説明

液晶光学素子及びこれを備えたピックアップ装置

【課題】外部回路との接続が容易かつ確実にできる信頼性の高い液晶光学素子を提供すること。
【解決手段】FPC接続305と第2基板302とが接続する領域とは別の領域で、導電ペースト306により第3基板303の延出部に形成した第2電極309を第2基板302の延出部に形成した第1電極307に接続させる。この結果、FPC305と第2基板302との接続が第2基板302との一方の面だけで済むようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層した複数の基板と、その各基板間に液晶層とを備える液晶光学素子及びこれを備えたピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の液晶層を備えた液晶光学素子が知られている。このような液晶光学素子の従来例を図1により説明する。図1は特許文献1,2,3にあった図を模写したもので、液晶光学素子の断面を示している。なお当該特許文献内で使われている用語を用いて説明しているので、各特許文献間で同等な部材であっても異なった呼び方をすることがある。また説明の都合により部材番号とハッチングを変えている。
【0003】
たとえば特許文献1の図8には3枚の透明基板が積層した多層液晶パネル(液晶光学素子)が示されている。図1(a)によりこの多層液晶パネルを説明する。図1(a)は特許文献1の図8を模写した多層液晶パネルの断面図である。
【0004】
この多層液晶パネルは、第1の透明基板101上に第2の透明基板102、第3の透明基板103が積層している。第1の透明基板101と第2の透明基板102の間には液晶層(図示せず)が挟持され、第1の透明基板101が第2の透明基板102から延出している。この延出部には、液晶層に電圧を印加するための駆動電極(図示せず)に接続する複数の端子電極(図示せず)が形成されている。同様に第2の透明基板102と第3の透明基板103の間にも液晶層(図示せず)が挟持され、第3の透明基板103から延出する第2の透明基板102の延出部にも複数の端子電極(図示せず)が形成されている。この2箇所の延出部に形成された端子電極群を1枚のフレキシブル配線フィルム104で接続し、更にそのフレキシブル配線フィルム104の他の一端を回路側基板105に接続する。
【0005】
液晶層は2層に限られることはなく、例えば特許文献2には4枚の基板と、各基板間に挟持された3層の液晶層とを備えた液晶表示装置(液晶光学素子)が示されている。図1(b)によりこの液晶表示装置を説明する。図1(b)は特許文献2の図1を模写した液晶表示装置の断面図である。
【0006】
図1(b)は、シアン、イエロー、マゼンダの3層を積層したゲストホスト型液晶表示装置の断面を表している。第1の基板112、第2の基板114、第3の基板116、第4の基板118がそれぞれ離間して配置され、各基板間の周囲は、シール126,124,122によって封止され、その間隙には液晶層117,115,113が各々封入されている。第1の基板112、第2の基板114、第3の基板116には、それぞれ、その基板端部までゲート配線(図示せず)が引き出されている。各基板端部は、下段の基板ほど、順に長くなっており、これにより段差を形成している。ゲート配線の端部には、各々接続パットが設けられている。回路基板110の接続部131、第1の基板112端部の接続パット133、第2の基板114端部の接続パット135、第3の基板116端部の接続パット137は、共通のフレキシブル基板120を段差に沿って屈曲させて接合することにより、電気的に接続されている。なおフレキシブル基板120は、各段部のゲート配線に対応する共通の配線(3本のゲート配線を接続する配線)をもつ。
【0007】
特許文献1,2に示された多層型の液晶光学素子は、フレキシブル基板の接続部が段差を形成していた。これに対しフレキシブル基板との接続部を確保するのに中央の基板を延出させた液晶光学素子がある。例えば特許文献3の図4には中央の基板を延出させ、この
延出部の両面でフレキシブル基板と接続をとる透過光量可変素子(液晶光学素子)が示されている。図1(c)によりこの透過光量可変素子を説明する。図1(c)は特許文献3の図4を模写した透過光量可変素子の断面図である。
【0008】
この透過光量可変素子の上半分は、平行に配置された1対の透明基板201a、201bと、透明基板201bの基板面に設けられ、多層構造を有する透明部材が回折格子をなすように周期的に配置された多層格子部材203aと、多層格子部材203aが設けられた1対の透明基板201a、201b間に多層格子部材203aを埋めるように挟持された液晶204aと、液晶204aに電界を印加するための透明電極202a、202bと、シール205aと、透明電極202a、202b間に所定の波形の電圧を印加するための配線206aとを含むように構成される。
【0009】
同様にこの透過光量可変素子の下半分は、平行に配置された1対の透明基板201b、201cの間に多層格子部材203bと、液晶204bと、透明電極202c、202dと、シール205bを備え、透明電極202c、202d間に所定の波形の電圧を印加するための配線206bを含む。
【0010】
ここで上半分の多層格子部材203aの長手方向は、下半分の多層格子部材203bの長手方向と直交している。同様に液晶層204aの配向方向は、液晶層204bの配向方向と直交している。このようにして上半分が一方の直線偏光の透過光量を調整し、下半分が一方と直交する他方の直線偏光の透過光量を調整する。この結果、透過光量可変素子は自然光を扱えるようになる。
【0011】
図1(a),(b)の多層液晶パネル,液晶表示装置は、回路側基板105,回路基板110と一枚のフレキシブル配線フィルム104,フレキシブル基板120で接続していた。一方、図1(c)の透過光量可変素子は、二つの配線206a,206bで外部の回路と接続する。接続構造を簡単にするため、これらの配線206a,206bは一枚のフレキシブル基板(以下FPCと呼ぶ)上に形成されることが望ましい。
【0012】
そこで図2により一枚のFPCで図1(c)の接続を実現する方法を説明する。図2は比較例として示すFPCの平面図である。このFPC206は、左側が二股に分かれており、配線(図示せず)は一方の面に形成されている。図中のAB線に沿ってFPC206を折り曲げると、配線206aと配線206bを対向させられる。この状態で配線206a,206bを図1(c)の基板201bの延出部両面に形成された電極と接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭57−62029号公報(図8参照)
【特許文献2】特開平10−260423号公報(図1参照)
【特許文献3】WO2006/082901号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1,2に示されたように、基板が階段状に延出し、各段差面にFPC接続領域を有し、一枚のFPCで外部回路と液晶光学素子の電極を接続しようとすると、段差部の鋭利なコーナでFPC上に形成された配線が断線したり、ある段差部においてFPCと電極とを熱圧着しているときに不要な熱伝導が発生し他の段差部上にある接続済みの構造が加熱により変形したりする。
【0015】
特許文献3に示されるように、延出した基板の両面でFPCと液晶光学素子の電極を
接続させる場合、比較例のようにしてFPCを一枚に出来るとはいっても、FPC形状が長方形から比べると複雑な形状となり、大判のシートから一個のFPCを切り出す際の取り個数が減ってしまう。
【0016】
そもそもこれらの課題は、多層液晶構成をとる液晶光学素子において外部回路との接続領域が複数存在するために生じている。また接続領域が複数存在することで接続工程が煩瑣になる。そこで本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外部回路との接続が容易かつ確実にできる信頼性の高い液晶光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、積層する3以上の基板の各間隙にそれぞれ液晶層を挟持し、外部回路との通電により液晶層が駆動される液晶光学素子において、液晶層を挟んで対向する2つの基板のうちの一方には、他方の基板の外縁よりも外方に延出した延出部が備えられ、該延出部における外部に露出した面上には配線電極が設けられ、少なくとも2つの延出部のそれぞれの配線電極同士が一対一で導電部材によって接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
導電部材は導電ペーストであっても良い。これにより、配線電極同士の接続が塗布工程で済むので製造工程が容易になる。
【0019】
また、1枚の前記基板にのみ、外部回路と接続される接続電極が形成されているのが好ましい。これにより、複数の配線電極と外部回路との接続を一箇所に纏めることができるため、接続工程を簡素化できる。
【0020】
さらに、本発明は、光源から出射されたレーザービームを光記録媒体へ集光させ、該光記録媒体によって反射されたレーザービームを検出するピックアップ装置において、レーザービームの光路上に、上記いずれかの液晶光学素子を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外部回路接続用の領域とは異なる領域において、基板間または基板の表裏間の配線電極同士が接続されることにより、複数の配線電極と外部回路とを一箇所で接続できるため、外部回路との接続が容易かつ確実にできる信頼性の高い液晶光学素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来例として示した液晶光学素子の断面図である。
【図2】比較例として示したFPCの平面図である。
【図3】実施形態1の液晶光学素子の断面図と平面図である。
【図4】図3(b)に示すC−D線断面図である。
【図5】図3の液晶光学素子の電極を示す平面図である。
【図6】図3の液晶光学素子の電極接続工程の説明図である。
【図7】実施形態2の液晶光学素子の断面図と平面図である。
【図8】実施形態3の液晶光学素子の断面図と平面図である。
【図9】実施形態4の液晶光学素子の断面図と平面図である。
【図10】実施形態5のピックアップ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図3〜10を参照しながら、本発明の液晶光学素子の好適な実施形態について詳細に説明する。実施形態1〜5は、CDやDVD、BDなど光ディスクの読み書きに
使われるピックアップ装置の光学系に挿入される液晶光学素子である。ピックアップ装置用の液晶光学素子は様々な変形があるなかで、実施形態1〜4は、2層液晶セルであり、第1基板と第2基板および第1液晶層を含む上側の液晶セルが光学系の球面収差を補正し、第2基板と第3基板および第2液晶層を含む下側の液晶セルが直線偏光を円偏光に変換(逆の変換も行う)するλ/4位相差板として機能する。図10では本発明の液晶光学素子をピックアップ装置に適用した実施形態を示す。なお、同一または相当要素には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
(実施形態1)
【0024】
実施形態1を図3〜6で説明する。図3は実施形態1の液晶光学素子の断面図(a)と平面図(b)である。図4は、図3のC−D線に沿った断面図である。図5は、図3の液晶光学素子の電極を示す平面図である。図6は、図3の孤立した導電部材で液晶光学素子の電極を接続する工程の説明図である。
【0025】
図3(a)により実施形態1の液晶光学素子における部材の積層状況を説明する。第3基板303上には順に第2基板302と第1基板301が積層している。第1基板301と第2基板302の間には第1液晶層(図示せず)が挟持されている。同様に第2基板302と第3基板303の間には第2液晶層(図示せず)が挟持されている。第1基板301に対し第2基板302は図の左側に延出している。さらに第2基板302に対し第3基板303が延出している。第2基板302の延出部上面には複数の第1電極(図示せず)が形成されている。同様に第3基板303の延出部上面にも複数の第2電極(図示せず)が形成されている。この第1電極と第2電極は銀ペースト306(導電部材)によって一対一で接続されている。図の右側では第2基板302が延出し、延出部上面には外部回路との接続電極(図示せず)が形成され、各接続電極308は異方性導電接着剤304を介してFPC305の配線(図示せず)と接続する。
【0026】
図3(b)により実施形態1の液晶光学素子の接続状況をさらに詳しく説明する。第3基板303の延出部と第2基板302の延出部を跨るように銀ペースト306が配置されている。この銀ペースト306の右側に第1電極307の一部が露出し、第1電極307の残りの部分は銀ペースト306下に存在する。また第2電極309は銀ペースト306の下にあるため図示していない。図の右側の第2基板302の延出部では、FPC305と第1基板301との間に接続電極308の一部が見える。接続電極308の残りの部分はFPC305の下にある。
【0027】
図4により実施形態1の液晶光学素子の液晶セル構造を説明する。図4は、図3(b)のC−D線に沿った要部断面図であり、銀ペースト306を塗布したりFPC305を接着したりする前の状態である。先ず上側の液晶セルについて述べる。第1透明基板301の下面には駆動電極401が形成され、駆動電極401の一部はシール406領域まで達している。第2基板302の上面には、第1電極307a、駆動電極402、接続電極308bが形成されている。第1基板301と第2基板302及びシール406に囲まれた空間には第1液晶層405が挟持されている。次に下側の液晶セルについて述べる。第2透明基板302の下面には駆動電極403が形成され、駆動電極403の一部はシール408領域まで達している。第3基板303の上面には、第2電極309a、駆動電極404が形成されている。第2基板302と第3基板303及びシール408に囲まれた空間には第2液晶層407が挟持されている。なお駆動電極401と接続電極308bはシール406中に混練された導電粒子(図示せず)で導通している。同様に駆動電極403と第2電極309aもシール408中に混練された導電粒子(図示せず)で導通している。
【0028】
各基板301,302,303は0.4mm厚のガラスからなり、各電極307a,
308a,309b,401〜404は厚さが0.012μmのITOからなる。第1液晶層405及び第2液晶層407は温度特性を考慮し垂直配向とし、それぞれ厚みが7〜10μm、2〜4μmである。なおポリイミドからなる垂直配向膜(図示せず)が、シール406,408部を除いた駆動電極401〜404表面を覆っている。
【0029】
図5において本実施形態の電極を説明する。図5で(a),(b),(c),(d)はそれぞれ第1基板301下面、第2基板302上面、第2基板302下面、第3基板303上面に形成された電極を示し、全て上面側から眺めたものである。
【0030】
図5(a)において、駆動電極401は円形の領域と、この領域から突出した部分とを有している。円形の領域は、ピックアップ装置のレーザービームが通過する領域であり、共通電極(コモン電極ともいう)として振舞う。駆動電極401の突出部の先端がシール406まで達する。
【0031】
球面収差補正用の液晶光学素子は、駆動電極全体が円形の駆動電極と複数の輪帯状の駆動電極が同心円状に配列したものとなる。図5(b)では円形の駆動電極402cと2本の輪帯状の駆動電極402a,402bとして簡略化して描いた。図中、第2基板302上面の右側がFPC接続領域となり、接続電極308a〜fが縦に配列している。接続電極308aは基板を横断するようにして第1電極307aと接続している。接続電極308bの左端はシール406領域まで達する。接続電極308c,d,eそれぞれ駆動電極402a,b,cと接続している。接続電極308fも基板を横断するようにして第1電極307bと接続している。
【0032】
図5(c)において、駆動電極403は長方形の領域と、この領域から突出した部分とを有している。長方形の領域はピックアップ装置のレーザービームが通過する領域を含み、駆動電極403は突出部の先端がシール408まで達する。
【0033】
図5(d)において、長方形の駆動電極404は第2電極309bと接続している。図の上方には第2電極309aがある。
【0034】
第2液晶層407を位相差板として機能させる場合、位相差量は液晶層に印加する電圧で決まるから液晶層407を駆動する電極(駆動電極403,404)は2個でよい。即ち、駆動信号が入力する端子(第2電極309a,b)は2個となる。また駆動電極403の長方形領域と駆動電極404の長方形領域とは同形である。
【0035】
液晶セルが組み上がっている状態では、接続電極308bはシール406を介して駆動電極401の突起部先端と接続し、駆動電極403の突起部先端はシール408を介して第2電極309aと接続する。第1電極307aと第2電極309aからなる一対は銀ペースト306で接続する。同様に第1電極307bと第2電極309bからなる一対は銀ペースト306で接続する。
【0036】
以上のようにして、シール406,408による上下導通と銀ペースト306による第1電極307a,bと第2電極309a,b間の導通で、全ての駆動電極401,402a〜c,403,404と接続電極308a〜fが接続する。
【0037】
図6において本実施形態における銀ペースト306の塗布方法を説明する。図6(a)は銀ペースト塗布前の液晶セルを側面から眺めたものである。図6(b)において、ディスペンサー601から第3基板303の延出部に銀ペースト602を押し出す。銀ペースト602が完全に押し出される前に液晶セルを左側に移動する。正確な押し出し量を制御しなけらばならないディスペンサー601は複雑な機構になるので、ディスペンサー6
01を移動するより液晶セルを移動する方が容易である。全て銀ペースト602がディスペンサー601から押し出されると、図6(c)のように銀ペースト306が第2基板302の延出部と第3基板303の延出部を跨ぐような形状となる。
(実施形態2)
【0038】
図7〜9で他の実施形態2〜4を説明する。これらの実施形態2〜4もピックアップ装置用の液晶光学素子であり、液晶セルの内部構造に関わる駆動電極、第1液晶層,第2液晶層などの部材や銀ペースト塗布方法は実施形態1と基本的に等価なので外観のみ説明する。
【0039】
実施形態2を図7で説明する。図7は実施形態2の液晶光学素子の断面図(a)と平面図(b)である。実施形態1と同様に、第3基板703上には順に第2基板702と第1基板701が積層し、第1基板701と第2基板702の間には第1液晶層(図示せず)が挟持され、第2基板702と第3基板703の間には第2液晶層(図示せず)が挟持されている(実施形態3〜5も同様)。
【0040】
図7において、第2基板702は第1基板701および第3基板703に対し左側に延出している。第2基板702の延出部上面には2個の第1電極707が形成され、同様に第2基板702の延出部下面には2個の第2電極(図示せず)が形成されている。この第1電極707と第2電極の一対は銀ペースト706で接続する。図の右側では第2基板702が延出し、延出部上面には複数の接続電極708が形成され、各接続電極708は異方性導電接着剤704を介してFPC705の配線(図示せず)と接続する。
(実施形態3)
【0041】
実施形態3を図8で説明する。図8は実施形態3の液晶光学素子の断面図(a)と平面図(b)である。図8において、第1基板801に対し第2基板802は図の右側に延出し、さらに第2基板802に対し第3基板803が延出している。第2基802の延出部上面には2個の第1電極807と接続電極808が形成され、同様に第3基板803の延出部上面には2個の第2電極(図示せず)が形成されている。この第1電極807と第2電極の一対は銀ペースト806で接続する。また第2基板802の延出部上面では各接続電極808が異方性導電接着剤804を介してFPC805の配線(図示せず)と接続する。
(実施形態4)
【0042】
実施形態4を図9で説明する。図9は実施形態4の液晶光学素子の断面図(a)と平面図(b)である。図9において、第2基板902は第1基板901および第3基板903に対し図の右側に延出している。第2基板902の延出部上面には2個の第1電極907と複数の接続電極908が形成され、第2基板902の延出部下面には2個の第2電極(図示せず)が形成されている。この第1電極907と第2電極の一対は、FPC接続領域と直交する辺に塗布された銀ペースト906で接続する。また第2基板902の延出部上面では各接続電極908が異方性導電接着剤904を介してFPC905の配線(図示せず)と接続する。
【0043】
以上のように、本発明の実施形態1〜4に係る液晶光学素子では、外部回路との接続位置が一箇所でよいため、接続工程が極めて容易となる。また、FPCを用いなくてよいため、熱圧着時の他の部位への悪影響や配線の断線等が生じることがなく、信頼性の高い素子を実現することができる。
【0044】
また、導電部材を導電ペーストとすることにより、FPCのような接続工程ではなく、塗布工程で済むので、製造が容易になる。
【0045】
さらに、1枚の基板にのみ、外部回路と接続される接続電極を形成することによって、外部回路との接続を一箇所に纏めることができるため、接続工程を簡素化できる
(実施形態5)
【0046】
図10において実施形態1〜4のうちいずれかひとつの液晶光学素子をピックアップ装置に適用する例を説明する。図10は光ディスクを含むピックアップ装置の光学系の説明図である。光源11を出射するレーザービーム12(破線)はコリメータレンズ13で円筒状になる。このレーザービーム12は偏光ビームスプリッター16を通過し液晶光学素子17に入射する。液晶光学素子17を透過する際、レーザービーム12はまず第1液晶層で球面収差補正を受け波面が変化し、次にλ/4位相差板に相当する第2液晶層を通過し円偏光となって出射する。この円偏光となったレーザービーム12は対物レンズ18により光ディスク(光記録媒体)19上にスポットを結ぶ。レーザービーム12は、光ディスク19から反射する際に円偏光の回転方向が逆になり、λ/4位相差板に相当する第2液晶層で直線偏光にもどる。このとき(復路)のレーザービーム12の直線偏光方向は往路の直線偏光方向と直交しているので第1液晶層を素通りし偏光ビームスプリッター16で反射する。最後にレーザービーム12はレンズ14で集光され検光子15に入射する。
【0047】
なお、実施形態1〜4は3枚基板からなる2層液晶セル構成となっていたが、本発明の手法は4枚以上の基板からなる多層液晶セルに適用できる。また、本発明の液晶光学素子は多層セルとして外部回路との接続が容易になるのでピックアップ装置用途に限られるものではない。
【0048】
また、上記実施形態では、2つの延出部のそれぞれの配線電極を一対一で接続しているが、3つ以上の延出部の配線電極間で接続を行っても良く、多層構造の液晶セルであっても適用できる。
【0049】
また、実施形態1〜4が備える位相差板として機能する液晶層は、印加電圧を変化させ、CD用レーザー波長、DVD用レーザー波長、BD用レーザー波長それぞれに対してλ/4波長板となる。つまり図10で示した光学系でこれら3種類の光ディスクに対応出来るようになる。このように機能が向上しているが、銀ペーストによる接続が2箇所で済んでいる。このように本発明の液層光学素子をピックアップ装置に適用すると、簡単な方法で実用性が増す。
【0050】
なお実施形態1〜4では第1液晶層を球面収差補正素子としていたが、非点収差やコマ収差を補正するものでも良く、これらの収差を同時に補正する素子としても良い。複数種類の補正を組み合わせる場合には、第1基板側の駆動電極を分割する。またフレネルレンズを組み込んでも良い。これらは駆動電極数の増加を招くが、駆動電極を多く必要とする液晶層と接続電極とを同じ基板面に配置すれば、銀ペーストを介さずに駆動電極と接続電極を接続できるので配線構造が簡単化する。
【0051】
また実施形態1〜4では銀ペーストを使用したが、導電部材として、樹脂中にカーボンブラックや銅の粒子を分散した導電ペーストや、導電性テープでも良い。また銀ペーストの塗布にディスペンサー(エアーディスペンサ)を使ったが、インクジェット(ジェットディスペンサー)や筆塗りなどでも良い。銀ペーストが露出していると水分により悪影響が及ぼされることがあるので、この場合はシリコーンなどで保護することが好ましい。複数または単数の第1電極と複数または単数の第2電極を一対として一塊の導電部材で接続しても良い。また3層セルの場合、第3電極と前記第1電極と第2電極と一塊の導電部材で接続しても良い。また基板延出部にスルーホールを設け、スルーホールに導電部材を押
し込み第1電極と第2電極を接続してもよい。
【符号の説明】
【0052】
301,701,801,901…第1基板、
302,702,802,902…第2基板、
303,703,803,903…第3基板、
304,704,804,904…異方性導電接着剤、
305,705,805,905…FPC、
306,706,806,906…銀ペースト(導電部材)、
307,307a〜b,707,807,907…第1電極(配線電極)、
308,308a〜f,708,808,908…接続電極、
309,309a〜b…第2電極(配線電極)、
401〜404,402a〜c…駆動電極、405…第1液晶層、406,408…シール、407…第2液晶層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層する3以上の基板の各間隙にそれぞれ液晶層を挟持し、外部回路との通電により前記液晶層が駆動される液晶光学素子において、
前記液晶層を挟んで対向する2つの前記基板のうちの一方には、他方の前記基板の外縁よりも外方に延出した延出部が備えられ、
該延出部における外部に露出した面上には配線電極が設けられ、
少なくとも2つの前記延出部のそれぞれの前記配線電極同士が一対一で導電部材によって接続されていることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
前記導電部材が導電ペーストであることを特徴とする請求項1記載の液晶光学素子。
【請求項3】
積層する前記基板のうち1枚にのみ、前記外部回路と接続される接続電極が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
光源から出射されたレーザービームを光記録媒体へ集光させ、該光記録媒体によって反射された前記レーザービームを検出するピックアップ装置において、
前記レーザービームの光路上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶光学素子を備えることを特徴とするピックアップ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−250197(P2010−250197A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101649(P2009−101649)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】