説明

液晶表示装置

【課題】COA方式を用いたIPS液晶表示装置において、DC残像を抑え、かつ、画面の黄色シフトを防止する。
【解決手段】TFT基板100の各画素には、TFT、カラーフィルタ107R、107G、107B、対向電極108、絶縁膜109を挟んで画素電極110が形成されている。TFT基板100と対向基板200との間に液晶層300が挟持されている。TFT基板100および対向基板200において液晶層300と接する面には、配向膜113が形成されている。配向膜113は、高い光導電特性を示す材料が使用されており、これによってDC残像を抑える。一方、配向膜が短波長113の光を強く吸収することによる画面の黄色シフトを、カラーフィルタの厚さを色毎に変えることによって対策する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置に係り,特にカラーフィルタを画素電極が形成されている基板に形成した場合の残像現象を対策した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は薄型で軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
液晶表示装置に使用する配向膜を配向処理すなわち配向制御能を付与する方法としてラビングで処理する方法がある。このラビングによる配向処理は,配向膜を布で擦ることで配向処理を行うものである。一方、配向膜に非接触で配向制御能を付与する光配向法という手法がある。IPS方式はプレティルト角が必要無いために、光配向法を適用することが出来る。
【0003】
しかしながら配向膜への配向制御能の付与という点において,光配向処理はラビング処理と比較すると,一般的には配向安定性が低いということが知られている。配向安定性が低いと,初期配向方向が変動し,表示不良の原因となる。
【0004】
光配向膜の配向安定性,長期信頼性を得るためにはポリアミド酸アルキルエステル材料の適用が有効であるが,この材料は一般的に,ポリアミド酸材料と比較して比抵抗が高い。そのため,液晶分子を駆動する信号波形に直流電圧が重畳して残留DCとなった場合に,残留DCが緩和するまでの時定数が大きく,焼きつき(DC残像)の原因となり易い。
【0005】
「特許文献1」には、配向膜を2層に形成し、液晶と接する上層の配向膜には、分子量が大きく、光配向による配向安定性が高い、ポリアミド酸アルキルエステルを前駆体とした材料を使用し、下層の配向膜には、分子量が小さく、抵抗率が低いポリアミド酸を前駆体とした材料を使用することが記載されている。また、下層の配向膜には、光導電性を有する材料を使用すると効果的であることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2008−235900
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0008】
しかし、上記した従来の液晶表示装置では、TFT基板と対向電極とを正確に位置合わせしなければならい。このための合わせ工程は、液晶表示装置の製造コストを押し上げることになる。また、TFT基板と対向基板との完全な位置合わせは不可能であるから、設計的に位置合わせのための裕度をとる。この裕度を取るためには、ブラックマトリクスの面積を大きくとる必要があるので、液晶表示パネルの透過率の減少をもたらし、画面輝度の損失となる。
【0009】
そこで、TFT基板にカラーフィルタを形成する技術が開発されている。TFT基板にカラーフィルタを作りこめば、例えば、画素電極とカラーフィルタとの位置合わせはフォトリソグラフィ工程によって行うことができるので、TFT基板と対向基板との合わせに比較して、精度は格段に高い。また、カラーフィルタを形成する工程は、対向基板に形成する場合もTFT基板に形成する場合も同様な工程を必要とするので、カラーフィルタを形成する工程が増加することも無い。
【0010】
したがって、カラーフィルタをTFT基板に作りこむ方式(Color Filter on Array 以後COA)を用いることによって製造コストの低減と、液晶表示装置の透過率を向上させることによる、画面輝度の向上を図ることが出来る。
【0011】
一方、液晶表示装置には、DC残像という現象がある。これは、一定の画像を所定時間表示した場合に、配向膜に電荷が蓄積され、この一定の画像がある時間、画面に焼きついたように見える現象である。このDC残像の存在する時間は、配向膜の電気抵抗を小さくすることによって少なくすることが出来る。
【0012】
一方、液晶表示装置では、バックライトを使用しているので、配向膜に光導電性の材料を使用することによって、動作時の配向膜の電気抵抗を小さくすることができる。したがって、近年多くの液晶表示装置においては、光導電性の配向膜が使用されている。
【0013】
しかし、COAにおいては、カラーフィルタが配向膜よりもバックライト側に形成されているので、従来に比較して、配向膜に到達するバックライトの光が弱い。したがって、配向膜に十分な光導電性を与えることが出来ず、動作時における配向膜の抵抗を十分に小さくすることが出来ない。したがって、COAにおいては、DC残像が深刻な問題となっている。本発明の課題は、COAにおけるDC残像を対策するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、赤カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する赤画素、緑カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する緑画素、および、青カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する青画素、がマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、前記TFT基板に形成されたカラーフィルタの厚さは、前記赤カラーフィルタの厚さ>前記緑カラーフィルタの厚さ>前記青カラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置である。
【0015】
また、本発明の他の面によれば、赤カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する赤画素、緑カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する緑画素、および、青カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する青画素、がマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、前記青画素において画像を形成するための光が透過する部分における青カラーフィルタの面積>前記緑画素において画像を形成するための光が透過する部分における緑カラーフィルタの面積>前記赤画素において画像を形成するための光が透過する部分における赤カラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、COA方式を用いたIPS液晶表示装置において、DC残像を抑え、かつ、画面の黄色シフトを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の液晶表示パネルの断面図である。
【図2】IPSの画素電極の平面図である。
【図3】本発明で使用する配向膜の波長ごとの透過率である。
【図4】本発明における各色毎の配向膜の透過率である。
【図5】DC残像を評価するパターンである。
【図6】DC残像の評価結果である。
【図7】実施例2の液晶表示パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の第1の実施例による液晶表示パネルの断面図である。図1は、TFT基板100側にTFT、対向電極108、画素電極110、およびカラーフィルタ107R、107G、107Bを有する画素がマトリクス状に形成されている、いわゆるCOA方式のIPSである。
【0020】
図1において、TFT基板100および対向基板200における液晶層300と接する面には、配向膜113が形成されているが、TFT基板100および対向基板200のいずれの配向膜113にもDC残像特性を改善するために、従来の液晶表示パネルにおけるよりも光導電性が高い材料が使用されている。すなわち、少量の光によって電気抵抗が大きく減少する材料が配向膜に使用されている。配向膜材料として光導電特性を示す材料としては、例えば、日産化学のSE6410等を挙げることが出来る。この材料は成分の配合比をかえることによって光導電特性を変化させることが出来る。
【0021】
なお、IPSにおいては、DC残像に対する影響は、画素電極110が形成されているTFT基板100側の配向膜113の電気抵抗が支配的であるので、強い光導電性を示す配向膜113はTFT基板100側の配向膜だけでもよい。しかし、本実施例では、配向膜材料の標準化のために、TFT基板100、対向基板200とも同じ配向膜材料を使用している。
【0022】
光導電性を示す配向膜113は、波長によって吸収率が異なる。図3は、配向膜113による光の吸収特性と裏腹である、配向膜113の波長ごとの透過率特性を示すものである。図3において、横軸は光の波長、縦軸は配向膜の光透過率である。Aは従来の液晶表示装置における配向膜1層分の透過率の波長依存性である。Bは本実施例で用いられる配向膜1層分の透過率の波長依存性である。Cは本実施例で用いられる配向膜を2層、すなわち、TFT基板と対向基板の両方に使用した場合の透過率の波長依存性である。
【0023】
図3からわかるように、配向膜は短い波長の光をより多く吸収する。短い波長の光が光導電性に寄与するからである。本実施例における配向膜の透過率特性は、特に短い波長において、従来の配向膜に比べて低い。例えば、400nmの光に対しては、従来の配向膜の透過率は1層で94%であるのに対し、本発明において使用する配向膜の透過率は1層で、81%、2層で、65%である。本発明に用いられる配向膜1層分の透過率は、波長400nmにおいて、50%〜90%のものを使用することが出来る。
【0024】
液晶表示装置のバックライトには、蛍光管が使用されたり、LEDが使用されたりするが、いずれにせよ、バックライトの光は、R、G,Bの3波長を含んだ光が用いられる。配向膜が図3に示すように、短波長側において、透過率が低くなると、配向膜を透過してくる光、あるいは、液晶表示パネルを透過してくる光は、長波長側の光の量が多くなり、画像が赤色側に着色するという現象を生ずる。これを黄色シフトと呼んでいる。
【0025】
図4は、3波長を有するバックライトからの光に対する配向膜の色毎の透過率を示す図である。図4の横軸は光の波長で、縦軸は透過率である。図4において、細い線は従来の液晶表示装置における配向膜を使用した場合の色毎の透過率であり、太い線は、本発明の構成において使用される配向膜を使用した場合の色毎の透過率である。
【0026】
図4において、従来の液晶表示装置における配向膜においては、光の吸収が小さいので、青、緑、赤における透過率は殆ど変わらず、実質的に着色の問題を生ずることは無い。ところが、本発明において使用される、光導電特性の大きい配向膜では、特に、短波長側において、光の吸収が大きいので、青において、透過率が非常に小さくなっており、緑、赤の順に透過率があがっている。これは、画面が赤側にシフトすることを意味している。具体的には、画面が黄色シフトをおこす。したがって、このままでは、画像の正確な再現が出来ない。
【0027】
これを対策するために、実施例1では、図1に示すように、画素毎にカラーフィルタの厚さを変化させることによって色シフトの問題を解決する。具体的には、赤カラーフィルタ107Rの厚さを最も大きくし、次いで緑カラーフィルタ107Gの厚さを大きくし、青カラーフィルタ107Bの厚さを最も小さくしている。カラーフィルタの厚さが大きいほど、カラーフィルタを透過する光は小さくなるので、配向膜による吸収特性の波長依存性を補償することが出来る。なお、図1における矢印はバックライトからの光を表している。
【0028】
カラーフィルタの具体的な膜厚としては、緑カラーフィルタ107Gを1とした場合、赤カラーフィルタ107Rの厚さは1.5以上で4以下である。また、青カラーフィルタ107Bの厚さは0.67以下で、0.2以上である。図1では、カラーフィルタはTFTの上に形成されているが、実際は、カラーフィルタが形成されている領域の大部分は、TFTが存在しない領域であり、TFT上にはカラーフィルタは必ずしも必要ではない。各カラーフィルタの厚さは、図1に示すように、TFTが形成されていない部分における厚さを測定すればよい。
【0029】
以上説明したような構成によれば、光導電特性が大きな、つまり、短波長側において、透過率が非常に小さい配向膜を用いても画面の黄色シフトを防止することが出来る。本実施例の構成を用いた場合のDC残像特性の改善効果は次のとおりである。
【0030】
DC残像は次のようにして評価した。すなわち、図5に示すような白黒による8×8のチェッカーフラグパターンを12時間表示し、その後、灰色ベタの中間調に戻す。中間調の階調は、64/256である。中間調に戻してから10分後、チェッカーフラグパターンが認識出来ればNGであり、認識できなければOKである。
【0031】
図6はDC残像の評価結果である。図6において、横軸は、灰色ベタの中間調に戻したあとの時間である。縦軸は、DC残像のレベルである。縦軸において、RRは中間調に戻したときに、チェッカーフラグパターンが良く見える状態であり、NGである。Rは中間調い戻した時にチェッカーフラグパターンが薄いが見える状態である。
【0032】
図6において、曲線aが本実施例による構成、すなわち、COAに光導電性の大きな配向膜を使用した場合のDC残像特性である。また、曲線bがCOAに光導電性が従来使用されていた程度である配向膜を使用した場合のDC残像特性である。
【0033】
中間調に戻したときに、残像のレベルがRであっても、これが短時間に消失すれば、実用上は問題ないといえる。COAに従来の配向膜を使用した場合は、中間調に戻したときに、レベルRに近い残像レベルが長時間続くので、実用上問題が残る。一方、本発明による構成であれば、DC残像が急激に減少し、中間調に戻したあと、7分程度で、DC残像は完全に消滅する。このように、本実施例においては、高い光導電特性を示す配向膜を使用してDC残像を短くすると同時に、カラーフィルタの膜厚を色毎に変えることによって、黄色シフトを抑えることが出来る。
【0034】
以下に図1の構成を説明する。IPS方式の液晶表示装置の電極構造は種々のものが提案され、実用化されている。図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に図1の構造を詳しく説明する。なお、本発明は、図1の構成を例にとって説明するが、図1以外のIPSタイプの液晶表示装置にも適用することが出来る。
【0035】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101では、例えば、AlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0036】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はプラズマCVDによって形成される。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。なお、a−Si膜とソース電極104あるいはドレイン電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とソース電極104あるいはドレイン電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。以上で説明したTFTはいわゆるボトムゲートタイプのTFTであるが、本発明はいわゆるトップゲートタイプのTFTについても同様にして適用することが出来る。
【0037】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜106の上には従来構造では有機パッシベーション膜が形成されているが、COAでは、有機パッシベーション膜に替えてカラーフィルタが形成されている。図1において、カラーフィルタの厚さは色によって異なるが、緑カラーフィルタ107Gの場合は、例えば、1〜1.5μmである。各カラーフィルタの厚さは先に説明したように、緑カラーフィルタ107Gを1とした場合、赤カラーフィルタ107Rの厚さは1.5以上で4以下である。また、青カラーフィルタ107Bの厚さは0.67以下で0.2以上である。
【0038】
カラーフィルタには、画素電極110とソース電極104を接続するためにスルーホールが形成される。カラーフィルタ107R、107G、107Bの上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とソース電極104を導通するためのスルーホール部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0039】
対向電極108を覆って上部絶縁膜109がSiNによって形成される。上部絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この上部絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、上部絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして櫛歯状の画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたソース電極104と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0040】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、一端が閉じた櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0041】
図1はこの様子を断面図として説明したものである。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過光が制御されるので、画像が形成されることになる。
【0042】
図1の例では、カラーフィルタ107R、107G、107Bの上に、面状に形成された対向電極108が配置され、上部絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、カラーフィルタ107R、107G、107Bの上に面状に形成された画素電極110を配置し、上部絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。
【0043】
画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。本発明においては、配向膜113は、従来構造において使用されてきた配向膜よりも光導電特性が大きい配向膜が使用されている。すなわち、カラーフィルタを透過して減少した光量でも光導電効果が得られる配向膜113が使用されている。これによって、DC残像を抑制することが出来る。
【0044】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、ブラックマトリクス201が形成されている。ブラックマトリクス201は、画像形成に寄与しない部分を覆い、コントラストを向上させる。ブラックマトリクス201を覆ってオーバーコート膜202が形成されている。オーバーコート膜202によって表面を平らにしている。
【0045】
オーバーコート膜202の上には柱状スペーサ203が形成されている。柱状スペーサ203は、対向基板200の上に、アクリル等の樹脂を所定の膜厚に塗布し、この樹脂をフォトリソグラフィ工程によってエッチングし、不要な部分を除去することによって形成される。本実施例における柱状スペーサ203は、画素の色毎に、高さが異なっている。青画素における柱状スペーサの高さが最も高く、赤画素の柱状スペーサの高さが最も低い。
【0046】
柱状スペーサ203の高さの差は、樹脂を露光する際に、ハーフトーン露光の技術を用いることによって形成することが出来る。柱状スペーサ203のうち、最も高さが低い赤画素における柱状スペーサ203の高さは1μm程度である。この場合、液晶層300の厚さも約1μmになるが、IPSとしての動作は、液晶の層厚が0.5μm程度あれば十分なので、液晶表示パネルとして問題なく動作させることが出来る。
【0047】
オーバーコート膜202および柱状スペーサ203を覆って配向膜113が形成されている。本実施例では、対向基板200側に形成された配向膜113に対しても光導電特性の高い材料を使用している。TFT基板100側の配向膜材料とそろえたほうが、材料管理、プロセスの単純化等に有利だからである。しかし、IPSにおいては、DC残像に対してはTFT基板100側の配向膜113の比抵抗が支配的なので、TFT基板100側の配向膜113のみ、高い光導電特性を持つ材料を使用し、対向基板200側の配向膜113は通常の配向膜を用いても良い。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、COA方式のIPSにおいて、色シフトを伴うことなく、DC残像を低減することが出来る。
【実施例2】
【0049】
図7は本発明の第2の実施例を示す液晶表示パネルの断面図である。本実施例の目的も、COAにおいて、DC残像を抑制しつつ、画面の色シフトを防止することを目的とする。図7において、カラーフィルタ107R、107G、107BがTFT基板100に形成されており、COA構造となっている。図7における矢印はバックライトからの光を示している。
【0050】
図7においても、配向膜113は、光導電性効果が大きい材料が使用されており、光導電特性は、従来構造の液晶表示パネルにおいて使用されていた配向膜の光導電特性よりも光導電効果が大きい。これによって、動作時における配向膜113の電気抵抗を下げ、DC残像を低減している。
【0051】
図7における配向膜113も、短波長側で透過率が下がることは、図3および図4で説明したのと同様である。したがって、各画素に入射する光の量が同じならば、画面の黄色シフトが生ずる。本実施例では、各画素の面積を異ならせることによって、配向膜113によって生ずる色シフトを補償している。
【0052】
図7において、青画素の面積が最も大きく、次いで緑画素の面積が大きく、赤画素の面積が最も小さい。すなわち、図4に示すように、本実施例で使用される配向膜は、青スペクトルにおいて吸収が最も大きく、赤スペクトルにおいて吸収が最も小さい。したがって、何も対策をしない場合は、画面が赤側にシフトし、具体的には画面が黄色シフトをおこす。したがって、正確な色再現を行うことが出来ない。
【0053】
本実施例においては、これを補償するために、各画素における面積を変化させている。具体的な、各カラーフィルタの面積は、緑カラーフィルタ107Rの面積を1とすると、赤カラーフィルタ107Rの面積は0.67以下で0.2以上である。青カラーフィルタ107Bの面積は、1.5以上で4以下である。この範囲において、各カラーフィルタの面積を変化させることによって画面の黄色シフトを防止することが出来る。
【0054】
TFT基板においては、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、映像信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列している。そして、走査線と映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されている。各画素には、TFT等、画像を形成するための光透過には寄与しない部分が存在する。上記カラーフィルタ107R、107G、107Bの面積は、各画素において、実際に画像を形成する光が透過する部分におけるカラーフィルタの面積である。
【0055】
本実施例においても、配向膜1層の透過率は、50%〜90%である。また、本実施例によるDC残像に対する効果は図5および図6において説明した実施例1における効果と同様である。
【0056】
図7において、各画素におけるカラーフィルタ107R、107G、107Bの厚さは同一なので、対向基板に形成する柱状スペーサ203の高さは同一である。したがって、本実施例では、柱状スペーサ203の形成にハーフトーン露光技術を用いる必要は無い。この場合、柱状スペーサ203の高さは、各画素とも3〜4μm程度である。各カラーフィルタの下に形成されているTFT部1000の構成は図1と同じなので、図7においては、TFT1000部の詳しい構成は省略している。図7におけるその他の構成は図1で説明したのと同様であるので、説明を省略する。
【0057】
以上のように、本実施例においては、光導電特性の強い配向膜113を使用し、かつ、カラーフィルタ107R、107G、107Bの面積を色毎に変化させているので、DC残像を抑えることが出来るとともに、配向膜113の透過率の波長依存性による画面の黄色シフトを防止することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 107R…赤カラーフィルタ、 107G…緑カラーフィルタ、 107B…青カラーフィルタ、 108…対向電極、 109…上部絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…オーバーコート膜、 203…柱状スペーサ、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1000…TFT部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する赤画素、緑カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する緑画素、および、青カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する青画素、がマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、
前記TFT基板に形成されたカラーフィルタの厚さは、前記赤カラーフィルタの厚さ>前記緑カラーフィルタの厚さ>前記青カラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記緑カラーフィルタの厚さを1とした場合、前記赤カラーフィルタの厚さは1.5以上で4以下であり、前記青カラーフィルタの厚さは、0.67以下で0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
赤カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する赤画素、緑カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する緑画素、および、青カラーフィルタ、TFT、対向電極および画素電極を有する青画素、がマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、
前記青画素において画像を形成するための光が透過する部分における青カラーフィルタの面積>前記緑画素において画像を形成するための光が透過する部分における緑カラーフィルタの面積>前記赤画素において画像を形成するための光が透過する部分における赤カラーフィルタの面積であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記緑画素において画像を形成するための光が透過する部分における緑カラーフィルタの面積を1とした場合、前記青画素において画像を形成するための光が透過する部分における青カラーフィルタの面積は1.5以上で4以下であり、前記赤画素において画像を形成するための光が透過する部分における赤カラーフィルタの面積は0.67以下で0.2以上であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
赤カラーフィルタ、TFT、前記赤カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極を有する赤画素と、緑カラーフィルタ、TFT、前記緑カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極と有する緑画素と、青カラーフィルタ、TFT、前記青カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極とを有する青画素とがマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、
前記TFT基板に形成されたカラーフィルタの厚さは、前記赤カラーフィルタの厚さ>前記緑カラーフィルタの厚さ>前記青カラーフィルタの厚さであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
赤カラーフィルタ、TFT、前記赤カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極を有する赤画素と、緑カラーフィルタ、TFT、前記緑カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極と有する緑画素と、青カラーフィルタ、TFT、前記青カラーフィルタの上に平面ベタで形成された第1の電極、前記第1の電極の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の第2の電極とを有する青画素とがマトリクス状に形成されたTFT基板と、対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記TFT基板と前記対向基板において、液晶と接する面には配向膜が形成され、前記配向膜は光導電特性を有し、
前記青画素において画像を形成するための光が透過する部分における青カラーフィルタの面積>前記緑画素において画像を形成するための光が透過する部分における緑カラーフィルタの面積>前記赤画素において画像を形成するための光が透過する部分における赤カラーフィルタの面積であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−237571(P2011−237571A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108342(P2010−108342)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】