説明

液晶光学素子

【課題】フレネルレンズ構造を基板間に有する液晶レンズにおいて、フレネルレンズ構造の変形や、電圧印加時に液晶分子の立ち上がる向きが異なることを抑えて、所望の光学特性を得ることを目的とする。
【解決手段】一対の基板11,12のうち、一方の基板11にはフレネルレンズ構造31を備えた液晶レンズ1であって、フレネルレンズ構造31の液晶層側には、蒸着配向膜21を設け、他方の基板12の液晶層側には、蒸着配向膜21より配向規制力の強い配向膜22、または液晶層における液晶分子50のプレチルト角を大きくする配向膜22を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いて光学特性を可変とした液晶光学素子に関するものであり、特にカメラ、眼鏡等の光学装置において、焦点距離の調整用に用いられる液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶を用いた光学素子として、印加する電圧により焦点距離を制御することができる液晶レンズが知られている。方式として平板の透明基板に輪帯形状の電極を形成したものや、輪帯形状の電極を形成することに加えて透明基板に凸レンズや凹レンズのレンズ構造を持たせたものがある。前者の輪帯形状の電極だけを有するものは、電圧の印加方式を変えるだけで凸レンズにも凹レンズにもなり、使う上で利便性が高いが、液晶の複屈折と液晶層の厚みの制約からレンズパワーが大きくとれない。
【0003】
後者の透明基板にレンズ構造を有するものは、レンズパワーを大きくとることができるが、凸レンズや凹レンズ構造の透明基板上への形成を、安価に行なうことができない。しかし、フレネルレンズ構造の透明基板上への形成は、近年のナノインプリント技術を用いると比較的安価に行なうことが可能であり、基本的には凸レンズや凹レンズと同等の性能を実現することが可能である。
【0004】
ここで、上述した透明基板に光学構造としてフレネルレンズ構造を有する液晶レンズに関して従来技術を説明する。特許文献1、2には、フレネルレンズ構造が形成された透明基板と、平らな透明基板とで液晶層を挟持し、電界印加により液晶の配向を変化させ、それによりフレネルレンズ構造と液晶の界面による表面屈折効果を切替えて焦点距離を変化させる液晶レンズが記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の液晶レンズは、フレネルレンズ構造上の配向膜及び平らな透明基板上の配向膜は、有機配向膜をラビング処理することにより形成されている。特許文献2に記載の液晶レンズは、フレネルレンズ構造上の配向膜及び平らな透明基板上の配向膜は、斜方蒸着法により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−323261号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開昭62−194223号公報(第3−4頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、透明基板にフレネルレンズ構造を有する液晶レンズの従来技術では、次のような問題がある。図2、図3は、従来技術によりフレネルレンズ構造上に配向膜を形成した液晶レンズ100、200の構成を示す説明図である。
【0008】
図2(a)は、フレネルレンズ構造131上に液晶分子150が配向した状態を示す平面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B´断面図であり、液晶層へ電圧を印加して、液晶分子150が立ち上がった状態を示している。
【0009】
図2(b)に示すように、液晶レンズ100は、一対の透明基板111、112の間にフレネル構造131と液晶層を備えている。透明基板111、112の内側、液晶層15
0と接する面には、配向処理層の配向膜121、122が形成されている。配向膜121,122のラビング方向は、図2(a)に図示したようにラビング方向D2で示される。この際、液晶分子150は、ラビング方向D2に沿って配列する。
【0010】
ここで、フレネルレンズ構造131上の配向膜121及び平らな透明基板112上の配向膜122のそれぞれに有機配向膜を用いると、図2(b)に図示するように、フレネルレンズ構造131の溝160に配向膜121が溜まり、フレネルレンズ構造の形状が変形してしたり、ラビング処理工程でフレネルレンズ構造131を傷つけたり、種々の問題が生じていた。
【0011】
また、図3は、図2と同じくフレネル構造を備えた液晶レンズ200を示す図である。ただし、配向膜は、斜方蒸着膜を用いている。図3(a)は、フレネルレンズ構造231上に液晶分子が配向した平面図で、図3(b)は、図3(a)のC−C´断面図であり、液晶層へ電圧を印加して、液晶分子250が立ち上がった状態を示している。
【0012】
図3(a)に示すように、フレネルレンズ構造231上の配向膜221及び平らな透明基板212上の配向膜222を斜方蒸着法で形成した。これにより、図2を用いて説明したような、ラビング処理によるフレネルレンズ構造が変形する、フレネルレンズ構造が傷つけられるといった問題が解決できる。このときの斜方蒸着方向は、図中の斜方蒸着方向D3の矢印の方向である。フレネルレンズ構造231は傾斜があるため、蒸着角度は、例えば基板表面とのなす角度25〜45°の範囲内で斜方蒸着することが望ましい。このような方向で斜方蒸着を行うと、斜方蒸着方向D3と垂直の方向に液晶分子250の長軸が配向し、また、液晶分子250のプレチルト角はフレネルレンズ構造231に対して略0°となる。このとき液晶レンズ200の電極(図示せず)間に電圧を印加すると、図3(b)に図示するように、液晶分子250が立ち上がる。しかし、フレネルレンズ構造231の傾斜の向きが異なる場所では、液晶分子250の立ち上がる向きが異なってしまう。つまり、電圧印加時に液晶分子250は、右上がりの傾きを持つ分割レンズ面231a上では右上がりに立ち上がり、左上がりの傾きを持つ分割レンズ面231b上では左上がりに立ち上がる。このように、斜方蒸着方向D3と水平であって、液晶レンズ200の中心を通る線Y3を境にして、フレネルレンズ構造231の傾斜の向きが異なるため、電圧印加時に液晶分子が立ち上がる向きが異なり、ドメインが発生する。
【0013】
このように従来技術では、液晶の配向処理の方法によっては、フレネルレンズ構造が変形したり、場所によって電圧印加時における液晶の立ち上がる向きが異なったり、液晶レンズとして所望の光学特性を得ることができない問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決し、液晶光学素子の光学構造の変形や、光学構造の傾斜の向きが異なる場所で電圧印加時に液晶分子の立ち上がる向きが異なることを抑え、所望の光学特性を得ることを可能とする液晶光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決して目的を達成するため、本発明の液晶光学素子は、基本的に下記の構成を採用するものである。
【0016】
本発明にかかる液晶光学素子は、一対の基板のうち、一方の基板には光学構造を備え、光学構造と他方の基板との間に液晶層を備えた液晶光学素子であって、光学構造の液晶層側に設ける配向処理層の配向規制力よりも、他方の基板の液晶層側に設ける配向処理層の配向規制力が強いことを特徴とする。または、光学構造の液晶層側に設ける配向処理層のプレチルト角よりも、他方の基板の液晶層側に設ける配向処理層のプレチルト角が大きいことを特徴とする。
【0017】
また、光学構造の液晶層側に設ける配向処理層が、斜方蒸着膜であることを特徴とする。または、光学構造の液晶層側に設ける配向処理層が、光照射によって配向する光配向膜であることを特徴とする。あるいは、光学構造の液晶層側に設ける配向処理層が、光学構造の表面に形成された凹凸の溝構造であることを特徴とする。
【0018】
また光学構造の液晶層側に設ける配向処理層に接する液晶分子のプレチルト角は、ほぼ0度であることを特徴とする。光学構造の液晶層側に設ける配向処理層より配向規制力の強い配向膜は、有機膜をラビングした膜であることを特徴とする。あるいは、配向規制力は、配向処理による液晶分子の極角アンカリング値の大小であることを特徴とする。
【0019】
蒸着配向膜より液晶層における液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜は、他方の透明基板に対して、蒸着配向膜の蒸着角度より低い蒸着角度で斜方蒸着を行った蒸着膜であることを特徴とする。あるいは、光配向膜より液晶層における液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜は、他方の透明基板に対して、光配向膜への紫外線照射角度を垂直照射より低い角度の斜方照射を行った光配向膜であることを特徴とする。
【0020】
光学構造がフレネルレンズで、液晶光学素子は液晶レンズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液晶光学素子では、フレネルレンズ構造などの光学構造を備える基板の液晶層側には蒸着配向膜を設け、他方の基板の液晶層側には、蒸着配向膜より配向規制力の強い配向膜、または液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜を設けることで、光学構造の傾斜の向きが異なる場所で、電圧印加時に液晶分子の立ち上がる向きが異なることを抑え、所望の光学特性を得ることが可能な液晶光学素子となる。また、光学構造を備える基板側に、蒸着配向膜や光を照射して配向する光配向膜を設ける、あるいは、表面に凹凸を形成して配向層を形成するなど、非接触な方法で配向層を形成すれば、光学構造が傷つけられることで、光学構造が変形する等の問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の液晶レンズの構成を示す平面図及び断面図である。
【図2】従来の液晶レンズの構成を示す平面図及び断面図である。
【図3】従来の液晶レンズの構成を示す平面図及び断面図である。
【図4】本発明の実施例2の液晶レンズの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例2の液晶レンズのインプリント工程を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2の液晶レンズの製造工程を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例3の液晶レンズの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、液晶光学素子の光学構造としてフレネルレンズを用い、液晶層に印加する電圧により焦点距離を可変とした液晶レンズを例にして、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1]
<実施例1の構成:図1>
まず、本発明の実施例1の液晶レンズの構成について説明する。図1は、液晶レンズ1の概略を示す図である。図1(a)は、フレネルレンズ構造31に液晶分子50が配向した状態を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A´断面図であり、液晶層へ電圧を印加して、液晶分子50が立ち上がった状態を示している。
【0025】
液晶レンズ1は、第1の透明基板11と第2の透明基板12とで、液晶分子50よりなる液晶層を挟持した構成を備える。液晶層はシール部材40により封止されており、液晶層の厚みはガラスファイバーなどのスペーサ(図示せず)により所定の寸法に規定される。
【0026】
シール40は同心円状のフレネルレンズ構造31を取り囲むように円状で形成されており、シール40の内側には液晶50が充填されており、フレネルレンズ構造31上にシール40と液晶50の領域がある構成となっている。図面上は図示していないが、透明基板がプラスチック基板の場合には、ガスバリア層としてSiO等の無機膜を透明電極と透明基板の間に設ける構成の方が好適である。
【0027】
第1の透明基板11は、光学構造として同心円状に分割された各レンズ面が段差を介して接続された形状のフレネルレンズ構造31がインプリント(転写)工程で一体に形成されている。このフレネルレンズ構造31を形成するインプリント工程を含めた液晶レンズの製造工程については、後段の実施例で詳細に説明する。フレネルレンズ構造31の上には、透明電極(図示せず)と配向膜21とが形成されている。第2の透明基板12には透明電極(図示せず)と配向膜22とが形成されている。形成されている。また、第1の透明基板11には、レンズ有効径領域に透明電極が形成されている(図示せず)。第一の透明基板11の透明電極は、フレネルレンズ構造31の表面、または、第一の透明基板11とフレネルレンズ構造31との間に形成される。透明電極の材料はレンズ作用を期待する光の波長範囲において透過率が高い材料で、可視光の範囲であればインジウム・スズ酸化物などが用いられる。
【0028】
フレネルレンズ構造31の表面には、液晶分子を配向させるための配向処理層として蒸着配向膜21が形成される。この蒸着配向膜21は、SiOx等の無機材料を斜方蒸着することにより形成される。このときの斜方蒸着方向は、図1(a)における斜方蒸着方向D1の矢印方向である。図に示すように、フレネルレンズ構造31は傾斜があるため、蒸着配向膜21は透明基板11表面とのなす角度25〜45°の範囲内で斜方蒸着する。蒸着角度をこの範囲内で行うことによって、蒸着配向膜と接している液晶分子のプレチルト角は、ほぼ0°となる。フレネルレンズ構造31の表面の配向処理層を蒸着配向膜21とすることにより、ラビング処理による配向膜と異なり、フレネルレンズ構造が傷つけられたり、変形したりすることがない。
【0029】
次に、第2の透明基板12にも同様に、レンズ有効径領域に透明電極が形成されている(図示せず)。さらに、第2の透明基板12の表面には配向処理層の配向膜22が形成されている。この配向膜22は、上述したフレネルレンズ構造31の表面に形成された蒸着配向膜21より配向規制力の強い配向膜、または蒸着配向膜21より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜である。例えば、蒸着配向膜の配向規制力は約8×10−5J/mであるのに対して、ポリイミド膜等の有機膜をラビング処理した場合は1〜3×10−4J/m程度の配向規制力を持ち、配向膜22に適している。また、第2の透明基板12に対しては、5°くらいの低い蒸着角度で斜方蒸着を行えば、20°以上の大きいプレチルトを得ることが可能となり、斜方蒸着膜であっても配向膜22として採用することに適している。
【0030】
次に、本実施形態の液晶レンズ1の液晶の配向状態について説明する。
フレネルレンズ構造31上に形成された蒸着配向膜21の表面では、図1(a)に図示するように、斜方蒸着方向D1と垂直の方向に液晶分子50の長軸が配向する。図に示すように、斜方蒸着方向D1と平行であって、液晶レンズ1の中心を通る線を線Y1とすると、線Y1を境にして、分割レンズ面31a、31bに対して、電圧無印加では、液晶分子50のプレチルト角が略0°で配向する。この場合、分割レンズ面31a、31bはそれぞ
れ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持つため、分割レンズ面31a、31b表面では液晶分子50もそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持って初期配向している。
【0031】
また、配向膜22は蒸着配向膜21より配向規制力の強い膜、または蒸着配向膜21より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜であり、ここでは、液晶分子50は、透明基板12に対して、右上がりの傾斜で初期配向しているものとする。
【0032】
このとき液晶層に電圧を印加すると、配向膜22表面の液晶分子50は、右上がりの傾斜で初期配向しており、分割レンズ面31a表面の液晶分子50も右上がりの傾斜で初期配向しているため、分割レンズ面31a上の液晶分子は右上がりに立ち上がる。さらに、配向膜22表面の右上がりの傾斜で初期配向している液晶分子50は、強い配向規制力または高いプレチルト角であるため、電圧無印加時には、左上がりの傾斜で配向している分割レンズ面31b上の液晶分子50も右上がりに立ち上がり、分割レンズ面31a上の液晶分子50と同じ方向に立ち上がる。このように、電圧印加時には、液晶分子が左上がりの立ち上がりを示す領域は存在しない。
【0033】
つまり、斜方蒸着方向D1と平行であって、液晶レンズ1の中心を通る線Y1を境にして、フレネルレンズ構造31の傾斜の向きは異なるが、電圧印加時に液晶分子50が立ち上がる向きは同じであり、フレネルレンズ構造31の傾斜の向きの違いによる電圧印加時のドメインを防ぐことができた。
【0034】
[実施例2]
<実施例2の構成:図4>
次に、本発明の実施例2の液晶レンズおよび液晶レンズの製造方法について説明をする。以下の説明においては、既に説明した同一の構成には同一の符号を付与しており、その詳細な説明は省略し、構成が異なる点についてのみ説明する。
【0035】
本発明の実施例2の液晶レンズの構成について説明する。図4は液晶レンズ2の構成を示す説明図である。図4(a)は液晶レンズ2に電圧を印加していない時の断面図であり、図4(b)は液晶レンズ2に十分な電圧を印加して液晶をスイッチングさせた時の断面図である。図面表示上の問題から、図では実際とは異なるアスペクト比で模式的に示しており、図4では分かりやすく説明するために比較領域としてA領域とB領域にのみ液晶分子を図示している。
【0036】
第1の透明基板11には、光学構造形状として同心円状に分割された各レンズ面が段差を介して接続された形状のフレネルレンズ構造31がインプリント(転写)工程で一体に形成されている。フレネルレンズ構造31の上には、透明電極61と配向処理層の配向膜23とが形成されている。第2の透明基板12には透明電極62と配向膜24とが形成されている。透明電極の材料はレンズ作用を期待する光の波長範囲において透過率が高い材料で、可視光の範囲であれば、例えばインジウム・スズ酸化物(ITO)などが用いられる。
【0037】
本実施例では、フレネルレンズ構造31の表面に液晶分子を配向させるための配向処理層として光配向膜23が形成される。この光配向膜23は、例えばアゾベンゼン等の光異性化材料を用いて偏光UV照射し一方向に配向させることにより形成される。UV照射方向の90度垂直方向に液晶分子は配向し、このときの液晶配向方向は、図4(a)におけるD4の矢印方向である。光配向膜の特性として、偏光UVを垂直照射の場合にはプレチルト角がほぼ0度となる。垂直照射でなく、例えば45度の斜方照射することでプレチルト角度をつけることができ、斜方照射の場合には、UV光を特に偏光させる必要はない。
なお、光配向膜は、光異性化材料だけでなく、二量化反応材料、分解反応材料でも本発明に適用できる。
【0038】
前述の通り、光配向膜の効果による液晶分子のプレチルト角はほぼ0°であるが、図に示すようにフレネルレンズ構造31は透明基板に対して傾斜があるため、そのフレネルレンズ斜面の角度は実質プレチルトと同じ作用としてみなせる。分割レンズ面31a、31bはそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持っており、従って、図4(a)のA領域では、フレネルレンズに沿って、液晶分子は図面上右上がりにプレチルトがついているように配向され、B領域では液晶分子は逆に左上がりにプレチルトがついているように初期配向される。
【0039】
なお、フレネルレンズ構造31の表面の配向膜を光配向膜23とすることにより非接触であるので、接触式のラビング処理による配向膜と異なり、フレネルレンズ構造が傷つけられたり、変形したりすることがない。
【0040】
第2の透明基板12の表面に形成された配向処理層の配向膜24は、上述したフレネルレンズ構造31の表面に形成された光配向膜23より配向規制力の強い配向膜、または光配向膜23より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜である。つまり、本発明においては、配向規制力として、特に極角アンカリング力の差異が強く関わっている。なお、方位角アンカリング力は、どちらの配向膜も強い方が好適である。例えば、光配向膜の配向規制力のオーダーが10−5J/mであるのに対して、ポリイミド膜等の有機膜をラビング処理した場合は10−4J/mのオーダーでの配向規制力を持つため、配向膜24に適している。例に挙げた配向規制力の値は、材料やプロセス条件によって大小があり、最適化は必要である。
【0041】
また、第2の透明基板12に対しては、前述の通り45°と角度をつけて紫外線を斜方照射することで、プレチルトを得ることが可能となり、光配向剤であっても配向膜22として採用することに適している。特に、フレネルレンズの最大角度よりも大きいプレチルト角度があるのが好ましい。
【0042】
次に、本実施形態の液晶レンズ2の液晶の配向状態について説明する。フレネルレンズ構造31上に形成された光配向膜23の表面では、図4(a)に図示するように、配向方向D4に液晶分子50の長軸が配向する。図に示すように、液晶レンズ2の中心を通る線を線Y4とすると、線Y4を境にして、分割レンズ面31a、31bに対して、電圧無印加では、液晶分子50のプレチルト角が略0°で配向する。この場合、分割レンズ面31a、31bはそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持つため、分割レンズ面31aのA領域、31bのB領域では液晶分子50もそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持って初期配向している。
【0043】
また、配向膜24は光配向膜22より配向規制力の強い膜、または光配向膜23より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜であり、ここでは、液晶分子50は、透明基板12に対して、右上がりの傾斜で初期配向しているものとする。配向膜24の配向規制力または液晶分子のプレチルト角が大きいために、液晶分子全体の配向方向としての影響力が大きく作用し、液晶層としては透明基板12に対して、右上がりの傾斜での初期配向が支配的となっている。ただし、液晶層の中で光配向膜23近傍の領域においては、光配向膜23によって液晶分子50が配向しているので、配向状態としては正確には、図4(a)のA領域ではホモジニアス配向、B領域ではスプレイ配向となっている。B領域では、スプレイ配向となっているが、配向膜24の影響が支配的となっているため実質ホモジニアス配向とみなすことができ、配向欠陥であるディスクリネーション欠陥はB領域でも、線Y4の境界でも出現しなくきれいな配向状態となる。実際の作製した液晶セルでディスクリネーション欠陥は確認されず、きれいな配向状態であった。
【0044】
図4(b)に示すように、液晶層に電圧を印加すると、配向膜24表面の液晶分子50は、右上がりの傾斜で初期配向しており、分割レンズ面31a側のA領域の液晶分子50も右上がりの傾斜で初期配向しているため、分割レンズ面31a上の液晶分子は右上がりに立ち上がる。さらに、配向膜24表面の右上がりの傾斜で初期配向している液晶分子50は、強い配向規制力または高いプレチルト角であるため、電圧無印加時には、左上がりの傾斜で配向している分割レンズ面31bのB領域の液晶分子50もほとんどが右上がりに立ち上がり、分割レンズ面31a上の液晶分子50と同じ方向に立ち上がる。このように、電圧印加時の液晶分子の配向状態は右上がりの立ち上がりが支配的になっており、左上がりの立ち上がりを示す領域はほぼ存在しない。実際の作製した液晶セルで電圧を印加して確認したところ、ドメインは確認されず、きれいな配向状態であった。
【0045】
つまり、液晶分子の配向方向D4と平行であって、液晶レンズ2の中心を通る線Y4を境にして、フレネルレンズ構造31の傾斜の向きは異なるが、電圧印加時に液晶分子50が立ち上がる向きは同じであり、フレネルレンズ構造31の傾斜の向きの違いによる電圧印加時のドメインを防ぐことができた。
【0046】
また、先の実施例1では、電圧無印加時と電圧印加時の液晶分子の挙動について、説明を省略したが、実施例1についても実施例2と同様の挙動を示す。
【0047】
<光学構造および配向膜の製造方法:図5、図6>
次に、先の実施例1および2における液晶レンズの製造方法について、図を用いて説明する。図5及び図6では図面表示上の問題から実際とは異なるアスペクト比で模式的に示している。図5は、液晶レンズ2におけるフレネルレンズ31のインプリント工程の説明図であり、図6は実施例2における液晶レンズ2の製造工程の説明図である。
【0048】
まず、以下では、インプリント樹脂として紫外線(UV)や可視光、赤外光により硬化する光硬化樹脂を用いた例を説明する。図5(a)に示すように、第1の透明基板11にディスペンサ74によって光硬化性の樹脂35を滴下する。図示していないが、第1の透明基板11と樹脂35の接着性が悪い場合には、プラズマ照射を行い、第1の透明基板11の表面改質を行ったり、第1の透明基板11にプライマー処理等を施したりしたのち、接着層を設けて接着性を向上させる。
【0049】
次に、図5(b)及び図5(c)に示すように、第1の透明基板11に滴下した樹脂35に、金型モールド95を加圧しながら押し当てる。金型モールド95にはフレネルレンズの形状が凹凸反転で形成されている。金型モールド95の表面には、予めフッ素系の離型剤を塗布することにより離型処理が施されている。
【0050】
その後、樹脂35が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図5(c)に示すように紫外線80を照射して樹脂35を硬化させる。なお、図面上では、透明基板11側から紫外線80を照射しているが、これに限定されることはなく、金型モールド95が、紫外線を透過する石英モールドや樹脂モールドであれば、金型モールド95側から紫外線80を照射しても構わない。
【0051】
樹脂35が十分硬化したのち、図5(d)に示すように、金型モールド95を樹脂35から離型する。以上の工程により、第1の透明基板11上にフレネルレンズ構造31が作製される。
【0052】
実際に試作したフレネルレンズの寸法を、例として示す。有効径をφ20mmとし、ブレーズ(輪帯)の数を55、各ブレーズの高さ(サグ量)を7μmで固定とした。最内周のブレーズ半径を1.28mm、最も外側に位置するブレーズの幅を51μmとし、最も
外側に位置するブレーズのレンズ面の最大傾斜角度は3.6度である。
【0053】
図6は、透明基板上への配向処理層の形成から、第1の透明基板11と第2の透明基板12の貼り合わせまでの工程の説明図である。図6(a)から(d)は、フレネルレンズ構造31が形成されている透明基板11の工程についてで、図6(e)、(f)は対向基板である透明基板12の工程についてであり、図6(g)は、その2枚の透明基板を用いて貼り合わせを行い完成した液晶レンズ2を示している。
【0054】
フレネルレンズ構造31を形成した後、図6(a)に示すように、フレネルレンズ構造31の表面上にスパッタリング法等により透明電極61を形成する。直接、フレネルレンズ構造31の上に透明電極61を膜付けしても構わないが、フレネルレンズ構造31にまずSiO2等のバリア層やハードコート層などの層を設けてから透明電極61を設けても良い。特に透明基板51がプラスチック基板である場合には、フレネルレンズ構造31にSiO等のバリア層を設けた方が好適である。
【0055】
次に、実施例2で説明した光配向膜の形成方法について説明する。フレネルレンズ構造31の表面に透明電極61を形成した後、実施例2の光配向膜23を形成する。光配向膜23は、例えばディスペンサ75で塗布しスピンコーターにより薄膜形成される。その後、焼成を行い配向膜の溶剤を飛ばす。次に、図6(b)に示すように、偏光紫外線85を照射し、光配向膜23の分子を配向させる。実施例2では、このように光配向膜を形成するが、実施例1の場合では、この工程で、蒸着方法を用いて蒸着配向膜を形成する。
【0056】
フレネルレンズ構造31の表面に透明電極61および光配向膜23を形成した後、図6(c)に示すように、フレネルレンズ構造31の無い位置にディスペンサ76によりシール40を塗布する。このシール40は、例えば紫外線硬化樹脂であり、潰れて広がることを考慮に入れて、フレネルレンズ構造31の端ぎりぎりではなく、間をあけて塗布する。シール40は、後述する工程で第1の透明基板11と第2の透明基板12とが貼り合わせされたときに潰されて密着されて硬化される。
【0057】
シール40を塗布した後、図6(d)に示すように、ディスペンサ77を用いてシール40の内側、フレネルレンズが形成された領域に液晶50を滴下する。フレネルレンズ構造31へのダメージを防ぐために、非接触で滴下可能なジェットディスペンサを用いることが好適である。液晶の滴下量は、シール40の内側の体積に応じて決まる。シール40の内側の体積に応じた量の液晶を滴下しないと、第1の透明基板11と第2の透明基板12とを貼り合わせた後の液晶セルの面精度の悪化、液晶セル内の気泡の発生などの原因となる。
【0058】
また、フレネルレンズ構造31上に滴下された液晶50は、表面張力・ぬれ性等の特性に応じて、シール40より高く盛られた状態となる。液晶が高く盛られた状態で、後述するように第1の透明基板11と第2の透明基板12を重ね合わせると、液晶が第2の透明基板12に接触した後、第2の透明基板12の表面上をシール40の外側の領域まで広がってしまう問題がある。そこで、滴下された液晶の高さを抑えるため、フレネルレンズ構造31の複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。さらに、透明基板どうしを重ね合わせたときに液晶が均一に広がるように、中心対称となる複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。
【0059】
次に、対向基板である第2の透明基板12の工程について説明する。図6(e)に示すように、第2の透明基板12の表面上にスパッタリング法等により透明電極62を形成する。透明電極62の上に、フレキソ印刷法を用いて、配向膜24を形成し、その後、焼成を行い配向膜の溶剤を飛ばすとともに、ポリアミック酸からイミド化させポリイミド膜に
変化させる。
【0060】
図6(f)に示すように、配向膜24形成後に、ラビング方式による配向処理を行い、液晶の配向方向を制御する。
【0061】
次に、図6(g)に示すように、第1の透明基板11の液晶滴下面を上向きに配置して、真空状態で第1の透明基板11と第2の透明基板12とを貼り合わせる。
【0062】
第1の透明基板11と第2の透明基板12とを貼り合わせた後、紫外線(UV)を照射してシール40を硬化させる。このとき、光配向膜23には紫外線が照射されないようにマスクで保護することが望ましい。ODFで液晶を封入した後でも、シール硬化のための紫外線照射によって配向に影響を与えて配向不良を引き起こすことがあるからである。紫外線を照射してシールを硬化させた後、必要に応じて焼成を行ってシール40の未硬化成分を本硬化させる。以上の工程により、本発明の液晶レンズが製造される。
【0063】
なお、上記製造工程はODF方式を例にとって説明したが、本発明はODF方式に限定されず、注入方式でも適用できる。
【0064】
上述したように本発明によれば、フレネルレンズ構造の傾斜の向きが異なる場所で電圧印加時に液晶分子の立ち上がる向きが異なることを抑え、また、ラビング工程によるフレネルレンズ構造のキズや欠けも無くすことにより、所望のレンズ特性を得ることが可能となる。
【0065】
[実施例3]
<実施例3の構成:図7>
次に、液晶レンズの他の実施例について説明をする。以下の説明においては、既に説明した同一の構成には同一の符号を付与しており、その詳細な説明は省略し、構成が異なる点についてのみ説明する。
【0066】
本発明の実施例3の液晶レンズの構成について説明する。図7は液晶レンズ3の構成を示す説明図である。図7(a)は液晶レンズ2に電圧を印加していない時の断面図であり、図7(b)は図7(a)の線Y5での断面図である。図7(c)は図7(b)のC領域の拡大図である。図面表示上の問題から、図では実際とは異なるアスペクト比で模式的に示しており、図7では分かりやすく説明するために比較領域としてA領域とB領域にのみ液晶分子を図示している。
【0067】
第1の透明基板11には、光学構造形状として同心円状に分割された各レンズ面が段差を介して接続された形状のフレネルレンズ構造32が、先の光学構造の製造方法で説明したように形成されている。ただし、本実施例では、先の図5の説明と異なっている点として、フレネルレンズ構造32の表面に配向処理層として凹凸構造形状が形成されている。凹凸構造形状を形成する方法としては、例えば金型モールドに予め凹凸形状を形成しておき、インプリント工程時にフレネルレンズ形状と同時に凹凸形状を形成できる。この方法だけでなく、インプリント後のフレネルレンズ形状にレーザー加工やフォトリソによるエッチング加工によって凹凸を形成することも可能である。
【0068】
液晶分子は、溝の段差形状に倣って配向するので、液晶分子の配向方向D5と凹凸構造形状の溝方向は平行している。図7(b)は、液晶分子の配向方向D5と凹凸構造形状の関係を説明するために、図7(a)の線Y5での断面図であり、さらに図7(c)は図7(b)のC領域の拡大図である。図7(c)で示すように、フレネルレンズ構造32の上には、透明電極61が形成されており、凹凸構造形状のサイズに対して、透明電極61の
膜厚が小さいため、フレネルレンズ構造32表面の凹凸構造形状が透明電極61に伝播されている。液晶分子50を並ばせるための配向膜は不要で、伝播された透明電極61の凹凸構造形状によって液晶分子が並んでいる。液晶分子50は、図面上手前から奥の方向にならんでおり、プレチルト角はほぼ0度となる。また、図7(b)で示すように、第2の透明基板12には透明電極62と配向膜24とが形成されている。
【0069】
前述の通り、凹凸構造形状による液晶分子のプレチルト角はほぼ0°であるが、図に示すようにフレネルレンズ構造32は透明基板に対して傾斜があるため、そのフレネルレンズ斜面の角度は実質プレチルトと同じ作用としてみなせる。分割レンズ面31a、31bはそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持っており、従って、図7(a)のA領域では、フレネルレンズに沿って、液晶分子は図面上右上がりにプレチルトがついているように配向され、B領域では液晶分子は逆に左上がりにプレチルトがついているように初期配向される。
【0070】
なお、フレネルレンズ構造32の配向処理を凹凸構造形状とすることにより非接触であるので、接触式のラビング処理による配向膜と異なり、フレネルレンズ構造が傷つけられたり、変形したりすることがない。
【0071】
第2の透明基板12の表面には配向膜24が形成された配向膜24は、上述したフレネルレンズ構造32の表面に形成された凹凸構造形状のより配向規制力の強い配向膜、または凹凸構造形状より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜である。本発明においては、配向規制力として、特に極角アンカリング力の差異が強く関わっている。なお、方位角アンカリング力は、どちらの配向膜も強い方が好適である。例えば、凹凸構造形状の構造配向による配向規制力のオーダーが10−6J/mであるのに対して、ポリイミド膜等の有機膜をラビング処理した場合は10−4J/mのオーダーでの配向規制力を持つため、配向膜24に適している。例に挙げた配向規制力の値は、凹凸形状のピッチや深さ、材料やプロセス条件によって大小があり、最適化は必要である。
【0072】
次に、液晶レンズ3の液晶の配向状態について説明する。フレネルレンズ構造32上に形成された凹凸構造形状の表面では、図7(a)に図示するように、配向方向D5に液晶分子50の長軸が配向する。図に示すように、液晶レンズ3の中心を通る線を線Y5とすると、線Y5を境にして、分割レンズ面31a、31bに対して、電圧無印加では、液晶分子50のプレチルト角が略0°で配向する。この場合、分割レンズ面31a、31bはそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持つため、分割レンズ面31aのA領域、31bのB領域では液晶分子50もそれぞれ透明基板11に対して右上がり、左上がりの傾斜を持って初期配向している。
【0073】
また、配向膜24は凹凸構造形状の構造配向より配向規制力の強い膜、または凹凸構造形状の構造配向より液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜であり、ここでは、液晶分子50は、透明基板12に対して、右上がりの傾斜で初期配向しているものとする。配向膜24の配向規制力または液晶分子のプレチルト角が大きいために、液晶分子全体の配向方向としての影響力が大きく作用し、液晶層としては透明基板12に対して、右上がりの傾斜での初期配向が支配的となっている。ただし、液晶層の中で凹凸構造形状の構造配向近傍の領域においては、凹凸構造形状の構造配向によって液晶分子50が配向しているので、配向状態としては正確にはA領域ではホモジニアス配向、B領域ではスプレイ配向となっている。B領域では、スプレイ配向となっているが、配向膜24の影響が支配的となっているため実質ホモジニアス配向とみなすことができ、配向欠陥であるディスクリネーション欠陥はB領域でも、線Y4の境界でも出現しなくきれいな配向状態となる。
【0074】
実施例2と同様のため図示しないが、液晶層に電圧を印加すると、配向膜24表面の液
晶分子50は、右上がりの傾斜で初期配向しており、分割レンズ面31a側のA領域の液晶分子50も右上がりの傾斜で初期配向しているため、分割レンズ面31a上の液晶分子は右上がりに立ち上がる。さらに、配向膜24表面の右上がりの傾斜で初期配向している液晶分子50は、強い配向規制力または高いプレチルト角であるため、電圧無印加時には、左上がりの傾斜で配向している分割レンズ面31bのB領域の液晶分子50もほとんどが右上がりに立ち上がり、分割レンズ面31a上の液晶分子50と同じ方向に立ち上がる。このように、電圧印加時の液晶分子の配向状態は右上がりの立ち上がりが支配的になっており、左上がりの立ち上がりを示す領域はほぼ存在しない。
【0075】
つまり、液晶分子の配向方向D5と平行であって、液晶レンズ3の中心を通る線Y4を境にして、フレネルレンズ構造31の傾斜の向きは異なるが、電圧印加時に液晶分子50が立ち上がる向きは同じであり、フレネルレンズ構造32の傾斜の向きの違いによる電圧印加時のドメインを防ぐことができた。
【0076】
(その他の変形例)
上述した実施形態の説明においては、液晶光学素子として、液晶セルの中にフレネルレンズ形状が構成されている液晶レンズを例にとって示した。しかし、本発明は光学形状が限定されるものではなく、例えば、リニアフレネルレンズ形状、マイクロプリズム形状、マイクロレンズアレイ形状、シリンドリカルレンズ形状、レンチキュラーレンズ等の光学形状でも、それら光学形状への配向処理による配向規制力よりも、平板である対向基板に配向規制力の強い配向処理層を用いることで適用可能である。
【0077】
本発明の液晶光学素子は、液晶の配向方式、透明電極の輪帯パターン電極の構成・本数・設計方法、液晶材料の種類、層数等によらないので、液晶光学素子に幅広く適用することができる。
【0078】
本発明の液晶光学素子は、デジタルカメラ、ムービーカメラ、カメラ付き携帯電話のカメラ部、車等に搭載されて後方確認用モニターなどに用いられるカメラなどの撮像光学系、プロジェクタ、レーザーポインタなどの投影光学系、CD、DVD、BD(Blue-ray Disc(登録商標))等のピックアップ向けの収差補正素子、眼鏡やヘッドマウントディスプレイなどのアイウェア、3Dディスプレイ向けの可変焦点素子、2D/3D切替素子と、幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1〜3 液晶レンズ
11、12 透明基板
21〜24 配向膜
31、32 フレネルレンズ構造
35 樹脂
40 シール部材
50 液晶分子
61、62 透明導電膜
74〜77 ディスペンサ
80 紫外線
85 偏光紫外線
95 金型モールド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板のうち、一方の基板には光学構造を備え、前記光学構造と他方の基板との間に液晶層を備えた液晶光学素子であって、前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層の配向規制力よりも、前記他方の基板の前記液晶層側に設ける配向処理層の配向規制力が強いことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
一対の基板のうち、一方の基板には光学構造を備え、前記光学構造と他方の基板との間に液晶層を備えた液晶光学素子であって、前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層のプレチルト角よりも、前記他方の基板の前記液晶層側に設ける配向処理層のプレチルト角が大きいことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項3】
前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層が、斜方蒸着膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層が、光照射によって配向する光配向膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層が、前記光学構造の表面に形成された凹凸の溝構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層に接する前記液晶分子のプレチルト角は、ほぼ0度であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記光学構造の前記液晶層側に設ける配向処理層より配向規制力の強い配向膜は、有機膜をラビングした膜であることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
前記配向規制力は、配向処理による液晶分子の極角アンカリング値の大小であることを特徴とする請求項1又は、3から7の何れか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記蒸着配向膜より前記液晶層における液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜は、前記他方の透明基板に対して、前記蒸着配向膜の蒸着角度より低い蒸着角度で斜方蒸着を行った蒸着膜であることを特徴とする請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記光配向膜より前記液晶層における液晶分子のプレチルト角を大きくする配向膜は、前記他方の透明基板に対して、前記光配向膜への紫外線照射角度を垂直照射より低い角度の斜方照射を行った光配向膜であることを特徴とする請求項4に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記光学構造がフレネルレンズで、前記液晶光学素子は液晶レンズであることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の液晶光学素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−34062(P2011−34062A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147880(P2010−147880)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】