説明

液晶性ポリエステル樹脂組成物および当該樹脂組成物からなるコネクター

【課題】極めて低反り性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いてなる、薄肉部を有しながらも、反りが極めて小さいコネクターを提供する。
【解決手段】<1>複素環状有機塩基化合物の存在下で製造された液晶性ポリエステル樹脂100重量部と、マイカ又は、マイカ及び繊維状充填剤からなる充填剤15〜100重量部とを含有してなることを特徴とする、液晶性ポリエステル樹脂組成物。
<2>液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度が270〜400℃である、<1>の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
<3>前記いずれかの液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いてなるコネクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクター等の電子部品の製造用として好適な液晶性ポリエステル樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなるコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂は、分子が剛直なため溶融状態においても絡み合いがなく、成形時のせん断により分子鎖が流れ方向に著しく配向し、固化時にもその配向を維持するという特徴により、優れた溶融流動性を有することが知られている。この特徴を活かして、液晶性ポリエステル樹脂に、ガラス繊維などの繊維状補強剤やタルクなどの無機充填剤などを配合した樹脂組成物は、薄肉部を有する成形体、特に、薄肉部を有し、比較的複雑な形状を有するコネクター等の電子部品などの製造用に好適に使用されている。ところで、近年の表面実装技術の進展や、携帯電話等のモバイル機器に係る軽薄短小化の流れに伴って、使用される電子部品は、より薄肉化が求められ、その形状もより複雑化しており、コネクターにおいても、薄肉化等の要求が高くなってきている。しかしながら、コネクターは、肉厚が極めて薄い薄肉部を有するものや、設計寸法が比較的小さいものでは、長尺方向に反りが発生しやすいという問題がある。かかる問題を解決する低反り性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物としては、例えば、特許文献1には、特定の触媒下で製造された液晶性ポリエステル樹脂に、繊維状及び/又は板状の充填剤を配合してなる樹脂組成物が、成形してコネクターを得た場合、反りが小さいコネクターを製造し得ることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−109700号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されている樹脂組成物によれば、反りが小さいコネクターを得ることができる。しかしながら、益々薄肉化が進み、形状が複雑化しているコネクターにおいては、低反り性の、より一層の向上が求められている。
そこで、本発明の目的は、従来よりも、極めて低反り性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いてなる、薄肉部を有しながらも、反りが極めて小さいコネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
<1>下記製造方法で得られる液晶性ポリエステル樹脂100重量部と、マイカ又は、マイカ及び繊維状充填剤からなる充填剤15〜100重量部とを含有してなることを特徴とする、液晶性ポリエステル樹脂組成物
を提供するものである。なお、液晶性ポリエステル樹脂は、下記の製造方法によって製造されるものである。
[液晶性ポリエステルの製造方法]
芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得るアシル化工程と、次いで、該アシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とが、エステル交換を起こすようにして、液晶性ポリエステルを重合する重合工程とを有し、該アシル化工程及び該重合工程がともに、下記式(1)で表される複素環状有機塩基化合物の存在下で行う液晶性ポリエステルの製造方法



・・・(1)
(式中R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるシアノアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜4であるシアノアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基又はフォルミル基を表す。)
【0006】
さらに、本発明は前記<1>に係る好適な実施形態として、下記の<2>〜<4>を提供する。
<2>前記液晶性ポリエステル樹脂が、芳香族ジオールとして4,4’−ジヒドロキシビフェニル、芳香族ヒドロキシカルボン酸としてパラヒドロキシ安息香酸、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸及び/又はイソフタル酸を用いてなるポリエステル樹脂であることを特徴とする、<1>の液晶性ポリエステル樹脂組成物
<3>前記液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度が270〜400℃であることを特徴とする、<1>又は<2>の液晶性ポリエステル樹脂組成物
<4>前記繊維状充填剤が、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ及びチタン酸カリウムウィスカから選ばれる少なくとも1種である、<1>〜<3>のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂組成物
【0007】
また、本発明は前記いずれかの樹脂組成物よりなる、下記の<5>、<6>を提供する。
<6>前記いずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするコネクター
<7>肉厚0.1mm以下の薄肉部を有することを特徴とする、<5>のコネクター
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶性ポリエステル樹脂の優れた溶融流動性を維持しながら、低反り性に極めて優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。そして、当該樹脂組成物からなるコネクターは、液晶性ポリエステル樹脂が有する、高度の耐熱性及び機械的強度を維持し、薄肉化や複雑形状化が要求される電子部品の成形に好適に使用できるので、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<液晶性ポリエステル樹脂>
本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂は、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを重合して得られる、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成する液晶性ポリエステル樹脂である。
このように、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールからなる全芳香族液晶性ポリエステル樹脂は、高度の耐熱性と高度の機械的強度とを有するので、電子部品の製造において特に有用なものとなる。
【0010】
以下、本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂を構成する構造単位の具体例を挙げる。

芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:



(前記の構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。)
【0011】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:



(前記の構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。)
【0012】
芳香族ジオールに由来する構造単位:


【0013】


(前記の構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。)
【0014】
前記の構造単位に係る置換基について簡単に説明する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。アリール基としては典型的にはフェニル基が挙げられる。
【0015】
次に、液晶性ポリエステル樹脂の構造単位の組合わせ及び該構造単位の存在比(共重合比)について、詳述する。
本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂としては、耐熱性や機械的特性等の特性のバランスから、前記(A1)の構造単位を少なくとも30モル%含むが好ましく、構造単位の組み合わせが、下式の(a)〜(f)であるものが好ましい。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)の組み合わせ、又は、(A1)、(B1)と(B2)及び(C1)の組み合わせ、
(b):(A1)及び(A2)の組み合わせ
(c):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部を(A2)で置き換えた組み合わせ
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部を(B3)で置き換えた組み合わせ
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部を(C3)で置き換えた組み合わせ
(f):(b)の構造単位の組み合わせに(B1)と(C1)の構造単位を加えた組み合わせ
【0016】
前記の例示の中でも、本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂としては、前記の構造単位で表して、(A1)、(C1)、(B1)及び/又は(B2)からなる液晶性ポリエステル樹脂、すなわち、パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位[(A1)]と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位[(C1)]と、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸由来の構造単位[(B1)及び/又は(B2)]とを、有する液晶性ポリエステル樹脂が好ましい。この場合、(C1)/(A1)のモル比率が0.2以上1.0以下であり、[(B1)+(B2)]/(C1)のモル比率が0.9以上1.1以下であり、(B2)/(B1)のモル比率が0より大きく1以下であるものが、より好ましい。
【0017】
また、該液晶性ポリエステル樹脂は、流動開始温度が270〜400℃であることが好ましく、280〜380℃であることがより好ましい。液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度が、この範囲である場合、液晶性ポリエステル樹脂自体の耐熱性が十分に発現され、成形時に液晶性ポリエステル樹脂の熱分解が生じるおそれもなく、成形がより容易になるので好ましい。ここで、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48,000ポイズ)を示す温度を意味する。
【0018】
次に、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明で用いる液晶性ポリエステル樹脂は、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得るアシル化工程と、次いで、該アシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とが、エステル交換を起こすようにして、液晶性ポリエステルを重合する重合工程とを有し、該アシル化工程及び該重合工程がともに、前記式(1)で表される複素環状有機塩基化合物の存在下で行うことを特徴とする、液晶性ポリエステルの製造方法である。
【0019】
まず、芳香族ジオール及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基を、脂肪酸無水物でアシル化(アシル化反応)するアシル化工程について説明する。
芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(前記(C1)を誘導する芳香族ジオール)、ハイドロキノン(前記(C2)を誘導する芳香族ジオール)、レゾルシン(前記(C3)を誘導する芳香族ジオール)、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、アセトキシハイドロキノン、ニトロハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン(前記(C4)を誘導する芳香族ジオール)、2,7−ジヒド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(前記(C5)を誘導する芳香族ジオール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(前記(C6)を誘導する芳香族ジオール)等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホンが、入手が容易であるため好ましく、上述のように4,4’−ジヒドロキシビフェニルがより好ましく使用される。
【0020】
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸(前記(A1)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸)、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(前記(A2)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸)、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテル、2,6−ジクロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2,6−ジフルオロ−パラヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で、パラヒドロキシ安息香酸及び/又は2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が、入手が容易であるため好ましく、上述のようにパラヒドロキシ安息香酸がより好ましく使用される。
【0021】
脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸が特に好ましく使用される。
【0022】
芳香族ジオール及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸に対する脂肪酸無水物の使用量は、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量が好ましく、1.0〜1.15倍当量がより好ましく、1.03〜1.12倍当量がさらに好ましく、1.05〜1.1倍当量が特に好ましい。脂肪酸無水物の使用量が、該フェノール性水酸基に対して1.0倍当量未満の場合には、アシル化反応時の平衡が脂肪酸無水物側にずれてポリエステルへの重合時に未反応の芳香族ジオール又は芳香族ジカルボン酸が昇華し、反応系が閉塞する傾向があり、また1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶性ポリエステル樹脂の着色が著しくなる傾向がある。
【0023】
アシル化反応は、130〜180℃で30分〜20時間反応させることが好ましく、140〜160℃で1〜5時間反応させることがより好ましい。
【0024】
次に、前記アシル化工程によって得られたアシル化物(芳香族ジオールのアシル化物及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物)のアシル基と、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とを、エステル交換させて(エステル交換反応)、液晶性ポリエステル樹脂を重合する重合工程について説明する。なお、この芳香族ジカルボン酸は、前記アシル化工程の際に、反応系中に存在させていてもよく、換言すれば、アシル化工程において、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を同一反応系中に存在させていてもよい。これは、芳香族ジカルボン酸にあるカルボキシル基及び任意に置換されていてもよい置換基は、いずれも脂肪酸無水物によって何ら影響を受けないためである。よって、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を同一の反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってアシル化反応を実施する形式でもよく、先に、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってアシル化反応させた後に、芳香族ジカルボン酸を反応器に仕込む形式でもよい。操作上の簡便さから前者の形式がより好ましい。
【0025】
ここで、芳香族ジカルボン酸を具体的に例示すると、テレフタル酸(前記(B1)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、イソフタル酸(前記(B2)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(前記(B3)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が、入手が容易であるため好ましく、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸がより好ましく使用される。
【0026】
芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸をアシル化して得られたアシル化物のアシル基の合計に対する、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基の合計の当量比は、は、0.8〜1.2倍当量倍であることが好ましく、この当量比になるようにして、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の使用量を決定することが好ましい。
【0027】
エステル交換反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら反応させることがより好ましい。
【0028】
さらに、前記エステル交換反応を行う際、平衡をずらすために、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させて系外へ留去することが好ましい。また、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことによって、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料などを凝縮または逆昇華し、反応器に戻すこともできる。この場合、析出したカルボン酸を脂肪酸とともに反応器に戻すことが可能である。
【0029】
前記アシル化反応及び前記エステル交換反応は、前記式(1)で表される複素環状有機塩基化合物の存在下に行なうことが必要である。このような複素環状有機塩基化合物の存在下で製造される液晶性ポリエステル樹脂は、耐熱性等の優れた特性を損なうことなく、優れた溶融流動性を発現し、複雑形状の成形体(コネクター)を実用的な成形条件で成形することを可能とし、後述する充填剤との相乗効果により、低反り性に極めて優れたものとなる。
【0030】
かかる複素環状有機塩基化合物の具体例としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−4エチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−エチル−2−エチルイミダゾール、1−エチル−2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、4−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]尿素、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル(−(1'))−エチル−S−トリアジン]、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−S−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、N,N'−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N'−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)アジポアミド、2,4−ジアルキルイミダゾール−ジチオカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロライド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ビス(シアノエトキシメチル)イミダゾール、2−メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2,4−−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−アルキル−4−フォルミルイミダゾール、2,4−ジアルキル−5−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−メチルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−ウンデシルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−ヘプタデシルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−フェニルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、4−ジメチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−フェニル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)尿素、N,N'−[2−メチルイミダゾリル(1)−エチル]−アジポイルジアミド、1−アミノエチル−2−エチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
該複素環状有機塩基化合物としては、アシル化反応及び/又はエステル交換反応に係る反応性、得られる成形体の色調の観点から、式(1)で表されるR1が炭素数1〜4のアルキル基、R2〜R4が水素原子であるイミダゾール誘導体がより好ましく、入手が容易である観点から、1-メチルイミダゾール及び/又は1−エチルイミダゾールが特に好ましい。
【0032】
この複素環状含有機塩基化合物の添加量は、上述の液晶性ポリエステル樹脂の原料である芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸の合計100重量部に対して、0.005〜1重量部が好ましく、色調、生産性の観点から0.05〜0.5重量部であることがより好ましい。添加量が0.005重量部未満では、衝撃強度等の改善効果が少ない傾向があり、1重量部を超える場合、反応の制御が困難となる傾向がある。複素環状有機塩基化合物は、アシル化反応及びエステル交換反応の際の一時期に存在しておればよく、その添加時期は特に限定されず、反応開始の直前であっても、反応中に添加してもよい。このようにして得られる液晶性ポリエステル樹脂は、成形時において、より優れた溶融流動性を示すという利点がある。
【0033】
なお、エステル交換反応を促進して重合速度を増加させる目的で、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で微量の触媒を添加してもよい。添加される触媒としては、例えば、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、しゅう酸第一スズ、酢酸第一スズ、ジアルキルスズ酸化物、ジアリールスズ酸化物等のスズ化合物、二酸化チタン、チタンアルコキシド、アルコキシチタンケイ酸類等のチタン化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸第一鉄等の有機酸の金属塩、トリフッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸類、アミン類、アミド類、塩酸、硫酸などの無機酸等が挙げられる。
【0034】
アシル化反応及びエステル交換反応は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。これら、いずれの反応装置を用いても、本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
また、前記重合工程の後に、得られた樹脂を冷却して取り出し、該樹脂を粉砕によって粉体状としたり、粉体状にした樹脂を造粒してペレット状としたりして、得られる固体状態(粉体状又はペレット状)の樹脂をさらに加熱して高分子量化する、いわゆる当技術分野で周知の固相重合を用いて、液晶性ポリエステル樹脂を製造することもできる。この固相重合の反応条件としては、固体状態の樹脂を不活性気体雰囲気下又は減圧下に、1〜20時間熱処理する方法などが採用される。この場合、熱処理に使用される装置として、例えば、既知の乾燥機、反応機、イナートオーブン、混合機、電気炉等を用いることができる。
【0035】
<充填剤>
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物に配合される充填剤は、マイカを必須とするものである。ここで、マイカとは、アルカリ金属を含有するアルミノ珪酸塩のことであり、市場から種々の樹脂充填剤としてのマイカを入手することができる。
本発明で使用されるマイカの平均粒径は、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。平均粒径が10μm未満の場合、成形時、特に射出成形時にノズルから樹脂が垂れる低反り性が不十分となる傾向がある。
【0036】
また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物に配合される充填剤は、前記マイカとともに繊維状充填剤を用いることができる。この場合、繊維状充填剤はいわゆる無機系充填剤が好ましい。
本発明で用いられる繊維状の無機充填剤は、平均繊維径が0.1〜20μmであるものが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。平均繊維径が0.1μm未満である場合、低反り性と耐熱性の向上が不十分となる傾向がある。また平均繊維径が15μmより大きい場合、溶融流動性が不十分となる傾向がある。また、平均繊維長は、1〜300μmであることが好ましく、5〜300μmであることがより好ましい。平均繊維長が1μm未満である場合、耐熱性、機械的強度の向上が不十分となる傾向がある。また、平均繊維長が300μmより大きい場合には、溶融流動性の向上が不十分となる傾向がある。繊維状の無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが好ましい。これらは、単独でも、2種類以上を使用してもよい。
【0037】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、上述のように、液晶性ポリエステル樹脂にマイカを配合するか、マイカ及び繊維状充填剤を配合することにより得ることができる。充填剤の配合量は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、充填剤が15〜100重量部であり、好ましくは充填剤が25〜80重量部である。充填剤の配合量が15重量部以上であれば、得られるコネクターの低反り性が良好となり、一方、充填剤の配合量が100重量部以下であれば、成形時の溶融流動性が良好となり、成形がより容易になる傾向がある。また、充填剤の配合量が前記の範囲であると、コネクターを成形して得た場合、このコネクターの耐熱性も良好になるので、当該コネクターをハンダリフローによって処理する時、膨れ等の形状異常(ブリスター)が生じる恐れもないという利点がある。
【0038】
<その他の添加剤>
前記のように、液晶性ポリエステル樹脂と、充填剤とから、本発明の液晶性ポリエステル樹脂を得ることができるが、該液晶性ポリエステル樹脂には本発明の目的を損なわない範囲で、液晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂などを1種または2種以上を添加してもよい。
【0039】
また、同様に本発明の目的を損なわない範囲で、前記の充填剤以外の充填剤や添加剤を配合することもできる。具体例を挙げると、ガラスビーズ等の充填剤;フッ素樹脂、金属石鹸類等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤等の、当技術分野で通常使用されているような添加剤を1種以上添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を用いてもよい。
【0040】
<液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法>
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物を得るための原料成分の配合手段は、特に限定されず、例えば、液晶性ポリエステル樹脂、充填剤(マイカ、又はマイカと繊維状充填剤の混合物)、必要に応じて上記の添加剤、樹脂類等の各成分を、各々別々に溶融混合機に供給する方法、これらの原料成分を乳鉢、ヘンシェルミキサー、ボールミル、リボンブレンダー等を利用して予備混合してから溶融混合機に供給する方法などを挙げることができる。
【0041】
<液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形及びコネクター>
このようにして得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形することにより、コネクターを得ることができる。成形方法としては射出成形法が好ましい。射出成形に係る成形温度は、液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度より10〜80℃高い成形温度を採用することが好ましい。成形温度がこの範囲であれば、液晶性ポリエステル樹脂組成物が優れた溶融流動性を発現し、薄肉部を有するコネクターや複雑な形状を有するコネクターにおいても、良好な成形性を発現できる。また、成形時の樹脂の劣化が十分に防止され、コネクター特性の低下を生じさせる恐れがない。特に、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物に拠れば、肉厚0.1mm以下の薄肉部を有するようなコネクターを成形しても、反りを十分に低減することが可能となる。また、このようにして得られるコネクターは、液晶性ポリエステル樹脂の優れた耐熱性を損なうことなく、曲げ弾性率などの機械的強度にも優れているため、今後益々、薄肉化や形状の複雑化が求められるコネクターを容易に得ることができる。そして、この薄肉部を有したり、複雑な形状を有したり、するコネクターは、モバイル機器等に使用する電子部品に好適である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基いて説明するが、本発明が本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性等は次の方法で測定した。
【0043】
(1)反り量:射出成形機(日精樹脂工業(株)ES400)を用い、図1に示すようなコネクター成形品を得た。射出成形条件は、シリンダー温度350℃、金型温度70℃、射出速度150mm/秒である。その後、得られたコネクター成形品の底面に対し、長さ方向に0.2mmごと、幅方向に0.5mmごとに平坦度測定モジュール((株)コアーズ)にて、反り量を測定、平均値を算出した。さらに、同コネクター成形品について、50℃で40秒保持した後、270℃まで昇温し、同温度で1分間保持した。次いで、50℃まで降温させるといった熱処理を実施し、熱処理後のコネクター成形品について、前記と同様にして反り量を測定、平均値を算出した。成形後の反り量をリフロー前反り量、熱処理後の反り量をリフロー後反り量とした。
コネクター成形品は、長さ18mm、幅3.5mm、高さ1mmの、53pin(0.3mmピッチ)FPC用コネクターであり、最小肉厚部は0.1mmである。
【0044】
(2)曲げ弾性率:射出成形機(日精樹脂工業(株) PS40E5ASE)を用いてシリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度約75mm/秒で幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を成形し、ASTM D790に準拠して測定した。
(3)薄肉流動長:図2に示す薄肉流動長金型(0.3mmt)を用い、射出成形機(日精樹脂工業(株) PS10E1ASE)にてシリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度約90mm/秒で成形した。取り出した成形品の、4個のキャビティー部の長さを測定し、5個の成形品の測定値をもって薄肉流動長とした。
【0045】
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 299.0g(1.8モル)、イソフタル酸 99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して30分間還流させ、パラヒドロキシ安息香酸及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルのフェノール性水酸基をアシル化した(アシル化工程)。その後、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温した(重合工程)。トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持し、固相重合を行った後、冷却してLCP1を得た。LCP1の流動開始温度は327℃であった。
【0046】
実施例1、2
表1に示す重量組成比で、LCP1及び充填剤を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒して、液晶性ポリエステル樹脂組成物をペレット状で得た。得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形し、上記(1)〜(3)に示すようにして、コネクター成形品、曲げ弾性率測定用棒状試験片、薄肉流動長測定用成形品を得、反り量、曲げ弾性率及び薄肉流動長を測定した。その結果を表2に示す。なお、使用した充填剤は下記のとおりである。

GF:ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001
(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm)
マイカ:山口雲母工業所製AB−25S(平均粒径:24μm)
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】コネクター成形品の斜視外観を示す写真である。
【図2】薄肉流動長測定用の金型を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記製造方法で得られる液晶性ポリエステル樹脂100重量部と、マイカ又は、マイカ及び繊維状充填剤からなる充填剤15〜100重量部とを含有してなることを特徴とする、液晶性ポリエステル樹脂組成物。
[液晶性ポリエステルの製造方法]
芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得るアシル化工程と、次いで、該アシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とが、エステル交換を起こすようにして、液晶性ポリエステルを重合する重合工程とを有し、該アシル化工程及び該重合工程がともに、下記式(1)で表される複素環状有機塩基化合物の存在下で行う液晶性ポリエステルの製造方法。



・・・(1)
(式中R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるシアノアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜4であるシアノアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基又はフォルミル基を表す。)
【請求項2】
前記液晶性ポリエステル樹脂が、芳香族ジオールとして4,4’−ジヒドロキシビフェニル、芳香族ヒドロキシカルボン酸としてパラヒドロキシ安息香酸、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸及び/又はイソフタル酸を用いてなるポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度が270〜400℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記繊維状充填剤が、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ及びチタン酸カリウムウィスカから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするコネクター。
【請求項6】
肉厚0.1mm以下の薄肉部を有することを特徴とする、請求項5記載のコネクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108179(P2009−108179A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281360(P2007−281360)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】