説明

液晶配向剤

【課題】塗布性に優れ、長時間の連続印刷を行った場合でも重合体が析出せず、膜質が均一良好であり、一旦形成された配向膜の剥離が容易な液晶配向剤を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物と、式(A)


(式(A)中、Xは−O−または−COO−(「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合。)、Rはメチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数6〜18のアリーレン基、Rは炭素数1〜6のアルキル基、nは0〜2の整数。)で代表される特定の化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環したポリイミド群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、塗布性に優れ、形成される膜質が均一且つ良好であり、液晶配向膜製造の際の歩留まりに優れる液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、知られている液晶表示素子は、電極構造および使用する液晶分子の物性により、以下に示す各モードに分類することができる。
先ず、透明導電膜が設けられている基板表面に液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90°捻れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子(特許文献1)およびTN型液晶表示素子に比して高いデューティー比を実現することのできるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子(特許文献2)が知られている。さらに、TN型液晶表示素子と同様の対向電極配置をとり、しかし電極間隙内に負の誘電率異方性有するネマチック液晶の層を注入し、液晶を基板に対してほぼ垂直に配向させるVA(Vertical Alignment)型表示素子が知られている(特許文献3)。このVA型表示素子は、高コントラストであり、且つ大面積表示素子の製造が可能である。
一方、電極対を一枚の基板面内に櫛歯状に配置することにより、電界印加時の液晶の駆動方向を基板面内方向のみとするIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子(特許文献4)、IPS型の電極構造を変更し、表示素子部分の開口率を上げて輝度を向上したFFS(Fringe Field Switching)型液晶表示素子(特許文献5)が知られており、それぞれ、視野角特性に優れる。
さらにこれらのほか、視角依存性が少ないと共に映像画面の高速応答性に優れるOCB(Optical Compensated Bend:光学補償ベンド)型液晶表示素子(特許文献6)などが開発されている。
【0003】
これらの液晶表示素子における液晶配向膜の材料としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂材料が知られており、特にポリアミック酸またはポリイミドからなる液晶配向膜は耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などに優れており、多くの液晶表示素子に使用されている(特許文献1〜4、7および8)。このような液晶配向膜は、基板上に、液晶配向膜となる重合体を溶媒に溶解した状態で含有する液晶配向剤を塗布した後に溶媒を除去する工程を経て製造されるのが一般的である。
しかしながら、液晶配向膜の製造に際して従来知られている液晶配向剤を使用すると、形成される塗膜に印刷ムラやピンホールなどの印刷不良が一定の確率で生じ、液晶配向膜製造の際の製品歩留まりが不十分であることが指摘されている。例えばフレキソ印刷の場合、長時間の連続印刷を行うと、印刷機のアニロックスロール上に液晶配向剤に含まれる重合体が析出して印刷不良となる。かかる印刷不良は、液晶配向剤に含有される重合体の溶解性の不足に起因するものと考えられている。すなわち、液晶配向性能、耐熱性などの液晶配向膜として必要な諸特性を具備する重合体は、その分子中にどうしても剛直な構成部分を有さざるを得ないから汎用の有機溶媒に対する溶解性に劣ることとなり、そのため長時間の連続印刷を行った場合に有機溶媒がロールから徐々に蒸散して生ずる重合体の濃厚溶液状態において重合体分子同士の凝集が起こり、これにより重合体の析出が見られるものと考えられている。
【0004】
また、このような印刷不良が発生した場合、一旦形成した液晶配向膜を剥離剤によって剥離し、基板を再利用することによって資源の有効利用を図ることが行われているが、上記のような溶解性の低い重合体からなる液晶配向膜は、剥離性にも劣るためかかる運用は困難である。
当業界では、液晶配向膜としての性能の確保と溶媒に対する溶解性とを両立するべく、長年にわたって研究が継続されてはいるが、液晶配向膜製造における製品歩留まりには、未だに一定の限界が存在するのである。
そこで、印刷不良の発生確率が極めて低く、万が一印刷不良が発生した場合であっても一旦形成した液晶配向膜を容易に剥離することができる液晶配向剤が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開平11−258605号公報
【特許文献4】特開昭56−91277号公報
【特許文献5】特開2008−216572号公報
【特許文献6】特開2009−48211号公報
【特許文献7】米国特許第5,928,733号明細書
【特許文献8】特開昭62−165628号公報
【特許文献9】特開平6−222366号公報
【特許文献10】特開平6−281937号公報
【特許文献11】特開平5−107544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布性に優れ、長時間の連続印刷を行った場合であっても液晶配向剤に含まれる重合体が析出せず、形成される膜質が均一且つ良好であるとともに、一旦形成された液晶配向膜の剥離が容易である液晶配向剤を提供することにある。かかる液晶配向剤は、液晶配向膜製造の際の歩留まりに優れるものであるため、当業界に切望されている。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記目的は、
テトラカルボン酸二無水物と、下記式(A
【0008】
【化24】

【0009】
(式(A)中、Xは−O−または−COO−(以上において、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、Rはメチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数6〜18のアリーレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜4の整数であり、Zはカルボニル基または下記式(Z−1)
【0010】
【化25】

【0011】
(式(Z−1)中、RIIおよびRIIIは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される基である。)
で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、塗布性に優れ、長時間の連続印刷を行った場合であっても液晶配向剤に含まれる重合体が析出せず、形成される膜質が均一且つ良好であるとともに、一旦形成された液晶配向膜の剥離が容易である液晶配向剤を提供することにある。
かかる本発明の液晶配向剤は、均一且つ良好な膜質の液晶配向膜を高い製品歩留まりで製造することができるとともに、液晶表示素子製造の際の基板の歩留まりの向上にも貢献するものである。
従って、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、高品位の表示が可能であり、しかも安価であるため、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの種々の表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。
<ポリアミック酸>
[テトラカルボン酸二無水物]
上記ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、下記式(T−I)および(T−II)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、RおよびRは、それぞれ、芳香環を有する2価の有機基であり、RおよびRは、それぞれ、水素原子またはアルキル基であり、複数存在するRおよびRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
のそれぞれで表される化合物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(T−1)〜(T−4)
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
のそれぞれで表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物のベンゼン環は、一つまたは二つ以上の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)で置換されていてもよい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は一種単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記のうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、上記式(T−I)で表される化合物のうちの下記式(T−5)〜(T−7)
【0019】
【化5】

【0020】
のそれぞれで表される化合物および上記式(T−II)で表される化合物のうちの下記式(T−8)
【0021】
【化6】

【0022】
で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」という。)を含むものであることが、形成される液晶配向膜が良好な液晶配向性を発現することとなる観点から好ましい。
特定テトラカルボン酸二無水物としてより好ましくは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物および上記式(T−5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種であり、特に好ましくは2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物である。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、上記の如き特定テトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、50モル%以上含むものであることが好ましく、70モル%含むものであることがより好ましく、特に80モル%以上含むものであることが好ましい。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記の如き特定テトラカルボン酸二無水物のみを用いることが、最も好ましい。
【0023】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、上記式(A)で表される化合物を含むものである。
上記式(A)におけるRの炭素数2〜10のアルキレン基としては、炭素数2〜6の直鎖のアルキレン基であることが好ましい。Rの炭素数6〜18のアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基であることが好ましく、その具体例としては、例えば1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン4,4’−ジイル基、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル基などを挙げることができる。
上記式(A)におけるRとしては、炭素数2〜6の直鎖のアルキレン基であることが;
Zとしては、カルボニル基またはメチレン基であることが;
nとしては、0〜2の整数であることが、それぞれ好ましい。上記式(A)におけるジアミノフェニル基における二つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
このような上記式(A)で表される化合物の具体例としては、例えば1−[2−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[3−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−プロピル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[4−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ブチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[5−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ペンチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[6−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ヘキシル]−ピロリジン−2,5−ジオン、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 2−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−エチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 3−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 4−(2,55−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ブチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 5−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ペンチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 6−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ヘキシル エステル、
【0024】
1−[2−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[3−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−プロピル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[4−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ブチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[5−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ペンチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[6−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ヘキシル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[2−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−2−ピロリドン、1−[3−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−プロピル]−2−ピロリドン、1−[4−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ブチル]−2−ピロリドン、1−[5−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ペンチル]−2−ピロリドン、1−[6−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ヘキシル]−2−ピロリドン、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 2−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−エチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 4−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−ブチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 5−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−ペンチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 6−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−ヘキシル エステル、1−[2−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−2−ピロリドン、1−[3−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−プロピル]−2−ピロリドン、1−[4−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ブチル]−2−ピロリドン、1−[5−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ペンチル]−2−ピロリドン、1−[6−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−ヘキシル]−2−ピロリドンなどを挙げることができる。
上記式(A)で表される化合物としては、下記式(A)
【0025】
【化1】

【0026】
(式(A)中、X、RおよびRは、それぞれ、上記式(A)におけるのと同義であり、nは0〜2の整数である。)
で表される化合物であることが好ましく、上記式(A)においてnが0である化合物がより好ましく、特に1−[2−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[3−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−プロピル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[4−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ブチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[5−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ペンチル]−ピロリジン−2,5−ジオン、1−[6−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−ヘキシル]−ピロリジン−2,5−ジオン、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 2−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−エチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 3−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 4−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ブチル エステル、3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 5−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ペンチル エステルおよび3,5−ジアミノ−ベンゾイック酸 6−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−ヘキシル エステルよりなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
かかる上記式(A)で表される化合物は、有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより、合成することができる。
例えば上記式(A)においてXが−O−であり、nが0であり、ジアミノフェニル基が3,5−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームa〜c
【0027】
【化20】

【0028】
【化21】

【0029】
【化22】

【0030】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
上記スキームaで表される反応は、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンとジアリルアミンとを、好ましくは亜硫酸水素ナトリウムの存在下で反応させることにより行うことができる。この反応は、好ましくは5〜40℃の温度において、5〜15時間の反応時間で行われる。この反応により、中間体である化合物(A−1−1a)が得られる。
上記スキームbで表される反応は、所望の基Rを有する化合物(A−1a)と例えばp−クロロベンゼンスルホニルクロリドとを好ましくは適当な溶媒中で予め混合しておき、ここに適当な塩基(例えばトリエチルアミン)を徐々に加える方法により行うことができる。塩基の添加は、低温、例えば−5〜5℃、の温度において行うことが好ましい。その後、反応系を10〜30℃程度に加温してさらに2〜4時間程度反応を継続することにより、中間体化合物(A−1b)を得ることができる。
上記スキームcにおいて中間体化合物(A−1c)を得る反応は、上記の如くして得られた化合物(A−1−1a)と化合物(A−1b)とを、好ましくは水素化カリウムおよびテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下に、好ましくは−5〜5℃の温度において好ましくは8〜15時間反応させることにより行うことができる。かくして得られた化合物(A−1c)を、次いで脱アリルすることにより、目的物を得ることができる。脱アリル反応は、化合物(A−1c)を、好ましくは1、3−ジメチルバルビツル酸およびテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムの存在下で、好ましくは20〜40℃の温度において、好ましくは2〜6時間反応させることにより行うことができる。
上記式(A)においてXが−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、nが0であり、ジアミノフェニル基が3,5−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームd
【0031】
【化23】

【0032】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
所望の基Rを有する化合物(A−1a)と例えば3,5−ジニトロベンゾイルクロリドとを適当な有機溶媒中に溶解し、ここに適当な塩基(例えばトリエチルアミン)を徐々に加える方法により行うことができる。塩基の添加は、低温、例えば−5〜5℃、の温度において行うことが好ましい。その後、反応系を10〜30℃程度に加温してさらに2〜4時間程度反応を継続することにより、中間体化合物(A−1d)を得ることができる。次いで、適当な還元系、例えば亜鉛、塩化アンモニウムおよび水、によって化合物(A−1d)の有するニトロ基を還元(水素化)してアミノ基とすることにより、目的物を得ることができる。
上記式(A)においてXが−O−であり、nが0であり、ジアミノフェニル基が2,4−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームe
【0033】
【化26】

【0034】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
所望の基Rを有する化合物(A−1a)と2,4−ジニトロフルオロベンゼンとを適当な有機溶媒中に溶解し、ここに適当な塩基(たとえばトリエチルアミン)を加え、反応系を30〜50℃程度に加温して8〜15時間程度反応を行うことにより、中間体化合物(A−1e)を得ることができる。次いで、適当な還元系、例えば亜鉛、塩化アンモニウムおよび水、によって化合物(A−1d)の有するニトロ基を還元(水素化)してアミノ基とすることにより、目的物を得ることができる。
上記式(A)においてXが−O−であり、nが0であり、Zがメチレン基であり、ジアミノフェニル基が3,5−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームfおよびg
【0035】
【化27】

【0036】
【化28】

【0037】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
上記スキームfで表される反応は、所望の基Rを有する化合物(A−1f)と例えばp−クロロベンゼンスルホニルクロリドとを、好ましくは適当な溶媒中で予め混合しておき、ここに適当な塩基(例えばトリエチルアミン)を徐々に加える方法により行うことができる。塩基の添加は、低温、例えば−5〜5℃、の温度において行うことが好ましい。その後、反応系を10〜30℃程度に加温してさらに2〜4時間程度反応を継続することにより、中間体化合物(A−1g)を得ることができる。
上記スキームgにおいて中間体化合物(A−1h)を得る反応は、上記の如くして得られた化合物(A−1−1a)と化合物(A−1f)とを、好ましくは水素化カリウムおよびテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下に、好ましくは−5〜5℃の温度において好ましくは8〜15時間反応させることにより行うことができる。かくして得られた化合物(A−1h)を、次いで脱アリルすることにより、目的物を得ることができる。脱アリル反応は、化合物(A−1h)を、好ましくは1、3−ジメチルバルビツル酸およびテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムの存在下で、好ましくは20〜40℃の温度において、好ましくは2〜6時間反応させることにより行うことができる。
上記式(A)においてXが−COO−であり、Zがメチレン基であり、nが0であり、ジアミノフェニル基が3,5−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームh
【0038】
【化29】

【0039】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
所望の基Rを有する化合物(A−1f)と例えば3,5−ジニトロベンゾイルクロリドとを適当な有機溶媒中に溶解し、ここに適当な塩基(例えばトリエチルアミン)を徐々に加える方法により行うことができる。塩基の添加は、低温、例えば−5〜5℃、の温度において行うことが好ましい。その後、反応系を10〜30℃程度に加温してさらに2〜4時間程度反応を継続することにより、中間体化合物(A−1i)を得ることができる。次いで、適当な還元系、例えば亜鉛、塩化アンモニウムおよび水、によって化合物(A−1i)の有するニトロ基を還元(水素化)してアミノ基とすることにより、目的物を得ることができる。
さらに、上記式(A)においてXが−O−であり、Zがメチレン基であり、nが0であり、ジアミノフェニル基が2,4−ジアミノフェニル基である化合物は、例えば下記スキームi
【0040】
【化30】

【0041】
(上記スキーム中、Rは上記式(A)におけるのと同義である。)
に従って合成することができる。
所望の基Rを有する化合物(A−1j)と2,4−ジニトロフルオロベンゼンとを適当な有機溶媒中に溶解し、ここに適当な塩基(たとえばトリエチルアミン)を加え、反応系を30℃〜50℃程度に加温してさらに8〜15時間程度反応を継続することにより、中間体化合物(A−1k)を得ることができる。次いで、適当な還元系、例えば亜鉛、塩化アンモニウムおよび水、によって化合物(A−1k)の有するニトロ基を還元(水素化)してアミノ基とすることにより、目的物を得ることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、上記式(A)で表される化合物のみを用いてもよく、上記式(A)で表される化合物とその他のジアミンとを組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)メタン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、下記式(D−1)〜(D−5)
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
(式(D−4)中のyは2〜12の整数であり、式(D−5)中のzは1〜5の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などの芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチル−ベンジジン、および下記式(D−I)および(D−II)
【0046】
【化9】

【0047】
(式(D−I)中、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンよりなる群から選択される窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基であり、Xは2価の有機基であり;
式(D−II)中、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンよりなる群から選択される窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基であり、Xは、それぞれ、2価の有機基であり、複数存在するXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
のそれぞれで表される化合物などの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(D−III)
【0048】
【化10】

【0049】
(式(D−III)中、Rは−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−または−CO−であり、Rはステロイド骨格、トリフルオロメチルフェニル基トリフルオロメトキシフェニル基およびフルオロフェニル基よりなる群から選択される骨格もしくは基を有する1価の有機基または炭素数6〜30のアルキル基である。)
で表される化合物などのモノ置換フェニレンジアミン;
下記式(D−IV)
【0050】
【化11】

【0051】
(式(D−IV)中、Rは、それぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基であり、複数存在するRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、pは、それぞれ、1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
で表される化合物などのジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。上記芳香族ジアミン、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミンおよびモノ置換フェニレンジアミンの有するベンゼン環は、1つまたは2つ以上の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)で置換されていてもよい。また、上記式(D−III)におけるステロイド骨格とは、シクロペンタノ−ペルヒドロフェナントレン核からなる骨格またはその炭素−炭素結合の1つもしくは2つ以上が二重結合となった骨格をいう。
これらのジアミンは、単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるその他のジアミンとしては、上記のうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、上記式(D−1)〜(D−5)のそれぞれで表される化合物、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、上記式(D−I)で表される化合物のうちの下記式(D−6)
【0052】
【化12】

【0053】
で表される化合物、上記式(D−II)で表される化合物のうちの下記式(D−7)
【0054】
【化13】

【0055】
で表される化合物、上記式(D−III)で表される化合物のうちのドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、下記式(D−8)〜(D−15)
【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
【化16】

【0059】
のそれぞれで表される化合物および上記式(D−IV)で表される化合物のうちの1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種(以下、「他の特定ジアミン」という。)を用いることが好ましい。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、上記式(A)で表される化合物を、全ジアミンに対して、3モル%以上含むものであることが好ましく、5〜90モル%含むものであることがより好ましく、3〜70モル%含むものであることがさらに好ましく、特に8〜50モル%含むものであることが好ましい。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、上記式(A)で表される化合物のほかに、上記の如き他の特定ジアミンを含むものであることが好ましい。この場合における他の特定ジアミンの使用割合としては、全ジアミンに対して5モル%以上であることが好ましく、10〜97モル%であることがより好ましく、30〜95モル%含むものであることがさらに好ましく、特に50〜92モル%であることが好ましい。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、上記式(A)で表される化合物および他の特定ジアミンのみからなるものであることが好ましい。
【0060】
[ポリアミック酸の合成]
本発明におけるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させることにより得ることができる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ポリアミック酸の合成に際して使用することのできる有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
上記非プロトン性極性溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体としては、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンを;
【0061】
上記エステルとしては、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどを;
上記炭化水素としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒ならびにフェノールおよびその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される一種以上、または前期第一群の有機溶媒から選択される一種以上とアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素および炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒および第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに30重量%以下であることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程をさらに一回または数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0062】
<ポリイミド>
本発明におけるポリイミドは、上記の如きポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
上記ポリイミドの合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上述したポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物と同じ化合物を挙げることができる。好ましいテトラカルボン酸二無水物の種類およびその好ましい使用割合もポリアミック酸の場合と同様である。
本発明におけるポリイミドを合成するために用いられるジアミンとしては、上記のポリアミック酸の合成に用いられるジアミンと同じジアミンを挙げることができる。すなわち、本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドの合成に用いられるジアミンは、上記式(A)で表される化合物を含むものであり、上記式(A)で表される化合物のみを用いてもよく、上記式(A)で表される化合物と上記他のジアミンとを併用してもよい。好ましい他のジアミンの種類および各ジアミンの好ましい使用割合もポリアミック酸の場合と同様である。
本発明におけるポリイミドは、原料であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、イミド化率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくは(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0063】
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間は好ましくは1.0〜24時間であり、より好ましくは1.0〜12時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用割合は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用割合は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0064】
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0065】
−末端修飾型の重合体−
本発明におけるポリアミック酸およびポリイミドは、それぞれ、分子量が調節された末端修飾型の重合体であってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性などをさらに改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、分子量調節剤を重合反応系に添加することにより行うことができる。分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。
上記酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
上記モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなど;
上記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下である。
−溶液粘度−
以上のようにして得られるポリアミック酸またはポリイミドは、濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0066】
<その他の成分>
本発明の液晶配向膜は、上記の如きポリアミック酸およびこれをイミド化してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばその他の重合体、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性および電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、テトラカルボン酸二無水物と上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド以外の重合体であり、例えばテトラカルボン酸二無水物と上記式(A)で表される化合物を含まないジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸または他のポリイミドが好ましく、他のポリアミック酸がより好ましい。
その他の重合体の使用割合としては、重合体の合計(上記のテトラカルボン酸二無水物と上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドならびにその他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは10〜85重量%であり、さらに30〜80重量%であることが好ましい。
【0067】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0068】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら官能性シラン化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。
【0069】
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体ならびに必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤に使用できる有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または二種以上を混合して使用することができる。
【0070】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができない場合があり、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができない場合があり、あるいは液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性に劣るものとなる場合がある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法
による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0071】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。
本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)ないし(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)および(3)は各動作モードに共通である。
【0072】
(1)先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)TN型、STN型またはVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。塗布方法としては、例えばオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ロールコート法、スピンコート法などを挙げることができるが、フレキソ印刷法を採用することがアニロックスロール上への重合体の析出が見られないとの本発明の効果が最大限に発揮されるため、好ましい。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合会い中のアミック酸単位を熱イミド化することを目的として、焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。塗布方法は上記(1−1)におけるのと同様である。
このとき使用される基板および透明導電膜の材質、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、液晶配向剤を塗布した後の加熱方法ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0073】
(2)本発明の方法により製造される液晶表示素子がVA型の液晶表示素子である場合には、上記のようにして形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、所望に応じて次に述べるラビング処理を行った後に使用に供してもよい。
一方、VA型以外の液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜とする。
ラビング処理は、上記のようにして形成された塗膜面に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
さらに、上記のようにして形成された液晶配向膜に対し、例えば特許文献9(特開平6−222366号公報)や特許文献10(特開平6−281937号公報)に示されているような液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、特許文献11(特開平5−107544号公報)に示されているような液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0074】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交または逆平行となるように対向配置される。
2枚の基板間に液晶を配置するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0075】
ここに、シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶などを用いることができ、これらのうちネマティック型液晶が好ましい。VA型液晶セルの場合、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などが用いられる。TN型液晶セルまたはSTN型液晶セルの場合には、正の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが用いられる。これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名C−15、CB−15(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、さらに添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
下記合成例における各重合体の溶液粘度およびポリイミドのイミド化率は、それぞれ以下の方法により測定した。
[重合体の溶液粘度]
重合体の溶液粘度(mPa・s)は、各合成例に記載された溶媒を用いて各合成例所定の重合体濃度%に調整された重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
各合成例で得られたポリイミドを含有する溶液を少量分取して純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で測定したH−NMRスペクトルから、下記数式(1)
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近のNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αはポリイミドの前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
によって計算により求めた。
<上記式(A)で表される化合物の合成例>
合成例A−1
下記スキーム1a〜1c
【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
に従って、1−[2−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−ピロリジン−2,5−ジオン(化合物(A−1−1))を合成した。
[化合物(A−1−1a)の合成]
窒素雰囲気下、20L三口フラスコ中で、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン1,261.1g(10.0モル)、ジアリルアミン4,858.0g(50.0モル)および亜硫酸水素ナトリウム1,248.7g(12.0モル)を混合し、室温で8時間攪拌して反応を行った。得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し未反応のジアリルアミンを除去した後、トルエン10Lを加えて得た有機層を蒸留水で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムにより脱水した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して中間体化合物(A−1−1a)2,701.8g(9.5モル、収率95.0%)を得た。
[化合物(A−1−1b)の合成]
窒素雰囲気下、5L三口フラスコ中で、N−(2−ヒドロキシエチル)こはく酸イミド214.7g(1.5モル)、p−クロロベンゼンスルホニルクロリド422.1g(2.0モル)およびジクロロメタン1Lを混合し、0℃で攪拌した。ここに、トリエチルアミン312.0mL(2.3モル)を30分かけて滴下した後、室温で3時間攪拌して反応を行った。得られた反応混合物にジクロロメタン0.5Lを加えて得た有機層を蒸留水で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた無色の粘性液体に、エタノール3Lを加えて十分に攪拌した後、析出した白色固体をろ取して回収することにより、中間体化合物(A−1−1b)420.7g(1.3モル、収率88.3%)を得た。
【0081】
[(A−1−1c)の合成]
窒素雰囲気下、5.0L三口フラスコ中で水素化カリウム(30重量wt%ミネラルオイル懸濁液)174.0g(純水素化カリウムに換算して1.3モル)を石油エーテルにより洗浄し、ミネラルオイルを除去した後に真空乾燥した。ここにテトラヒドロフラン3.0Lを加えて0℃で攪拌した。ここに上記で得た化合物(A−1−1a)341.3g(1.2モル)をテトラヒドロフラン1.0Lに溶解した溶液を30分かけて滴下した後、0℃で15分攪拌した。ここに上記で得た化合物(A−1−1b)317.8g(1.0モル)およびテトラブチルアンモニウムブロミド32.2g(0.1モル)を加えた後、室温で10時間攪拌して反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて酸性とした後、酢酸エチル4.0Lにより抽出し、有機層を得た。この有機層を水洗した後、硫酸マグネシウムで脱水し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、粗生成物を得た。得られた粗精製物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1(重量比))にて精製し、得られた留分から溶媒を除去することにより、中間体化合物(A−1−1c)262.1g(0.6モル、収率58.6%)を褐色の粘性液体として得た。
[化合物(A−1−1)の合成]
窒素雰囲気下、5.0L三口フラスコ中で、上記で得た化合物(A−1−1c)239.8g(0.6モル)、1,3−ジメチルバルビツル酸274.5g(1.8モル)、テトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)13.5g(0.012モル)およびジクロロメタン2.5Lを混合し、35℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、反応混合物を炭酸ナトリウム水溶液で洗浄して未反応の1,3−ジメチルバルビツル酸を除去した後、さらに蒸留水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した粗生成物を得た。得られた粗精製物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:クロロホルム/エタノール=95/5(重量比))にて精製し、得られた留分から溶媒を除去することにより、化合物(A−1−1)(1−[2−(3,5−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−ピロリジン−2,5−ジオン)33.9g(0.16モル、収率26.9%)を褐色粉末として得た。
上記合成例A−1の各操作を必要に応じて上記のスケールで繰り返して行うことにより、以降のポリイミドの合成に必要な量の化合物(A−1−1)を確保した。
合成例A−2
下記スキーム2
【0082】
【化31】

【0083】
に従って、1−[2−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−エチル]−2−ピロリドン(化合物(A−2−1))を合成した。
[化合物(A−2−1k)の合成]
窒素雰囲気下、2Lの三口フラスコ中で、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン129.2g(1.0モル)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン186.1g(1.0モル)、トリエチルアミン280mLおよびテトラヒドロフラン500mLを混合し、40℃で10時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを2L加えて得た有機層を蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより脱水した後に、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をエタノールから再結晶し、結晶を濾取にて回収し、60℃で12時間真空乾燥を行うことにより、中間体化合物(A−2−1k)206g(0.70モル、収率70.0%)を淡黄色粉末として得た。
[化合物(A−2−1)の合成
窒素雰囲気下、5Lの三口フラスコ中で、上記中間体(A−2−1k)73.8g(0.25モル)、亜鉛327.0g(5モル)、塩化アンモニウム53.5g(1モル)およびエタノール2.5Lを混合した。この混合物を0℃で攪拌しながら、ここに水600mLをゆっくり添加した後、室温で6時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物からセライト濾過によって触媒を取り除き、この濾液からロータリーエバポレーターにより溶媒を除去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:テトラヒドロフラン)にて精製し、得られた留分から減圧にて溶媒を除去することにより、化合物(A−2−1)52.3g(0.22モル、収率89%)を茶褐色の液体として得た。
【0084】
<ポリイミドの合成>
合成例PI−1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン160g(0.50モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン91g(0.84モル)、上記合成例A−1で得た化合物(A−1−1)8g(0.03モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン25g(0.10モル)および3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン9.6g(0.015モル)ならびにモノアミンとしてオクタデシルアミン8.1g(0.030モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)960gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,700gを追加し、ピリジン400gおよび無水酢酸410gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ―ブチロラクトンで溶媒置換(この溶媒置換作により、脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を反応系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約95%のポリイミド(PI−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。
【0085】
合成例PI−2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン38g(0.35モル)、上記合成例A−1で得た化合物(A−1−1)13g(0.05モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をNMP830gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,900gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−2)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は47mPa・sであった。
【0086】
合成例PI−3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン32g(0.30モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20g(0.1モル)、上記合成例A−1で得た化合物(A−1−1)13g(0.05モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP800gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン80gおよび無水酢酸100gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約80%のポリイミド(PI−3)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は87mPa・sであった。
【0087】
合成例PI−4
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.45モル)および上記合成例A−1で得た化合物(A−1−1)13g(0.05モル)をNMP1,460gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液の溶液粘度は65mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,625gを追加し、ピリジン200gおよび無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約90%のポリイミド(PI−4)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は65mPa・sであった。
【0088】
合成例PI−5
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.45モル)および上記合成例A−2で得た化合物(A−2−1)12g(0.05モル)をNMP1,540gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液の溶液粘度は73mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,710gを追加し、ピリジン194gおよび無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約88%のポリイミド(PI−5)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
【0089】
<その他の重合体の合成>
[他のポリアミック酸の合成]
合成例PAR−1
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP370gおよびγ―ブチロラクトン3,300gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(PAR−1)を10重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液の溶液濃度は160mPa・sであった。
【0090】
[他のポリイミドの合成]
合成例PIR−1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン38g(0.35モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20g(0.1モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP800gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン160gおよび無水酢酸200gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約80%のポリイミド(PIR−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は87mPa・sであった。
【0091】
合成例PIR−2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)およびジアミンとしてp−フェニレンジアミン54g(0.5モル)をNMP1,476gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液の溶液粘度は63mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,640gを追加し、ピリジン200gおよび無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約91%のポリイミド(PIR−2)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は64mPa・sであった。
【0092】
合成例PIR−3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとして3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン6g(0.01モル)、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイルオキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート17g(0.04モル)およびp−フェニレンジアミン48g(0.45モル)をNMP1,647gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。該ポリアミック酸溶液の溶液粘度は70mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,830gを追加し、ピリジン200gおよび無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約89%のポリイミド(PIR−3)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は72mPa・sであった。
【0093】
<液晶配向剤の調製および評価>
比較例1
[液晶配向剤の調製]
上記合成例PIR−1で得たポリイミド(PIR−1)を含有する溶液にγ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを、ポリイミド(PIR−1)の100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:BC=40:30:30(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
(1)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤につき、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察してピンホールの有無ならびに印刷ムラの有無および程度を調べた。その結果、ピンホールは観察されなかったが、若干の印刷ムラが観察された。
(2)塗膜の膜厚均一性の評価
上記で形成した塗膜につき、触針式膜厚計(KLAテンコール社製)を用いて基板の中央部における膜厚と基板の外側端から15mm中央に寄った位置における膜厚とをそれぞれ測定した。両者の膜厚差が20Å以下のものを膜厚均一性「良好」、膜厚差20Åを超えたものを膜厚均一性「不良」として評価した。
【0094】
(3)塗膜の剥離性評価
上記で形成した塗膜につき、三洋化成工業(株)製のリムーバー「TS−204」に30℃において5分間浸漬して剥離操作を行った。剥離後、基板上に塗膜の残滓があるかどうかを目視により調べた。基板上に塗膜の残滓が確認されなかった場合を剥離性「良好」、塗膜の残滓が確認された場合を剥離性「不良」として評価したところ、本比較例においては基板の一部に塗膜が残存しており、剥離性は「不良」であった。
(4)連続印刷評価
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)のアニロックスロール上に1分間に0.2g滴下しながら、アニロックスロールを回転し続けた。1時間毎にアニロックスロール上に液晶配向剤に含まれる重合体が析出していないかを目視で観察した。
本比較例においては、実験開始1時間後には重合体の析出が見られなかったが、2時間後に析出が観察されたため、その時点で実験を終了した。
【0095】
比較例2
[液晶配向剤の調整]
上記合成例PIR−2で得たポリイミド(PIR−2)を含有する溶液にγ−ブチロラクトン(BL)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを、ポリイミド(PIR−2)の100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:BC=88:12(重量比)、固形分濃度が6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記比較例1におけるのと同様にして、印刷性、塗膜の膜厚均一性、剥離性および長時間の連続印刷の評価を行った。評価結果は表1および表2に示した。
【0096】
比較例3
[液晶配向剤の調整]
上記合成例PIR−3で得たポリイミド(PIR−3)を含有する溶液にγ−ブチロラクトン(BL)、ブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを、ポリイミド(PIR−3)の100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:BC=88:12(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記比較例1におけるのと同様にして、印刷性、塗膜の膜厚均一性、剥離性および長時間の連続印刷の評価を行った。評価結果は表1および表2に示した。
【0097】
実施例1
[液晶配向剤の調製]
上記合成例PI−1で得たポリイミド(PI−1)を含有する溶液および上記合成例PAR−1で得た他のポリアミック酸(PAR−1)を含有する溶液を、ポリイミド(PI−1):他のポリアミック酸(PAR−1)=20:80(重量比)になるように混合し、これにγ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体の合計100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:BC=71:17:12(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
(1)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤を用いて、上記比較例1におけるのと同様にして平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察してピンホールの有無ならびに印刷ムラの有無および程度を調べた。ここで、印刷ムラについては上記比較例1の塗膜と比較して印刷ムラの発生が改善されているか否かを調べ、改善が見られた場合(すなわち比較例1の塗膜と比較して印刷ムラの程度が小さい場合)を「良好」として評価した。
評価結果は表1に示した。
(2)塗膜の膜厚均一性の評価、(3)塗膜の剥離性評価および(4)連続印刷評価
上記で形成した塗膜につき、上記比較例1におけるのと同様にして塗膜の膜厚均一性の評価、塗膜の剥離性評価および連続印刷評価を行った。
評価結果は表1および表2に示した。
なお、(4)連続印刷評価は、4時間目まで観察を行った。
【0098】
実施例2
[液晶配向剤の調製]
上記合成例PI−2で得たポリイミド(PI−2)を含有する溶液にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンをポリイミド(PI−2)100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記実施例1におけるのと同様にして評価を行った。
評価結果は表1および表2に示した。
【0099】
実施例3
[液晶配向剤の調製]
上記比較例1において、ポリイミド(PIR−1)を含有する溶液の代わりに上記合成例PI−3で得たポリイミド(PI−3)を含有する溶液を用いたほかは比較例1におけるのと同様にして液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記実施例1におけるのと同様にして評価を行った。
評価結果は表1および表2に示した。
【0100】
実施例4
[液晶配向剤の調製]
上記合成例PI−4で得たポリイミド(PI−4)を含有する溶液および上記合成例PAR−1で得た他のポリアミック酸(PAR−1)を含有する溶液を、ポリイミド(PI−4):他のポリアミック酸(PAR−1)=20:80(重量比)になるように混合し、これにγ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体の合計100重量部に対して10重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:BC=83:5:12(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記実施例1におけるのと同様にして評価を行った。
評価結果は表1および表2に示した。
【0101】
実施例5
[液晶配向剤の調製]
上記比較例2において、ポリイミド(PIR−2)を含有する溶液の代わりに上記合成例PI−5で得たポリイミド(PI−5)を含有する溶液を用いたほかは比較例2におけるのと同様にして液晶配向剤を調製した。
[液晶配向剤の評価]
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは上記実施例1におけるのと同様にして評価を行った。
評価結果は表1および表2に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
なお表1の溶媒組成欄における溶媒の略称は、それぞれ以下の意味である。
BL:γ−ブチロラクトン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
【0104】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と、下記式(A
【化24】

(式(A)中、Xは−O−または−COO−(以上において、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、Rはメチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数6〜18のアリーレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜4の整数であり、Zはカルボニル基または下記式(Z−1)
【化25】

(式(Z−1)中、RIIおよびRIIIは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される基である。)
で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
上記式(A)で表される化合物が、下記式(A)
【化1】

(式(A)中、X、RおよびRは、それぞれ、上記式(A)におけるのと同義であり、nは0〜2の整数である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記テトラカルボン酸二無水物が2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものである、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記重合体がイミド化率30%以上のポリイミドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項7】
テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸。
【請求項8】
テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド。
【請求項9】
上記式(A)で表される化合物。

【公開番号】特開2011−59646(P2011−59646A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257634(P2009−257634)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】