液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法
【課題】絶縁耐圧に優れた液滴吐出ヘッド等を提供する。
【解決手段】複数のギャップ段差部20に電極部Aがそれぞれ形成された第2の基板2と、壁面の一部が振動板12からなる複数の吐出室13を有し、振動板12の吐出室と反対側の面上に絶縁膜15が成膜された第1の基板1とを少なくとも備え、振動板12及び絶縁膜15をギャップGを介して電極部Aと対向させ、ギャップ段差部20から電極部Aを取り出す電極取り出し部29を備えた液滴吐出ヘッドであって、ギャップ段差部20の電極取り出し部29の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜25を形成した。この絶縁保護膜25は、電極部Aのリード部22の端部近傍に形成する。
【解決手段】複数のギャップ段差部20に電極部Aがそれぞれ形成された第2の基板2と、壁面の一部が振動板12からなる複数の吐出室13を有し、振動板12の吐出室と反対側の面上に絶縁膜15が成膜された第1の基板1とを少なくとも備え、振動板12及び絶縁膜15をギャップGを介して電極部Aと対向させ、ギャップ段差部20から電極部Aを取り出す電極取り出し部29を備えた液滴吐出ヘッドであって、ギャップ段差部20の電極取り出し部29の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜25を形成した。この絶縁保護膜25は、電極部Aのリード部22の端部近傍に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液滴吐出ヘッドの電極取り出し部の開口エッチング工程では、貫通穴形成の際に、事前に、エッチングカバー膜として、絶縁性が高く、エッチング耐性の強固な絶縁膜を成膜しておき、ドライエッチングによる電極部及び基板へのダメージを防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−63072号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術によれば、事前に、エッチングカバー膜として絶縁膜を成膜しておくので、ドライエッチングによる電極部及び基板へのダメージを防止することができるが、後工程において絶縁膜を除去しなければならず、絶縁膜で覆われていない部分で、インクジェットの駆動時に放電してしまう場合があった。このため、絶縁耐圧や長期駆動に対する耐久性が充分ではなかった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、絶縁耐圧や長期駆動に対する耐久性に優れ、信頼性が高い液滴吐出ヘッド及びその製造方法、並びに液滴吐出装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、複数のギャップ段差部に電極部がそれぞれ形成された第2の基板と、壁面の一部が振動板からなる複数の吐出室を有し、振動板の吐出室と反対側の面上に絶縁膜が成膜された第1の基板とを少なくとも備え、振動板及び絶縁膜をギャップを介して電極部と対向させ、ギャップ段差部から電極部を取り出す電極取り出し部を備えた液滴吐出ヘッドであって、
ギャップ段差部の電極取り出し部の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成したものである。
第2の基板のギャップ段差部の電極取り出し部の近傍に絶縁保護膜を成膜したので、第1の基板に成膜した絶縁膜と併せて、電極取り出し部の近傍で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れる。
【0007】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜を電極部のリード部の端部近傍に形成したものである。
第2の基板の電極部のリード部の端部近傍に絶縁保護膜を成膜したので、第1の基板に成膜した絶縁膜と併せて、リード部の端部近傍で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れる。
【0008】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜をギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さに成膜したものである。
電極部のリード部の端部で絶縁膜がギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さだけ厚くなり、絶縁耐圧が非常に優れる。
【0009】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜がSiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかからなる膜である。
SiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかから絶縁保護膜が形成されるため、絶縁耐圧が非常に優れる。
【0010】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
長期駆動に対する耐久性に優れて信頼性が高い液滴吐出装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第2の基板に複数のギャップ段差部を形成してそれぞれのギャップ段差部に電極部を形成し、ギャップ段差部の電極取り出し部となる部分の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成する工程と、第1の基板に振動板となる部分を形成しその上に絶縁膜を成膜する工程と、第2の基板と第1の基板とを、電極部と、振動板となる部分及び絶縁膜とが、ギャップを介して対向するように接合して、絶縁保護膜と絶縁膜とを対向して配置させる工程と、第1、第2の接合基板をウエットエッチングによりエッチングして、第1の基板に振動板を壁面の一部とする吐出室を含む液体流路及び電極取り出し用貫通穴部を形成し、電極取り出し用貫通穴部をさらにドライエッチングして貫通させ電極取り出し部を形成する工程とを含むものである。
第2の基板のギャップ段差部の電極取り出し部の近傍、詳しくは、電極部のリード部の端部近傍に絶縁保護膜を成膜したので、電極取り出し用貫通穴部の開口エッチング工程で、エッチングガスの回り込みによって絶縁膜がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分確保することができる。
【0012】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造するものである。
長期駆動に対する耐久性に優れて信頼性が高い液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図、図2は図1の液滴吐出ヘッドを組み立てた状態の縦断面図である。なお、本実施の形態1では、液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるフェイス型の液滴吐出ヘッドの場合を示している。
図1、図2に示すように、液滴吐出ヘッドは、振動板を有するキャビティ基板(第1の基板)1と、電極部を有するガラス基板(第2の基板)2と、ノズル孔を有するノズル基板(第3の基板)3とが積層された3層構造になっている。
【0014】
3層構造の中間に位置するキャビティ基板1は、例えば厚み約50μmの、(110)を面方位とするシリコン(Si)単結晶基板(以下、シリコン基板ともいう)で構成されている。このキャビティ基板1は、シリコン基板に異方性ウェットエッチングを施して形成したもので、底壁が振動板12となる吐出室13、及び各ノズル孔30に共通して吐出するための液体を溜めておくリザーバ14を有する。
【0015】
振動板12は、例えば厚みが約0.8μmであって、同じ厚みの高濃度のボロンドープ層により形成されている。そして、アルカリ性水溶液でシリコン基板の異方性ウェットエッチングを行った場合、ボロンをドーパントとしたときには、高濃度(約5×1019atoms・cm-3以上)の領域で極端にエッチングレートが小さくなるので、このことを利用したいわゆるエッチングストップ技術を用いて、振動板12の厚みや、吐出室13の容積を精度よく形成する。
【0016】
キャビティ基板1の下面(振動板12となるボロンドープ層の下面)には、絶縁膜15となるTEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)膜0.1μmが、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition )により成膜されている。これは、液滴吐出ヘッドを駆動させたときの絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。
なお、リザーバ14には液滴供給孔16が形成され、キャビティ基板1上には共通電極の端子部17が形成されている。
【0017】
キャビティ基板1の下面に陽極接合されるガラス基板2は、例えば厚みが約1mmであり、ホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスよりなる。ガラス基板2には、キャビティ基板1に形成されている各吐出室13に合わせて、エッチングにより深さ約0.2μmの電極凹部(ギャップ段差部)20が設けられており、その内部には、個別電極21、リード部22及び端子部23(以下、これらを合わせて電極部Aという)を設けているので、電極凹部20のパターン形状は電極部Aの形状よりも少し大きめに作製してある。
【0018】
電極凹部20に設ける電極部Aの材料としては、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、例えば0.1μmの厚みにスパッタ法を用いて成膜する。
したがって、振動板12と個別電極21との間で形成されるギャップGは、電極凹部20の深さ、個別電極21の厚みにより決まることになる。このギャップGは吐出特性に大きく影響する。
ここで、電極部Aの材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよいが、本実施の形態1では、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いている。
【0019】
電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍には、絶縁保護膜25が成膜されており、液滴吐出ヘッド駆動時の絶縁破壊及び短絡を防止している。この絶縁保護膜25は、例えば、電極凹部20の深さとほぼ同じ高さに形成する。絶縁保護膜25を構成する材料は、SiO2、Si3 N4 、Al2 O3 などの絶縁性の高い材料である。これは、電極取り出し部29を形成する際に、シリコン基板(キャビティ基板1)の貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)29a(図13(h)参照)に残っているシリコン薄膜及びTEOS絶縁膜をドライエッチングにより除去するとき、エッチングガスが回り込み、電極部Aのリード部22の端部近傍に位置する絶縁膜15が薄くなって、絶縁耐圧が低下するのを防ぐためである。
【0020】
ガラス基板2には液滴供給穴24が設けられており、サンドブラスト加工または切削加工により形成されて、キャビティ基板1のリザーバ14に設けられた液滴供給穴16と連通している。
【0021】
キャビティ基板1の上面(図2の上側面)に接合されるノズル基板3は、例えば厚み約180μmのシリコン基板からなり、ガラス基板2とは反対の面でキャビティ基板1に接合されている。ノズル基板3には、吐出室13と連通するノズル孔30が形成されており、下面にはオリフィス31が設けられ、吐出室13とリザーバ14とを連通している。リザーバ14と接する部分には、リザーバ14のコンプライアンスを高め、液滴吐出ヘッド駆動時のクロストークを吸収するため、ダイヤフラム32が形成されている。
ここでは、ノズル孔30を有するノズル基板3を上面とし、ガラス基板2を下面として説明しているが、実際に用いられる場合には、ノズル基板3の方が下面になることが多い。
【0022】
上記の液滴吐出ヘッドにおいて、振動板12と固定電極21とからなるアクチュエータは、封止材50によって個別電極21毎に封止されている。これにより、アクチュエータを駆動させた際の個別電極21と振動板12との貼り付き等を防止することができる。
なお、ガラス基板2上に形成した電極部Aの端子部23は、キャビティ基板1上に形成した共通電極の端子部17とともに、発振回路40に接続されている。
【0023】
上記のように構成した液滴吐出ヘッドの動作を説明する。
図2に示すように、吐出室13にはノズル孔30から吐出する吐出液体を溜めておく。そして、吐出室13の底壁である振動板12を撓ませ、吐出室13内の圧力を高めて、ノズル孔30から液滴を吐出させる。
【0024】
この際、発振回路40は、個別電極21への電荷の供給及び停止を制御する。例えば、24kHzで発振し、個別電極21に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。
個別電極21に電荷を供給して正に帯電させると、振動板12は負に帯電し、静電気力により個別電極21に引き寄せられて撓む。これにより吐出室13の体積は広がる。そして個別電極21への電荷供給を止めると振動板12は元に戻るが、そのときの吐出室13の体積も元に戻って縮小されるため、その圧力により差分の液滴がノズル孔30から吐出し、例えば液滴がインクである場合は、記録対象となる記録紙に着弾することによって記録が行われる。
なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
【0025】
本発明によれば、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、キャビティ基板3上に成膜した絶縁膜15と併せて、リード部22の端部で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0026】
上記のように構成した液滴吐出ヘッドのガラス基板2の製造方法を、図3−図11の製造工程図により説明する。図3−図8はガラス基板2の断面図であり、図9−図11は上面図である。
なお、以下の説明で記載した数値はその一例を示すもので、これに限定するものではない。
【0027】
(a) 図3(a)に示すように、約1mmの厚みのガラス基板2に、エッチングマスクとなるCr膜(クロム膜)201を片面に0.1μm成膜する。
【0028】
(b) 図3(b)に示すように、成膜したCr膜201の表面にレジスト202を塗布し、凹部Bを作り込むためのレジストパターニングを施す。
【0029】
(c) 図3(c)に示すように、硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングし、Cr膜201をパターニングする。
【0030】
(d) 図3(d)に示すように、レジスト202を付けた状態でガラス基板2をフッ化アンモニウム水溶液に浸し、凹部(溝部)Bを深さ0.2μmにエッチングする。
【0031】
(e) 図4(e)に示すように、レジスト202を剥離し、次にCr膜201を剥離する。形成された凹部Bは、図9に示すように、電極凹部(ギャップ段差部)20のほか、これと連通する気相処理凹部20aも含む。気相処理凹部20aは、ギャップG内の水分除去を行った後、疎水処理を行うために用いられる。気相処理凹部20aは、点線イ、ロで示すダイシングラインの外側(図の上側及び右側)に位置しており、完成された液滴吐出ヘッドには残らない。
なお、図9の液滴吐出ヘッドでは、電極凹部20を5箇所だけ示してあるが、実際には多くの電極凹部20が存在する(以下の図10、図11においても同様)。
【0032】
(f) 図5(f)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚みの電極部Aとなる部材aをパターニング面の全面に成膜する。電極部Aとなる部材aとして、例えばITOを用いる。
【0033】
(g) パターニング面にレジスト203を塗布し、図5(g)に示すように、電極凹部20の内部にITOが残るようにレジストパターニングを行う。
【0034】
(h) 図6(h)に示すように、硝酸と塩酸の混合液を用いて、ITOからなる部材aをエッチングして、電極部Aを形成する。その後、レジスト203を剥離する。
なお、図10に示すように、電極部Aはその端子部23の端部側で相互に連通しており、この連通した部分はダイシングされるので、完成された液滴吐出ヘッドには残らない。
【0035】
(i) パターニング面にレジスト204を塗布し、図7(i)に示すように、電極部Aの絶縁保護膜25(図2参照)を成膜する部分、すなわちリード部22の端部近傍だけが開口するように、レジストパターニングを行う。
【0036】
(j) 図7(j)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚みの絶縁保護部材250(SiO2 、Si3 N4 、Al2 O3 などの部材)をパターニング面全面に成膜する。
【0037】
(k) 絶縁保護部材250の下地のレジスト204を剥離する。これにより、図7(k)に示すように、電極部Aのリード部22の端部近傍にのみ絶縁保護部材250、すなわち絶縁保護膜25が残る。
【0038】
(l) 図8(l)、図11に示すように、インク供給穴24及び大気開放穴26をサンドブラスト法または切削加工により形成する。大気開放穴26は気相処理溝20aに形成され、ガラス基板2の電極凹部20と連通する。
【0039】
次に、上記の図3−図11に示した工程によって製造されたガラス基板2をシリコン基板(キャビティ基板1)と接合して、吐出室13を含む液体流路等を形成する方法を、図12−図14の製造工程図を用いて説明する。
【0040】
(a) 図12(a)に示すように、図3−図7に示す方法で加工したガラス基板2を用意する。
【0041】
(b) (110)を面方位とする酸素濃度の低いシリコン製のキャビティ基板1の片面を鏡面研磨し、220μmの厚みの基板を作製する。
次に、キャビティ基板1にボロンドープ層120(振動板12)を形成する側の面を、B2 O3 を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。縦型炉に石英ボートをセットし、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させてそのまま温度を7時間保持し、ボロンをキャビティ基板1中に拡散させてボロンドープ層120を形成する。ボロンドープ工程では、キャビティ基板1の投入温度を800℃とし、キャビティ基板1の取出し温度も800℃とする。これにより、酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過することができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。ボロンドープ層120の表面にはボロン化合物が形成されるが(図示せず)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB2 O3 +SiO2 に化学変化させることができる。B2 O3 +SiO2 に化学変化させた状態で、B2 O3 +SiO2 をふっ酸水溶液にてエッチング除去する。こうして、図12(b)に示すように、キャビティ基板1の表面にボロンドープ層120を形成する。
さらに、ボロンドープ層120を形成した側の面に、プラズマCVD法により、TEOSの絶縁膜15を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で、0.1μm成膜する。
【0042】
(c) キャビティ基板1とパターン形成済みのガラス基板2とを360℃に加熱した後、ガラス基板2に負極、キャビティ基板1に正極を接続し、800Vの電圧を印加して、図12(c)に示すように陽極接合する。
陽極接合時には、キャビティ基板1とガラス基板2の界面でガラスが電気化学的に分解され、酸素が発生する。また、加熱によって、表面に吸着していたガスが発生する場合がある。このとき、大気開放穴26は電極凹部20と接続しており(図11参照)、これらのガスは大気開放穴26から逃げるため、ギャップG内が正圧になることはなく、陽極結合後に形成されたギャップGが密閉されて陽極接合時に発生する酸素等によってギャップGが加圧されるのを防ぐ。
【0043】
(d) 陽極接合後、図12(d)に示すように、キャビティ基板1の表面を、キャビティ基板1の厚みが約60μmになるまで研削加工する。その後、加工変質層を除去するために、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて、キャビティ基板1を約10μm研磨する。これにより、キャビティ基板1の厚みは約50μmとなる。
なお、研削工程及び加工変質層除去工程では、大気開放穴26から液体がギャップG内に入り込まないように、片面保護治具やテープ等を用いて、大気開放穴26を保護する(図11参照)。
【0044】
(e) 図13(e)に示すように、研磨面に、プラズマCVDを用いて、成膜時の処理温度が360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件で、TEOSエッチングマスク101を1.0μm成膜する。
次に、大気開放穴26(図11参照)にエポキシ系接着剤を流し込み、穴を封止する。これにより、ギャップGは密閉状態となり、以後の工程で、大気開放穴26から液体が入り込むことがなくなる。この工程は、TEOSエッチングマスク101を成膜した後に行うのが望ましい。成膜前に大気開放穴26を封止すると、閉じ込められたギャップG内の気体が、成膜時に熱膨張し、薄くなったキャビティ基板1を押し上げて、キャビティ基板1が割れてしまうことがある。
【0045】
(f) TEOSエッチングマスク101にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でエッチングし、後述する吐出室13及び第2封止部(図示せず)に対応する部分をパターニングする。そして、レジストを剥離する。
さらに、TEOSエッチングマスク101にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液で0.7μmだけエッチングし、図13(f)に示すように、後述のリザーバ14及び貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)29aに対応する部分をパターニングする。リザーバ14及び貫通穴となる部分29aに対応する部分のTEOSエッチングマスク101の残りは0.3μmとなる。これは、最終的にリザーバ14及び貫通穴となる部分29aに厚みを持たせ、剛性を高めるためである。そして、レジストを剥離する。
【0046】
(g) 接合基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、図13(g)に示すように、吐出室13の厚みが約5μmになるまでエッチングを行う。このとき、リザーバ14及び貫通穴となる部分29aのエッチングはまだ始まらない。
【0047】
(h) リザーバ14及び貫通穴となる部分29aに対応する部分のTEOSエッチングマスク101を除去するため、ふっ酸水溶液に接合基板を浸す。そして接合基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に約20分間浸し、ボロンドープ層120でのエッチングレート低下によるエッチングストップをさせる。前記2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、図13(h)に示すように、ボロンドープ層120から形成される振動板12の面荒れを抑制し、振動板12の厚み精度を0.80±0.05μm以下にすることができ、液滴吐出ヘッドの吐出性能を安定化することができる。
リザーバ14、及び貫通穴となる部分29aの深さは約30μmとなる。従って、リザーバ14及び貫通穴となる部分29aの厚みは約20μmとなる。このため、強度が向上し、キャビティ基板1のエッチング中に、広い面積を持つリザーバ14や貫通穴となる部分29aが割れることがなくなり、歩留まりを向上することができる。
【0048】
(i) キャビティ基板1のエッチングが終了したら、キャビティ基板1をふっ酸水溶液に浸し、キャビティ基板1表面のTEOSエッチングマスク101を剥離する。
第2封止部となる部分(図示せず)、及び貫通穴となる部分29aに残っているシリコン薄膜(図13(h)参照)を除去するために、貫通穴部のみ開口したSiマスクをキャビティ基板1の表面に取り付け、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、SF6 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチングを1時間行い、貫通穴部のみにプラズマを当てる。次に、TEOSの絶縁膜15のみ残るため、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチングを10分間行う。こうして、第2封止部となる部分(図示せず)及び貫通穴となる部分29aが貫通し、第2封止部(図示せず)及び貫通穴が形成され、ギャップG内は大気開放される。図14(i)に示すように、貫通穴となる部分29aが貫通して、電極取り出し部29が形成される。
この開口エッチング工程では、キャビティ基板1の端部近傍(ガラス基板2のリード部22の端部近傍の上側に相当)に位置するTEOSの絶縁膜15や、ガラス基板2の絶縁保護膜25にもエッチングガスが回り込む。しかしながら、図14(i)に示すように絶縁保護膜25を予め成膜しているため、TEOSの絶縁膜15や絶縁保護膜25がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分に確保することができる。
【0049】
(j) 個別電極封止部のみ開口したSiマスクをキャビティ基板1の表面に取り付け、プラズマCVDを用いてガラス裏面から無機材料を堆積し、図14(j)に示すように、ギャップGを封止材50によって封止する。封止材50に用いる無機材料として、例えば、TEOS膜を用いる。
【0050】
(k) 接合基板を真空チャンバーに入れた後、図14(k)に示すように、360℃の高温下で真空引きし、ギャップG内の水分を除去する。そして、第2封止部にエポキシ系樹脂を盛り、硬化させることで(図示せず)、ギャップGは再び密閉状態になる。
【0051】
次に、図12−図14に示した工程によって製造されたガラス基板2とキャビティ基板1との接合基板にノズル基板3を接合して、液滴吐出ヘッドを製造する方法を、図15の製造工程図を用いて説明する。
【0052】
(a) 図15(a)に示すように、接合基板のキャビティ基板1側に、ノズル基板3をエポキシ系接着剤により接着する。
【0053】
(b) 図15(b)に示すように、ダイシングラインイ、ロに沿ってダイシングを行い、個々のヘッドに切断する。このとき、陽極接合時には短絡していたITOの電極部Aは、インクキャビティ毎に分断される。また大気封止穴26及びそこに連通する気相処理凹部20aも切断される。
こうして、ガラス基板2、キャビティ基板1、及びノズル基板3が積層された液滴吐出ヘッドが完成する。
【0054】
本発明によれば、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、貫通穴となる部分29aの開口エッチング工程で、エッチングガスの回り込みにより絶縁膜15がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分に確保することができる。
【0055】
実施の形態2.
図16は、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を示す斜視図である。図16に示す液滴吐出装置は、一般的なインクジェットプリンタである。
実施の形態1に示す液滴吐出ヘッドは、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、キャビティ基板1上に成膜した絶縁膜15と併せて、リード部22の端部近傍では絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れるので、長期駆動に対する耐久性に優れ、高精度で信頼性が高い液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得ることができる。
なお、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドは、図16に示すインクジェットプリンタの他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図。
【図2】図1の液滴吐出ヘッドを組み立てた状態の縦断面図。
【図3】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図4】図2に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図5】図4に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図6】図5に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図7】図6に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図8】図7に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図9】図4の上面図。
【図10】図6の上面図。
【図11】図8の上面図。
【図12】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図13】図12に続く液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図14】図13に続く液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図15】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図16】本発明の実施の形態2に係る液滴吐出装置の斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1 キャビティ基板(第1の基板)、2 ガラス基板(第2の基板)、3 ノズル基板(第3の基板)、12 振動板、13 吐出室、14 リザーバ、15 絶縁膜、20 電極凹部(ギャップ段差部)、21 個別電極、22 リード部、23 端子部、25 絶縁保護膜、29 電極取り出し部、29a 貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)、30 ノズル孔、A 電極部、G ギャップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液滴吐出ヘッドの電極取り出し部の開口エッチング工程では、貫通穴形成の際に、事前に、エッチングカバー膜として、絶縁性が高く、エッチング耐性の強固な絶縁膜を成膜しておき、ドライエッチングによる電極部及び基板へのダメージを防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−63072号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術によれば、事前に、エッチングカバー膜として絶縁膜を成膜しておくので、ドライエッチングによる電極部及び基板へのダメージを防止することができるが、後工程において絶縁膜を除去しなければならず、絶縁膜で覆われていない部分で、インクジェットの駆動時に放電してしまう場合があった。このため、絶縁耐圧や長期駆動に対する耐久性が充分ではなかった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、絶縁耐圧や長期駆動に対する耐久性に優れ、信頼性が高い液滴吐出ヘッド及びその製造方法、並びに液滴吐出装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、複数のギャップ段差部に電極部がそれぞれ形成された第2の基板と、壁面の一部が振動板からなる複数の吐出室を有し、振動板の吐出室と反対側の面上に絶縁膜が成膜された第1の基板とを少なくとも備え、振動板及び絶縁膜をギャップを介して電極部と対向させ、ギャップ段差部から電極部を取り出す電極取り出し部を備えた液滴吐出ヘッドであって、
ギャップ段差部の電極取り出し部の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成したものである。
第2の基板のギャップ段差部の電極取り出し部の近傍に絶縁保護膜を成膜したので、第1の基板に成膜した絶縁膜と併せて、電極取り出し部の近傍で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れる。
【0007】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜を電極部のリード部の端部近傍に形成したものである。
第2の基板の電極部のリード部の端部近傍に絶縁保護膜を成膜したので、第1の基板に成膜した絶縁膜と併せて、リード部の端部近傍で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れる。
【0008】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜をギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さに成膜したものである。
電極部のリード部の端部で絶縁膜がギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さだけ厚くなり、絶縁耐圧が非常に優れる。
【0009】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、絶縁保護膜がSiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかからなる膜である。
SiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかから絶縁保護膜が形成されるため、絶縁耐圧が非常に優れる。
【0010】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
長期駆動に対する耐久性に優れて信頼性が高い液滴吐出装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第2の基板に複数のギャップ段差部を形成してそれぞれのギャップ段差部に電極部を形成し、ギャップ段差部の電極取り出し部となる部分の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成する工程と、第1の基板に振動板となる部分を形成しその上に絶縁膜を成膜する工程と、第2の基板と第1の基板とを、電極部と、振動板となる部分及び絶縁膜とが、ギャップを介して対向するように接合して、絶縁保護膜と絶縁膜とを対向して配置させる工程と、第1、第2の接合基板をウエットエッチングによりエッチングして、第1の基板に振動板を壁面の一部とする吐出室を含む液体流路及び電極取り出し用貫通穴部を形成し、電極取り出し用貫通穴部をさらにドライエッチングして貫通させ電極取り出し部を形成する工程とを含むものである。
第2の基板のギャップ段差部の電極取り出し部の近傍、詳しくは、電極部のリード部の端部近傍に絶縁保護膜を成膜したので、電極取り出し用貫通穴部の開口エッチング工程で、エッチングガスの回り込みによって絶縁膜がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分確保することができる。
【0012】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造するものである。
長期駆動に対する耐久性に優れて信頼性が高い液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図、図2は図1の液滴吐出ヘッドを組み立てた状態の縦断面図である。なお、本実施の形態1では、液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるフェイス型の液滴吐出ヘッドの場合を示している。
図1、図2に示すように、液滴吐出ヘッドは、振動板を有するキャビティ基板(第1の基板)1と、電極部を有するガラス基板(第2の基板)2と、ノズル孔を有するノズル基板(第3の基板)3とが積層された3層構造になっている。
【0014】
3層構造の中間に位置するキャビティ基板1は、例えば厚み約50μmの、(110)を面方位とするシリコン(Si)単結晶基板(以下、シリコン基板ともいう)で構成されている。このキャビティ基板1は、シリコン基板に異方性ウェットエッチングを施して形成したもので、底壁が振動板12となる吐出室13、及び各ノズル孔30に共通して吐出するための液体を溜めておくリザーバ14を有する。
【0015】
振動板12は、例えば厚みが約0.8μmであって、同じ厚みの高濃度のボロンドープ層により形成されている。そして、アルカリ性水溶液でシリコン基板の異方性ウェットエッチングを行った場合、ボロンをドーパントとしたときには、高濃度(約5×1019atoms・cm-3以上)の領域で極端にエッチングレートが小さくなるので、このことを利用したいわゆるエッチングストップ技術を用いて、振動板12の厚みや、吐出室13の容積を精度よく形成する。
【0016】
キャビティ基板1の下面(振動板12となるボロンドープ層の下面)には、絶縁膜15となるTEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)膜0.1μmが、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition )により成膜されている。これは、液滴吐出ヘッドを駆動させたときの絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。
なお、リザーバ14には液滴供給孔16が形成され、キャビティ基板1上には共通電極の端子部17が形成されている。
【0017】
キャビティ基板1の下面に陽極接合されるガラス基板2は、例えば厚みが約1mmであり、ホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスよりなる。ガラス基板2には、キャビティ基板1に形成されている各吐出室13に合わせて、エッチングにより深さ約0.2μmの電極凹部(ギャップ段差部)20が設けられており、その内部には、個別電極21、リード部22及び端子部23(以下、これらを合わせて電極部Aという)を設けているので、電極凹部20のパターン形状は電極部Aの形状よりも少し大きめに作製してある。
【0018】
電極凹部20に設ける電極部Aの材料としては、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、例えば0.1μmの厚みにスパッタ法を用いて成膜する。
したがって、振動板12と個別電極21との間で形成されるギャップGは、電極凹部20の深さ、個別電極21の厚みにより決まることになる。このギャップGは吐出特性に大きく影響する。
ここで、電極部Aの材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよいが、本実施の形態1では、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いている。
【0019】
電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍には、絶縁保護膜25が成膜されており、液滴吐出ヘッド駆動時の絶縁破壊及び短絡を防止している。この絶縁保護膜25は、例えば、電極凹部20の深さとほぼ同じ高さに形成する。絶縁保護膜25を構成する材料は、SiO2、Si3 N4 、Al2 O3 などの絶縁性の高い材料である。これは、電極取り出し部29を形成する際に、シリコン基板(キャビティ基板1)の貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)29a(図13(h)参照)に残っているシリコン薄膜及びTEOS絶縁膜をドライエッチングにより除去するとき、エッチングガスが回り込み、電極部Aのリード部22の端部近傍に位置する絶縁膜15が薄くなって、絶縁耐圧が低下するのを防ぐためである。
【0020】
ガラス基板2には液滴供給穴24が設けられており、サンドブラスト加工または切削加工により形成されて、キャビティ基板1のリザーバ14に設けられた液滴供給穴16と連通している。
【0021】
キャビティ基板1の上面(図2の上側面)に接合されるノズル基板3は、例えば厚み約180μmのシリコン基板からなり、ガラス基板2とは反対の面でキャビティ基板1に接合されている。ノズル基板3には、吐出室13と連通するノズル孔30が形成されており、下面にはオリフィス31が設けられ、吐出室13とリザーバ14とを連通している。リザーバ14と接する部分には、リザーバ14のコンプライアンスを高め、液滴吐出ヘッド駆動時のクロストークを吸収するため、ダイヤフラム32が形成されている。
ここでは、ノズル孔30を有するノズル基板3を上面とし、ガラス基板2を下面として説明しているが、実際に用いられる場合には、ノズル基板3の方が下面になることが多い。
【0022】
上記の液滴吐出ヘッドにおいて、振動板12と固定電極21とからなるアクチュエータは、封止材50によって個別電極21毎に封止されている。これにより、アクチュエータを駆動させた際の個別電極21と振動板12との貼り付き等を防止することができる。
なお、ガラス基板2上に形成した電極部Aの端子部23は、キャビティ基板1上に形成した共通電極の端子部17とともに、発振回路40に接続されている。
【0023】
上記のように構成した液滴吐出ヘッドの動作を説明する。
図2に示すように、吐出室13にはノズル孔30から吐出する吐出液体を溜めておく。そして、吐出室13の底壁である振動板12を撓ませ、吐出室13内の圧力を高めて、ノズル孔30から液滴を吐出させる。
【0024】
この際、発振回路40は、個別電極21への電荷の供給及び停止を制御する。例えば、24kHzで発振し、個別電極21に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。
個別電極21に電荷を供給して正に帯電させると、振動板12は負に帯電し、静電気力により個別電極21に引き寄せられて撓む。これにより吐出室13の体積は広がる。そして個別電極21への電荷供給を止めると振動板12は元に戻るが、そのときの吐出室13の体積も元に戻って縮小されるため、その圧力により差分の液滴がノズル孔30から吐出し、例えば液滴がインクである場合は、記録対象となる記録紙に着弾することによって記録が行われる。
なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
【0025】
本発明によれば、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、キャビティ基板3上に成膜した絶縁膜15と併せて、リード部22の端部で絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0026】
上記のように構成した液滴吐出ヘッドのガラス基板2の製造方法を、図3−図11の製造工程図により説明する。図3−図8はガラス基板2の断面図であり、図9−図11は上面図である。
なお、以下の説明で記載した数値はその一例を示すもので、これに限定するものではない。
【0027】
(a) 図3(a)に示すように、約1mmの厚みのガラス基板2に、エッチングマスクとなるCr膜(クロム膜)201を片面に0.1μm成膜する。
【0028】
(b) 図3(b)に示すように、成膜したCr膜201の表面にレジスト202を塗布し、凹部Bを作り込むためのレジストパターニングを施す。
【0029】
(c) 図3(c)に示すように、硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングし、Cr膜201をパターニングする。
【0030】
(d) 図3(d)に示すように、レジスト202を付けた状態でガラス基板2をフッ化アンモニウム水溶液に浸し、凹部(溝部)Bを深さ0.2μmにエッチングする。
【0031】
(e) 図4(e)に示すように、レジスト202を剥離し、次にCr膜201を剥離する。形成された凹部Bは、図9に示すように、電極凹部(ギャップ段差部)20のほか、これと連通する気相処理凹部20aも含む。気相処理凹部20aは、ギャップG内の水分除去を行った後、疎水処理を行うために用いられる。気相処理凹部20aは、点線イ、ロで示すダイシングラインの外側(図の上側及び右側)に位置しており、完成された液滴吐出ヘッドには残らない。
なお、図9の液滴吐出ヘッドでは、電極凹部20を5箇所だけ示してあるが、実際には多くの電極凹部20が存在する(以下の図10、図11においても同様)。
【0032】
(f) 図5(f)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚みの電極部Aとなる部材aをパターニング面の全面に成膜する。電極部Aとなる部材aとして、例えばITOを用いる。
【0033】
(g) パターニング面にレジスト203を塗布し、図5(g)に示すように、電極凹部20の内部にITOが残るようにレジストパターニングを行う。
【0034】
(h) 図6(h)に示すように、硝酸と塩酸の混合液を用いて、ITOからなる部材aをエッチングして、電極部Aを形成する。その後、レジスト203を剥離する。
なお、図10に示すように、電極部Aはその端子部23の端部側で相互に連通しており、この連通した部分はダイシングされるので、完成された液滴吐出ヘッドには残らない。
【0035】
(i) パターニング面にレジスト204を塗布し、図7(i)に示すように、電極部Aの絶縁保護膜25(図2参照)を成膜する部分、すなわちリード部22の端部近傍だけが開口するように、レジストパターニングを行う。
【0036】
(j) 図7(j)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚みの絶縁保護部材250(SiO2 、Si3 N4 、Al2 O3 などの部材)をパターニング面全面に成膜する。
【0037】
(k) 絶縁保護部材250の下地のレジスト204を剥離する。これにより、図7(k)に示すように、電極部Aのリード部22の端部近傍にのみ絶縁保護部材250、すなわち絶縁保護膜25が残る。
【0038】
(l) 図8(l)、図11に示すように、インク供給穴24及び大気開放穴26をサンドブラスト法または切削加工により形成する。大気開放穴26は気相処理溝20aに形成され、ガラス基板2の電極凹部20と連通する。
【0039】
次に、上記の図3−図11に示した工程によって製造されたガラス基板2をシリコン基板(キャビティ基板1)と接合して、吐出室13を含む液体流路等を形成する方法を、図12−図14の製造工程図を用いて説明する。
【0040】
(a) 図12(a)に示すように、図3−図7に示す方法で加工したガラス基板2を用意する。
【0041】
(b) (110)を面方位とする酸素濃度の低いシリコン製のキャビティ基板1の片面を鏡面研磨し、220μmの厚みの基板を作製する。
次に、キャビティ基板1にボロンドープ層120(振動板12)を形成する側の面を、B2 O3 を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。縦型炉に石英ボートをセットし、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させてそのまま温度を7時間保持し、ボロンをキャビティ基板1中に拡散させてボロンドープ層120を形成する。ボロンドープ工程では、キャビティ基板1の投入温度を800℃とし、キャビティ基板1の取出し温度も800℃とする。これにより、酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過することができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。ボロンドープ層120の表面にはボロン化合物が形成されるが(図示せず)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB2 O3 +SiO2 に化学変化させることができる。B2 O3 +SiO2 に化学変化させた状態で、B2 O3 +SiO2 をふっ酸水溶液にてエッチング除去する。こうして、図12(b)に示すように、キャビティ基板1の表面にボロンドープ層120を形成する。
さらに、ボロンドープ層120を形成した側の面に、プラズマCVD法により、TEOSの絶縁膜15を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で、0.1μm成膜する。
【0042】
(c) キャビティ基板1とパターン形成済みのガラス基板2とを360℃に加熱した後、ガラス基板2に負極、キャビティ基板1に正極を接続し、800Vの電圧を印加して、図12(c)に示すように陽極接合する。
陽極接合時には、キャビティ基板1とガラス基板2の界面でガラスが電気化学的に分解され、酸素が発生する。また、加熱によって、表面に吸着していたガスが発生する場合がある。このとき、大気開放穴26は電極凹部20と接続しており(図11参照)、これらのガスは大気開放穴26から逃げるため、ギャップG内が正圧になることはなく、陽極結合後に形成されたギャップGが密閉されて陽極接合時に発生する酸素等によってギャップGが加圧されるのを防ぐ。
【0043】
(d) 陽極接合後、図12(d)に示すように、キャビティ基板1の表面を、キャビティ基板1の厚みが約60μmになるまで研削加工する。その後、加工変質層を除去するために、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて、キャビティ基板1を約10μm研磨する。これにより、キャビティ基板1の厚みは約50μmとなる。
なお、研削工程及び加工変質層除去工程では、大気開放穴26から液体がギャップG内に入り込まないように、片面保護治具やテープ等を用いて、大気開放穴26を保護する(図11参照)。
【0044】
(e) 図13(e)に示すように、研磨面に、プラズマCVDを用いて、成膜時の処理温度が360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件で、TEOSエッチングマスク101を1.0μm成膜する。
次に、大気開放穴26(図11参照)にエポキシ系接着剤を流し込み、穴を封止する。これにより、ギャップGは密閉状態となり、以後の工程で、大気開放穴26から液体が入り込むことがなくなる。この工程は、TEOSエッチングマスク101を成膜した後に行うのが望ましい。成膜前に大気開放穴26を封止すると、閉じ込められたギャップG内の気体が、成膜時に熱膨張し、薄くなったキャビティ基板1を押し上げて、キャビティ基板1が割れてしまうことがある。
【0045】
(f) TEOSエッチングマスク101にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でエッチングし、後述する吐出室13及び第2封止部(図示せず)に対応する部分をパターニングする。そして、レジストを剥離する。
さらに、TEOSエッチングマスク101にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液で0.7μmだけエッチングし、図13(f)に示すように、後述のリザーバ14及び貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)29aに対応する部分をパターニングする。リザーバ14及び貫通穴となる部分29aに対応する部分のTEOSエッチングマスク101の残りは0.3μmとなる。これは、最終的にリザーバ14及び貫通穴となる部分29aに厚みを持たせ、剛性を高めるためである。そして、レジストを剥離する。
【0046】
(g) 接合基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、図13(g)に示すように、吐出室13の厚みが約5μmになるまでエッチングを行う。このとき、リザーバ14及び貫通穴となる部分29aのエッチングはまだ始まらない。
【0047】
(h) リザーバ14及び貫通穴となる部分29aに対応する部分のTEOSエッチングマスク101を除去するため、ふっ酸水溶液に接合基板を浸す。そして接合基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に約20分間浸し、ボロンドープ層120でのエッチングレート低下によるエッチングストップをさせる。前記2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、図13(h)に示すように、ボロンドープ層120から形成される振動板12の面荒れを抑制し、振動板12の厚み精度を0.80±0.05μm以下にすることができ、液滴吐出ヘッドの吐出性能を安定化することができる。
リザーバ14、及び貫通穴となる部分29aの深さは約30μmとなる。従って、リザーバ14及び貫通穴となる部分29aの厚みは約20μmとなる。このため、強度が向上し、キャビティ基板1のエッチング中に、広い面積を持つリザーバ14や貫通穴となる部分29aが割れることがなくなり、歩留まりを向上することができる。
【0048】
(i) キャビティ基板1のエッチングが終了したら、キャビティ基板1をふっ酸水溶液に浸し、キャビティ基板1表面のTEOSエッチングマスク101を剥離する。
第2封止部となる部分(図示せず)、及び貫通穴となる部分29aに残っているシリコン薄膜(図13(h)参照)を除去するために、貫通穴部のみ開口したSiマスクをキャビティ基板1の表面に取り付け、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、SF6 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチングを1時間行い、貫通穴部のみにプラズマを当てる。次に、TEOSの絶縁膜15のみ残るため、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチングを10分間行う。こうして、第2封止部となる部分(図示せず)及び貫通穴となる部分29aが貫通し、第2封止部(図示せず)及び貫通穴が形成され、ギャップG内は大気開放される。図14(i)に示すように、貫通穴となる部分29aが貫通して、電極取り出し部29が形成される。
この開口エッチング工程では、キャビティ基板1の端部近傍(ガラス基板2のリード部22の端部近傍の上側に相当)に位置するTEOSの絶縁膜15や、ガラス基板2の絶縁保護膜25にもエッチングガスが回り込む。しかしながら、図14(i)に示すように絶縁保護膜25を予め成膜しているため、TEOSの絶縁膜15や絶縁保護膜25がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分に確保することができる。
【0049】
(j) 個別電極封止部のみ開口したSiマスクをキャビティ基板1の表面に取り付け、プラズマCVDを用いてガラス裏面から無機材料を堆積し、図14(j)に示すように、ギャップGを封止材50によって封止する。封止材50に用いる無機材料として、例えば、TEOS膜を用いる。
【0050】
(k) 接合基板を真空チャンバーに入れた後、図14(k)に示すように、360℃の高温下で真空引きし、ギャップG内の水分を除去する。そして、第2封止部にエポキシ系樹脂を盛り、硬化させることで(図示せず)、ギャップGは再び密閉状態になる。
【0051】
次に、図12−図14に示した工程によって製造されたガラス基板2とキャビティ基板1との接合基板にノズル基板3を接合して、液滴吐出ヘッドを製造する方法を、図15の製造工程図を用いて説明する。
【0052】
(a) 図15(a)に示すように、接合基板のキャビティ基板1側に、ノズル基板3をエポキシ系接着剤により接着する。
【0053】
(b) 図15(b)に示すように、ダイシングラインイ、ロに沿ってダイシングを行い、個々のヘッドに切断する。このとき、陽極接合時には短絡していたITOの電極部Aは、インクキャビティ毎に分断される。また大気封止穴26及びそこに連通する気相処理凹部20aも切断される。
こうして、ガラス基板2、キャビティ基板1、及びノズル基板3が積層された液滴吐出ヘッドが完成する。
【0054】
本発明によれば、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、貫通穴となる部分29aの開口エッチング工程で、エッチングガスの回り込みにより絶縁膜15がわずかにエッチングされても、絶縁耐圧を十分に確保することができる。
【0055】
実施の形態2.
図16は、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を示す斜視図である。図16に示す液滴吐出装置は、一般的なインクジェットプリンタである。
実施の形態1に示す液滴吐出ヘッドは、ガラス基板2の電極凹部20の電極取り出し部29の近傍、詳しくは、電極部Aのリード部22の端部近傍に絶縁保護膜25を成膜したので、キャビティ基板1上に成膜した絶縁膜15と併せて、リード部22の端部近傍では絶縁膜が厚くなり、絶縁耐圧に優れるので、長期駆動に対する耐久性に優れ、高精度で信頼性が高い液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得ることができる。
なお、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドは、図16に示すインクジェットプリンタの他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図。
【図2】図1の液滴吐出ヘッドを組み立てた状態の縦断面図。
【図3】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図4】図2に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図5】図4に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図6】図5に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図7】図6に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図8】図7に続く液滴吐出ヘッドのガラス基板の製造工程を示す断面図。
【図9】図4の上面図。
【図10】図6の上面図。
【図11】図8の上面図。
【図12】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図13】図12に続く液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図14】図13に続く液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図15】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図16】本発明の実施の形態2に係る液滴吐出装置の斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1 キャビティ基板(第1の基板)、2 ガラス基板(第2の基板)、3 ノズル基板(第3の基板)、12 振動板、13 吐出室、14 リザーバ、15 絶縁膜、20 電極凹部(ギャップ段差部)、21 個別電極、22 リード部、23 端子部、25 絶縁保護膜、29 電極取り出し部、29a 貫通穴となる部分(電極取り出し用貫通穴部)、30 ノズル孔、A 電極部、G ギャップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギャップ段差部に電極部がそれぞれ形成された第2の基板と、
壁面の一部が振動板からなる複数の吐出室を有し、前記振動板の前記吐出室と反対側の面上に絶縁膜が成膜された第1の基板とを少なくとも備え、
前記振動板及び絶縁膜をギャップを介して前記電極部と対向させ、前記ギャップ段差部から前記電極部を取り出す電極取り出し部を備えた液滴吐出ヘッドであって、
前記ギャップ段差部の前記電極取り出し部の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記絶縁保護膜を前記電極部のリード部の端部近傍に形成したことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記絶縁保護膜を前記ギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さに成膜したことを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記絶縁保護膜は、SiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかからなる膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
第2の基板に複数のギャップ段差部を形成してそれぞれのギャップ段差部に電極部を形成し、前記ギャップ段差部の電極取り出し部となる部分の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成する工程と、
第1の基板に振動板となる部分を形成しその上に絶縁膜を成膜する工程と、
前記第2の基板と前記第1の基板とを、前記電極部と、前記振動板となる部分及び絶縁膜とが、ギャップを介して対向するように接合して、前記絶縁保護膜と前記絶縁膜とを対向して配置させる工程と、
前記の第1、第2の接合基板をウエットエッチングによりエッチングして、前記第1の基板に振動板を壁面の一部とする吐出室を含む液体流路及び電極取り出し用貫通穴部を形成し、前記電極取り出し用貫通穴部をさらにドライエッチングして貫通させ電極取り出し部を形成する工程とを、
含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
【請求項1】
複数のギャップ段差部に電極部がそれぞれ形成された第2の基板と、
壁面の一部が振動板からなる複数の吐出室を有し、前記振動板の前記吐出室と反対側の面上に絶縁膜が成膜された第1の基板とを少なくとも備え、
前記振動板及び絶縁膜をギャップを介して前記電極部と対向させ、前記ギャップ段差部から前記電極部を取り出す電極取り出し部を備えた液滴吐出ヘッドであって、
前記ギャップ段差部の前記電極取り出し部の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記絶縁保護膜を前記電極部のリード部の端部近傍に形成したことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記絶縁保護膜を前記ギャップ段差部の深さとほぼ同じ高さに成膜したことを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記絶縁保護膜は、SiO2 膜、Si3 N4 膜、及びAl2 O3 膜のいずれかからなる膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
第2の基板に複数のギャップ段差部を形成してそれぞれのギャップ段差部に電極部を形成し、前記ギャップ段差部の電極取り出し部となる部分の近傍にエッチング耐性を有する絶縁保護膜を形成する工程と、
第1の基板に振動板となる部分を形成しその上に絶縁膜を成膜する工程と、
前記第2の基板と前記第1の基板とを、前記電極部と、前記振動板となる部分及び絶縁膜とが、ギャップを介して対向するように接合して、前記絶縁保護膜と前記絶縁膜とを対向して配置させる工程と、
前記の第1、第2の接合基板をウエットエッチングによりエッチングして、前記第1の基板に振動板を壁面の一部とする吐出室を含む液体流路及び電極取り出し用貫通穴部を形成し、前記電極取り出し用貫通穴部をさらにドライエッチングして貫通させ電極取り出し部を形成する工程とを、
含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−125639(P2010−125639A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300525(P2008−300525)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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