説明

液状体加温装置、およびそれを備えた液状体吐出装置

【課題】高粘度の液状体を効率的かつ安定的に吐出する。
【解決手段】液状体導入部61を有し、前記液状体導入部61から導入される液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド60と、前記液滴吐出ヘッド60を搭載するキャリッジ40と、前記キャリッジ40に固着され、前記液滴吐出ヘッド60の前記液状体導入部61側を囲む閉空間Mを形成するカバー部材51と、前記キャリッジ40および前記カバー部材51を加熱する加熱手段52とを備え、前記液滴吐出ヘッド60の前記液状体導入部61に前記液状体を供給する流路54を、前記加熱手段52によって加温される前記閉空間M内に配置することを特徴とする液状体加温装置50。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度の液状体を加温する液状体加温装置、およびそれを備えた液状体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に対して液状体を液滴として吐出して画像パターンを描画する装置として、液状体吐出装置が知られている。液状体吐出装置は、記録媒体を載置して記録媒体を一方向に移動させるテーブルと、テーブルの上方位置において、テーブルの移動方向と直交する方向に配置されるガイドレールに沿って移動するキャリッジとを備えている。キャリッジには、複数のノズルが規則的に形成されている液滴吐出ヘッドが搭載されている。そして、テーブルに載置された記録媒体とキャリッジとを相対的に移動させながら記録媒体にキャリッジに搭載された液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して画像パターンを形成する。
【0003】
近年、樹脂、金属、ガラスのようなインクが浸透しない記録媒体に画像パターンを形成したいとの要望がある。そのため、液滴吐出ヘッド(記録ヘッド)から紫外線によって硬化する特性を有する光硬化性インクを吐出して、記録媒体に着弾させ紫外線を照射して硬化させて画像パターンを形成する。ところが、この種の光硬化性インクは、一般に粘度が高いため、常温では液滴吐出ヘッドから吐出できなかったり、また、吐出されたとしても吐出特性が不安定になったりしていた。そのため、液滴吐出ヘッドにヒーターを設け、液滴吐出ヘッドやインクの温度を調整する液状体吐出装置(インクジェット記録装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−338176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の液状体吐出装置では、液滴吐出ヘッドにヒーターを設け液滴吐出ヘッドの温度を上昇させインクの温度を調節している。ところが、この方法では液滴吐出ヘッド内のインクの温度は所定の温度になるが、液滴吐出ヘッドに到達する以前の流路内のインクの温度は低い状態にある。そのため、液滴吐出ヘッドから安定的に液状体を吐出するためには、液滴吐出ヘッド内に供給されたインクが所定の温度になるまで加温する必要がある。その結果、作業効率が低下する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)液状体導入部を有し、前記液状体導入部から導入される液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジに固着され、前記液滴吐出ヘッドの前記液状体導入部側を囲む閉空間を形成するカバー部材と、前記キャリッジおよび前記カバー部材を加熱する加熱手段と、を備え、前記液滴吐出ヘッドの前記液状体導入部に前記液状体を供給する流路を、前記加熱手段によって加温される前記閉空間内に配置することを特徴とする液状体加温装置。
【0008】
この構成によれば、液滴吐出ヘッドに液状体を供給する流路を加温された閉空間内に配置することによって、流路内を貫流する液状体を加温することができる。そのため、液状体の粘度を低下させることができ、液滴吐出ヘッドから液状体を安定的に吐出することができる。また、液滴吐出ヘッドに供給されるより前に液状体の温度を上昇させることができるため、液滴吐出ヘッドでの加温時間を短縮することができる。そのため、作業効率を向上させることができる。なお、閉空間とは、完全な密閉状態を意味するのではなく、内部の領域が加温され得る程度の空間であればよい。
【0009】
(適用例2)前記加熱手段は、前記キャリッジの前記液滴吐出ヘッド近傍に設けられることを特徴とする上記の液状体加温装置。
【0010】
この構成によれば、加熱手段は、キャリッジとカバー部材とで形成される閉空間を加温することができるとともに、液滴吐出ヘッドそのものを加温することができる。
【0011】
(適用例3)前記流路は、フレキシブルチューブであって、前記閉空間を形成する前記キャリッジおよび前記カバー部材の内面に接触している部分を有することを特徴とする上記の液状体加温装置。
【0012】
この構成によれば、流路を閉空間内に自在に引き回すことができる。また、流路を加熱手段によって加熱されるカバー部材に接触させることができ、流路内の液状体を効率よく加温することができる。
【0013】
(適用例4)前記流路は、フレキシブルチューブであって、金属材料からなるチューブカバーによって被覆されている部分を有することを特徴とする上記の液状体加温装置。
【0014】
この構成によれば、流路は、熱伝導性のよいチューブカバーを介して熱エネルギーを効率的に受け取ることができる。そのため、流路内の液状体を効率よく加温することができる。
【0015】
(適用例5)前記加熱手段によって加温された前記カバー部材のいずれかの外面に、前記液状体を貯留するタンクを設けることを特徴とする上記の液状体加温装置。
【0016】
この構成によれば、同一の加熱手段によって、タンク内に貯留される液状体も加温することができる。そのため、構造をシンプルにすることができるとともに、効率的に液状体を加温することができる。
【0017】
(適用例6)前記液状体は、光を照射することによって硬化する光硬化性インクであることを特徴とする上記の液状体加温装置。
【0018】
この構成によれば、光硬化性インクの粘度を低下させることができ、液滴吐出ヘッドから光硬化性インクを安定的に吐出することができる。
【0019】
(適用例7)上記の液状体加温装置、記録媒体に光硬化性の液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、および前記記録媒体に着弾した前記液滴に光を照射する光照射部を搭載するキャリッジと、前記記憶媒体を載置するテーブルと、を備え、前記キャリッジと前記テーブルとを相対移動させながら、前記記録媒体に前記液状体からなるパターンを形成することを特徴とする液状体吐出装置。
【0020】
この構成によれば、シンプルな構造で光硬化性インクの粘度を低下させることができるとともに、液滴吐出ヘッドから光硬化性インクを安定的に吐出することができる液状体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】液状体吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】キャリッジを説明する図。
【図3】液滴吐出ヘッドを示す図。
【図4】第1実施例の液状体加温装置を説明する概略断面図。
【図5】第2実施例の液状体加温装置を説明する概略断面図。
【図6】第3実施例の液状体加温装置を説明する概略断面図。
【図7】第1変形例の液状体加温装置を説明する概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態における液状体吐出装置について図面を参照して説明する。なお、説明を分かりやすくするために、各図面における各部材は、構造を簡略化するとともに各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0023】
(液状体吐出装置の全体構成について)
本実施形態における液状体吐出装置の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、液状体吐出装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すX方向は、液滴吐出ヘッドが搭載されるキャリッジの移動方向を示し、Y方向は、記録媒体を載置するテーブルの移動方向を示し、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0024】
図1に示すように、液状体吐出装置100は、基台10と、テーブル移動機構20と、キャリッジ移動機構30と、キャリッジ40と、制御部15とを備えている。基台10は、直方体形状に形成され、長手方向がY方向に沿うように設置面に設置されている。
【0025】
テーブル移動機構20は、一対の案内レール22a,22bと、テーブル24と、図示しない直動機構を備えている。案内レール22a,22bは、基台10の上面10aに、Y方向に延びるように同Y方向全幅にわたり配置されている。テーブル24は、矩形形状に形成され、Z方向上面に載置面24aが設けられている。載置面24aには、図示しない吸引式の媒体固定機構が設けられている。記録媒体Wは、媒体固定機構により載置面24aに固定される。テーブル24は、一対の案内レール22a,22bのZ方向上部に取付けられている。
【0026】
直動機構は、テーブル24の下部に設けられ、そのテーブル24をY方向に往復移動させる。なお、以降、テーブル24が移動する方向を副走査方向という。この直動機構の種類は、特に限定されないが、サーボモーターとボールネジとを組み合わせて構成することができる。他にも、リニアモーターを採用してもよい。
【0027】
キャリッジ移動機構30は、案内部材32と、キャリッジ取り付け部33と、図示しない直動機構を備えている。案内部材32は、基台10のX方向両側に立設された一対の支持台31a,31bにX方向に延びるように架設されている。案内部材32は、その長手方向の幅がテーブル24のX方向の幅よりも長く形成され、その一端が支持台31a側に張り出すように配置されている。案内部材32の下側には、X方向に延びる案内レール34がX方向全幅にわたり配設されている。そして、案内レール34に沿ってキャリッジ取り付け部33が配置されている。キャリッジ取り付け部33は図示しない直動機構を備え、X方向に往復移動可能となっている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、例えば、リニアモーターを採用することができる。なお、キャリッジ取り付け部33が移動するX方向を主走査方向という。
【0028】
キャリッジ40は、略矩形形状に形成され、ヘッドユニット41と、液状体加温装置50と、一対の光照射装置42とを備え、上述のキャリッジ取り付け部33に取り付けられている。ヘッドユニット41は、複数の液滴吐出ヘッドを搭載している。一対の光照射装置42は、紫外線を照射するランプやLED(Light Emitting Diode)を備えている。液状体加温装置50は、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出ヘッドに液状体を供給する流路等を加温する装置である。
【0029】
ヘッドユニット41は、キャリッジ40の略中央部に設けられている。なお、このとき、ヘッドユニット41に搭載された液滴吐出ヘッドの液滴を吐出するノズルがZ方向下方、すなわち、テーブル24に載置される記録媒体Wに対向している。一対の光照射装置42は、図1中X方向に沿ってヘッドユニット41を挟むようにキャリッジ40のZ方向下面に配設される。液状体加温装置50は、キャリッジ40のZ方向上部にヘッドユニット41の上部を囲むように配設される。
なお、キャリッジ40および液状体加温装置50の詳細については後述する。
【0030】
また、キャリッジ移動機構30の案内部材32の上側にメインタンク45が配置されている。メインタンク45には機能性材料を含む液状体が収容されている。メインタンク45の液状体は、図示しない流路としてのチューブを介して、ヘッドユニット41の液滴吐出ヘッドに供給される。
【0031】
制御部15は、基台10の側面に設けられ、液状体吐出装置100を総括的に制御する役割を担う。制御部15は、図示しない各種ドライバー、CPU(Central Processing Unit)、メモリー部、および画像処理部等を備えている。ドライバーは、液滴吐出ヘッド、テーブル移動機構20やキャリッジ移動機構30等を駆動する。CPUは、描画、吐出状態検査、乾燥等の各種処理を実行する。メモリー部は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んだ構成を有している。RAMは、描画データを格納したり、CPUによって実行される各種処理等のプログラムを一時的に展開したり、各種データを一時的に格納したりする。
【0032】
液状体吐出装置100は、上記構成の他に図示しないメンテナンス部を備えている。メンテナンス部は、図示しない吸引ユニットやワイピングユニット等を有している。吸引ユニットは、液状体吐出装置100の非稼働時に、液滴吐出ヘッドのノズル面を封止してノズルの乾燥を防止するとともに、液滴吐出ヘッドのノズルから増粘した液状体を吸引除去する役割を果たす。ワイピングユニットは、液滴吐出ヘッドのノズル面に付着する汚れを払拭する役割を果たす。
【0033】
上述の構成を有する液状体吐出装置100は、キャリッジ40に搭載された複数の液滴吐出ヘッドとテーブル24に載置された記録媒体Wとを略直交する方向に相対移動させながら、複数の液滴吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出して、テーブル24に搭載された記録媒体Wに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、本実施形態においては、使用される液状体は、以下に説明する紫外線により硬化する光硬化性インクである。そのため、描画されたパターンに対して、前述の光照射装置42で紫外線を照射することによってパターンの液状体を硬化させ定着させることができる。
【0034】
(光硬化性インクについて)
ここで、本実施形態において使用される光硬化性インクについて概略を説明する。
光硬化性インクは、一般にUVインクとも呼ばれ、紫外線のエネルギーで光化学反応を起こし、液状から固体へ硬化し皮膜形成を行うインクである。インクは、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料および助剤を主材料とする。主材料に顔料または染料等の色素や金属粉末や親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより固有の機能を有する機能性液状体を形成することができる。
【0035】
光重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル系、アクリレート系やメタクリレート系が好適に適用され得るが、常温で液状であり重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が好適に適用され得るが、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であれば特に限定されない。助剤は、光重合開始剤の開始反応を促進させる機能を有する。また、加温によって重合反応しないような熱重合禁止剤も含まれる。着色料としては、顔料が用いられることが多い。顔料は、種類によって紫外線吸収特性や貯蔵安定性が変わるので適正な種類を選択する。
【0036】
上述の構成を有する光硬化性インクは、紫外線のエネルギーを受け、特に光重合性樹脂が光化学反応を起こし硬化する。光重合性樹脂の反応過程は、反応開始から始まりそして成長反応と連鎖移動反応を連鎖的に繰り返しながら停止反応で終結する。そして、最終的に三次元網目構造の硬化皮膜を形成する。
【0037】
また、光硬化性インクは、上述の構成を有するため、一般に粘度が高い。例えば、インク温度が約20℃では粘度が約28mPa/s位を示す。この粘度では、光硬化性インクを液滴吐出ヘッドから安定的に吐出することが困難である。この光硬化性インクは、インク温度が上昇すると粘度が低下する性質を有する。例えば、インク温度が約40℃では粘度が約11mPa/s、インク温度が約50℃では粘度が約8mPa/s位まで低下する。そのため、光硬化性インクを液滴吐出ヘッドから安定的に吐出するためには、インクを加温することが肝要である。
【0038】
(キャリッジの構成について)
次いで、キャリッジの構成について、図2を参照して説明する。図2は、キャリッジを説明する図であり、(a)は、キャリッジの模式側面図、(b)は、底面側から見たキャリッジの模式平面図である。図2で示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1で示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0039】
図2(a),(b)に示すように、キャリッジ40は、ヘッドユニット41と、液状体加温装置50と、一対の光照射装置42とを備えている。
ヘッドユニット41は、キャリッジ40の下面の略中央部に取り付けられる。ヘッドユニット41は、記録媒体W側の面41aに、例えば、3個の液滴吐出ヘッド60がX方向(主走査方向)に所定の間隔を隔てて配置されている。液滴吐出ヘッド60は、下面側のノズルプレート64に、Y方向(副走査方向)に沿って列状に配設された複数のノズル67を有している。なお、液滴吐出ヘッド60の個数は特に限定されず、作業の種類に合わせて設定できる。
【0040】
図2(a),(b)に示すように、一対の光照射装置42は、図中X方向に沿ってヘッドユニット41を両側から挟むように配設されている。一対の光照射装置42は、同様な構造のものであり、記録媒体W側に、照射窓43が形成されている。光照射装置42は、内部に図示しない発光ユニットを有する。発光ユニットは、例えば、多数のLED素子が配列されており、LED素子は電力の供給を受けて紫外線の光である紫外光を発光する。発光された紫外光は、光照射装置42の照射窓43から記録媒体W側に照射される。
【0041】
図2(a)に示すように、液状体加温装置50は、箱型の形状に形成されキャリッジ40のZ方向上部にヘッドユニット41の上部を囲むように配設される。なお、液状体加温装置50の詳細については、後述する。
【0042】
(液滴吐出ヘッドの構成について)
次に、液滴吐出ヘッドについて、図3を参照して説明する。図3は、液滴吐出ヘッドを示す図であり、詳しくは底面側から見た斜視図である。図3に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一の方向を示す。
図3に示すように、液滴吐出ヘッド60は、液状体導入部61と、ヘッド基板62と、ヘッド本体65と、コネクター66とを備えている。
【0043】
図3に示すように、液状体導入部61は、方形に形成され、2連の接続針68を有し、ヘッド基板62の一面に設けられている。ヘッド基板62は、長手方向の長さが液状体導入部61の長手方向の長さより長い長方形の板状に形成され、液状体導入部61が設けられている面に、さらに2個のコネクター66が設けられている。ヘッド本体65は、方形に形成され、液状体導入部61が設けられている面とは反対側のヘッド基板62の面に、液状体導入部61と対峙するように設けられている。
【0044】
ヘッド本体65は、液状体導入部61に連なるポンプ部63と、ポンプ部63に連なるノズルプレート64とを有している。ノズルプレート64のノズル面64aには、複数のノズル67が形成されている。複数のノズル67は、ノズル面64aにY方向に沿って所定のピッチ間隔を有してノズル列67aを形成している。
【0045】
ポンプ部63には、図示しない圧電素子が設けられており、当該圧電素子を駆動することによって、液状体導入部61から供給されてきた液状体をノズル67から液滴として吐出する。一つのノズル67に対応して一つの圧電素子が設けられており、それぞれのノズル67毎に独立して液滴を吐出することができる。
【0046】
なお、この液滴吐出ヘッド60は、図2(a),(b)に示すキャリッジ40および図1に示す液状体吐出装置100に取り付けられたとき、ノズル67が図1および図2(a)中Z方向下方、すなわち、テーブル24に載置される記録媒体Wに対向し、液状体導入部61および2連の接続針68が図1および図2(a)中Z方向上方を向く。
【0047】
(液状体加温装置について)
(第1実施例)
ここで、液状体加温装置の構成について、図4を参照して説明する。図4は、第1実施例の液状体加温装置を説明する概略断面図である。なお、説明を簡便にするために、液滴吐出ヘッドが1つの場合について説明する。また、図4で示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1で示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0048】
図4に示すように、第1実施例の液状体加温装置50は、カバー部材としてのカバー51と、加熱手段としてのヒーター52と、温度検出器53とを備える。
カバー51は、高熱伝導性の材料を用い箱状に形成されており、開口部をキャリッジ40側に向け固定されている。なお、高熱伝導性の材料としては、例えば、銅やアルミニウム等の材料が好適に適用される。カバー51とキャリッジ40とで形成される閉空間Mは、少なくとも、液滴吐出ヘッド60の液状体導入部61、接続針68を収容する。また、カバー51の一面には、図1に示すメインタンク45から液滴吐出ヘッド60に液状体を供給する供給チューブ54が貫通される孔部51aが設けられている。供給チューブ54は、閉空間Mに引き込まれ、閉空間Mの内部を引き回され液滴吐出ヘッド60の接続針68に接続される。
【0049】
ヒーター52は、例えば、棒状のカートリッジヒーターが用いられ、キャリッジ40の液滴吐出ヘッド60が固定される近傍に埋め込まれている。本実施例では、液滴吐出ヘッド60の長手方向に沿って両脇に2つ埋設されている。ヒーター52の種類は特に限定しない。本実施例では、棒状のカートリッジヒーターが適用されているが、例えば、プレートヒーターがキャリッジ40のカバー51取り付け方向やカバー51の内壁に取り付けられていてもよい。また、線状ヒーターがキャリッジ40のカバー51取り付け方向やカバー51の内壁に取り付けられていてもよい。
【0050】
温度検出器53は、カバー51とキャリッジ40とで構成される閉空間Mの内壁面、例えばキャリッジ40のヒーター52近傍やカバー51の天面に3箇所設けられている。なお、個数および位置は特に限定しない。使用される液状体の種類、ヒーター52の種類、求められる温度精度によって設定できる。また、温度検出器53の方式は特に限定しない。本実施例では、熱電対方式が適用されているが、測温抵抗方式でもよいし、その他の温度測定器でもよい。
【0051】
この温度検出器53は、カバー51とキャリッジ40とで構成される閉空間Mの雰囲気温度を検出する。検出された温度データは、図1に示す制御部15に送られ、その温度データに基いて、ヒーター52に所定の電力を供給もしくは停止して閉空間Mの雰囲気温度を所望の温度に調節する。
【0052】
以下、本実施例の効果を記載する。
(1)上述の構成を有する液状体加温装置50は、キャリッジ40をヒーター52で加熱することによって、キャリッジ40とキャリッジ40に固定された高熱伝導性のカバー51全体を加温する。キャリッジ40およびカバー51を加温することによって、カバー51とキャリッジ40とで構成される閉空間Mの雰囲気温度を一定の温度まで加温することができる。液滴吐出ヘッド60により吐出される高粘度の光硬化性インクは、供給チューブ54の内部を貫流して液滴吐出ヘッド60に至る。供給チューブ54は、一定の温度まで加温された閉空間Mを引き回される。そのため、供給チューブ54内の光硬化性インクが加温される。
【0053】
なお、キャリッジ40に固定された液滴吐出ヘッド60もキャリッジ40の熱が伝達され加温されるため、液滴吐出ヘッド60内の光硬化性インクも加温される。前述のように光硬化性インクは、インク温度が上昇すると粘度が低下する。その結果、液滴吐出ヘッド60から光硬化性インクを安定的に吐出することができる。また、光硬化性インクが液滴吐出ヘッド60に供給されるより前に、光硬化性インクの温度を上昇させることができる。そのため、液滴吐出ヘッドでの加温時間を短縮することができ、作業効率を向上させることができる。
【0054】
(2)上述の構成を有する液状体加温装置50は、光硬化性インクが貫流する供給チューブ54を加温された閉空間M内に配置して、徐々に光硬化性インクを加温する。すなわち、光硬化性インクのインク温度が急激に上昇することを低減させ、所定の温度に加温することができる。そのため、インク内で微小な気泡等を発生させることやインク成分が変化することを低減させることができる。その結果、液滴吐出ヘッド60から光硬化性インクを安定的に吐出することができる。
【0055】
(3))上述の構成を有する液状体加温装置50は、加熱手段としてのヒーター52の熱伝導を有効に用い、簡単な構造で供給チューブ54内や液滴吐出ヘッド60内の光硬化性インクの加温することができる。そのため、装置をシンプルかつコンパクトにすることができ、装置コストの低減を図ることができる。
【0056】
(第2実施例)
ここで、第2実施例の液状体加温装置について図5を参照して説明する。図5は第2実施例における液状体加温装置を説明する概略断面図である。なお、第1実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、第2実施例の液状体加温装置50aは、液滴吐出ヘッド60の接続針68およびに接続針68に接続される供給チューブ54に対して、一部もしくは全体をチューブカバー55で覆っている。チューブカバー55は、高熱伝導性の材料で形成されている。高熱伝導性の材料としては、例えば、銅箔やアルミ箔が好適に適用される。このチューブカバー55に覆われた供給チューブ54は、カバー51とキャリッジ40とで構成され、ヒーター52によって温度が上昇した閉空間M内を引き回される。なお、チューブカバー55は、キャリッジ40の表面やカバー51の内壁部に対して一部接触していることが好ましい。
【0058】
上述の構成を有する液状体加温装置50aは、供給チューブ54を高熱伝導性の材料で形成されるチューブカバー55で覆い、加温された閉空間M内を引き回すように配置している。そのため、閉空間Mの熱エネルギーが供給チューブ54および供給チューブ54内を貫流する光硬化性インクに伝わりやすくなり、光硬化性インクを効率的に加温することができる。その結果、光硬化性インクの粘度を低減させ、液滴吐出ヘッド60から光硬化性インクを安定的に吐出することができる。
【0059】
(第3実施例)
ここで、第3実施例の液状体加温装置について図6を参照して説明する。図6は第3実施例における液状体加温装置を説明する概略断面図である。なお、第1実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、第3実施例の液状体加温装置50bは、液滴吐出ヘッド60の接続針68に接続される供給チューブ54をキャリッジ40とカバー51で構成されるに閉空間Mの内壁に沿って這わせてある。すなわち、ヒーター52によって温度が上昇したキャリッジ40の表面やカバー51の内壁部に供給チューブ54のかなりの部分が接触している。そのため、供給チューブ54は、加温された閉空間Mと、加温されたキャリッジ40の表面やカバー51の内壁から熱エネルギーを受けて、内部を貫流する光硬化性インクを効率的に加温することができる。その結果、光硬化性インクの粘度を低減させ、液滴吐出ヘッド60から光硬化性インクを安定的に吐出することができる。
【0061】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0062】
(第1変形例)
図7に示すように。第1変形例の液状体加温装置50は、カバー51の外壁に液状体が暫定的に貯留されるサブタンク58を密着するように設けている。サブタンク58は、例えば、熱伝導性のよいアルミ箔等の材料を主材料とするインクパックであることが好ましい。光硬化性インクは、図1に示すメインタンク45から第2供給チューブ59を介してサブタンク58に送られる。第2供給チューブ59は、径が比較的大きく高粘度の光硬化性インクを比較的に通流させやすいフレキシブルチューブを適用すればよい。サブタンク58には、当面の吐出作業に必要な量の光硬化性インクを貯留する。前述のように、カバー51は加温されている。
【0063】
そのため、サブタンク58は、カバー51から熱エネルギーを受けて加温される。サブタンク58に貯留される光硬化性インクも、同様に熱エネルギーを受けて加温される。すなわち、光硬化性インクは、ヒーター52によって加温されるカバー51の外壁、キャリッジ40とカバー51で構成される閉空間M、および液滴吐出ヘッド60から熱エネルギーを受けて加温されることができる。すなわち、光硬化性インクを効率的に加温することができる。その結果、光硬化性インクの粘度を低減させ、液滴吐出ヘッド60から光硬化性インクを安定的に吐出することができる。なお、サブタンク58の取り付け位置は、カバー51外壁に限定されるものではなく、発光ユニットによって発熱する光照射装置42の外面やキャリッジ40の外面であってもよい。
【0064】
(その他の変形例)
上述の実施例では、液滴吐出ヘッドから吐出される液状体が光硬化性インクの場合について説明したが、これに限定されない。加温されることによって粘度が低下する特性を有する液状体であればよい。また、ヒーター52をキャリッジ40に設けた場合について、説明したが、これに限定されない。ヒーター52はカバー51に設けてもよい。キャリッジとカバー51とで形成される閉空間Mを加温できる位置であればよい。
【符号の説明】
【0065】
10…基台、15…制御部、24…テーブル、30…キャリッジ移動機構、32…案内部材、40…キャリッジ、41…ヘッドユニット、42…光照射装置、45…メインタンク、50…液状体加温装置、51…カバー部材としてのカバー、52…加熱手段としてのヒーター、53…温度検出器、54…流路としての供給チューブ、55…チューブカバー、58…タンクとしてのサブタンク、59…第2供給チューブ、60…液滴吐出ヘッド、61…液状体導入部、64…ノズルプレート、67…ノズル、68…接続針、100…液状体吐出装置、M…キャリッジとカバーで構成される閉空間、W…記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体導入部を有し、前記液状体導入部から導入される液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジに固着され、前記液滴吐出ヘッドの前記液状体導入部側を囲む閉空間を形成するカバー部材と、
前記キャリッジおよび前記カバー部材を加熱する加熱手段と、を備え、
前記液滴吐出ヘッドの前記液状体導入部に前記液状体を供給する流路を、前記加熱手段によって加温される前記閉空間内に配置することを特徴とする液状体加温装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記キャリッジの前記液滴吐出ヘッド近傍に設けられることを特徴とする請求項1に記載の液状体加温装置。
【請求項3】
前記流路は、フレキシブルチューブであって、前記閉空間を形成する前記キャリッジおよび前記カバー部材の内面に接触している部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液状体加温装置。
【請求項4】
前記流路は、フレキシブルチューブであって、金属材料からなるチューブカバーによって被覆されている部分を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液状体加温装置。
【請求項5】
前記加熱手段によって加温された前記カバー部材のいずれかの外面に、前記液状体を貯留するタンクを設けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液状体加温装置。
【請求項6】
前記液状体は、光を照射することによって硬化する光硬化性インクであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液状体加温装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液状体加温装置、記録媒体に光硬化性の液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、および前記記録媒体に着弾した前記液滴に光を照射する光照射部を搭載するキャリッジと
前記記憶媒体を載置するテーブルと、を備え、
前記キャリッジと前記テーブルとを相対移動させながら、前記記録媒体に前記液状体からなるパターンを形成することを特徴とする液状体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−50837(P2011−50837A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201334(P2009−201334)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】