説明

液晶シール剤およびそれを用いた液晶表示セル

本発明は、液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性と貼り合わせ性に優れ、可使時間が長く、ポットライフが長く、強い接着強度を有する液晶シール剤に関するもので、本発明の液晶シール剤は下記一般式(1)


(式中、aは2〜4の整数、nは0〜3(平均値)、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Aは多価芳香族基、Gはグリシジル基を表す。但し、nが0の場合は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)はビスフェノールS型である。)
で表されるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル、更に液晶シール剤等に適する組成物に関する。より詳しくは、液晶滴下工法による液晶表示セルの製造に好適な液晶シール剤及びそれを用いて製造された液晶表示セル及び液晶シール剤等に適する組成物に関する。
【背景技術】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されている(特開昭63−179323号公報及び特開平10−239694号公報を参照)。それらの方法においては、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止された液晶表示セルが製造される。
しかし、液晶滴下工法は、液晶シール剤が未硬化の状態で液晶に接触するため、液晶表示セル製造時に液晶シール剤の成分が液晶に溶解して液晶の比抵抗を低下させてしまうという問題点があり、液晶表示セルの量産方法として本格的には普及していない。
液晶滴下工法において、液晶シール剤の貼り合わせ後の硬化方法として、熱硬化法、光硬化法、光熱硬化併用法の3つの方法が考えられている。熱硬化法では、加熱による液晶の膨張により低粘度化した硬化途中の液晶シール剤から液晶が漏れてしまうという問題と低粘度化した液晶シール剤の成分が液晶に溶解してしまうという問題があり、これらの問題は解決が困難であり、いまだ実用化されていない。
一方、光硬化法に用いられる液晶シール剤としては、光重合開始剤の種類によりカチオン重合型とラジカル重合型の2種類が挙げられる。カチオン重合型の液晶シール剤については、光硬化の際にイオンが発生するため、これを液晶滴下工法に使用した場合、接触状態の液晶中にイオン成分が溶出し、液晶の比抵抗を低下させるという問題がある。又、ラジカル重合型の液晶シール剤については光硬化時の硬化収縮が大きいために、接着強度が十分でないという問題がある。更に、カチオン重合型とラジカル重合型の両方の光硬化法に関わる問題点として、液晶表示セルのアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部分が生じるため、遮光部分が未硬化になるという問題が生じる。
このように熱硬化法、光硬化法は様々な問題点を抱えており、現実には光熱硬化併用法が最も実用的な工法と考えられている。光熱硬化併用法は、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。光熱硬化併用法に用いる液晶シール剤に要求される特性としては、光照射前後、加熱硬化前後の各工程において液晶シール剤が液晶を汚染しないことが重要であり、特に先に述べた遮光部分に対する対策、すなわち、光硬化しなかった部分が熱硬化する際のシール剤成分の液晶溶出に対する対策が必要になってくる。その解決方法としては、▲1▼シール剤成分が溶出する前に低温速硬化させる、▲2▼シール剤を液晶組成物に溶出し難い成分で構成する等が考えられる。当然、低温速硬化とすることは同時に使用時のポットライフが悪くなることを意味するので実用上大きな問題となる。故にポットライフが長く液晶汚染性の低い液晶シール剤を実現する為には、液晶組成物に溶出し難い成分で構成することが必要になってくる。しかしながら、一般によく知られているエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂やビスフェノールFエポキシ樹脂は液晶との相溶性が良いため、汚染性の観点からシール剤構成成分として適しているとは言い難い。
特開2001−133794号公報では、滴下工法用液晶シール剤として、樹脂主成分に特開平5−295087号公報記載の部分(メタ)アクリレート化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用する提案がなされている。しかしながら(メタ)アクリレート化することにより液晶への溶解性は低下するものの充分とは言い難く、また未反応で残存した原料エポキシ樹脂が液晶を汚染する問題も解決することが困難である。
以上述べてきたように、従来提案されてきた液晶滴下工法用の光熱硬化併用型液晶シール剤は、液晶汚染性、接着強度、室温での可使時間、低温硬化性等のすべてについて満足の得られるものではない。
本発明の目的は、液晶滴下工法による液晶表示装置に用いられる液晶シール剤の開発、特に一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせて、液晶シール部に光照射後、加熱硬化する液晶滴下工法による液晶表示装置に用いられる液晶シール剤の開発にある。すなわち、本発明は、製造工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度、室温での可使時間(ポットライフ)、低温硬化性に優れる液晶シール剤を提案することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂(a)(即ち、ビスフェノールS型のエポキシ樹脂もしくは構造中にアルキレンオキサイド単位を有するエポキシ樹脂)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有する液晶シール剤が前記目的を達するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、
1.一般式(1)

(式中、aは2〜4の整数、nは0〜3(平均値)、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Aは多価芳香族基、Gはグリシジル基を表す。但し、nが0の場合は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)はビスフェノールS型である。)
で表されるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とする液晶シール剤,
2.多価芳香族基が、2〜3価のフェノールもしくはナフトール残基、2〜4個のベンゼン環又はナフタレン環(ベンゼン環又はナフタレン環上に、置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよく、該環上の結合手の合計が2〜4個である)が、単結合、炭素数1〜3の二価の脂肪族炭化水素残基(フェニル置換を有してもよい)、酸素原子もしくはイオウ原子(スルホニルになっていてもよい)を介して結合した2〜4価の芳香族基又はノボラック樹脂のヒドロキシ基を除いた残基である上記第1項に記載の液晶シール剤、
3.多価芳香族基が式
−ph−X−ph−
{式中、phはフェニレン基(置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよい)、Xは−O−、−S−、−S(O)−又は式
−C(R)(R)−
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示すか、又はR及びRが結合して、C(R)(R)でフルオレン環を示す)
で示される架橋基を示す}
で示される2価の芳香族基である上記第2項に記載の液晶シール剤、
4.一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)がビスフェノールS型であり、且つnが0〜3(平均値)である上記第1項に記載の液晶シール剤、
5.エポキシ樹脂(a)が一般式(2)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、R、Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す)
で表されるエポキシ樹脂である上記第4項に記載の液晶シール剤、
6.エポキシ樹脂(a)が一般式(3)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す)
で表されるエポキシ樹脂である上記第5項に記載の液晶シール剤、
7.エポキシ樹脂(a)が一般式(4)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3の正数を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す)
で表されるエポキシ樹脂である上記第1項に記載の液晶シール剤、
8.−O−R−が−O−CHCH−である上記第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
9.nが1〜1.5である上記第1項、第4項に記載の液晶シール剤、
10.熱硬化剤(b)が多官能ジヒドラジド類又は多価フェノール化合物である上記第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
11.多官能ジヒドラジド類がイソフタル酸ジヒドラジド、バリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類又はアジピン酸ジヒドラジドである上記第10項に記載の液晶シール剤、
12.エポキシ樹脂(a)と熱硬化剤(b)との配合比が、該エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対し、該熱硬化剤(b)の活性水素当量0.8〜3当量であり、平均粒径3μm以下の充填材(c)の液晶シール剤中の含有量が5〜40重量%である上記第1項〜第11項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
13.更に(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)、ラジカル発生型光重合開始剤(e)を成分として含有する上記第1項〜第12項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
14.(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)が芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである上記第13項に記載の液晶シール剤、
15.芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートがビスフェノール型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである上記第14項に記載の液晶シール剤、
16.(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)が、一般式(1)においてnがゼロでないエポキシ樹脂(a)の(メタ)アクリレートである上記第13項に記載の液晶シール剤、
17.ラジカル型光重合開始剤(e)がカルバゾール系光重合開始剤又はアクリジン系光重合開始剤である上記第13項〜第16項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
18.更にシランカップリング剤(f)を含有する上記第1項〜第17項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
19.更にイオン捕捉剤(g)を含有する上記第1項〜第18項の何れか1項に記載の液晶シール剤、
20.イオン捕捉剤が、酸化ビスマス系イオン捕捉剤、酸化アンチモン系イオン捕捉剤、リン酸チタン系イオン捕捉剤、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤、ハイドロタルサイト系イオン捕捉剤からなる群から選ばれた少なくとも1種類である上記第19項に記載の液晶シール剤、
21.液晶シール剤中の含有量がエポキシ樹脂(a)成分5〜80%、熱硬化剤(b)成分2〜20%、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)成分5〜50%、(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)成分5〜80%、ラジカル発生型光重合開始剤(e)成分0.1〜3%、シランカップリング剤(f)成分0.2〜2%、イオン捕捉剤(g)成分0.2〜20%である上記第19項又は20項に記載の液晶シール剤、
22.上記第1項〜第21項の何れか1項に記載の液晶シール剤の硬化物でシールされた液晶表示セル、
23.2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された上記第1項〜第22項の何れか1項に記載の液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで該液晶シール剤を硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法、
24.一般式(1)

(式中、aは2〜4の整数、nは0〜3(平均値)、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Aは多価芳香族基、Gはグリシジル基を表す。但し、nが0の場合は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)はビスフェノールS型である。)
で表されるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とする組成物、
25.更に(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)、ラジカル発生型光重合開始剤(e)、シランカップリング剤(f)及びイオン捕捉剤(g)を含有することを特徴とする上記第24項に記載の組成物、
に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の液晶シール剤及び組成物は、一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とする。
一般式(1)におけRで表わされる炭素数2〜6の二価炭化水素基としては飽和、不飽和、鎖状、環状もしくはそれらの組み合わせ何れでもよいが通常炭素数2〜6のアルキレン基が好ましい。
一般式(1)におけるAで表わされる多価芳香族基としては、フェノール性のヒドロキシ基を2以上有する芳香族多価アルコールのヒドロキシ基を除いた芳香族残基であれば特に制限はない。例えば、2〜3価のフェノール残基、2〜4個のベンゼン環又はナフタレン環(ベンゼン環又はナフタレン環上に、置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよく、該環上の結合手の合計が2〜4個である)が、単結合、炭素数1〜3の二価の脂肪族炭化水素残基(フェニル置換を有してもよい)、酸素原子もしくはイオウ原子(スルホニルになっていてもよい)を介して結合した2〜4価の芳香族基又はノボラック樹脂のヒドロキシ基を除いた残基が挙げられる。より好ましくは多価芳香族基が式
−ph−X−ph−
{式中、phはフェニレン基(置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよい)、Xは−O−、−S−、−S(O)−又は式
−C(R)(R)−
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示すか、又はR及びRが結合して、C(R)(R)でフルオレン環を示す)
で示される架橋基を示す}
で示される2価の芳香族基が挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)は、一般式(1)においてnが0のとき(該エポキシ樹脂(a)がビスフェノールS型エポキシ樹脂のとき)は、原料となるビスフェノールS、ビスC1〜C6炭化水素基置換フェノールS(ベンゼン核上にC1〜C6炭化水素置換を有するビスフェノールS)等のビスフェノールS類、該ビスフェノールS類にアルキレンオキサイド等を反応させて得られるビス(ヒドロキシ−アルコキシフェニル)スルホン類もしくはビスフェノールSノボラック等のビスフェノールS類を骨格分子に含むノボラック等にエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。また、nが0以外のときは、まず、原料となる芳香族多価アルコール、好ましくは、上記Aの説明で挙げた基に対応する芳香族多価アルコール、より好ましくはフェノール化合物(モノ又は多価フェノールが架橋基を介して結合した芳香族多価アルコール又は多価フェノール)にアルキレンオキサイドを付加させ、次いで得られた化合物の水酸基をエピハロヒドリンと反応させて得られる。
原料となる芳香族多価アルコールとしては芳香族多価アルコールであれば特に制限されるものではないが、多価フェノール化合物が好ましく、それらの例としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、オキシジフェノールおよびチオジフェノール等のビスフェノール類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラックおよびトリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック等のノボラック類、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンおよびピロガロール等のヒドロキシ基を2〜3有する多価フェノール、ビフェノール等が挙げられる。好ましくはビスフェノール型(ビフェノールも含む)2価アルコールが挙げられ、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、オキシジフェノール、チオジフェノール、ビフェノールであり、更に好ましくはビスフェノールSおよびビスフェノールフルオレンである。エピハロヒドリンとしては特に限定はしないが、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン等が挙げられるが、好ましいのはエピクロルヒドリンである。
フェノール化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしては、一般式(1)のRに対応するアルキレンオキサイドであれば特に制限はない。通常エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、メチルエチレンオキサイド、ヘキサメチレンオキサイド等の炭素数2〜6のアルキレンオキサイドを挙げることができ、耐熱性、機械強度の観点からエチレンオキサイドが好ましい。同様に付加するアルキレンオキサイドはフェノール1当量につきアルキレンオキサイド0.5〜3当量が好ましく、更に好ましくは1.0〜1.5当量である。
本発明の液晶シール剤は熱硬化剤(b)を含有する。熱硬化剤としては加熱により、通常は50℃以上に加熱することによりエポキシ樹脂と反応して硬化物を形成するものであれば特に限定されるものではない。通常加熱した時に液晶シール剤が液晶を汚染することなく均一に速やかに反応を開始すること、使用時には室温下における経時的な粘度変化が少ないことが重要であり、これらの条件を満たすものが好ましい。熱硬化条件としては液晶滴下方式の場合、封入される液晶の特性低下を最小限に留める為、一般に120℃以下の温度で、1時間程度での低温硬化能が求められている。以上の点を鑑みて、本発明の液晶シール剤における熱硬化成分として特に多官能ジヒドラジド類、多価フェノール類を使用することが好ましい。
多官能ジヒドラジド類とは分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものを指し、何れも使用できる。一般的には、炭素数2〜20の脂肪族又は芳香族炭化水素骨格上に酸ヒドラジド基を2以上、通常2〜4個有する酸ヒドラジドが挙げられる。なお該酸ヒドラジド基は該炭化水素骨格上に形成されたヒダントイン骨格上に、C1〜C3アルキレンを介して結合していてもよい。また、芳香族炭化水素骨格のときは骨格中に1〜2個の窒素原子を含んでいてもよい。
多官能ジヒドラジド類の具体例としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド等の脂肪酸骨格からなる二塩基酸ジヒドラジド類、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド等の芳香族ジヒドラジド類、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のバリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多官能ジヒドラジド類を硬化剤として使用する場合には、粒径を細かくして均一に分散することが好ましい。多官能ジヒドラジド類のうち、特に好ましいのはイソフタル酸ジヒドラジド、バリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類であり、その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、平均粒径で、3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。また、同様な理由から最大粒径は8μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。硬化剤の粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
また、多価フェノール化合物を硬化剤として使用する場合には、均一系として使用することが好ましい。好ましい多価フェノール化合物の例としては、フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、クレゾールホルムアルデヒド重縮合物、ヒドロキシベンズアルデヒド・フェノール重縮合物、クレゾール・ナフトール・ホルムアルデヒド重縮合物、レゾルシン・ホルマリン重縮合物、フルフラール・フェノール重縮合物、α−ヒドロキシフェニル−ω−ヒドロポリ(ビフェニルジメチレン−ヒドロキシフェニレン)等の多官能ノボラック類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、4,4’−ビフェニルフェノール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の液晶シール剤中、熱硬化剤(b)の配合比は、活性水素当量で、エポキシ樹脂(a)に対して0.8〜3.0当量が好ましく、より好ましくは0.9〜2.0当量である。熱硬化剤(b)の量がこの程度のとき、接着力が強く、ガラス転移等も高く、十分なポットライフを有し好ましい。
本発明で使用する充填材(c)としては、充填剤の役割を果たすものであれば、特に限定されるものではなく、例えば溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク等である。前記の充填剤は2種以上を混合して用いても良い。これらの充填材の平均粒径は、上下ガラス基板を貼り合わせて液晶セルを製造する際の、適当なギャップ形成のし易さを考慮すると、3μm以下のものが好ましい。
本発明で使用される充填材(c)の液晶シール剤中の含有量は、液晶セルのギャップ形成のし易さ、ガラス基板に対する接着強度、耐湿信頼性、吸湿後の接着強度の維持等を考慮すると、通常5〜40重量%、好ましくは15〜25重量%である。
本発明の液晶シール剤はその他の成分として、下記するように、光硬化性樹脂、ラジカル発生型光重合開始剤およびイオン補足剤、有機溶媒その他の添加剤などを含むことができる。従って本発明のシール剤の好ましい組成の一つはシール剤全体に対して、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)が5%〜85%、好ましくは10%〜50%、熱硬化剤(b)が、活性水素当量で、エポキシ樹脂(a)に対して0.8〜3.0当量、好ましくは0.9〜2.0当量、充填材(c)が5〜40重量%、好ましくは15〜25重量%および残部がその他の成分であり、0〜88%程度である。
本発明の液晶シール剤を液晶滴下方式に適用する為には、光熱併用硬化系とすることが好ましい。光熱硬化併用系では、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。光熱併用硬化系とすることを目的として本発明の液晶シール剤に、(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)、ラジカル発生型光重合開始剤(e)を含有させてもよい。
(ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。以下同様。)
(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)は特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂を(メタ)アクリル化したものが好ましい。2官能以上のエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶に対する溶解性が小さいものが好ましく、具体的には2官能以上の芳香族エポキシ樹脂(反応性水酸基を有する芳香族化合物とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂。反応性水酸基を有する芳香族化合物としては特に限定されないが、前記エポキシ樹脂(a)の項で説明した芳香族多価アルコールが挙げられ、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、オキシジフェノールおよびチオジフェノール等のビスフェノール類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラックおよびトリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック等のノボラック類、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンおよびピロガロール等の多価フェノール、ビフェノール等が挙げられる。)の(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくは2官能の芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、具体的にはビスフェノール型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、レゾルシンの(メタ)アクリレートである。アルキレンオキサイド単位を有するエポキシ樹脂(a)の(メタ)アクリレートも好ましい。なおビスフェノール型エポキシ樹脂としては前記エポキシ樹脂(a)の項で説明したビスフェノール型(ビフェノールも含む)2価アルコール若しくはそれにアルキレンオキサイドなどを反応させて得られる芳香族基を有する2価アルコールにエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。より具体的には下記式(5)

(式中G、R、n,phおよびXは前記したと同じ意味を有する)
で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
また、本発明は、上記以外の従来公知のエポキシ樹脂との併用を制限するものではない。例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、含複素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等があげられ、本発明の特性を失わせない範囲でこれらのエポキシ樹脂を併用しても構わない。通常は前記エポキシ樹脂(a)(上記をシール剤中におけるエポキシ樹脂全量に対して50〜100重量%(以下同じ)の範囲、好ましくは80〜100%の範囲、より好ましくは90〜100%の範囲である。
光熱併用硬化系も含めて本発明の液晶シール剤は、エポキシ樹脂由来の加水分解性塩素量が600ppm以下、より好ましくは300ppm以下であるものが好ましい。下限はできるだけ100ppm以下と少ない方がよいが、技術的な問題や、コストなどから、通常は300ppm程度で十分である。この程度の加水分解性塩素含有のときは、シール剤からの塩素での液晶汚染の心配はあまりない。加水分解性塩素量は、例えば次のようにして定量される。まず、約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量することができる。なお、エポキシ樹脂由来の加水分解性塩素は、上記のエポキシ樹脂(a)由来のものと、(メタ)アクリレート製造時に使用するエポキシ樹脂由来のものおよびその他のエポキシ樹脂を併用する場合にはそれ由来のものがある。ここでいうエポキシ樹脂由来の加水分解性塩素量とは、その総量のことである。
本発明において使用するエポキシ(メタ)アクリレートは、前述したエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を、触媒と重合防止剤の存在下に、エステル化させることにより得られる。反応時は希釈溶剤としてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;シクロヘキサノン、シクロヘキサノールなどの脂環式炭化水素及び石油エーテル、石油ナフサなどの石油系溶剤類の1種又は2種以上を加えても良い。これらの希釈溶剤を使用する場合、反応終了後に減圧留去する必要があるため沸点が低く且つ揮発性が高い溶剤が好ましく、具体的にはトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、カルビトールアセテートの使用が好ましい。反応を促進させる為に触媒を使用することが好ましい。使用しうる触媒としては、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等が挙げられる。その使用量は反応原料混合物に対して、好ましくは、0.1〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%である。反応中(メタ)アクリル基の重合を防止する為に、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。その使用量は反応原料混合物に対して好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。反応温度は、通常60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃である。また、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
反応性及び粘度の制御のために(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂として(メタ)アクリル酸エステルのモノマー及び/又はオリゴマーを併用しても良い。そのようなモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応物、ジペンタエリスリトール・カプロラクトンと(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられるが、液晶に対する汚染性が低いものならば特に制限されるものではない。
本発明の液晶シール剤に用いられるラジカル発生型光重合開始剤(e)としては、液晶の特性に比較的影響が小さいi線(365nm)付近に感度を持ち、なお且つ液晶汚染性が低い開始剤であることが好ましい。使用しうるラジカル発生型光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン等があげられ、好ましいものとしては、例えば3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール等のカルバゾール系光重合開始剤、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン等のアクリジン系光重合開始剤があげられる。
本発明の液晶シール剤中、(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)成分に対するラジカル発生型光重合開始剤(e)の配合比は、通常(d)成分100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。ラジカル発生型光重合開始剤の量が0.1重量部より少ないと光硬化反応が充分でなくなり、10重量部より多くなると液晶に対する開始剤による汚染や硬化樹脂特性の低下が問題になる虞がある。
本発明の液晶シール剤は、その接着強度を向上させるために、シランカップリング剤(f)を含有することが好ましい。使用しうるシランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。これらのうち、より良好な接着強度を得るためにはシランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤を使用する事により接着強度が向上し、耐湿信頼性が優れた液晶シール剤が得られる。
本発明の液晶シール剤には必要に応じて更にイオン捕捉剤(g)を含有せしめてもよい。イオン捕捉剤の添加は液晶シール剤の不純物無機イオンを吸着、固定化し液晶に溶出する無機イオンを低減するため、液晶の比抵抗値の低下を防ぐ効果がある。イオン捕捉剤としては、イオン捕捉能を有する無機化合物であることが好ましい。ここで言うイオン捕捉能は、リン酸、亜リン酸、有機酸アニオン、ハロゲンアニオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン等を捕捉することによりイオン性不純物を減少させるものである。用いうるイオン捕捉剤としては、例えば一般式BiOX(OH)Y(NO3)Z[ここで、Xは0.9〜1.1、Yは0.6〜0.8、Zは0.2〜0.4の正数である]で表される酸化ビスマス系イオン捕捉剤、酸化アンチモン系イオン捕捉剤、リン酸チタン系イオン捕捉剤、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤、一般式MgXAlY(OH)2X+3Y−2Z(CO3)Z・mH2O[ここで、X、Y、Zは2X+3Y−2Z≧0を満たす正数、mは正数である]で表されるハイドロタルサイト系イオン捕捉剤等が挙げられる。これらのイオン捕捉剤は、例えば、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)、IXE−300(東亞合成株式会社製、酸化アンチモン系イオン捕捉剤)、IXE−400(東亞合成株式会社製、リン酸チタン系イオン捕捉剤)、IXE−500(東亞合成株式会社製、酸化ビスマス系イオン捕捉剤)、IXE−600(東亞合成株式会社製、酸化アンチモン・酸化ビスマス系イオン捕捉剤)、DHT−4A(ハイドロタルサイト系イオン捕捉剤、協和化学工業株式会社)、キョーワードKW−2000(ハイドロタルサイト系イオン捕捉剤、協和化学工業株式会社)として市販されている。これらは単独でも2種以上を混合して用いても良い。イオン捕捉剤は液晶シール剤組成物中で通常0.2〜20重量%を占める割合で用いるのが好ましい。
本発明による液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機溶媒、有機充填材、応力緩和材、ならびに顔料、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
本発明の液晶シール剤の各構成成分の比率は特に限定されるものではないが、好ましくは、シール剤(組成物)全量に対する各成分の含量が、一般式(1)においてnがゼロでない(構造中にアルキレンオキサイド単位を有する)エポキシ樹脂(a)成分5〜80%、、熱硬化剤(b)成分2〜20%、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)成分5〜50%、(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)成分5〜80%、、ラジカル発生型光重合開始剤(e)成分0.1〜3%、シランカップリング剤(f)成分0.2〜20%、イオン捕捉剤(g)成分0.2〜2%である。この本発明の液晶シール剤を得るには、例えば(a)、(d)、(e)成分を前記した混合割合で溶解混合する。次いでこの混合物に(b)、(c)、(f)、(g)成分等の所定量を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。必要により、混合が終わったあと夾雑物を除く為に、濾過処理を施してもよい。
本発明の液晶セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板としてはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法は、例えば本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー等により該液晶シール剤を堰状に塗布した後、該液晶シール剤堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機により液晶シール部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、通常500〜6000mJ/cm2、好ましくは1000〜4000mJ/cm2の照射量である。その後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
本発明の液晶シール剤は、製造工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度、室温での使用可能時間(ポットライフ)、低温硬化性に優れる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
合成例1:4,4’−置換EO付加ビスSエポキシ樹脂(エポキシ樹脂A)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに4,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホン(日華化学製;商品名SEO−2、融点183℃、純度99.5%)169部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド185部、テトラメチルアンモニウムクロライド5部を加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム60部を100分かけて分割添加した後、更に50℃で3時間、後反応を行った。反応終了後水400部を加えて水洗を行った。油層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン450部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(6)で表される液状エポキシ樹脂A212部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は238g/eq、25℃における粘度は113400mPa・sであった。

(式中、Gはグリシジル基を表す。)
合成例2:エチレンオキサイド付加ビスフェノールフルオレンエポキシ樹脂(エポキシ樹脂B)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながらビスフェノキシエタノールフルオレン(大阪ガス株式会社製;商品名BPEF、白色固体、融点124〜126)220部をエピクロルヒドリン370部に溶解させ、テトラメチルアンモニウムクロライド5部を添加した。更に45℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム60部を100分かけて分割添加し、その後、更に45℃で3時間反応させた。反応終了後水洗を2回行い生成塩などを除去した後、ロータリーエバポレーターを使用し、130℃に加熱し減圧下で過剰のエピクロルヒドリン等を留去し、残留物に552部のメチルイソブチルケトンを加え溶解した。このメチルエチルケトンの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し1時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。更に水層は分離除去し、ロータリーエバポレーターを使用して油層から加熱減圧下メチルエチルケトンを留去し、下記式(7)で表されるエポキシ樹脂Bを得た。得られたエポキシ樹脂は半固形であり、エポキシ当量は294g/eqであった

(式中、Gはグリシジル基を表す。)
合成例α:2,4’−置換EO付加ビスSエポキシ樹脂(エポキシ樹脂E)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに2,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホン(水酸基当量:209、日華化学製)169部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド185部を加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム60部を100分かけて分割添加した後、更に50℃で3時間、後反応を行った。反応終了後水400部を加えて水洗を行った。油層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン450部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(8)で表される液状エポキシ樹脂A220部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は232g/eqであった。

合成例β:アリル基で置換されたEO付加ビスSエポキシ樹脂(エポキシ樹脂F)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに下記式(9)の化合物(水酸基当量209)125.4部、エピクロルヒドリン222部、ジメチルスルホキシド111部を加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム36.4部を100分かけて分割添加した後、更に50℃で3時間、後反応を行った。反応終了後水400部を加えて水洗を行った。油層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン318部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液6部を加え、1時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(10)で表される液状エポキシ樹脂E153部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は265g/eqであった。

実験例1:液晶溶出物テスト
液晶と高沸点成分からなるエポキシ樹脂の接触により液晶に溶出するシール剤構成成分をガスクロマトグラフィーで定量した。すなわち、サンプル瓶に高沸点成分からなるエポキシ樹脂を0.1g入れ、液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1mlを加えた後、シール剤の硬化条件を想定して120℃オーブンに1時間接触処理した。その後、1時間室温にて放置し、空のサンプル瓶に接触処理後の液晶を移し替えた。この液晶に溶出したエポキシ樹脂を、ペンタデカンを内部標準物質に用い、ガスクロマトグラフィーにて液晶に対する溶出量(wt%)を定量した。結果を表1に示す。


表1から明らかなように、従来液晶シール剤に用いられてきたビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C)の液晶への溶出量は極めて多いが、エチレンオキサイドを付加した構造のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂B)の溶出量は非常に少なくなっている。また、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂D)の溶出量はそれ自体少ないが、エチレンオキサイドを付加した構造としたエポキシ樹脂Aの液晶への溶出量は更に1/10以下になっていることが分かる。
【実施例1】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、合成例のエポキシ樹脂Aを20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)4.1重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)1重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例2】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、合成例のエポキシ樹脂Bを20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)3.3重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)1重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は400Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例3】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、合成例のエポキシ樹脂Aを20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アジピン酸ジヒドラジド(商品名ADH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点181℃、活性水素当量43.5g/eq、平均粒径1.3μm、最大粒径5μm)3.8重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)1重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は300Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
【実施例4】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、実験例で用いたエポキシ樹脂D(EBPS−300;日本化薬株式会社製)を20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)4.2重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)1重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は480Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
比較例1
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、実験例のエポキシ樹脂C(RE−310P;日本化薬株式会社製)を20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)5.7重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部、IXE−100(東亞合成株式会社製、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤)1重量部を添加して3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は200Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
実験例2
次に、実施例1、2及び比較例1、2の液晶シール剤について、液晶溶出物テスト、接着強度テスト、ポットライフテストを実施し、またガラス転移点を測定した。結果を表2に示す。

表2から明らかなように、実施例1、2に示される本発明の滴下工法用液晶シール剤と比較例2に示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した滴下工法用液晶シール剤を対比すると、接着強度、ポットライフ、ガラス転移点ではほぼ同じ数値を示している。しかし、液晶への溶出物量を見ると、比較例1の液晶シール剤では6450ppmであるのに対し、実施例1の液晶シール剤では500ppm、実施例2の液晶シール剤では650ppmであり、大幅に減少している。また、実施例1に示される本発明の滴下工法用液晶シール剤と実施例4に示される滴下工法用液晶シール剤を対比すると、双方ともビスフェノールS骨格を有するが故に液晶への溶出量は少なくなっているが、エチレンオキサイドを付加した構造とした実施例1の方がエポキシ樹脂の液晶への溶出量は一段と少なくなっていることが分かる。
すなわち、本発明の滴下工法用液晶シール剤では、シール剤としての特性を維持したまま、液晶への溶出物の量が大幅に減少していることがわかる。
なお、各テストは下記の方法で実施した。
接着強度テスト
得られた液晶シール剤100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせUV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させた。そのガラス片のせん断接着強度を測定した。
ポットライフテスト
得られた液晶シール剤を30℃にて放置し、初期粘度に対しての粘度増加率(%)を測定した。
ガラス転移点
得られた液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み60μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。TMA試験機(真空理工株式会社製)引っ張りモードにてガラス転移点を測定した。
液晶溶出物テスト
液晶と未硬化のシール剤の接触により液晶に溶出したシール剤構成成分をガスクロマトグラフィーで定量した。サンプル瓶に液晶シール剤を0.1g入れ、液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1mlを加えた後、シール剤の硬化条件を想定して120℃オーブンに1時間接触処理した。接触処理条件は光熱併用液晶滴下方式における遮光部を想定して、UV硬化なしの120℃、1時間としたものである。その後、1時間室温にて放置し、空のサンプル瓶に接触処理後の液晶を移し替えた。この液晶に溶出したシール剤構成成分をペンタデカンを内部標準物質に用い、ガスクロマトグラフィーにて溶出量を定量した。
合成例B:ビスフェノールSグリシジルエーテル化物の合成
ビスフェノールS1250g、エピクロルヒドリン2654g、メタノール436g、水125gを加え窒素雰囲気下で撹拌しながら60℃にまで昇温し、溶解した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム445gを100分かけて分割添加した後、更に65℃で3時間、後反応を行った。反応終了後、70℃の湯水を2400gを加えて水洗した後油層から130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン2900g、水133g、を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液133gを加え、1時間反応を行った後、水3600gで水洗を3回行い、180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、ビスフェノールSグリシジルエーテル化物1810gを得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は181g/eqであった。
実験例B1:液晶溶出物テスト
液晶と上記記載の方法で合成したエポキシ樹脂の接触により液晶に溶出するシール剤構成成分をガスクロマトグラフィーで定量した。すなわち、サンプル瓶にビスフェノールSエポキシ樹脂を0.1g入れ、液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1mlを加えた後、シール剤の硬化条件を想定して120℃オーブンに1時間接触処理した。その後、1時間室温にて放置し、空のサンプル瓶に接触処理後の液晶を移し替えた。この液晶に溶出したエポキシ樹脂を、ペンタデカンを内部標準物質に用い、ガスクロマトグラフィーにて液晶に対する溶出量(wt%)を定量した。比較例にはビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を用いた(比較例B1)。結果を表B1に示す。

表B1から明らかなように、比較例B1のビスフェノールA型エポキシ樹脂では、溶出量が9.2wt%に達する。これに対し、本発明で使用するビスフェノールS型エポキシ樹脂では、溶出量が0.6wt%にすぎず、エポキシ樹脂の液晶中への溶出量が約1/15と大幅に減少している。ビスフェノールS型エポキシ樹脂を用いると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べ、液晶成分に溶出しにくいことが明らかである。
実施例B1
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、合成例のビスフェノールSエポキシ樹脂20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)5.4重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部を添加して3本ロールにより混練して液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は480Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)。
比較例B2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)に対して、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を反応させ、イオン交換水/トルエンの分液処理により精製後、トルエンを留去してビスフェノールFエポキシのアクリレートを得た。得られたビスフェノールFエポキシのアクリレート80重量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、RE−310P、エポキシ当量170g/eq、加水分解性塩素量120ppm)20重量部、ラジカル発生型光重合開始剤として3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール(旭電化工業(株)製、アデカオプトマーN−1414)1.8重量部、アミノシランカップリング剤(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン(株)製、KBM−603)1.2重量部、を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後イソフタル酸ジヒドラジド(商品名IDH−S;大塚化学(株)製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、融点224℃、活性水素当量48.5g/eq、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)5.7重量部、溶融破砕シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)30重量部を添加して3本ロールにより混練して液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は200Pa・sであった(R型粘度計(東機産業(株)製)で測定)
実験例B2
次に、実施例1及び比較例2の液晶シール剤について、液晶溶出物テスト、接着強度テスト、ポットライフテストを実施し、またガラス転移点を測定した。結果を表2に示す。

表B2から明らかなように、実施例B1に示される本発明の滴下工法用液晶シール剤と比較例2に示される公知の部分(メタ)アクリレート化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した滴下工法用液晶シール剤を対比すると、接着強度、ポットライフ、ガラス転移点ではほぼ同じ数値を示している。しかし、液晶への溶出物量を見ると、比較例2の液晶シール剤では6450ppmであるのに対し、実施例1の液晶シール剤では700ppmであり、大幅に減少している。すなわち、本発明の滴下工法用液晶シール剤では、シール剤としての特性を維持したまま、液晶への溶出物の量が大幅に減少していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
基板への塗布作業性と貼り合わせ性に優れ、ポットライフが長く、強い接着強度、低液晶汚染性、ギャップ形成能に優れた本発明の液晶シール剤を液晶滴下工法に使用することにより、歩留まり、生産性が向上した液晶表示セルの製造が可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

(式中、aは2〜4の整数、nは0〜3(平均値)、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Aは多価芳香族基、Gはグリシジル基を表す。但し、nが0の場合は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)はビスフェノールS型である。)
で表されるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とする液晶シール剤。
【請求項2】
多価芳香族基が、2〜3価のフェノールもしくはナフトール残基、2〜4個のベンゼン環又はナフタレン環(ベンゼン環又はナフタレン環上に、置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよく、該環上の結合手の合計が2〜4個である)が、単結合、炭素数1〜3の二価の脂肪族炭化水素残基(フェニル置換を有してもよい)、酸素原子もしくはイオウ原子(スルホニルになっていてもよい)を介して結合した2〜4価の芳香族基又はノボラック樹脂のヒドロキシ基を除いた残基である請求の範囲第1項に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
多価芳香族基が式
−ph−X−ph−
{式中、phはフェニレン基(置換基として炭素数1〜6の脂肪族基を有していてもよい)、Xは−O−、−S−、−S(O)−又は式
−C(R)(R)−
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示すか、又はR及びRが結合して、C(R)(R)でフルオレン環を示す)
で示される架橋基を示す}
で示される2価の芳香族基である請求の範囲第2項に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)がビスフェノールS型であり、且つnが0〜3(平均値)である請求の範囲第1項に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
エポキシ樹脂(a)が一般式(2)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、R、Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂である請求の範囲第4項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
エポキシ樹脂(a)が一般式(3)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂である請求の範囲第5項に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂(a)が一般式(4)

(式中、n、nは各々独立に0.5〜3の正数を表し、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Gはグリシジル基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂である請求の範囲第1項に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
−O−R−が−O−CHCH−である請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
nが1〜1.5である請求の範囲第1項、第4項に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
熱硬化剤(b)が多官能ジヒドラジド類又は多価フェノール化合物である請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
多官能ジヒドラジド類がイソフタル酸ジヒドラジド、バリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類又はアジピン酸ジヒドラジドである請求の範囲第10項に記載の液晶シール剤。
【請求項12】
エポキシ樹脂(a)と熱硬化剤(b)との配合比が、該エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対し、該熱硬化剤(b)の活性水素当量0.8〜3当量であり、平均粒径3μm以下の充填材(c)の液晶シール剤中の含有量が5〜40重量%である請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項13】
更に(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)、ラジカル発生型光重合開始剤(e)を成分として含有する請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項14】
(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)が芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである請求の範囲第13項に記載の液晶シール剤。
【請求項15】
芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートがビスフェノール型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートである請求の範囲第14項に記載の液晶シール剤。
【請求項16】
(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)が、一般式(1)においてnがゼロでないエポキシ樹脂(a)の(メタ)アクリレートである請求の範囲第13項に記載の液晶シール剤。
【請求項17】
ラジカル型光重合開始剤(e)がカルバゾール系光重合開始剤又はアクリジン系光重合開始剤である請求の範囲第13項に記載の液晶シール剤。
【請求項18】
更にシランカップリング剤(f)を含有する請求の範囲第1項〜第7項及び第13項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項19】
更にイオン捕捉剤(g)を含有する請求の範囲第1項〜第7項、第13項及び第18項の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項20】
イオン捕捉剤が、酸化ビスマス系イオン捕捉剤、酸化アンチモン系イオン捕捉剤、リン酸チタン系イオン捕捉剤、リン酸ジルコニウム系イオン捕捉剤、ハイドロタルサイト系イオン捕捉剤からなる群から選ばれた少なくとも1種類である請求の範囲第19項に記載の液晶シール剤。
【請求項21】
液晶シール剤中の含有量がエポキシ樹脂(a)成分5〜80%、熱硬化剤(b)成分2〜20%、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)成分5〜50%、(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)成分5〜80%、ラジカル発生型光重合開始剤(e)成分0.1〜3%、シランカップリング剤(f)成分0.2〜2%、イオン捕捉剤(g)成分0.2〜20%である請求の範囲第19項に記載の液晶シール剤。
【請求項22】
請求の範囲第1項〜第7項、第13項、第18項及び第19項の何れか1項に記載の液晶シール剤の硬化物でシールされた液晶表示セル。
【請求項23】
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された請求の範囲第1項〜第7項、、第13項、第18項及び第19項の何れか1項に記載の液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで該液晶シール剤を硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法。
【請求項24】
一般式(1)

(式中、aは2〜4の整数、nは0〜3(平均値)、Rは炭素数2〜6の二価炭化水素基、Aは多価芳香族基、Gはグリシジル基を表す。但し、nが0の場合は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)はビスフェノールS型である。)
で表されるエポキシ樹脂(a)、熱硬化剤(b)、及び平均粒径3μm以下の充填材(c)を含有することを特徴とする組成物。
【請求項25】
更に(メタ)アクリル基を含有する硬化性樹脂(d)、ラジカル発生型光重合開始剤(e)、シランカップリング剤(f)及びイオン捕捉剤(g)を含有することを特徴とする請求の範囲第24項に記載の組成物。

【国際公開番号】WO2004/090621
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505290(P2005−505290)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004972
【国際出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】