説明

液浸レジスト用撥水性添加剤

【課題】液浸リソグラフィーのトップコートレス法において用いられる撥水性添加剤であって、レジスト材料に添加することにより、露光時には高い撥水性を有し、且つ、現像時には現像液溶解性を向上させるように制御可能である撥水性添加剤を提供する。
【解決手段】レジスト組成物に、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むフォトレジスト用撥水性添加剤を添加する。


[式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基、Rは熱不安定性保護基、Rはフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を含む液浸レジスト用の撥水性添加剤に関する。当該撥水性添加剤は、特にトップコートレス液浸露光プロセスにおける撥水性添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料の幅広い応用分野において開発又は使用されている。特に最近、FレーザやArFエキシマレーザなどの短波長紫外線に対して透明性の高い新規な材料としてフッ素系化合物のレジスト材料が活発に研究されている。これらの応用分野における共通の分子設計としては、フッ素を導入することによる各使用波長での透明性、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル−2−ヒドロキシ基(ヘキサフルオロイソプロピル水酸基ともいう)などのフルオロアルコールの酸性特性を利用した感光性、基板への密着性などの諸性能の実現に基づいている。
【0003】
一方、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されており、露光装置の改良が検討されてきた。
【0004】
例えば、ステッパー(縮小投影型露光装置)は縮小投影レンズの性能向上、光学系設計の改良によって解像度も大きく向上してきている。ステッパーに使用されるレンズの性能は、NA(開口数)で表されるが、空気中では0.9程度の値が物理的な限界とされており、現在すでに達成されている。そこで、レンズとウェハーの間の空間を空気よりも屈折率の高い媒体で満たすことによってNAを1.0以上に引き上げる試みがなされており、特に媒体として純水(以後、単に水という場合もある)を使った液浸方式による露光技術が注目されてきている(非特許文献1)。
【0005】
液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜が媒体(例えば水)と接触することから様々な問題点が指摘されてきた。特に、露光によって膜中に発生した酸や、クエンチャーとして加えたアミン化合物が水に溶解することによるパターン形状の変化、膨潤によるパターン倒れなどが問題となる。そこで、レジスト膜と水とを分離すべく、レジスト上にトップコート層を設けることが有効であるとの報告がなされている(非特許文献2)。
【0006】
トップコート組成物には、良好な現像液溶解性、純水に対する耐性、レジスト膜と水との分離性、下層のレジスト膜を侵さない等の性能が要求される。かかる要求を満たすトップコート組成物として、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個以上含むユニットを含有した繰返し単位を有する含フッ素重合体を含む組成物が開発され、現像液溶解性に特に優れている旨報告されている(特許文献1)。なお、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、下記の構造で表され、高いフッ素含有量を有し、且つ極性基であるヒドロキシル基を同一分子内に有するユニットとして注目されている。
【0007】
【化1】

【0008】
一方、レジスト成分の溶出と水の浸透を制御するもう一つの方法として、現像液に可溶な撥水性化合物をレジスト材料に添加後、基板に塗布することにより、当該撥水性成分をレジスト膜表面に偏析させる方法が提唱されている(特許文献2)。この方法は、トップコートレスレジストと称され、トップコート層を用いないのでトップコート膜の成膜と除去に係る工程が不要である点で優れている。
【0009】
撥水性の向上のためには、フッ素を含有するレジスト組成物が有効であり、これまでさまざまな含フッ素レジスト用の含フッ素高分子化合物が開発されてきた。当出願人は、重合性二重結合含有基と酸不安定性保護基を併せ持つ、ジフルオロ酢酸エステル(特許文献3)と重合性二重結合含有基を有するジフルオロ酢酸(特許文献4)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−316352号公報
【特許文献2】特開2006−48029号公報
【特許文献3】特開2009−19199号公報
【特許文献4】特開2009−29802号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE Vol.4691(プロシーディングスオブエスピーアイイー((発行国)アメリカ)2002年、第4691巻、459−465頁)。
【非特許文献2】2nd Immersion Work Shop, July 11,2003,Resist and Cover MaterialInvestigation for Immersion Lithography)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように液浸リソグラフィーにおける問題点を解決するのは、トップコート法および撥水性添加剤を用いるトップコートレス法が有効である。しかしながら、トップコート材料の塗布用溶液はフォトレジスト層を溶解するものは選択できないうえ、トップコート層の形成および除去の工程数の増加による製造コストの増加や、トップコートの塗布や除去が与える露光性能への影響などの問題がある。一方、トップコートレスレジスト法においても、特許文献2の方法では、表面に撥水性添加剤が偏析するためアルカリ現像液とレジスト表面のぬれ性に問題が生じ、欠陥が発生し易くなるという問題があった。そこで、露光時の水のバリヤ性は高く保ちながら、現像時には現像液溶解性を向上させるように制御可能である撥水性添加剤の開発が求められていた。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液浸リソグラフィーのトップコートレス法において用いられる撥水性添加剤であって、レジスト材料に添加することにより、露光時には高い撥水性を有し、且つ、現像時には現像液溶解性を向上させるように制御可能である撥水性添加剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、液浸レジスト用添加剤の撥水性を向上させるために樹脂組成物にフッ素原子を導入することを検討したところ、エステル基のカルボニル基のα位にフッ素原子を導入することで撥水性が著しく向上し、高い後退接触角が得られることを見出した。更に驚くべきことに樹脂組成に当該構造を導入することにより、カルボン酸の保護基が熱処理により容易に脱離するようになり、熱処理を境として現像液への溶解性が大きく増加するため、熱により現像液溶解性の制御が可能となることを見出し、それが本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、一般式(1)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とする液浸レジスト用撥水性添加剤は、液浸トップコートレスレジスト法の撥水性添加剤として有用である。当該撥水性添加剤は、レジスト膜表面に偏析し、高い撥水性を有することから液浸露光装置による高速スキャンが可能であって生産性を高めることができる。また、熱処理による保護基の脱離に伴いカルボン酸が露出するため表面接触角が低下すると共に現像液への溶解性が速やかに進行するため、レジストパターンの欠陥を少なくすることができる。
【0016】
本発明は、樹脂成分に撥水性に優れる成分を導入すると同時に熱処理による現像液溶解性の制御が可能となったため、これまで、困難であった「露光時の高い撥水性」と「現像時の現像液溶解性の向上」を両立させることができ、液浸リソグラフィーにおいてトップコートを不要にすることが可能となった。
【0017】
本発明は以下に示すとおりである。
[発明1]
液浸リソグラフィーにおいて、レジスト組成物に添加して用いる撥水性添加剤であって、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とする液浸レジスト用撥水性添加剤。
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基、Rは酸不安定性保護基、Rはフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。]
[発明2]
がフッ素原子または炭素数1〜3の含フッ素アルキル基であることを特徴とする発明1に記載のフォトレジスト用撥水性添加剤。
[発明3]
レジスト成膜後、レジスト膜上に偏析し、後退接触角が75°以上であることを特徴とする発明1または発明2に記載の撥水性添加剤。
[発明4]
熱処理によって現像液に対する溶解性が増すことを特徴とする発明1から発明3のいずれかに記載の撥水性添加剤。
[発明5]
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物
(B)光酸発生剤
(C)塩基性化合物
(D)溶剤
を含むレジスト組成物に、発明1〜4のいずれかに記載の撥水性添加剤を添加してなる撥水性添加剤含有レジスト組成物。
[発明6]
(1)発明5に記載の撥水性添加剤含有レジスト組成物を基板上に塗布する工程と、
(2)プリベーク後に投影レンズとウェハーの間に媒体を挿入させ、フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、
(3)ポストエクスポーザーベーク後に現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
[発明7]
現像前のポストエクスポーザーベーク処理を60℃〜170℃で行うことを特徴とする発明6に記載のパターン形成方法。
[発明8]
露光光源として、波長180〜300nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする発明6に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるフォトレジスト用撥水性添加剤は、レジスト樹脂で形成された皮膜上に塗布することが可能であり、また、高い撥水性を有することから液浸露光装置による高速スキャンが可能であって生産性を高めることができる。また、熱処理後に現像することによって現像液への溶解性を大きく増加させることができ、レジストパターンの欠陥を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一般式(1)で表される含フッ素高分子化合物は、重合性二重結合に基づいて形成された鎖状骨格と、α位の炭素原子に一つのフッ素原子とフッ素原子または含フッ素アルキル基とが結合し、熱不安定性保護基Rがエステル結合したカルボキシル基が、連結基Wを介して結合している。
【0022】
【化3】

【0023】
<含フッ素高分子化合物>
一般式(1)で表される繰返し単位を含有する含フッ素高分子化合物は、熱または酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂であり、熱または酸の作用により分解し、アルカリ可溶性となる基(分解性基)を有する。本発明の含フッ素高分子化合物は、熱でも酸でも分解するが、本明細書に於いては熱処理で制御することを基本とするため、熱分解性基という。なお、熱分解性基のうち、離脱する部分を熱不安定性保護基という。
【0024】
上記熱分解性基がついた部分は、酸の作用により分解することも可能であるので、一般的なレジスト現像で用いる光酸発生剤や熱酸発生剤を用いることも可能であり、酸発生剤の作用のもとでは、本明細書で言う熱分解性基あるいは熱分解安定性保護基は、酸分解性基、酸分解安定性保護基と読み替えることができる。
【0025】
は水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。また、Rは、フッ素原子または含フッ素アルキル基である。このような含フッ素アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜12のものであり、炭素数1〜3のものが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などを挙げることができる。Rは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0026】
で表される熱不安定性保護基としては、
11−O−C(=O)− (L−1)
11−O−CHR12− (L−2)
CR131415− (L−3)
SiR131415− (L−4)
11−C(=O)− (L−5)
を挙げることができる。R11、R12、R13、R14、R15は以下に説明する一価の有機基を表す。これらのうち、(L−1)、(L−2)、(L−3)は化学増幅型として機能するので、高エネルギー線で露光するパターン形成方法に適用するレジスト組成物として使用するのに特に好ましい。
【0027】
11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基(芳香族炭化水素基)を示す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を示す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を示す。また、R13〜R15の内の2つの基が結合して環を形成してもよい。
【0028】
ここで、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30個のものが挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、トリシクロデカニル基、ジシクロペンテニル基、ノボルナンエポキシ基、メンチル基、イソメンチル基、ネオメンチル基、テトラシクロドデカニル基、ステロイド残基の様な炭素数3〜30個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましく、これらは置換基を有していてもよい。アラルキル基としては、炭素数7〜20個のものが挙げられ、置換基を有していてもよい。ベンジル基、フェネチル基、クミル基等が挙げられる。
【0029】
また、前記有機基がさらに有する置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、前記のアルキル基もしくは脂環式炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フェネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、前記のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、前記のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0030】
また、下記式(3−1)、式(3−2)で示されるラクトン基を挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
前記式中、Rは炭素数1〜4個のアルキル基またはパーフルオロアルキル基を表す。Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基もしくはパーフルオロアルキ
ル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アルキロキシカルボニル基、アルコキシ基などを表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0034】
次に、前記熱不安定性保護基を具体的に示す。
前記のR11−O−C(=O)−で表されるアルコキシカルボニル基としては、tert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンタンオキシカルボニル基等を例示できる。
【0035】
前記のR11−O−CHR12−で表されるアセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−フェネチルオキシエチル基、1−エトキシプロピル基、1−ベンジルオキシプロピル基、1−フェネチルオキシプロピル基、1−エトキシブチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基、1−エトキシイソブチル基、1−メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。また水酸基に対してビニルエーテル類を付加させて得られるアセタール基を挙げることができる。
【0036】
前記のCR131415−で表される3級炭化水素基としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチル−1−フェニルメチル基、1−メチル−1−エチル−1−フェニルメチル基、1,1−ジエチル−1−フェニルメチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−イソボルニル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基、1−イソプロピルアダマンチル基、1−イソプロピルノルボルニル基、1−イソプロピル−(4'−メチルシクロヘキシル)基などを例示できる。
【0037】
次に、脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む熱不安定性保護基の具体例を示す。
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
(4−1)および(4−2)の式中、メチル基(CH)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。また、環炭素の1個または2個以上が置換基を有することができるのは前記のとおりである。
【0041】
前記のSiR131415−で表されるシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−tert−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0042】
前記のR11−C(=O)−で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、これらの熱不安定性保護基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0043】
また、ラクトン基を置換基含む熱不安定性保護基を次の式(5)、式(6)式(7)に例示する。
【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
式(5)、式(6)、式(7)の式中、メチル基(CH)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。
【0048】
露光用の光源としてArFエキシマレーザーを使用する場合には、熱不安定性保護基としては、tert−ブチル基、tert−アミル基等の3級アルキル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基等のアルコキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基など、および、前記のアダマンチル基、イソボルニル基などの脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む三級炭素を有する熱不安定性保護基、ラクトン等を好ましいものとして挙げることができる。
【0049】
連結基Wは、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキソカルボニル基、チオエーテル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基およびウレア基よりなる群から選択される単独または2以上の有機基の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基であり、連結基Wは同一の前記の基を複数含んでもよく、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各炭素原子は置換基を含めて環を形成してもよい。
【0050】
連結基Wの主骨格を構成する置換メチレン基は、次の一般式(2)で表される。
【0051】
−CR− (2)
ここで、置換メチレン基のR、R で表される一価の基は、特に限定されないが、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(水酸基)、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環式炭化水素基、アルコキシル基、置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基から選ばれた炭素数1〜30の一価の基であって、これらの一価の基はフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合を有することができる。R、R は同一でも異なっていてもよい。また、R、R は、分子内の原子とともに組み合わされて環を形成してもよく、この環は脂環式炭化水素構造であることが好ましい。R、R で表される一価の有機基として次のものが挙げられる。
【0052】
、Rにおける非環式のアルキル基としては、炭素数1〜30のものであり、炭素数1〜12のものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等を挙げることができ、低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが特に好ましいものとして挙げることができる。
【0053】
、Rにおける非環式の置換アルキル基としては、アルキル基が有する水素原子の1個または2個以上を炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数1〜4個のアルコキシル基、ハロゲン原子、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等により置換されたものが挙げられる。脂環式炭化水素基を置換基をするアルキル基としては、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、ノルボルニルメチル基、アダマンチルメチル基などの置換アルキル基およびこれらの環状炭素の水素原子がメチル基、エチル基、ヒドロキシル基で置換した置換アルキル基が例示できる。フッ素原子で置換されたフルオロアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などの低級フルオロアルキル基を好ましく挙げることができる。
【0054】
、Rにおける脂環式炭化水素基あるいはそれらが結合する炭素原子を含めて形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0055】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基等を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基などである。これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に前記の炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらに含まれる1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換した単環式基を挙げることができる。
【0056】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては、低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。また、置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0057】
、Rにおけるアルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
【0058】
、Rにおける置換もしくは非置換のアリール基としては、炭素数1〜30のものである。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、2,3−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,6−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヨードフェニル基等を挙げることができる。
【0059】
置換もしくは非置換の炭素数1〜30の縮合多環式芳香族基としては、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から一個の水素原子が除いて得られる一価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものを好ましいものとして挙げることができる。
【0060】
環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基等およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。また、単環式または多環式のエーテル環、ラクトン環を有するものが好ましく、次に例示する。
【0061】
【化11】

【0062】
前記式中、R、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表す。nは、2〜4の整数を表す。
【0063】
連結基Wの主骨格を構成する二価の脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0064】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基、シクロドデカニレン基、4−tert−ブチルシクロヘキシレン基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチレン基、ノルアダマンチレン基、デカリンの二価の残基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、ノルボルニレン基、セドロールの二価の残基を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、その際、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。また、これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に、RまたはRについて説明した炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換したものを挙げることができる。
【0065】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0066】
連結基Wは、具体的には、
−(単結合)
−O−
−C(=O)−O−
−CH−O−
−O−CH
−CH−C(=O)−O−
−C(=O)−O−CH
−CH−O−CH
−CH−C(=O)−O−CH
など、および、−C(=O)−O−CR−または−C−O−CR− である。ここで、RおよびRがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基 、置換アルキル基、脂環式炭化水素基であるものを好ましい。これらは、一個以上の水 素原子がフッ素原子で置換したものであってもよい。これらのうち、−C(=O)−O −CR−のうちRおよびRがそれぞれ独立に水素原子または低級アルキル基 をさらに好ましいものとして挙げることができる。
【0067】
一般式(1)で表す繰返し単位を有する含フッ素高分子化合物として、最も好ましい
ものの例を示すが、これは本発明を限定するものではない。
【0068】
【化12】

【0069】
(式中、Rは熱不安定性保護基、Rはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し 、Rは水素原子、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル 基を表し、Rは直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基 を表し、RおよびRは互いに環を形成していてもよい。)ここで、Rは、フッ素原子であることが特に好ましい。また、R及びRのアルキル基又は含フッ素アルキル基は低級アルキル基または含フッ素低級アルキル基である ことが好ましい。アルキル基が環状のアルキル基であることは好ましい。また、Rが水素原子あることは好ましい。特に好ましいものとしては、Rがフッ素原子、Rが 水素原子もしくは低級アルキル基、Rが低級アルキル基、またはRもしくはRが互いに結合して形成した脂環式炭化水素基であるものを挙げることができる。
【0070】
<含フッ素単量体>
一般式(1)で表される含フッ素高分子化合物を構成する繰り返し単位は、相当する含 フッ素単量体の有する重合性二重結合が開裂して二価の基になることにより形成される ものである。したがって、含フッ素単量体について、含フッ素高分子化合物を構成する、鎖状の骨格部分が由来する重合性二重結合およびそれを含有する基、各有機基、連結 基、熱不安定性保護基などは、いずれも<含フッ素高分子化合物>においてそれらについてした説明がそのまま該当する。
【0071】
当該単量体の製造方法は、特に限定されず、例えば次の反応式[1]から反応式[4] に示す方法を用いて製造することができる(特開2009−19199号公報参照) 。
【0072】
【化13】

【0073】
式中、R、RおよびRは、一般式(1)におけるR、RおよびRと同義である。R、RおよびRはそれぞれ独立に一価の有機基を表す。ただし、Rは水素原子であってもよい。R、Rは、RまたはRに対応し、具体的な説明は前記の通りであるが、一価の有機基としては低級アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1−(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基、またはRまたはRが互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基がさらに好ましい。
【0074】
XおよびX´はそれぞれ独立にハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホネート基、炭素数1〜4のアルキルスルホネート基、アリールスルホネート基を表す。W´は二価の連結基を表し、W´−O−CRは一般式(1)におけるWの一態様に相当する。
【0075】
すなわち、まず、α位に活性ハロゲン原子を有する含ハロゲンカルボン酸エステル(i)とカルボニル化合物(ii)を亜鉛の存在下無水の状態で反応させる(Reformatsky反応)ことでヒドロキシカルボン酸エステル(iii)を得る(反応式[1])。次いで得られたヒドロキシカルボン酸エステル(iii)と重合性二重結合を有するハロゲン化合物(iv)を塩基の存在下溶媒中で反応させて不飽和カルボン酸エステル(v)とする(反応式[2])。次に得られたエステル(v)を加水分解させることでα位にフッ素原子を有する不飽和カルボン酸(vi)を得る(反応式[3])。最後に得られた不飽和カルボン酸(vi)とハロゲン化合物(vii)を塩基の存在下溶媒中で反応させることで一般式(viii)で表される含フッ素化合物を得ることができる(反応式[4])。一般式(viii)において、WをW´−O−CRと表すと、一般式(viii)は一般式(1)の1つの態様を示す。[1]、[2]または[4]の反応の方法において使用する溶媒は、反応応条件で反応に関与しなければよく、脂肪族炭化水素系溶媒類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等、芳香族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等、ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、酸アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、低級エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン等などが使用され、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが好ましい。これらの溶媒を組み合わせて使用することもできる。溶媒の量は、出発原料の1重量部に対して1〜100重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。[1]の反応に使用する溶媒はでき得る限り水分を除去した方が好ましい。さらに好ましくは溶媒中の水分含量は50ppm以下である。
【0076】
[2]または[4]の反応に使用する溶媒もでき得る限り水分を除去した方が好ましいが、必ずしも完全に除く必要はない。工業的に入手可能な溶媒に通常混入している程度の水分は、本製造方法の実施において特に問題にならず、従って水分を除去することなくそのまま使用できる。
【0077】
[1]の反応の方法において使用される亜鉛は、公知の方法で活性化させて使用することが好ましい。例えば、塩化亜鉛等の亜鉛塩をカリウム、マグネシウム、リチウム等で還元して金属亜鉛を得る方法、金属亜鉛を塩酸により処理する活性化方法、金属亜鉛を酢酸中、銅塩または銀塩で処理し、銅または銀との合金とすることで、亜鉛を活性化する方法、超音波により亜鉛を活性化する方法、エーテル中、亜鉛をクロロトリメチルシランと攪拌することで亜鉛を活性化する方法、非プロトン性有機溶媒中、亜鉛をクロロトリメチルシランおよび銅化合物と接触させて該亜鉛を活性化させる方法などがある。
【0078】
亜鉛は、粉末、粒状、塊状、多孔質状、切削屑状、線状など何れの形状でもかまわない。反応[1]の反応温度は−78〜120℃程度であり、反応時間は反応試剤により異なるが、通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の金属亜鉛を用いる類似の反応の条件が適用できる。
【0079】
[2]および[4]の反応における塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリミジン、ピリダジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン等の有機塩基が挙げられる。その中でも、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ピリジンおよび2,6−ルチジンが好ましい。
【0080】
[2]または[4]の反応における塩基の使用量としては、基質1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に1〜5モルがより好ましい。
【0081】
[2]または[4]の反応の方法において反応温度は−78〜120℃程度であり、反応時間は反応試剤により異なるが、通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の条件が適用できる。
【0082】
[3]の反応は、前記塩基性物質や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基性物質の存在下、水と加水分解することからなっている。[1]ないし[4]の各反応段階の間では洗浄、溶媒等分離、乾燥などの精製操作を行うことができる。なお、熱不安定性保護基を有した含ハロゲンカルボン酸エステル(すなわち、一般式(i)において、R=Rである場合)が入手可能である場合には、反応式[1]および反応式[2]を実施することで、目的とする一般式(viii)で表される含フッ素化合物を得ることができる。
【0083】
<その他の共重合単量体>
本発明の撥水性添加剤にかかる含フッ素高分子化合物は、上記の方法で得られる含フッ素化合物(モノマー)を単独重合、あるいは以下に述べる他の重合性単量体と共重合せしめたものである。重合反応は、モノマーの二重結合含有基が有する炭素−炭素間の二重結合に基づいて含フッ素高分子化合物の骨格を形成するが、その他の構造は重合反応において変化しない。
【0084】
上記方法で得られる含フッ素化合物(モノマー)と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも一般式(1)で表される含フッ素重合体が、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルから選ばれた一種類以上の単量体との共重合が好適である。
【0085】
上記、共重合可能なアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにα位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0086】
また、前記の含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子又はフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、又はエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が採用される。
【0087】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートなどが挙げられる。
【0088】
また、共重合に使用できるヘキサフルオロイソプロピル水酸基を有する重合性単量体を具体的に例示するならば、下記に示す化合物をあげることができる。
【0089】
【化14】

【0090】
【化15】

【0091】
この場合、Rは水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。また、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、その一部又は全部が保護基で保護されていても良い。
【0092】
さらに、共重合に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどが使用できる。より具体的には、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレンなどのフッ素原子又はトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレン、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基やその水酸基を保護した官能基で芳香環の水素を置換したスチレンが使用できる。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが使用できる。
【0093】
また、共重合に使用できるビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0094】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物も本発明で特に制限なく使用することが可能である。
【0095】
共重合で使用できるオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0096】
共重合で使用できるノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は一核又は複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0097】
本発明の撥水性添加剤にかかる含フッ素高分子化合物は、熱または酸の作用により分解してアルカリ現像液に可溶となるものであるが、系内に熱または酸不安定基を更に導入する必要がある場合は、共重合成分として熱または酸不安定基を有する繰返し単位を導入するのが簡便である。かかる繰返し単位の導入方法としては、熱または酸不安定性基を有する他の重合性モノマーと共重合させる方法が好適に用いられる。
【0098】
また、熱または酸不安定性を有する重合体またはレジスト材料を得る別の方法として、先に得た重合体に後から高分子反応によって熱または酸不安定基を導入する方法や、単量体や重合体の形の熱または酸不安定性化合物を混合することも可能である。
【0099】
熱または酸不安定基を使用する目的としては、その熱または酸不安定性によるポジ型感光性および波長300nm以下の紫外線、エキシマレーザ、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ現像液への溶解性を発現させることである。
【0100】
本発明に使用できる熱または酸不安定性を有する共重合可能な他の重合性モノマーは、光酸発生剤や加水分解などの効果により脱離するものであれば特に制限なく使用できる。例示するならば、下記の一般式(9)〜(11)に示す基を有する単量体が好ましく使用できる。
【0101】
【化16】

【0102】
ここで、R、R、R、R、R10はそれぞれ独立に炭素数1〜25の直鎖状、分岐状、または、環状のアルキル基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ヒドロキシル基を含んでもよい。R、R、Rのうち2つは結合して環を形成してもよい。
【0103】
一般式(9)〜(11)に示す基の具体例として、特に限定されないが下記に示すものを例示することができる。
【0104】
【化17】

【0105】
【化18】

【0106】
本発明の撥水性添加剤にかかる含フッ素重合体の製造において、基板との密着性の向上を目的にラクトン構造を含むユニットを導入することができる。かかるユニットの導入においては、ラクトン含有の環式重合体が好適に用いられる。かかるラクトン含有の環式重合性単量体としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基などの単環式のラクトン、ノルボルナンラクトンから水素原子1つを除いた基などの多環式のラクトンなどを例示することができる。ラクトン構造をレジストに含有することによって、基板との密着性を向上するばかりでなく、現像液との親和性を高めたりすることが可能である。
【0107】
【化19】

【0108】
なお、以上の本発明で使用できる共重合可能な単量体は、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0109】
本発明の高分子化合物は、複数の単量体からなる繰り返し単位で構成されていてもよい。その割合は特に制限なく設定されるが、例えば以下に示す範囲は好ましく採用される。
【0110】
本発明の高分子化合物において、一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体からなる繰り返し単位を1〜100mol%、より好ましくは5〜90mol%含有し、熱不安定性基を有する繰り返し単位を1〜100mol%、好ましくは5〜80mol%、より好ましくは10〜60mol%含有することができる。一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体からなる繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、本発明の単量体を用いたことによる明確な効果が期待できない。また、熱不安定性基を有する繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、露光によるアルカリ現像液に対する溶解性の変化が小さすぎて好ましくない。
【0111】
本発明の撥水性添加剤にかかる含フッ素重合体の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合などを使用することも可能である。
【0112】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0113】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0114】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0115】
一方、開環メタセシス重合は、共触媒存在下、IV、V、VI、VII属の遷移金属触媒を用いれば良く、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0116】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例としてTi系、V系、Mo系、W系触媒が挙げられ、特に、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、塩化タングステン(VI)などが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0117】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、アルキルすずなどが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などのアルミニウム系や、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、トリフェニルクロロすずなどが例示できる。共触媒量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0118】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−30〜60℃が好ましい。
【0119】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金などのVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステンなどのIVBからVIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0120】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例として特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、プラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドなどのVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのIVBからVIB属の遷移金属類が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0121】
共触媒としては、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムなどが挙げられ、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などが例示できる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50から500当量、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0122】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドンなどが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−40〜80℃が好ましい。
【0123】
このようにして得られる本発明にかかる含フッ素重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0124】
本発明の撥水性添加剤にかかる含フッ素重合体の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
【0125】
撥水性添加剤としての使用において、分子量により、溶解性およびキャスティングの特性が変わり得る。分子量が高いポリマーは現像液への溶解速度が遅くなり、分子量が低い場合は溶解速度が速くなる可能性があるが、適宜調整することにより制御可能である。
【0126】
本発明の撥水性添加剤は、レジスト組成物と混合して、撥水性添加剤含有レジスト組成物とすることができ、化学増幅ポジ型レジスト材料として好適に用いられる。撥水性添加剤のレジスト組成物への配合比は、添加する高分子化合物の合計質量がレジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜10質量部がよい。これが0.1質量部以上であれば、フォトレジスト膜表面と水との後退接触角が十分に向上する。また、これが50質量部以下であれば、フォトレジスト膜のアルカリ現像液への溶解速度が小さく、形成した微細パターンの高さが十分に保たれる。撥水性添加剤は、1種類の高分子化合物としてレジスト組成物に配合してもよいし、2種類以上の化合物を任意の割合で混合してレジスト組成物に配合してもよい。
【0127】
レジスト組成物は、例えば以下のような配合のものが好ましく用いられる。
(レジスト配合について)
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物(ベース樹脂)
(B)光酸発生剤
(C)塩基性化合物
(D)溶剤
また、必要により(E)界面活性剤を含有してもよい。
以下、それぞれの成分について説明する。
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物(ベース樹脂)
ベース樹脂としては、芳香族置換基を含まない繰り返し単位が好ましく用いられ、本発明の撥水性添加剤を構成する一般式(1)で表される含フッ素高分子の繰返し単位を与えるモノマーと共重合可能なモノマーとして挙げられた、前記の「他の重合性単量体」の中から適宜選択して重合させることにより得られる高分子体(一般式(1)で表される繰返し単位を含まない)を用いることができる。すなわち、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれた一種の単量体を重合させた高分子重合体、又は、前記単量体の二種以上を共重合させた高分子共重合体であることが好適である。各重合性単量体の具体的な例示は、前記の「他の重合性単量体」として記載したとおりである。
【0128】
本発明に用いるレジスト組成物において、ベース樹脂は、現像液(通常、アルカリ現像液)に不溶又は難溶であって、酸によって現像液に可溶となるため、酸によって開裂し得る酸不安定基を有するものが用いられる。係る酸不安定基として、下記の一般式(9)〜(11)が例示することができ、ベース樹脂の重合においては、これらの基を有する単量体が好ましく使用できる(但し、R6〜R10は前記と同じ意味)。
【0129】
【化20】

【0130】
(B)光酸発生剤
本発明のレジスト材料に用いる光酸発生剤には、特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ヨードニウムスルホネート、スルホニウムスルホネート等のオニウムスルホネート、スルホン酸エステル、N−イミドスルホネート、N−オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネート、ピロガロールのトリスメタンスルホネート等をあげることができる。
【0131】
これらの光酸発生剤から光の作用で発生する酸は、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、部分的にまたは完全にフッ素化されたアリールスルホン酸、アルカンスルホン酸等であるが、部分的にまたは完全にフッ素化されたアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤は、脱保護しにくい保護基に対しても十分な酸強度を有することから有効である。具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホナート等があげられる。
【0132】
(C)塩基性化合物
本発明のレジスト材料に塩基性化合物を配合することができる。当該塩基性化合物は、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制する働きがあり、これにより、酸拡散距離を調整してレジストパターン形状の改善や、引き置き時の安定性を向上する効果が期待される。塩基性化合物を例示するならば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、脂肪族多環式アミン等があげられる。第二級や第3級の脂肪族アミンが好ましく、アルキルアルコールアミンがより好ましく採用される。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデカニルアミン、トリドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデカニルアミン、ジドデシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デカニルアミン、ドデシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジオクタノールアミン、トリオクタノールアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ビピリジン、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、インドール、ヘキサメチレンテトラミン等があげられる。これらは単独でも2種以上組み合わせてもよい。また、その配合量は、好ましくは重合体100重量部に対して0.001〜2重量部、より好ましくは重合体100重量部に対して0.01〜1重量部である。配合量が0.001重量部よりも少ないと添加剤としての効果が十分得られず、2重量部を超えると解像性が感度が低下する場合がある。
(D)溶剤
本発明のレジスト組成物に用いる溶剤としては、配合する各成分を溶解して均一な溶液にできればよく、従来のレジスト用溶剤の中から選択して用いることができる。また、2種類以上の溶剤を混合して用いることも可能である。溶剤を具体的に例示するならば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、n−ヘキシサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等の多価アルコールおよびその誘導体、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、アニソール、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール等のフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。
【0133】
これらの中でも特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)が好ましく採用される。
【0134】
レジストに配合する溶剤の量は特に限定されないが、好ましくはレジストの固形分濃度が3〜25%、より好ましくは5〜15%となる様に用いられる。レジストの固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することが可能である。
【0135】
(E)界面活性剤
本発明のレジスト組成物においては、必要により界面活性剤を添加してもよい。かかる界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤、あるいはフッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤のいずれか、あるいは2種以上を含有することができる。
【0136】
(パターン形成方法)
以下、液浸リソグラフィーを用いたデバイス製造において本発明を使用する場合のパターン形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法は、
・ 撥水性添加剤含有レジスト組成物を基板上に塗布する工程と、
・ プリベーク後に投影レンズとウェハーの間に液浸媒体を挿入させ、フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、
・ ポストエクスポーザーベーク後に現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とするパターン形成方法である。
以下、それぞれの工程について説明する。
(1)撥水性添加剤含有レジスト組成物を基板上に塗布する工程
まずシリコンウェハーや半導体製造基板の支持体上に、撥水性添加剤含有レジスト組成物溶液をスピンナーなどで塗布する。上記基板として、シリコンウェハーの他にも金属やガラスの基板を用いることが可能である。また、基板上には有機系あるいは無機系の膜が設けられていてもよい。例えば、反射防止膜、多層レジストの下層があってもよく、パターンが形成されていても良い。
(2)プリベーク後に投影レンズとウェハーの間に液浸媒体を挿入させ、フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程
塗布により形成したレジスト膜の表面に撥水性添加剤が偏析するので、熱処理(プリベーク)することにより、レジスト層の上に撥水性添加剤樹脂層が偏析した樹脂膜が形成される。この工程にかかる条件は、使用するレジスト組成物の組成および撥水性添加剤溶液に応じて適宜設定するが、熱不安定性基の熱分解温度以下で行うことが重要である。すなわち、プリベークの温度は、熱分解性基の熱分解性温度以下であって、50〜100℃、好ましくは60〜90℃で、10〜120秒、好ましくは30〜90秒で行う。
【0137】
この樹脂層が形成された基板の上に水等の液浸媒体(単に媒体ということもある)をのる。液浸媒体としては、水、フッ素系溶剤、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤、含硫黄溶剤等があげられるが、水が好適に用いられる。
【0138】
次いで300nm以下の高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射する。この時、露光光は、媒体(例えば水)と撥水性添加剤が偏析した層を透過してレジスト層に到達する。また、レジスト層は、撥水性添加剤が偏析した層によって媒体(例えば水)がプロテクトされているので、媒体(例えば水)がレジスト層に浸漬して膨潤したり、逆にレジストが媒体(例えば水)に溶出することもない。
【0139】
露光に用いる波長は限定されないが、300nm以下の高エネルギー線が用いられ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fレーザ、EUV、EB、X線が好適に使用でき、特には、ArFエキシマレーザに好ましく採用される。
【0140】
(3)ポストエクスポーザーベーク後に現像液を用いて現像する工程
次に、露光された基板をポストエクスポーザーベークする。熱不安定性基の熱分解温度以上でポストエクスポザーベークすることにより、保護基が外れるため、カルボン酸が露出することにより表面接触角が低くなると同時に、アルカリ現像液に可溶となる。次いで、現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。現像処理においては、まず、撥水性添加剤が偏析した層が全溶解し、次いで露光部のレジスト膜が溶解する。すなわち、1回の現像処理により、撥水性添加剤が偏析した層とレジスト層の一部を溶解除去することが可能で、所望のマスクパターンに応じたレジストパターンを得ることができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステルの製造方法
【0142】
【化21】

【0143】
500mLの反応器に、活性化した金属亜鉛 24.2g(370ミリモル/1.5等量)とTHF(脱水)300mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル/THF溶液[ブロモ−ジフルオロ酢酸エチル51.47g(253.6ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水)80mL]を滴下した。滴下後、室温で20分間攪拌した後、プロピオンアルデヒド/THF溶液[プロピオンアルデヒド 14.80g(254.8ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水)80mL]を加え、室温で30分間攪拌した。その後、水、ジイソプロピルエーテルを加え、二層分離を行った。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とする2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステル 41.2gを得た。このとき、収率89%であった。
[2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステルの物性]
H NMR(CDCl)d4.31(q,J=7.1Hz,2H;CH−O),3.89(m, 1H;CH−OH),2.50(br,1H;OH),1.71(m,1H),1.52(m,1H), 1.32(t,J=7.1Hz,3H;CH),1.02(t,J=7.3Hz,3H;CH
19F NMR(CDCl)d−115.26(d,J=252Hz,1F),−122.95(d, J=252Hz,1F).
[合成例1−2]メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0144】
【化22】

【0145】
300mLの反応器に、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステル 18.0g(98.4ミリモル)とクロロホルム78g、酸化防止剤ノンフレック
スMBP(精工化学株式会社製品)120mg、メタクリル酸クロリド12.4g(118.8ミリモル/1.2等量)、トリエチルアミン15.0g(148.8ミリモル/1.5等量)を加え、55℃で4時間攪拌した。その後、水120gを加え、クロロホルムで1回抽出を行った。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、クロロホルムを留去して、目的とするメタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル24.7gを得た。このとき純度は66%、収率66%であった。
[メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
H NMR(CDCl)d 6.14(s,1H;methylene),5.62(s,1H; methylene),5.35(m,1H;CH−O),4.27(m,2H;CH−O),1.93(s,3H;CH),1.81(m,2H;CH),1.28(t,J=7.2Hz,3H; CH),0.95(t,J=7.6Hz,3H;CH
19F NMR(CDCl)d −113.63(d,J=264Hz,1F),−119.57(d, J=264Hz,1F).
[合成例2]メタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル:メタクリル酸の製造方法
【0146】
【化23】

【0147】
2Lの反応器に、メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−
ブチルエステル80.0g(純度66%)、208ミリモル)、水80.0gを加え、0℃に冷却し、15重量%水酸化ナトリウム水溶液 84.8g(320ミリモル/1.5等量)を滴下した後、室温で1時間攪拌した。反応液をジイソプロピルエーテル800gで洗浄し、得られた水層を希塩酸で洗浄、さらにジイソプロピルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とするメタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル:メタクリル酸15.2gを得た。このとき純度は78%、収率27%であった。
【0148】
[メタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
H NMR(CDCl)d 7.24(br,1H;COOH),6.16(s,1H;methylene),5.63(s,1H;methylene),5.39(m,1H;CH−O), 1.93(s,3H;CH),1.85(m,2H;CH),0.97(t,J=7.6Hz,3H;CH
19F NMR(CDCl) d −114.24(d,J=264Hz,1F),−119.48(d, J=264Hz,1F).
[合成例3]メタクリル酸 1−(1−メチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0149】
【化24】

【0150】
2Lの反応器に、窒素下でメタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 7.0g(純度78%、25ミリモル)、THF(脱水)300mLを加え、0℃まで冷却した後、トリエチルアミン6.5mL(47ミリモル/1.9等量)を加え、0℃で10分間攪拌した。その後、さらに1−クロロ−1−メチルシクロペンタン 4.7g(40.0ミリモル/1.6等量)を加え、0℃で20分間攪拌した。反応液に水500mLを加え、ジイソプロピルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とするメタクリル酸 1−(1−メチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 6.6gを得た。このとき純度は96%、収率83%であった。
【0151】
[メタクリル酸 1−(1−メチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.14(s,1H;=C),5.61(s,1H;=C),5.35(m,1H;C−O),2.09(m,2H;シクロペンチル部位),1.92(s,3H;C−C),1.82(m,2H;CH−CCH),1.67(m,6H;シクロペンチル部位),1.53(s,3H;COO−C−C),0.94(t、J=7.6 Hz,3H;CH−CH).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−113.20(d,J=262Hz,1F),−119.65(d,J=262Hz,1F).
[合成例4]メタクリル酸 1−(1−エチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0152】
【化25】

【0153】
2Lの反応器に、窒素下でメタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル5.6g(純度78%、20.0ミリモル)、THF(脱水)240mLを加え、0℃まで冷却した後、トリエチルアミン5.2mL(37.6ミリモル/1.9等量)を加え、0℃で10分間攪拌した。その後、さらに1−クロロ−1−エチルシクロペンタン14.24g(3.2ミリモル/1.6等量)を加え、0℃で20分間攪拌した。反応液に水800mLを加え、ジイソプロピルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とするメタクリル酸 1−(1−エチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステル5.52gを得た。このとき純度は96%、収率83%であった。
【0154】
[メタクリル酸 1−(1−エチルシクロペンチロキシカルボニル)−1、1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(s,1H;=C),5.61(s,1H;=C),5.35(m,1H;C−O),2.08(m,2H;シクロペンチル部位),2.02(q,J=7.6 Hz,2H;COO−C−CCH),1.93(s,3H;C−C),1.82(m,2H;CH−CCH),1.62(m,6H;シクロペンチル部位),0.94(t、J=7.6 Hz,3H;COO−C−CH),0.84(t、J=7.6 Hz,3H;CH−CH).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−112.93(d,J=262Hz,1F),−118.80(d,J=262Hz,1F).
[実施例1]含フッ素重合体の合成
以下の実施例に記載の方法で含フッ素重合体を合成した。なお、重合体の分子量(重量平均分子量Mw)と分子量分散(Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mn)は、ゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により算出した。
GPC機種: 東ソー製HLC−8320GPC
使用カラム: 東ソー製ALPHA−Mカラム(1本)、ALPHA−2500カラム(1本)を直列に繋ぎ使用
展開溶媒 : テトラヒドロフラン
検出器 : 屈折率差検出器
(実施例1−1)含フッ素重合体の樹脂合成例1
(含フッ素高分子化合物(1): MA−PFA−MCP/MA−MIB−HFA=75/25共重合系)
【0155】
【化26】

【0156】
ガラス製フラスコ中にて、MA−PFA−MCP 1.46g(4.80mmol)およびMA−MIB−HFA 0.54g(1.60mmol)を2−ブタノン 6.01gに溶解させ、この溶液に対して重合開始剤p−PV(製品名t−ブチルパーオキシピバラート、日油(株)製)を0.061g(0.25mmol)加えた。撹拌させながら脱気し、窒素ガスを導入した後に、60℃にて20時間の反応を行った。反応終了後の溶液を濃縮し、次いで当該濃縮液を攪拌しながらn−ヘプタン(300g)に少しずつ加え、得られた沈殿を乾燥して1.61gの白色固体(含フッ素高分子化合物(1))を得た(収率80%)。繰り返し単位の組成比は、NMRにおいて決定し、分子量はゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により算出した。結果を表1に示した。
【0157】
(実施例1−2)含フッ素重合体の樹脂合成例2
(含フッ素高分子化合物(2): MA−PFA−MCP/MA−MIB−HFA=50/50共重合系)
【0158】
【化27】

【0159】
ガラス製フラスコ中にて、MA−PFA−MCP 0.95g(3.12mmol)およびMA−MIB−HFA 1.05g(3.12mmol)を2−ブタノン 6.00gに溶解させ、この溶液に対して重合開始剤p−PV(製品名t−ブチルパーオキシピバラート、日油(株)製)を0.077g(0.31mmol)加えた。撹拌させながら脱気し、窒素ガスを導入した後に、60℃にて20時間の反応を行った。反応終了後の溶液を濃縮し、次いで当該濃縮液を攪拌しながらn−ヘプタン(300g)に少しずつ加え、得られた沈殿を乾燥して1.72gの白色固体(含フッ素高分子化合物(2))を得た(収率86%)。繰り返し単位の組成比は、NMRにおいて決定し、分子量はゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により算出した。結果を表1に示した。
【0160】
(実施例1−3)含フッ素重合体の樹脂合成例3
(含フッ素高分子化合物(3): MA−PFA−MCP/MA−MIB−HFA=25/75共重合系)
【0161】
【化28】

【0162】
ガラス製フラスコ中にて、MA−PFA−MCP 0.46g(1.52mmol)およびMA−MIB−HFA 1.54g(4.57mmol)を2−ブタノン 6.00gに溶解させ、この溶液に対して重合開始剤p−PV(製品名t−ブチルパーオキシピバラート、日油(株)製)を0.060g(0.24mmol)加えた。撹拌させながら脱気し、窒素ガスを導入した後に、60℃にて20時間の反応を行った。反応終了後の溶液を濃縮し、次いで当該濃縮液を攪拌しながらn−ヘプタン(300g)に少しずつ加え、得られた沈殿を乾燥して1.75gの白色固体(含フッ素高分子化合物(3))を得た(収率87%)。繰り返し単位の組成比は、NMRにおいて決定し、分子量はゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により算出した。結果を表1に示した。
【0163】
(実施例1−4)含フッ素重合体の樹脂合成例4
(含フッ素高分子化合物(4): MA−PFA−ECP/MA−MIB−HFA=50/50共重合系)
【0164】
【化29】

【0165】
MA−PFA−ECP MA−MIB−HFA 含フッ素高分子化合物(4)
50 50
ガラス製フラスコ中にて、MA−PFA−ECP 0.98g(3.09mmol)お よびMA−MIB−HFA 1.03g(3.06mmol)を2−ブタノン 6.0 0gに溶解させ、この溶液に対して重合開始剤p−PV(製品名t−ブチルパーオキシ ピバラート、日油(株)製)を0.060g(0.24mmol)加えた。撹拌させな がら脱気し、窒素ガスを導入した後に、60℃にて20時間の反応を行った。反応終了 後の溶液を濃縮し、n−ヘプタン(20.0g)およびメタノール(4.10g)で有 機二層洗浄を行い、溶媒を留去して1.47gの白色固体(含フッ素高分子化合物(4 ))を得た(収率73%)。繰り返し単位の組成比は、NMRにおいて決定し、分子量 はゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により 算出した。結果を表1に示した。
【0166】
なお、含フッ素高分子化合物(1)〜(4)は弱溶剤であるMIBCに溶解することを確認した。
【0167】
【表1】

【0168】
「実施例2」 撥水性添加剤試験
レジスト組成物に添加する前に、撥水性添加剤自体の樹脂物性を検討するため、以下の実験を行った。
「撥水性添加剤溶液の調製」
実施例1で合成した含フッ素高分子化合物(1)〜(4)をそれぞれプロピレングリコールモノメチルアセテート(PGMEA)に溶解し、固形分が5%になるように調製したところ、いずれも均一で透明な高分子溶液(撥水性添加剤溶液)が得られた。
「撥水性添加剤樹脂の成膜」
予め酸化膜処理されているシリコンウェハ上に、それぞれの撥水性添加剤溶液を、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過・滴下した後、スピナーを用いて回転数1,500rpmでスピンコートし、ホットプレート上にて60℃以下で60秒間乾燥させたところ、均一な樹脂膜が得られた。
【0169】
「後退接触角の測定」
協和界面科学製の装置CA−X型を用い、拡張・収縮法で後退接触角を測定した。
【0170】
「アルカリ現像液溶解性試験」
撥水性添加剤樹脂膜を各温度で180秒間加熱して、アルカリ現像液溶解性について検討した。結果を表2に示した。
【0171】
【表2】

【0172】
後退接触角が高いほど高速スキャン露光をしても液滴が残りにくい。表2の結果より、含フッ素高分子化合物(1)〜(4)を含む本発明の撥水性添加剤は、高い後退接触角を示した。
【0173】
また、本発明の撥水性添加剤は、熱処理前はアルカリ現像液に不溶であったが、120〜130℃で熱処理を行うと保護基が外れ、良好な現像液溶解性を示した。また、MA−PFA−ECPを含む系では、熱処理温度が比較的低温でも溶解性を示した。
【0174】
「実施例3−1」 レジスト用重合体の合成(レジスト用重合体)
【0175】
【化30】

【0176】
ガラス製フラスコ中にて、エチルアダマンチルメタクリレート(MA−EAD)13.4g(54.1mmol)、γ−ブチロラクトンメタクリレート(MA−GBL)6.95g(40.8mmol)、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート(MA−HAD)9.60g(40.6mmol)を2−ブタノン 30.0gに溶解させて、この溶液に対してn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.58g(2.86mmol)および重合開始剤p−PV(製品名t−ブチルパーオキシピバラート、日油(株)製)を1.31g(5.34mmol)加えた。撹拌させながら脱気し、窒素ガスを導入した後に、75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を618gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い27.4gの白色固体を得た(収率91%)。GPC測定結果;Mn=7,400、Mw/Mn=2.13
「実施例3−2」 レジスト組成物
実施例3−1で得られたレジスト用重合体をプロピレングリコールモノメチルアセテートに溶解させて、固形分5%になるように調整した。さらに酸発生剤としてノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムを重合体100重量部に対して5重量部になるように、塩基としてイソプロパノールアミンを同2重量部になるように溶解し、レジスト溶液を調製した。
【0177】
「実施例3−3」 撥水性添加剤含有レジスト組成物
実施例3−2で調製したレジスト組成物に実施例1で調製した含フッ素高分子化合物(1)〜(4)を樹脂重量比で90:10になるように添加し、撥水性添加剤含有レジスト溶液を調製した(それぞれ、撥水性添加剤含有レジスト溶液(1)〜(4)とする)。
【0178】
[実施例4]
実施例3−3で調製した撥水性添加剤含有レジスト溶液((1)〜(4))を用い、それぞれメンブランフィルター(0.2μm)でろ過した後シリコンウェハ上に滴下し、スピナーを用いて1,500rpmでスピンコートした。次いで、ホットプレート上にて60℃で60秒間乾燥させて、膜厚100〜150nmのレジスト膜を得た。
【0179】
得られた樹脂膜について、それぞれ、純水浸漬試験(PAGのブリーチング評価)、露光解像試験を行った。結果を表3に示した。
【0180】
「純水浸漬試験」
上記の方法で得られた樹脂膜を形成したシリコンウェハを、それぞれ20mLの純水に10分浸漬して溶出物を抽出後、当該抽出液をイオンクロマトグラフィにて測定して、溶出物の有無を確認した。撥水性添加剤を使用しなかったもの(比較例2)を除いて、光酸発生剤やその分解物に帰属されるピークは観測されなかった。これは、撥水性添加剤が遍在する膜が形成されたとにより、レジスト成分から水への溶出が抑えられていることを示す。結果を表3に示した。
「後退接触角の測定」
協和界面科学製の装置CA−X型を用い、拡張・収縮法で後退接触角を測定した。結果を表3に示した。
【0181】
「露光試験」
撥水性添加剤含有レジスト溶液をメンブランフィルター(0.2μm)でろ過した後シリコンウェハ上に滴下し、スピナーを用いて1,500rpmでスピンコートした。60℃で60秒間プリベークした後、水を媒体として寸法130nmの1対1ラインアンドスペース(130nm1L/1Sパターン)のフォトマスクを介して193nmの紫外線で液浸露光した。露光後のウェハーを回転させながら純水を2分間滴下した。その後、130℃で180秒間ポストエクスポーザーベークを行い、撥水性添加剤の熱不安定基を熱分解(脱離)させた後、2.38%アルカリ現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)を用いて23℃で1分間現像した。この結果、いずれの樹脂膜からも高解像のパターン形状が得られ、基板への密着不良欠陥、成膜不良欠陥、現像欠陥、エッチング耐性不良による欠陥は見られなかった。
【0182】
得られたパターンの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、パターン形状を観察した。その際のパターン形状の評価を表3に示した。
【0183】
【表3】

【0184】
表3の結果より、含フッ素高分子化合物(1)〜(4)を撥水性添加剤として用いた樹脂膜のパターン形状は矩形となった。一方、撥水性添加剤を用いない系ではレジスト面が膨潤してしまい良好なパターンは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明による撥水性添加剤含有レジスト組成物はレジスト表面に撥水性添加剤が偏析するため、水に対する良好なバリヤ性能を有し、フォトレジスト材料の水への溶出を抑制するため、トップコートレス液浸リソグラフィーに有用である。また、高い撥水性を有することから液浸露光装置による高速スキャンが可能であって生産性を高めることができる。さらに、熱処理後に現像することによって現像液への溶解性を大きく増加させることができ、レジストパターンの欠陥を少なくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸リソグラフィーにおいて、レジスト組成物に添加して用いる撥水性添加剤であって、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とする液浸レジスト用撥水性添加剤。
【化1】

[式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基、Rは酸不安定性保護基、Rはフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。]
【請求項2】
がフッ素原子または炭素数1〜3の含フッ素アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト用撥水性添加剤。
【請求項3】
レジスト成膜後、レジスト膜上に偏析し、後退接触角が75°以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撥水性添加剤。
【請求項4】
熱処理によって現像液に対する溶解性が増すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撥水性添加剤。
【請求項5】
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物
(B)光酸発生剤
(C)塩基性化合物
(D)溶剤
を含むレジスト組成物に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撥水性添加剤を添加してなる撥水性添加剤含有レジスト組成物。
【請求項6】
(1)請求項5に記載の撥水性添加剤含有レジスト組成物を基板上に塗布する工程と、
(2)プリベーク後に投影レンズとウェハーの間に媒体を挿入させ、フォトマスクを介して波長300nm以下の高エネルギー線で露光する工程と、
(3)ポストエクスポーザーベーク後に現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
現像前のポストエクスポーザーベーク処理を60℃〜170℃で行うことを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
露光光源として、波長180〜300nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−271668(P2010−271668A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125780(P2009−125780)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】