説明

液晶レンズおよび表示装置

【課題】色収差を低減することができる液晶レンズ、および色収差が低減された良好な画像表示を行うことができる表示装置を提供する。
【解決手段】屈折率異方性のある液晶分子を含み、第1の電極11Yと第2の電極21との間に配置され、第1の電極11Yと第2の電極21とによって印加される電圧に応じて液晶分子の配列が変化することで入射光線に対して所定方向に位相差分布が形成される液晶層3を備える。液晶層3内で、β≧2以上の整数として、基準波長λ0の入射光線に対して所定方向に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成する。基準波長λ0を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率異方性のある液晶分子を利用してレンズ効果を発生させる液晶レンズ、およびその液晶レンズを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の両眼に視差のある視差画像を見せることで立体視を実現する2眼式または多眼式の立体表示装置が知られている。これらの立体表示装置を実現する方法としては、例えば、液晶ディスプレイなどの2次元表示装置と、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させる3次元表示用の光学デバイス(視差分離手段)とを組み合わせたものが知られている。3次元表示用の光学デバイスとしては、例えば図18に示したように、複数のシリンドリカルレンズ(円筒レンズ)303を並列配置したシリンドリカルレンズアレイ(レンチキュラレンズ)302が用いられる。このレンチキュラレンズ302を2次元表示装置からなる表示パネル301の表示面に対して対向配置する。各シリンドリカルレンズ303は、表示パネル301の表示面に対して縦方向に延在し、左右方向に屈折力を有するように配置する。表示パネル301の表示面には、規則的に複数の表示画素が2次元配列されている。一つのシリンドリカルレンズ303の背面に2つ以上の画素を配置し、各画素からの光線をレンズの屈折力により異なる水平方向に出射させることで両眼視差を満たし、裸眼での立体視が可能となる。
【0003】
図18では2眼式の立体表示の例を示しており、各シリンドリカルレンズ303に対して、表示パネル301の表示面における隣接する2本の画素列301R,301Lが割り当てられている。一方の画素列301Rには右視差画像を表示し、他方の画素列301Lに左視差画像を表示する。表示された各視差画像は各シリンドリカルレンズ303によって左右別々の光路402,403に振り分けられる。これにより、所定の位置、所定の方向から観察者400が立体表示装置を見た場合、左右の視差画像が適切に観察者400の左右の眼401R,401Lに到達し、立体像が知覚される。
【0004】
同様にして、多眼式の場合、3つ以上の視点に相当する位置および方向において撮影した複数の視差画像を、シリンドリカルレンズ303の横方向のレンズピッチ内で等分して割り当てて表示する。これにより、3つ以上の視差画像が、レンチキュラレンズ302によって連続的な異なる角度範囲に出射され、結像される。この場合、観察者400の視線の位置および方向の変化に応じて、複数の異なる視差画像が知覚される。視点変化に応じた視差画像の変化が多いほど、より現実に近い立体感を得ることができる。
【0005】
ところで、レンチキュラレンズ302としては、例えば樹脂成型された、形状およびレンズ効果が固定のレンズアレイを用いることができるが、この場合、レンズ効果が固定なので3次元表示専用の表示装置となってしまう。一方、レンチキュラレンズ302として、液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子を用いることができる。液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子の場合、レンズ効果の有無を電気的に切り替えることができるため、2次元表示装置と組み合わせて、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードを切り替えることができる。すなわち、2次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果の無い状態(屈折力の無い状態)とし、2次元表示装置からの表示画像光をそのままの状態で通過させる。3次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果を発生させた状態とし、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させることで立体視を実現する。
【0006】
図19(A),(B)を参照して、液晶レンズによる切り替え式(可変式)のレンズアレイ素子の構成例を説明する。なお、これらの図では、主として電極部分の構造を図示し、基板や配向膜等の構成要素を省略している。また、図では、このレンズアレイ素子におけるレンズ効果発生の基本原理を説明するため、構成を簡略化して示している。この可変式のレンズアレイ素子は、例えばガラス材料よりなる透明な第1の基板および第2の基板と、それら第1の基板および第2の基板の間に挟まれた液晶層130とを備えている。第1の基板と第2の基板は、間隔dを空けて対向配置されている。
【0007】
第1の基板上には、ITO膜(Indium Tin Oxide)などの透明な導電膜からなる第1の電極111がほぼ全面に一様に形成されている。第1の基板上にはまた、第1の電極111を介して液晶層130に接するように第1の配向膜が形成されている。第2の基板上には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の電極121Yが部分的に形成されている。第2の基板上にはまた、第2の電極121Yを介して液晶層30に接するように第2の配向膜が形成されている。
【0008】
液晶層130は、液晶分子131を含み、第1の電極111と第2の電極121Yとに印加される電圧に応じて液晶分子131の配列方向が変化することでレンズ効果が制御されるようになっている。液晶分子131は、屈折率異方性を有し、例えば長手方向と短手方向とで通過光線に対して屈折率の異なる屈折率楕円体の構造を有している。液晶層130は、第1の電極111と第2の電極121Yとに印加される電圧の状態に応じて、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果が発生する状態とに電気的に切り替わるようになっている。
【0009】
このレンズアレイ素子では、図19(A)に示したように、印加電圧が0Vの通常の状態では、液晶分子131が第1の配向膜および第2の配向膜によって規定される所定の方向に一様に配列される。このため、通過光線の波面201は平面波となり、レンズ効果の無い状態となる。一方、このレンズアレイ素子では、複数の第2の電極121Yが、所定の間隔で離間配置されているため、第1の電極111と第2の電極121Yとの間に所定の駆動電圧を印加すると、液晶層130内での電界分布に偏りが生ずる。すなわち、第2の電極121Yが形成されている領域に対応する部分では駆動電圧に応じて電界強度が強くなり、複数の第2の電極121Y間の開口の中心部に行くほど電界強度が弱くなるような電界が発生する。このため、図19(B)に示したように、液晶分子131の配列が電界強度分布に応じて変化する。これにより、通過光線の波面202が変化し、レンズ効果が発生する状態となる。
【0010】
このような可変式のレンズアレイ素子を用いて等価的にレンチキュラレンズのレンズ効果を発生させることができる。これにより、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードでの切り替え表示が可能である。
【0011】
昨今では、このような液晶の印加電圧による光学特性の変化を利用した液晶レンズの開発が進んでいる。液晶を用いることにより、機械的な稼動部を持つ必要がなくなり、レンズユニットの小型軽量に貢献することができる。また、非特許文献1には、レンズの大口径化・高性能化のために、液晶レンズによってフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる方法が提案されている。非特許文献1では、電極を同心円状にパターニングすることでフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させている。液晶を利用してフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる方法は、特許文献1および特許文献2にも記載されている。非特許文献1のように液晶レンズをフレネルレンズ化することにより、大口径でなおかつ液晶材料の使用量を減らすことができ、コストダウンすることが可能となる。非特許文献1には、実際に液晶レンズを用いたメガネの実現例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭63−249125号公報
【特許文献2】特開平5−100201号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“Switchable electro-optic diffractive lens with high efficiency for ophthalmic applications”6100-6104_PNAS_April 18, 2006_ vol. 103 _no. 16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、液晶レンズを例えば立体表示装置に適用する際には、液晶レンズの波長分散が問題となる。液晶レンズは回折現象を利用しているため、白色光のようなブロードな光に対しては、各波長での焦点距離が大きく異なり、色収差が発生する。このため、カラー表示を行う場合には良好な立体画質を得ることができないという問題がある。
【0015】
ところで、一般に回折レンズでは、通過光線に対して0〜2πまで変化する位相差分布が生じるような設計がなされている。例えば同心円状のフレネルパターンが形成されたフレネルレンズでは、レンズ半径方向に位相差が周期的に0〜2πまで変化する位相差分布が生じるような設計がなされている。これは、液晶レンズによってフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる場合にも同様である。液晶レンズにおいて2πを超える大きな位相差分布を得るためには液晶層を厚くする必要があることもあり、従来では、液晶レンズを設計する際に、そのような位相差分布を発生させるようなことはなされていなかった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、色収差を低減することができる液晶レンズ、および色収差が低減された良好な画像表示を行うことができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による液晶レンズは、第1の電極と、第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、屈折率異方性のある液晶分子を含み、第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極と第2の電極とによって印加される電圧に応じて液晶分子の配列が変化することで入射光線に対して所定方向に位相差分布が形成される液晶層とを備えたものである。そして、液晶層内で、β≧2以上の整数として、基準波長の入射光線に対して所定方向に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるようしたものである。
【0018】
本発明による表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示手段と、表示手段に対して対向配置され、表示手段からの表示画像光が入射する液晶レンズとを備えている。そして、その液晶レンズを、上記本発明の液晶レンズで構成したものである。
【0019】
本発明による液晶レンズでは、液晶層内で、β≧2以上の整数として、基準波長の入射光線に対して所定方向に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布が形成され、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果が発生する。これにより、0〜2πまでの位相差分布を形成する従来の液晶レンズに比べて、色収差が低減する。
【0020】
本発明による表示装置では、例えば、液晶レンズによって表示手段からの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで3次元表示が行われる。この際、上記本発明の色収差の低減された液晶レンズを用いることで、色収差が低減された良好な画像表示が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液晶レンズによれば、位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるようにしたので、0〜2πまでの位相差分布を形成する従来の液晶レンズに比べて、色収差を低減することができる。
【0022】
本発明の表示装置によれば、上記本発明の色収差の低減された液晶レンズを用いるようにしたので、色収差が低減された良好な画像表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液晶レンズの構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示した液晶レンズにおける第1の電極の構成例を示す平面図である。
【図3】図1に示した液晶レンズによって得られるレンズ効果の一例を光学的に等価なレンズとして模式的に示した説明図である。
【図4】図1に示した液晶レンズを用いた表示装置の一例を示す断面図である。
【図5】レンチキュラ方式の立体表示装置に用いられるレンチキュラレンズの一例を示す斜視図である。
【図6】図6(A)は理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示す説明図ある。図6(B)は図1に示した液晶レンズにおいて液晶分子の誘電率異方性Δεが正である場合に、図6(A)に示したβ=8の位相差分布を形成するための液晶層への印加電圧の状態を示す説明図である。図6(C)は図1に示した液晶レンズにおいて液晶分子の誘電率異方性Δεが負である場合に、図6(A)に示したβ=8の位相差分布を形成するための液晶層への印加電圧の状態を示す説明図である。
【図7】図7(A)は一般的なフレネルレンズにおける、半径方向の距離rの位置から焦点位置までの光路長についての説明図である。図7(B)は一般的なフレネルレンズの半径方向の距離rと位相差分布との関係を示す説明図である。
【図8】白色LEDを用いた一般的な液晶ディスプレイの透過スペクトル分布と、図1に示した液晶レンズにおいて位相差係数β=5とした場合に同一焦点距離となる波長の分布とを比較して示した特性図である。
【図9】白色LEDを用いた一般的な液晶ディスプレイの透過スペクトル分布と、図1に示した液晶レンズにおいて位相差係数β=9とした場合に同一焦点距離となる波長の分布とを比較して示した特性図である。
【図10】白色LEDを用いた一般的な液晶ディスプレイの透過スペクトル分布と、図1に示した液晶レンズにおいて位相差係数β=14とした場合に同一焦点距離となる波長の分布とを比較して示した特性図である。
【図11】白色LEDを用いた一般的な液晶ディスプレイの透過スペクトル分布と、図1に示した液晶レンズにおいて位相差係数β=15とした場合に同一焦点距離となる波長の分布とを比較して示した特性図である。
【図12】液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタの透過スペクトル分布の一例を示す特性図である。
【図13】位相差係数β/γの値を複数の液晶材料について比較して示した特性図である。
【図14】図14(A)は図4に示した液晶ディスプレイモジュールにおける観察者側偏光板の透過軸の方向(光出射側の偏光方向)の第1の例を示す断面図である。図14(B)は観察者側偏光板の透過軸の方向の第1の例を示す平面図である。
【図15】図15(A)は図4に示した液晶ディスプレイモジュールにおける観察者側偏光板の透過軸の方向(光出射側の偏光方向)の第2の例を示す断面図である。図15(B)は観察者側偏光板の透過軸の方向の第2の例を示す平面図である。
【図16】図16(A)は理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示す説明図ある。図16(B)は光出射側の偏光方向が図14(A),(B)に示した方向である場合に適した液晶分子の配向状態を示す断面図である。図16(C)は図16(B)に示した液晶分子の配向状態を上方(観察者側)から見た状態を示す平面図である。
【図17】図17(A)は理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示す説明図ある。図17(B)は光出射側の偏光方向が図15(A),(B)に示した方向である場合に適した液晶分子の配向状態を示す断面図である。図17(C)は図17(B)に示した液晶分子の配向状態を上方(観察者側)から見た状態を示す平面図である。
【図18】従来のシリンドリカルレンズを用いた立体表示の概念を示す説明図である。
【図19】従来の可変式のレンズアレイ素子の基本構成例を示す断面図であり、図19(A)はレンズ効果の無い状態、図19(B)はレンズ効果を発生させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
[液晶レンズ1の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る液晶レンズ1の構成例を示している。この液晶レンズ1は、間隔を空けて互いに対向配置された第1の基板10および第2の基板20と、それら第1の基板10および第2の基板20の間に配置された液晶層3とを備えている。第1の基板10および第2の基板20は、例えばガラス材料または樹脂材料よりなる透明基板である。
【0026】
第1の基板10上における第2の基板20に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第1の電極11Yが部分的に形成されている。図示しないが、第1の基板10上にはまた、第1の電極11を介して液晶層3に接するように第1の配向膜が形成されている。第2の基板20上における第1の基板10に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の電極21がほぼ全面に形成されている。第2の基板20上にはまた、第2の電極21を介して液晶層3に接するように第2の配向膜23が形成されている。
【0027】
液晶層3は、液晶分子5を含み、第1の電極11Yと第2の電極21とによって印加される電圧に応じて液晶分子5の配列方向が変化することでレンズ効果が制御されるようになっている。液晶分子5は、誘電率異方性および屈折率異方性を有し、例えば長手方向と短手方向とで通過光線に対して屈折率の異なる屈折率楕円体の構造を有している。液晶層3は、第1の電極11Yと第2の電極21とに印加される電圧の状態に応じて、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果が発生する状態とに電気的に切り替わるようになっている。
図示しない第1の配向膜および第2の配向膜23は、所定のラビング処理がなされている。電圧が印加されていない状態では、液晶分子5は、そのラビング処理によって規定された所定の配向方向に平行な方向にほぼ一様に配向している。
【0028】
本実施の形態では、液晶レンズ1が、図3に示したような一方向(X方向)にのみ屈折力を有するリニアフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる場合の構造例を説明する。
【0029】
第1の電極11Yは、図3に示したようなリニアフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させるために、図2に示したように、互いに間隔を空けて配置された複数のライン電極からなる。第1の電極11Yは、入射光線に対して一方向(X方向)に連続的な位相差分布を形成することができるよう、所定の電極幅を有して縦方向(Y方向)に延在し、所定の間隔でX方向に複数、並列的に配置されている。なお、位相差分布の具体例、およびその位相差分布を形成するために印加する電圧の具体例は後述する。
【0030】
[表示装置の構成]
図4は、液晶レンズ1を用いた表示装置の一例を示している。この表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイモジュール2を備え、この液晶ディスプレイモジュール2の表示面側に対向するように液晶レンズ1を配置したものである。
【0031】
この表示装置は、液晶レンズ1によって電気的にレンズ効果のオン・オフ制御を行うことで、全画面での2次元(2D)表示モードと、全画面での3次元(3D)表示モードとを選択的に切り替えることが可能とされている。液晶レンズ1は、3次元表示モードでは、等価的に図5に示したようなシリンドリカルレンズ31Yを並列配置したレンチキュラレンズ状のレンズ効果を発生するようになっている。この場合において、個々のシリンドリカルレンズ31Yは、等価的には図3に示したようなリニアフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させることで実現している。なお、レンチキュラ方式による立体表示の基本原理は図18を用いて説明したとおりである。
【0032】
液晶レンズ1は、表示モードに応じてレンズ効果を制御することで、液晶ディスプレイモジュール2からの光線の通過状態を選択的に変化させるようになっている。液晶ディスプレイモジュール2は、2次元表示を行う場合には2次元画像データに基づく映像表示を行い、3次元表示を行う場合には3次元画像データに基づく映像表示を行うようになっている。なお、3次元画像データとは、例えば、3次元表示における複数の視野角方向に対応した複数の視差画像を含むデータである。例えば2眼式の3次元表示を行う場合、右眼表示用と左眼表示用の視差画像のデータである。
【0033】
なお、本実施の形態では、液晶レンズ1における各基板面または液晶ディスプレイモジュール2の各基板面に平行な面内で横方向(水平方向)をX方向、縦方向(垂直方向)をY方向として説明する。基本的には、液晶ディスプレイモジュール2の表示面の横方向がX方向、縦方向がY方向である。
【0034】
[液晶ディスプレイモジュール2(表示手段)の構成]
【0035】
図4では、液晶ディスプレイモジュール2を透過型の液晶表示ディスプレイで構成した場合の構成例を示している。この構成例では、表示パネル2は、液晶部(液晶表示パネル本体)40を、バックライト側偏光板(第1の偏光板)42と観察者側偏光板(第2の偏光板)43とで挟んだ構造とされている。バックライト側偏光板42はバックライト41側に配置され、観察者側偏光板43は観察者側(光出射側)に配置されている。この液晶ディスプレイモジュール2では、バックライト41からの光を画像データに応じて画素ごとに変調させることで2次元的な画像表示を行う。バックライト側偏光板42と観察者側偏光板43は、互いの偏光方向(透過軸)がクロスニコルとなるように配置されている。これにより、液晶ディスプレイモジュール2は、特定の偏光方向に偏光した表示画像光を出射するようになっている。その偏光方向は、観察者側偏光板43の透過軸に平行な方向である。
【0036】
液晶部40は、例えばR(赤色)用画素、G(緑色)用画素、およびB(青色)用画素からなる画素を複数有し、それら複数の画素がマトリクス状に配置されている。液晶部40の画素は、液晶レンズ1によって形成される等価的なシリンドリカルレンズ31Y(リニアフレネルレンズ)のピッチpに対してN個(2以上の整数)分、配置されている。3次元表示モードでは、このN個分、3次元表示における光線数(視線数)を提示することになる。
【0037】
[表示装置の動作]
この表示装置では、液晶レンズ1において、第1の電極11Yと第2の電極21との間の電圧差をゼロの状態にしてレンズ効果をオフ状態に設定して、液晶ディスプレイモジュール2からの表示画像光を屈折させることなく透過させることで全画面での2次元表示を行う。
【0038】
また、液晶レンズ1において、第1の電極11Yと第2の電極21との間に電圧を印加してレンズ効果をオン状態に設定し、液晶ディスプレイモジュール2からの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで全画面での3次元表示を行う。
【0039】
[液晶層3の位相差分布および印加電圧の具体例]
次に、液晶レンズ1においてレンズ効果を発生させる場合の液晶層3の位相差分布および印加電圧の具体例を説明する。
【0040】
液晶レンズ1では、液晶層3内で、基準波長の入射光線に対して所定方向(本実施の形態ではX方向)に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成する。ここで、β≧2以上の整数として、最大で2πβ となる位相差分布を形成することにより、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させる。
【0041】
例えば図6(A)に示したように、基準波長の入射光線に対して所定方向に位相差が周期的に0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる。図6(A)は、理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示している。
【0042】
図6(B)は、液晶レンズ1において液晶分子5の誘電率異方性Δεが正である場合に、図6(A)に示したβ=8の位相差分布を形成するための液晶層3への印加電圧の状態を示している。図示したように、この場合、位相差が最小(0)の状態では第1の電極11Yと第2の電極21との間の電圧差を大きくする。また、位相差が最大(2πβ)の状態では電圧差を小さくする。位相差を最小とする位置から最大にする位置の間では、所望とする位相差分布となるように電圧差を連続的に変化させる。
【0043】
図6(C)は、液晶レンズ1において液晶分子5の誘電率異方性Δεが負である場合に、図6(A)に示したβ=8の位相差分布を形成するための液晶層3への印加電圧の状態を示している。図示したように、この場合、位相差が最小(0)の状態では第1の電極11Yと第2の電極21との間の電圧差を小さくする。また、位相差が最大(2πβ)の状態では電圧差を大きくする。位相差を最小とする位置から最大にする位置の間では、所望とする位相差の分布となるように電圧差を連続的に変化させる。
【0044】
なお、図6(A)では、レンズの径方向の大きさが、図5に示したシリンドリカルレンズ31Yのレンズピッチpの半分のピッチp/2に相当する部分での位相差分布を示している。また、図6(B),(C)では、レンズの径方向の大きさが、図5に示したシリンドリカルレンズ31Yのレンズピッチpの半分のピッチp/2に相当する部分のみの構造を示している。
【0045】
図6(A)に示した位相差分布は、以下の式(1)で表すことができる。
φm=2παβ[m−r2/(2λ00β)] ……(1)
m<r<rm+1
α=λ0[Δn(λ1)−1]/{λ1[Δn(λ0)−1]}
β=Δn(λ0)d/λ0
m=0,1,2,・・・
φm:位相差
λ0:基準波長
λ1:測定波長
Δn(λ0):基準波長λ0での液晶分子5の屈折率差(液晶分子5において屈折率異方性を示す2方向の屈折率ne,noの差)
Δn(λ1):測定波長λ1での液晶分子5の屈折率差
0:基準波長λ0での焦点距離
r:フレネルレンズとしての中心位置から所定方向(レンズ半径方向)への任意の位置までの距離
m:フレネルレンズとしての中心位置から第m番目のフレネルゾーンに相当する位置までの距離
d:液晶層3の厚さ
【0046】
ここで、図7(A)は、一般的なフレネルレンズにおける、半径方向の距離rの位置から焦点位置P1までの光路長の関係を示している。図7(B)は、一般的なフレネルレンズの半径方向の距離rと位相差分布との関係を示している。図7(B)に示したように、一般的なフレネルレンズでは、図7(A)に示した各フレネルゾーン(rmとrm+1の間の領域)で、通過光線に対して0〜2πまで変化する位相差分布を発生させる。上記式(1)において、rは、中心位置から各フレネルゾーン内の任意の位置までの距離に相当する。
【0047】
式(1)において、基準波長をλ1と取り直した際、その分ずれた位相差を位相差係数γで補正すると、式(2)のように表すことができる。
φm=2π(β+γ)[m−r2/{2λ11(β+γ)}] ……(2)
1:測定波長λ1での焦点距離
【0048】
式(1)、式(2)より、f0=f1となる条件は、
α=1+γ/β ……(3)
となる。
【0049】
液晶レンズ1は、液晶層3の厚さdと液晶分子5の屈折率異方性とが、上記条件式(1)〜(3)を満たすように構成されている。これにより、基準波長λ0での焦点距離f0と基準波長λ0とは異なる他の波長(測定波長λ1)での焦点距離f1とが同一の値となるようにしている。
【0050】
上記条件式(3)を満たすβ,γの組み合わせ例を[表1]〜[表3]に示す。また、代表的な液晶材料について、αの計算値を[表4]に示す。なお、波長λの単位はnmである。計算値であるため、現実にはあり得ないマイナスの波長も含まれている。また、[表1]〜[表3]において、斜線を施した部分は可視波長域外の波長となることを示している。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
[表1]〜[表3]における各β,γの組み合わせでの波長が、焦点距離が同一の値となる波長である。例えば、[表1]において、β=3のときには、可視波長域については、γ=0のときの波長(549nm)とγ=1のときの波長(402nm)とが焦点距離が同一の値となる波長である。[表1]〜[表3]の例では、β=3以上のときに、可視波長域について、焦点距離が同一の値となる波長が複数存在することになる。ただし、液晶材料の種類によっては、β=2のときであっても、可視波長域について、焦点距離が同一の値となる波長が複数存在する場合も考えられる。
【0056】
図8〜図11は、[表1]〜[表3]に示した同一焦点距離となる波長の分布と、白色LEDを用いた一般的な液晶ディスプレイの透過スペクトル分布とを比較して示したものである。図8はβ=5とした場合、図9はβ=9とした場合、図10はβ=14とした場合、図11はβ=15とした場合を示している。図8〜図11、[表1]〜[表3]から、β値が大きくなるに従い、色収差の生じない波長(焦点距離が同一となる波長)が増えており、効率が上がっていることが分かる。液晶ディスプレイに適用した際は、カラーフィルタの透過スペクトル、バックライト41のスペクトルとのマッチングが取れたものが最も液晶レンズ1のレンズ性能を引き出すことができる。具体的には、β=9のときに最適なバックライト41は、λ=445,550,620nmにピークを持つ3色LEDバックライトである。以上の方法とは逆にバックライト41のスペクトルが既知なら、それに合わせたα値を実現することができる液晶材料を選択する必要がある。
【0057】
図12は、液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタの透過スペクトル分布の一例を示している。液晶レンズ1は、3つ以上の波長に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるように設計されていることが好ましい。図12のスペクトル分布を考慮すると、特に、焦点距離が同一となる波長は、少なくとも以下の3つの波長領域λR,λG,λBのそれぞれに属していることが好ましい。
590nm≦λR≦780nm
475nm≦λG≦600nm
400nm≦λB≦490nm
【0058】
[表5]は、複数の異なる液晶材料についての特性値を示している。[表5]において、LC01は、[表4]に示した液晶材料に相当する。[表5]において、ne,noは、液晶分子において、屈折率異方性を示す2方向の屈折率を示している。図13は、[表5]に示した位相差係数β/γの値をグラフにまとめたものである。このように、液晶材料によって、位相差係数β/γの値は変動するので、β=2のときであっても、可視波長域について、焦点距離が同一の値となる波長が複数存在する場合が考えられる。
【0059】
【表5】

【0060】
[偏光方向と液晶分子5の配向方向との関係]
液晶レンズ1を図4に示したような液晶ディスプレイモジュール2と組み合わせて使用する場合、液晶ディスプレイモジュール2からの出射光線は特定の偏光方向に偏光した光である。液晶レンズ1において、電圧が印加されていない状態での液晶分子5の面内での配向方向は、液晶ディスプレイモジュール2の構成で決まる特定の偏光方向と平行な方向とされていることが好ましい。これにより、液晶ディスプレイモジュール2からの出射光線に対して、効率的にレンズ効果を生じさせることができる。なお、液晶分子5の配向方向は、図示しない配向膜のラビング処理の方向により調整することができる。
【0061】
図14(A),(B)は、図4に示した液晶ディスプレイモジュール2における観察者側偏光板43の透過軸の方向(光出射側の偏光方向)61の第1の例を示している。この第1の例では、光出射側の偏光方向61が、X方向となっている。
【0062】
図15(A),(B)は、液晶ディスプレイモジュール2における観察者側偏光板43の透過軸の方向(光出射側の偏光方向)61の第2の例を示している。この第2の例では、光出射側の偏光方向61が、Y方向となっている。
【0063】
図16(A)は、理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示している(図6(Aと同じ図)。図16(B)は、光出射側の偏光方向61が図14(A),(B)に示したX方向である場合に適した液晶分子5の配向状態を示している。図16(C)は、図16(B)に示した液晶分子5の配向状態を上方(観察者側)から見た状態を示している。なお、図16(B),(C)では、図16(A)のβ=8の位相差分布を有するレンズ効果を発生している場合の例を示している。図16(B),(C)に示した液晶分子5の配向状態は誘電率異方性Δεが正である場合についてであるが、誘電率異方性Δεが負である場合についても同様の配向状態となる。
【0064】
図17(A)は、理想的なフレネルレンズの位相差分布の一例を示している(図6(Aと同じ図)。図17(B)は、光出射側の偏光方向61が図15(A),(B)に示したY方向である場合に適した液晶分子5の配向状態を示している。図17(C)は、図17(B)に示した液晶分子5の配向状態を上方(観察者側)から見た状態を示している。なお、図17(B),(C)では、図17(A)のβ=8の位相差分布を有するレンズ効果を発生している場合の例を示している。図17(B),(C)に示した液晶分子5の配向状態は誘電率異方性Δεが正である場合についてであるが、誘電率異方性Δεが負である場合についても同様の配向状態となる。
【0065】
なお、図17(B),(C)に示した構成の方が、図16(B),(C)に示した構成に比べて、電圧印加時にディスクリネーションが発生しにくく、良好な配向が得られる。このため、図17(B),(C)に示した構成の方がよりレンズ性能を向上させることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る液晶レンズ1によれば、位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるようにしたので、0〜2πまでの位相差分布を形成する従来の液晶レンズに比べて、色収差を低減することができる。また、本実施の形態に係る表示装置によれば、色収差の低減された液晶レンズ1を用いるようにしたので、色収差が低減された良好な立体表示を行うことができる。
【0067】
ところで、回折現象によって生ずる波長分散は負であり、屈折率異方性を有する液晶分子自体の波長分散は正である。本実施の形態に係る液晶レンズ1によれば、0〜2πまでの位相差分布を形成する従来の液晶レンズに比べて、位相差の最大値が2πβと大きくなるため、液晶層3の厚みが大きくなる。しかしながら、液晶層3の厚みを大きくすることにより、回折現象によって生ずる負の波長分散と、液晶分子自体の正の波長分散とを複数の波長について打ち消し合うようにすることができる。これにより、色収差を低減する効果が得られる。
【0068】
<他の実施の形態>
本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば液晶ディスプレイモジュール2に代えて、表示手段として、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイやフィールドエミッションディスプレイ(FED)等の自発光型のディスプレイを用いても良い。
【0069】
また、液晶レンズ1を同心円状のフレネルパターンを有するフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる構造とすることも可能である。この場合、第1の電極11Yを輪帯状に形成し、半径方向に電圧分布を変化させることで、半径方向に位相差分布を変化させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…液晶レンズ、2…液晶ディスプレイモジュール(表示手段)、3…液晶層、5…液晶分子、10…第1の基板、11…第1の電極Y、20…第2の基板、21…第2の電極、31Y…シリンドリカルレンズ、40…液晶部、41…バックライト、42…バックライト側偏光板(第1の偏光板)、43…観察者側偏光板(第2の偏光板)、61…観察者側偏光板の透過軸(光出射側の偏光方向)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、
屈折率異方性のある液晶分子を含み、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極とによって印加される電圧に応じて前記液晶分子の配列が変化することで入射光線に対して所定方向に位相差分布が形成される液晶層と
を備え、
前記液晶層内で、β≧2以上の整数として、基準波長の入射光線に対して前記所定方向に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、前記基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させる
液晶レンズ。
【請求項2】
前記液晶層内で、前記基準波長の入射光線に対して前記所定方向に位相差が周期的に0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、前記基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなフレネルレンズ状のレンズ効果を発生させる
請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項3】
前記液晶層の厚さdと前記液晶分子の屈折率異方性とが、以下の条件式(1)〜(3)を満たすように構成され、
基準波長λ0での焦点距離f0と基準波長λ0とは異なる他の波長(測定波長λ1)での焦点距離f1とが同一の値とされている
請求項2に記載の液晶レンズ。
φm=2παβ[m−r2/(2λ00β)] ……(1)
φm=2π(β+γ)[m−r2/{2λ11(β+γ)}] ……(2)
α=1+γ/β ……(3)
ただし、
m<r<rm+1
α=λ0[Δn(λ1)−1]/{λ1[Δn(λ0)−1]}
β=Δn(λ0)d/λ0
m=0,1,2,・・・
r:フレネルレンズとしての中心位置から前記所定方向への任意の位置までの距離
m:フレネルレンズとしての中心位置から第m番目のフレネルゾーンに相当する位置までの距離
λ0:基準波長
λ1:測定波長
Δn(λ0):基準波長λ0での前記液晶分子の屈折率差(液晶分子において屈折率異方性を示す2方向の屈折率の差)
Δn(λ1):測定波長λ1での液晶分子の屈折率差
0:基準波長λ0での焦点距離
1:測定波長λ1での焦点距離
d:液晶層の厚さ
γ:位相差係数
とする。
【請求項4】
前記入射光線が特定の偏光方向に偏光した光であり、
電圧が印加されていない状態での前記液晶分子の面内での配向方向が、前記特定の偏光方向と平行な方向とされている
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項5】
可視波長域内の複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させる
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項6】
3つ以上の波長に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるものであり、
前記焦点距離が同一となる波長は、少なくとも以下の3つの波長領域λR,λG,λBのそれぞれに属している
590nm≦λR≦780nm
475nm≦λG≦600nm
400nm≦λB≦490nm
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧差が、前記位相差分布に対応して前記所定方向に変化するようになされている
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項8】
2次元的に画像表示を行う表示手段と、
前記表示手段に対して対向配置され、前記表示手段からの表示画像光が入射する液晶レンズと
を備え、
前記液晶レンズは、
第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように配置された第2の電極と、
屈折率異方性のある液晶分子を含み、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極とによって印加される電圧に応じて前記液晶分子の配列が変化することで入射光線に対して所定方向に位相差分布が形成される液晶層と
を有し、
前記液晶層内で、β≧2以上の整数として、基準波長の入射光線に対して前記所定方向に位相差が0から2πβまで変化するような位相差分布を形成し、前記基準波長を含む複数の波長の入射光線に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させる
表示装置。
【請求項9】
前記液晶レンズは、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧差がゼロの状態では前記レンズ効果がオフ状態となるものであり、
前記液晶レンズにおいて、前記レンズ効果をオフ状態に設定して、前記表示手段からの表示画像光を屈折させることなく透過させることで2次元表示を行い、
前記液晶レンズにおいて、前記レンズ効果をオン状態に設定して、前記表示手段からの表示画像光を立体視が可能となるように屈折させることで3次元表示を行う
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示手段は、特定の偏光方向に偏光した表示画像光を出射するものであり、
前記液晶レンズには、前記入射光線として前記特定の偏光方向に偏光した表示画像光が入射され、
前記液晶レンズにおいて、電圧が印加されていない状態での前記液晶分子の面内での配向方向が、前記特定の偏光方向と平行な方向とされている
請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示手段からの表示画像光には、以下の3つの波長領域λR,λG,λB内の波長成分が含まれ、
前記液晶レンズは、3つ以上の波長に対して焦点距離が同一となるようなレンズ効果を発生させるものであり、前記焦点距離が同一となる波長は、少なくとも以下の3つの波長領域λR,λG,λBのそれぞれに属している
590nm≦λR≦780nm
475nm≦λG≦600nm
400nm≦λB≦490nm
請求項8または9に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−164527(P2011−164527A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30219(P2010−30219)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】