説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】液晶配向性に優れ且つ耐熱性および耐光性が高く、電気特性に優れる液晶配向膜を形成することができ、しかも保存安定性が良好な液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、Si−X’結合(ただしX’は液晶配向能を有する構造を含む基である。)およびSi−X結合(ただしXはエポキシ構造を含む基である。)を有するポリオルガノシロキサン(A)、ならびに分子内にカルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造およびカルボン酸のt−ブチルエステル構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を2個以上有する化合物(B)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶配向剤および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面に有機樹脂などからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙に正の誘電率異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向って連続的に90°捩れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、TN型液晶表示素子に比して高いコントラスト比を実現できるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や視野角依存性の少ないIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子、負の誘電率異方性を有するネマチック型液晶を用いるVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子などが開発されている(特許文献1〜5)。
こうした各種液晶表示素子の動作原理は透過型と反射型に大別される。透過型液晶表示素子は、素子駆動時における素子背面からのバックライト用光源の透過光の強度変化を利用して表示を行なうものである。反射型液晶表示素子は、バックライト用光源は使用せず素子駆動時における太陽光など外部からの光の反射光の強度変化を利用して表示を行なうものであり、透過型に比べ消費電力が少ないため屋外での使用には特に有利と考えられている。
透過型液晶表示素子では、これに備えられた液晶配向膜は、バックライト光源からの光に長時間さらされることになる。特にビジネス用途に加えて近年ホームシアターとしての需要が高まっている液晶プロジェクター用途においては、メタルハライドランプなどの非常に照射強度の高い光源を用いている。また、強度の強い光照射に伴い、駆動時には液晶表示素子の系自体の温度が上昇することが考えられる。
反射型液晶表示素子では、屋外で使用される可能性が大きく、この場合には強い紫外光を含む太陽光が光源となる。また反射型ではその原理上、素子内を光が通過する距離が透過型に比べて長い。
さらに、透過型液晶表示素子、反射型液晶表示素子とも、例えば自家用自動車内への設置などが普及する傾向にあり、液晶表示素子の使用態様として従来考えられていた態様に比べ、高い温度下における使用および設置環境が現実化してきた。
【0003】
ところで、液晶表示素子の製造工程において、プロセス短縮および歩留まり向上の観点から用いられ始めているのが液晶滴下方式、すなわちODF(One Drop Fill)方式である。ODF方式は、予め熱硬化性のシール剤を用いて組み立てられた空の液晶セルに液晶を注入していく従来法と異なり、液晶配向膜を塗布した片側基板の必要箇所に紫外光硬化性のシール剤を塗布した後、液晶を必要箇所に滴下し、他方の基板を貼り合わせた後に、全面に紫外光を照射してシール剤を硬化させて液晶セルを製造するものである。この際照射される紫外光は通常1平方センチメートルあたり数ジュール以上と強いものである。すなわち液晶表示素子製造工程において、液晶配向膜は液晶とともにこの強い紫外光にさらされることになる。
このように液晶表示素子においては、その高機能化、多用途化、製造工程の改良などに伴って、高強度の光照射、高温環境、長時間駆動など、従来では考えられなかった苛酷な環境にさらされることとなり、且つかかる環境下においても液晶配向性、電圧保持率などの電気特性、あるいは表示特性が従来より一層優れたものが求められることになり、さらに液晶表示素子にさらなる長寿命化が求められてきている。
液晶表示素子を構成する液晶配向膜の材料としては、従来よりポリイミド、ポリアミック酸、ポリアミドおよびポリエステルなどの有機樹脂が知られている。特にポリイミドは有機樹脂の中では耐熱性、液晶との親和性、機械強度などに優れた物性を示すため、多くの液晶表示素子に使用されてきた(特許文献6〜8)。
しかしながら近年の液晶表示素子においては、上述したような製造環境、使用環境の過酷化に伴う新たな要求が強くなり、従来は許容されていた有機樹脂が達成できる程度の耐熱性、耐光性では未だ不十分であることとなった。
【0004】
そこで、耐熱性、耐光性に優れる液晶配向膜の検討が行なわれている。例えば特許文献9には4個のアルコキシル基を有する珪素化合物と3個のアルコキシル基を有する珪素化合物とから得られたポリシロキサン溶液から形成された垂直配向型の液晶配向膜が開示されており、液晶配向膜として垂直配向性、耐熱性および均一性に優れ、且つ塗布液としての安定性にも優れていると説明されている。しかし、この技術による液晶配向膜は、現在の製造環境、使用環境の過酷化に伴う要求性能は満足しておらず、また塗布液の保存安定性が未だ不足しているため、工業的に使用するうえでの利便性に問題がある。
さらに、液晶表示素子としては、残像の問題を生じない、すなわち、電気特性に優れた液晶配向剤の開発要求は依然として強い。
一方、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、工程内でほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるなどの問題があるため、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリイミド、アゾベンゼン誘導体などの感光性薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている(特許文献10〜12)。これらの方法によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現することができる。しかしながら、これらの技術により形成された液晶配向膜は、形成当初は良好なプレチルト角を示したとしても、経時的にプレチルト角発現性が失われる現象が起こり、プレチルト角の経時的安定性に欠けることが指摘されている。
【0005】
以上のように、極めて過酷な現在の製造環境、使用環境において十分な耐熱性、耐光性を有する液晶配向膜を与えることができ、しかも保存安定性に優れており、且つ、液晶表示素子にしたとき優れた電気特性を示す液晶配向剤は未だ知られていない。また、光配向法により形成した場合に、十分なプレチルト角の経時的安定性を示す液晶配向剤は未だ知られていない。
本願発明者らは、これらの問題を解決すべく、近年、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの反応性を利用して液晶配向能を有する構造を導入することによって得た液晶配向性ポリオルガノシロキサンを含有する液晶配向剤について報告した(特許文献13〜16)。
しかしながら、上記した使用環境の苛酷化は益々激化する傾向を見せており、特に液晶配向膜の耐熱性においてはさらなる向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開昭56−91277号公報
【特許文献4】米国特許第5,928,733号明細書
【特許文献5】特開平11−258605号公報
【特許文献6】特開平9−197411号公報
【特許文献7】特開2003−149648号公報
【特許文献8】特開2003−107486号公報
【特許文献9】特開平9−281502号公報
【特許文献10】特開平6−287453号公報
【特許文献11】特開2003−307736号公報
【特許文献12】特開2004−163646号公報
【特許文献13】特願2008−19346号
【特許文献14】国際公開第09/25385号パンフレット
【特許文献15】国際公開第09/25386号パンフレット
【特許文献16】国際公開第09/25388号パンフレット
【特許文献17】特開昭63−291922号公報
【特許文献18】特開平6−222366号公報
【特許文献19】特開平6−281937号公報
【特許文献20】特開平5−107544号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ゾル−ゲル法の科学」、(株)アグネ承風社、1988年、155〜161ページ
【非特許文献2】T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p2013(1980))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶配向性に優れ且つ耐熱性および耐光性が高く、特に高温環境下、高強度の光照射によっても電圧保持率の低下が少なく、電気特性に優れる液晶配向膜を形成することができ、しかも保存安定性が良好な液晶配向剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、耐熱性、耐光性および電気特性に優れ、液晶配向膜の形成にあたって光配向法を採用した場合にあってはプレチルト角の経時的安定性に優れる液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
Si−X’結合(ただしX’は液晶配向能を有する構造を含む基である。)およびSi−X結合(ただしXはエポキシ構造を含む基である。)を有するポリオルガノシロキサン(A)、ならびに
分子内にカルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造およびカルボン酸のt−ブチルエステル構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を2個以上有する化合物(B)
を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向性に優れ且つ耐熱性および耐光性が高く、特に高温環境下、高強度の光照射によっても電圧保持率の低下が少なく、電気特性に優れる液晶配向膜を形成することができ、しかも保存安定性に優れる。
かかる本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、耐熱性、耐光性および電気特性に優れ、液晶配向膜の形成にあたって光配向法を採用した場合であってもプレチルト角の経時的安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液晶配向剤は、少なくとも上記の如きポリオルガノシロキサン(A)および化合物(B)を含有する。
<ポリオルガノシロキサン(A)>
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)は、Si−X’結合(ただしX’は液晶配向能を有する構造を含む基である。)およびSi−X結合(ただしXはエポキシ構造を含む基である。)を有するポリオルガノシロキサンである。
上記の基X’における液晶配向能を有する構造としては、例えばステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基および炭素数1〜20のフルオロアルコキシル基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基から選択される少なくとも一種を含む構造であることが好ましい。
上記ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基としては炭素数17〜30のものが好ましい。その具体例としては、例えばコレスタン−3−イル基、コレスタ−5−エン−3−イル基、コレスタ−24−エン−3−イル基、コレスタ−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜20のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ステアリル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数は4〜20であることが好ましい。
上記炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基としては、例えばn−プロピルシクロヘキシル基、n−ブチルシクロヘキシル基、n−ペンチルシクロヘキシル基、n−ヘキシルシクロヘキシル基、n−ヘプチルシクロヘキシル基、n−オクチルシクロヘキシル基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基としては、例えばトリフルオロメチルシクロヘキシル基などを;
上記炭素数1〜20のフルオロアルコキシル基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基としては、例えば4,4,4−トリフルオロブトキシシクロヘキシル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペントキシシクロヘキシル基などを、それぞれ挙げることができる。
上記液晶配向能を有する構造が、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基および炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基よりなる群から選択される少なくとも一種のほかに、さらに下記式(X’−1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式(X’−1)中、mは0〜4の整数である。)
で表される構造を含むものである場合、得られる液晶配向剤は光配向法によって液晶配向膜とすることができることとなる。上記式(X’−1)におけるmとしては、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
上記の基Xにおける「エポキシ構造」とは1,2−エポキシ構造を意味する。
上記の基Xとしては、例えば下記式(X−1’)または(X−2’)
【0014】
【化42】

【0015】
(式(X−1’)および(X−2’)中、sは0〜3の整数であり、tは1〜6の整数であり、uは0〜2の整数であり、vは0〜6の整数であり、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
で表される基を挙げることができ、
特に好ましくは、下記式(X−1)または(X−2)
【0016】
【化2】

【0017】
(式(X−1)および(X−2)中、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
で表される基である。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)中の基X’の割合としては、基X’および基Xの合計に対して、10〜90モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることが好ましく、特に25〜75モル%であることが好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000〜100,000であり、さらに7,000〜50,000であることが好ましい。
このようなポリオルガノシロキサン(A)は、例えばSi−X結合(ただしXはポリオルガノシロキサン(A)におけるXと同義である。)を有するポリオルガノシロキサン(以下、「エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン」という。)と、
カルボキシル基および水酸基よりなる群から選択される少なくとも一種の基ならびに液晶配向能を有する構造を有する化合物(以下、「化合物a」ともいう。)と
の反応生成物であることができる。
【0018】
エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜100,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、さらに1,000〜5,000であることが好ましい。
上記の基Xは、ポリオルガノシロキサン(A)における基Xと同様に、上記式(X−1)または(X−2)で表される基であることが特に好ましい。
このようなエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物、あるいはエポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水および触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合することにより合成することができる。
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される一種以上を用いることが好ましい。
【0019】
上記他のシラン化合物としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
【0020】
ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、
【0021】
(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシランなどのケイ素原子を1個有するシラン化合物のほか、
【0022】
商品名で、例えばKC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業(株)製);
グラスレジン(昭和電工(株)製);SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー(株)製);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ(株)製);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学(株)製);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製);GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工(株)製)などの部分縮合物を挙げることができる。
【0023】
これらの他のシラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランおよびジメチルジエトキシシランよりなる群から選択される一種以上が好ましい。
上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、そのエポキシ当量が100〜10,000g/モルであることが好ましく、150〜1,000g/モルであることがより好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたっては、エポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の範囲となるように調整して設定することが好ましい。
【0024】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレンなどを;
上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部、より好ましくは50〜1,000重量部である。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モル、より好ましくは1〜30倍モルである。
【0025】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを用いることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0026】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物または有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物または有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環などの副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと桂皮酸誘導体との反応物を含有する本発明の液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、非特許文献1(「ゾル−ゲル法の科学」、(株)アグネ承風社、1988年、154〜161ページ)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いると、ランダム構造またはかご型構造の如き三次元的な構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないことによりシラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合にはシラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
上記触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
【0027】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の加水分解または加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴などにより加熱することにより実施することが好ましい。
加水分解・縮合反応時には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱することが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液などを用いて洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブスなどの乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01、DMS−E12、DMS−E21、EMS−32(以上、チッソ(株)製)などを挙げることができる。
【0028】
上記化合物aは、カルボキシル基および水酸基よりなる群から選択される少なくとも一種の基ならびに液晶配向能を有する構造を有する化合物である。化合物aにおける「水酸基」とは、アルコール性水酸基のほか、フェノール性水酸基をも含む概念である。
化合物aとして好ましくは、下記式(a−1)
R−Z (a−1)
(式(a−1)中、Rは液晶配向能を有する構造を含む基であり、Zはカルボキシル基または水酸基である。)
で表される化合物である。
化合物aは、化合物a中の基Zが上記エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサン中の基Xと反応して結合基を形成することによりポリオルガノシロキサン(A)中の基X’を導く化合物であり、従ってRの液晶配向能を有する構造の内容はポリオルガノシロキサン(A)の基X’における液晶配向能を有する構造の内容と同様に理解することができる。また、基Rに、基Zと基Xとが反応して形成された結合基を加えたものが基X’となることは、当業者には自明であろう。
上記式(a−1)におけるZとしては、カルボキシル基であることが好ましい。
以下、好ましい化合物aの態様につき、説明する。
Rが(従ってX’が)ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基のほかに、上記式(X’−1)で表される構造を含む場合の化合物aとしては、例えば下記式(A−1)〜(A−8)のそれぞれで表される化合物が好ましい。
【0029】
【化4】

【0030】
(式(A−1)中、Rはステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基もしくはシクロヘキシル基であるか、または炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基もしくは炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基であり、
は単結合、酸素原子、硫黄原子、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−COO−、−NHCO−、−CONH−または−CO−であり、Xは単結合または下記式(X−1)〜(X−6)
【0031】
【化5】

【0032】
(上記式中、「*」はこれを付した結合手がX側であることを示す。)
のいずれかで表される基であり、
は単結合、フェニレン基、−O−(CH−、−O−(CH−CO−、
【0033】
【化6】

【0034】
、または−(CH−OCO−(CH−(ただし、aは、それぞれ独立に、1〜6の整数であり、「*」はこれを付した結合手が−CH=CH−CO−側であることを示す。)で表される基であり、
Zは上記式(a−1)におけるZと同義であり、
ただし、隣接する2つの結合がいずれも単結合であるときには、これらをまとめて一本の単結合であるものとする。)
【0035】
【化7】

【0036】
(式(A−2)中、RおよびZは、それぞれ、上記式(A−1)におけるRおよびZと同義であり、
は単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−または−CO−(以上において、「*」はこれを付した結合手がR側であることを示す。)であり、
は単結合またはフェニレン基であり、
は単結合または下記式(X−1)
【0037】
【化8】

【0038】
(式(X−1)中、「*」はこれを付した結合手がX側であることを示す。)
で表される基であり、
は単結合、−CO−、−OCO−(CH−、−OCO−(CH−CO−、−O−(CH−または
【0039】
【化9】

【0040】
(以上において、aは1〜6の整数であり、「*」はこれを付した結合手がX側であることを示す。)であり、ただし、隣接する2つの結合がいずれも単結合であるときには、これらをまとめて一本の単結合であるものとする。)
【0041】
【化10】

【0042】
(式(A−3)中、RおよびZは、それぞれ、上記式(A−1)におけるRおよびZと同義であり、Xは単結合または−O−(CH−(ただし、aは1〜6の整数であり、「*」はこれを付した結合手が−CH=CH−CO−側であることを示す。)であり、mは0〜4の整数である。)
【0043】
【化11】

【0044】
(式(A−4)〜(A−6)中、RおよびZは、それぞれ、上記式(A−1)におけるRおよびZと同義であり、Xは、それぞれ、単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−または−CO−(以上において、「*」はこれを付した結合手がR側であることを示す。)であり、X10は、それぞれ、単結合、酸素原子、硫黄原子または−O−(CH(ただし、aは1〜6の整数であり、「*」はこれを付した結合手がZ側であることを示す。)である。)
【0045】
【化12】

【0046】
(式(A−7)および(A−8)中、RおよびZは、それぞれ、上記式(A−1)におけるRおよびZと同義であり、X11は、それぞれ、単結合、−(CH−COO−、−COO−(CH−または−O−(CH−O−(ただし、aは1〜6の整数であり、「*」はこれを付した結合手がZ側であることを示す。)である。)
ただし、上記式(A−1)〜(A−8)において、O−O結合またはα,β−ジケト構造ができるような置換基の組み合わせは許容されないものとする。
上記におけるRの炭素数2〜20のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数は4〜20であることが好ましい。
における炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基などを挙げることができる。
におけるステロイド骨格を有するRの1価の有機基としては、炭素数17〜30のものが好ましい。ステロイド骨格を有するRの具体例としては、例えばコレスタン−3−イル基、コレスタ−5−エン−3−イル基、コレスタ−24−エン−3−イル基、コレスタ−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基などを挙げることができる。
【0047】
かかる化合物aのさらに好ましい例としては、上記式(a−1)におけるZが−COOHである場合、上記式(A−1)で表される化合物として、例えば下記式(A−1−C1)〜(A−1−C22)のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A−2)で表される化合物として、例えば下記式(A−2−C1)〜(A−2−C5)のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A−3)で表される化合物として、例えば下記式(A−3−C1)または(A−3−C2)で表される化合物などを;
上記式(A−4)で表される化合物として、例えば下記式(A−4−C1)〜(A−4−C3)のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A−5)で表される化合物として、例えば下記式(A−5−C1)で表される化合物などを;
上記式(A−6)で表される化合物として、例えば下記式(A−6−C1)または(A−6−C2)で表される化合物などを;
上記式(A−7)で表される化合物として、例えば下記式(A−7−C1)で表される化合物などを;
上記式(A−8)で表される化合物として、例えば下記式(A−8−C1)または(A−8−C2)で表される化合物などを、それぞれ挙げることができる。
【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【化41】

【0050】
【化15】

【0051】
(上記において、Rは、それぞれ、上記式(A−1)〜(A−8)におけるのと同義であり、aは、それぞれ、1〜6の整数である。)
Rが上記式(X’−1)で表される構造を含む基である場合の化合物aの好ましい別の例としては、Zが−OHである場合、上記式(A−1)で表される化合物として、例えば下記式(A−1−O1)〜(A−1−O7)のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A−2)で表される化合物として、例えば下記式(A−2−O1)〜(A−2−O3)のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A−8)で表される化合物として、例えば下記式(A−8−O1)で表される化合物などを、それぞれ挙げることができる。
【0052】
【化16】

【0053】
(上記において、Rは、それぞれ、上記式(A−1)、(A−2)および(A−8)におけるのと同義である。)
一方、上記式(a−1)におけるRがステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基を有するが、上記式(X’−1)で表される構造を含まないものである場合の化合物aとしては、例えば下記式(A−9)〜(A−11)のそれぞれで表される化合物などが好ましい。
【0054】
【化17】

【0055】
(上記式中のRおよびZは、それぞれ、上記式(A−1)におけるRおよびZと同義であり、
式(A−10)および(A−11)におけるX12は、それぞれ、単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−(以上において、「*」はこれを付した結合手がR側であることを示す。)であり、
式(A−11)中のpは1または2である。)
Zが−COOHである上記式(A−9)で表される化合物の例としては、例えばn−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ラウリン酸、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−ステアリン酸、n−ノナデカン酸、n−エイコサン酸、テトラヒドロアビエチン酸、モノコレスタニルスクシネート、モノコレスタニルグルタレート、下記式(A−9−1)
F2h+1−C2i−COOH (A−9−1)
(式(A−9−1)中、hは1〜3の整数であり、iは3〜18の整数である。)
で表される化合物などを;
Zが−COOHである上記式(A−10)で表される化合物の例としては、例えば4−メチル安息香酸、4−エチル安息香酸、4−(n−プロピル)安息香酸、4−(n−ブチル)安息香酸、4−(n−ペンチル)安息香酸、4−(n−ヘキシル)安息香酸、4−(n−ヘプチル)安息香酸、4−(n−オクチル)安息香酸、4−(n−ノニル)安息香酸、4−(n−デシル)安息香酸、4−(n−ドデシル)安息香酸、4−(n−オクタデシル)安息香酸、4−(n−メトキシ)安息香酸、4−(n−エトキシ)安息香酸、4−(n−プロポキシ)安息香酸、4−(n−ブトキシ)安息香酸、4−(n−ペンチルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘキシルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘプチルオキシ)安息香酸、4−(n−オクチルオキシ)安息香酸、4−(n−ノニルオキシ)安息香酸、4−(n−デシルオキシ)安息香酸、4−(n−ドデシルオキシ)安息香酸、4−(n−オクタデシルオキシ)安息香酸、下記式(A−9−2)〜(A−9−4)
【0056】
【化18】

【0057】
(上記式中、jは5〜20の整数であり、kは1〜3の整数であり、mは0〜18の整数であり、nは1〜18の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを;
Zが−COOHである上記式(A−11)で表される化合物の具体例としては、例えば4−(n−ブチル)シクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ペンチル)シクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ブチル)ビシクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ペンチル)ビシクロヘキシルカルボン酸などを、それぞれ挙げることができる。
さらに、Zが−OHである上記式(A−9)で表される化合物の例としては、例えば1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノールなどを挙げることができる。
【0058】
上記式(A−1)〜(A−11)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ市販品として入手することができるか、あるいは有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成することができる。以下、Rがアルキル基である化合物を主に例にとって説明するが、Rがアルキル基以外の化合物についてもこれと同様にして、あるいはこれに準ずる方法によって合成できることは、当業者には容易に理解されよう。
例えば上記式(A−1−C1)で表される化合物は、例えばヒドロキシ桂皮酸とRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下で加熱して反応させた後、水酸化ナトリウムなどの適当なアルカリ水溶液で加水分解することにより得ることができる。
上記式(A−1−C2)で表される化合物は、例えばヒドロキシ桂皮酸とRに相当するアルキル基を有するアルキルカルボン酸クロリドとを炭酸カリウムなどの適当な塩基存在下で0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
上記式(A−1−C4)で表される化合物は、例えばヒドロキシ安息香酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルまたはトシル化アルキルとを炭酸カリウムなどの適当な塩基存在下で室温〜100℃の温度で反応させた後、水酸化ナトリウムなどの適当なアルカリ水溶液で加水分解し、さらにこれを塩化チオニルにより酸クロリドとした後、これを炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
上記式(A−1−C5)で表される化合物は、例えばヒドロキシ安息香酸とRに相当するアルキル基を有するアルキルカルボン酸クロリドとをトリエチルアミンなどの適当な塩基存在下で0℃〜室温の温度で反応させた後、塩化チオニルにより酸クロリドとし、これを炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
【0059】
上記式(A−1−C6)で表される化合物は、例えば4−アルキル安息香酸を塩化チオニルにより酸クロリドとし、これを炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
上記式(A−1−C7)で表される化合物は、例えば4−ヒドロキシシクロヘキシルカルボン酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを水素化ナトリウムまたは金属ナトリウムなどの適当なアルカリの存在下で反応させてエーテルとした後、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液で加水分解し、さらに塩化チオニルで酸クロリドとした後、これを炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
上記式(A−1−C8)で表される化合物は、例えばRに相当するアルキル基を有する4−アルキルシクロヘキシルカルボン酸を塩化チオニルにより酸クロリドとしたものを、炭酸カリウムなどの適当な塩基存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得ることができる。
上記式(A−1−C9)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとヒドロキシベンズアルデヒドを炭酸カリウムなどの塩基存在下で反応させてエーテル結合を形成した後、4−アセチル安息香酸を水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得ることができる。上記式(A−1−C10)〜(A−1−C15)のそれぞれで表される化合物もこれに準じた方法により得ることができる。
【0060】
上記式(A−2−C1)で表される化合物は、例えば4−ヨードフェノールとRに相当するアルキル基を有するアルキルアクリレートとを、パラジウムおよびアミンを触媒として反応(一般に「Heck反応」と呼ばれる。)させた後、反応生成物に無水こはく酸または無水グルタル酸などの所望の環状酸無水物を開環付加することにより得ることができる。
上記式(A−2−C2)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ホルミル安息香酸を水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得ることができる。上記式(A−2−C3)で表される化合物もこれに準じた方法により得ることができる。
上記式(A−2−C4)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ヒドロキシベンズアルデヒドを水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得ることができる。上記式(A−2−C5)で表される化合物もこれに準じた方法により得ることができる。
上記式(A−3−C1)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するアクリル酸エステルと4−ブロモ桂皮酸をパラジウム触媒を用いて得る方法(一般にHeck反応という)で得ることができる。これに準じた方法により(上記式(A−3−C2)で表される化合物も得ることができる。
上記式(A−4−C1)で表される化合物は、例えばRがアルキル基である場合には、Rに相当するアルキル基を有するアルキルこはく酸無水物と4−アミノ桂皮酸とを、酢酸中における還流下またはトリエチルアミンなどの適当な塩基触媒の存在下にトルエンもしくはキシレン中における還流下で反応させる方法により得ることができ、
がフルオロアルキル基である場合には、無水マレイン酸をp−トルイジンなどの適当な保護基で保護した後、Rに相当するフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルヨージドとのグリニャール反応によりカップリングした後、加水分解により脱保護し、脱水閉環を行った後、4−アミノ桂皮酸と反応させる方法により得ることができる。
【0061】
上記式(A−4−C2)で表される化合物は、例えば以下の2つのルートのいずれかにより合成することができる。
第一のルートとして、無水マレイン酸をp−トルイジンなどの適当な保護基で保護し、これにRに相当するアルキル基を有するアルコールを炭酸カリウムとの適当な塩基存在下でマイケル付加した後、加水分解により脱保護し、さらに脱水閉環を行い、その生成物を上記式(A−4−C1)で表される化合物の合成におけるのと同様にして4−アミノ桂皮酸と反応させる方法を挙げることができる。
第二のルートとして、リンゴ酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを例えば酸化銀の存在下で反応させてエーテルとした後、加水分解し、さらに脱水閉環を行い、その生成物を上記式(A−4−C1)で表される化合物の合成におけるのと同様にして4−アミノ桂皮酸と反応させる方法を挙げることができる。
上記式(A−4−C3)で表される化合物は、例えばRに相当するアルキル基を有するアルコールの代わりにRに相当するアルキル基を有するチオールを使用するほかは上記式(A−4−C2)で表される化合物の合成における第一のルートと同様にして得ることができる。
上記式(A−5−C1)で表される化合物は、例えば1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン無水物を塩化チオニルで酸クロリドとした後、Rに相当するアルキル基を有するアルコールとトリエチルアミンなどの適当な塩基の存在下で反応させてエステル化し、その生成物を上記式(A−4−C1)で表される化合物の合成におけるのと同様にして4−アミノ桂皮酸と反応させることにより得ることができる。
【0062】
上記式(A−6−C1)で表される化合物は、例えば所望の化合物に対応する化合物R−OHと無水トリメリット酸ハライドとを反応させて中間体であるエステル化合物を合成し、次いでこのエステル化合物と4−アミノ桂皮酸とを反応させることにより合成することができる。中間体エステル化合物の合成は、好ましくは適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下に行われる、ここで使用できる溶媒としては例えばテトラヒドロフランなどを、塩基性化合物としては例えばトリエチルアミンなどを、それぞれ挙げることができる。エステル化合物と4−アミノ桂皮酸との反応は、例えば両者を酢酸中で還流する方法、両者をトルエンまたはキシレン中で適当な触媒(例えば硫酸などの酸触媒またはトリエチルアミンなどの塩基触媒)の存在下に還流する方法などを挙げることができる。
上記式(A−6−C2)で表される化合物は5−ヒドロキシフタル酸を例えばジエチルベンゼン中で還流させて脱水閉環させて酸無水物とした後、4−アミノ桂皮酸と上述と同様の方法で反応させて第一中間体であるイミド化合物を合成し、次いでこのイミド化合物と所望の化合物に対応する化合物R−X(ここで、Xはハロゲン原子である。)を反応させることにより合成することができる。このとき、好ましくは適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下に行われる。ここで使用できる溶媒としては例えばN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物などを、塩基性化合物としては例えば炭酸カリウムなどを、それぞれ挙げることができる。
上記式(A−7−C1)で表される化合物は、例えば4−ニトロ桂皮酸を、炭酸カリウムの存在下にRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルと反応させてエステルとし、そのニトロ基を例えば塩化スズにより還元してアミノ基とした後、その生成物を1,2,4−トリカルボキシシクロヘキシルシクロヘキサン無水物と反応させることにより得ることができる。後者の反応は、例えば原料化合物を酢酸中で還流する方法またはトリエチルアミンなどの適当な塩基触媒の存在下にトルエンもしくはキシレン中で還流する方法により行うことができる。これに準じた方法により、上記式(A−8−C1)で表される化合物も合成することができる。
上記式(A−8−C2)で表される化合物は、上記式(A−7−C1)で表される化合物の合成において、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキシルシクロヘキサン無水物の代わりにヒドロキシフタル酸を用いてイミド環を有する桂皮酸誘導体を合成した後、こはく酸無水物またはグルタル酸無水物と反応させることにより得ることができる。
【0063】
上記式(A−1−O1)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルと4−ヒドロキシベンズアルデヒドとを、炭酸カリウムなどの塩基存在下で反応させてエーテル結合を形成した後、4−ヒドロキシアセトフェノンを水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得ることができる。上記式(A−1−O2)〜(A−1−O7)で表される化合物も上記に準じた方法により得ることができる。
上記式(A−2−O1)で表される化合物は、例えば4−ヨードフェノールとRに相当するアルキル基を有するアルキルアクリレートとを、パラジウムおよびアミンを触媒として反応(一般に「Heck反応」と呼ばれる。)させることにより得ることができる。
上記式(A−2−O2)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ヒドロキシベンズアルデヒドとを、水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得ることができる。上記式(A−2−O3)で表される化合物も上記に準じた方法により得ることができる。
上記式(A−8−O1)で表される化合物は、例えば4−ニトロ桂皮酸を塩化チオニルにより酸クロリドとした後、Rに相当するアルキル基を有するアルコールと反応させてエステルとし、そのニトロ基を例えば塩化スズにより還元してアミノ基とした後、その生成物をヒドロキシフタル酸無水物と反応させることにより得ることができる。後者の反応は、例えば原料化合物を酢酸中で還流する方法またはトリエチルアミンなどの適当な塩基触媒の存在下にトルエンもしくはキシレン中で還流する方法により行うことができる。
【0064】
これらの化合物aのうち、好ましくは、
上記式(a−1)におけるRが上記式(X’−1)で表される構造を有するものとして上記式(A−1−C1)、(A−1−C3)、(A−1−C4)、(A−1−C6)〜(A−1−C8)、(A−1−C16)、(A−1−C19)、(A−1−C21)、(A−4−C1)、(A−4−C2)、(A−5−C1)および(A−7−C1)のそれぞれで表される化合物であり、
Rが上記式(X’−1)で表される構造を有さないものとしてn−ブタン酸、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ラウリン酸、n−ステアリン酸、4−n−オクタデシル安息香酸、4−n−ドデシル安息香酸、4−n−オクチル安息香酸、4−n−ヘキシル安息香酸、4−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−ドデシルオキシ安息香酸、4−n−オクチルオキシ安息香酸、4−n−ヘキシルオキシ安息香酸、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオール、モレコレスタニルスクシネートおよび下記式(A−9−3−1)〜(A−9−3−3)
【0065】
【化19】

【0066】
のそれぞれで表される化合物である。
本明細書においては、Rが上記式(X’−1)で表される構造を有さない化合物aを、以下、「他のプレチルト角発現性化合物」という。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)は、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンに由来するSi−X結合の一部が残存していることを要する。従って、両者の反応を行うに際しては、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンの有する基Xのモル数よりも少ないモル数の化合物aを使用することが好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を合成する際の化合物aの使用割合は、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンの有する基Xの1モルに対して、0.1〜0.9モルとすることが好ましく、0.2〜0.8モルとすることがより好ましく、さらに0.25〜0.75とすることが好ましい。
エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンと化合物aとの反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。かかる触媒としては、例えば有機塩基、またはエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0067】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンの如き3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;
【0068】
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルの如き有機リン化合物;
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム−o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物などのアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化剤促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤などの潜在性硬化促進剤などを挙げることができる。
【0069】
これらのうち、好ましくはテトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩である。
これらの触媒は、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。
上記ポリオルガノシロキサン(A)の合成反応は、必要に応じて有機溶剤の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物などを挙げることができる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる割合で使用される。
上記ポリオルガノシロキサン(A)は、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンと化合物aとを反応させて、エポキシ基の開環付加を利用してポリオルガノシロキサンに液晶配向性を有する基を導入するものである。この製造方法は簡便であり、しかも液晶配向能を有する構造の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
上記において、化合物aは、一種類のみを単独で使用してもよく、あるいは二種類以上の化合物aを混合して使用してもよい。この場合、上記式(X’−1)で表される基を有する化合物aの使用割合が、化合物aの全量に対して好ましくは50モル%以上である場合、かかるポリオルガノシロキサン(A)を含有する液晶配向剤は光配向法によって良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を形成することができる。
また、上記において、化合物aの有する基Zが−COOHである場合、化合物aの一部を他のカルボン酸で置き換えて反応を行ってもよい。この場合、他のカルボン酸の使用割合としては、化合物aと他のカルボン酸との合計に対して、50モル%以下であることが好ましい。
【0070】
<化合物(B)>
本発明における化合物(B)は、分子内にカルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造およびカルボン酸のt−ブチルエステル構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を2個以上有する化合物である。化合物(B)は、これらの構造のうちの同じ種類の構造を2個以上有する化合物であってもよく、これらの構造のうちの異なる種類の構造を合わせて2個以上有する化合物であってもよい。
上記カルボン酸のアセタールエステル構造を形成する基としては、下記式(B−1)および(B−2)
【0071】
【化20】

【0072】
(式(B−1)中、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10の脂環式基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基であり、
式(B−2)中、n1は2〜10の整数である。)
のそれぞれで表される基を挙げることができる。ここで、上記式(B−1)におけるRのアルキル基としてはメチル基が;
脂環式基としてはシクロヘキシル基が;
アリール基としてはフェニル基が;
アラルキル基としてはベンジル基が、それぞれ好ましく、
のアルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が;
脂環式基としては炭素数6〜10の脂環式基が;
アリール基としてはフェニル基が;
アラルキル基としてはベンジル基または2−フェニルエチル基が、それぞれ好ましく、
式(B−2)におけるn1としては、3または4であることが好ましい。
【0073】
上記式(B−1)で表される基としては、例えば1−メトキシエトキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニル基、1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−i−プロポキシエトキシカルボニル基、1−n−ブトキシエトキシカルボニル基、1−i−ブトキシエトキシカルボニル基、1−sec−ブトキシエトキシカルボニル基、1−t−ブトキシエトキシカルボニル基、1−シクロペンチルオキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、1−ノルボルニルオキシエトキシカルボニル基、1−ボルニルオキシエトキシカルボニル基、1−フェノキシエトキシカルボニル基、1−(1−ナフチルオキシ)エトキシカルボニル基、1−ベンジルオキシエトキシカルボニル基、1−フェネチルオキシエトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(メトキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(エトキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(n−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(i−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(フェノキシ)メトキシカルボニル基、(シクロヘキシル)(ベンジルオキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(メトキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(エトキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(n−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(i−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(フェノキシ)メトキシカルボニル基、(フェニル)(ベンジルオキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(メトキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(エトキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(n−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(i−プロポキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(フェノキシ)メトキシカルボニル基、(ベンジル)(ベンジルオキシ)メトキシカルボニル基などを;
上記式(B−2)で表される基としては、例えば2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基などを、それぞれ挙げることができる。これらのうち、1−エトキシエトキシカルボニル基、1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基などが好ましい。
上記カルボン酸のケタールエステル構造を形成する基としては、例えば、下記式(B−3)〜(B−5)
【0074】
【化21】

【0075】
(式(B−3)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、
式(B−4)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、n2は2〜8の整数であり、
式(B−5)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、n3は2〜8の整数である。)
のそれぞれで表される基を挙げることができる。ここで、上記式(B−3)におけるRのアルキル基としてはメチル基が好ましく、
のアルキル基としてはメチル基が;
脂環式基としてはシクロヘキシル基が
アリール基としてはフェニル基が;
アラルキル基としてはベンジル基が、それぞれ好ましく、
のアルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が;
脂環式基としては炭素数6〜10の脂環式基が;
アリール基としてはフェニル基が;
アラルキル基としてはベンジル基または2−フェニルエチル基が、それぞれ好ましく、
式(B−4)におけるRのアルキル基としてはメチル基が;
n2としては3または4であることが、それぞれ好ましく、
式(B−5)におけるRのアルキル基としてはメチル基が;
n3としては3または4であることが、それぞれ好ましい。
【0076】
上記式(B−3)で表される基としては、例えば1−メチル−1−メトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−エトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−i−プロポキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−n−ブトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−i−ブトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−sec−ブトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−t−ブトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−シクロペンチルオキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−ノルボルニルオキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−ボルニルオキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−フェノキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−(1−ナフチルオキシ)エトキシカルボニル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−フェネチルオキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−メトキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−エトキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−i−プロポキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−フェノキシエトキシカルボニル基、1−シクロヘキシル−1−ベンジルオキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−メトキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−エトキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−i−プロポキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−フェノキシエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−ベンジルオキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−メトキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−エトキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−n−プロポキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−i−プロポキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−フェノキシエトキシカルボニル基、1−ベンジル−1−ベンジルオキシエトキシカルボニル基などを;
【0077】
上記式(B−4)で表される基としては、例えば2−(2−メチルテトラヒドロフラニル)オキシカルボニル基、2−(2−メチルテトラヒドロピラニル)オキシカルボニル基などを;
上記式(B−5)で表される基としては、例えば1−メトキシシクロペンチルオキシカルボニル基、1−メトキシシクロヘキシルオキシカルボニル基などを、それぞれ挙げることができる。これらのうち、1−メチル−1−メトキシエトキシカルボニル基、1−メチル−1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基などが好ましい。
上記カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造を形成する基としては、例えば下記式(B−6)
【0078】
【化22】

【0079】
(式(B−6)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、n4は1〜8の整数である。)
で表される基を挙げることができる。ここで、上記式(B−6)におけるRのアルキル基としては炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0080】
上記式(B−6)で表される基としては、例えば1−メチルシクロプロポキシカルボニル基、1−メチルシクロブトキシカルボニル基、1−メチルシクロペントキシカルボニル基、1−メチルシクロへキシルオキシカルボニル基、1−メチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−メチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−メチルシクロノニロキシカルボニル基、1−メチルシクロデシロキシカルボニル基、1−エチルシクロプロポキシカルボニル基、1−エチルシクロブトキシカルボニル基、1−エチルシクロペントキシカルボニル基、1−エチルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−エチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−エチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロノニロキシカルボニル基、1−エチルシクロデシロキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)プロピルシクロデシロキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)ブチルシクロデシロキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)ペンチルシクロデシロキシカルボニル基、
【0081】
1−(イソ)ヘキシルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘキシルシクロデシロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)ヘプチルシクロデシロキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロプロポキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロブトキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロペントキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロヘキシロキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロヘプチロキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロオクチルオキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロノニロキシカルボニル基、1−(イソ)オクチルシクロデシロキシカルボニル基などを挙げることができる。
上記カルボン酸のt−ブチルエステル構造を形成する基とは、t−ブトキシカルボニル基である。
【0082】
本発明における化合物(B)としては、下記式(B)
R (B)
(式(B)中、Bは上記式(B−1)〜(B−5)のいずれかで表される基またはt−ブトキシカルボニル基であり、nが2であってRが単結合であるか、あるいはnが2〜10の整数であってRが炭素数3〜10の複素環化合物からn価の水素を除去して得られる基または炭素数1〜18のn価の炭化水素基である。)
で表される化合物が好ましい。nとしては、2または3であることが好ましい。
上記式(B)におけるRの具体例としては、nが2である場合として、単結合、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2,6−ナフタレニル基、5−ナトリウムスルホ−1,3−フェニレン基、5−テトラブチルホスホニウムスルホ−1,3−フェニレン基などを;
nが3である場合として、下記式
【0083】
【化23】

【0084】
で表される基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基などを、それぞれ挙げることができる。上記アルキレン基としては、直鎖のものが好ましい。
上記式(B)で表される化合物(B)は、有機化学の定法により、あるいは有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成することができる。
例えば上記式(B)における基Bが上記式(B−1)で表される基である化合物(ただし、Rがフェニル基である場合を除く。)は、好ましくはリン酸触媒の存在下で化合物R−(COOH)(ただし、Rおよびnは、それぞれ、上記式(B)におけるのと同義である。)および化合物R−O−CH=R’(ただし、Rは上記式(B)におけるのと同義であり、R’は上記式(B)における基Rの一位炭素から水素原子を除去して得られる基である。)を付加することにより合成することができる。
上記式(B)における基Bが上記式(B−2)で表される基である化合物は、好ましくはp−トルエンスルホン酸触媒の存在下で化合物R−(COOH)(ただし、Rおよびnは、それぞれ、上記式(B)におけるのと同義である。)および下記式
【0085】
【化24】

【0086】
(上記式中、n1は上記式(B−2)におけるのと同義である。)
で表される化合物を付加することにより合成することができる。
本発明の液晶配向剤における化合物(B)の使用割合としては、化合物(B)の有するカルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造およびカルボン酸のt−ブチルエステル構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造の合計モル数が、ポリオルガノシロキサン(A)の有するSi−X結合1モルに対して、0.1〜10モルとなる割合とすることが好ましく、0.4〜4モルとなる割合とすることがより好ましく、さらに1.5〜2モルとなる割合とすることが好ましい。従って、化合物(B)として上記式(B)で表される化合物を使用する場合、上記化合物(B)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の有するSi−X結合1モルに対して、0.1/n〜10/nモルとすることが好ましく、0.4/n〜4/nモルとすることがより好ましく、さらに1.5/n〜2/nモルとすることが好ましいこととなる。ただし以上において、nは上記式(B)におけるのと同義である。
本発明の液晶配向剤は、このような化合物(B)を含有することにより、耐熱性および耐光性に優れる液晶配向膜を形成しうるとともに保存安定性に優れることとなり、好ましい。
【0087】
<他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリオルガノシロキサン(A)および化合物(B)を必須の成分として含有する。
【0088】
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリオルガノシロキサン(A)および化合物(B)のほかに、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えばポリオルガノシロキサン(A)以外の重合体(C)(以下、「他の重合体(C)」という。)、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(ただし、上記ポリオルガノシロキサン(A)に該当するものを除く。以下「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物、硬化剤、硬化触媒、界面活性剤などを挙げることができる。
【0089】
上記他の重合体(C)は、本発明の液晶配向剤の溶液特性および得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために使用することができる。かかる他の重合体としては、例えばポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)、上記ポリオルガノシロキサン(A)以外のポリオルガノシロキサン(C2)(以下、「他のポリオルガノシロキサン(C2)」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0090】
{ポリアミック酸}
上記ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−84462に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0091】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、さらに、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0092】
ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0093】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、
【0094】
ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N−(2,4−ジアミノフェニル)−ピペリジンおよび下記式(D−1)
【0095】
【化43】

【0096】
(式(D−1)中、Xは炭素数1〜3のアルキル基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、xは0または1であり、yは0〜2の整数であり、zは1〜20の整数である。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−84462に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(D−1)におけるXは炭素数1〜3のアルキル基、−O−または−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基C2z+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜(D−1−4)
【0097】
【化44】

【0098】
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
上記式(D−1)において、xおよびyは同時には0にならないことが好ましい。
これらジアミンは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;
m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒などを挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%となるような量である。
【0099】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法などにより行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは再溶解後の溶液を水洗した後、該溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法などにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0100】
[ポリイミド]
上記ポリイミドは、上記の如くして得られたポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環することにより製造することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0101】
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0102】
[他のポリオルガノシロキサン(C2)]
上記他のポリオルガノシロキサン(C2)は、例えばアルコキシシラン化合物およびハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」ともいう。)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水および触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合することにより合成することができる。
ここで使用できる原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシランなどを挙げることができる。これらのうちテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシランまたはトリメチルエトキシシランが好ましい。
【0103】
他のポリオルガノシロキサンを合成する際に、任意的に使用することのできる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物もしくはエステル化合物またはその他の非プロトン性化合物を挙げることができる。これらは単独でまたは二種以上組合せて使用できる。
上記アルコール化合物としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール化合物の部分エーテルなどを、それぞれ挙げることができる。これらのアルコール化合物は、一種であるいは二種以上を組合せて使用してもよい。
【0104】
上記ケトン化合物としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョンなどのモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン化合物などを、それぞれ挙げることができる。これらのケトン化合物は、一種であるいは二種以上を組合せて使用してもよい。
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどを挙げることができる。これらアミド化合物は、一種であるいは二種以上を組合せて使用してもよい。
【0105】
上記エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどを挙げることができる。これらエステル化合物は、一種であるいは二種以上を組合せて使用してもよい。
上記その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンなどを挙げることができる。
これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテルまたはエステル化合物が特に好ましい。
【0106】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の割合としては、原料シラン化合物の有するアルコキシル基およびハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルであり、さらに1〜1.5モルとなる割合であることが好ましい。
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アンモニア、アルカリ金属化合物などを挙げることができる。
【0107】
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;
【0108】
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などを挙げることができる。
【0109】
上記有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などを挙げることができる。
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などを挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどを挙げることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。
これら触媒は、一種をあるいは二種以上を一緒に使用してもよい。
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸または無機酸が好ましく、より好ましくはチタンキレート化合物または有機酸である。
触媒の使用量は、原料シラン化合物100重量部に対して好ましくは0.001〜10重量部であり、より好ましくは0.001〜1重量部である。
他のポリオルガノシロキサン(C2)の合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中またはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的または連続的に添加することができる。
触媒は、原料であるシラン化合物中またはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、あるいは添加される水中に溶解または分散させておいてもよい。
他のポリオルガノシロキサン(C2)の合成の際の反応温度としては、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0110】
[他の重合体(C)の使用割合]
本発明の液晶配向剤が、前述のポリオルガノシロキサン(A)とともに他の重合体(C)を含有するものである場合、他の重合体の含有割合としては、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して10,000重量部以下であることが好ましい。他の重合体(C)のより好ましい含有割合は、他の重合体の種類により異なる。
本発明の液晶配向剤が、ポリオルガノシロキサン(A)ならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)を含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対するポリアミック酸およびポリイミドの合計量として200〜5,000重量部である。
一方、本発明の液晶配向剤が、ポリオルガノシロキサン(A)および他のポリオルガノシロキサン(C2)を含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対する他のポリオルガノシロキサン(C2)の量として100〜2,000重量部である。
本発明の液晶配向剤が、ポリオルガノシロキサン(A)とともに他の重合体(C)を含有するものである場合、他の重合体(C)の種類としては、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)、または他のポリオルガノシロキサン(C2)であることが好ましい。他の重合体(C)としては、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)であることが特に好ましい。
【0111】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性をより向上する観点から、本発明の液晶配向剤に含有されることができる。かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計(ポリオルガノシロキサン(A)および他の重合体(C)の合計をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有するものである場合、エポキシ基の架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどの塩基触媒を併用してもよい。
【0112】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができ、さらに特許文献17(特開昭63−291922号公報)に記載されている、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物などを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
【0113】
[硬化剤、硬化触媒]
上記硬化剤および硬化触媒は、それぞれ、ポリオルガノシロキサン(A)の架橋をより強固とし、液晶配向膜の強度をより高める目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができる。本発明の液晶配向剤が硬化剤を含有する場合には、さらに硬化促進剤を併用してもよい。
上記硬化剤としては、エポキシ基の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。かかる硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸を用いることができる。多価カルボン酸無水物の具体例としてはシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸などが挙げられる。また、シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメンなどの共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸のほか、ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物として上記に例示した化合物などを挙げることができる。
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物や4級リン化合物、4級アミン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物、
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物などのアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記4級フォスフォニウム塩などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤などの潜在性硬化促進剤を挙げることができる。
上記硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物およびアルミニウムトリスアセチルアセトナートなどを用いることができる。
[界面活性剤]
上記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤などを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
【0114】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上述の通り、ポリオルガノシロキサン(A)および化合物(B)を必須成分として含有し、そのほかに必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、ポリオルガノシロキサン(A)および化合物(B)ならびに任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく使用することのできる好ましい有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体(C)の種類により異なる。
本発明の液晶配向剤がポリオルガノシロキサン(A)ならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)を含有するものである場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。これら有機溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
一方、本発明の液晶配向剤が、重合体としてポリオルガノシロキサン(A)のみを含有するものである場合、またはポリオルガノシロキサン(A)および他のポリオルガノシロキサン(C2)を含有するものである場合における好ましい有機溶剤としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミルなどが挙げられる。この中で好ましくは、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルなどを挙げることができる。
【0115】
本発明の液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無およびその種類に従い、上記した有機溶媒の一種または二種以上を組み合わせて得られるものであって、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、且つ液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃であり、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0116】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する。
本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成する方法は、本発明における液晶配向性ポリオルガノシロキサンの合成に使用される化合物aの有する液晶配向能を有する構造が(従って、ポリオルガノシロキサン(A)の基X’における液晶配向能を有する構造が)上記式(X’−1)で表される構造を有するか否かによって異なる。
ポリオルガノシロキサン(A)が上記式(X’−1)で表される構造を有さない場合には、本発明の液晶配向剤を基板上に塗付して塗膜を形成し、必要に応じてラビング処理を施すことにより、液晶配向膜とすることができる。
一方、ポリオルガノシロキサン(A)が上記式(X’−1)で表される構造を有するものである場合には、本発明の液晶配向剤を基板上に塗付して塗膜を形成し、次いでこの塗膜に放射線を照射することにより液晶配向膜とすることができる。
【0117】
[ポリオルガノシロキサン(A)が上記式(X’−1)で表される構造を有さない場合]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法によりそれぞれ塗布する。そして、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
上記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックなどからなる透明基板を用いることができる。
【0118】
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
本発明の液晶配向剤を垂直配向型液晶表示素子用の液晶配向膜の形成に用いる場合、上記のようにして形成された塗膜は、これをそのまま垂直配向型液晶表示素子用の液晶配向膜として用いることができるが、この塗膜面に対して任意的にラビング処理を施してもよい。一方、本発明の液晶配向剤を水平配向型液晶表示素子用の液晶配向膜の形成に用いる場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより、液晶配向膜とすることができる。
上記ラビング処理は、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより、行うことができる。この場合、形成された液晶配向膜に対し、例えば特許文献18(特開平6−222366号公報)、特許文献19(特開平6−281937号公報)などに示されているように、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによってプレチルト角を変化させる処理をほどこしてもよく、または特許文献20(特開平5−107544号公報)に示されているように、形成された液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去し、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにする処理を行うことによって、得られる水平型液晶表示素子の視界特性を改善してもよい。
【0119】
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0120】
前記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶などを用いることができる。TN型液晶セルまたはSTN型液晶セルを有する液晶表示素子を製造する場合、ネマティック型液晶のうち正の誘電異方性を有するもの(ポジ型の液晶)が好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが用いられる。これら液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名C−15、CB−15(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、さらに添加して使用してもよい。
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、ネマティック型液晶のうち負の誘電異方性を有するもの(ネガ型の液晶)が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などが用いられる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【0121】
[ポリオルガノシロキサン(A)が上記式(X’−1)で表される構造を有する場合]
この場合、上記ポリオルガノシロキサン(A)が上記式(X’−1)で表される構造を有さない場合における液晶配向膜の製造方法において、ラビング処理の代わりに放射線の照射処理を行うことにより、液晶表示素子を製造することができる。
上記放射線照射処理に使用される放射線としては、直線偏光もしくは部分偏光された放射線または無偏光の放射線を使用することができ、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線または可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10〜3,000J/mである。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下、特に500J/m以下であっても良好な液晶配向性を付与することができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
【0122】
本発明の液晶表示素子は、垂直配向型の液晶表示素子であることが好ましい。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、耐熱性、耐光性および電気特性に優れ、液晶配向膜の形成にあたって光配向法を採用した場合であってもプレチルト角の経時的安定性に優れるものである。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の実施例において重量平均分子量は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
エポキシ当量は、JIS C2105の“塩酸−メチルエチルケトン法”に準じて測定した。
以下の合成例は、必要に応じて下記の合成スケールで繰り返すことにより、以降の合成例および実施例で使用する必要量の生成物を確保した。
【0124】
<エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンの合成>
合成例1
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500gおよびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去することにより、ポリオルガノシロキサンEPS−1を粘調な透明液体として得た。
このポリオルガノシロキサンEPS−1について、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
このポリオルガノシロキサンEPS−1のMwは2,200、エポキシ当量は186であった。
<化合物aの合成>
合成例a−1
下記スキーム1
【0125】
【化31】

【0126】
に従って、化合物(A−1−C1−1)を合成した。
1Lのナス型フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304gおよびN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン166gを加えて100℃で5時間撹拌した。その後、減圧にて溶剤を留去した。ここに、水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールで再結晶することにより、化合物(A−1−C1−1)の白色結晶を80g得た。
合成例a−2
下記スキーム2
【0127】
【化32】

【0128】
に従って、化合物(A−1−C4−1)を合成した。
1Lのナス型フラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、炭酸カリウム182.4gおよびN−メチル−2−ピロリドン320mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン99.7gを加え100℃で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(A−1−C4−1A)の白色結晶を104g得た。
この化合物(A−1−C4−1A)104gを反応容器にとり、これに塩化チオニル1LおよびN,N−ジメチルホルムアミド770μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。
次に、上記とは別の5L三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸74g、炭酸カリウム138g、テトラブチルアンモニウム4.8g、テトラヒドロフラン500mLおよび水1Lを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記の化合物(A−1−C4−1A)と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(A−1−C4−1)の白色結晶を90g得た。
合成例a−3
下記スキーム3
【0129】
【化33】

【0130】
に従って、化合物(A−1−C4−2)を合成した。
1Lのナス型フラスコに4−ヒドロキシ安息香酸メチル82g、炭酸カリウム166gおよびN,N−ジメチルアセトアミド400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、4,4,4−トリフルオロ−1−ヨードブタン95gを加え室温で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム32gおよび水400mLを加えて4時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(A−1−C4−2A)の白色結晶を80g得た。
この化合物(A−1−C4−2A)のうちの46.4gを反応容器にとり、これに塩化チオニル200mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド0.2mLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。
次に、上記とは別の2L三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸36g、炭酸カリウム55g、テトラブチルアンモニウム2.4g、テトラヒドロフラン200mLおよび水400mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記の化合物(A−1−C4−2A)と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(A−1−C4−2)の白色結晶を39g得た。
合成例a−4
下記スキーム4
【0131】
【化34】

【0132】
に従って、化合物(A−1−C8−1)を合成した。
すなわち、上記合成例a−2において、化合物(A−1−C4−1A)の代わりに4−ペンチル−トランスシクロヘキシルカルボン酸9.91gを用いたほかは、合成例a−2の化合物(A−1−C4−1)の合成と同様に実施することにより、化合物(A−1−C8−1)の白色結晶を13g得た。
合成例a−5
下記スキーム5
【0133】
【化35】

【0134】
に従って、化合物(A−1−C16−1)を合成した。
還流管、温度計および窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(A−1−C16−1A)31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mLおよびN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃において3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応液をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層につき、希塩酸で2回および水で3回、順次に分液洗浄を行った。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した後、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶することにより、化合物(A−1−C16−1)の結晶を15g得た。
合成例a−6
下記スキーム6
【0135】
【化36】

【0136】
に従って、化合物(A−1−C17−1)を合成した。
すなわち、化合物(A−1−C16−1A)の代わりに化合物(A−1−C17−1A)を36g用いたほかは、上記合成例a−5と同様に実施することにより、化合物(A−1−C17−1)を16g得た。
合成例a−7
下記スキーム7
【0137】
【化37】

【0138】
に従って、化合物(A−4−C1−1)を合成した。
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、デシルこはく酸無水物12g、4−アミノ桂皮酸8.2gおよび酢酸100mLを仕込み、2時間還流下に反応を行なった。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカカラムで精製を行い、さらにエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶を行うことにより、化合物(A−4−C1−1)の白色結晶(純度98.0%)を10g得た。
合成例a−8
上記合成例a−5において、化合物(A−1−C16−1A)の代わりに下記式で表される化合物(A−1−C16−2A)28gを用いたほかは合成例a−5と同様にして、下記式で表される化合物(A−1−C16−2)の結晶を14g得た。
【0139】
【化45】

【0140】
合成例a−9
下記スキーム8
【0141】
【化46】

【0142】
に従って、化合物(A−9−4−1)を合成した。
還流管および窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、β−コレスタノール39g、こはく酸無水物20g、N,N−ジメチルアミノピリジン1.5g、酢酸エチル200mLおよびトリエチルアミン17mLを仕込み、8時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にテトラヒドロフラン200mLを加えて得た有機層につき、1N塩酸水で2回および水で3回、順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を除去して得た固体を酢酸エチルから再結晶することにより、化合物(A−9−4−1)の白色結晶を38g得た。
【0143】
<ポリオルガノシロキサン(A)の合成>
合成例VE−1
200mLの三口フラスコに、上記合成例1で合成したポリオルガノシロキサンEPS−1の10.0g、メチルイソブチルケトン30.28g、ステアリン酸3.82g(ポリオルガノシロキサンEPS−1の有するエポキシ基に対して50モル%に相当する。)およびUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製の、エポキシ化合物の硬化促進剤である。)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にメタノールを加えて沈殿を生成させ、この沈殿物を酢酸エチルに溶解して得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、ポリオルガノシロキサンS−VE−1の白色粉末8.1gを得た。S−VE−1の重量平均分子量は10,100であった。
合成例VE−2
上記合成例VE−1において、ステアリン酸の代わりに4−n−ドデシルオキシ安息香酸3.98gを用いたほかは合成例VE−1と同様にして実施し、ポリオルガノシロキサンS−VE−2の白色粉末9.0gを得た。S−VE−2の重量平均分子量は9,900であった。
【0144】
合成例CE−1
200mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たポリオルガノシロキサンEPS−1の5.0g、メチルイソブチルケトン46.4g、化合物aとして上記合成例a−2で得た化合物(A−1−C4−1)4.76g(ポリオルガノシロキサンEPS−1の有するエポキシ基に対して50モル%に相当する。)およびテトラブチルアンモニウムブロミド0.10gを仕込み、80℃で8時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、ポリオルガノシロキサンS−CE−1を白色粉末として2.8g得た。このポリオルガノシロキサンS−CE−1の重量平均分子量Mwは9,500であった。
合成例CE−2〜12
上記合成例CE−1において、化合物aとして化合物(A−1−C4−1)の代わりに第1表に記載した化合物を用いたほかは合成例CE−1と同様に実施することにより、各種のポリオルガノシロキサン(A)をそれぞれ合成した。ここで得た各ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwを第1表に合わせて示した。
第1表における化合物aの使用割合は、ポリオルガノシロキサンEPS−1の有するエポキシ基に対するモル%である。
なお、合成例CE−6〜8および12においては、化合物aをそれぞれ2種類ずつ使用した。
【0145】
【表1】

【0146】
<化合物(B)の合成>
合成例B−1
下記スキーム9
【0147】
【化38】

【0148】
に従って、化合物(B−1−1)を合成した。
還流管、温度計および窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコにトリメシン酸21g、n−ブチルビニルエーテル60gおよびリン酸0.09gを仕込み、50℃で30時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にヘキサン500mLを加えて得た有機層につき、1M水酸化ナトリウム水溶液で2回および水で3回、順次に分液洗浄した。その後、有機層から溶媒を留去することにより、化合物(B−1−1)を無色透明の液体として50g得た。
合成例B−2および3
上記合成例B−1において、トリメシン酸の代わりにイソフタル酸17gまたは下記式(B−1−3a)で表される化合物35gを使用したほかは合成例B−1と同様に実施することにより、下記式(B−1−2)で表される化合物45gおよび下記式(B−1−3)で表される化合物63gをそれぞれ得た。
【0149】
【化39】

【0150】
<他の重合体(C)の合成>
[ポリアミック酸の合成]
合成例PA−1
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン4,050gに溶解し、40℃で3時間反応させることにより、ポリアミック酸(PA−1)を10重量%含有する溶液4,400gを得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は170mPa・sであった。
合成例PA−2
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物86.3g(0.44モル)およびピロメリット酸二無水物96.0g(0.44モル)ならびにジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル191.0g(0.90モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,490gに溶解し、40℃で4時間反応させることにより、ポリアミック酸(PA−2)を20重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて10重量%とした溶液の粘度は43mPa・sであった。
[ポリイミドの合成]
合成例PI−1
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20.9g(0.093モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン9.2g(0.085モル)および下記式(D−2)
【0151】
【化40】

【0152】
で表される化合物4.9g(0.009モル)を、N−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応させることによりポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として溶液粘度を測定したところ、126mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン7.4gおよび無水酢酸9.5gを添加し110℃で4時間脱水閉環を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約54%のポリイミド(PI−1)を16.1重量%含有する溶液約210gを得た。
このポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は75mPa・sであった。
【0153】
合成例PI−2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20.0g(0.089モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン6.8g(0.063モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン3.6g(0.018モル)および上記式(D−2)で表される化合物4.7g(0.0090モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応させることにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度を測定したところ、2,200mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン10.5gおよび無水酢酸13.6gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約65%のポリイミド(PI−2)を20重量%含有する溶液約160gを得た。
合成例PI−3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.2g(0.086モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸5.2g(0.034モル)および下記式(D−3)
【0154】
【化47】

【0155】
で表されるジアミン25.5g(0.052モル)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、60℃で4時間反応させることにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度を測定したところ、1,450mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン250gを追加し、ピリジン10.2gおよび無水酢酸13.2gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約67%のポリイミド(PI−3)を20重量%含有する溶液約230gを得た。
合成例PI−4
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物21.3g(0.095モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸4.3g(0.029モル)、上記式(D−3)で表される化合物18.8g(0.038モル)および下記式(D−4)
【0156】
【化48】

【0157】
で表される化合物であるN−(2,4−ジアミノフェニル)−ピペリジン5.5g(0.029モル)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、60℃で4時間反応させることによりポリアミック酸20重量%を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度を測定したところ、900mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン250gを追加し、ピリジン11.29gおよび無水酢酸14.58gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約69%のポリイミド(PI−4)を20重量%含有する溶液約230gを得た。
【0158】
合成例PI−5
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.9g(0.10モル)ならびにジアミンとしてm−フェニレンジアミン6.7g(0.062モル)および上記式(D−4)で表される化合物20.4g(0.041モル)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、60℃で4時間反応させることにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度を測定したところ、1,200mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン250gを追加し、ピリジン12.12gおよび無水酢酸15.64gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約65%のポリイミド(PI−5)を20重量%含有する溶液約230gを得た。
【0159】
[他のポリオルガノシロキサン(C2)の合成]
合成例PS−1
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、テトラエトキシシラン20.8gおよび1−エトキシ−2−プロパノール28.2gを仕込み、60℃に加熱して攪拌した。ここに、容量20mLの別のフラスコに調製した、無水マレイン酸0.26gを水10.8gに溶解した無水マレイン酸水溶液を加え、60℃においてさらに4時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物から溶媒を留去し、残存物に1−エトキシ−2−プロパノールを加えて、再度濃縮することにより、ポリオルガノシロキサンPS−1を10重量%含有する溶液を得た。このポリオルガノシロキサンPS−1の重量平均分子量Mwを測定したところ、5,100であった。
【0160】
<液晶配向剤の調製および保存安定性の評価>
実施例VE−1
他の重合体(C)として上記合成例PA−1で合成したポリアミック酸PA−1を含有する溶液のPA−1に換算して1,000重量部に相当する量をとり、ここにポリオルガノシロキサン(A)として上記合成例VE−1で合成したポリオルガノシロキサンS−VE−1の100重量部および化合物(B)として上記合成例B−1で得た化合物(B−1−1)47重量部を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(重量比)、固形分濃度3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤A−VE−1を調製した。
この液晶配向剤A−VE−1につき、以下の方法および判定基準により保存安定性を評価したところ、液晶配向剤A−VE−1の保存安定性は「良」であった。
[保存安定性の評価方法(1)]
ガラス基板上に、スピンコート法により回転数を変量として液晶配向剤を塗布し、次いで200℃で60分加熱することにより塗膜を形成し、溶媒除去後の塗膜の膜厚が1,000Åとなる回転数を調べた。
次に、上記液晶配向剤の一部をとり、これを−15℃にて5週間保存した。保存後の液晶配向剤を目視で観察し、不溶物の析出が観察された場合には保存安定性「不良」と判定した。
5週間保存後に不溶物が観察されなかった場合には、さらにガラス基板上に、保存後の液晶配向剤を用いて保存前に膜厚が1,000Åとなった回転数のスピンコート法により塗布し、次いで200℃で60分加熱することにより塗膜を形成を形成し、溶媒除去後の膜厚を測定した。この膜厚が、1,000Åから10%以上ずれていた場合には保存安定性「不良」と判定し、膜厚のずれが10%未満であった場合を保存安定性「良」と判定した。
なお、上記塗膜の膜厚の測定は、KLA−Tencor社製の蝕針式段差膜厚計を用いて行なった。
【0161】
実施例VE−2〜4
ポリオルガノシロキサン(A)の種類ならびに化合物(B)の種類および量を第2表に記載の通りとしたほかは上記実施例VE−1と同様に実施して、液晶配向剤A−VE−2〜4をそれぞれ調製し、保存安定性を評価した。評価結果は第2表に示した。
実施例VE−5
上記合成例PS−1で合成したポリオルガノシロキサンPS−1を含有する溶液のPS−1に換算して500重量部に相当する量をとり、これに上記合成例VE−1で合成したポリオルガノシロキサンS−VE−1を100重量部および上記合成例B−2で合成した化合物(B−1−2)を43重量部加え、さらに1−エトキシ−2−プロパノールを加えて固形分濃度4.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤A−VE−5を調製した。
この液晶配向剤A−VE−5の保存安定性を、上記実施例VE−1と同様にして評価した。評価結果は第2表に示した。
【0162】
【表2】

【0163】
<垂直配向型液晶表示素子の製造および評価>
実施例VE−6
上記実施例VE−1で調製した液晶配向剤A−VE−1を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中で200℃で1時間加熱することにより、膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
さらに基板の外側両面に、偏光板を、2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、垂直配向型の液晶表示素子を製造した。
【0164】
[垂直配向型液晶表示素子の評価]
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子に5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を目視により観察した。
電圧OFF時にセルから光漏れが観察されず、且つ電圧印加時にセル駆動領域が白表示、それ以外の領域から光漏れがない場合を液晶配向性「良」とし、電圧OFF時にセルから光漏れが観察されるかまたは電圧ON時にセル駆動領域以外の領域から光漏れが観察された場合を液晶配向性「不良」として評価したところ、この液晶表示素子の液晶配向性は「良」であった。
(2)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子に対して、60℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。電圧保持率の測定装置は(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。電圧保持率が97%以上の場合を電圧保持率「良」として評価したところ、この液晶表示素子の電圧保持率は「良」であった
(3)耐熱性の評価
上記と同様にして製造した液晶表示素子につき、上記電圧保持率の評価と同様の条件で初期の電圧保持率を測定した。その後、120℃のオーブン内で1,000時間静置してから再度上記と同条件で電圧保持率を測定した。電圧保持率の値が初期値と比較して±2%未満であった場合を耐熱性「良」とし、±2%以上であった場合を耐熱性「不良」として評価したところ、この液晶表示素子の耐熱性は「良」であった。
(4)残像特性の評価
上記と同様にして製造した液晶表示素子につき、100℃の環境温度において直流17Vの電圧を20時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)を、フリッカー消去法により求めた。この残留DC電圧の値が500mV以下であった場合を耐熱性「良」、500mVを超えた場合を耐熱性「不良」として評価したところ、この液晶表示素子の残像特性は「良」であった。
【0165】
実施例VE−7〜10
実施例VE−6において、液晶配向剤としてそれぞれ第3表に示したものを使用したほかはそれぞれ実施例VE−6と同様にして垂直配向型液晶表示素子を製造して評価した。結果は第3表に示した。
【0166】
【表3】

【0167】
<液晶配向剤の調製および保存安定性の評価>
実施例CE−1
ポリオルガノシロキサン(A)として上記合成例CE−1で得たポリオルガノシロキサンS−CE−1の100重量部、他の重合体(C)として上記合成例PA−1で得たポリアミック酸PA−1を含有する溶液のPA−1に換算して2,000重量部に相当する量ならびに化合物(B)として上記合成例B−2で得た化合物(B−1−2)41重量部を合わせ、これにN−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加え、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(重量比)、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤A−CE−1を調製した。
この液晶配向剤A−CE−1につき、以下の方法および判定基準により保存安定性を評価したところ、液晶配向剤A−CE−1の保存安定性は「良」であった。
[保存安定性の評価方法(2)]
液晶配向剤を−15℃で6か月間保管した。保管の前および後に25℃においてE型粘度計により粘度を測定した。溶液粘度の保管前後の変化率が10%未満であった場合を保存安定性「良」、10%以上であった場合を保存安定性「不良」として評価した。
【0168】
実施例CE−2〜31
ポリオルガノシロキサン(A)の種類および他の重合体(C)の種類を、それぞれ第4表に記載の通りとしたほかは上記実施例CE−1と同様にして、液晶配向剤A−CE−2〜A−CE−31を、それぞれ調製した。実施例CE−30および31においては、他の重合体をそれぞれ2種類ずつ使用した。
これら液晶配向剤につき、実施例CE−1と同様にしてそれぞれ保存安定性を評価した。評価結果を第4表に示した。
【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
<垂直配向型液晶表示素子の製造および評価>
実施例CE−32
[垂直配向型液晶表示素子の製造]
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記実施例CE−1で調製した液晶配向剤A−CE−1をスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、且つ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型の液晶表示素子を製造した。
【0172】
[垂直配向型液晶表示素子の評価]
上記のようにして製造した液晶表示素子につき、上記実施例VE−6におけるのと同様にして(1)液晶配向性の評価および(3)耐熱性の評価を行ったほか、上記実施例VE−6におけるのと同様にして(2)電圧保持率を測定した。さらに、以下のようにしてプレチルト角の安定性の評価を行った。評価結果は表5に示した。
(5)プレチルト角の安定性の評価
上記のようにして製造した液晶表示素子につき、非特許文献2(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p2013(1980))に記載された方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した(初期プレチルト角)。
次いで初期プレチルト角測定後の上記液晶表示素子を、23℃において30日間静置した後、上記と同じ方法により再びプレチルト角を測定した(保存後プレチルト角)。
このとき、保存後プレチルト角の初期プレチルト角に対する変化量を調べた。この値が1°未満であった場合、プレチルト角の経時的安定性が「良」であるとした。
【0173】
実施例CE−33〜62
使用した液晶配向剤の種類を第5表に記載の通りとしたほかは、上記実施例CE−32と同様にして垂直配向型液晶表示素子をそれぞれ製造して評価した。結果は第5表に示した。
【0174】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−X’結合(ただしX’は液晶配向能を有する構造を含む基である。)およびSi−X結合(ただしXはエポキシ構造を含む基である。)を有するポリオルガノシロキサン(A)、ならびに
分子内にカルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、カルボン酸の1−アルキルシクロアルキルエステル構造およびカルボン酸のt−ブチルエステル構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を2個以上有する化合物(B)
を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
上記ポリオルガノシロキサン(A)中の基X’の割合が、基X’および基Xの合計に対して10〜90モル%である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記ポリオルガノシロキサン(A)が、
Si−X結合(ただしXはポリオルガノシロキサン(A)におけるXと同義である。)を有するポリオルガノシロキサンと、
カルボキシル基および水酸基よりなる群から選択される少なくとも一種の基ならびに液晶配向能を有する構造を有する化合物、ただしこの化合物の使用割合は基Xの1モルに対して0.1〜0.9モルである、と
の反応生成物である、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
基Xが、下記式(X−1’)または(X−2’)
【化42】

(式(X−1’)および(X−2’)中、sは0〜3の整数であり、tは1〜6の整数であり、uは0〜2の整数であり、vは0〜6の整数であり、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
で表される基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
基Xが、下記式(X−1)または(X−2)
【化2】

(式(X−1)および(X−2)中、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
で表される基である、請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
上記液晶配向能を有する構造が、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基および炭素数1〜20のフルオロアルコキシル基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基よりなる群から選択される少なくとも一種を含む構造である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
上記液晶配向能を有する構造が、さらに下記式(X’−1)
【化1】

(式(X’−1)中、mは0〜4の整数である。)
で表される構造を含む構造である、請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
さらに、ポリアミック酸およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の重合体(C1)を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
さらに、上記ポリオルガノシロキサン(A)以外のポリオルガノシロキサン(C2)を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
基板上に、請求項7に記載の液晶配向剤を塗布した後に加熱して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射することを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−256857(P2010−256857A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14320(P2010−14320)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】