説明

液処理装置及びそのプログラム並びにその記録媒体

【課題】 処理液を形成する薬液の特性を一定に維持して処理の安定化及び品質の向上を図れるようにすること。
【解決手段】 処理槽10内に循環供給される薬液(DHF,EG)の混合液からなる処理液であるエッチング液Eでエッチング処理する液処理装置において、各薬液を処理槽内に貯留された処理液に補充する薬液補充手段40,50と各薬液補充手段をそれぞれ構成する補充管路43,53に介設される開閉弁V2〜V5と、各補充管路に介設されて所定量の薬液を供給する薬液供給ポンプP1,P2と、各薬液の処理槽への補充タイミングを記憶し、この記憶された情報に基づいて各開閉手段及び各薬液供給手段に動作信号を伝達する制御コンピュータ70とを具備する。制御コンピュータを、処理液の排液後に、処理槽内に複数の薬液を供給して処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体ウエハ等の被処理体を複数の薬液の混合液からなる処理液で処理する液処理装置及びそのプログラム並びにその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ(以下にウエハという)上に形成された酸化膜や窒化膜をエッチングする方法として、フッ酸(HF)とエチレングリコール(EG:HOCH2CH2OH)の混合液からなる処理液を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記エッチング方法は、例えば、所定の濃度に設定された処理液すなわちエッチング液を処理槽に貯留して所定温度例えば80℃に加熱すると共に、処理槽に接続された循環管路及び循環管路に介設された循環ポンプ及び温度コントローラ等を介して所定温度のエッチング液を循環供給しながらウエハをエッチング処理している。
【0004】
このようなエッチング処理において、処理品質を均一に維持するためには、エッチング液中のフッ酸(HF),エチレングリコール(EG)の濃度を一定に維持する必要があるため、フッ酸(HF),エチレングリコール(EG)を処理液に補充して、処理液を所定濃度に維持している。このような混合液からなる処理液の濃度を維持するために、例えば処理槽中の処理液の濃度を検出し、その検出値に基づいて薬液を処理液に補充する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、エッチング処理を繰り返し行うと、処理液中のシリコン濃度が高くなり、酸化物やパーティクルが発生してくるため、処理槽に接続された循環管路に介設されるフィルタ等が目詰まりを生じる等の問題がある。そのため、定期的に処理槽内のエッチング液を全部交換する必要がある。
【特許文献1】特開2002−334850号公報(特許請求の範囲、段落番号0019)
【特許文献2】特開2001−269633号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処理液の交換によって処理液の濃度は一定に保てるが、フッ酸(HF)とエチレングリコール(EG)の混合液の処理においては、図3に示すように、処理液を交換した後、エチレングリコール(EG)の時間経過に伴う組成変化や劣化等によってエッチングレートが変動するため、均一なエッチングができず、品質の低下をきたすという問題があった。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、処理液を形成する薬液の特性を一定に維持して処理の安定化及び品質の向上を図れるようにした液処理装置及びそのプログラム並びにその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置であって、 上記各薬液を上記処理槽内に貯留された処理液に補充する薬液補充手段と、 上記各薬液補充手段をそれぞれ構成する補充管路に介設される開閉手段と、 上記各補充管路に介設されて所定量の薬液を供給する薬液供給手段と、 上記各薬液の処理槽への補充タイミングを記憶し、この記憶された情報に基づいて上記各開閉手段及び各薬液供給手段に動作信号を伝達する制御コンピュータとを具備してなり、 上記制御コンピュータを、上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置であって、 上記各薬液を上記処理槽内に貯留された処理液に補充する薬液補充手段と、 上記各薬液補充手段をそれぞれ構成する補充管路に介設される開閉手段と、 上記各補充管路に介設されて所定量の薬液を供給する薬液供給手段と、 上記各薬液の処理槽への補充タイミングを記憶し、この記憶された情報に基づいて上記各開閉手段及び各薬液供給手段に動作信号を伝達する制御手段と、を具備してなり、 上記制御コンピュータを、上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように形成してなる、ことを特徴とする。
【0010】
この発明の液処理装置において、上記制御コンピュータを、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に形成するか(請求項3)、あるいは、上記制御コンピュータを、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に形成することができる(請求項4)。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、 上記制御コンピュータを、 上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に機能させる、ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、 上記制御コンピュータを、 上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように機能させる、ことを特徴とする。
【0013】
この発明のプログラムにおいて、上記制御コンピュータを、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に機能させるか(請求項7)、あるいは、上記制御コンピュータを、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に機能させることができる(請求項8)。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、 上記制御コンピュータを、 上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項10記載の発明は、処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、 上記制御コンピュータを、 上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする。
【0016】
この発明の記録媒体において、上記制御コンピュータを、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に機能させるプログラムを記録させるか(請求項11)、あるいは、上記制御コンピュータを、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に機能させるプログラムを記録させることができる(請求項12)。
【0017】
上記のように構成することにより、例えば、処理時間の経過に伴って処理液を形成する1つの薬液の組成が大きく変化する薬液に関し最初の数時間は、当該薬液の補充量を少なくして処理液に補充して処理を安定化させることができる。組成変化の生じた薬液は、組成が安定した後に劣化が生じるため、補充タイミングを短くするか、あるいは、補充量多くすることにより、処理液の安定化が図れる。上記処理が安定化した後、他の薬液の補充タイミングを長くするか、あるいは、補充量を少なくすることにより、処理の安定を持続することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上記のように構成されているので、処理液を形成する薬液の特性を一定に維持して処理の安定化を図ることができると共に、品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る液処理装置を半導体ウエハのエッチング装置に適用した場合について説明する。
【0020】
図1は、この発明に係る液処理装置を適用したエッチング装置を示す概略断面図である。
【0021】
上記エッチング装置は、被処理体である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を収容すると共に、処理液すなわちフッ酸(HF){具体的には、希フッ酸(DHF)}とエチレングリコール(EG)の混合液からなるエッチング液Eを貯留する処理槽10と、処理槽10内にエッチング液Eを循環供給する循環管路20と、処理槽10内のエッチング液Eを排出する排出手段30と、処理槽10内のエッチング液Eにフッ酸(DHF)及びエチレングリコール(EG)を補充する複数の薬液補充手段すなわちフッ酸補充手段40(以下にDHF補充手段40という)及びエチレングリコール補充手段50(以下にEG補充手段50という)と、処理槽10内にリンス液である純水(DIW)を供給する純水供給手段60とを具備している。
【0022】
上記処理槽10は、図示しないウエハボートによって表面が垂直に保持されるウエハWを収容すると共に、エッチング液Eを貯留する例えば石英製の内槽11と、この内槽11からオーバーフローするエッチング液Eを受け止める例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の外槽12とで構成されている。また、内槽11内の底部側には、左右一対の処理液供給ノズルであるエッチング液供給ノズル21が配設されており、このエッチング液供給ノズル21と外槽12とが循環管路20を介して接続されている。循環管路20には、外槽12側から順に、循環ポンプP0,温調用ヒータ22及びフィルタ23が介設されている。したがって、処理槽10内に貯留されるエッチング液Eは、循環管路20及びエッチング液供給ノズル21によって循環供給されると共に、温調用ヒータ22によって所定温度例えば80℃に維持されている。
【0023】
上記排出手段30は、内槽11の底部に介設された排出孔(図示せず)に接続する排出管路31と、この排出管路31に介設される開閉弁V1とで構成されている。
【0024】
また、上記DHF補充手段40は、フッ酸(DHF)を貯留するフッ酸貯留タンク41(以下にDHFタンク41という)と、このDHFタンク41内のDHFを内槽11内に補充(供給)するDHF供給管路42と、このDHF供給管路42から分岐されてDHFを外槽12内に補充するDHF補充管路43とを具備している。この場合、DHF供給管路42には開閉手段である開閉弁V2が介設され、DHF補充管路43には、開閉手段である開閉弁V3と薬液供給手段であるDHF供給ポンプP1が介設されている。
【0025】
また、EG補充手段50は、エチレングリコール(EG)を貯留するエチレングリコール貯留タンク51(以下にEGタンク51という)と、このEGタンク51内のEGを内槽11内に補充(供給)するEG供給管路52と、このEG供給管路52から分岐されてEGを外槽12内に補充するEG補充管路53とを具備している。この場合、EG供給管路52には開閉手段である開閉弁V4が介設され、EG補充管路53には、開閉手段である開閉弁V5と薬液供給手段であるEG供給ポンプP2が介設されている。
【0026】
なお、純水供給手段60は、純水供給源61に接続して純水(DIW)を内槽11内に供給する純水供給管路62と、この純水供給管路62から分岐されて純水(DIW)を外槽12内に補充する純水補充管路63とを具備している。この場合、純水供給管路62には、開閉手段である開閉弁V6が介設され、純水補充管路63には、開閉手段である開閉弁V7が介設されている。
【0027】
上記のように構成されるエッチング装置において、上記DHF補充手段40を構成する開閉弁V2,V3とDHF供給ポンプP1及びEG補充手段50を構成する開閉弁V4,V5とEG供給ポンプP2は、それぞれ制御コンピュータ70に信号ラインを介して接続されている。
【0028】
制御コンピュータ70は、中央演算処理装置(CPU)からなる制御手段70a(以下にCPU70aという)と、CPU70aに接続された入出力部70bと、処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示する表示部70cと、入出力部70bに挿着され制御ソフトウエアを格納した記録媒体70dとを具備する。
【0029】
上記記録媒体70dは、制御コンピュータ70に固定的に設けられるもの、あるいは、制御コンピュータ70に設けられた読み取り装置に着脱自在に挿着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであってもよい。最も典型的な実施形態においては、記録媒体70dは、基板処理装置のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウエアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施の形態においては、記録媒体70dは、制御ソフトウエアが書き込まれたCD−ROM又はDVD−ROMのような読み出し専用のリムーバブルディスクであり、このようなリムーバブルディスクは制御コンピュータ70に設けられた光学的読み取り装置によって読み取られる。記録媒体70dは、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)のいずれの形式のものであってもよく、また、記録媒体70dは、カセット式のROMのようなものであってもよい。要するに、コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体70dとして用いることが可能である。なお、複数の基板処理装置(液処理装置)が配置される工場においては、各基板処理装置(液処理装置)の制御コンピュータ70を統括的に制御する管理コンピュータに制御ソフトウエアが格納されていてもよい。この場合、各基板処理装置(液処理装置)に通信回線を介して管理コンピュータにより走査され、所定のプロセスを実行する。
【0030】
上記のように構成された制御コンピュータ70によって制御ソフトウエアを実行することにより、上記エッチング装置の各機能要素である上記開閉弁V2〜V5,DHF供給ポンプP1及びEG供給ポンプP2等を、所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件が実現されるように制御する。すなわち、CPU70aからの制御信号(動作信号)によって開閉弁V2〜V5の開閉動作、DHF供給ポンプP1及びEG供給ポンプP2のON,OFF動作を行うように制御する。この場合、CPU70aは、実験等の評価によって求められるエッチング処理におけるDHF及びEGの特性(組成変化,劣化条件等)に基づき液補充タイミング及び交換タイミングが予めプログラミングされて記憶されており、この記憶された情報に基づいて上記開閉弁V2,V3,V4,V5と、DHF供給ポンプP1及びEG供給ポンプP2に信号を伝達することで、DHF又はEGの補充タイミング及び補充量が調整される。
【0031】
また、循環ポンプP0及び温調用ヒータ22も制御コンピュータ70に信号ラインを介して接続されており、CPU70aからの制御信号に基づいて循環ポンプP0及び温調用ヒータ22が動作してエッチング液Eが所定温度に維持されると共に、内槽11内に循環供給されるようになっている。
【0032】
なお、図示しないが、排出管路31に介設される開閉弁V1及び純水供給手段60を構成する開閉弁V5,V6も制御コンピュータ70に信号ラインを介して接続されており、CPU70aからの制御信号に基づいて開閉弁V1,V5及びV6がそれぞれ開閉され、処理槽10内のエッチング液Eの排出や純水の供給,補充が適宜行われるようになっている。
【0033】
次に、上記エッチング装置を用いたエッチング処理について説明する。まず、CPU70からの制御信号に基づいて開閉弁V2,V4が開放して、処理槽10の内槽11内に、エッチング液E{所定濃度のDHF,EG}が供給されると共に、外槽12にオーバーフローするまで供給される。次に、循環ポンプP0が駆動して、外槽12にオーバーフローしたエッチング液Eを、循環管路20を介して内槽11に戻すように循環させる。この際、温調用ヒータ22により循環管路20内のエッチング液Eに与えられる熱量を調整することにより、内槽11内のエッチング液Eが所定温度に維持される。
【0034】
この状態で、図示しないウエハボートにて垂直に保持されたウエハWが、処理槽10の内槽11に収容される。ウエハWは、内槽11内のエッチング液Eに所定時間浸漬されエッチングされる。その後、ウエハWは、処理槽10から取り出される。上記エッチング処理は、繰り返し行われる。
【0035】
エッチング液Eは、エッチング処理中(ウエハWが内槽11内のエッチング液E中に浸漬されている場合)及びエッチング処理間のインターバル(ウエハWが内槽11内のエッチング液E中に浸漬されていない場合、すなわち第n回目のエッチング処理が終了して1ロットのウエハWが内槽11から取り出され、第n+1回目のエッチング処理を開始すべく次のロットのウエハWが内槽11に浸漬されるまでの間)において、循環管路20を介して継続的に循環される。
【0036】
エッチング処理を行うことにより、内槽11内のエッチング液E中には、ウエハWからSiが溶出し、パーティクルが発生するが、エッチング液E中に含まれるパーティクル等は、循環管路20を通過する間、フィルタ23によって除去される。
【0037】
上記のようにしてエッチング処理を一定条件で行った後、再び処理槽10内のエッチング液Eの全量を排出すると共に、排出したエッチング液Eと同量の新規の所定濃度のエッチング液Eを供給して、同様にエッチング処理を繰り返し行う。一定条件として、例えば所定回数、所定時間又はウエハWの所定枚数の処理のうち、少なくとも1つの処理を行う。
【0038】
上記エッチング処理において、図3に示すように、エッチング液Eを交換した後、処理時間の経過に伴ってEGの組成が大きく変化するため、窒化膜のエッチングレートが±1.5オングストローム(Å)を超えるレンジ幅であった。そこで、EGの組成が大きく変化する最初の数時間例えば0〜3時間、CPU70aからの制御信号に基づいて開閉弁V5及びEG供給ポンプP2を作動して、EGの補充量を少なくして、EGをエッチング液Eに補充してEGの組成変化を抑制して処理を安定させる。EGの組成が安定した後は、劣化が始まってくるので、補充タイミングを短くするか、あるいは、補充量を多くする。そして、処理が安定したところで、例えば、24時間以降、CPU70aからの制御信号に基づいて開閉弁V3及びDHF供給ポンプP1を作動して、DHFの補充タイミングを長くするか、あるいは、補充量を少なくして処理の安定を持続する。これにより、エッチング液Eの特性がエッチングに適正な許容範囲内に維持されるので、エッチングの均一化が図れる。
【0039】
プログラミングの設定として、液交換後の経過時間毎に、各薬液の補充タイミングの設定、その際の補充量の設定あるいは1回の処理(ロット)毎の補充量の設定を可変可能とすることにより、上記のような制御を行うことができる。
【実施例】
【0040】
上記DHFとEGの混合液からなるエッチング液を用いたウエハWのエッチング処理において、エッチング液の交換後に、DHFとEGの補充タイミングと補充量を表1に示すように調整して、窒化膜のエッチングレートを調べたところ、図2に示すような結果が得られた。
【表1】

【0041】
上記結果から判るように、エッチング液の交換後に、DHFとEGの補充タイミングと補充量を調整することにより、窒化膜のエッチングレートのレンジ幅を±1.5オングストローム(Å)以内で、従来の制御に比較して均一にすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係る液処理装置を適用したエッチング装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係る液処理方法を適用したエッチング処理による窒化膜と酸化膜のエッチングレートを示すグラフである。
【図3】従来のエッチング処理による窒化膜と酸化膜のエッチングレートを示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
10 処理槽
20 循環管路
21 エッチング液供給ノズル(処理液供給ノズル)
22 温調用ヒータ
30 排出手段
40 DHF補充手段(薬液補充手段)
41 DHFタンク
42 DHF供給管路
43 DHF補充管路(薬液補充管路)
50 EG補充手段(薬液補充手段)
51 EGタンク
52 EG供給管路
53 EG補充管路(薬液補充管路)
70 制御コンピュータ
70a CPU(制御手段)
70b 入出力部
70c 表示部
70d 記録媒体
V2〜V5 開閉弁(開閉手段)
P0 循環ポンプ
P1 DHF供給ポンプ(薬液供給手段)
P2 EG供給ポンプ(薬液供給手段)
W 半導体ウエハ(被処理体)
E エッチング液(処理液)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置であって、
上記各薬液を上記処理槽内に貯留された処理液に補充する薬液補充手段と、
上記各薬液補充手段をそれぞれ構成する補充管路に介設される開閉手段と、
上記各補充管路に介設されて所定量の薬液を供給する薬液供給手段と、
上記各薬液の処理槽への補充タイミングを記憶し、この記憶された情報に基づいて上記各開閉手段及び各薬液供給手段に動作信号を伝達する制御コンピュータとを具備してなり、
上記制御コンピュータを、上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置であって、
上記各薬液を上記処理槽内に貯留された処理液に補充する薬液補充手段と、
上記各薬液補充手段をそれぞれ構成する補充管路に介設される開閉手段と、
上記各補充管路に介設されて所定量の薬液を供給する薬液供給手段と、
上記各薬液の処理槽への補充タイミングを記憶し、この記憶された情報に基づいて上記各開閉手段及び各薬液供給手段に動作信号を伝達する制御手段と、を具備してなり、
上記制御コンピュータを、上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように形成してなる、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液処理装置において、
上記制御コンピュータは、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に形成される、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液処理装置において、
上記制御コンピュータは、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に形成される、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項5】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、
上記制御コンピュータを、
上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、
上記制御コンピュータを、
上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項5又は6記載のプログラムにおいて、
上記制御コンピュータを、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載のプログラムにおいて、
上記制御コンピュータを、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、
上記制御コンピュータを、
上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能に機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項10】
処理槽内の複数の薬液の混合液からなる処理液で被処理体を処理する液処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、
上記制御コンピュータを、
上記処理液の排液後に、上記処理槽内に複数の薬液を供給して上記処理液を作成する処理液交換工程後の経過時間毎に、各薬液毎に補充のタイミングを可変設定可能にするために制御コンピュータに処理レシピを作成するための処理レシピ入力画面を表示するように機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項11】
請求項9又は10記載の記録媒体において、
上記制御コンピュータを、更に薬液の補充時の補充量を可変に設定可能に機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載の記録媒体において、
上記制御コンピュータを、更に被処理体を1回処理する毎に補充量の設定を可変可能に機能させるプログラムを記録した、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−278365(P2006−278365A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90426(P2005−90426)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】