説明

液晶表示パネルおよびこれを用いたバーコード読み取りシステム

種々の幅の黒表示のバーが種々の間隔で平行に並べられてなるバーコードを、液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示パネル(1)の、バーコード読み取り装置から光が照射される側に設けられた偏光板の透過軸(P1)の方向を、その光の偏光方向に一致させる。また、その偏光板の透過軸(P1)の方向を、
バーコードを構成する個々のバーの短辺方向または長辺方向に対して平行またはほぼ平行にする。そして、第1の強誘電状態または第2の強誘電状態における液晶分子(LCM)の分子長軸方向(M)を、偏光板の透過軸(P1)の方向に対して平行またはほぼ平行にするか、あるいは45°またはほぼ45°の角度をなすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示パネルに関し、特に、バーコードを、特定の方向に偏光している光の照射により読み取ることができるように表示する液晶表示パネルおよびこれを用いたバーコード読み取りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スーパーマーケット等の小売り店などにおいて、商品を並べる棚に付ける棚札に、商品名や価格とともにバーコードを表示し、このバーコードを利用してPOS(商品価格管理システム)等により商品の管理をおこなうシステムが運用されている。このようなシステムに用いられる棚札は、電子棚札と呼ばれている。通常の電子棚札では、商品名や価格を液晶表示パネルに表示するとともに、バーコードを印刷した紙を貼り付けるようになっている。また、液晶表示パネルに、商品名や価格だけでなく、バーコードも表示させるようにした電子棚札も提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示された電子棚札は、メモリ性の動作モードを有するカイラルネマチック液晶(コレステリック液晶)を用いている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−222893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが、メモリ性の動作モードを有する強誘電性液晶を用いて液晶表示パネルを作製し、この液晶表示パネルにバーコードを表示させて、低出力レーザー光を光源とするバーコード読み取り装置でバーコードの読み取りを試みたところ、読み取ることができないという問題点のあることが判明した。
【0005】
この発明は、上述した問題点を解消するため、バーコードを、特定の方向に偏光している光を照射するタイプのバーコード読み取り装置により安定して正確に読み取ることが可能なように表示することができる液晶表示パネルを提供することを目的とする。また、本発明は、液晶表示パネルに表示されたバーコードを、特定の方向に偏光している光を照射するタイプのバーコード読み取り装置により安定して正確に読み取ることができるバーコード読み取りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる液晶表示パネルは、種々の幅のバーが種々の間隔で平行に並べられてなるバーコードを、液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示パネルであって、相対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に封入された液晶と、前記一対の基板のうち、バーコードを読み取るための光が照射される側の基板に取り付けられた偏光板と、を具備し、前記偏光板の透過軸方向は、バーコードを読み取るための光の偏光方向に一致することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、バーコード読み取り装置から発せられた光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコードを安定して正確に読み取ることができる。
【0008】
この発明にかかる液晶表示パネルは、上記の発明において、前記偏光板の透過軸方向は、前記バーコードを構成する個々のバーの短辺方向に対して平行またはほぼ平行であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、バーコードのバーの短辺方向に対して平行またはほぼ平行な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、バーコード読み取り装置から発せられた光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコードを安定して正確に読み取ることができる。
【0010】
この発明にかかる液晶表示パネルは、上記の発明において、前記偏光板の透過軸方向は、前記バーコードを構成する個々のバーの長辺方向に対して平行またはほぼ平行であることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、バーコードのバーの長辺方向に対して平行またはほぼ平行な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、バーコード読み取り装置から発せられた光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコードを安定して正確に読み取ることができる。
【0012】
この発明にかかる液晶表示パネルは、上記の発明において、前記液晶は、安定状態として第1の強誘電状態と第2の強誘電状態を有する強誘電性液晶であり、該強誘電性液晶の第1の強誘電状態または第2の強誘電状態の分子長軸方向と、前記偏光板の透過軸方向とは、平行またはほぼ平行であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、強誘電性液晶がメモリ特性を有しているので、液晶に電圧を印加して所望のバーコードを表示させた後に印加電圧を取り除いてもバーコードの表示が保持される。つまり、液晶に電圧を印加し続けなくてもバーコードを表示させておくことができる。したがって、低消費電力化を図ることができる。また、バーコードのバー(黒表示部分)がより黒く表示されるので、バーコードを高いコントラストで表示することができる。したがって、バーコードのコントラストが高いほど認識率の高いタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、より安定して正確にバーコードを読み取ることができる。
【0014】
この発明にかかる液晶表示パネルは、上記の発明において、前記液晶は、安定状態として第1の強誘電状態と第2の強誘電状態を有する強誘電性液晶であり、該強誘電性液晶の第1の強誘電状態または第2の強誘電状態の分子長軸方向と、前記偏光板の透過軸方向とのなす角度は、45°またはほぼ45°であることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、強誘電性液晶がメモリ特性を有しているので、液晶に電圧を印加して所望のバーコードを表示させた後に印加電圧を取り除いてもバーコードの表示が保持される。つまり、液晶に電圧を印加し続けなくてもバーコードを表示させておくことができる。したがって、低消費電力化を図ることができる。また、バーコードのバーとバーの間のスペース(白表示部分)がより白く表示されるので、光量が多いほど認識率の高いタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、より安定して正確にバーコードを読み取ることができる。
【0016】
この発明にかかる液晶表示パネルは、上記の発明において、表示部にバーコードを表示させるための元のデータを90°回転させたデータに変換するデータ変換部を有し、前記データ変換部により変換された新データに基づいて表示部に90°回転したバーコードを表示することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、バーコード読み取り装置から発せられた光の偏光方向と偏光板の透過軸方向とが直交するため、そのままの状態ではバーコードを読み取ることができない場合、表示部に90°回転したバーコードが表示される。それに合わせて、バーコード読み取り装置の向きを表示部に対して相対的に90°回転させた状態とすることによって、バーコードを読み取るための光の偏光方向を偏光板の透過軸方向に合わせることができる。したがって、バーコードを読み取るための光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコードを安定して正確に読み取ることができる。
【0018】
この発明にかかるバーコード読み取りシステムは、相対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に封入された液晶と、前記一対の基板のうち、バーコードを読み取るための光が照射される側の基板に取り付けられた偏光板を有し、種々の幅のバーが種々の間隔で平行に並べられてなるバーコードを、液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルにバーコードを読み取るための光を照射するバーコード読み取り装置と、を具備し、前記バーコード読み取り装置により前記液晶表示パネルに照射される光の偏光方向が、前記偏光板の透過軸方向に一致することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、バーコード読み取り装置から発せられた光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコードを安定して正確に読み取ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる液晶表示パネルによれば、特定の方向に偏光している光の照射によりバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置で安定して正確に読み取ることが可能なバーコードを表示することができるという効果を奏する。また、本発明にかかるバーコード読み取りシステムによれば、特定の方向に偏光している光の照射によりバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いて、液晶表示パネルに表示されたバーコードを安定して正確に読み取ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
[図1]図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示パネルにおける強誘電性液晶の分子長軸方向と偏光板の透過軸とバーコードの向きとの関係を示す説明図である。
[図2]図2は、本発明の実施の形態にかかる液晶表示パネルの構成を示す断面図である。
[図3]図3は、強誘電性液晶の分子長軸方向と電界との関係を示す説明図である。
[図4]図4は、強誘電性液晶の分子長軸方向と電界との関係を示す説明図である。
[図5]図5は、強誘電性液晶の分子長軸方向と偏光板の透過軸との関係を示す説明図である。
[図6]図6は、強誘電性液晶における印加電圧と透過率との関係を示す特性図である。
[図7]図7は、本発明の実施の形態にかかる液晶表示パネルの表示例を示す図である。
[図8]図8は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示パネルにおける強誘電性液晶の分子長軸方向と偏光板の透過軸とバーコードの向きとの関係を示す説明図である。
[図9]図9は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示パネルにおける強誘電性液晶の分子長軸方向と偏光板の透過軸とバーコードの向きとの関係を示す説明図である。
[図10]図10は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示パネルの駆動回路部の構成を示すブロック図である。
[図11]図11は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示パネルの第1の表示例を示す図である。
[図12]図12は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示パネルの第2の表示例を示す図である。
[図13]図13は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示パネルの第3の表示例を示す図である。
[図14]図14は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示パネルの第4の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
LCM 液晶分子
M 分子長軸方向
P1 第1の偏光板の透過軸
1 液晶表示パネル
2 バーコード
11a 第1の偏光板
12 液晶層
13a,13b ガラス基板
21 バー
31 表示部
35 データ変換部
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液晶表示パネルの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
実施の形態1.
図2は、本発明の実施の形態にかかる液晶表示パネルの構成を示す断面図である。図2に示すように、液晶表示パネル1は、約2μmの厚さの液晶層12を挟持した一対のガラス基板13a,13bと、これら2枚のガラス基板13a,13bを接着するシール材17とで構成されている。ガラス基板13a,13bのそれぞれの対向面には、複数の画素をドットマトリクス状に配置するように電極(ITO)14a,14bが形成されており、その上に配向膜15a,15bが配置され、配向処理がなされている。
【0025】
さらに、一方のガラス基板(以下、第1のガラス基板とする)13aの外側には、第1の偏光板11aが設置されている。他方のガラス基板(以下、第2のガラス基板とする)13bの外側には、第1の偏光板11aと偏光軸が90°異なるようにして第2の偏光板11bが設置されている。この第2の偏光板11bの外側には、反射板16が配置されている。また、第2の偏光板11bと反射板16の代わりに、偏光機能を備えた反射型偏光板を設置してもよい。特に限定しないが、本実施の形態では、液晶層12に強誘電性液晶が用いられている。第1の偏光板11aの透過軸方向と強誘電性液晶の分子長軸方向との関係については、後述する。液晶層12に強誘電性液晶以外の液晶材料を用いる場合には、第2の偏光板11bを省略してもよい。また、その際、反射板16を第2のガラス基板13bの内側に配置してもよい。
【0026】
上述した構成の液晶表示パネル1の表示面には、種々の規格に準じたバーコードが表示される(図7参照)。表示されたバーコードをバーコード読み取り装置で読み取る際には、第1のガラス基板13a側から図示しないバーコード読み取り装置からの光を照射する。照射された光は、第1の偏光板11a、第1のガラス基板13a、電極14a、配向膜15a、液晶層12、配向膜15b、電極14b、第2のガラス基板13bおよび第2の偏光板11bを透過して反射板16に至り、そこで反射されて、逆の経路を辿って第1の偏光板11aから出射し、バーコード読み取り装置で受光される。
【0027】
つぎに、強誘電性液晶の電気光学効果について説明する。図3および図4は、強誘電性液晶の分子長軸方向と電界との関係を示す説明図である。図3および図4では、液晶表示パネル1を、バーコード読み取り装置で読み取り時の照射側から見た場合の液晶分子を模式的に示しており、これらの図に沿って液晶の平均的な分子長軸方向について説明する。
【0028】
たとえば、電界Eが図面表(液晶表示パネル1の第1のガラス基板13a)から裏(液晶表示パネル1の第2のガラス基板13b)に向かって印加されている場合では(図3)、液晶分子LCMの第1の強誘電状態である平均的な分子長軸方向Mは、配向膜の配向軸OAを中心に角度「θ1」傾いて安定している。一方、電界Eを図面裏から表に向けて印加した場合では(図4)、液晶分子LCMの第2の強誘電状態である分子長軸方向Mは、配向軸OAに対して時計回りに角度「θ2」傾いて安定している。
【0029】
すなわち、液晶分子LCMは、分子長軸方向Mを動直線として描くコーン形状の側面上を転移している。また角度「θ1」と角度「θ2」の和(θ1+θ2)が第1の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向と、第2の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向との間の角度、つまり円錐(コーン)の中心角θ(すなわち、コーン角度)となる。
【0030】
図5は、強誘電性液晶の分子長軸方向と偏光板の透過軸との関係を示す説明図である。図5に示すように、通常、強誘電性液晶を使用する場合には、第1の偏光板11aの透過軸P1と第2の偏光板11bの透過軸P2とを、略90°の角度をなすように配置する。そして、第1の偏光板11aの透過軸P1と第2の偏光板11bの透過軸P2のどちらか一方を、第1または第2の強誘電状態のときの分子長軸方向Mに一致させる(図示例では、分子長軸方向Mを透過軸P1に一致させている)。このように、透過軸の方向と一致させた強誘電状態では、透過率を小さくすることができ、黒表示となる。電界Eの向きが逆になると、液晶分子LCMが配向軸OAを対称軸として移動して、透過率が大きくなり白表示となる。
【0031】
つぎに、実施の形態1における第1の偏光板11aの透過軸方向と、強誘電性液晶の分子長軸方向と、バーコードの向きとの関係について説明する。図1は、この関係を示す図である。図1に示すように、実施の形態1では、第2の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向Mは、第1の偏光板11aの透過軸P1に一致している。したがって、バーコードにおけるバー部の電極に電圧を印加して、液晶分子LCMを第2の強誘電状態とすることによって、バーコードのバーは黒く表示される。
【0032】
一方、バーコードにおけるバーとバーとの間の電極に電圧を印加して液晶分子LCMを第1の強誘電状態とすることによって、バーとバーとの間のスペースは白く表示される。また、前記コーン角度が45°であれば、白表示部分はより白く表示される。前記コーン角度が45°よりも小さいか、または大きい場合には、コーン角度が45°である場合よりも白表示部分の白さは劣る。
【0033】
ところで、バーコード2は、種々の幅の細長い長方形状をした黒表示のバー21を種々の幅の白表示のスペース22を介して平行に並べた構成となっている。実施の形態1では、第1の偏光板11aの透過軸P1は、バー21の短辺方向に対して平行またはほぼ平行である。つまり、第1の偏光板11aの透過軸P1の方向と、第2の強誘電状態である液晶分子LCMの平均的な分子長軸方向Mと、バーコード2のバー21の短辺方向とは、互いに平行またはほぼ平行である。
【0034】
そして、液晶表示パネル1では、バーコード2を、たとえば長方形状の液晶表示パネル1のある辺に対してバー21の短辺方向が平行になるように表示するので、配向膜15a,15bの配向方向(配向軸OA)は、液晶表示パネル1のいずれの辺に対しても傾いている。この配向方向の傾きは、室温または液晶表示パネル1の使用環境温度におけるコーン角度に基づいて設定される。
【0035】
第1の偏光板11aの透過軸P1の方向と、強誘電性液晶の分子長軸方向Mと、バーコード2の向きとが、上述した関係にあることによって、バーコード2のバー21の短辺方向に対して平行またはほぼ平行な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、光が第1の偏光板11aを透過して液晶層12内に入射するので、バーコード2を安定して正確に読み取ることができる。また、バーコード2のバー21がより黒く表示されることによって、バーコード2のコントラストが高くなるので、バーコードのコントラストが高いほど認識率の高いタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、より安定して正確にバーコードを読み取ることができる。ここで、バーコード2のバー21の短辺方向に対して平行ではない、例えばほぼ垂直な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合では、バーコード読み取り装置から発した光は第1の偏光板11aの透過軸P1を通過することができず、バーコード2を読み取ることができない。
【0036】
つぎに、強誘電性液晶のメモリ特性について説明する。図6は、強誘電性液晶における印加電圧と透過率との関係を示す特性図である。図6において、縦軸は透過率であり、横軸は印加電圧である。図6に示すように、強誘電性液晶に、第1の閾値(+V1)以上の正極性の電圧が印加されると、透過率が大きくなり始める。そして、ある値以上の正極性の電圧(+V2)が印加されると、最大の透過率で光を透過する第1の強誘電状態となる。一方、強誘電性液晶に、第2の閾値(−V3)以上の負極性の電圧が印加されると、透過率が小さくなり始める。そして、ある値以上の負極性の電圧(−V4)が印加されると、透過率が最小となり、光を透過しない第2の強誘電状態となる。
【0037】
つまり、図6からも明らかなように、強誘電性液晶は、印加電圧がゼロボルトの場合でも、透過率を維持するというメモリ特性を有する。したがって、一度書き込まれた表示状態は、つぎに電圧が印加されて書き換えられるまで外部から電圧が供給されなくても保持されるので、液晶に電圧を印加し続けなくてもバーコードを表示させておくことが可能となり、低消費電力化を図ることができる。
【0038】
図7に、液晶表示パネル1を電子棚札として用いた場合の表示例を示す。特に限定しないが、液晶表示パネル1は、その表示面の全面でドットマトリクス表示をおこなうものとする。表示面には、商品名や価格や数量(重さなど)などの文字または数字等の表示3と、バーコード2と、バーコード2下の数字等の表示4が表示される。電子棚札として用いる場合には、液晶表示パネル1は、特に限定しないが、たとえば縦5cm程度、横10cmの大きさであり、1画素当たりの大きさが50μm×50μm程度であり、したがって1000×2000(縦×横)ドットの表示が可能な構成となっている。
【0039】
そして、液晶表示パネル1には、図示しない液晶駆動回路等や表示内容を書き換えるための制御回路等が接続される。また、電子棚札を用いてPOSシステムによる商品管理をおこなうシステムに接続される場合には、そのシステムとの接続手段としての通信回路等が液晶表示パネル1に接続される。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態2は、第1の偏光板11aの透過軸方向と、強誘電性液晶の分子長軸方向と、バーコードの向きとの関係が、実施の形態1における関係と異なるものである。その他の構成は実施の形態1と同じであるので、重複する説明を省略する。
【0041】
図8または図9は、実施の形態2における第1の偏光板11aの透過軸方向と、強誘電性液晶の分子長軸方向と、バーコードの向きとの関係とを説明する図である。図8または図9に示すように、実施の形態2では、第1の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向Mと、第1の偏光板11aの透過軸P1とのなす角度が、45°またはほぼ45°である。第1の偏光板11aの透過軸P1と第2の偏光板11bの透過軸P2とのなす角度が90°であるから、第1の強誘電状態である液晶の平均的な分子長軸方向Mと、第2の偏光板11bの透過軸P2とのなす角度は、45°またはほぼ45°である。
【0042】
したがって、バーコードにおけるバーとバーとの間の電極に電圧を印加して液晶分子LCMを第1の強誘電状態とすることによって、バーとバーとの間のスペースは白く表示される。しかも、その白表示部分の透過率は最大となるので、より白く表示される。
【0043】
一方、図8に示す例では、コーン角が45°よりも小さいので、第2の強誘電状態のときの液晶の平均的な分子長軸方向は、第1の偏光板11aの透過軸P1から、第1の強誘電状態であるときの液晶の平均的な分子長軸方向Mの側にずれている。図9に示す例は、コーン角が45°よりも大きい場合である。この例では、第2の強誘電状態のときの液晶の平均的な分子長軸方向は、第1の偏光板11aの透過軸P1を挟んで、第1の強誘電状態であるときの液晶の平均的な分子長軸方向Mの反対側にずれている。
【0044】
したがって、図8に示す例でも、図9に示す例でも、バーコードにおけるバー部の電極に電圧を印加して、液晶分子LCMを第2の強誘電状態とすることによって、バーコードのバーは黒く表示される。しかし、第2の強誘電状態の液晶分子LCMが透過軸P1(第2の偏光板11bの吸収軸方向)に対して角度をなして位置するため、一部の光が第2の偏光板11bで吸収されず、反射光として認識されてしまう。そのため、黒表示の黒さは、実施の形態1よりも劣る。
【0045】
第1の偏光板11aの透過軸方向とバーコード2の向きとの関係は、実施の形態1と同じである。第1の偏光板11aの透過軸P1の方向と、強誘電性液晶の分子長軸方向Mと、バーコード2の向きとが、実施の形態2の関係にあることによって、バーコード2のバー21の短辺方向に対して平行またはほぼ平行な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、光が第1の偏光板11aを透過して液晶層12内に入射するので、バーコード2を安定して正確に読み取ることができる。また、バーコード2のスペース22がより白く表示されることによって、透過光量が多くなるので、反射板16より反射される光量が増加し、バーコード読み取り装置へ戻る光量が多いほど認識率の高いタイプのバーコード読み取り装置を用いた場合に、より安定して正確にバーコードを読み取ることができる。
【0046】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3の液晶表示パネル1の駆動回路部を含む構成を示すブロック図である。図10に示すように、液晶表示パネル1は、バーコード2や文字または数字等の表示3やバーコード2下の数字等の表示4を表示する表示部31と、表示部31の走査電極を順次選択する走査側IC(集積回路)32と、表示部31の信号電極に表示データに応じた電圧を印加する信号側IC33と、走査側および信号側の各IC32,33を制御する表示制御部34を備えている。
【0047】
また、液晶表示パネル1は、データ変換部35とセンサ36を備えている。データ変換部35は、元の表示データを、表示部31の表示が、元の表示データによる表示の向きに対して90°回転した向きになるようなデータに変換する。センサ36は、バーコード読み取り装置が、表示部31に表示されているバーコードを読み取ることができないことを検知する。センサ36は、たとえば無線受信装置である。
【0048】
特に図示しないが、たとえば、バーコード読み取り装置には、表示部31に表示されているバーコードを読み取ることができないときに、バーコードを読み取ることができないことを液晶表示パネル1に知らせるための信号(以下、読み取り不能信号とする)を送信する無線送信装置が設けられている。液晶表示パネル1のセンサ36は、バーコード読み取り装置の無線送信装置から送られてくる読み取り不能信号を受信する。
【0049】
図11および図12は、それぞれ実施の形態3による液晶表示パネル1の第1および第2の表示例を示す図である。図11は、元の表示データをデータ変換部35において変換しないでそのまま液晶表示パネル1の表示部31に表示した場合の表示例である。元の表示データをそのまま表示する場合には、バーコード2は、バー21の長辺方向と液晶表示パネル1の縦方向とが平行であるように表示される。つまり、図7に示す表示例と同様に、通常の表示となる。この場合、データ変換部35は、元の表示データをそのまま出力する。
【0050】
バーコード読み取り装置は、図11の表示態様のバーコード2を読み取ることができない場合、読み取り不能信号を送信する。液晶表示パネル1のセンサ36は、読み取り不能信号を受信すると、検知信号を出力する。表示制御部34は、センサ36から検知信号を受け取ると、変換開始信号および駆動開始信号を出力する。データ変換部35は、表示制御部34から変換開始信号を受け取ると、元の表示データのバーコード部分のデータを、バーコード2の表示の向きが90°回転して表示されるようなデータに変換する。
【0051】
データ変換部35により変換されたデータは、新たな表示データとして信号側IC33に供給される。また、表示制御部34は、走査側IC32および信号側IC33にそれらの駆動を開始させる信号を供給する。それによって、図12に示すように、表示部31の表示は、バーコード2のバー21の長辺方向が液晶表示パネル1の横方向に平行であるような表示に更新される。したがって、バーコード読み取り装置を90°傾けてバーコード2を読み取ることになる。
【0052】
実施の形態3の別の例として、データ変換部35が元の表示データの全体を、表示の向きが90°回転して表示されるようなデータに変換するようになっていてもよい。図13は、元の表示データをそのままの状態で表示した例を示す図である。図14は、元の表示データの全体を90°回転させて表示した例を示す図である。この場合には、液晶表示パネル1を、図14に示す例の液晶表示パネル1の右辺が下の辺になるように90°回転させて、商品を並べる棚に取り付けることになる。
【0053】
なお、バーコード読み取り装置が読み取り不能信号を無線通信により送信し、それをセンサ36が受信して検知信号を出力する構成に代えて、液晶表示パネル1にスイッチ等を設け、バーコード読み取り装置の使用者が、表示部31に表示されているバーコードを読み取ることができないと判断したときに、このスイッチ等をオンにすることによって、検知信号を出力し、90°回転した表示がなされるような構成としてもよい。この構成は、液晶表示パネル1を、既存のバーコード読み取り装置のように、無線送信装置が設けられていないバーコード読み取り装置と組み合わせて用いる場合に有効である。
【0054】
実施の形態3によれば、バーコード読み取り装置から発せられた光の偏光方向と液晶表示パネル1の偏光板の透過軸方向とが直交するため、そのままの状態ではバーコードを読み取ることができない場合、表示部31に90°回転したバーコード2が表示されるので、バーコード読み取り装置の向きを表示部31に対して相対的に90°回転させた状態とすることによって、バーコードを読み取るための光の偏光方向を偏光板の透過軸方向に合わせることができる。したがって、バーコードを読み取るための光が偏光板を透過して液晶内に入射するので、バーコード2を安定して正確に読み取ることができる。
【0055】
以上において、本発明は、上述した各実施の形態に限らず、種々変更可能である。たとえば、バーコード2のバー21の長辺方向に対して平行またはほぼ平行な方向に偏光している光を照射してバーコードを読み取るタイプのバーコード読み取り装置を用いる場合には、第1の偏光板11aの透過軸P1を、バー21の長辺方向に対して平行またはほぼ平行にすればよい。
【0056】
また、バーコード2を、ドットマトリクス表示とする代わりに、セグメント表示としてもよい。その場合には、液晶表示パネル1の表示面において、バーコード2を表示する領域に、バーコード2を構成するバー21およびスペース22のうちの最小幅のものを表示することができる大きさの短冊状のセグメントを隙間なく並べる。そして、表示するバー21およびスペース22の幅に応じて適当な個数の隣接するセグメントを黒表示または白表示とすればよい。
【0057】
また、上述した各実施の形態では、液晶表示パネル1は反射型のパネルであるとしたが、透過型や半透過反射型のパネルであってもよい。透過型のパネルである場合には、反射板16が不要となる。半透過反射型のパネルである場合には、反射板16に一部の光を透過する反射板が設けられる。さらに、本発明は、バーコード以外にも、特定の方向に偏光している光を照射して読み取る必要のある文字や数字や記号や図柄などを液晶表示パネル1に表示する場合にも応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる液晶表示パネルおよびバーコード読み取りシステムは、バーコードの表示を有する電子表示媒体およびそれを用いたバーコード読み取りシステムに有用であり、特に、スーパーマーケット等において用いられる電子棚札、運送業において集荷した荷物に取り付けられるタグ、航空貨物の送り先などの管理をおこなうために用いられるタグ、生産物や食品等の生産者や流通履歴等の情報を保持するためのトレーサビリティシステムにおける固体識別手段などに適している。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の幅のバーが種々の間隔で平行に並べられてなるバーコードを、液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示パネルであって、
相対峙する一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された液晶と、
前記一対の基板のうち、バーコードを読み取るための光が照射される側の基板に取り付けられた偏光板と、を具備し、
前記偏光板の透過軸方向は、バーコードを読み取るための光の偏光方向に一致することを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
前記偏光板の透過軸方向は、前記バーコードを構成する個々のバーの短辺方向に対して平行またはほぼ平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
前記偏光板の透過軸方向は、前記バーコードを構成する個々のバーの長辺方向に対して平行またはほぼ平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
前記液晶は、安定状態として第1の強誘電状態と第2の強誘電状態を有する強誘電性液晶であり、該強誘電性液晶の第1の強誘電状態または第2の強誘電状態の分子長軸方向と、前記偏光板の透過軸方向とは、平行またはほぼ平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項5】
前記液晶は、安定状態として第1の強誘電状態と第2の強誘電状態を有する強誘電性液晶であり、該強誘電性液晶の第1の強誘電状態または第2の強誘電状態の分子長軸方向と、前記偏光板の透過軸方向とのなす角度は、45°またはほぼ45°であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項6】
表示部にバーコードを表示させるための元のデータを90°回転させたデータに変換するデータ変換部を有し、
前記データ変換部により変換された新データに基づいて表示部に90°回転したバーコードを表示することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項7】
相対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に封入された液晶と、前記一対の基板のうち、バーコードを読み取るための光が照射される側の基板に取り付けられた偏光板を有し、種々の幅のバーが種々の間隔で平行に並べられてなるバーコードを、液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルにバーコードを読み取るための光を照射するバーコード読み取り装置と、を具備し、
前記バーコード読み取り装置により前記液晶表示パネルに照射される光の偏光方向が、前記偏光板の透過軸方向に一致することを特徴とするバーコード読み取りシステム。

【国際公開番号】WO2005/062109
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516438(P2005−516438)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017879
【国際出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】