説明

液滴吐出装置、および液滴検知方法

【課題】インク消費量を低減しつつインク滴の吐出不良を回復することができる液滴吐出装置、および液滴検知方法を提供する。
【解決手段】ノズルから吐出された液滴を検知する検知部142と、液滴が吐出された時点から液滴が検知されるまでの検知時間を計測する計測部143と、検知時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判断し、閾値を超えると判断した場合にノズルによる液滴の吐出状態が不良であると判断する判断部144と、吐出状態が不良であると判断された場合に、吐出状態の不良を回復させるために吐出させる液滴の量を算出する算出部145と、算出された量の液滴をノズルに吐出させる吐出制御部146と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の吐出不良を検知し回復動作を行う液滴吐出装置、および液滴検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FAX装置、プリンタ装置、MFP(Multi Function Peripheral)等の画像処理装置に用いられる液滴吐出装置が既に知られている。液滴吐出装置は、ノズルからインク滴を吐出することにより印字する装置であり、例えばインクジェット記録装置等がある。
【0003】
液滴吐出装置におけるインク滴の吐出状態については経時変化し、例えばノズルの吐出口にインクが固まり詰まることでインク滴の吐出状態が不良となり、吐出状態が不良となったノズルを印字に用いると、印字の擦れや白スジの原因となってしまう。
【0004】
そこで、インク滴の吐出不良を検知する方法として、レーザ光を用いて光学的に光量を検出することによりインク滴を検知する方法が一般的に用いられている。インク滴の吐出不良の検知には光量のレベルを大きくするために大滴が使用される場合が多く、検知回数が多くなるほどインク消費量が増大してしまうという問題があった。
【0005】
また、インク滴の吐出不良、または不吐出(以下、吐出不良と総称する。)の回復動作として、ノズルをクリーニングするために強制的にインクをノズルから吐出させる予備吐出は、吐出不良の状態に限らず全てのノズルで行うのが一般的である。例えば、液滴の吐出不良が検知された場合に、予備吐出を吐出状況に応じて複数回行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、予備吐出を複数回行うためインク消費量が多くなってしまうという問題は解消されない。また、液滴が一旦不吐出になってしまうと、予備吐出を行っても回復しないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、インク消費量を低減しつつインク滴の吐出不良を回復することができる液滴吐出装置、および液滴検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液滴吐出装置は、吐出部から吐出された液滴を検知する検知部と、液滴が吐出された時点から液滴が検知されるまでの時間を計測する計測部と、計測された前記時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判断し、前記閾値を超えると判断した場合に前記吐出部による液滴の吐出状態が不良であると判断する判断部と、前記吐出状態が不良であると判断された場合に、前記吐出状態の不良を回復させるために吐出させる液滴の量を算出する算出部と、算出された量の前記液滴を前記吐出部に吐出させる吐出制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる液滴検知方法は、吐出部から吐出された液滴を検知する検知ステップと、液滴が吐出された時点から液滴が検知されるまでの時間を計測する計測ステップと、計測された前記時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判断し、前記閾値を超えると判断した場合に前記吐出部による液滴の吐出状態が不良であると判断する判断ステップと、前記吐出状態が不良であると判断された場合に、前記吐出状態の不良を回復させるために吐出させる液滴の量を算出する算出ステップと、算出された量の前記液滴を前記吐出部に吐出させる吐出制御ステップと、含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク消費量を低減しつつインク滴の吐出不良を回復することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、インクジェット記録装置の全体概略図である。
【図2】図2は、インクジェット記録装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3−1】図3−1は、直接光によりインク滴を検知する方法を示す図である。
【図3−2】図3−2は、間接光によりインク滴を検知する方法を示す図である。
【図4】図4は、インクジェット記録装置の機能ブロック図である。
【図5】図5は、間接光を用いて検知されたインク滴の検知時間についての説明図である。
【図6】図6は、検知時間の一例を示す図である。
【図7】図7は、インク滴の検知時間と駆動波形用の電圧値との関係の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、予備吐出用の駆動波形の一例を示す図である。
【図9】図9は、インクジェット記録装置による吐出不良検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置を備えた画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液滴吐出装置、および液滴検知方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、液滴吐出装置の一例としてインクジェット記録装置を用いて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、インクジェット記録装置の全体概略図である。図1に示すインクジェット記録装置100は、1ライン上に印字幅分の記録ヘッドを固定して配置し、搬送されてきた記録用紙に印字するラインプリンタと呼ばれるインクジェット記録装置である。図1に示すように、インクジェット記録装置100は、印字ヘッドユニット113を搭載した印字ユニット118と、排紙ユニット111と、維持ユニット112と、搬送ベルト114と、給紙ユニット115とを主に備える。
【0014】
印字ヘッドユニット113に搭載される印字ヘッド116は、複数の記録ヘッドを千鳥上に並べて配置されている。なお、この実装はコストを考慮したものであり、1つの印字ヘッド116で1ラインを構成する1ライン印字ヘッド116を実装してもよい。
【0015】
また、印字ヘッドユニット113には、インク吐出方向が下を向いた状態で、一般に、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色の印字ヘッド116がそれぞれライン状に主走査方向に配置されている。尚、インク色の数及び用紙搬送方向に対しての配列順序はこれに限るものではない。
【0016】
また、印字ヘッドユニット113には、各ヘッドに各色のインクを供給するためのサブタンク(不図示)が搭載されている。サブタンクにはインク供給チューブを介して、カートリッジ装填部に装着されたインクカートリッジ(インクタンク)からインクが補充供給される。尚、このカートリッジ装填部にはインクカートリッジ(インクタンク)内のインクを送液するための供給ポンプユニットが設けられている。
【0017】
印字ヘッドユニット113は、印字ヘッド116のノズル開口部(不図示)のインク乾燥防止のため、印字ヘッド116を維持ユニット112でキャップされた状態(以下、キャップ状態という。)で待機させる。ユーザによる印字開始操作により、印字ヘッドユニット113は印字ヘッド116のキャップ状態を解除し、印字ヘッド116を印字開始するためのホームポジションへ移動する。印字は通常このホームポジションで固定して行われる。印字が終了すると、印字ヘッドユニット113は、再び印字ヘッド116を維持ユニット112に移動させキャップ状態で待機させる。なお、印字ヘッドユニット113は、印字指示が長時間ない場合や電源オフの場合は、印字ヘッド116をキャップ状態にしておく。
【0018】
また、印字ヘッドユニット113は、印字ヘッド116の吐出状態が正常でない場合は、印字ヘッド116を予備吐出する。ここで、予備吐出とは、吐出口内の増粘したインクを排出するためにインク滴を吐出することである。印字ヘッド116は、非記録状態で放置しておくと、吐出口内のインク粘度が蒸発等によって増加し、そのままインク滴吐出動作を行うと、吐出状態が乱れたり、吐出不能状態に陥る現象が発生したりする。そこで、例えば一定時間継続してインク滴を吐出しない吐出口が発生したときには、印字ヘッドユニット113は印字ヘッド116を予備吐出する。
【0019】
給紙ユニット115には、記録させたい用紙を搭載しセットする給紙トレイ(不図示)が搭載されており、給紙ユニット115は給紙トレイから用紙を1枚ずつ分離し給送する。なお、給紙トレイはあらゆる用紙のサイズに適用可能な構成になっており、用紙をセットする時にセンサにより用紙サイズと用紙の方向が検知される。また、給紙ユニット115は用紙切れや給紙エラ−も検知する。
【0020】
また、給紙ユニット115は、連続で印字する際は、紙間も変更可能であり用紙サイズや搬送速度(印字速度)に応じてその都度調整することも可能である。給紙ユニット115から給紙された用紙は、搬送ベルト114で印字ヘッドユニット113の位置まで搬送される。搬送ベルト114上の用紙は、エアーを吸い込むエアー吸収用ファン117で下向きの圧力を受け、搬送ベルト114上に固定される。従って、搬送ベルト114の位置(回転速度)を制御することで用紙と印字ヘッドユニット113の相対位置を制御することができる。
【0021】
給紙ユニット115により給紙された用紙は、エアー吸着用の搬送ベルト114で一枚毎に搬送される。印字ヘッドユニット113は、用紙が印字ヘッドユニット113を通過する時に、印字ヘッド116によりインクを吐出させて文字や画像を印字する。印字終了した用紙は、排紙ユニット111に搬送され排紙トレイ(不図示)に蓄積される。
【0022】
また、空吐出する際の廃液インクを収める廃液ユニット119が印字ヘッドユニット113の下の所定の位置に配置されている。通常、廃液ユニット119は廃液ユニット119に設置されたセンサにより満タンを検知し、検知した満タンを表示部(不図示)に表示し、これを確認したユーザが廃液として捨てるようになっている。
【0023】
次に、インクジェット記録装置100のハードウェア構成について説明する。図2は、インクジェット記録装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェット記録装置100は、印字ヘッドユニット113を制御する複数のヘッドコントロールボード121を有し、ヘッドコントロールボード121は各印字ヘッド116と接続されている。ヘッドコントロールボード121、給紙ユニット115、維持ユニット112はそれぞれUSBハブ123を介して接続されており、USBハブ123にはPC(Personal Computer)150が接続されている。
【0024】
給紙ユニット115とUDBハブ123、維持ユニット112とUSBハブ123とは、それぞれRS232C((EIA−232−D、EIA−574と等価)でシリアル通信するが、PC150との通信を共通化するためRS232C用の信号をUSB用の信号に変換する。このため、通信ケーブルにはそれぞれRS232C−USB変換部124が配置されている。RS232C−USB変換部124は、汎用の変換ケーブルを使用可能である。これにより、PC150と、給紙ユニット115と、維持ユニット112とヘッドコントロールボード121の全てのユニットが、USB通信できることになる。PC150では、接続された全てのユニットを異なるUSB機器として認識し、各識別IDにより通信、制御することができる。
【0025】
また、ヘッドコントロールボード121と印字ヘッド116もそれぞれUSBで接続されており、1つのヘッドコントロールボード121は複数の印字ヘッド116を制御でき。各ヘッドコントロールボード121は、USBハブ123を介してPC150と接続されている。なお、図2ではライン状に配置した10個の印字ヘッド116を1枚のヘッドコントロールボード121で制御する構成を示しているが、用紙サイズ等により1枚のヘッドコントロールボード121で制御できる印字ヘッド116は可変であり、10個に限定されない。
【0026】
図2に示すように、ヘッドコントロールボード121をそれぞれUSBハブ123に接続する構成を採用することで、ヘッドコントロールボード121をUSBで接続するだけで印字ヘッド116の構成を変更することができる。この場合もPC150からは、USB機器の1つとして認識されるので、PC150の制御ソフトやデバイスドライバの修正は最小限の部品および操作に止まるのでコスト増を抑制することができる。
【0027】
また、図2に示すように、給紙ユニット115からのディスクリート信号をヘッドコントロールボード121にパラレルに接続する構成を採用している。従って、この信号をパラレルに給紙ユニット114に接続するだけでヘッドコントロールボード121を容易に追加することができる。
【0028】
次に、インク滴の吐出を検知する方法について説明する。図3−1と図3−2は、インク滴の吐出を検知する方法の一例を示す図である。印字ヘッド116には解像度により多数のノズル口があり、ノズルからインク滴を吐出する構成となっている。印字ヘッド116には、ピエゾ素子が内蔵されており、ピエゾ素子に与えられる駆動波形の電圧値によりインク滴の滴サイズが調整される。例えば、電圧値を高くした場合、滴サイズは大きくなる。なお、大滴は通常、小滴が複数マージして作られる。
【0029】
図3−1および図3−2に示すように、発光側にはLD(Lazer Diode)131が設定されており、LD131は、印字ヘッド116のノズル面とインク滴が印字された印刷用紙の間にレーザ光を通す。また、LD131の近傍にレーザ光を集光するためのコリメートレンズ133が設置されており、さらにビーム径を絞るためのアパーチャ(不図示)が設置されている。
【0030】
また、レーザ光の光軸上にはPD(Photo Diode)132が設置されている。PD132はLD131からの光量を検知し、検知した光量を電圧に変換する。例えば、光量の出力レベルは低いので、オペアンプ等で所定の電圧レベルまで検知された光量を増幅した後に、PD132がこれを変換する。なお、PD132の部品は使用用途により様々な種類がある。これにより、PD132で検知した波形から電気的にインク滴を検知することができる。
【0031】
ここで、インク滴の検知を判定する方法としては、レーザ光を直接検知する直接法と、レーザ光に反射した間接光(散乱光)を検知する間接法とがある。図3−1は、直接光によりインク滴を検知する方法を示す図である。直接光によりインク滴を検出する場合は、通常は受光側のPD132の波形はインク滴を検知した時に電圧レベルが下がるので、電圧レベルの下降を検知することによりインク滴が検知される。
【0032】
一方、図3−2は、間接光によりインク滴を検知する方法を示す図である。間接光によりインク滴を検出する場合は、通常は受光側のPD132の波形はインク滴を検知した時に電圧レベルが上がるので、電圧レベルの上昇を検知することによりインク滴が検知される。そこで、間接光により検知する場合は、PD132の位置をLD131の光軸上からずらして配置される。なお、ずらす位置、距離においても電圧レベルは変わるので、これら全てを考慮してインク滴を検知するための所定の電圧があらかじめ決定される。このように、直接光でも間接光でもインク滴を検知することができる。
【0033】
次に、インクジェット記録装置100の機能的構成について説明する。図4は、インクジェット記録装置100の機能ブロック図である。図4に示すように、インクジェット記録装置100は、検知部142と、計測部143と、判断部144と、算出部145と、吐出制御部146とを主に備える。
【0034】
検知部142は、ノズルごとに吐出されたインク滴を検知する。具体的には、検知部12は、図3−1に示した直接光、または図3−2に示した間接光によりインク滴を検知する。
【0035】
計測部143は、ノズルによりインク滴が吐出された時点から、検知部142によりインク滴の吐出が検知されるまでの検知時間をタイマ(不図示)により計測する。
【0036】
図5は、間接光を用いて検知されたインク滴の検知時間についての説明図である。図5の上部に示す駆動波形はインク滴の吐出を示す波形である。インク滴の吐出は所定の周期で行われるが、周期は任意の値を設定することができる。
【0037】
図5の下部に示すPD波形は、電圧値の検出を示す波形である。計測部143は、駆動波形が示す加圧、すなわちインク滴の吐出時点からPD出力波形が示す電圧レベルの上昇、すなわちインク滴の検知時点までを検知時間Tとし、T1、T2、T3をそれぞれ計測する。
【0038】
判断部144は、計測部143により計測された検知時間が予め定められた閾値を超えているか否かを判断し、当該閾値を越えていると判断した場合に吐出不良と判断する。ここで、閾値には、吐出状態が正常である場合の検知時間の値が設定される。
【0039】
通常、インクの増粘が進むとインクの飛翔速度が遅くなる。つまり、インク滴の検知時間は長くなることとなる。また、インクが増粘する速度は温度や湿度等の環境により異なる。そこで、閾値は環境等に応じて最適な値に設定可能とする。これにより、環境等の異なる条件下においても正確に吐出不良を検知することができる。
【0040】
図6は、検知時間の一例を示す図である。図6に示すように、横軸は印字ヘッド116のノズル番号を示し、縦軸は検知時間を示す。ここで、ノズル番号1と3は、閾値Tを超えないが、ノズル番号2は閾値Tを超えている。そこで、判断部144は、ノズル番号2を吐出不良として検知する。このような構成により、判断部144は、インクジェット記録装置100が複数のノズルを備える場合であっても、吐出不良のノズルを検知することができる。これにより、吐出制御部146は、吐出不良が検知されたノズルに対してだけ予備吐出を行うことができる。
【0041】
算出部145は、計測部143により計測された検知時間の長さに応じて検知時間から予備吐出用の駆動波形の電圧を求める。例えば、算出部145は、駆動波形の電圧の大きさと検知時間の長さが比例して大きい値となるように設定された所定の値により予備吐出用の駆動波形の電圧を求める。
【0042】
ここで、算出部145は、予備吐出用の駆動波形の電圧値を、検知時間の長さに応じて算出する。例えば、算出部145は、検知時間に所定の比例定数を乗じた値と、基準電圧値とを足して予備吐出用の駆動波形の電圧値を算出する。
【0043】
図7は、インク滴の検知時間と駆動波形用の電圧値との関係の一例を示す概略図である。図7では、横軸は検知時間を、縦軸は駆動波形用の電圧値を示す。図7に示すように、算出部145は、まず、検知時間に所定の比例定数を乗じた値を算出する。ここでは、検知時間をT、基準値からの増加分をVb、比例定数を0.1とすると、Vb=0.1Tとなる。なお、比例定数は周囲温度やヘッドの条件に合わせた値に設定可能である。
【0044】
算出部145は、基準電圧値に、検知時間10μS毎に計算された駆動波形の電圧値を足していく。例えば、基準電圧が10Vで、比例定数が0.1で、検知時間が30μSであるとすると、求める駆動波形用の電圧値は、10+0.1×30=13Vとなる。算出部145は、このように検知時間に応じて駆動波形電圧を計算する。これによりインクの飛翔速度に対応した最適な予備吐出用の駆動波形の電圧値を設定することができる。
【0045】
図8は、予備吐出用の駆動波形の一例を示す図である。図8では、横軸は検知時間を、縦軸は電圧値を示し、矢印の方向に従って時間は長く、電圧値は高くなる。図8に示すように、電圧値が増加すると吐出のパワーも増加する。図8の(1)が基準の駆動波形とすると、検知時間が(2)、(3)のように増加するに従って、駆動波形の電圧値も(2)、(3)のように増加する。
【0046】
吐出制御部146は、吐出不良と判断されたノズルに対して、算出部145により算出された予備吐出用の駆動波形の電圧値を設定しインク滴を吐出させる。
【0047】
次に、以上のように構成されたインクジェット記録装置100による吐出不良検知処理の手順について説明する。図9は、インクジェット記録装置100による吐出不良検知処理の手順を示すフローチャートである。
【0048】
計測部143は、ノズルの吐出状態を検知するための駆動波形の電圧で吐出されたインク滴の検知時間を計測する(ステップS1)。ここで、計測部143は、吐出するインク滴のサイズを変えて計測することもできるが、通常は約10pl程度が妥当である。
【0049】
判断部144は、検知時間が計測されたか否かを判断する(ステップS2)。判断部144は、検知時間が計測されたと判断した場合は(ステップS2:Yes)、計測された検知時間が閾値を超えているか否かを判断する(ステップS3)。
【0050】
判断部144は、計測された検知時間が閾値を超えていると判断した場合は(ステップS3:Yes)、吐出不良であると判断する。この場合、算出部145は、検知時間から予備吐出用の駆動波形の電圧を求める(ステップS4)。例えば、算出部145は、検知時間の長さに応じて駆動波形の電圧を変えるように計算する。具体的には、算出部145は、検知時間の長さが長い場合は長さに応じて駆動波形の電圧を大きくする。なお、判断部144は、閾値を超えなければ吐出は正常であると判断する。
【0051】
吐出制御部146は、吐出不良が検知されたノズルに対して、算出部145により求められた予備吐出用の駆動波形の電圧値を設定する。ノズルは設定された予備吐出用の駆動波形の電圧値で予備吐出を行う(ステップS5)。吐出制御部146により設定された予備吐出用の駆動波形の電圧でノズルから予備吐出が行われた場合(ステップS5)、およびステップS3において、判断部144により計測された検知時間が閾値を超えていないと判断された場合は(ステップS3:No)、吐出制御部146は、予備吐出したノズルが最後のノズルであるか否かを判断する(ステップS6)。
【0052】
吐出制御部146は、予備吐出したノズルが最後のノズルであると判断した場合は(ステップS6:Yes)、処理を終了する。一方、吐出制御部146により、予備吐出されたノズルが最後のノズルでないと判断された場合(ステップS6:No)、およびステップS2において検知時間が計測できたと判断されなかった場合は(ステップS2:No)、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0053】
通常、正常な吐出状態であればインク滴の吐出からインク滴の吐出を検知するまでの時間は常に一定である。そこで、判断部144により吐出不良を検知されたノズルに対してのみ予備吐出する。これにより、吐出不良が検知されなかったノズルに対しては予備吐出を行わないので、インク消費量を低減することができる。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、吐出からインク滴を検知するまでの検知時間を計測し、計測した検知時間に応じて予備吐出用の駆動波形の電圧値を変えるので、インク滴の吐出状態に応じて最適な予備吐出用の駆動波形の電圧値を設定することができる。また、1回の予備吐出で復帰処理が可能となる電圧値を設定するので、予備吐出時のインク消費量を低減することができる。
【0055】
また、このように、本実施の形態によれば、吐出不良が検知されたノズルに対してのみ予備吐出を行い、吐出不良が検知されなかったノズルに対しては予備吐出を行わないので、回復動作時のインク消費量を低減することができる。
【0056】
図10は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置100を備えた画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図10に示すように、画像処理装置(以下、複合機と称する。)は、コントローラ10とエンジン部(Engine)60とをPCI(Peripheral Component Interface)バスで接続した構成となる。コントローラ10は、複合機全体の制御と描画、通信、図示しない操作部からの入力を制御するコントローラである。エンジン部60は、PCIバスに接続可能なプリンタエンジンなどであり、たとえば白黒プロッタ、1ドラムカラープロッタ、4ドラムカラープロッタ、スキャナまたはファックスユニットなどである。なお、このエンジン部60には、プロッタなどのいわゆるエンジン部分に加えて、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0057】
コントローラ10は、CPU11と、ノースブリッジ(NB)13と、システムメモリ(MEM−P)12と、サウスブリッジ(SB)14と、ローカルメモリ(MEM−C)17と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)16と、ハードディスクドライブ(HDD)18とを有し、ノースブリッジ(NB)13とASIC16との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス15で接続した構成となる。また、MEM−P12は、ROM(Read Only Memory)12aと、RAM(Random Access Memory)12bと、をさらに有する。
【0058】
CPU11は、複合機100の全体制御をおこなうものであり、NB13、MEM−P12およびSB14からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0059】
NB13は、CPU11とMEM−P12、SB14、AGP15とを接続するためのブリッジであり、MEM−P12に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0060】
MEM−P12は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM12aとRAM12bとからなる。ROM12aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM12bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0061】
SB14は、NB13とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB14は、PCIバスを介してNB13と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインターフェース(I/F)部なども接続される。
【0062】
ASIC16は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGP15、PCIバス、HDD18およびMEM−C17をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC16は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC16の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C17を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などをおこなう複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部60との間でPCIバスを介したデータ転送をおこなうPCIユニットとからなる。このASIC16には、PCIバスを介してFCU(Facsimile Control Unit)30、USB(Universal Serial Bus)40、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インターフェース50が接続される。操作表示部20はASIC16に直接接続されている。
【0063】
MEM−C17は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD(Hard Disk Drive)18は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。
【0064】
AGP15は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM−P12に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にするものである。
【符号の説明】
【0065】
100 インクジェット記録装置
111 排紙ユニット
112 維持ユニット
113 印字ヘッドユニット
114 搬送ベルト
115 給紙ユニット
116 印字ヘッド
117 エアー吸収用ファン
118 印字ユニット
119 廃液ユニット
121 ヘッドコントロールボード
123 USBハブ
124 RS232C−USB変換部
131 LD
132 PD
133 コリメートレンズ
142 検知部
143 計測部
144 判断部
145 算出部
146 吐出制御部
150 PC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2008-143150号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部から吐出された液滴を検知する検知部と、
液滴が吐出された時点から液滴が検知されるまでの時間を計測する計測部と、
計測された前記時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判断し、前記閾値を超えると判断した場合に前記吐出部による液滴の吐出状態が不良であると判断する判断部と、
前記吐出状態が不良であると判断された場合に、前記吐出状態の不良を回復させるために吐出させる液滴の量を算出する算出部と、
算出された量の前記液滴を前記吐出部に吐出させる吐出制御部と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吐出部は、設定された駆動電圧値に応じた大きさの液滴を吐出し、
前記算出部は、前記吐出状態が不良であると判断された場合に、計測された時間が大きいほど大きい前記駆動電圧値を算出し、
前記吐出制御部は、算出された前記駆動電圧値を前記吐出部に設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記算出部は、計測された前記時間に所定の定数を乗じた値と、所定の基準電圧値との和である前記駆動電圧値を算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記閾値、または前記所定の定数は任意に設定可能であること、
を特徴とする請求項1または3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
吐出部から吐出された液滴を検知する検知ステップと、
液滴が吐出された時点から液滴が検知されるまでの時間を計測する計測ステップと、
計測された前記時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判断し、前記閾値を超えると判断した場合に前記吐出部による液滴の吐出状態が不良であると判断する判断ステップと、
前記吐出状態が不良であると判断された場合に、前記吐出状態の不良を回復させるために吐出させる液滴の量を算出する算出ステップと、
算出された量の前記液滴を前記吐出部に吐出させる吐出制御ステップと、
を含むことを特徴とする液滴検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−6256(P2012−6256A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144209(P2010−144209)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】