説明

液滴吐出装置及び吐出方法

【課題】インクカートリッジ内の機能液を攪拌する機能を有し、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の体積が変動し難い液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズルから基板に機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドと、磁性体を含有し移動する転子31と液滴吐出ヘッドに供給する機能液とを収容する収容タンク15と、基板に対して液滴吐出ヘッドと収容タンク15とを移動させるキャリッジ11と、収容タンク15の重力方向から転子31に引力を及ぼす磁気ユニット14と、を有し、キャリッジ11は、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出するときに収容タンク15に対して転子31が移動しない加速度で収容タンク15を移動させ、液滴を吐出しないときには収容タンク15に対して転子31が移動する加速度にて収容タンク15を移動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置にかかわり、特に、タンク内の液状体を攪拌する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して液滴を吐出する装置として、インクジェット式の液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、基板等のワークを載置してワークを一方向に移動させるテーブルと、テーブルの上方位置においてテーブルの移動方向と直交する方向に配置されたガイドレールに沿って移動するキャリッジとを備えている。キャリッジにはインクジェットヘッド(以下、液滴吐出ヘッドと称す)が配置され、液滴吐出ヘッドはワークに対して機能液を液滴にして吐出し塗布していた。
【0003】
機能液には溶媒または分散媒に各種の内在物を溶解または分散させて形成される。内在物が分散媒に分散している場合や溶質が析出するとき、時間の経過に伴い、内在物が沈降することがある。そして、機能液に分散または溶解している内在物の濃度が薄くなる。例えば、機能液の内在物が顔料インクの場合には、顔料粒子が沈降することにより液中に分散する顔料粒子濃度が低くなるので、塗布したインクの色が薄くなる。従って、内在物の沈降を防止する為に機能液を攪拌する必要がある。
【0004】
機能液を攪拌する方法が特許文献1に開示されている。それによると、インクカートリッジ内に合成樹脂からなるビーズを配置する。そして、キャリッジは液滴吐出ヘッドとインクカートリッジとを移動する。このとき、ビーズがインクカートリッジ内を移動することにより、インクカートリッジ内の機能液が攪拌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−112057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクカートリッジ内で機能液が移動するとき機能液の圧力が局所的に変動する。その圧力変動が液滴吐出ヘッドに伝播するとき、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の体積が変動する。そして、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の体積が変動し難い液滴吐出装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる液滴吐出装置であって、ノズルからワークに液状体を液滴にして吐出する吐出部と、磁性体を含有し移動する転子と前記吐出部に供給する前記液状体とを収容する液状体収容部と、前記ワークに対して前記吐出部と前記液状体収容部とを移動させる移動部と、前記液状体収容部の重力方向から前記転子に引力を及ぼす磁力発生部と、を有し、前記移動部は、前記吐出部が前記液滴を吐出するときに前記液状体収容部に対して前記転子が移動しない加速度で前記液状体収容部を移動させ、前記吐出部が前記液滴を吐出しないときには前記液状体収容部に対して前記転子が移動する加速度にて前記液状体収容部を移動させることを特徴とする。
【0009】
この液滴吐出装置によれば、液状体収容部に液状体が収容されている。そして、この液状体は液状体収容部から吐出部に供給される。吐出部は液状体を液滴にしてノズルからワークに吐出する。移動部はワークに対して吐出部を移動することにより、吐出部はワークの所定の場所に液滴を吐出する。
【0010】
液状体収容部には転子が収容されており、転子が移動するとき液状体が攪拌される。転子は磁性体を含有し、磁力発生部は重力方向から転子に引力を及ぼしている。従って、転子は移動し難くなっている。液滴を吐出しないときには転子が移動する加速度にて液状体収容部を移動させるので、液状体が移動する。そして、吐出部が液滴吐出するときには転子が移動しない程度の加速度で液状体収容部を移動させるので、液状体は移動し難い。
【0011】
液状体収容部内で液状体が移動するとき液状体の圧力が局所的に変動する。その圧力変動が吐出部に伝播するとき、ノズルから吐出される液滴の体積が変動する。本適用例では液状体収容部が移動しても液状体収容部内の液状体は移動し難い為、液状体収容部内の圧力変動は小さい。従って、液状体収容部内から吐出部に伝播する圧力変動が小さい為、ノズルから吐出されえる液滴の体積を変動し難くすることができる。
【0012】
[適用例2]
本適用例にかかる液滴吐出装置であって、ノズルからワークに液状体を液滴にして吐出する吐出部と、磁性体を含有し移動する転子と前記吐出部に供給する前記液状体とを収容する液状体収容部と、前記ワークに対して前記吐出部と前記液状体収容部とを移動させる移動部と、前記液状体収容部の重力方向から前記転子に引力を及ぼす磁力発生部と、を有し、前記磁力発生部は前記引力を制御することにより、前記吐出部から前記液滴を吐出しないときには前記液状体収容部に対して前記転子を移動し易くし、前記吐出部から前記液滴を吐出するときには前記液状体収容部に対して前記転子を移動し難くすることを特徴とする。
【0013】
この液滴吐出装置によれば、磁力発生部は転子に及ぼす引力を制御する。そして、吐出部から液滴を吐出しないときには転子に及ぼす引力を弱くすることにより液状体収容部に対して転子を移動し易くする。吐出部から液滴を吐出するときには転子に及ぼす引力を強くすることにより液状体収容部に対して転子を移動し難くする。従って、吐出部から液滴を吐出しないときには液状体を攪拌し、液状体収容部を移動しながら吐出部から液滴を吐出するときには液状体収容部内の液状体が攪拌されないようにできる。液状体収容部内の液状体が攪拌されないとき、液状体収容部内の圧力変動は小さい。液状体収容部内から吐出部に伝播する圧力変動が小さい為、ノズルから吐出されえる液滴の体積を変動し難くすることができる。
【0014】
[適用例3]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記磁力発生部は磁石と間隔調整部とを有し、前記間隔調整部は前記磁石と前記液状体収容部との距離を制御することを特徴とする。
【0015】
この液滴吐出装置によれば、磁力発生部は磁石を有しているので、転子に引力を及ぼすことができる。そして、間隔調整部が磁石と液状体収容部との距離を制御する。磁石と液状体収容部との距離を長くする程、転子に及ぼす引力を小さくすることができる。従って、磁力発生部が転子に及ぼす引力の大きさを制御することができる。
【0016】
[適用例4]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記磁力発生部は電磁石を有し、前記磁力発生部は前記電磁石に印加する電流を制御することを特徴とする。
【0017】
この液滴吐出装置によれば、磁力発生部は電磁石を有しているので、転子に引力を及ぼすことができる。そして、磁力発生部が電磁石に印加する電流を制御することにより、磁力発生部が発生する磁場の強さを制御することができる。磁力発生部が発生する磁場の強さと転子に及ぼす引力の大きさは正の相関関係にすることができる。従って、転子に及ぼす引力の大きさを制御することができる。
【0018】
[適用例5]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記転子は複数収容され、前記液状体収容部内の重力方向の面の半分以上の面積を前記転子が占めることを特徴とする。
【0019】
この液滴吐出装置によれば、液状体収容部の重力方向の面に転子が配置される。液状体に分散している内在物が沈降するとき、転子の上に沈降する。転子を移動させるとき転子上に沈降した内在物は攪拌され易い為、沈降した内在物を液状体に分散させることができる。
【0020】
[適用例6]
本適用例にかかる吐出方法であって、ノズルと前記ノズルに供給する液状体を収容する液状体収容部とをワークに対して移動しながら、前記ノズルから前記ワークに前記液状体を液滴にして吐出する吐出工程と、前記液状体収容部を移動することにより、前記液状体収容部内の前記液状体を攪拌する攪拌工程と、を有し、前記液状体収容部には磁性体を含有する転子が収納され、前記攪拌工程では前記転子を移動させて前記液状体を攪拌し、前記吐出工程では前記転子に重力方向から磁場を加え引力を及ぼすことにより前記転子を移動し難くさせて前記液状体収容部を移動することを特徴とする。
【0021】
この吐出方法によれば、液状体収容部には転子が収納されている。攪拌工程において液状体収容部を移動することにより、転子を移動させて液状体収容部内の液状体を攪拌している。吐出工程では転子に磁場を加えて重力方向に引力を及ぼしている。そして、転子を移動し難くさせることにより、液状体収容部が移動するときに液状体収容部内の液状体が攪拌され難くしている。従って、液状体収容部内では液状体の圧力変動が小さくなる為、ノズルから吐出される液滴の体積を変動し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかわる液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は、キャリッジを示す模式正面図、(b)は、キャリッジを示す模式底面図、(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図3】(a)及び(b)は、収容タンク及び磁気ユニットを示す模式正断面図、(c)はキャリッジの移動を示すタイムチャート。
【図4】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図5】描画作業を示すフローチャート。
【図6】描画方法を説明するための模式図。
【図7】描画方法を説明するための模式図。
【図8】第2の実施形態にかかわる液滴吐出装置の動作を説明するための模式図。
【図9】第3の実施形態にかかわる液滴吐出装置の動作を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0024】
(第1の実施形態)
本実施形態における特徴的な液滴吐出装置とこの液滴吐出装置を用いて液滴を吐出する方法との特徴的な例について図1〜図7に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。
【0025】
(液滴吐出装置)
図1は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置1により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。図1に示すように液滴吐出装置1は直方体状に形成された基台2を備えている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、水平面内にてY方向と直交する方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ方向とする。
【0026】
基台2の上面2aには、Y方向に延びる一対の案内レール3a,3bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない直動機構を備えたステージ4が取付けられている。ステージ4が移動するY方向を副走査方向4aとする。副走査方向4aの走査は往復移動を意味する。そして、副走査は改行を行うことを示す。従って、副走査方向4aは改行するためにステージ4が移動する方向を示す。この直動機構の種類は、特に限定されないが、サーボモーターとボールネジとを組み合わせて構成することができる。他にも、リニアモーターを採用しても良い。
【0027】
さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行に副走査位置検出装置5が配置され、ステージ4の副走査方向4aの位置が計測できるようになっている。そのステージ4の上面には、載置面6が形成され、その載置面6には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。操作者が載置面6にワークとしての基板7を載置して所定の位置に位置決めする。その後、基板チャック機構により基板7は載置面6に固定される。
【0028】
基台2のX方向両側には、一対の支持台8a,8bが立設されている。その一対の支持台8a,8bには、X方向に延びる案内部材9が架設されている。案内部材9は、その長手方向の幅がステージ4のX方向よりも長く形成され、その一端が支持台8a側に張り出すように配置されている。案内部材9の下側には、X方向に延びる案内レール10がX方向全幅にわたり凸設されている。そして、案内レール10に沿って略角柱状に形成された移動部としてのキャリッジ11が配置されている。キャリッジ11は直動機構を備え、X方向に走査可能となっている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、例えば、リニアモーターを採用することができる。キャリッジ11が走査するX方向を主走査方向11aとする。主走査方向11aの走査は往復移動を意味する。そして、主走査は描画しながら描画する場所を移動することを示す。従って、主走査方向11aは描画するためにキャリッジ11が移動する方向を示す。案内部材9とキャリッジ11との間には、主走査位置検出装置12が配置され、キャリッジ11の主走査方向11aの位置が計測可能になっている。
【0029】
キャリッジ11の基板7側にはヘッドユニット13が配置されている。ヘッドユニット13の基板7側には液滴を吐出する液滴吐出ヘッドが凸設されている。
【0030】
キャリッジ11の図中上側には磁力発生部としての磁気ユニット14が配置され、磁気ユニット14上には液状体収容部としての収容タンク15が3個配置されている。各収容タンク15には異なる種類の機能液が収容されている。ヘッドユニット13の液滴吐出ヘッドと収容タンク15とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク15内の機能液がチューブを介して液滴吐出ヘッドに供給される。
【0031】
機能液は樹脂材料、溶媒または分散媒を主材料とする。この主材料に顔料または染料等の色素や、親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより固有の機能を有する機能液を形成することができる。機能液の樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。溶媒または分散媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。機能液を液滴吐出ヘッドから吐出し易い粘度にすることにより、液滴吐出ヘッドは安定して機能液を吐出することができるようになる。本実施形態では、例えば、主材料に顔料を添加した機能液が各収容タンク15に収容されている。
【0032】
機能液に顔料等の粒子が分散しているとき、粒子が沈降する場合がある。例えば、白色顔料に酸化チタンを用いるとき、酸化チタンの粒子が沈降する現象が見られる。酸化チタンの粒子が収容タンク15の底に沈降した状態で機能液を液滴にして吐出するとき、着弾した液滴に含まれる酸化チタンの粒子数が少ないので薄い白色になるという問題が生ずる。この問題を解決するために、機能液を所定の時間間隔で攪拌して酸化チタンの濃度を維持する必要がある。
【0033】
案内部材9の図中上側には貯留タンク16が3個配置されている。各貯留タンク16には異なる種類の機能液が収容されている。貯留タンク16の図中右側側面には供給口16aが形成され、収容タンク15の図中上側には注入口15aが形成されている。そして、供給口16aと注入口15aは図示しないチューブにより接続され、貯留タンク16内の機能液がチューブを介して収容タンク15に供給される。
【0034】
基台2の図中左側の側面であって案内部材9と対向する場所には保守装置17が配置されている。この保守装置17には液滴吐出ヘッドをクリーニングする機構が配置されている。そして、保守装置17が液滴吐出ヘッドをクリーニングすることにより、液滴吐出ヘッドから液滴を正常に吐出可能な状態に保つことが可能になっている。
【0035】
図2(a)は、キャリッジを示す模式正面図であり、図2(b)は、キャリッジを示す模式底面図である。図2(a)及び図2(b)に示すようにヘッドユニット13の基板7側の面13aには3個の吐出部としての液滴吐出ヘッド18が配置されている。液滴吐出ヘッド18の個数は特に限定されず、吐出する機能液の種類に合わせて設定する。液滴吐出ヘッド18の下面には、それぞれノズルプレート19が備えられている。そのノズルプレート19には、それぞれ複数のノズル20がY方向に所定の間隔で配列されている。
【0036】
ヘッドユニット13の内部にはヘッド駆動回路23と圧力調整部24とが配置されている。ヘッド駆動回路23は液滴吐出ヘッド18を駆動する電気回路であり、ヘッド駆動回路23は液滴吐出ヘッド18に駆動信号を出力する。圧力調整部24は図示しないチューブにより液滴吐出ヘッド18と接続されている。ヘッドユニット13のX方向側の側面には供給口13bが配置され、供給口13bと圧力調整部24とは図示しないチューブにより接続されている。圧力調整部24は、液滴吐出ヘッド18に供給される機能液の圧力を調整する機能を有し、液滴吐出ヘッド18が吐出した量と同量の機能液を液滴吐出ヘッド18に流動する。
【0037】
収容タンク15においてX方向の面には供給口15bが配置されている。供給口15bはチューブ25により供給口13bと接続されている。チューブ25は柔軟性のある素材により形成されている。そして、キャリッジ11が移動するとき、チューブ25が振動するときにも、チューブ25は供給口15b及び供給口13bとはずれることなく機能液を流動することができる。
【0038】
図2(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図2(c)に示すように、ノズルプレート19の上側であってノズル20と相対する位置には、キャビティ26が形成されている。そして、キャビティ26には収容タンク15に収容されている液状体としての機能液27が供給される。キャビティ26の上側には、上下方向に振動して、キャビティ26内の容積を拡大縮小する振動板28と、上下方向に伸縮して振動板28を振動させる圧電素子29が配設されている。
【0039】
液滴吐出ヘッド18が圧電素子29を制御駆動するためのノズル駆動信号をヘッド駆動回路23から受けると、圧電素子29が上下方向に伸縮する。そして、圧電素子29は振動板28を振動させるので、振動板28と隣接するキャビティ26の容積が拡大縮小する。それにより、キャビティ26内に供給された機能液27のうち縮小した容積分の機能液27がノズル20を通り、液滴30となって吐出される。液滴吐出装置1はステージ4とキャリッジ11とを走査する。そして、ノズル20が所定の場所に位置するときに液滴30を吐出することにより、所望のパターンを描画することができる。
【0040】
図3(a)及び図3(b)は、収容タンク及び磁気ユニットを示す模式正断面図である。図3(a)は、キャリッジ11が低い加速度で移動するときの状態を示し、図3(b)は、キャリッジ11が高い加速度で移動するときの状態を示す。図3(a)に示すように、収容タンク15の内部には機能液27と転子31とが収容されている。転子31は球形に形成され、転がって移動し易い形状となっている。転子31は磁性体を含み、機能液27に腐食されない形態であれば良い。例えば、磁性体には酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト等を用いることができる。そして、例えば、磁性体を球形に形成し、磁性体の表面に樹脂をコーティングして形成することができる。他にも、磁性体の表面にニッケル等の金属をメッキしても良い。転子31の大きさは特に限定されないが、直径が1mm〜20mmの範囲内にあるのが好ましく、直径が1mm〜10mmの範囲内にあるのがさらに好ましい。転子31がこの大きさのとき転子31が移動し易いので、機能液27を攪拌することができる。
【0041】
収容タンク15の内部の底面15cには転子31が配置され、底面15cの半分以上の広さを磁石14aが占めている。転子31が底面15cを閉める面積の割合は7割以上が好ましく、9割以上ではさらに好ましい。
【0042】
収容タンク15内において供給口15bを覆ってフィルター32が配置されている。フィルター32は、転子31が供給口15bからチューブ25に移動することと転子31が供給口15bを塞ぐことを防止する。収容タンク15の底面15cと対向する場所には磁気ユニット14が配置されている。磁気ユニット14の内部には底面15cと略同じ広さの磁石14aが配置されている。磁石14aは主走査方向11aにN極14cとS極14dとが交互に配列し副走査方向4aに延在して形成されている。N極14c及びS極14dの主走査方向11aの幅は転子31の直径と同じ長さになっている。さらに、主走査方向11aのN極14cとS極14dとの間の幅も転子31の直径と同じ長さになっている。そして、転子31は底面15cに連なって配列するようになっている。
【0043】
N極14c及びS極14dの主走査方向11aの幅は転子31の直径の整数倍に設定するのが好ましい。さらに、主走査方向11aのN極14cとS極14dとの間の幅も転子31の直径の整数倍に設定するのが好ましい。このとき、転子31は底面15cに連なって配列させることができる。
【0044】
磁石14aは磁場を形成し、転子31に引力を作用する。転子31には重力と同じ方向から引力が加わるので、転子31は底面15cに接触する。従って、キャリッジ11が主走査方向11aに移動するときに加速度が小さいときには、転子31は底面15cに接触した状態を維持する。従って、収容タンク15内の機能液27は攪拌され難くなっている。
【0045】
図3(b)に示すように、キャリッジ11が主走査方向11aに移動するときに加速度が大きいときには、転子31に大きな慣性力が作用する。そして、転子31の一部は底面15cから離れて、転子31が塊状になる。このとき、転子31の移動に伴って機能液27も移動するので機能液27が攪拌される。
【0046】
キャリッジ11が主走査方向11aに移動中に停止するときの加速度が大きいときにも、転子31に大きな慣性力が作用する。このときにも、転子31の一部は底面15cから離れて、転子31が塊状になる。そして、転子31の移動に伴って機能液27も移動するので機能液27が攪拌される。
【0047】
図3(c)はキャリッジの移動を示すタイムチャートである。図3(c)において、縦軸はキャリッジ11が移動するときの加速度を示している。加速度が0のとき加速度が加わらず等速運動または停止状態となっている。そして、加速度が0から離れるに従い大きな加速度となる。そして、正の加速度と負の加速度では加速度の加わる方向が逆となっている。正の加速度のときキャリッジ11はX方向へ移動し、負の加速度のときキャリッジ11はX方向と逆の方向へ移動する。横軸は時間の経過を示し、時間は図中左側から右側へ推移する。時間軸において、第1端は案内レール10のX方向と逆側の端をキャリッジ11が通過する時刻を示し、第2端は案内レール10のX方向側の端をキャリッジ11が通過する時刻を示している。
【0048】
上段の第1加速度推移線33は転子31が底面15cから離れないようにキャリッジ11が収容タンク15を移動させるときの加速度の推移を示している。第1加速度推移線33は第1端及び第2端にて加速度が加えられている。第1端と第2端との間では加速度が加えられずにキャリッジ11は等速運動をする。この区間を等速区間33aとする。等速区間33aでは転子31が底面15cに接触した状態で移動しない区間である。液滴吐出ヘッド18は等速区間33aにおいて液滴30を基板7に吐出する。
【0049】
下段の第2加速度推移線34は転子31が底面15cから離れて移動するようにキャリッジ11が収容タンク15を移動させるときの加速度の推移を示している。第2加速度推移線34は第1端及び第2端に加えて、第1端と第2端との間でも正と負の加速度が交互に加えられている。第1加速度推移線33に比べて第2加速度推移線34では絶対値の大きな加速度が加えられる。この加速度は転子31が移動して塊状となる加速度に設定されている。そして、加速度が加えられる方向が反転するので、転子31は収容タンク15の一方の端から他方の端への移動を繰り返す。従って、収容タンク15内の機能液27は攪拌される。
【0050】
図4は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図4において、液滴吐出装置1は液滴吐出装置1の動作を制御する制御部としての制御装置37を備えている。そして、制御装置37はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)38と、各種情報を記憶するメモリー39とを備えている。
【0051】
主走査駆動装置40、主走査位置検出装置12、副走査駆動装置41、副走査位置検出装置5は入出力インターフェイス44及びデータバス45を介してCPU38に接続されている。さらに、液滴吐出ヘッド18を駆動するヘッド駆動回路23、入力装置46、表示装置47、保守装置17も入出力インターフェイス44及びデータバス45を介してCPU38に接続されている。
【0052】
主走査駆動装置40はキャリッジ11を駆動する装置であり、副走査駆動装置41はステージ4を駆動する装置である。主走査位置検出装置12がキャリッジ11の位置を検出し、主走査駆動装置40がキャリッジ11を駆動することにより、キャリッジ11を所望の速度及び加速度にて走査することが可能となっている。同じく、副走査位置検出装置5がステージ4の位置を検出し、副走査駆動装置41がステージ4を駆動することにより、ステージ4を走査することが可能になっている。
【0053】
入力装置46は液滴30を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、基板7に液滴30を吐出する座標を図示しない外部装置から受信し、入力する装置である。表示装置47は加工条件や作業状況を表示する装置であり、表示装置47に表示される情報を基に、操作者は入力装置46を用いて操作を行う。保守装置17はCPU38の指示信号に従って液滴吐出ヘッド18の保守を行う装置である。保守装置17は液滴吐出ヘッド18内の機能液27を吸引したり、ノズルプレート19を拭き取る機能を備えている。CPU38はキャリッジ11を保守装置17と対向する場所に移動させた後、保守装置17に保守の指示信号を出力する。保守装置17は指示信号を入力し、指示信号に従って液滴吐出ヘッド18の保守を行う。
【0054】
メモリー39は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、DVD−ROMといった記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置1の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト48を記憶する記憶領域や、基板7上に吐出する液滴30の着弾位置の座標データである吐出位置データ49を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、液滴吐出ヘッド18を駆動するときの駆動信号である駆動信号データ50を記憶するための記憶領域や、収容タンク15内の機能液27を攪拌するか否かを判定する条件等の攪拌に関連するデータである攪拌関連データ51の記憶領域が設定される。他にも、CPU38のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0055】
CPU38は、メモリー39内に記憶されたプログラムソフト48に従って、基板7の表面の所定位置に液滴30を吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として液滴吐出ヘッド18から液滴30を吐出するための演算を行う吐出演算部52を有する。
【0056】
吐出演算部52を詳しく分割すれば、キャリッジ11を主走査方向11aへ所定の速度で走査移動させるための制御をする主走査制御部53と、基板7を副走査方向4aへ所定の移動量で移動させるための制御をする副走査制御部54を有する。さらに、吐出演算部52は液滴吐出ヘッド18内の複数あるノズル20から液滴30を吐出させるノズル20を選択する吐出制御部55等を有する。吐出制御部55は選択したノズル20に対応する圧電素子29を作動させて液滴30を吐出させる。
【0057】
他にも、CPU38はビットマップ演算部56を有する。ビットマップは基板7上に着弾する液滴30の位置データを示す。そして、ビットマップ演算部56は載置面6における基板7の位置とステージ4及びキャリッジ11の移動速度のデータをもちいてビットマップの演算を行う。他にも、CPU38は攪拌判断部57を有する。攪拌判断部57は収容タンク15内の機能液27を攪拌する時期を演算する。他にも、CPU38は攪拌制御部58を有する。攪拌制御部58は収容タンク15を主走査方向11aに往復移動させる加速度を制御することにより収容タンク15内の機能液27を攪拌させる。他にも、CPU38は保守装置17を制御する保守装置制御部59を有する。
【0058】
尚、本実施形態では、上記の各機能がCPU38を用いてプログラムソフトで実現することとしたが、上記の各機能がCPUを用いない単独の電子回路(ハードウェア)によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
【0059】
(描画方法)
次に、上述した液滴吐出装置1を用いて、描画する方法について図5〜図7にて説明する。図5は、描画作業を示すフローチャートであり、図6及び図7は、描画方法を説明するための模式図である。
【0060】
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS1は給材工程に相当する。この工程は、操作者が載置面に基板を配置して位置決めした後、固定する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は攪拌判断工程に相当する。この工程は、収容タンク内の機能液を攪拌するか否かを判断する工程である。機能液の攪拌を行うときステップS3に移行する。機能液を攪拌しないときステップS4に移行する。ステップS3は攪拌工程に相当する。この工程は、主走査方向に収容タンクを往復運動させることにより収容タンク内の機能液を攪拌する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は吐出工程に相当する。この工程は、キャリッジとステージとを走査しながら液滴を吐出することにより描画する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は除材工程に相当する。この工程は、載置面から基板を移動する工程である。基板を移動して描画作業を終了する。
【0061】
次に、図6及び図7を用いて、図5に示したステップと対応させて、描画方法を詳細に説明する。図6(a)は、ステップS1の給材工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS1において、液滴吐出ヘッド18と対向しない場所にステージ4を移動させる。次に、載置面6上に基板7を載置する。基板7の移動は操作者が手を使って移動して良い。基板7が大きい場合には図示しない移動専用ロボットを用いて基板7を移動しても良い。続いて、操作者は基板7の位置を調整した後、吸引式の基板チャック機構を作動させることにより基板7を載置面6に固定する。
【0062】
図6(b)は、ステップS2の攪拌判断工程を説明するための模式図であり、各工程を行うタイムチャートを示している。図6(b)において、縦軸は各工程を示し、横軸は時間の経過を示している。時間は左から右へ推移する。尚、説明を簡便にするためにステップS2の攪拌判断工程は省略した。工程推移線62は時間の経過に伴い作業工程が推移する様子を示している。工程推移線62が示すように、作業工程は2つの型に分けられる。第1の型はステップS1の給材工程、ステップS3の攪拌工程、ステップS4の吐出工程、ステップS5の除材工程の順に行う工程の型である。そして、第2の型はステップS1の給材工程、ステップS4の吐出工程、ステップS5の除材工程の順に行う工程の型である。つまり、第1の型ではステップS3の攪拌工程が行われ、第2の型ではステップS3の攪拌工程が行われない。
【0063】
制御装置37は計時機能を備えている。そして、攪拌判断部57は計時機能を用いてステップS3の攪拌工程が行われてから現在時刻63までの時間である攪拌後経過時間64を検出する。メモリー39の攪拌関連データ51には経時判定値65が記憶されている。そして、攪拌判断部57は攪拌後経過時間64を経時判定値65と比較して、攪拌後経過時間64が経時判定値65以上であるときステップS3の攪拌工程を行う判断をする。換言すれば、攪拌制御部58は攪拌後経過時間64が経時判定値65に達しないときステップS3の攪拌工程を行なわない判断をする。
【0064】
図6(c)〜図7(a)はステップS3の攪拌工程に対応する図である。図6(c)に示すように、ステップS3において、機能液27を攪拌する前は収容タンク15の底面15cに接して転子31が配列している。そして、転子31上には機能液27に溶けない不溶物や溶質等からなる内在物66が沈殿している。
【0065】
次に、攪拌制御部58が主走査駆動装置40を駆動して、キャリッジ11を急加速して移動させる。そして、図6(d)に示すように、キャリッジ11が収容タンク15を主走査方向11aの図中右側へ移動する。転子31には図中左側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中左側に移動し塊状になる。このとき、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0066】
続いて、攪拌制御部58が主走査駆動装置40を駆動して、キャリッジ11を急停止させる。そして、図7(a)に示すように、キャリッジ11が急停止することにより、収容タンク15も急停止する。このとき、転子31には図中右側に向かう慣性力が作用する。転子31に印加される加速度による力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中右側に移動し塊状になる。このとき、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0067】
攪拌制御部58は主走査駆動装置40を駆動して、キャリッジ11を急加速して移動させ、急停止させることを繰り返す。そして、転子31が主走査方向11aに往復運動することにより機能液27が攪拌される。攪拌が終了して攪拌制御部58がキャリッジ11を停止させると塊状になっている転子31は重力及び磁石14aの引力により底面15cに移動して配列する。
【0068】
図7(b)はステップS4の吐出工程に対応する図である。図7(b)に示すように、ステップS4において、主走査制御部53が主走査駆動装置40を駆動してキャリッジ11を主走査方向11aに移動させる。そして、ノズル20が所定の場所に位置するとき、吐出制御部55がヘッド駆動回路23を駆動してノズル20から液滴30を吐出させる。
【0069】
キャリッジ11が移動するときキャリッジ11は、転子31が底面15cから離れない程度の大きさの加速度にて移動する。従って、キャリッジ11が移動するとき収容タンク15内の機能液27は攪拌され難くなっている。その結果、収容タンク15内の機能液27には局所的な圧力変動が生じ難くなっている。
【0070】
図7(c)は、ステップS5の除材工程に対応する図である。図7(c)に示すように、ステップS5において、液滴吐出ヘッド18と対向しない場所にステージ4を移動させる。次に、吸引式の基板チャック機構の作動を停止させることにより制御装置37は基板7の載置面6への固定を解除する。続いて、操作者は基板7を載置面6上から移動する。以上の工程により描画作業を終了する。基板7に着弾した液滴30は次の工程にて加熱、乾燥等の処理をすることにより固化及び硬化することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、収容タンク15には転子31が収容されている。ステップS3の攪拌工程にて主走査駆動装置40がキャリッジ11を移動させる。転子31に慣性力が作用して収容タンク15内で転子31が移動する。そして、転子31が移動することにより、機能液27が攪拌される。従って、収容タンク15内にて沈殿した内在物66を機能液27に分散させることができる。
【0072】
(2)本実施形態によれば、転子31は磁性体を含有し、磁気ユニット14は重力方向から転子31に引力を及ぼしている。従って、転子31は移動し難くなっている。ステップS4の吐出工程では転子31が底面15cを離れない大きさの加速度で収容タンク15を移動させる。従って、機能液27は攪拌されないので収容タンク15内を移動し難くなる。
【0073】
収容タンク15内で機能液27が移動するとき機能液27の圧力が局所的に変動する。その圧力変動が液滴吐出ヘッド18に伝播するとき、ノズル20から吐出される液滴30の体積が変動する。本実施形態では収容タンク15が移動しても収容タンク15内の機能液27は移動し難い為、収容タンク15内の圧力変動は小さい。従って、収容タンク15内から液滴吐出ヘッド18に伝播する圧力変動が小さい為、ノズル20から吐出される液滴30の体積を変動し難くすることができる。
【0074】
(3)本実施形態によれば、収容タンク15の底面15cに転子31が配置される。機能液27に分散している内在物66が沈降するとき、転子31の上に沈殿する。従って、転子31を移動させるとき内在物66は攪拌されるので、機能液27に分散させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、液滴吐出装置の一実施形態について図8の液滴吐出装置の動作を説明するための模式図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、磁気ユニット14と収容タンク15の底面15cとの距離を可変にする点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0076】
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示したようにキャリッジ11上に磁気ユニット14の移動方向を限定する案内部69が配置されている。案内部69は磁気ユニット14を挟んで配置され、磁気ユニット14は案内部69に沿って重力方向であるZ方向に移動可能になっている。キャリッジ11及びヘッドユニット13のX方向両側には間隔調整部としての昇降装置70が配置されている。昇降装置70は上下に移動する可動部70aを有している。案内部69には穴部69aが形成され、可動部70aは穴部69aを通って磁気ユニット14と接続されている。そして、昇降装置70は磁気ユニット14を昇降することができる。昇降装置70は入出力インターフェイス44及びデータバス45を介してCPU38と接続されている。そして、攪拌制御部58の指示信号に従って昇降装置70は磁気ユニット14を昇降する。
【0077】
案内部69の図中上側には収容タンク71が配置されている。収容タンク71の側面には凸部71aが形成されている。そして、収容タンク71の側面の外形形状は案内部69の内側の形状と略同じ形状に形成され、収容タンク71は案内部69に挿入可能となっている。そして、凸部71aが案内部69の上面に載置されることにより、収容タンク71のZ方向の位置が決まる。収容タンク71には機能液27及び転子31が収容されている。収容タンク71において凸部71a以外の構造は第1の実施形態における収容タンク15と同じであり、説明を省略する。
【0078】
ステップS4の吐出工程では、磁気ユニット14を上昇させて磁気ユニット14を収容タンク71の床面71bに近づける。このとき、転子31と磁石14aとの距離が短くなるので、磁石14aが転子31に及ぼす引力が大きくなる。そして、転子31は床面71b上に配列する。磁気ユニット14を収容タンク71に近づけた状態にて、主走査制御部53がキャリッジ11を往復運動させる。キャリッジ11が往復運動しても転子31は移動し難い為、収容タンク71内の機能液27は攪拌され難くなっている。従って、収容タンク71内の機能液27には圧力変動が生じ難くなっている。
【0079】
図8(b)及び図8(c)はステップS3の攪拌工程に対応する図である。図8(b)に示すように、ステップS3において、攪拌制御部58は昇降装置70を駆動して磁気ユニット14を下降させる。そして、磁気ユニット14を収容タンク71の床面71bから遠ざける。このとき、転子31と磁石14aとの距離が長くなるので、磁石14aが転子31に及ぼす引力が小さくなる。従って、転子31は機能液27の中で移動し易くなる。
【0080】
次に、攪拌制御部58が主走査駆動装置40を駆動することによりキャリッジ11を所定の加速度以上の加速度にて移動させる。そして、キャリッジ11が収容タンク71を主走査方向11aの図中右側へ所定の加速度で加速して移動する。転子31には図中左側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中左側に移動し塊状になる。このとき、転子31が移動することにより機能液27が攪拌される。
【0081】
キャリッジ11が主走査方向11aの図中左側へ移動中に急停止するとき、転子31には図中左側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力である。そして、転子31は図中左側に移動し塊状になる。そして、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0082】
図8(c)に示すように、キャリッジ11が収容タンク71を主走査方向11aの図中左側へ所定の加速度で加速して移動させる。転子31には図中右側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力である。そして、転子31は図中右側に移動し塊状になる。このとき、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0083】
キャリッジ11が主走査方向11aの図中右側へ移動中に急停止するとき、転子31には図中右側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力と磁石14aによる引力により転子31を保持する力より大きな力である。そして、転子31は図中右側に移動し塊状になる。そして、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。キャリッジ11が主走査方向11aの図中右側へ急加速と急停止とを行う毎に転子31が図中左右に移動して、機能液27が攪拌される。同様に、キャリッジ11が主走査方向11aの図中左側へ急加速と急停止とを行う毎に転子31が図中左右に移動して、機能液27が攪拌される。
【0084】
磁気ユニット14と転子31との距離は第1の実施形態における距離より長い距離となっている。従って、磁気ユニット14が転子31に及ぼす引力は小さい為、キャリッジ11を移動させる加速度は第1の実施形態における加速度より小さな加速度にて転子31を移動させるこができる。
【0085】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、攪拌制御部58は昇降装置70を駆動することにより磁気ユニット14が転子31に及ぼす引力を制御している。そして、ステップS3の攪拌工程では転子31に及ぼす引力を弱くすることにより転子31を移動し易くする。ステップS4の吐出工程では転子31に及ぼす引力を強くすることにより転子31を移動し難くしている。その結果、ステップS3の攪拌工程では機能液27を攪拌し、ステップS4の吐出工程では機能液27が攪拌され難くできる。
【0086】
(2)本実施形態によれば、磁気ユニット14は磁石14aを有しているので、転子31に引力を及ぼすことができる。そして、昇降装置70が磁石14aと収容タンク71との距離を制御する。磁石14aと収容タンク71との距離を長くする程、転子31に及ぼす引力を小さくすることができる。従って、磁気ユニット14が転子31に及ぼす引力の大きさを制御することができる。
【0087】
(第3の実施形態)
次に、液滴吐出装置の一実施形態について図9の液滴吐出装置の動作を説明するための模式図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、磁気ユニット14に電磁石を用いる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0088】
すなわち、本実施形態では、図9(a)に示したようにキャリッジ11上に磁気ユニット72が配置されている。磁気ユニット72の内部には電磁石73が配置されている。電磁石73は磁性材料からなる芯部73aと芯部73aに巻かれたコイル73bから構成されている。電磁石73は磁石14aと同様に主走査方向11aに配列する複数の磁極を備えている。そして、コイル73bに電流を流すとき、電磁石73にはN極73cとS極73dとが交互に配列して形成される。N極73c及びS極73dの主走査方向11aの幅は転子31の直径と同じ長さになっている。さらに、主走査方向11aのN極73cとS極73dとの間の幅も転子31の直径と同じ長さになっている。そして、転子31に電磁石73の引力が及ぶとき転子31は底面15cに連なって配列するようになっている。
【0089】
磁気ユニット72のコイル73bは磁気制御装置74と電気的に接続されている。そして、磁気制御装置74は制御装置37と接続され、入出力インターフェイス44及びデータバス45を介してCPU38と接続されている。磁気制御装置74は制御装置37の攪拌制御部58が出力する駆動指示振動を入力して電磁石73に印加する電流を制御する。磁気制御装置74がコイル73bに電流を流すとき、電磁石73は磁場を形成し、転子31に引力を及ぼす。転子31には重力と同じ方向から引力が加わるので、転子31は底面15cに接触する。
【0090】
ステップS4の吐出工程では磁気制御装置74はコイル73bに電流を流し、転子31を底面15cに配列させる。そして、攪拌制御部58は収容タンク15内の機能液27を攪拌され難くする。コイル73bに電流を流した状態にて、主走査制御部53がキャリッジ11を往復運動させる。キャリッジ11が往復運動しても転子31は移動し難い為、収容タンク15内の機能液27は攪拌され難くなっている。従って、収容タンク15内の機能液27には圧力変動が生じ難くなっている。
【0091】
図9(b)及び図9(c)はステップS3の攪拌工程に対応する図である。ステップS3において、攪拌制御部58は磁気制御装置74に指示信号を出力し、磁気制御装置74は電磁石73のコイル73bへ通電を停止する制御を行う。このとき、電磁石73は磁場を形成しないので、磁気ユニット72が転子31に及ぼす引力がなくなる。従って、転子31は機能液27の中で移動し易くなる。
【0092】
図9(b)に示すように、攪拌制御部58が主走査駆動装置40を駆動して、キャリッジ11を加速して移動させる。そして、キャリッジ11が収容タンク15を主走査方向11aの図中右側へ移動する。転子31には図中左側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中左側に移動し塊状になる。このとき、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0093】
キャリッジ11が主走査方向11aの図中左側へ移動中に急停止するとき、転子31には図中左側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中左側に移動し塊状になる。そして、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0094】
続いて、攪拌制御部58が主走査駆動装置40を駆動して、キャリッジ11を加速して移動させる。そして、図9(c)に示すように、キャリッジ11が収容タンク15を主走査方向11aの図中左側へ移動する。転子31には図中右側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力による引力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中右側に移動し塊状になる。このとき、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0095】
キャリッジ11が主走査方向11aの図中右側へ移動中に急停止するとき、転子31には図中右側に向かう慣性力が作用する。転子31に作用する慣性力は重力により転子31を保持する力より大きな力であり、転子31は図中右側に移動し塊状になる。そして、転子31の移動に伴い機能液27が攪拌される。
【0096】
攪拌制御部58はコイル73bへ通電を停止しているので、電磁石73は磁場を形成しない。磁気ユニット72が転子31に及ぼす引力がない為、キャリッジ11を移動させる加速度は第1の実施形態における加速度より小さな加速度にて転子31を移動させるこができる。
【0097】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、磁気ユニット72は電磁石73を有しているので、転子31に引力を及ぼすことができる。そして、磁気制御装置74が電磁石73に印加する電流を制御することにより、磁気ユニット72が発生する磁場の強さを制御することができる。磁気ユニット72が発生する磁場の強さと転子31に及ぼす引力の大きさは正の相関関係にすることができる。従って、転子31に及ぼす引力の大きさを制御することができる。
【0098】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、貯留タンク16から収容タンク15へ機能液27を供給したが、機能液27の消費量が少ないときには、必ずしも貯留タンク16を設置しなくとも良い。収容タンク15内の機能液27が少なくなったときには、機能液27が満たされた収容タンク15を機能液27が少なくなった収容タンク15と交換しても良い。貯留タンク16を設置しないので、簡単な構造にすることができる。
【0099】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、基板7に着弾した液滴30は次の工程にて固化及び硬化していた。着弾した後、すぐに液滴30を硬化させても良い。機能液27は材料に光重合開始剤を添加して紫外線硬化性の溶液にする。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを用いることができる。そして、ヘッドユニット13の隣に紫外線照射装置を配設する。そして、液滴30の着弾後に紫外線を照射して硬化させても良い。着弾した複数の液滴30が混じりあうことを防止することができる。
【0100】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、攪拌後経過時間64が経時判定値65以上の時間が経過したとき、ステップS3の攪拌工程に移行した。攪拌工程を行う判断は、この判定に限らない。収容タンク15を交換したときや、液滴吐出装置1を起動したときに攪拌工程を行っても良い。収容タンク15において機能液27に内在物66が沈降している可能性があるときに攪拌工程を行っても良い。機能液27中に分散する内在物66の濃度を所定の濃度より多い状態に維持することができる。
【0101】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、キャビティ26を加圧する加圧手段に、圧電素子29を用いたが、他の方法でも良い。例えば、コイルと磁石とを用いて振動板28を変形させて、加圧しても良い。他に、キャビティ26内にヒーター配線を配置して、ヒーター配線を加熱することにより、機能液27を気化させたり、機能液27に含む気体を膨張させたりして加圧しても良い。他にも、静電気の引力及び斥力を用いて振動板28を変形させて、加圧しても良い。前記第1の実施形態と同様に機能液27を吐出することができる。
【0102】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、基板7に液滴30を吐出した。液滴30が吐出されるワークは基板7に限らない。ワークは立体形状でもよい。基板7に電子素子を実装した電子基板でもよい。他にも金属、樹脂等のシートでも良い。各種のワークに所定のパターンを描画することができる。
【0103】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、ステージ4を用いて基板7を副走査方向4aに移動した。基板7の代わりにシート状のワークをもちいるときには、ステージ4の代わりにプラテンとローラーとを用いてシートを副走査方向4aに移動しても良い。長尺のシートに長いパターンを描画することができる。
【0104】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、キャリッジ11を駆動して液滴吐出ヘッド18を主走査方向11aに移動し、ステージ4を駆動して基板7を副走査方向4aに移動した。これに限らず、キャリッジ11が液滴吐出ヘッド18を主走査方向11a及び副走査方向4aに移動させる構造にしても良い。そして、基板7をベルトコンベア等の移動装置に配置した状態においてノズル20から液滴30を基板7に吐出しても良い。基板7の給材及び除材をし易くできる。
【0105】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、転子31の形状は球形としたが球形以外の形状でも転がり易い形状であれば良い。例えば、円柱、円錐、楕円柱、楕円錐、楕円体等を採用することができる。転子31を形成し易い形状に選択しても良い。
【0106】
(変形例9)
前記第1の実施形態では、収容タンク15内に複数の転子31を配置したが、転子31の個数は1個でも良い。転子31が収容タンク15内を移動することにより機能液27を攪拌することができる。尚、変形例1〜変形例9の内容は前記第2の実施形態及び前記第3の実施形態にも適用できる。
【符号の説明】
【0107】
7…ワークとしての基板、11…移動部としてのキャリッジ、14…磁力発生部としての磁気ユニット、15…液状体収容部としての収容タンク、18…吐出部としての液滴吐出ヘッド、20…ノズル、27…液状体としての機能液、30…液滴、31…転子、70…間隔調整部としての昇降装置、73…電磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからワークに液状体を液滴にして吐出する吐出部と、
磁性体を含有し移動する転子と前記吐出部に供給する前記液状体とを収容する液状体収容部と、
前記ワークに対して前記吐出部と前記液状体収容部とを移動させる移動部と、
前記液状体収容部の重力方向から前記転子に引力を及ぼす磁力発生部と、を有し、
前記移動部は、前記吐出部が前記液滴を吐出するときに前記液状体収容部に対して前記転子が移動しない加速度で前記液状体収容部を移動させ、前記吐出部が前記液滴を吐出しないときには前記液状体収容部に対して前記転子が移動する加速度にて前記液状体収容部を移動させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
ノズルからワークに液状体を液滴にして吐出する吐出部と、
磁性体を含有し移動する転子と前記吐出部に供給する前記液状体とを収容する液状体収容部と、
前記ワークに対して前記吐出部と前記液状体収容部とを移動させる移動部と、
前記液状体収容部の重力方向から前記転子に引力を及ぼす磁力発生部と、を有し、
前記磁力発生部は前記引力を制御することにより、前記吐出部から前記液滴を吐出しないときには前記液状体収容部に対して前記転子を移動し易くし、前記吐出部から前記液滴を吐出するときには前記液状体収容部に対して前記転子を移動し難くすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記磁力発生部は磁石と間隔調整部とを有し、前記間隔調整部は前記磁石と前記液状体収容部との距離を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記磁力発生部は電磁石を有し、前記磁力発生部は前記電磁石に印加する電流を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置であって、
前記転子は複数収容され、前記液状体収容部内の重力方向の面の半分以上の面積を前記転子が占めることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
ノズルと前記ノズルに供給する液状体を収容する液状体収容部とをワークに対して移動しながら、前記ノズルから前記ワークに前記液状体を液滴にして吐出する吐出工程と、
前記液状体収容部を移動することにより、前記液状体収容部内の前記液状体を攪拌する攪拌工程と、を有し、
前記液状体収容部には磁性体を含有する転子が収納され、前記攪拌工程では前記転子を移動させて前記液状体を攪拌し、前記吐出工程では前記転子に重力方向から磁場を加え引力を及ぼすことにより前記転子を移動し難くさせて前記液状体収容部を移動することを特徴とする吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62592(P2011−62592A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213006(P2009−213006)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】