液晶装置およびプロジェクター
【課題】美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示が低コストで得られ、さらにフリッカーや焼き付きの発生を抑制し得る内面反射方式の液晶装置を提供する。
【解決手段】本発明の液晶装置31は、第1基板1、第2基板2、液晶層3、第1基板1の第2基板2に対向する側に配置された反射電極4、反射電極4上に配置された第1絶縁膜5、第1絶縁膜5上に配置された第1無機配向膜6、を備えている。液晶層3の屈折率をnlc、第1絶縁膜5の屈折率をn1、第1無機配向膜6の屈折率をn2とすると、nlc>n2>n1であり、第1無機配向膜6の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、第1絶縁膜5の光学膜厚をr1とすると、−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34、であることを特徴とする。
【解決手段】本発明の液晶装置31は、第1基板1、第2基板2、液晶層3、第1基板1の第2基板2に対向する側に配置された反射電極4、反射電極4上に配置された第1絶縁膜5、第1絶縁膜5上に配置された第1無機配向膜6、を備えている。液晶層3の屈折率をnlc、第1絶縁膜5の屈折率をn1、第1無機配向膜6の屈折率をn2とすると、nlc>n2>n1であり、第1無機配向膜6の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、第1絶縁膜5の光学膜厚をr1とすると、−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34、であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックライト等の光源を用いることなく、外光を利用して表示を行う反射型液晶装置は、低消費電力化、小型軽量化等の観点から有利であるため、携帯性が重要視される携帯用電子機器に採用されている。プロジェクターの分野においても装置構成が簡単化する等の観点から、光変調素子として反射型液晶ライトバルブが採用されることがある。近年は、光入射側と反対側の基板上に配置される表示用電極(画素電極)を反射板で構成し、反射位置を液晶層に極力近付けるようにした、いわゆる内面反射方式の反射型液晶装置が開発され、高精細で明るい画像が実現されている。
【0003】
ところが、反射板を兼ねる画素電極における光の反射率は波長依存性を有しており、外光に含まれる赤色光、緑色光、青色光に対する反射率はそれぞれ異なる。そのため、白黒表示の場合に、本来の白色が青色味がかったり、緑色味がかったりして美しい白色を表示できないという問題がある。カラー表示の場合には、色バランスが崩れて本来の色を忠実に再現できない、あるいは特別な色補正が必要になって装置構成や駆動回路が複雑化する、などの問題がある。そこで、反射板が配置された側の基板の構成を最適化することで分光反射特性の向上を狙った液晶装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1、2参照)。一方、反射板が配置された側と反対側の基板の構成を最適化することで反射特性の向上を狙った液晶装置が提案されている(例えば、下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−156717号公報
【特許文献2】特許第3557933号公報
【特許文献3】特開平11−174427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、液晶装置に用いる配向膜として、無機材料からなる配向膜の採用が検討されている。例えば、酸化シリコン膜等からなる無機配向膜を斜方蒸着法で形成すれば、ラビング処理を行うことなく十分な配向性能を発揮できる。また、無機配向膜はポリイミド等の有機材料を用いた従来の配向膜に比べて耐熱性、耐光性に優れているため、プロジェクター用途の液晶装置として好適である。そこで、無機配向膜を用いた反射型液晶装置においても、基板構成を最適化し、各色光に対して均一な反射率を得て美しい白表示や良好な色バランスを実現するとともに、明るい表示を実現したいという要求がある。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1〜3はいずれも無機配向膜の使用を前提として基板構成を最適化したものではなく、特許文献1〜3から各種膜の屈折率や膜厚の最適値を知ることはできない。また、特許文献1に記載の構成では、反射板上に屈折率が異なる2層以上の誘電体層を形成しなければならず、製造コストが高騰するという問題点もある。さらに、以上の問題点の解決に加えて、フリッカーや焼き付きの発生を抑制し得る液晶装置の提供が望まれている。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示が低コストで得られ、さらにフリッカーや焼き付きの発生を抑制し得る内面反射方式の液晶装置を提供することを目的とする。また、このような液晶装置を用いることにより表示品位に優れたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、nlc>n2>n1であり、前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34…(1)
であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、nlc>n1>n2であり、前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96…(2)
であることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明の第1、第2の液晶装置において、第1絶縁膜の光学膜厚r1は、第1絶縁膜の実膜厚(物理的膜厚)をd1としたときに、r1=n1×d1で表わされる。同様に、第1無機配向膜の光学膜厚r2は、第1無機配向膜の実膜厚(物理的膜厚)をd2としたときに、r2=n2×d2で表わされる。また、本発明の第1、第2の液晶装置において、液晶層、第1絶縁膜、第1無機配向膜の屈折率とは、屈折率が異方性を有している場合にはそれら複数の屈折率の平均値を指す。また、本発明で言うところの「屈折率」は、波長550nmの光に対する屈折率と定義する。
【0011】
本発明者は、反射電極上に第1絶縁膜、第1無機配向膜を順次積層した第1基板の構成を前提として、第1無機配向膜の光学膜厚r2を50≦r2≦150と設定し、第1絶縁膜の光学膜厚を変化させたときの光の波長域毎の光反射率をシミュレーションによって求めた。その結果、上述した液晶層、第1絶縁膜、第1無機配向膜の各屈折率の大小関係に応じて、第1無機配向膜の光学膜厚を適宜設定した上で第1絶縁膜の光学膜厚を上記(1)式、または(2)式の条件を満足する値に設定すれば、いずれの波長域においても比較的高い光反射率が得られ、かつ、各色光の光反射率の差が比較的小さくなることを見出した。具体的なシミュレーション結果については後述する。
【0012】
以上の構成とすることにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、本発明の第1、第2の液晶装置の構成によれば、反射電極上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、複数の誘電体層を必要とする上記特許文献1の構成に比べて製造コストを低減できる。また、第1絶縁膜が比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きの低減効果が十分に得られる。
【0013】
本発明の第1の液晶装置において、前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n2max>n1の関係を満たす構成であっても良い。
例えば第1無機配向膜を斜方蒸着法で形成した場合など、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有する場合がある。その場合、大きい方の屈折率n2maxがnlc>n2max>n1の関係を満たしさえすれば、必然的に平均の屈折率n2はnlc>n2>n1の関係を満たすことになる。したがって、複数の屈折率を把握しなくともよく、大きい方の屈折率だけを把握すればよいため、製造条件等の設定が容易になる。
【0014】
同様に、本発明の第2の液晶装置において、前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n1>n2maxの関係を満たす構成であっても良い。
【0015】
本発明の第3の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、nt>nlc>n4>n3であり、前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、220≦rt≦276であり、前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、50≦r4≦150であり、前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64…(3)
であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、nt>nlc>n3>n4であり、前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、220≦rt≦276であり、前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、50≦r4≦150であり、前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7…(4)
であることを特徴とする。
【0017】
ここで、本発明の第3、第4の液晶装置において、透明電極の光学膜厚rtは、透明電極の実膜厚(物理的膜厚)をdtとしたときに、rt=nt×dtで表わされる。同様に、第2絶縁膜の光学膜厚r3は、第2絶縁膜の実膜厚(物理的膜厚)をd3としたときに、r3=n3×d3で表わされる。同様に、第2無機配向膜の光学膜厚r4は、第2無機配向膜の実膜厚(物理的膜厚)をd4としたときに、r4=n4×d4で表わされる。また、本発明の第1、第2の液晶装置において、液晶層、第2絶縁膜、第2無機配向膜の屈折率とは、屈折率が異方性を有している場合にはそれら複数の屈折率の平均値を指す。また、本発明で言うところの「屈折率」は、波長550nmの光に対する屈折率と定義する。
【0018】
本発明者は、上述の第1基板側の構成のみならず、光透過性を有する第2基板側の光透過率を最適化することで、液晶装置全体として波長域によらずに均一で高い光反射率を得ようと考えた。
そこで、反射電極を形成した第1基板と、透明電極上に第2絶縁膜、第2無機配向膜を順次積層した第2基板と、を備えた構成を前提として、透明電極の光学膜厚rtを220≦rt≦276と設定し、第2無機配向膜の光学膜厚r4を50≦r4≦150と設定し、第2絶縁膜の光学膜厚を変化させたときの光の波長域毎の光透過率をシミュレーションによって求めた。その結果、上述した液晶層、透明電極、第2絶縁膜、第2無機配向膜の各屈折率の大小関係に応じて、第2無機配向膜の光学膜厚を所定の値に設定した上で第2絶縁膜の光学膜厚を上記(3)式、または(4)式の条件を満足する値に設定すれば、いずれの波長域においても比較的高い光透過率が得られ、かつ、各色光の光透過率の差が比較的小さくなることを見出した。具体的なシミュレーション結果については後述する。
【0019】
以上の構成とすることにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、本発明の第3、第4の液晶装置の構成によれば、透明電極上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、複数の誘電体層を必要とする上記特許文献1の構成に比べて製造コストを低減できる。また、第2絶縁膜が比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きの低減効果が十分に得られる。
【0020】
本発明の第3の液晶装置において、前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n4max>n3の関係を満たす構成であっても良い。
例えば第2無機配向膜を斜方蒸着法で形成した場合など、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有する場合がある。その場合、大きい方の屈折率n4maxがnt>nlc>n4max>n3の関係を満たしさえすれば、必然的に平均の屈折率n4はnt>nlc>n4>n3の関係を満たすことになる。したがって、複数の屈折率を把握しなくともよく、大きい方の屈折率だけを把握すればよいため、製造条件等の設定が容易になる。
【0021】
同様に、本発明の第4の液晶装置において、前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n3>n4maxの関係を満たす構成であっても良い。
【0022】
本発明の第1〜第4の液晶装置において、前記第1絶縁膜もしくは前記第2絶縁膜が、CVD法もしくは蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であり、前記第1無機配向膜もしくは前記第2無機配向膜が、斜方蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であっても良い。
この構成によれば、一般的な材料、一般的な手法を用いて本発明の構成を容易に実現することができ、低コスト化に寄与できる。
【0023】
本発明のプロジェクターは、光源と、前記光源からの光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射光学系と、を備え、前記光変調素子が、本発明の液晶装置で構成されたことを特徴とする。
この構成によれば、光変調素子が、均一で高い光反射率を有する本発明の液晶装置で構成されているため、表示品位に優れたプロジェクターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図2】同、液晶装置の第1無機配向膜の屈折率異方性を説明する図である。
【図3】第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。
【図4】所定の第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図5】図4とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図6】図4とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図7】最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図9】同、液晶装置の第1無機配向膜の屈折率異方性を説明する図である。
【図10】第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。
【図11】所定の第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図12】図11とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図13】図11とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図14】最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第3実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図16】第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。
【図17】所定の第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図18】図17とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図19】図17とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図20】最適な光透過率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図21】所定の第2無機配向膜厚、所定の透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図22】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図23】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図24】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図25】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図26】図21〜図25とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図27】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図28】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図29】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図30】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図31】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図32】図21〜図25とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図33】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図34】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図35】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図36】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図37】本発明の第4実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図38】第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。
【図39】所定の第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図40】図39とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図41】図39とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図42】最適な光透過率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図43】本発明のプロジェクターの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置は、第2基板側から入射した光を第1基板側で反射させ、再度第2基板側から射出させて表示を行う反射型液晶装置の例である。
また、以下の第1、第2実施形態は、反射電極が配置された側の第1基板の構成を最適化した例である。
図1は、本実施形態の液晶装置を示す断面図である。図2は、第1無機配向膜の屈折率異方性を説明するための図である。図3は、第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。図4〜図6は、3つの異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。図7は、最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法や縮尺を変えて示すことがある。
【0026】
本実施形態の液晶装置31は、図1に示すように、素子基板を構成する第1基板1と、第1基板1に対向配置された対向基板を構成する、光透過性を有する第2基板2と、第1基板1と第2基板2との間に挟持された液晶層3と、を備えている。第1基板1は光透過性を有していても有していなくても良く、例えば光透過性を有するガラス基板等の他、光透過性を有していないシリコン基板等を用いても良い。第2基板2には、光透過性を有するガラス基板、石英基板等を用いる。本実施形態では、第1基板1を構成する素子基板として、画素スイッチング素子に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を採用したTFT基板を用いるが、図1においてはソース線(信号線)、ゲート線(走査線)、TFT等の図示を省略する。
【0027】
第1基板1の第2基板2に対向する側の面に、反射電極4が形成されている。反射電極4の材料には、例えば光反射率が高いアルミニウム等の金属を用いることが好ましい。反射電極4上に、第1絶縁膜5、第1無機配向膜6が基板側からこの順に積層されている。
【0028】
本実施形態では、第1絶縁膜5として、シリコン酸化膜(SiO2)をプラズマCVD法により形成したものを用いる。なお、プラズマCVD法に限らず、常圧CVD法、低圧CVD法等より形成したものを用いても良い。第1絶縁膜5の実膜厚(物理的膜厚)d1は、好ましくは150nm≦d1≦280nm、一例として225nm、とする。第1絶縁膜5の屈折率n1は、1.460とする。
【0029】
第1無機配向膜6には、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図1参照)に50度傾いた方向から蒸着を行う。斜方蒸着により無機配向膜を形成すると、図2に示すように、基板法線方向から見た(Z軸方向に無限大の位置から見た)ときに楕円状の屈折率異方性が生じる。X軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.463(=n2max)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.461(=n2min)、とする。よって、第1無機配向膜6の平均屈折率n2は1.462である。第1無機配向膜6の実膜厚(物理的膜厚)d2は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0030】
液晶層3の屈折率nlcは、nlc=(ne+2×no)/3(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で求められ、1.52とする。したがって、本実施形態の場合、液晶層3の屈折率nlc、第1絶縁膜5の屈折率n1、第1無機配向膜6の屈折率n2の大小関係は、nlc>n2>n1となる。また、第1無機配向膜6の光学膜厚をr2とすると、r2=n2×d2であるから、r2は略44≦r2≦146となる。なお、本実施形態の場合、第1無機配向膜6の屈折率は異方性を有しているが、平均屈折率n2が上記の大小関係を満たせばよいため、第1無機配向膜6の小さい方の屈折率n2min(ny)は第1絶縁膜5の屈折率n1より小さくても良い。
【0031】
一方、第2基板2の第1基板1に対向する側の面に、透明電極7が形成されている。透明電極7上には、第2無機配向膜8が形成されている。本実施形態の場合、透明電極7の材料にはITOが用いられる。また、第2無機配向膜8には、第1基板1側の第1無機配向膜6と同様、斜方蒸着法によるシリコン酸化膜が用いられる。斜方蒸着の条件も第1無機配向膜6と同じくすることが好ましいが、異なっていても良い。
【0032】
ここで、本発明者は、第1絶縁膜5が有る場合と無い場合とで光反射率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図3に示す。図3において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。破線の曲線は第1絶縁膜5が無い場合、実線の曲線は第1絶縁膜5が有る場合(実膜厚d1=225nm)、を示す。
【0033】
波長550nm(緑色光)の領域で見る限り、第1絶縁膜5が有っても無くても光反射率は殆ど変わらない。ところが、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域を見ると、第1絶縁膜5が有る場合の方が、第1絶縁膜5が無い場合に比べて波長460nmでの光反射率と波長620nmでの光反射率とが近い値をとる。すなわち、第1絶縁膜5が有る場合の方が、第1絶縁膜5が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、可視光領域に相当する広い波長域にわたって均一な光反射率を得るという観点では、第1絶縁膜5が無いよりも第1絶縁膜5が有る方が有利であることが判った。
【0034】
次に、第1無機配向膜6の膜厚を変え、各膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図4〜図6に示す。図4〜図6において、横軸は第1絶縁膜の物理的膜厚[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光反射率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光反射率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光反射率、を示す。図4は第1無機配向膜6の物理的膜厚が30nm、図5は第1無機配向膜6の物理的膜厚が65nm、図6は第1無機配向膜6の物理的膜厚が100nm、の場合である。
【0035】
図4〜図6から明らかなように、各場合とも共通して、光反射率は、第1無機配向膜6の物理的膜厚の変化に伴い、平均値を中心として極大値、極小値を取りながら滑らかに変化する。全体的に、波長460nmの光(青色光)に対する光反射率が最も高いレベルにあり、波長550nmの光(緑色光)、波長620nmの光(赤色光)の順に光反射率が低下する。
【0036】
本実施形態において、第1絶縁膜5の膜厚の最適な範囲とは、光反射率が最も低い波長620nmの光(赤色光)における光反射率がその平均値(86%)以上の領域であり、かつ、人間の目の視感度が最も高い波長550nmの光(緑色光)における光反射率がその平均値(87.6%)以上の領域であり、かつ、波長460nmの光(青色光)における光反射率が低下して波長620nmの光(赤色光)および波長550nmの光(緑色光)における光反射率に最も近付いている領域、と定義する。
【0037】
この観点で判断すると、図4に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が30nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は220nm≦d1≦280nm、図5に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が65nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は180nm≦d1≦250nm、図6に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が100nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は150nm≦d1≦220nm、となる。このように、第1無機配向膜6の膜厚d2が大きくなるのに伴って、第1絶縁膜5の膜厚d1の最適範囲は小さい側にシフトする。
【0038】
そこで、第1無機配向膜6の膜厚d2と第1絶縁膜5の膜厚d1の最適な組み合わせを示したのが図7である。図7において、横軸は第1無機配向膜6の光学膜厚[nm]、縦軸は第1絶縁膜5の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第1絶縁膜5の光学膜厚r1は、r1=n1×d1で表わされ、第1無機配向膜6の光学膜厚r2は、r2=n2×d2で表わされる。
【0039】
図4〜図6の最適範囲を図7上に書き表すと、その最適範囲は、第1無機配向膜6の光学膜厚r2を通常用いる範囲である50≦r2≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線の2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第1絶縁膜5の光学膜厚r1の最適範囲は、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34…(1)
となる。
【0040】
本実施形態の液晶装置31によれば、上述したように、反射電極4上に位置する第1絶縁膜5の光学膜厚r1および第1無機配向膜6の光学膜厚r2が最適化されているので、可視光領域のいずれの波長域においても比較的高い光反射率が得られ、かつ、各波長域での光反射率が比較的均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が実現できる。また、反射電極4上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第1絶縁膜5の物理的膜厚が150nm〜280nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0041】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図8〜図14を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、第1絶縁膜および第1無機配向膜の構成が第1実施形態と異なるのみである。
したがって、図8において図1と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態の液晶装置32では、第1絶縁膜15として、第1実施形態と異なり、例えばプラズマCVD法による膜厚200nmのシリコン酸化膜(SiO2)の上に蒸着法による膜厚15nmのシリコン酸化膜(SiO2)を積層したものを用いる。なお、下層側のプラズマCVD法によるシリコン酸化膜は、必ずしもプラズマCVD法に限らず、常圧CVD法、低圧CVD法等より形成したものを用いても良い。したがって、第1絶縁膜15の実膜厚(物理的膜厚)d1は全体で215nmとなる。第1絶縁膜15の実膜厚(物理的膜厚)d1は、150nm≦d1≦270nmとするのが好ましい。第1絶縁膜15の屈折率(平均屈折率)n1は1.46とする。
【0043】
第1無機配向膜16としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は第1実施形態と異なり、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図8参照)に45度傾いた方向から蒸着を行う。斜方蒸着により無機配向膜を形成すると、図9に示すように、基板法線方向から見た(Z軸方向に無限大の位置から見た)ときに楕円状の屈折率異方性が生じる。X軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.40(=n2min)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.42(=n2max)、とする。よって、第1無機配向膜16の平均屈折率n2は1.41である。第1無機配向膜16の実膜厚(物理的膜厚)d2は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0044】
液晶層3の屈折率nlcは、nlc=(ne+2×no)/3(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で求められ、nlcは1.52とする。したがって、本実施形態の場合、液晶層3の屈折率nlc、第1絶縁膜15の屈折率n1、第1無機配向膜16の屈折率n2の大小関係は、nlc>n1>n2となる。また、第1無機配向膜16の光学膜厚をr2とすると、r2=n2×d2であるから、r2は略42≦r2≦141となる。なお、本実施形態の場合、第1無機配向膜16の平均屈折率n2が上記の大小関係を満たせばよいため、第1無機配向膜16の大きい方の屈折率n2max(ny)は第1絶縁膜15の屈折率n1より大きくても良い。
【0045】
第1実施形態と同様、本発明者は、第1絶縁膜15が有る場合と無い場合とで光反射率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図10に示す。図10において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。破線の曲線は第1絶縁膜15が無い場合、実線の曲線は第1絶縁膜15が有る場合(実膜厚d1=215nm)、を示す。
【0046】
波長550nm(緑色光)の領域では、第1絶縁膜15が有っても無くても光反射率は殆ど変わらない。ところが、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域を見ると、第1絶縁膜15が有る場合の方が、第1絶縁膜15が無い場合に比べて波長460nmでの光反射率と波長620nmでの光反射率とが近い値をとる。すなわち、第1絶縁膜15が有る場合の方が、第1絶縁膜15が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、第1絶縁膜15が無いよりも第1絶縁膜15が有る方が有利であることが判った。また、本実施形態では、第1実施形態よりもさらに各波長での光反射率の値が近く、よりフラットな分光特性を取る。したがって、第1無機配向膜16の屈折率n2がより小さい方が、本発明の効果が大きくなることが判った。
【0047】
次に、第1無機配向膜16の膜厚を変え、各膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図11〜図13に示す。図11〜図13において、横軸は第1絶縁膜15の物理的膜厚[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光反射率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光反射率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光反射率、をそれぞれ示す。図11は第1無機配向膜16の膜厚が30nm、図12は第1無機配向膜16の膜厚が65nm、図13は第1無機配向膜16の膜厚が100nm、の場合である。
【0048】
図11〜図13から明らかなように、光反射率の第1絶縁膜厚依存性は第1実施形態と同様の挙動を示すが、第1絶縁膜厚の増減に対する光反射率の変動が第1実施形態よりも大きくなっている。第1絶縁膜15の膜厚の最適な範囲を第1実施形態と同様に判断すると、図11に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が30nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は200nm≦d1≦270nm、図12に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が65nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は170nm≦d1≦250nm、図13に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が100nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は150nm≦d1≦220nm、となる。
【0049】
そこで、第1無機配向膜厚d2と第1絶縁膜厚d1の最適な組み合わせを示したのが図14である。図14において、横軸は第1無機配向膜の光学膜厚[nm]、縦軸は第1絶縁膜の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第1絶縁膜の光学膜厚r1は、r1=n1×d1で表わされ、第1無機配向膜の光学膜厚r2は、r2=n2×d2で表わされる。
【0050】
図11〜図13の最適範囲を図14上に書き表すと、その最適範囲は、第1無機配向膜16の光学膜厚r2を通常用いる範囲である50≦r2≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線とで示す2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第1絶縁膜15の光学膜厚r1の最適範囲は、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96…(2)
となる。
【0051】
本実施形態の液晶装置32によれば、第1実施形態と同様、第1絶縁膜15の光学膜厚r1および第1無機配向膜16の光学膜厚r2が最適化されているので、いずれの波長域でも高い光反射率が得られ、かつ、各波長域での光反射率が均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、反射電極4上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第1絶縁膜15の物理的膜厚が150nm〜270nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0052】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について図15〜図36を用いて説明する。
以下の第3、第4実施形態は、反射電極が配置された側と反対側の第2基板の構成を最適化した例である。
図15は、本実施形態の液晶装置を示す断面図である。図16は、第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。図17〜図19は、3つの異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。図20は、最適な光反射率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。図21〜図36は、透明電極膜厚と第2無機配向膜厚の双方を振ったときの光反射率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、第2基板側の構成が第1実施形態と異なるのみである。
したがって、図15において図1と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の液晶装置33は、図15に示すように、第2基板2の第1基板1に対向する側の面に、透明電極17が形成されている。透明電極17の材料には、光透過率が高いITO等の透明導電膜を用いることが好ましい。本実施形態の場合、具体的には、スパッタ法で形成された膜厚140nmのITOを用いる。透明電極17の実膜厚(物理的膜厚)dtは、120nm≦dt≦150nmとすることが望ましい。また、透明電極17の屈折率ntは、1.84である。透明電極17上には、第2絶縁膜18、第2無機配向膜19が基板側からこの順に積層されている。第1基板1側の構成は、第1実施形態もしくは第2実施形態と同様のものを用いることができる。
【0054】
本実施形態では、第2絶縁膜18として、プラズマCVD法による膜厚100nmのシリコン酸化膜(SiO2)と通常の蒸着法による膜厚10nmのシリコン酸化膜(SiO2)とを基板側からこの順に積層したものを用いる。よって、第2絶縁膜18の実膜厚(物理的膜厚)d3は、合計110nmとなる。第2絶縁膜18の実膜厚(物理的膜厚)d3は、好ましくは40nm≦d3≦190nm、である。第2絶縁膜18の屈折率n3は1.460とする。
【0055】
第2無機配向膜19としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図15参照)に50度傾いた方向から蒸着を行う。第2無機配向膜19のX軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.463(=n4max)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.461(=n4min)、とする。よって、第2無機配向膜19の平均屈折率n4は1.462である。第2無機配向膜19の実膜厚(物理的膜厚)d4は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0056】
液晶層3の屈折率nlcは、第1、第2実施形態と同様、1.52とする。したがって、本実施形態の場合、透明電極17の屈折率nt、液晶層3の屈折率nlc、第2絶縁膜18の屈折率n3、第2無機配向膜19の屈折率n4の大小関係は、nt>nlc>n4>n3となる。また、第2無機配向膜19の光学膜厚をr4とすると、r4=n4×d4であるから、r4は略44≦r2≦146となる。なお、本実施形態の場合、第2無機配向膜19の屈折率は異方性を有しているが、平均屈折率n4が上記の大小関係を満たせばよいため、第2無機配向膜19の小さい方の屈折率n4min(ny)は第2絶縁膜18の屈折率n3より小さくても良い。
【0057】
ここで、本発明者は、第2絶縁膜18が有る場合と無い場合とで光透過率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図16に示す。図16において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。破線の曲線は第2絶縁膜18が無い場合、実線の曲線は第2絶縁膜18が有る場合(実膜厚d3=110nm)、を示す。
【0058】
波長550nm(緑色光)の領域において、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べて光透過率が向上している。また、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域においても、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べて光透過率が向上し、波長550nmでの光透過率に近い値をとる。すなわち、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、広い波長域にわたって均一な光透過率を得るという観点では、第2絶縁膜18が無いよりも第2絶縁膜18が有る方が有利であることが判った。
【0059】
次に、第2無機配向膜19の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図17〜図19に示す。図17〜図19において、横軸は第2絶縁膜18の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。図17は第2無機配向膜19の膜厚が30nm、図18は第2無機配向膜19の膜厚が65nm、図19は第2無機配向膜19の膜厚が100nm、の場合である。
【0060】
図17〜図19から明らかなように、各場合とも共通して、光透過率は、第2無機配向膜19の膜厚の増減に伴い、平均値を中心として極大値、極小値を取りながら滑らかに変化する。全体的に、波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率が最も高いレベルにあり、波長620nmの光(赤色光)、波長460nmの光(青色光)の順に光透過率が低下する。
【0061】
本実施形態において、第2絶縁膜18の膜厚の最適な範囲とは、光透過率が最も低い波長460nmの光(青色光)における光透過率がその平均値(98%)以上の領域、と定義する。この領域においては、第2無機配向膜19の膜厚が変わったとしても(図17〜図19のいずれの場合も)、620nmの光(赤色光)における光透過率も平均値以上であり、かつ、波長550nmの光(緑色光)における光透過率が低下傾向にあって波長620nmの光(赤色光)および波長460nmの光(青色光)における光透過率に近付いている。
【0062】
この観点で判断すると、図17に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が30nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は110nm≦d3≦190nm、図18に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が65nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は80nm≦d3≦160nm、図19に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が100nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は40nm≦d3≦120nm、となる。このように、第2無機配向膜19の膜厚d4が大きくなるのに伴って、第2絶縁膜18の膜厚d3の最適範囲は小さい側にシフトする。
【0063】
そこで、第2無機配向膜19の膜厚d4と第2絶縁膜18の膜厚d3の最適な組み合わせを示したのが図20である。図20において、横軸は第2無機配向膜19の光学膜厚[nm]、縦軸は第2絶縁膜18の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第2絶縁膜18の光学膜厚r3は、r3=n3×d3で表わされ、第2無機配向膜19の光学膜厚r4は、r4=n4×d4で表わされる。
【0064】
図17〜図19の最適範囲を図20上に書き表すと、その最適範囲は、第2無機配向膜19の光学膜厚r4を通常用いる範囲である50≦r4≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線との2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第2絶縁膜18の光学膜厚r3の最適範囲は、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64…(3)
となる。
【0065】
次に、透明電極17の膜厚を変えた上で第2無機配向膜19の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図21〜図36に示す。図21〜図36において、横軸は第2絶縁膜18の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。
【0066】
図21〜図25は第2無機配向膜19の膜厚d4を30nmとした場合であり、図21は透明電極17の膜厚を120nm、図22は透明電極17の膜厚を130nm、図23は透明電極17の膜厚を140nm、図24は透明電極17の膜厚を150nm、図25は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。また、図26〜図31は第2無機配向膜19の膜厚d4を65nmとした場合であり、図26は透明電極17の膜厚を70nm、図27は透明電極17の膜厚を120nm、図28は透明電極17の膜厚を130nm、図29は透明電極17の膜厚を140nm、図30は透明電極17の膜厚を150nm、図31は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。また、図32〜図36は第2無機配向膜19の膜厚d4を100nmとした場合であり、図32は透明電極17の膜厚を120nm、図33は透明電極17の膜厚を130nm、図34は透明電極17の膜厚を140nm、図35は透明電極17の膜厚を150nm、図36は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。
【0067】
図から明らかなように、透明電極17の膜厚の変化に伴い、各色光に対する光透過率のレベルが変化する。特に波長460nmの光(青色光)に対する光透過率の変動が顕著である。第2無機配向膜厚d4=65nmにおいて、透明電極膜厚を70nmとした図26を見ると、波長460nmの光(青色光)に対する光透過率の平均値、および波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率の平均値がともに95%を下回っており、光透過率の低下が顕著である。これに対して、透明電極膜厚を120nmとした図21、図27、図32を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても各色光に対する光透過率が97%を確保できている。一方、透明電極膜厚を150nmとした図24、図30、図35を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても波長460nmの光(青色光)に対する光透過率が96%を確保できているのに対し、透明電極膜厚を160nmとした図25、図31、図36を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても波長460nmの光(青色光)に対する光透過率が95%を下回り、かつ、第2絶縁膜厚の増減に対する光透過率の変動(グラフの曲線の振幅)が極度に大きくなっている。
【0068】
したがって、図21〜図36から、透明電極17の実膜厚(物理的膜厚)dtは120nm≦dt≦150nmとすることが望ましいと言える。これを光学膜厚rtに換算すると、透明電極17の光学膜厚rtは220nm≦rt≦276nmとすることが望ましい。
【0069】
本実施形態の液晶装置33によれば、上述したように、透明電極17の光学膜厚rt、第2絶縁膜18の光学膜厚r3および第2無機配向膜19の光学膜厚r4が最適化されているので、可視光領域のいずれの波長域においても高い光透過率が得られ、かつ、各波長域での光透過率が比較的均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な反射型液晶装置が得られる。また、透明電極17上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第2絶縁膜18の物理的膜厚が40nm〜190nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0070】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について図37〜図42を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第3実施形態と同様であり、第2絶縁膜および第2無機配向膜の構成が第3実施形態と異なるのみである。
したがって、図37において図15と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施形態の液晶装置34では、第2絶縁膜28として、プラズマCVD法による膜厚105nmのシリコン酸化膜(SiO2)を用いる。第2絶縁膜28の屈折率n3は1.46とする。また、第2無機配向膜29としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図37参照)に45度傾いた方向から蒸着を行う。第2無機配向膜29のX軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.40(=n4min)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.42(=n4max)、とする。よって、第2無機配向膜29の平均屈折率n4は1.41である。第2無機配向膜29の実膜厚(物理的膜厚)d4は、好ましくは30nm≦d4≦100nm、一例として60nm、とする。なお、透明電極17は第3実施形態と同一のものを用いる。
【0072】
液晶層3の屈折率nlcは1.52とする。したがって、本実施形態の場合、透明電極17の屈折率nt、液晶層3の屈折率nlc、第2絶縁膜28の屈折率n3、第2無機配向膜29の屈折率n4の大小関係は、nt>nlc>n3>n4となる。また、第2無機配向膜29の光学膜厚をr4とすると、r4=n4×d4であるから、r4は略42≦r2≦141となる。なお、本実施形態の場合、第2無機配向膜29の平均屈折率n4が上記の大小関係を満たせばよいため、第2無機配向膜29の大きい方の屈折率nmax(ny)は第2絶縁膜28の屈折率n3より大きくても良い。
【0073】
第3実施形態と同様、本発明者は、第2絶縁膜28が有る場合と無い場合とで光透過率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図38に示す。図38において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。破線の曲線は第2絶縁膜28が無い場合、実線の曲線は第2絶縁膜28が有る場合(実膜厚d3=105nm)、を示す。
【0074】
第3実施形態と同様、波長550nm(緑色光)の領域において、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べて光透過率が向上している。また、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域においても、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べて光透過率が向上し、波長550nmでの光透過率に近い値をとる。すなわち、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。また、本実施形態では、第3実施形態よりもさらに各波長での光透過率の値が近く、よりフラットな分光特性を取る。したがって、第2無機配向膜29の屈折率n4がより小さい方が、本発明の効果が大きくなることが判った。
【0075】
次に、第2無機配向膜29の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図39〜図41に示す。図39〜図41において、横軸は第2絶縁膜28の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。図39は第2無機配向膜29の膜厚が30nm、図40は第2無機配向膜29の膜厚が65nm、図41は第2無機配向膜29の膜厚が100nm、の場合である。
【0076】
図39〜図41から明らかなように、光透過率の第2絶縁膜厚依存性は第3実施形態と同様の挙動を示すが、第2絶縁膜厚の増減に対する光透過率の変動が第3実施形態よりも大きくなっている。第2絶縁膜28の膜厚の最適な範囲を第3実施形態と同様に判断すると、図39に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が30nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は100nm≦d3≦180nm、図40に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が65nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は70nm≦d3≦150nm、図41に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が100nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は50nm≦d3≦130nm、となる。
【0077】
そこで、第2無機配向膜29の膜厚d4と第2絶縁膜28の膜厚d3の最適な組み合わせを示したのが図42である。図42において、横軸は第2無機配向膜29の光学膜厚[nm]、縦軸は第2絶縁膜28の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第2絶縁膜28の光学膜厚r3は、r3=n3×d3で表わされ、第2無機配向膜29の光学膜厚r4は、r4=n4×d4で表わされる。
【0078】
図39〜図41の最適範囲を図42上に書き表すと、その最適範囲は、第2無機配向膜29の光学膜厚r4を通常用いる範囲である50≦r4≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線との2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第2絶縁膜28の光学膜厚r3の最適範囲は、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7…(4)
となる。
【0079】
本実施形態の液晶装置34によれば、第3実施形態と同様、透明電極17の光学膜厚rt、第2絶縁膜28の光学膜厚r3および第2無機配向膜29の光学膜厚r4が最適化されているので、いずれの波長域でも高い光透過率が得られ、かつ、各波長域での光透過率が均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な反射型液晶装置が得られる。また、透明電極17上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第2絶縁膜28の物理的膜厚が50nm〜180nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0080】
[プロジェクターの実施形態]
以下、本発明のプロジェクターの一実施形態について、図43を用いて説明する。図43は本実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【0081】
本実施形態のプロジェクター700は、システム光軸Lに沿って配置された光源部110、インテグレータレンズ120、偏光変換素子130から概略構成される偏光照明装置100、偏光照明装置100から射出されたS偏光光束をS偏光反射面201により反射させる偏光ビームスプリッター200、偏光ビームスプリッター200のS偏光反射面201から反射された光のうち、青色光(B光)成分を分離するダイクロイックミラー412、分離された青色光を変調する光変調素子300B、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R光)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー413、分離された赤色光を変調する光変調素子300R、ダイクロイックミラー413を透過する残りの緑色光を変調する光変調素子300G、3つの光変調素子300R,300G,300Bにて変調された光をダイクロイックミラー412,413、偏光ビームスプリッター200にて合成し、この合成光をスクリーン600に投射する投射レンズを含む投射光学系500、から構成されている。そして、光変調素子300R,300G,300Bに上記第1〜第4実施形態の液晶装置が用いられている。
【0082】
本実施形態によれば、光変調素子300R,300G,300Bに、均一で高い光反射率を有する上記第1〜第4実施形態の液晶装置が用いられているので、表示品位に優れたプロジェクターを実現することができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上の説明では、第1、第2実施形態で第1基板(素子基板)側の構成、第3、第4実施形態で第2基板(対向基板)側の構成について別々に述べたが、液晶装置全体としてはいずれの実施形態を組み合わせてもかまわない。ただし、双方の基板で無機配向膜の成膜条件を共通化するという観点では、第1実施形態と第3実施形態、第2実施形態と第4実施形態、という組み合わせが好ましい。より高い本発明の効果を得るという観点では、第2実施形態と第4実施形態の組み合わせが好ましい。
【0084】
また、第1基板として用いた素子基板は、TFT基板に限るものではなく、画素スイッチング素子に薄膜ダイオード(Thin Film Diode, TFDと略記する)を用いたTFD基板であっても良い。あるいは、画素スイッチング素子を持たないパッシブマトリクス型液晶装置に本発明を適用しても良い。また、反射電極は、入射光の略全てを反射するものの他、入射光の一部を反射し、一部を透過する、いわゆる半透過反射板の機能を有する電極であっても良い。その他、上記実施形態で挙げた各種膜の材料、膜厚、屈折率、製造方法等の具体的な記載はほんの一例であり、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…第1基板、2…第2基板、3…液晶層、4…反射電極、5,15…第1絶縁膜、6,16…第1無機配向膜、7,17…透明電極、8,19,29…第2無機配向膜、18,28…第2絶縁膜、31,32,33,34…液晶装置、110…光源部、300R,300G,300B…光変調素子、500…投射光学系、700…プロジェクター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックライト等の光源を用いることなく、外光を利用して表示を行う反射型液晶装置は、低消費電力化、小型軽量化等の観点から有利であるため、携帯性が重要視される携帯用電子機器に採用されている。プロジェクターの分野においても装置構成が簡単化する等の観点から、光変調素子として反射型液晶ライトバルブが採用されることがある。近年は、光入射側と反対側の基板上に配置される表示用電極(画素電極)を反射板で構成し、反射位置を液晶層に極力近付けるようにした、いわゆる内面反射方式の反射型液晶装置が開発され、高精細で明るい画像が実現されている。
【0003】
ところが、反射板を兼ねる画素電極における光の反射率は波長依存性を有しており、外光に含まれる赤色光、緑色光、青色光に対する反射率はそれぞれ異なる。そのため、白黒表示の場合に、本来の白色が青色味がかったり、緑色味がかったりして美しい白色を表示できないという問題がある。カラー表示の場合には、色バランスが崩れて本来の色を忠実に再現できない、あるいは特別な色補正が必要になって装置構成や駆動回路が複雑化する、などの問題がある。そこで、反射板が配置された側の基板の構成を最適化することで分光反射特性の向上を狙った液晶装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1、2参照)。一方、反射板が配置された側と反対側の基板の構成を最適化することで反射特性の向上を狙った液晶装置が提案されている(例えば、下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−156717号公報
【特許文献2】特許第3557933号公報
【特許文献3】特開平11−174427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、液晶装置に用いる配向膜として、無機材料からなる配向膜の採用が検討されている。例えば、酸化シリコン膜等からなる無機配向膜を斜方蒸着法で形成すれば、ラビング処理を行うことなく十分な配向性能を発揮できる。また、無機配向膜はポリイミド等の有機材料を用いた従来の配向膜に比べて耐熱性、耐光性に優れているため、プロジェクター用途の液晶装置として好適である。そこで、無機配向膜を用いた反射型液晶装置においても、基板構成を最適化し、各色光に対して均一な反射率を得て美しい白表示や良好な色バランスを実現するとともに、明るい表示を実現したいという要求がある。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1〜3はいずれも無機配向膜の使用を前提として基板構成を最適化したものではなく、特許文献1〜3から各種膜の屈折率や膜厚の最適値を知ることはできない。また、特許文献1に記載の構成では、反射板上に屈折率が異なる2層以上の誘電体層を形成しなければならず、製造コストが高騰するという問題点もある。さらに、以上の問題点の解決に加えて、フリッカーや焼き付きの発生を抑制し得る液晶装置の提供が望まれている。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示が低コストで得られ、さらにフリッカーや焼き付きの発生を抑制し得る内面反射方式の液晶装置を提供することを目的とする。また、このような液晶装置を用いることにより表示品位に優れたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、nlc>n2>n1であり、前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34…(1)
であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、nlc>n1>n2であり、前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、50≦r2≦150であり、前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96…(2)
であることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明の第1、第2の液晶装置において、第1絶縁膜の光学膜厚r1は、第1絶縁膜の実膜厚(物理的膜厚)をd1としたときに、r1=n1×d1で表わされる。同様に、第1無機配向膜の光学膜厚r2は、第1無機配向膜の実膜厚(物理的膜厚)をd2としたときに、r2=n2×d2で表わされる。また、本発明の第1、第2の液晶装置において、液晶層、第1絶縁膜、第1無機配向膜の屈折率とは、屈折率が異方性を有している場合にはそれら複数の屈折率の平均値を指す。また、本発明で言うところの「屈折率」は、波長550nmの光に対する屈折率と定義する。
【0011】
本発明者は、反射電極上に第1絶縁膜、第1無機配向膜を順次積層した第1基板の構成を前提として、第1無機配向膜の光学膜厚r2を50≦r2≦150と設定し、第1絶縁膜の光学膜厚を変化させたときの光の波長域毎の光反射率をシミュレーションによって求めた。その結果、上述した液晶層、第1絶縁膜、第1無機配向膜の各屈折率の大小関係に応じて、第1無機配向膜の光学膜厚を適宜設定した上で第1絶縁膜の光学膜厚を上記(1)式、または(2)式の条件を満足する値に設定すれば、いずれの波長域においても比較的高い光反射率が得られ、かつ、各色光の光反射率の差が比較的小さくなることを見出した。具体的なシミュレーション結果については後述する。
【0012】
以上の構成とすることにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、本発明の第1、第2の液晶装置の構成によれば、反射電極上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、複数の誘電体層を必要とする上記特許文献1の構成に比べて製造コストを低減できる。また、第1絶縁膜が比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きの低減効果が十分に得られる。
【0013】
本発明の第1の液晶装置において、前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n2max>n1の関係を満たす構成であっても良い。
例えば第1無機配向膜を斜方蒸着法で形成した場合など、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有する場合がある。その場合、大きい方の屈折率n2maxがnlc>n2max>n1の関係を満たしさえすれば、必然的に平均の屈折率n2はnlc>n2>n1の関係を満たすことになる。したがって、複数の屈折率を把握しなくともよく、大きい方の屈折率だけを把握すればよいため、製造条件等の設定が容易になる。
【0014】
同様に、本発明の第2の液晶装置において、前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n1>n2maxの関係を満たす構成であっても良い。
【0015】
本発明の第3の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、nt>nlc>n4>n3であり、前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、220≦rt≦276であり、前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、50≦r4≦150であり、前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64…(3)
であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の液晶装置は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、nt>nlc>n3>n4であり、前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、220≦rt≦276であり、前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、50≦r4≦150であり、前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7…(4)
であることを特徴とする。
【0017】
ここで、本発明の第3、第4の液晶装置において、透明電極の光学膜厚rtは、透明電極の実膜厚(物理的膜厚)をdtとしたときに、rt=nt×dtで表わされる。同様に、第2絶縁膜の光学膜厚r3は、第2絶縁膜の実膜厚(物理的膜厚)をd3としたときに、r3=n3×d3で表わされる。同様に、第2無機配向膜の光学膜厚r4は、第2無機配向膜の実膜厚(物理的膜厚)をd4としたときに、r4=n4×d4で表わされる。また、本発明の第1、第2の液晶装置において、液晶層、第2絶縁膜、第2無機配向膜の屈折率とは、屈折率が異方性を有している場合にはそれら複数の屈折率の平均値を指す。また、本発明で言うところの「屈折率」は、波長550nmの光に対する屈折率と定義する。
【0018】
本発明者は、上述の第1基板側の構成のみならず、光透過性を有する第2基板側の光透過率を最適化することで、液晶装置全体として波長域によらずに均一で高い光反射率を得ようと考えた。
そこで、反射電極を形成した第1基板と、透明電極上に第2絶縁膜、第2無機配向膜を順次積層した第2基板と、を備えた構成を前提として、透明電極の光学膜厚rtを220≦rt≦276と設定し、第2無機配向膜の光学膜厚r4を50≦r4≦150と設定し、第2絶縁膜の光学膜厚を変化させたときの光の波長域毎の光透過率をシミュレーションによって求めた。その結果、上述した液晶層、透明電極、第2絶縁膜、第2無機配向膜の各屈折率の大小関係に応じて、第2無機配向膜の光学膜厚を所定の値に設定した上で第2絶縁膜の光学膜厚を上記(3)式、または(4)式の条件を満足する値に設定すれば、いずれの波長域においても比較的高い光透過率が得られ、かつ、各色光の光透過率の差が比較的小さくなることを見出した。具体的なシミュレーション結果については後述する。
【0019】
以上の構成とすることにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、本発明の第3、第4の液晶装置の構成によれば、透明電極上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、複数の誘電体層を必要とする上記特許文献1の構成に比べて製造コストを低減できる。また、第2絶縁膜が比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きの低減効果が十分に得られる。
【0020】
本発明の第3の液晶装置において、前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n4max>n3の関係を満たす構成であっても良い。
例えば第2無機配向膜を斜方蒸着法で形成した場合など、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有する場合がある。その場合、大きい方の屈折率n4maxがnt>nlc>n4max>n3の関係を満たしさえすれば、必然的に平均の屈折率n4はnt>nlc>n4>n3の関係を満たすことになる。したがって、複数の屈折率を把握しなくともよく、大きい方の屈折率だけを把握すればよいため、製造条件等の設定が容易になる。
【0021】
同様に、本発明の第4の液晶装置において、前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n3>n4maxの関係を満たす構成であっても良い。
【0022】
本発明の第1〜第4の液晶装置において、前記第1絶縁膜もしくは前記第2絶縁膜が、CVD法もしくは蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であり、前記第1無機配向膜もしくは前記第2無機配向膜が、斜方蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であっても良い。
この構成によれば、一般的な材料、一般的な手法を用いて本発明の構成を容易に実現することができ、低コスト化に寄与できる。
【0023】
本発明のプロジェクターは、光源と、前記光源からの光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射光学系と、を備え、前記光変調素子が、本発明の液晶装置で構成されたことを特徴とする。
この構成によれば、光変調素子が、均一で高い光反射率を有する本発明の液晶装置で構成されているため、表示品位に優れたプロジェクターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図2】同、液晶装置の第1無機配向膜の屈折率異方性を説明する図である。
【図3】第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。
【図4】所定の第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図5】図4とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図6】図4とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図7】最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図9】同、液晶装置の第1無機配向膜の屈折率異方性を説明する図である。
【図10】第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。
【図11】所定の第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図12】図11とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図13】図11とは異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図14】最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第3実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図16】第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。
【図17】所定の第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図18】図17とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図19】図17とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図20】最適な光透過率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図21】所定の第2無機配向膜厚、所定の透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図22】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図23】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図24】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図25】図21とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図26】図21〜図25とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図27】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図28】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図29】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図30】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図31】図26とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図32】図21〜図25とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図33】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図34】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図35】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図36】図32とは異なる透明電極膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図37】本発明の第4実施形態の液晶装置を示す断面図である。
【図38】第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。
【図39】所定の第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図40】図39とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図41】図39とは異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
【図42】最適な光透過率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
【図43】本発明のプロジェクターの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置は、第2基板側から入射した光を第1基板側で反射させ、再度第2基板側から射出させて表示を行う反射型液晶装置の例である。
また、以下の第1、第2実施形態は、反射電極が配置された側の第1基板の構成を最適化した例である。
図1は、本実施形態の液晶装置を示す断面図である。図2は、第1無機配向膜の屈折率異方性を説明するための図である。図3は、第1絶縁膜の有無で光反射率の波長依存性を比較したグラフである。図4〜図6は、3つの異なる第1無機配向膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を示すグラフである。図7は、最適な光反射率が得られる第1無機配向膜厚と第1絶縁膜厚との関係を示すグラフである。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法や縮尺を変えて示すことがある。
【0026】
本実施形態の液晶装置31は、図1に示すように、素子基板を構成する第1基板1と、第1基板1に対向配置された対向基板を構成する、光透過性を有する第2基板2と、第1基板1と第2基板2との間に挟持された液晶層3と、を備えている。第1基板1は光透過性を有していても有していなくても良く、例えば光透過性を有するガラス基板等の他、光透過性を有していないシリコン基板等を用いても良い。第2基板2には、光透過性を有するガラス基板、石英基板等を用いる。本実施形態では、第1基板1を構成する素子基板として、画素スイッチング素子に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を採用したTFT基板を用いるが、図1においてはソース線(信号線)、ゲート線(走査線)、TFT等の図示を省略する。
【0027】
第1基板1の第2基板2に対向する側の面に、反射電極4が形成されている。反射電極4の材料には、例えば光反射率が高いアルミニウム等の金属を用いることが好ましい。反射電極4上に、第1絶縁膜5、第1無機配向膜6が基板側からこの順に積層されている。
【0028】
本実施形態では、第1絶縁膜5として、シリコン酸化膜(SiO2)をプラズマCVD法により形成したものを用いる。なお、プラズマCVD法に限らず、常圧CVD法、低圧CVD法等より形成したものを用いても良い。第1絶縁膜5の実膜厚(物理的膜厚)d1は、好ましくは150nm≦d1≦280nm、一例として225nm、とする。第1絶縁膜5の屈折率n1は、1.460とする。
【0029】
第1無機配向膜6には、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図1参照)に50度傾いた方向から蒸着を行う。斜方蒸着により無機配向膜を形成すると、図2に示すように、基板法線方向から見た(Z軸方向に無限大の位置から見た)ときに楕円状の屈折率異方性が生じる。X軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.463(=n2max)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.461(=n2min)、とする。よって、第1無機配向膜6の平均屈折率n2は1.462である。第1無機配向膜6の実膜厚(物理的膜厚)d2は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0030】
液晶層3の屈折率nlcは、nlc=(ne+2×no)/3(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で求められ、1.52とする。したがって、本実施形態の場合、液晶層3の屈折率nlc、第1絶縁膜5の屈折率n1、第1無機配向膜6の屈折率n2の大小関係は、nlc>n2>n1となる。また、第1無機配向膜6の光学膜厚をr2とすると、r2=n2×d2であるから、r2は略44≦r2≦146となる。なお、本実施形態の場合、第1無機配向膜6の屈折率は異方性を有しているが、平均屈折率n2が上記の大小関係を満たせばよいため、第1無機配向膜6の小さい方の屈折率n2min(ny)は第1絶縁膜5の屈折率n1より小さくても良い。
【0031】
一方、第2基板2の第1基板1に対向する側の面に、透明電極7が形成されている。透明電極7上には、第2無機配向膜8が形成されている。本実施形態の場合、透明電極7の材料にはITOが用いられる。また、第2無機配向膜8には、第1基板1側の第1無機配向膜6と同様、斜方蒸着法によるシリコン酸化膜が用いられる。斜方蒸着の条件も第1無機配向膜6と同じくすることが好ましいが、異なっていても良い。
【0032】
ここで、本発明者は、第1絶縁膜5が有る場合と無い場合とで光反射率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図3に示す。図3において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。破線の曲線は第1絶縁膜5が無い場合、実線の曲線は第1絶縁膜5が有る場合(実膜厚d1=225nm)、を示す。
【0033】
波長550nm(緑色光)の領域で見る限り、第1絶縁膜5が有っても無くても光反射率は殆ど変わらない。ところが、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域を見ると、第1絶縁膜5が有る場合の方が、第1絶縁膜5が無い場合に比べて波長460nmでの光反射率と波長620nmでの光反射率とが近い値をとる。すなわち、第1絶縁膜5が有る場合の方が、第1絶縁膜5が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、可視光領域に相当する広い波長域にわたって均一な光反射率を得るという観点では、第1絶縁膜5が無いよりも第1絶縁膜5が有る方が有利であることが判った。
【0034】
次に、第1無機配向膜6の膜厚を変え、各膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図4〜図6に示す。図4〜図6において、横軸は第1絶縁膜の物理的膜厚[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光反射率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光反射率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光反射率、を示す。図4は第1無機配向膜6の物理的膜厚が30nm、図5は第1無機配向膜6の物理的膜厚が65nm、図6は第1無機配向膜6の物理的膜厚が100nm、の場合である。
【0035】
図4〜図6から明らかなように、各場合とも共通して、光反射率は、第1無機配向膜6の物理的膜厚の変化に伴い、平均値を中心として極大値、極小値を取りながら滑らかに変化する。全体的に、波長460nmの光(青色光)に対する光反射率が最も高いレベルにあり、波長550nmの光(緑色光)、波長620nmの光(赤色光)の順に光反射率が低下する。
【0036】
本実施形態において、第1絶縁膜5の膜厚の最適な範囲とは、光反射率が最も低い波長620nmの光(赤色光)における光反射率がその平均値(86%)以上の領域であり、かつ、人間の目の視感度が最も高い波長550nmの光(緑色光)における光反射率がその平均値(87.6%)以上の領域であり、かつ、波長460nmの光(青色光)における光反射率が低下して波長620nmの光(赤色光)および波長550nmの光(緑色光)における光反射率に最も近付いている領域、と定義する。
【0037】
この観点で判断すると、図4に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が30nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は220nm≦d1≦280nm、図5に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が65nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は180nm≦d1≦250nm、図6に示す第1無機配向膜6の膜厚d2が100nmの場合、第1絶縁膜5の膜厚の最適範囲d1は150nm≦d1≦220nm、となる。このように、第1無機配向膜6の膜厚d2が大きくなるのに伴って、第1絶縁膜5の膜厚d1の最適範囲は小さい側にシフトする。
【0038】
そこで、第1無機配向膜6の膜厚d2と第1絶縁膜5の膜厚d1の最適な組み合わせを示したのが図7である。図7において、横軸は第1無機配向膜6の光学膜厚[nm]、縦軸は第1絶縁膜5の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第1絶縁膜5の光学膜厚r1は、r1=n1×d1で表わされ、第1無機配向膜6の光学膜厚r2は、r2=n2×d2で表わされる。
【0039】
図4〜図6の最適範囲を図7上に書き表すと、その最適範囲は、第1無機配向膜6の光学膜厚r2を通常用いる範囲である50≦r2≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線の2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第1絶縁膜5の光学膜厚r1の最適範囲は、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34…(1)
となる。
【0040】
本実施形態の液晶装置31によれば、上述したように、反射電極4上に位置する第1絶縁膜5の光学膜厚r1および第1無機配向膜6の光学膜厚r2が最適化されているので、可視光領域のいずれの波長域においても比較的高い光反射率が得られ、かつ、各波長域での光反射率が比較的均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が実現できる。また、反射電極4上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第1絶縁膜5の物理的膜厚が150nm〜280nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0041】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図8〜図14を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、第1絶縁膜および第1無機配向膜の構成が第1実施形態と異なるのみである。
したがって、図8において図1と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態の液晶装置32では、第1絶縁膜15として、第1実施形態と異なり、例えばプラズマCVD法による膜厚200nmのシリコン酸化膜(SiO2)の上に蒸着法による膜厚15nmのシリコン酸化膜(SiO2)を積層したものを用いる。なお、下層側のプラズマCVD法によるシリコン酸化膜は、必ずしもプラズマCVD法に限らず、常圧CVD法、低圧CVD法等より形成したものを用いても良い。したがって、第1絶縁膜15の実膜厚(物理的膜厚)d1は全体で215nmとなる。第1絶縁膜15の実膜厚(物理的膜厚)d1は、150nm≦d1≦270nmとするのが好ましい。第1絶縁膜15の屈折率(平均屈折率)n1は1.46とする。
【0043】
第1無機配向膜16としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は第1実施形態と異なり、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図8参照)に45度傾いた方向から蒸着を行う。斜方蒸着により無機配向膜を形成すると、図9に示すように、基板法線方向から見た(Z軸方向に無限大の位置から見た)ときに楕円状の屈折率異方性が生じる。X軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.40(=n2min)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.42(=n2max)、とする。よって、第1無機配向膜16の平均屈折率n2は1.41である。第1無機配向膜16の実膜厚(物理的膜厚)d2は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0044】
液晶層3の屈折率nlcは、nlc=(ne+2×no)/3(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で求められ、nlcは1.52とする。したがって、本実施形態の場合、液晶層3の屈折率nlc、第1絶縁膜15の屈折率n1、第1無機配向膜16の屈折率n2の大小関係は、nlc>n1>n2となる。また、第1無機配向膜16の光学膜厚をr2とすると、r2=n2×d2であるから、r2は略42≦r2≦141となる。なお、本実施形態の場合、第1無機配向膜16の平均屈折率n2が上記の大小関係を満たせばよいため、第1無機配向膜16の大きい方の屈折率n2max(ny)は第1絶縁膜15の屈折率n1より大きくても良い。
【0045】
第1実施形態と同様、本発明者は、第1絶縁膜15が有る場合と無い場合とで光反射率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図10に示す。図10において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。破線の曲線は第1絶縁膜15が無い場合、実線の曲線は第1絶縁膜15が有る場合(実膜厚d1=215nm)、を示す。
【0046】
波長550nm(緑色光)の領域では、第1絶縁膜15が有っても無くても光反射率は殆ど変わらない。ところが、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域を見ると、第1絶縁膜15が有る場合の方が、第1絶縁膜15が無い場合に比べて波長460nmでの光反射率と波長620nmでの光反射率とが近い値をとる。すなわち、第1絶縁膜15が有る場合の方が、第1絶縁膜15が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、第1絶縁膜15が無いよりも第1絶縁膜15が有る方が有利であることが判った。また、本実施形態では、第1実施形態よりもさらに各波長での光反射率の値が近く、よりフラットな分光特性を取る。したがって、第1無機配向膜16の屈折率n2がより小さい方が、本発明の効果が大きくなることが判った。
【0047】
次に、第1無機配向膜16の膜厚を変え、各膜厚における光反射率の第1絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図11〜図13に示す。図11〜図13において、横軸は第1絶縁膜15の物理的膜厚[nm]、縦軸は液晶媒質中での光反射率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光反射率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光反射率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光反射率、をそれぞれ示す。図11は第1無機配向膜16の膜厚が30nm、図12は第1無機配向膜16の膜厚が65nm、図13は第1無機配向膜16の膜厚が100nm、の場合である。
【0048】
図11〜図13から明らかなように、光反射率の第1絶縁膜厚依存性は第1実施形態と同様の挙動を示すが、第1絶縁膜厚の増減に対する光反射率の変動が第1実施形態よりも大きくなっている。第1絶縁膜15の膜厚の最適な範囲を第1実施形態と同様に判断すると、図11に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が30nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は200nm≦d1≦270nm、図12に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が65nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は170nm≦d1≦250nm、図13に示す第1無機配向膜16の膜厚d2が100nmの場合、第1絶縁膜15の膜厚の最適範囲d1は150nm≦d1≦220nm、となる。
【0049】
そこで、第1無機配向膜厚d2と第1絶縁膜厚d1の最適な組み合わせを示したのが図14である。図14において、横軸は第1無機配向膜の光学膜厚[nm]、縦軸は第1絶縁膜の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第1絶縁膜の光学膜厚r1は、r1=n1×d1で表わされ、第1無機配向膜の光学膜厚r2は、r2=n2×d2で表わされる。
【0050】
図11〜図13の最適範囲を図14上に書き表すと、その最適範囲は、第1無機配向膜16の光学膜厚r2を通常用いる範囲である50≦r2≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線とで示す2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第1絶縁膜15の光学膜厚r1の最適範囲は、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96…(2)
となる。
【0051】
本実施形態の液晶装置32によれば、第1実施形態と同様、第1絶縁膜15の光学膜厚r1および第1無機配向膜16の光学膜厚r2が最適化されているので、いずれの波長域でも高い光反射率が得られ、かつ、各波長域での光反射率が均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な液晶装置が得られる。また、反射電極4上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第1絶縁膜15の物理的膜厚が150nm〜270nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0052】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について図15〜図36を用いて説明する。
以下の第3、第4実施形態は、反射電極が配置された側と反対側の第2基板の構成を最適化した例である。
図15は、本実施形態の液晶装置を示す断面図である。図16は、第2絶縁膜の有無で光透過率の波長依存性を比較したグラフである。図17〜図19は、3つの異なる第2無機配向膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。図20は、最適な光反射率が得られる第2無機配向膜厚と第2絶縁膜厚との関係を示すグラフである。図21〜図36は、透明電極膜厚と第2無機配向膜厚の双方を振ったときの光反射率の第2絶縁膜厚依存性を示すグラフである。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、第2基板側の構成が第1実施形態と異なるのみである。
したがって、図15において図1と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の液晶装置33は、図15に示すように、第2基板2の第1基板1に対向する側の面に、透明電極17が形成されている。透明電極17の材料には、光透過率が高いITO等の透明導電膜を用いることが好ましい。本実施形態の場合、具体的には、スパッタ法で形成された膜厚140nmのITOを用いる。透明電極17の実膜厚(物理的膜厚)dtは、120nm≦dt≦150nmとすることが望ましい。また、透明電極17の屈折率ntは、1.84である。透明電極17上には、第2絶縁膜18、第2無機配向膜19が基板側からこの順に積層されている。第1基板1側の構成は、第1実施形態もしくは第2実施形態と同様のものを用いることができる。
【0054】
本実施形態では、第2絶縁膜18として、プラズマCVD法による膜厚100nmのシリコン酸化膜(SiO2)と通常の蒸着法による膜厚10nmのシリコン酸化膜(SiO2)とを基板側からこの順に積層したものを用いる。よって、第2絶縁膜18の実膜厚(物理的膜厚)d3は、合計110nmとなる。第2絶縁膜18の実膜厚(物理的膜厚)d3は、好ましくは40nm≦d3≦190nm、である。第2絶縁膜18の屈折率n3は1.460とする。
【0055】
第2無機配向膜19としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図15参照)に50度傾いた方向から蒸着を行う。第2無機配向膜19のX軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.463(=n4max)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.461(=n4min)、とする。よって、第2無機配向膜19の平均屈折率n4は1.462である。第2無機配向膜19の実膜厚(物理的膜厚)d4は、好ましくは30nm≦d2≦100nm、一例として60nm、とする。
【0056】
液晶層3の屈折率nlcは、第1、第2実施形態と同様、1.52とする。したがって、本実施形態の場合、透明電極17の屈折率nt、液晶層3の屈折率nlc、第2絶縁膜18の屈折率n3、第2無機配向膜19の屈折率n4の大小関係は、nt>nlc>n4>n3となる。また、第2無機配向膜19の光学膜厚をr4とすると、r4=n4×d4であるから、r4は略44≦r2≦146となる。なお、本実施形態の場合、第2無機配向膜19の屈折率は異方性を有しているが、平均屈折率n4が上記の大小関係を満たせばよいため、第2無機配向膜19の小さい方の屈折率n4min(ny)は第2絶縁膜18の屈折率n3より小さくても良い。
【0057】
ここで、本発明者は、第2絶縁膜18が有る場合と無い場合とで光透過率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図16に示す。図16において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。破線の曲線は第2絶縁膜18が無い場合、実線の曲線は第2絶縁膜18が有る場合(実膜厚d3=110nm)、を示す。
【0058】
波長550nm(緑色光)の領域において、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べて光透過率が向上している。また、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域においても、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べて光透過率が向上し、波長550nmでの光透過率に近い値をとる。すなわち、第2絶縁膜18が有る場合の方が、第2絶縁膜18が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。このことから、広い波長域にわたって均一な光透過率を得るという観点では、第2絶縁膜18が無いよりも第2絶縁膜18が有る方が有利であることが判った。
【0059】
次に、第2無機配向膜19の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図17〜図19に示す。図17〜図19において、横軸は第2絶縁膜18の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。図17は第2無機配向膜19の膜厚が30nm、図18は第2無機配向膜19の膜厚が65nm、図19は第2無機配向膜19の膜厚が100nm、の場合である。
【0060】
図17〜図19から明らかなように、各場合とも共通して、光透過率は、第2無機配向膜19の膜厚の増減に伴い、平均値を中心として極大値、極小値を取りながら滑らかに変化する。全体的に、波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率が最も高いレベルにあり、波長620nmの光(赤色光)、波長460nmの光(青色光)の順に光透過率が低下する。
【0061】
本実施形態において、第2絶縁膜18の膜厚の最適な範囲とは、光透過率が最も低い波長460nmの光(青色光)における光透過率がその平均値(98%)以上の領域、と定義する。この領域においては、第2無機配向膜19の膜厚が変わったとしても(図17〜図19のいずれの場合も)、620nmの光(赤色光)における光透過率も平均値以上であり、かつ、波長550nmの光(緑色光)における光透過率が低下傾向にあって波長620nmの光(赤色光)および波長460nmの光(青色光)における光透過率に近付いている。
【0062】
この観点で判断すると、図17に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が30nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は110nm≦d3≦190nm、図18に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が65nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は80nm≦d3≦160nm、図19に示す第2無機配向膜19の膜厚d4が100nmの場合、第2絶縁膜18の膜厚の最適範囲d3は40nm≦d3≦120nm、となる。このように、第2無機配向膜19の膜厚d4が大きくなるのに伴って、第2絶縁膜18の膜厚d3の最適範囲は小さい側にシフトする。
【0063】
そこで、第2無機配向膜19の膜厚d4と第2絶縁膜18の膜厚d3の最適な組み合わせを示したのが図20である。図20において、横軸は第2無機配向膜19の光学膜厚[nm]、縦軸は第2絶縁膜18の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第2絶縁膜18の光学膜厚r3は、r3=n3×d3で表わされ、第2無機配向膜19の光学膜厚r4は、r4=n4×d4で表わされる。
【0064】
図17〜図19の最適範囲を図20上に書き表すと、その最適範囲は、第2無機配向膜19の光学膜厚r4を通常用いる範囲である50≦r4≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線との2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第2絶縁膜18の光学膜厚r3の最適範囲は、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64…(3)
となる。
【0065】
次に、透明電極17の膜厚を変えた上で第2無機配向膜19の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図21〜図36に示す。図21〜図36において、横軸は第2絶縁膜18の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。
【0066】
図21〜図25は第2無機配向膜19の膜厚d4を30nmとした場合であり、図21は透明電極17の膜厚を120nm、図22は透明電極17の膜厚を130nm、図23は透明電極17の膜厚を140nm、図24は透明電極17の膜厚を150nm、図25は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。また、図26〜図31は第2無機配向膜19の膜厚d4を65nmとした場合であり、図26は透明電極17の膜厚を70nm、図27は透明電極17の膜厚を120nm、図28は透明電極17の膜厚を130nm、図29は透明電極17の膜厚を140nm、図30は透明電極17の膜厚を150nm、図31は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。また、図32〜図36は第2無機配向膜19の膜厚d4を100nmとした場合であり、図32は透明電極17の膜厚を120nm、図33は透明電極17の膜厚を130nm、図34は透明電極17の膜厚を140nm、図35は透明電極17の膜厚を150nm、図36は透明電極17の膜厚を160nm、とした場合である。
【0067】
図から明らかなように、透明電極17の膜厚の変化に伴い、各色光に対する光透過率のレベルが変化する。特に波長460nmの光(青色光)に対する光透過率の変動が顕著である。第2無機配向膜厚d4=65nmにおいて、透明電極膜厚を70nmとした図26を見ると、波長460nmの光(青色光)に対する光透過率の平均値、および波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率の平均値がともに95%を下回っており、光透過率の低下が顕著である。これに対して、透明電極膜厚を120nmとした図21、図27、図32を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても各色光に対する光透過率が97%を確保できている。一方、透明電極膜厚を150nmとした図24、図30、図35を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても波長460nmの光(青色光)に対する光透過率が96%を確保できているのに対し、透明電極膜厚を160nmとした図25、図31、図36を見ると、いずれの第2無機配向膜厚d4においても波長460nmの光(青色光)に対する光透過率が95%を下回り、かつ、第2絶縁膜厚の増減に対する光透過率の変動(グラフの曲線の振幅)が極度に大きくなっている。
【0068】
したがって、図21〜図36から、透明電極17の実膜厚(物理的膜厚)dtは120nm≦dt≦150nmとすることが望ましいと言える。これを光学膜厚rtに換算すると、透明電極17の光学膜厚rtは220nm≦rt≦276nmとすることが望ましい。
【0069】
本実施形態の液晶装置33によれば、上述したように、透明電極17の光学膜厚rt、第2絶縁膜18の光学膜厚r3および第2無機配向膜19の光学膜厚r4が最適化されているので、可視光領域のいずれの波長域においても高い光透過率が得られ、かつ、各波長域での光透過率が比較的均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な反射型液晶装置が得られる。また、透明電極17上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第2絶縁膜18の物理的膜厚が40nm〜190nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0070】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について図37〜図42を用いて説明する。
本実施形態の液晶装置の基本構成は第3実施形態と同様であり、第2絶縁膜および第2無機配向膜の構成が第3実施形態と異なるのみである。
したがって、図37において図15と共通な構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施形態の液晶装置34では、第2絶縁膜28として、プラズマCVD法による膜厚105nmのシリコン酸化膜(SiO2)を用いる。第2絶縁膜28の屈折率n3は1.46とする。また、第2無機配向膜29としては、シリコン酸化膜(SiO2)を斜方蒸着法により形成したものを用いる。斜方蒸着の条件は、真空度を5×10−3Paとし、基板法線方向からX軸方向(図37参照)に45度傾いた方向から蒸着を行う。第2無機配向膜29のX軸方向の屈折率(X軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nxは1.40(=n4min)、Y軸方向の屈折率(Y軸方向に振動する偏光が感じる屈折率)nyは1.42(=n4max)、とする。よって、第2無機配向膜29の平均屈折率n4は1.41である。第2無機配向膜29の実膜厚(物理的膜厚)d4は、好ましくは30nm≦d4≦100nm、一例として60nm、とする。なお、透明電極17は第3実施形態と同一のものを用いる。
【0072】
液晶層3の屈折率nlcは1.52とする。したがって、本実施形態の場合、透明電極17の屈折率nt、液晶層3の屈折率nlc、第2絶縁膜28の屈折率n3、第2無機配向膜29の屈折率n4の大小関係は、nt>nlc>n3>n4となる。また、第2無機配向膜29の光学膜厚をr4とすると、r4=n4×d4であるから、r4は略42≦r2≦141となる。なお、本実施形態の場合、第2無機配向膜29の平均屈折率n4が上記の大小関係を満たせばよいため、第2無機配向膜29の大きい方の屈折率nmax(ny)は第2絶縁膜28の屈折率n3より大きくても良い。
【0073】
第3実施形態と同様、本発明者は、第2絶縁膜28が有る場合と無い場合とで光透過率の波長依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図38に示す。図38において、横軸は光の波長[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。破線の曲線は第2絶縁膜28が無い場合、実線の曲線は第2絶縁膜28が有る場合(実膜厚d3=105nm)、を示す。
【0074】
第3実施形態と同様、波長550nm(緑色光)の領域において、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べて光透過率が向上している。また、波長460nm(青色光)の領域と波長620nm(赤色光)の領域においても、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べて光透過率が向上し、波長550nmでの光透過率に近い値をとる。すなわち、第2絶縁膜28が有る場合の方が、第2絶縁膜28が無い場合に比べてフラットな分光特性をとる。また、本実施形態では、第3実施形態よりもさらに各波長での光透過率の値が近く、よりフラットな分光特性を取る。したがって、第2無機配向膜29の屈折率n4がより小さい方が、本発明の効果が大きくなることが判った。
【0075】
次に、第2無機配向膜29の膜厚を変え、各膜厚における光透過率の第2絶縁膜厚依存性を比較するシミュレーションを行った。その結果を図39〜図41に示す。図39〜図41において、横軸は第2絶縁膜28の物理的膜厚[nm]、縦軸は第2基板2から液晶層3への光透過率[%]、である。実線の曲線は波長460nmの光(青色光)に対する光透過率、破線の曲線は波長550nmの光(緑色光)に対する光透過率、2点鎖線の曲線は波長620nmの光(赤色光)に対する光透過率、を示す。図39は第2無機配向膜29の膜厚が30nm、図40は第2無機配向膜29の膜厚が65nm、図41は第2無機配向膜29の膜厚が100nm、の場合である。
【0076】
図39〜図41から明らかなように、光透過率の第2絶縁膜厚依存性は第3実施形態と同様の挙動を示すが、第2絶縁膜厚の増減に対する光透過率の変動が第3実施形態よりも大きくなっている。第2絶縁膜28の膜厚の最適な範囲を第3実施形態と同様に判断すると、図39に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が30nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は100nm≦d3≦180nm、図40に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が65nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は70nm≦d3≦150nm、図41に示す第2無機配向膜29の膜厚d4が100nmの場合、第2絶縁膜28の膜厚の最適範囲d3は50nm≦d3≦130nm、となる。
【0077】
そこで、第2無機配向膜29の膜厚d4と第2絶縁膜28の膜厚d3の最適な組み合わせを示したのが図42である。図42において、横軸は第2無機配向膜29の光学膜厚[nm]、縦軸は第2絶縁膜28の光学膜厚[nm]、である。ここでは、横軸、縦軸ともに、各膜の屈折率と物理的膜厚との積である光学膜厚を用いた。すなわち、第2絶縁膜28の光学膜厚r3は、r3=n3×d3で表わされ、第2無機配向膜29の光学膜厚r4は、r4=n4×d4で表わされる。
【0078】
図39〜図41の最適範囲を図42上に書き表すと、その最適範囲は、第2無機配向膜29の光学膜厚r4を通常用いる範囲である50≦r4≦150の範囲に設定したとき、2点鎖線と実線との2本の直線で挟まれた斜線を付した領域となる。斜線を付した領域を数式で表すと、第2絶縁膜28の光学膜厚r3の最適範囲は、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7…(4)
となる。
【0079】
本実施形態の液晶装置34によれば、第3実施形態と同様、透明電極17の光学膜厚rt、第2絶縁膜28の光学膜厚r3および第2無機配向膜29の光学膜厚r4が最適化されているので、いずれの波長域でも高い光透過率が得られ、かつ、各波長域での光透過率が均一になる。これにより、美しい白表示や良好な色バランス、明るい表示を実現可能な反射型液晶装置が得られる。また、透明電極17上に1層の絶縁膜のみを形成すれば済むため、低コスト化を図ることができる。また、第2絶縁膜28の物理的膜厚が50nm〜180nm程度となり、比較的厚い絶縁膜となるため、フリッカーや焼き付きを十分に低減できる。
【0080】
[プロジェクターの実施形態]
以下、本発明のプロジェクターの一実施形態について、図43を用いて説明する。図43は本実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【0081】
本実施形態のプロジェクター700は、システム光軸Lに沿って配置された光源部110、インテグレータレンズ120、偏光変換素子130から概略構成される偏光照明装置100、偏光照明装置100から射出されたS偏光光束をS偏光反射面201により反射させる偏光ビームスプリッター200、偏光ビームスプリッター200のS偏光反射面201から反射された光のうち、青色光(B光)成分を分離するダイクロイックミラー412、分離された青色光を変調する光変調素子300B、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R光)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー413、分離された赤色光を変調する光変調素子300R、ダイクロイックミラー413を透過する残りの緑色光を変調する光変調素子300G、3つの光変調素子300R,300G,300Bにて変調された光をダイクロイックミラー412,413、偏光ビームスプリッター200にて合成し、この合成光をスクリーン600に投射する投射レンズを含む投射光学系500、から構成されている。そして、光変調素子300R,300G,300Bに上記第1〜第4実施形態の液晶装置が用いられている。
【0082】
本実施形態によれば、光変調素子300R,300G,300Bに、均一で高い光反射率を有する上記第1〜第4実施形態の液晶装置が用いられているので、表示品位に優れたプロジェクターを実現することができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上の説明では、第1、第2実施形態で第1基板(素子基板)側の構成、第3、第4実施形態で第2基板(対向基板)側の構成について別々に述べたが、液晶装置全体としてはいずれの実施形態を組み合わせてもかまわない。ただし、双方の基板で無機配向膜の成膜条件を共通化するという観点では、第1実施形態と第3実施形態、第2実施形態と第4実施形態、という組み合わせが好ましい。より高い本発明の効果を得るという観点では、第2実施形態と第4実施形態の組み合わせが好ましい。
【0084】
また、第1基板として用いた素子基板は、TFT基板に限るものではなく、画素スイッチング素子に薄膜ダイオード(Thin Film Diode, TFDと略記する)を用いたTFD基板であっても良い。あるいは、画素スイッチング素子を持たないパッシブマトリクス型液晶装置に本発明を適用しても良い。また、反射電極は、入射光の略全てを反射するものの他、入射光の一部を反射し、一部を透過する、いわゆる半透過反射板の機能を有する電極であっても良い。その他、上記実施形態で挙げた各種膜の材料、膜厚、屈折率、製造方法等の具体的な記載はほんの一例であり、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…第1基板、2…第2基板、3…液晶層、4…反射電極、5,15…第1絶縁膜、6,16…第1無機配向膜、7,17…透明電極、8,19,29…第2無機配向膜、18,28…第2絶縁膜、31,32,33,34…液晶装置、110…光源部、300R,300G,300B…光変調素子、500…投射光学系、700…プロジェクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、
nlc>n2>n1であり、
前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、
50≦r2≦150であり、
前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n2max>n1の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、
nlc>n1>n2であり、
前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、
50≦r2≦150であり、
前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n1>n2maxの関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、
前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、
nt>nlc>n4>n3であり、
前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、
220≦rt≦276であり、
前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、
50≦r4≦150であり、
前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n4max>n3の関係を満たすことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、
前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、
nt>nlc>n3>n4であり、
前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、
220≦rt≦276であり、
前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、
50≦r4≦150であり、
前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n3>n4maxの関係を満たすことを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1絶縁膜もしくは前記第2絶縁膜が、CVD法もしくは蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であり、前記第1無機配向膜もしくは前記第2無機配向膜が、斜方蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項10】
光源と、前記光源からの光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射光学系と、を備え、
前記光変調素子が、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の液晶装置で構成されたことを特徴とするプロジェクター。
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、
nlc>n2>n1であり、
前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、
50≦r2≦150であり、
前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−1.0173×r2+367.29≦r1≦−1.0197×r2+463.34
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n2max>n1の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記反射電極上に配置された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された第1無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記第1絶縁膜の屈折率をn1、前記第1無機配向膜の屈折率をn2とすると、
nlc>n1>n2であり、
前記第1無機配向膜の光学膜厚をr2とすると、
50≦r2≦150であり、
前記第1絶縁膜の光学膜厚をr1とすると、
−0.7651×r2+325.61≦r1≦−0.7587×r2+429.96
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
前記第1無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn2maxとしたときに、nlc>n1>n2maxの関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、
前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、
nt>nlc>n4>n3であり、
前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、
220≦rt≦276であり、
前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、
50≦r4≦150であり、
前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−1.0189×r4+212.05≦r3≦−1.016×r4+325.64
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n4max>n3の関係を満たすことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された光透過性を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する側に配置された反射電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する側に配置された透明電極と、
前記透明電極上に配置された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に配置された第2無機配向膜と、を備え、
前記液晶層の屈折率をnlc、前記透明電極の屈折率をnt、前記第2絶縁膜の屈折率をn3、前記第2無機配向膜の屈折率をn4とすると、
nt>nlc>n3>n4であり、
前記透明電極の光学膜厚をrtとすると、
220≦rt≦276であり、
前記第2無機配向膜の光学膜厚をr4とすると、
50≦r4≦150であり、
前記第2絶縁膜の光学膜厚をr3とすると、
−0.8401×r4+189.76≦r3≦−0.8323×r4+302.7
であることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
前記第2無機配向膜は、基板法線方向から見た屈折率が異方性を有し、2つの屈折率のうちの大きい方の屈折率をn4maxとしたときに、nt>nlc>n3>n4maxの関係を満たすことを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1絶縁膜もしくは前記第2絶縁膜が、CVD法もしくは蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であり、前記第1無機配向膜もしくは前記第2無機配向膜が、斜方蒸着法で形成されたシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項10】
光源と、前記光源からの光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射光学系と、を備え、
前記光変調素子が、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の液晶装置で構成されたことを特徴とするプロジェクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2011−164330(P2011−164330A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26259(P2010−26259)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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