説明

液晶ポリマーを含有するバリアコーティング組成物およびこのバリアコーティング組成物を含有するデバイス

本発明は、液晶ポリマーを含有するバリアコーティング組成物として、液晶ポリマーが、重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を基板にまず適用し、その後に重合せしめて形成されることを特徴とするもの、その製造方法、その使用、そしてデバイス、好ましくはディスプレイ、食物の包装、医薬の包装であって、少なくとも1つのバリアコーティング層として本発明のバリアコーティング組成物を含むものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、重合性メソゲン化合物から調製される液晶ポリマーを含有するバリアコーティング組成物に関する。このバリアコーティング組成物は、有機電界効果トランジスタ、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、TVスクリーンのディスプレイ、光電池、リチウム電池、食物の包装、医薬の包装および水および/または酸素に対するバリアコーティング層を必要とする他の用途において用いることができる。
また、本発明は、上記のようなバリアコーティング組成物を含有するデバイス、好ましくはディスプレイに関するとともに、それらの製造方法(fabrication process)に関する。ディスプレイは、とくに液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、TVスクリーンのディスプレイおよび他のフレキシブルディスプレイに適する。
【0002】
従来技術
デバイスのうち、有機電界効果トランジスタ、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、光電池およびリチウム電池のようなものは、通常反応性有機材料を含有している。しかしながら、これらの反応性有機材料は、水および/または酸素の影響を受けやすい。したがって、これらのデバイスは、効率的で長期にわたる動作を可能ならしめるためにバリアコーティングを必要とする。
現在のところ、主としてガラスシートまたは金属ケースをバリア層として用いることによって、水および/または酸素の放散を防いでいる。しかしながら、ガラスや金属を用いると、重さと強固さの面における問題が生じる。
【0003】
ガラスと金属の代わりに、より近時においては、ラミネートシートとしてポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリナフタレンテレフタラート(PEN)と無機化合物であるシリカ、アルミナまたは窒化シリコンとを交互に層として含むものが用いられている。このような材料としては、例えばBarix(登録商標)がVitexによって販売されている。これらのラミネートシートの欠点は、それらが不透明であり、および/またはいくつかの真空蒸着工程によって必要な構造を構築する必要があることである。ディスプレイアプリケーションについては、透明なコーティングおよびより簡便な溶液をベースとする製造方法が必要とされている。
医薬および食物の包装の製造は、通常、重合材料としてPETまたはPENのようなものを押し出し加工または共押し出し加工することによって行われている。これらは、アルミニウムのような金属の層によって覆うことによって、バリアとしての性能を向上せしめる場合もある。
【0004】
また、液晶ポリマーの使用について、医薬品および他のプラスチック部材であって高度な保護が要求されるものの製造において報告されている。
液晶ポリマーフィルム構造体として、2つの比較的薄い外面部として第一の制御可能な方向に配向されたものおよび比較的厚い内面部として少なくとも第二の制御可能な方向に配向され、第三の制御可能な方向に配向されていてもよいものを含むか、または2つの外面層として概ね第一の制御可能な方向に配向されたもの、2つの中間層として、それぞれ前記外面層の内部に存在し、概ね第二の制御可能な方向に配向されているもの、および中心コア層として前記中央の層に挟まれ、概ね第三の制御可能な方向に配向されているものを含むものが、米国特許5,288,529号に開示されている。
【0005】
複合材料として、異方性でありサーモトロピックである液晶ポリマーマトリクスおよび/または液晶ポリマーの混合物および熱可塑性ポリマーとして繊維補強ユニットによって補強されていて、該補強繊維が連続的な炭素繊維であることを特徴とするものを含むものが、WO 94/29386に開示されている。
複層重合バリア材料として(1)第一のサンドイッチポリマー層、(2)少なくとも一つの挟まれ、配向された液晶ポリマー層、および(3)第二のサンドイッチポリマー層を含み、第一および第二のサンドイッチポリマー層がそれらの間に液晶層を挟むように配置されているものが、米国特許6,179,818号に開示されている。
これらの液晶ポリマーの欠点は、これらのポリマーの構造に起因して、一方においてその製造が、他方において全ての鎖単位を完全に配向せしめることが、極めて困難なことである。
【0006】
解決すべき課題
したがって、本発明の課題は、バリアコーティング組成物として、以下を示すものを開発することにあった:
−要求されるバリア特性、
−要求される透明性、
−要求される柔軟性、
−小さい重量、および
−製造が極めて容易であること。
【0007】
本願のもう一つの目的は、前記バリアコーティング組成物の製造方法を提供することにあった。好ましくは、前記バリアコーティング組成物は溶液によって製造され、より好ましくは一段階のリール−トゥ−リール(reel-to-reel)プロセスによる溶液によって製造される。
本発明のさらなる目的は、バリアコーティング組成物として、有機電界効果トランジスタ、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、TVスクリーンのディスプレイ、光電池、リチウム電池、さらには食物の包装および医薬の包装ならびに水および/または酸素に対するバリアを必要とする他の用途おいて用い得るものを提供することにあった。
【0008】
本発明
驚くべきことに、格別に良好なバリア特性が、ある液晶ポリマーをバリアコーティング組成物として用いると達成されることが見出された。かかるバリアコーティング組成物は、重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物をまず生成し、その後に重合せしめることによって製造される。
したがって、本発明によって、液晶ポリマーを含むバリアコーティング組成物であって、液晶ポリマーが重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を基板にまず適用し、その後に重合せしめて形成されることを特徴とする、前記バリアコーティング組成物が提供される。
【0009】
重合性メソゲン化合物として、あらゆるメソゲン材料であって、重合性であり、当業者に知られているものを用いることができる。
前記および下記において用いる用語「メソゲン化合物」は、棒形状、薄片形状またはディスク形状のメソゲン基、すなわちメソ相挙動を誘導することができる基を有する化合物を示す。これらの化合物は、必ずしもそれ自体がメソ相挙動を示す必要はない。また、これらの化合物は、他の化合物との混合物中でのみ、あるいはメソゲン化合物またはこれらを含む混合物を重合させる際にのみ、メソ相挙動を示すものであってもよい。棒形状および薄片形状のメソゲン基がとくに好ましい。
【0010】
本発明の好ましい態様
前記重合性液晶混合物の前記重合性メソゲン化合物は、好ましくは式Iから選択される。
P−(Sp−X)−MG−R I
式中、
Pは、重合性基であり、
Spは、1〜25個のC原子を有するスペーサー基であり、
Xは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
nは、0または1であり、
MGは、メソゲン基であり、および
Rは、H、CN、NO、ハロゲンあるいは、無置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていることができる、25個までのC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置換されていることも可能であり、または代替的にRは、P−(Sp−X)−を示す。
【0011】
式I中のMGは、好ましくは下記式IIから選択される。
−A−Z−(A−Z−)−A− II
式中、
およびZは、各々独立して、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
、AおよびAは、各々独立して、1つまたは2つ以上のCH基がNによって置換されていてもよい1,4−フェニレン、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基がOおよび/またはSによって置換されていてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2,6−ジイルであり、これら全ての基は、無置換であるか、F、Cl、OH、CN、NOあるいは、1つまたは2つ以上のH原子がFまたはClにより置換されていてもよい1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシまたはアルカノイル基によって一置換または多置換されていることが可能であり、そして
mは、0、1または2である。
【0012】
式IIの好ましいメソゲン基のより小さい群を、下に示す。単純化するために、これらの基におけるPheは1,4−フェニレンであり、PheLは1〜4個の基Lにより置換された1,4−フェニレン基であり、LはF、Cl、CN、OH、NOあるいは1〜7個のC原子を有する任意にフッ素化または塩素化されたアルキル、アルコキシまたはアルカノイル基であり、Cycは、1,4−シクロヘキシレンである、とする。好ましいメソゲン基にかかる下記リストは、従属式II−1〜II−25およびこれらの鏡像を含む。
【化1】

【0013】
とくに好ましいのは、従属式II−1、II−2、II−4、II−6、II−7、II−8、II−11、II−13、II−14、II−15およびII−16である。
これらの好ましい基において、Zは各々の場合、独立して式Iにおいて示したZの意味の1つを有する。好ましくは、Zは−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−または単結合である。
極めて好ましくは、メソゲン基MGは、下記式およびこれらの鏡像から選択される。
【0014】
【化2】

【化3】

式中、Lは、上記の意味を有し、rは0、1または2である、
【0015】
これらの好ましい式における基
【化4】

を示し、Lは、各々独立して、前に示した意味の1つを有する。
【0016】
とくに好ましいのは、従属式IId、IIg、IIh、IIi、IIkおよびIIo、とくに従属式IIdおよびIIkである。
Lは、好ましくはF、Cl、CN、OH、NO、CH、C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OCであり、とくにF、Cl、CN、CH、C、OCH、COCHおよびOCFであり、最も好ましくはF、Cl、CH、OCHおよびCOCHである。
他の好ましい態様において、重合性液晶混合物は、少なくとも1つのキラリティーの中心を有するメソゲン基を含む、少なくとも1種の式Iのキラルな重合性化合物を含む。
【0017】
これらの化合物において、Mおよび/またはMは、好ましくは、下記式から選択される。
−(A−Z)−G− II−1
−(A−Z)−G−(Z−A− II−2
式中、
およびAは、式IIにおいて示された意味を有し、
Zは、式IIにおいて示されたZの意味を有し、
aおよびbは、互いに独立して、0、1または2であり、
は、式IにおけるRと一緒に末端キラル基を形成し、
は、2価のキラルな基である。
【0018】
好ましいキラルな基G−Rは、例えばコレステリル基、テルペノイド基であり、これらは例えばWO96/17901に開示されている。好ましくはメンチル、ネオメンチル、カンフェイル、ピネイル、テルピネイル、イソロンギホリル、フェンチル、カレイル、ミルテニル、ノピル、ゲラニイル、リナロイル、ネリル、シトロネリルおよびジヒドロシトネリルから選択され、より好ましくはメンチルもしくはメントン誘導体またはピラノースまたはフラノース環を有する一環式または二環式基を含む末端キラル糖誘導体であり、例えばWO95/16007に開示されているキラルな糖から誘導される基である。
【0019】
好ましいキラルな基Gは、例えば、コレステリル基もしくは糖から誘導される基、ビナフチル誘導体または光学的に活性なグリコール、とくに1位およびまたは2位においてアルキルまたはアリール基によって置換されたエタン−1,2−ジオール、である。糖基の場合は、これらは好ましくはペントースまたはヘキソース環を含む一環式または二環式基から選択される。
【0020】
下記の基Gはより好ましい。
【化5】

式中、Pheは前記の意味を有し、RはFまたは1〜4個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキルであり、Y、Y、YおよびYは式IにおけるRの意味の1つを有する、
である。
【0021】
とくに、Gはエタンジオールで置換されたジアンヒドロソルビトールであり、例えば下記のようなものである。
【化6】

式中、Rは、F、CHまたはCFである、
または任意に置換されたビナフチル
【化7】

式中、Y、Y、YおよびYは、H、Fまたは1〜8個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキルである。
【0022】
好ましくは、式II−1およびII−2中の−(A−Z)−および−(Z−A−は、上記好ましい式II−1〜II−25およびIIa〜IIoから、最も好ましくは式II1〜II6およびIIa〜IIfから選択される。
非極性基を有する重合性メソゲン化合物の場合には、Rは、好ましくは15個までのC原子を有するアルキル、2〜15個のC原子を有するアルコキシまたは2〜9個のC原子を有するオキサアルキルである。
Rが、アルキルまたはアルコキシ基である場合すなわち末端CH基が−O−により置換されている場合には、これは、直鎖状または分枝状であることができる。これは好ましくは直鎖状であり、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有し、したがって好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシまたはオクトキシであり、さらにメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0023】
Rがオキサアルキル、すなわち1つのCH基が−O−により置換されている場合には、Rは好ましくは、例えば直鎖状2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−オキサブチル(=エトキシメチル)または3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルあるいは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0024】
末端極性基を有する重合性メソゲン化合物の場合には、Rは、CN、NO、ハロゲン、OCH、OCN、SCN、COR、COORまたは1〜4個のC原子を有するモノ、オリゴもしくはポリフッ素化アルキルまたはアルコキシ基から選択される。Rは任意にフッ素化されていて、1〜4個、好ましくは1〜3個のC原子を有するアルキルである。ハロゲンは、好ましくはFまたはClである。とくに好ましくは、これらの化合物におけるRは、F、Cl、CN、NO、OCH、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、C、OCF、OCHFおよびOCから、とくにF、Cl、CN、OCHおよびOCFから選択される。
【0025】
式Iの化合物において、Rはアキラルまたはキラルな基であってもよい。キラルな基である場合には、これは、好ましくは、下記式IIIから選択される:
【化8】

式中、
は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−または単結合であり、
は、1〜10個のC原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシ基あるいは単結合であり、
は、1〜10個のC原子を有し、無置換であるかハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていることができるアルキルまたはアルコキシ基であり、また、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、酸素原子が互いに直接結合しないように−C≡C−、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−または−CO−S−により置換されていることが可能であり、
は、ハロゲン、シアノ基であるかまたは1〜4個のC原子を有し、Qとは異なるアルキルまたはアルコキシ基である。
【0026】
式IIIにおけるQが、アルキレンオキシ基である場合には、O原子は好ましくは、キラルなC原子に隣接している。
【0027】
好ましいキラルな基Rは、例えば、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、2−オクチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレリルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシおよび2−フルオロデシルオキシであり、とくに2−メチルブチルである。
【0028】
さらに、アキラルな分枝状基Rを含む式Iの化合物が重要であり得る場合があり、例えば結晶化傾向の低下のためである。このタイプの分枝状基は、一般的に、1つより多い分枝鎖を含まない。好ましいアキラルな分枝状基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3−メチルブチル)、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシおよび3−メチルブトキシである。
本発明の他の好ましい態様は、式Iの化合物のうちRがP−(Sp−X)−を示すものに関する。
【0029】
式Iにおける重合性基Pは、好ましくは、
【化9】

およびWSi−から選択され、Wは、H、Cl、CN、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、とくにH、ClまたはCHであり、WおよびWは、互いに独立して、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、とくにメチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、Pheは、1,4−フェニレンであり、kは1〜12の整数であり、kおよびkは、各々独立して0または1である。
より好ましくは、Pは、アクリラート基、メタクリラート基、ビニルオキシ基またはエポキシ基、とくにアクリラートまたはエポキシ基である。
【0030】
式Iにおけるスペーサー基Spとしては、この目的のために当業者に知られている全ての基を用いることができる。スペーサー基Spは、好ましくは直鎖状または分枝状であり、1〜20個のC原子、とくに1〜12個のC原子を有するアルキレン基であり、ここで、さらに、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−、−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)−、−CH=CH−または−C≡C−によって置換されていてもよい。
典型的なスペーサー基は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−であり、oは2〜12の整数であり、pは1〜3の整数である。
【0031】
好ましいスペーサー基は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0032】
本発明の他の好ましい態様において、式Iのキラルな化合物は、下記式IVのキラルな基である少なくとも1つのスペーサー基Spを含む。:
【化10】

式中、
およびQは、式IIIにおいて示す意味を有し、および
は、1〜10個のC原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシ基あるいは単結合であり、Qとは異なっている。
【0033】
RがP−Sp−X−を示す場合には、式Iの化合物における2つのスペーサー基Spは、同一であるかまたは異なっていてもよい。
上記好ましい化合物の中で、とくに好ましいのは、nが1であるものである。
さらに好ましいのは、基P−(Sp−X)−としてnが0であるものおよび基P−(Sp−X)−としてnが1であるものを共に含む化合物である。
式Iの化合物の合成は自体公知であり、有機化学の標準的な学術書に記載された方法によりまたはその方法と同様にして行うことができる。前記学術書とは、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartである。
【0034】
好適な重合性メソゲン化合物として重合性液晶材料の成分として用いることができるものの例は、例えばWO93/22397;EP 0 261 712;DE 195 04 224;WO95/22586およびWO97/00600に開示されている。しかし、これらの文献に開示されている化合物は、単なる例であって、本発明の範囲を限定しないものとみなすべきである。好ましくは、重合性液晶混合物は、1つの重合性官能基を有する少なくとも1種の重合性メソゲン化合物および2つまたは3つ以上の重合性官能基を有する少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含む。
【0035】
とくに有用な一反応性のキラルなおよびアキラルな重合性メソゲン化合物の例を下記の化合物リストに示すが、これは例示にすぎず、限定を全く意図せずに本発明を説明するものである:
【化11】

【0036】
【化12】

式中、Pは、式Iの意味の1つおよび前述のこの好ましい意味を有し、xは1〜12の整数であり、Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、vは0または1であり、Yは上記において定義した極性基Rの一つの意味を有し、Rは上記において定義した非極性基Rの一つの意味を有し、Terはテルペノイド基、例えばメンチルであり、Cholはコレステリル基であり、LはH、F、Cl、OH、CN、NOまたは、任意にハロゲン化され1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシもしくはカルボニル基である。
とくに好ましいのは、式VaおよびVcの重合性メソゲン化合物である。
【0037】
有用な二反応性のキラルなおよびアキラルな重合性メソゲン化合物の例を下記の化合物リストに示すが、これは例示にすぎず、限定を全く意図せずに本発明を説明するものである:
【化13】

【化14】

式中、Pは式Iにおいて示した一つの意味を有しその好ましい意味は上記のとおりであり、xおよびyはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、vは0または1であり、そしてLおよびLは、それぞれ独立してH、F、Cl、OH、CN、NOまたは任意にハロゲン化されていてもよい1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシもしくはカルボニル基である。
とくに好ましいのは、式VIaの重合性メソゲン化合物である。
【0038】
第1の好ましい重合性液晶物質は以下を含む。
a)10〜90重量%、より好ましくは25〜75重量%の、好ましくは5種まで、より好ましくは2種、3種または4種の、極性末端基を有する一反応性メソゲン化合物、
b)5〜80重量%、より好ましくは10〜65重量%の、好ましくは4種まで、より好ましくは1種または2種の、二反応性重合性メソゲン化合物。
【0039】
第2の好ましい重合性液晶物質は以下を含む。
a)0〜30重量%、より好ましくは0〜5重量%の、好ましくは5種まで、より好ましくは1種、2種または3種の、極性末端基を有する一反応性メソゲン化合物、
b)90重量%以上、より好ましくは90〜99.5重量%の、好ましくは4種まで、より好ましくは1種、2種または3種の、二反応性重合性メソゲン化合物。
第二の態様のとくに好ましい混合物は、成分a)の一反応性の重合性化合物を含まないものである。
【0040】
第3の好ましい重合性液晶物質は以下を含む。
a)80重量%以上、より好ましくは90〜99.5重量%の、好ましくは5種まで、より好ましくは2種、3種または4種の、極性末端基を有する一反応性メソゲン化合物、
b)0〜20重量%、より好ましくは0〜5重量%の、好ましくは4種まで、より好ましくは1種または2種の、二反応性重合性メソゲン化合物。
第三の態様のとくに好ましい混合物は、成分b)の二反応性の重合性化合物を含まないものである。
【0041】
本発明の他の態様における重合性液晶混合物は、1種または2種以上のキラルな重合性メソゲン化合物を含む。好ましくは、これらの化合物は式Iから選択され、かかる化合物は、MG、Spおよび/またはRは、キラルな部分を含んでいる。より好ましいのは、上記において開示した式Va〜Vmから選択されたキラルな化合物である。
【0042】
本発明のさらなる目的は、本発明の前記バリアコーティング組成物の製造方法を提供することにある。該製造方法の特徴は以下のとおりである。
a)重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含むものを基板に適用し、
b)前記重合性液晶混合物を均一な配列に配向せしめ、
c)基板に適用し均一に配向せしめた前記重合性液晶混合物を重合せしめて、液晶ポリマーを生成するとともに前記重合性液晶混合物の配向を永久に固定する。
好ましい態様においては、液晶ポリマーを基板から除去しないが、液晶ポリマーを基板から除去することも可能である。基板と液晶ポリマーとを分離しない場合、好ましくは等方性基板を用いる。
基板としては、例えばガラスもしくは石英のシートまたはプラスチックのフィルムもしくはシートを用いることができる。
【0043】
基板がプラスチック基板である場合には、ポリエステルのフィルムが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリエチレ(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリンデンクロリド(PVDC)、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、エポキシ樹脂、メルカプトエステル(例えばNorland Optical Adhesive 73)、液晶ポリマー(LCP)およびORMOCER(登録商標)(無機−有機ハイブリッドポリマー。Fraunhofer-Gesellschaftから。)である。とくに好ましいのはPETフィルムである。2種または3種以上の異なるポリマー材料の混合物を用いることもできる。複屈折基板として、例えば一軸延伸プラスチックフィルムを用いることができる。
とくに好ましいのは、ガラス基板であり、とくにラビングしたポリイミドで被覆されたものである。
【0044】
重合性液晶物質を、溶媒、好ましくは有機溶媒に溶解することもできる。次に、溶液を基板上に、例えば回転塗布または他の既知の手法により塗布し、溶媒を蒸発させて除去する。ほとんどの場合において、混合物を加熱して、溶媒の蒸発を促進することは好ましい。
上記方法に加えて、重合性液晶混合物のコーティングした層における平面配向を、混合物を例えばドクターブレードによって剪断することによってさらに増強せしめることができる。配向膜、例えばラビングしたポリイミドまたはスパッタリングしたSiOの層を基板の最上部上に設けるか、または基板のラビングを直接、すなわち追加の配向膜を設けずに行うことも可能である。
【0045】
ラビングは、例えば、ベルベット布のようなラビング布を用いて、またはラビング布で被覆した平坦な棒を用いて、達成することができる。本発明の好ましい態様においては、ラビングを、少なくとも1つのラビングローラー、例えば基板を交差して摩擦する迅速回転ローラーにより、あるいは基板を少なくとも2つのローラーの間に配置することにより達成する。ここで、各々の場合において、少なくとも1つのローラーを、任意にラビング布で被覆する。本発明の他の好ましい態様において、ラビングを達成するには、基板を好ましくはラビング布で被覆されたローラーの周囲に所定の角度で少なくとも部分的に巻き付ける。
【0046】
重合性液晶物質の重合は、例えば熱または化学線に暴露することにより達成される。化学線は、UV光、IR光もしくは可視光線のような光による照射、X線もしくはガンマ線による照射または例えばイオンもしくは電子のような高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましくは、重合はUV照射によって行う。
化学線の源として、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。大きいランプ出力を用いる際には、重合時間を減少させることができる。化学線の他の可能な源は、レーザー、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視レーザーである。
重合は、化学線の波長において吸収を示す開始剤の存在下で行う。例えば、UV光により重合する際には光開始剤を用いることができる。かかる光開始剤は、UV照射の下で分解されて重合反応を開始する遊離基またはイオンを生成することができるものである。
【0047】
アクリラートまたはメタクリラート基を有する重合性メソゲン分子を重合させる際に、好ましくはラジカル光開始剤を用い、ビニルおよびエポキシド基を有する重合性メソゲン分子を重合させる際に、好ましくは、陽イオン性光開始剤を用いる。
また、加熱した際に分解して、重合を開始する遊離基またはイオンを生成する重合開始剤を用いることもできる。
ラジカル重合のための光開始剤として、例えば、市場で入手できるイルガキュア(Irgacure)651、イルガキュア184、ダロキュア(Darocure)1173またはダロキュア4205(全てCiba Geigy AGから)を用いることができる。また、陽イオン性光重合の場合には、市場で入手できるUVI6974(Union Carbide)を用いることができる。
重合性液晶物質は、重合開始剤を好ましくは0.1〜10重量%、極めて好ましくは0.5〜7重量%、とくに1〜5重量%含む。UV光開始剤が好ましく、とくにラジカル性UV光開始剤が好ましい。
【0048】
重合時間が依存するのは、とくに重合性メソゲン物質の反応性、コーティング層の厚さ、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力である。本発明における重合時間は、好ましくは10分未満であり、とくに好ましくは5分未満であり、極めてとくに好ましくは2分未満である。大量生産のためには、3分以下、極めて好ましくは1分以下、とくに30秒以下の短い重合時間が好ましい。
重合開始剤に加えて、重合性物質には、1種または2種以上の他の好適な成分、例えば触媒、安定剤、連鎖移動剤または共反応単量体を含んでもよい。とくに、安定剤の添加は、重合性液晶物質の望ましくない自発的重合を、例えば貯蔵中に防止するために好ましい。
安定剤としては、原則的に、この目的のためのものとして当業者に知られている全ての化合物を用いることができる。これらの化合物は、種々のものが市場で入手できる。安定剤の典型例は、4−エトキシフェノールまたはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0049】
他の添加剤、例えば連鎖移動剤を重合性物質に加えることによって、ポリマーフィルムの物理的特性を改変することができる。連鎖移動剤、例えばドデカンチオールのような一官能性チオール化合物、または例えばトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)のような多官能性チオール化合物を重合性物質に加えることによって、ポリマーフィルムにおける遊離の重合体鎖の長さおよび/または2つの架橋間の重合体鎖の長さを制御することができる。連鎖移動剤の量を増大せしめると、得られるポリマーフィルムにおける重合体鎖の長さは減少する。
【0050】
他の態様において重合性液晶混合物は、好ましくは0.01〜6重量%の、より好ましくは0.1〜3重量%の、少なくとも1種の界面活性剤を含む。液晶混合物が基板にコーティングされる際に、界面活性剤によってバリアコーティング層中の液晶分子のチルト角が減じられ、その結果液晶混合物の平面配向が増強される。
界面活性剤が重合性界面活性成分である場合、該成分は液晶混合物のモノマーと共重合し、その結果生成されつつあるポリマーフィルム中に化学的に結合する。そして、前記界面活性剤の移動(migration)または相分離を防ぐことができる。
【0051】
他の好ましい態様において、重合性液晶物質は好ましくは0.1〜15重量%の、より好ましくは0.2〜9重量%の、1種または2種以上の非重合性キラルドーパントを含む。
好ましいのは高いらせんねじれ力(HTP)を有するキラルなドーパントであって、とくにWO98/00428に開示されているものである。他の典型的に用いられるキラルなドーパントは、例えば、市場で入手できるS1011、R811またはCB15(Merck KGaA, Darmstadt, Germanyから)である。
また、重合体の架橋を増大せしめるために、20重量%までの2つまたは3つ以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物の重合性液晶物質への添加を、二官能性または多官能性の重合性メソゲン化合物の代わりに、またはこれに加えて行い、重合体の架橋を増加させることも可能である。
【0052】
二官能性非メソゲン単量体の典型例は、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルジアクリラートまたはアルキルジメタクリラートである。2つより多い重合性基を有する非メソゲン単量体の典型例は、トリメチルプロパントリメタクリラートまたはペンタエリスリトールテトラアクリラートである。
他の好ましい態様において、重合性液晶混合物は、70重量%まで、好ましくは50重量%までの、1つの重合性官能基を有する非メソゲン化合物を含む。一官能性非メソゲン単量体の典型例は、アルキルアクリラートまたはアルキルメタクリラートである。
本発明の好ましい態様においては、重合性液晶混合物の重合は不活性ガスの雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下で行う。
好適な重合温度の選択において考慮されるのは、主として重合性物質の透明点およびとくに基板の軟化点である。好ましくは、重合温度は重合性液晶混合物の透明点より少なくとも30度低い。
【0053】
液晶ポリマーのバリアコーティング組成物における存在量は、50〜100重量%であり、好ましくは70〜100重量%であり、より好ましくは90〜100重量%である。とくに、バリアコーティング組成物は、前記液晶ポリマーからなる。
本発明の他の態様においては、バリアコーティング組成物は少なくとも1種の無機フレーク材料を含む。
無機フレーク材料としては、あらゆる無機フレーク材料として当業者に知られていて、本発明の目的に好適なものを用いることができる。好ましい無機フレーク材料には、マイカ、アルミナ、シリカおよびガラスが包含される。より好ましくはシリカおよびガラスを無機フレーク材料として用いる。最も好ましい無機フレーク材料はガラスである。
無機フレーク材料の平均厚は、好ましくは1.0μm未満であり、より好ましくは0.5μm未満であり、最も好ましくは0.3μm未満である。
【0054】
無機フレーク材料の平均粒子径は、好ましくは1〜1000μmの範囲であり、より好ましくは50〜500μmの範囲である。好ましい無機フレーク材料は、平均粒子径として100〜400μmの範囲を有し、厚さとして0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmを有する。無機フレーク材料のアスペクト比は、20〜5000の範囲であり、好ましくは200〜2000の範囲である。
無機フレーク粒子は、任意に1種または2種以上の層によってコーティングされていてもよく、該層は金属酸化物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属オキシハロゲン化物、金属カルコゲン化物、金属窒化物、金属カーバイドまたはこれらの混合物からなる群から選択される。
無機フレーク材料のバリアコーティング組成物における存在量は、50重量%までであり、好ましくは40重量%までであり、最も好ましくは30重量%までである。
【0055】
本発明のバリアコーティング組成物は、有機電界効果トランジスタのバリアコーティング層、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、TVスクリーンのディスプレイ、光電池およびリチウム電池ならびに水および/または酸素に対するバリアコーティング層を必要とするあらゆるアプリケーションにおいて用いることができる。
また、本発明のバリアコーティング組成物は、食物の包装および医薬の包装のバリアコーティング層において用いることができる。
さらに、本発明によって、デバイス、好ましくはディスプレイとして、バリアコーティング層を含み、任意に基板を含み、該層が本発明のバリアコーティング組成物を含むものも与えられる。好ましい態様において、前記バリアコーティング層は本発明のバリアコーティング組成物からなる。
【0056】
本発明によって、バリアコーティング層を含む食物および医薬の包装であって、該層が本発明のバリアコーティング組成物を含むものも与えられる。好ましい態様において、前記バリアコーティング層は本発明のバリアコーティング組成物からなる。
前記バリアコーティング層は、厚さとして、好ましくは1μm〜1000μmを有し、より好ましくは5μm〜300μmを有する。
好ましい態様において、バリアコーティング層は透明である。透明性が強く要求されるのは、ディスプレイアプリケーションとして、観者がバリアコーティング層を通して観なければならないものにおいてである。バリアコーティング層がディスプレイの反対側にある場合やリチウム電池もしくは有機電界効果トランジスタにおいては、透明性は考慮しなくてよい。透明性として光電池において要求されるものは、ディスプレイアプリケーションにおいて要求されるものほど高くはない。
本発明のディスプレイの製造は、バリアコーティング組成物を基板に直接付すか、またはバリアコーティング組成物を最初の工程において有機溶媒に分散せしめ、次に基板に付し、最後に有機溶媒を留去するかのいずれかによって製造することができる。その後、前記混合物を重合せしめるが、これは好ましくはUV照射によって行う。
【0057】
さらに説明を加えなくても、当業者であれば、前記記載を用いることによって、本発明を最大限に利用することができることは明白である。したがって、下記の例は例示にすぎず、以下の開示について如何なる意味においても何ら限定するものではないと解されたい。
前記記載および下記の例において、別に示されていない限り、全ての温度は訂正することなく摂氏度で記載され、全ての部およびパーセントは重量によるものである。
【0058】
例1
カルシウムコートスライドガラスの調製
スライドガラス(25×25×1mm)を、蒸留水、アセトンおよびイソプロパノール中における洗浄によって調製した。調製したスライドガラスを、次にBraun glove box(HO<0.1ppm、O<0.1ppm)に移した。該スライドガラスをBraun glove boxの真空コーティングチャンバに設置し、テンプレートによって覆った。このテンプレートによって、1×1cmの正方形の蒸着が、各スライドガラスの中央になされた。カルシウムの蒸着を、厚さ60nmの層が得られるまで行った。このようにして調製したスライドの1枚を前記グローブボックス内に残したところ、17時間後であっても影響を受けなかった。
通常の大気中においては、このようなコーティングしていないサンプルは、5分間で完全に反応した。
【0059】
比較例1
カルシウムによってコーティングした前記スライドガラスを、Norland Optical Adhesive 73によって以下のとおりにコーティングした。
約1gのこの接着剤を、スライドガラスの中心に適用した。シリコーン処理したPET剥離層を前記コーティングに適用し、顕微鏡スライドガラスをこの上に置き、600gの重りを前記スライドガラスに適用した。混合物を30秒間放置した。
重りを取り除き、スライドガラスをUV照射に30秒間暴露(EFOSランプ、200mWcm−2)した。スライドガラスおよび剥離層を分離せしめ、硬化をさらに30秒間行った。
この工程によって、28μmのフィルム厚が得られた。
通常の大気中においては、このようなコーティングしたサンプルは、29分間で完全に反応した。
【0060】
例2
比較例1と同様にして、カルシウムによってコーティングしたスライドガラスを下記組成物によってコーティングした:
【化15】

コンテント:25.53重量%
【化16】

コンテント:25.90重量%
【0061】
【化17】

コンテント:17.73重量%
【化18】

コンテント:9.82重量%
【0062】
【化19】

コンテント:8.36重量%
【化20】

コンテント:8.61重量%
イルガキュア(登録商標)907 5.68重量%
Zonyl FSO 0.38重量%
【0063】
カルシウムコーティングした前記スライドガラスを、前記液晶混合物によって以下のとおりにコーティングした。
約1gのこの前記液晶混合物を、スライドガラスの中心に適用した。シリコーン処理したPET剥離層を前記コーティングに適用し、顕微鏡スライドガラスをこの上に置き、600gの重りを前記スライドガラスに適用した。混合物を30秒間放置した。
重りを取り除き、スライドガラスをUV照射に30秒間暴露(EFOSランプ、200mWcm−2)した。スライドガラスおよび剥離層を分離せしめ、硬化をさらに30秒間行った。
この工程によって、32μmのフィルム厚が得られた。
通常の大気中においては、このようなコーティングしたスライドサンプルは、92分間で完全に反応する。比較例1のコーティングに対する改善度合いは、約300%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーを含むバリアコーティング組成物であって、重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を基板にまず適用し、その後に重合せしめて形成されることを特徴とする、前記バリアコーティング組成物。
【請求項2】
重合性液晶混合物の重合性メソゲン化合物が下記式Iから選択されることを特徴とする請求項1に記載のバリアコーティング組成物。
P−(Sp−X)−MG−R I
式中、
Pは、重合性基であり、
Spは、1〜25個のC原子を有するスペーサー基であり、
Xは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
nは、0または1であり、
MGは、メソゲン基であり、および
Rは、H、CN、NO、ハロゲンあるいは、無置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていることができる、25個までのC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置換されていることも可能であり、または代替的にRは、P−(Sp−X)−を示す。
【請求項3】
式I中のMGが下記式IIから選択されることを特徴とする請求項2に記載のバリアコーティング組成物。
−A−Z−(A−Z−)−A− II
式中、
およびZは、各々独立して、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
、AおよびAは、各々独立して、1つまたは2つ以上のCH基がNによって置換されていてもよい1,4−フェニレン、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基がOおよび/またはSによって置換されていてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2,6−ジイルであり、これら全ての基は、無置換であるか、F、Cl、OH、CN、NOあるいは、1つまたは2つ以上のH原子がFまたはClにより置換されていてもよい1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシまたはアルカノイル基によって一置換または多置換されていることが可能であり、そして
mは、0、1または2である。
【請求項4】
式I中の重合性基Pが、
【化1】

およびWSi−から選択され、
は、H、Cl、CN、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキルであり、WおよびWは、互いに独立して、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキルであり、W、WおよびWは、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、Pheは、1,4−フェニレンであり、kは1〜12の整数であり、kおよびkは、各々独立して0または1である、
から選択されることを特徴とする請求項2または3に記載のバリアコーティング組成物。
【請求項5】
スペーサー基Spが、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレン基であり、ここで、さらに、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−、−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)−、−CH=CH−または−C≡C−によって置換されていることができる、
から選択されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のバリアコーティング組成物。
【請求項6】
式I中のRが、P−(Sp−X)−を表すことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のバリアコーティング組成物。
【請求項7】
重合性液晶混合物が、少なくとも1種の重合性メソゲン化合物として1つの重合官能基を有するものおよび少なくとも1種の重合性メソゲン化合物として2つまたは3つ以上の重合官能基を有するものを含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のバリアコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物の製造方法であって、
a)重合性液晶混合物として1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含むものを基板に適用し、
b)前記重合性液晶混合物を均一な配列に配向せしめ、
c)基板に適用し均一に配向せしめた前記重合性液晶混合物を重合せしめて、液晶ポリマーを生成するとともに前記重合性液晶混合物の配向を永久に固定する
ことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物の使用であって、有機電界効果トランジスタのバリアコーティング層、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、TVスクリーンのディスプレイ、光電池およびリチウム電池における前記使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物の、食物の包装および医薬の包装におけるバリアコーティング層における使用。
【請求項11】
バリアコーティング層を含むデバイスであって、該バリアコーティング層が請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物を含む、前記デバイス。
【請求項12】
バリアコーティング層を含むディスプレイであって、該バリアコーティング層が請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物を含む、前記ディスプレイ。
【請求項13】
バリアコーティング層を含む食物の包装であって、該バリアコーティング層が請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物を含む、前記包装。
【請求項14】
バリアコーティング層を含む医薬の包装であって、該バリアコーティング層が請求項1〜7のいずれかに記載のバリアコーティング組成物を含む、前記包装。

【公表番号】特表2007−509198(P2007−509198A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534622(P2006−534622)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010397
【国際公開番号】WO2005/040307
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】