説明

液化ガス充填システム

【課題】本発明は液化ガスの充填終了時のウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を小さくすることを課題とする。
【解決手段】制御回路90の充填制御部140は、開弁制御手段141と、液面位置判別手段142と、閉弁制御手段143とを有する。開弁制御手段141は、充填開始信号により第1の開閉弁V1、第3の開閉弁V5及び第2の開閉弁V4を開弁させて燃料タンク30への液化ガス充填を開始する。液面位置判別手段142は、液面検出手段190により検出された液面検出データを受信し、液面検出データに基づく燃料タンク30の液面が過充填防止位置よりも低い所定位置に達したか否かを判別する。閉弁制御手段143は、燃料タンクの液面が前記所定位置に達したと判別された場合には、第1の開閉弁V1または第2の開閉弁V4の弁開度を閉弁側に絞り、または閉弁して燃料タンク30への充填流量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液化ガス充填システムに係り、特に液化ガスを燃料タンクに効率良く充填する液化ガス充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両用燃料として使用される液化ガスとして、例えば、ブタン・プロパンなどを主成分とするLPG(Liquefied petroleum gas)、酸素含有率が高く黒煙が出ないディーゼル燃料として使用されるDME(ジメチルエーテル)がある。この種の液化ガスは、気体燃料を圧縮することにより液化できるため、タンク内においては、液相領域と気相領域とが併存する。
【0003】
上記液化ガスを充填するための液化ガス充填システムとしては、液化ガスの貯蔵元である液化ガス貯槽と被充填容器との間を充填ラインと均圧化ラインの2つの配管経路で連通して効率良く液化ガスを充填する方式が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図1は、従来の充填方式を用いた液化ガス充填システムの系統図である。尚、図1に示す均圧充填方式は、特にプロパンやDMEのような温度上昇に伴う飽和蒸気圧力の上昇が大きい液化ガスを充填する場合に適した充填方式である。
【0005】
図1に示されるように、液化ガス充填システム10は、液化ガス貯槽20と、液化ガス充填配管経路(充填ライン)40と、気相領域均圧配管経路(均圧化ライン)50とを有する。液化ガス貯槽20は、液化ガスを貯蔵する容量の大きい大型タンクである。
【0006】
液化ガス充填配管経路40は、一端が液化ガス貯槽20の液相領域に接続され、他端が液化ガスを充填される燃料タンク30の液相側接続口32に接続される充填用接続カップリング34を有する。気相領域均圧配管経路50は、一端が液化ガス貯槽20の気相領域に接続され、他端が燃料タンク30の気相側接続口36に接続される均圧用接続カップリング38を有する。
【0007】
また、液化ガス充填配管経路40は、ディスペンサ60を介して燃料タンク30に接続されている。液化ガス貯槽20とディスペンサ60との間を連通する部分には、液化ガスを圧送する加圧手段としてのポンプ70が設けられている。上記液化ガス充填配管経路40と気相領域均圧配管経路50を用いた均圧充填方式の液化ガス充填システムでは、液化ガスが液化ガス充填配管経路40から燃料タンク30内に充填されると共に、燃料タンク30内の上部空間(気相領域)のベーパを気相領域均圧配管経路50から液化ガス貯槽20の気相領域に充填することにより、液化ガスを大流量で充填することが可能になる。
【0008】
また、燃料タンク30には、液面上昇による過充填を防止するため、液面が所定高さ位置に達した時点で閉弁するフロート弁からなる過充填防止弁31が設けられている。この過充填防止弁31は、液化ガス充填配管経路40の先端に接続されており、燃料タンク30の液面が満充填となる所定高さ位置(過充填防止位置)に達した場合に閉弁する。
【0009】
また、ディスペンサ60の筐体内部には、セパレータ62と、容積式流量計64と、背圧弁66と、電磁弁からなる第1の開閉弁V1(充填用開閉弁)とが設けられている。セパレータ62は、液化ガス充填配管経路40により充填される液化ガスから気泡を分離する気液分離装置である。
【0010】
容積式流量計64は、液化ガス充填配管経路40により充填される液化ガスの流量を計測し、計測した容積流量に応じた流量パルスを出力する。また、容積式流量計64は、所謂ピストン式流量計とも呼ばれる流量計であり、例えば、特開平8−94408号公報にみられるように4つのピストンが90°の位相差で往復動し、各ピストンの往復動に伴う回転力が回転軸に伝達され、回転軸の回転角に応じた容積分(ピストンの移動により押し出された液化ガスの体積)に比例する流量パルスを生成する流量パルス生成部を有する。従って、回転軸の回転角に応じてピストンによって吐出された容積分の体積流量に比例する流量パルスを積算することにより液化ガスの充填量を演算することが可能になる。
【0011】
充填用接続カップリング34は、ディスペンサ60から引き出された液化ガス充填配管経路40を構成する充填ホース42の先端(他端)に設けられている。また、均圧用接続カップリング38は、ディスペンサ60から引き出された気相領域均圧配管経路50を構成する均圧ホース52の先端(他端)に設けられている。そして、燃料タンク30が搭載された車両80には、液相側接続口32を開または閉とする手動式の開閉弁V2と、気相側接続口36を開または閉とする手動式の開閉弁V3とが設けられている。
【0012】
ここで、接続口32、36は、接続カップリング34、38が接続口32、36に接続されたとき、内部通路を開とし、一方、接続カップリング34、38が離脱されたときには、内部通路(開口部)を閉とする弁機構を有する。
【0013】
背圧弁66は、気相領域均圧配管経路50から分岐された背圧管68を介して気相領域の均圧化された圧力が背圧として導入されており、均圧化された圧力よりポンプ70により加圧された液圧が大きくなったときに開弁するように構成されている。
【0014】
すなわち、背圧弁66は、液化ガス充填配管経路40により充填される液化ガスが容積式流量計64において気化しないように、ポンプ70により加圧された充填圧力が液化ガスの飽和蒸気圧力よりも上回る設定値以上になったとき開弁するように設定されている。
【0015】
ここで、上記のように構成された液化ガス充填システム10による液化ガスの充填終了後の流量演算について説明する。
【0016】
充填終了に伴い作業員がディスペンサ60に設けられた充填停止スイッチ釦96を押してオンにする。制御回路90は、充填停止信号によりポンプ70を停止し、第1の開閉弁V1を閉弁する。次いで、制御回路90は、容積式流量計64より出力された流量パルスを読み込むことで燃料タンク30に充填された液化ガス(液)の流量を充填量として演算し、演算結果の充填量を記憶すると共に、流量表示器92に充填量を表示する。
【0017】
この液化ガス充填システム10においては、充填開始前に液化ガス貯槽20の気相領域と燃料タンク30の気相領域との間が気相領域均圧配管経路50により連通されるため、液化ガス貯槽20と燃料タンク30との圧力差がなくなり、ポンプ70の吐出圧力を充填するための圧力として有効に活かせる。
【0018】
また、ポンプ70の吐出圧力により液充填が行われると共に、充填量に等しい体積の燃料タンク30内のベーパが気相領域均圧配管経路50を介して液化ガス貯槽20に移動する。そのため、燃料タンク30の気相領域におけるベーパの液化は発生せず、ベーパの液化潜熱による内圧上昇は発生しない。従って、液化ガス貯槽20内の液化ガスを燃料タンク30に充填する過程における充填流量の低下は、防止されることになる。
【0019】
液化ガスの充填は、燃料タンク30内に設けられた過充填防止弁31の所定充填量検知による弁閉止により終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−291889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来の液化ガス充填システムでは、液化ガスの充填により、燃料タンク30の過充填防止弁31が液面上昇により閉弁動作した場合、所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃が発生することにより、液化ガス充填配管経路40に配された充填制御を行なう各機器の故障を引き起こすおそれがある。
【0022】
このような所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を緩和する方法としては、例えば、過充填防止弁31が閉弁する前に液化ガスの充填流量を減少させることが考えられるが、燃料タンク30の液面位置が残量と充填流量との関係からどのように変化するのか分からないので、どのタイミングで液化ガスの充填流量を絞ると良いのかが不明である。例えば、充填流量を絞るタイミングが遅れると、所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を解消することができなくなり、充填流量を絞るタイミングが速すぎると、小流量による充填時間が長くなって燃料タンク30への充填完了が遅れるという問題が生じる。
【0023】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した液化ガス充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、液化ガスが充填される燃料タンクと、該燃料タンクの液面位置が過充填防止位置に達したときに閉弁する過充填防止弁と、前記燃料タンクの液面高さ位置を検出する液面検出手段と、該液面検出手段により検出された液面検出データを送信する送信手段とを有する車両と、液化ガスが貯蔵された液化ガス貯槽と、一端が該液化ガス貯槽の液相領域に接続され、他端が前記燃料タンクの液相領域に接続される液化ガス充填経路と、一端が前記液化ガス貯槽の気相領域に接続され、他端が前記燃料タンクの気相領域に接続される気相領域均圧化経路と、前記液化ガスを加圧することにより前記液化ガス貯槽内の液化ガスを前記液化ガス充填経路を介して前記燃料タンクへ供給する加圧手段と、前記液化ガス充填経路に配された充填用開閉弁と、前記気相領域均圧化経路に配された均圧用開閉弁と、前記送信手段により送信された液面検出データを受信する受信手段と、前記液化ガス貯槽の液化ガスを前記燃料タンクへ充填開始する際に操作される充填開始操作部と、前記燃料タンクに充填される液化ガスの充填量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記充填開始操作部からの充填開始信号により前記充填用開閉弁及び前記均圧用開閉弁を開弁させて前記燃料タンクへの液化ガス充填を開始する開弁制御手段と、前記液面検出手段により検出された液面検出データを受信し、前記液面検出データに基づく前記燃料タンクの液面が前記過充填防止位置よりも低い所定位置に達したか否かを判別する液面位置判別手段と、前記液面位置判別手段により前記燃料タンクの液面が前記所定位置に達したと判別された場合には、前記充填用開閉弁と前記均圧用開閉弁とのうち少なくとも何れか一方の弁開度を閉弁側に絞り、前記燃料タンクへの充填流量を減少させる閉弁制御手段と、を有することを特徴とする。
(2)前記閉弁制御手段は、前記液面検出データに基づく前記燃料タンクへの充填可能量が所定値未満になったとき、前記均圧用開閉弁を閉弁することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液面検出手段により検出された液面検出データを受信し、液面検出データに基づく燃料タンクの液面が過充填防止位置よりも低い所定位置に達したと判別された場合には、充填開閉弁と均圧開閉弁とのうち少なくとも何れか一方の弁開度を閉弁側に絞り、燃料タンクへの充填流量を減少させるため、燃料タンクの過充填防止弁の閉弁動作による所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を小さくして充填制御を行なう各機器が受ける衝撃による影響を軽減することが可能になる。
【0026】
また、本発明によれば、燃料タンクへの充填可能量が所定未満になったとき、均圧用開閉弁を閉弁するため、液充填と共に気相領域の圧力が徐々に上昇することにより、液充填を停止する場合よりも弁開度を制御することなく充填流量が徐々に減少することになり、所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を小さくできると共に、弁制御を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の充填方式を用いた液化ガス充填システムの系統図である。
【図2】本発明による液化ガス充填システムの一実施例を示す系統図である。
【図3】制御回路が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0029】
図2は本発明による液化ガス充填システムの一実施例を示す系統図である。尚、図2において、前述した図1に示す部分と共通部分には、同一符号を付してその説明を省略する。図2に示されるように、液化ガス充填システム100は、ディスペンサ60の内部に配された液化ガス充填配管経路40に、容積式流量計64に流入する液化ガスの温度T1を検知する温度検知器110と、第1の開閉弁V1(充填用開閉弁)の上流側と下流側とをバイパスするバイパス管路44に配された電磁弁からなる第3の開閉弁V5(充填用開閉弁)とを有する。
【0030】
また、第1の開閉弁V1と第3の開閉弁V5は、液化ガス充填配管経路40に並列接続されており、時間差をもって個別に開弁または閉弁するように開閉制御される。また、第3の開閉弁V5の流路(口径)は、第1の開閉弁V1よりも小径であるので、充填可能な流量Q5が第1の開閉弁V1の流量Q1よりも少ない(Q5<Q1)。
【0031】
そのため、燃料タンク30への液化ガスの充填開始時は、第3の開閉弁V5のみが開弁されて小流量Q5で充填され、所定時間経過後に第1の開閉弁V1に開弁すると流量が(Q5+Q1)に増大し、最大流量による充填が行なわれる。また、充填停止時は、第1の開閉弁V1が先に閉弁されて充填流量が最大流量(Q5+Q1)から小流量Q5に減少され、所定時間経過後に第3の開閉弁V5が閉弁されることで充填流量がゼロになる。よって、第1の開閉弁V1と第3の開閉弁V5の開弁及び閉弁のタイミングを所定時間ずつずらすことにより、段階的に充填流量を増大または減少させる二段開閉弁と同様な流量制御が行なわれる。
【0032】
また、車両80の燃料タンク30には、液面センサからなる液面検出手段190が設けられている。液面検出手段190により計測された液面検出データは、例えば、無線装置(送信手段)200により無線信号で送信される。本実施例では、燃料タンク30の全容積に対して充填率85%が最大充填量である。そのため、液面検出手段190は、充填率75%に達したときに液面検出信号Lを出力し、充填率85%に達したときに液面検出信号Hを出力する。すなわち、液面検出手段190は、燃料タンク30の液面が過充填防止位置よりも低い所定位置(充填率75%)に達したときに液面検出信号Lを出力し、燃料タンク30の液面が過充填防止位置(充填率85%)に達したときに液面検出信号Hを出力する。
【0033】
制御回路90は、ディスペンサ60の上部に設けられた無線装置(受信手段)210により車両80の無線装置200から送信された燃料タンク30の液面検出データを受信し、受信した液面検出データに基づいて各開閉弁V1,V4,V5の弁開度を調節し、開弁または閉弁させる制御をすべく制御信号を出力する。
【0034】
制御回路90は、例えば、磁気ディスク装置あるいはICメモリなどの記憶手段を有する記憶部180に接続されており、記憶部180に格納された各制御プログラム及び各データやパラメータを読み込み、演算処理を行なう。
【0035】
また、制御回路90は、充填用開閉弁としての第1の開閉弁V1、第3の開閉弁V5及び均圧用開閉弁としての第2の開閉弁V4を開閉制御することにより燃料タンク30への液化ガスの充填制御を行う充填制御部140と、容積式流量計64から出力される流量パルスを積算して燃料タンク30に充填された液化ガスの充填量を演算する充填量演算部150とを有する。
【0036】
さらに、充填制御部140は、開弁制御手段141と、液面位置判別手段142と、閉弁制御手段143とを有する。開弁制御手段141は、充填開始スイッチ釦94(充填開始操作部)からの充填開始信号により第1の開閉弁V1、第3の開閉弁V5(充填用開閉弁)及び第2の開閉弁V4(均圧用開閉弁)を段階的に開弁させて燃料タンク30への液化ガス充填を開始し、ガス充填流量を小流量から大流量に切替える。液面位置判別手段142は、液面検出手段190により検出された液面検出データを受信すると共に、当該液面検出データに基づく燃料タンク30の液面が過充填防止位置よりも低い所定位置(充填率75%)に達したか否かを判別する。
【0037】
閉弁制御手段143は、液面位置判別手段142により燃料タンク30の液面が過充填防止位置よりも低い所定位置(充填率75%)に達したと判別された場合には、第1の開閉弁V1または第2の開閉弁V4の弁開度を閉弁側に絞り、または閉弁するための制御信号を出力し、燃料タンク30への充填流量を減少させる。このように、燃料タンク30への充填流量を減少させることにより、燃料タンク30の液面が過充填防止位置に(充填率85%)に達したときの過充填防止弁31の閉弁動作による所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を小さくできる。
【0038】
また、閉弁制御手段143は、液面検出データに基づく燃料タンク30への充填可能量が所定値未満(充填率75%)になったとき、均圧用の第2の開閉弁V4を閉弁するための制御信号を出力する。このように、燃料タンク30の充填率75%で第2の開閉弁V4が閉弁することにより、燃料タンク30の気相領域のベーパが排出されなくなる。このため、この後の燃料タンク30においては、液化ガスの充填により液相領域の液面が上昇するのにつれて気相領域の圧力が徐々に上昇するため、燃料タンク30の圧力上昇によって液化ガスの充填圧力との圧力差が次第に減少する。よって、液化ガスの充填流量が徐々に減少するため、過充填防止弁31の閉弁動作による所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃を緩和することができる。
【0039】
ここで、液化ガス充填システム100において、燃料タンク30へ液化ガスを充填する際の操作手順及び制御処理について説明する。
【0040】
車両80への液化ガスを充填する際の作業としては、まず、作業員が充填用接続カップリング34を燃料タンク30の液相側接続口32に接続し、さらに均圧用接続カップリング38を燃料タンク30の気相側接続口36に接続する。そして、作業員は、開閉弁V2,V3を開弁操作する。これで、液化ガス充填開始前の準備作業が終わり、異常がないことを確認してディスペンサ60の充填開始スイッチ釦94をオンに操作する。
【0041】
次に、ディスペンサ60の制御回路90が実行する液化ガス充填制御処理について説明する。図3はディスペンサ60の制御回路90が実行する液化ガス充填制御処理を説明するためのフローチャートである。尚、制御回路90では、車両80の液面検出手段190によって検出された液面検出データの受信処理も並行して行なっているが、その説明は省略する。
【0042】
図3に示されるように、制御回路90は、S11において、ディスペンサ60の充填開始スイッチ釦94がオンに操作されると、S12に進み、第2の開閉弁V4(均圧用開閉弁)を開弁する(開弁制御手段)。続いて、S13に進み、ポンプ70を起動すると共に、液化ガス貯槽20の液化ガスを加圧して液化ガス充填配管経路40への液化ガス充填可能状態にする。
【0043】
さらに、S14では、充填用副開閉弁としての第3の開閉弁V5を開弁する(開弁制御手段)。この第3の開閉弁V5は、流路が小径であるので、第3の開閉弁V5の開弁により燃料タンク30に対して小流量による液化ガスの充填が開始される。
【0044】
次のS15では、充填開始からの経過時間が予め設定された所定時間に達したか否かをチェックする。S15において、充填開始からの経過時間が予め設定された所定時間に達していないときは、S16に進み、車両80の液面検出手段190により検出された充填率75%(燃料タンク30の容積に対する充填量の比率)の液面検出信号Lが無線装置200,210を介して入力されたか否かをチェックする(液面位置判別手段)。S16において、液面検出手段190により充填率75%の液面検出信号Lが入力されないときは、上記S15の処理に戻り、S15、S16の処理を繰り返す。
【0045】
また、S15において、充填開始からの経過時間が予め設定された所定時間に達したときは、S17に進み、充填用主開閉弁としての第1の開閉弁V1を開弁する(開弁制御手段)。これにより、燃料タンク30への充填流量が増大し、大流量による液化ガスの充填が行なわれる。
【0046】
続いて、S18では、車両80の液面検出手段190により検出された充填率75%の液面検出信号Lが無線装置200,210を介して入力されたか否かをチェックする(液面位置判別手段)。S18において、充填率75%の液面検出信号Lが入力されるまで、大流量による液化ガスの充填が行なわれ、S17,S18の処理を繰り返す。
【0047】
また、S18において、充填率75%の液面検出信号Lが入力されると、S19に進み、均圧用の第2の開閉弁V4を閉弁する(閉弁制御手段)。このように燃料タンク30の充填率75%で第2の開閉弁V4を閉弁することにより、燃料タンク30の気相領域のベーパが排出されなくなるため、この後の燃料タンク30においては、液化ガスの充填により液相領域の液面が上昇するのにつれて気相領域の圧力が徐々に上昇する。そのため、燃料タンク30の圧力上昇によって液化ガスの充填圧力との圧力差が次第に減少することになり、液化ガスの充填流量が徐々に絞られる。よって、充填率の上昇と共に、液化ガスの充填流量は自動的に減少する。また、上記S19において、第2の開閉弁V4の弁開度を閉弁側に絞る(例えば、弁開度を100%から20%〜5%に変更する)ように切替えても良い。
【0048】
また、前述したS16において、充填率75%の液面検出信号Lが入力されたときは、第3の開閉弁V5のみによる小流量での充填により液面が所定充填位置(充填率75%の液面位置)に達したため、上記S17,S18の処理を省略してS19の処理を行なう。すなわち、燃料タンク30に残留していた液化ガスの液面位置が所定充填位置(充填率75%の液面位置)に近い場合には、第3の開閉弁V5のみによる充填でも充填率75%の液面検出信号Lが液面検出手段190より検出される。この場合も、前述したS18の場合と同様に、第2の開閉弁V4を閉弁することにより、燃料タンク30の気相領域のベーパが排出されなくなる。そのため、燃料タンク30においては、液化ガスの充填により液相領域の液面が上昇するのにつれて気相領域の圧力が徐々に上昇して液化ガスの充填圧力との圧力差が次第に減少することになり、液化ガスの充填流量が徐々に絞られる。よって、充填率の上昇と共に、液化ガスの充填流量は自動的に減少する。
【0049】
次のS20では、燃料タンク30の充填可能量が燃料タンク30の全容積に対する残りの充填率10%(燃料タンク30の最大充填率を85%とした場合の充填可能な残りの充填量)に低下したので、第1の開閉弁V1を閉弁とする(閉弁制御手段)。これにより、充填率75%から満充填となる充填率85%まで、第3の開閉弁V5のみの小流量による充填が行なわれる。
【0050】
このように充填流量が小流量に減少しているので、例えば、第3の開閉弁V5のみの小流量による充填中に過充填防止弁31が閉弁動作しても所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃が緩和される。また、S20において、第1の開閉弁V1の弁開度を閉弁側に絞る(例えば、弁開度を100%から20%〜5%に変更する)ように切替えても良い。
【0051】
続いて、S21では、車両80の液面検出手段190により検出された充填率85%(燃料タンク30の容積に対する満充填量)の液面検出信号Hが無線装置200,210を介して入力されたか否かをチェックする。S21において、液面検出手段190により検出された充填率85%の液面検出信号Hが入力されるまで、液化ガスの充填を行なう。尚、燃料タンク30には、過充填防止弁31が設けられており、液面高さが充填率85%の液面に達すると共に、過充填防止弁31は閉弁動作する。この場合には、燃料タンク30への充填流量が既に絞られているので、過充填防止弁31の閉弁動作による所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃が緩和される。
【0052】
そして、S21において、充填率85%の液面検出信号Hが入力されると、当該燃料タンク30の充填率が最大値に達したため、S22に進み、満充填完了と判断して第3の開閉弁V5を閉弁して小流量による充填を完了する(閉弁制御手段)。尚、過充填防止弁31がまだ閉弁動作していないときは、過充填防止弁31より第3の開閉弁V5が先に閉弁することになる。この場合でも燃料タンク30への充填流量が既に絞られているので、第3の開閉弁V5の閉弁動作による所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃が緩和される。
【0053】
このように、燃料タンク30の液面が充填率85%の過充填防止位置に達して過充填防止弁31または第3の開閉弁V5を閉弁するときには、既に均圧用の第2の開閉弁V4が閉弁して充填流量が徐々に減少された状態であるので、過充填防止弁31または第3の開閉弁V5を閉弁させたときの所謂ウォーターハンマ(水撃)現象による衝撃が抑制され、充填制御を行なう各機器が受ける衝撃による影響を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上記実施例では、ポンプによって液化ガスを加圧して燃料タンクに充填する充填方式を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ポンプ以外の加圧手段(例えば、液化ガス貯槽20を高所に設置して位置エネルギを利用する方法や液化ガス貯槽20を加熱して気相領域の圧力を上昇させて圧力差により充填する充填方式など)を用いても良いのは勿論である。
【0055】
また、上記実施例では、液面検出手段190は、充填率75%に達したときに液面検出信号Lを出力し、充填率85%に達したときに液面検出信号Hを出力するものを採用しており、制御回路90は液面検出手段190より液面検出信号Lが入力されると、各開閉弁V1,V4,V5の弁開度を制御することにより燃料タンク30への充填流量を絞るようにしているが、本発明の液面検出手段190を充填率に応じた液面検出信号を出力するものに代えるとともに、制御回路90では液面検出手段190より入力される液面検出信号から充填率を判断し、この充填率が75%及び85%に達したと判断した時点で各開閉弁V1,V4,V5の弁開度を制御することにより燃料タンク30への充填流量を絞るようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施例では、液面検出手段190で検出された充填率が75%に達した時点で均圧用の第2の開閉弁V4と第1の開閉弁V1とを閉弁或いは弁開度を絞ることにより燃料タンク30への充填流量を絞るようにしているが、第2の開閉弁V4と第1の開閉弁V1との何れか一方を閉弁或いは弁開度を絞るようにしても良い。
【0057】
更に、上記実施例では、液面検出手段190で検出された充填率が75%に達した時点で均圧用の第2の開閉弁V4と第1の開閉弁V1とを閉弁或いは弁開度を絞ることにより燃料タンク30への充填流量を絞るようにしているが、例えば充填率が65%に達した時点で燃料タンク30への充填流量を絞るようにしても良く、要は、燃料タンク30内へのガス充填が終了する際(燃料タンク30の液面が充填率85%の過充填防止位置に達して過充填防止弁31または第3の開閉弁V5を閉弁する際)の流量が所望の流量以下に低下するようになるように均圧用の第2の開閉弁V4と第1の開閉弁V1とを閉弁或いは弁開度を絞るタイミングを調節するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
30 燃料タンク
32 液相側接続口
36 気相側接続口
40 液化ガス充填配管経路
44 バイパス管路
50 気相領域均圧配管経路
60 ディスペンサ
64 容積式流量計
66 背圧弁
70 ポンプ
80 車両
90 制御回路
94 充填開始スイッチ釦
100 液化ガス充填システム
180 記憶部
190 液面検出手段
200 無線装置(送信手段)
210 無線装置(受信手段)
141 開弁制御手段
142 液面位置判別手段
143 閉弁制御手段
140 充填制御部
150 充填量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが充填される燃料タンクと、該燃料タンクの液面位置が過充填防止位置に達したときに閉弁する過充填防止弁と、前記燃料タンクの液面高さ位置を検出する液面検出手段と、該液面検出手段により検出された液面検出データを送信する送信手段とを有する車両と、
液化ガスが貯蔵された液化ガス貯槽と、
一端が該液化ガス貯槽の液相領域に接続され、他端が前記燃料タンクの液相領域に接続される液化ガス充填経路と、
一端が前記液化ガス貯槽の気相領域に接続され、他端が前記燃料タンクの気相領域に接続される気相領域均圧化経路と、
液化ガスを加圧することにより前記液化ガス貯槽内の液化ガスを前記燃料タンクへ供給する加圧手段と、
前記液化ガス充填経路に配された充填用開閉弁と、
前記気相領域均圧化経路に配された均圧用開閉弁と、
前記送信手段により送信された液面検出データを受信する受信手段と、
前記液化ガス貯槽の液化ガスを前記燃料タンクへ充填開始する際に操作される充填開始操作部と、
前記燃料タンクに充填される液化ガスの充填量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記充填開始操作部からの充填開始信号により前記充填用開閉弁及び前記均圧用開閉弁を開弁させて前記燃料タンクへの液化ガス充填を開始する開弁制御手段と、
前記液面検出手段により検出された液面検出データを受信し、前記液面検出データに基づく前記燃料タンクの液面が前記過充填防止位置よりも低い所定位置に達したか否かを判別する液面位置判別手段と、
前記液面位置判別手段により前記燃料タンクの液面が前記所定位置に達したと判別された場合には、前記充填開閉弁と前記均圧用開閉弁とのうち少なくとも何れか一方の弁開度を閉弁側に絞り、前記燃料タンクへの充填流量を減少させる閉弁制御手段と、
を有することを特徴とする液化ガス充填システム。
【請求項2】
前記閉弁制御手段は、前記液面検出データに基づく前記燃料タンクへの充填可能量が所定値未満になったとき、前記均圧用開閉弁を閉弁することを特徴とする請求項1に記載の液化ガス充填システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−255809(P2010−255809A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109397(P2009−109397)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度地域イノベーション創出研究開発事業「自動車用DME充填装置の研究開発とDMEスタンドの安全性研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】