部2から排出される液体材料26を受ける受給部3が吐出装置24と一体に設けられ、X駆動装置43により一体に移動される。Y駆動装置44によりビーム30が受給部3の近くまで移動され、X駆動装置43により吐出装置24と一体になった受給部3が供給部2の下方まで移動される供給位置において、受給部3は供給部2から液体材料26の供給を受ける。図2のように吐出装置24が複数設けられている場合は、吐出装置24毎に受給部3を設ける。
【0029】
タンク4から供給部2までは配管8Aでつながれ、受給部3から吐出装置24までは配管8B、8Cでつながれており、供給部2と受給部3との間は離間している。タンク4と供給部2との間には、供給部2への流れを制御するバルブA9がカバー33内側の対応する供給部2近くに固設される。タンク4の下にはタンク4内の液体材料26の残量を検知するための検知装置7が設けられる。タンク4から供給部2へ向かう配管8は、タンク4のすぐ近くでカバー33を貫通し、カバー33内へ入る。すなわち、タンク4及び検知装置7のみがカバー33の外に設置されることになる。たびたび充填或いは交換などの作業が行われるタンク4をカバー33の外に設置することで、カバー33内へパーティクルを持ち込むことを極力減らすことができる。加えて、塗布装置25が塗布動作中でもタンク4への作業が可能となる。
【0030】
液体自動供給機構1における供給口12の数は、吐出装置24の数に応じて変更することが好ましい。なぜならば、複数の吐出装置24をビーム30の一方の側につめて並べたときの合計幅が、左右方向のストローク長さの半分を超えるときは、ビーム上の1カ所に供給口12を設けたとしても、すべての吐出装置24をこの供給口12に移動できないためである。この場合は、供給口12を2カ所以上設けて、複数の吐出装置24が何れかの供給口12に移動できるようにする。
【0031】
以上のように、実施例の塗布装置25では、供給部2と受給部3との間が離間しているので、配管8が吐出装置24や吐出部駆動装置と一緒に動くことがない。したがって、円滑な駆動のため配管を長めに配設したり、配管が動くことにより劣化が早まったりするといった問題が生じない。
【0032】
次に、図3を参照しながら、液体自動供給機構1の詳細について説明する。同図中、黒塗りの矢印は液体の流れ、白抜きの矢印は気体の流れを表す。
供給部2には、タンク4から送られてきた液体材料26を排出する供給口12を備えた供給管13が設置されている。供給管13は、途中で支持部材14に支えられ、供給口12近傍で下向きに曲げられる。ここで供給口12から支持部材14までの部分は、金属などの形状を保てる材料で作られている。供給管14の下方には、供給口12から余分な液体材料26が垂れてきたときに受けるためのシャッター15を備えている。シャッター15は上面が開口した柄杓状(柄がついた器状)をしており、スライド動作をして、供給時以外は供給口12の真下に位置するようになっている。
【0033】
受給部3は、3つの箇所から構成されており、一番高い位置に、供給部3から供給される液体材料26を受ける受給口16を有する漏斗17、一番低い位置には供給された液体材料26を一時的に溜め込み、気泡除去を行うボトル18が配設されている。そして、漏斗17とボトル18の中間の位置に液体の流れを制御するバルブB10およびバルブC11が並んで配設されている。漏斗17は上端が受給口16となるよう開口しており、液体材料26が供給口12から滴下供給される。ここで、カバー33内はクリーン度が保たれているので、受給口16が上部に向かって開口していてもパーティクルが混入するおそれはない。
【0034】
気泡除去用のボトル18は、作動気体供給管21に接続された加減圧ポンプ(図示せず)とともに気泡除去機構41を構成する。加減圧ポンプは、ボトル18から吐出装置24へと液体材料26を送出する際に作用する圧縮気体、およびボトル18内の液体材料26の気泡を除去する際に作用する真空を供給する。
また、ボトル18の外側面近傍には、ボトル18内の液面を検知するセンサが上限位置(符号22)および下限位置(符号23)に設けられている。上限センサ22は、作動気体供給管21の出口より下の位置に、下限センサ23は、流出管20の入口より上の位置に配置する。そうすることで、作動気体供給管21から液体材料26を吸い込んだり、流出管20から気体を吸い込んだりすることを防ぐことができる。
【0035】
受給部3は、供給部2より低い位置で、かつ、供給部2が受給部3の下方に移動してきたときに供給部2と接触しない位置に設けられる。受給部3の下方には、吐出装置24が一体的に配設されている。吐出装置24には、受給部3にて気泡を除去された液体材料26が供給され、ワーク27への吐出を行う。本実施例では、吐出装置24としてプランジャ式の吐出装置を図示しているが、プランジャ式吐出装置以外の吐出装置を用いることができるのは言うまでもない。適用可能な吐出装置としては、先端にノズルを有するシリンジ内の液体材料に調圧されたエアを所望時間だけ印加するエア式、フラットチュービング機構またはロータリーチュービング機構を有するチュービング式、スクリューの回転により液体材料を吐出するスクリュー式、所望圧力が印加された液体材料をバルブの開閉により吐出制御するバルブ式などが例示される。
【0036】
本実施例のプランジャ式吐出装置24は、管形状の計量部36と、計量部36に内接するプランジャ35と、吐出口39を備えるノズル38と、計量部36とノズル38及び計量部36と流入口40の連通を切り換える切換弁37とを備える。そして、計量部36内を密接して進退移動するプランジャ35を高速に進出移動させて液体材料26を吐出口39より飛翔吐出させる。
【0037】
気泡除去機構41を複数設けることにより確実に気泡の混入を防止するようにしてもよい。
また、本実施例の気泡除去機構41に代えて或いは併用して、図4に示す加減圧ポンプを有しない簡易の気泡除去機構を備えるようにしてもよい。流出管20の入口を気泡除去用容器18の底面から離間した上方に設けることにより、底面に堆積したり底面付近を浮揚するパーティクル42が吸入されることを防ぐことができる。かかる簡易の気泡除去機構は、受給部3の小型化をはかる必要がある場合に効果的である。
【符号の説明】
【0038】
1:液体自動供給機構、2:供給部、3:受給部、4:タンク(液体材料貯留部)、5:圧縮気体供給管、6:液体送出管、7:検知装置、8:配管、9:バルブA、10:バルブB、11:バルブC、12:供給口、13:供給管、14:支持部材、15:シャッター、16:受給口、17:漏斗、18:ボトル(気泡除去用容器)、19:流入管、20:流出管、21:作動気体供給管、22:上限センサ、23:下限センサ、24:吐出装置、25:塗布装置、26:液体材料、27:塗布対象物(ワーク)、28:テーブル、29:架台、30:ビーム、31:ビーム移動方向、32:吐出装置移動方向、33:カバー、34:空気清浄装置、35:プランジャ、36:計量部、37:切換弁、38:ノズル、39:吐出口、40:流入口、41:気泡除去機構、42:パーティクル、43:受給部駆動装置(X駆動装置)、44:ビーム駆動装置(Y駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を貯留する液体貯留部と、
液体貯留部に貯留された液体材料を供給する供給口を有する供給部と、
供給部から排出される液体材料を受ける受給口および気泡除去機構を有する受給部と、
受給部を移動させる受給部駆動装置とを備え、
受給部が受給口が供給口の直下に位置する受給位置に移動して供給口から液体材料の滴下供給を受け、気泡除去機構により気泡が除去された液体材料を吐出装置に供給することを特徴とする液体自動供給機構。
【請求項2】
気泡除去機構が、液体材料を貯留する気泡除去用容器と、一端が気泡除去用容器に貯留された液体内に浸漬され、他端が受給口と連通される流入管と、一端が気泡除去用容器に貯留された液体内に浸漬され、他端が吐出装置と連通される流出管とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の液体自動供給機構。
【請求項3】
気泡除去機構が、気泡除去用容器を減圧するポンプ装置と、一端がポンプ装置に接続され、他端が気泡除去用容器内の空間に配置される作動気体供給管とを備えてなることを特徴とする請求項2に記載の液体自動供給機構。
【請求項4】
液体貯留部および/または気泡除去用容器内の液体材料の量を検知する検知装置を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の液体自動供給機構。
【請求項5】
受給口が、拡径された開口を有し、一定量の液体材料を一時的に貯留できる形状であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体自動供給機構。
【請求項6】
供給口の直下である第1の位置と、第1の位置と異なる第2の位置を進退動する液体材料受け部材を備えることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の液体自動供給機構。
【請求項7】
液体貯留部から供給部への液体材料の供給量を制御するピンチバルブおよび/または受給部から吐出装置への液体材料の供給量を制御するピンチバルブを備えることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の液体自動供給機構。
【請求項8】
ワークを保持するテーブルが配設された架台と、
液体材料を吐出するノズルを有する吐出装置と、
吐出装置とテーブルとを相対移動させる駆動装置と、
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体自動供給機構とを備える塗布装置。
【請求項9】
複数の吐出装置が配設されるビームと、
各吐出装置をビームの延設方向に沿って移動自在とする吐出部駆動装置とを備え、
前記受給部が、吐出装置と同数設けられることを特徴とする請求項8の塗布装置。
【請求項10】
前記供給部が、複数配設されることを特徴とする請求項9の塗布装置。
【請求項11】
テーブルおよび吐出装置を覆うカバーを備えることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかの塗布装置。
【請求項12】
前記液体貯留部が、前記カバーの外側に配設されることを特徴とする請求項11に記載の塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61424(P2012−61424A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207775(P2010−207775)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】