説明

液状硬化性樹脂組成物

【課題】高い耐温水浸漬特性の光ファイバ素線が得られるとともに、高速硬化性に優れ、保存安定性も良好な液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】組成物全量を100質量%として、
(A)ポリエーテルポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート 35〜85質量%、
(B)(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物 1〜60質量%、
(C)アミン系光増感剤 0.01〜1質量%、及び
(D)光重合開始剤 0.01〜10質量%
を含有する液状硬化性樹脂組成物であって、高周波プラズマ発光・質量分析法(ICP−MS)により求めた組成物中の亜鉛及びコバルト元素の合計含有量が0.5〜10ppmである、液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐温水浸漬特性に優れた光ファイバ素線が得られるとともに、高速硬化が可能な液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバ素線に、保護補強を目的として樹脂を被覆して製造されている。この樹脂被覆としては、光ファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層(以下、「一次被覆層」ともいう。)を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層(以下、「二次被覆層」ともいう。)を設けた構造が知られている。これらの第一次、二次被覆層を有する光ファイバを光ファイバ素線という(以下、光ファイバ素線を単に「光ファイバ」ともいう。)。これらの樹脂被覆を施して得られる光ファイバ素線を平面上に複数並べて結束材料で固めた光ファイバテープもよく知られている。光ファイバ素線の第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をプライマリ材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をセカンダリ材、テープ状ファイバの結束材として用いられる樹脂組成物をテープ材と称している。これらの樹脂被覆方法としては、液状硬化性樹脂組成物を塗布し、熱または光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
【0003】
近年、このような液状硬化性樹脂組成物には、未硬化樹脂液の保存安定性に優れ、光ファイバの製造効率の観点から高速硬化性が求められると共に、耐光性の観点から高い耐温水浸漬特性が求められている。
硬化速度は、ラジカル重合性モノマーや光重合開始剤の選択等により、ある程度高くすることが可能であることが知られている。例えば、高速硬化性に有効な代表的なラジカル重合性モノマーであるN−ビニルカプロラクタムやN−ビニルピロリドン等の環状構造を有するN−ビニル化合物を採用すると共に、光増感剤としてジエチルアミン等の塩基性化合物を併用する等の技術が用いられることがある(特許文献1〜3)。
【0004】
しかし、ジエチルアミン等の塩基性化合物は、光ファイバを温水に長時間浸漬したときに透明性の低下を招く場合があり、光ファイバの伝送特性の長期安定性の観点からは必ずしも望ましくない。このように、従来の塩基性化合物の添加により高速硬化性を確保する技術では、高い耐温水浸漬特性と高速硬化性および樹脂液の保存安定性を両立することは困難であった。
【特許文献1】特開平10−081705号公報
【特許文献2】特開平04−016519号公報
【特許文献3】特開平02−092911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い耐温水浸漬特性の光ファイバ素線が得られるとともに、高速硬化性に優れ、保存安定性も良好な液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、この様な状況に鑑みて鋭意研究した結果、液状硬化性樹脂組成物中の亜鉛及びコバルト元素の含有量を一定値に制御することにより、高い耐温水浸漬特性を有する光ファイバ素線が得られ、高速硬化が可能で、保存安定性も良好な液状硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、組成物全量を100質量%として、
(A)ポリエーテルポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート 35〜85質量%、
(B)(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物 1〜60質量%、
(C)アミン系光増感剤 0.01〜1質量%、及び
(D)光重合開始剤 0.01〜10質量%
を含有する液状硬化性樹脂組成物であって、高周波プラズマ発光・質量分析法(ICP−MS)により求めた組成物中の亜鉛及びコバルト元素の合計含有量が0.5〜10ppmである、液状硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、当該液状硬化性樹脂組成物を、放射線により硬化せしめることにより得られる光ファイバ被覆層及び当該被覆層を有する光ファイバを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、高い耐温水浸漬特性を有する光ファイバ素線が得られるとともに、高速硬化性に優れるものである。また、保存安定性も良好である。光ファイバ用の被覆材、特にプライマリ材や、種々の光学部材の表面コーティング材、光学接着剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液状硬化性樹脂組成物に用いられる(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオール由来の構造を有していれば特に限定されないが、例えば、少なくとも、(a)ポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート、および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる。
【0010】
この(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造する具体的方法としては、例えば(a)ポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート、および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを一括して仕込んで反応させる方法;(a)ポリエーテルポリオールおよび(b)ポリイソシアネートを反応させ、次いで(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;(b)ポリイソシアネート、および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(a)ポリエーテルポリオールを反応させる方法;(b)ポリイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(a)ポリエーテルポリオールを反応させ、最後に(d)イソシアネート基と反応しうる官能基を有するシラン化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0011】
ここで用いる(a)ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールのような一種のイオン重合性環状化合物を開環重合させて得られるポリエーテルジオール、または二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、γ−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。得られる硬化物に耐ジェリー性および耐水性を付与する点から、これらのポリエーテルジオールのうち、ポリプロピレングリコールがより好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)によるポリスチレン換算の数平均分子量で1000〜7000のポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0012】
これらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学社製)、エクセノール 1020、2020、3020、プレミノール PML−4002、PML−S−4102、PML−5005(以上、旭硝子ウレタン社製)、ユニセーフ DC1100、DC1800、DCB1000(以上、日本油脂社製)、PPTG1000、PPTG2000、PPTG4000、PTG400、PTG650、PTG1000、PGT2000、PTG−L1000、PTG−L2000(以上、保土谷化学工業社製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000(以上、第一工業製薬社製)、Acclaim 2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、住化バイエルウレタン社製)等の市販品として入手することができる。
【0013】
(a)ポリエーテルポリオールとしては、上記ポリエーテルジオールが好ましいが、この他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等も併用することができる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0014】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(b)ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体的化合物として、好ましい例としては、芳香族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、より好ましくは、2,4−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートは単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0015】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(c)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応性の点から、水酸基が第一級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第一水酸基含有(メタ)アクリレートという)および水酸基が第二級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第二水酸基含有(メタ)アクリレートという)が好ましい。
【0016】
第一水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
第二水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。
これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いる(a)ポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート、および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリエーテルポリオールに含まれる水酸基1当量に対してポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.1〜1当量となるようにするのが好ましい。
【0019】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成において、ポリエーテルポリオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンや、ヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をアルコール類に置き換えて用いることもできる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。これらの化合物を使用することにより、樹脂のヤング率を調節することができる。
【0021】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成においては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、テトラブトキシチタン、ジルコニウムテトラアセチルアセテート、オクテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量に対して0.01〜1質量%用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常5〜90℃、特に10〜80℃が好ましい。
【0022】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの好ましい分子量は、硬化物の良好な破断伸びおよび液状硬化性樹脂組成物の適度な粘度を得る観点から、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量で、通常500〜40,000であり、特に700〜30,000が好ましい。
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化物のヤング率、破断伸び等の良好な力学特性および液状硬化性樹脂組成物の適度な粘度を得る観点から、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に、35〜85質量%、さらに55〜85質量%、特に70〜85質量%配合するのが好ましい。85質量%を超えると硬化物のヤング率が2.0MPaを超えてしまうため、光ファイバ被覆用樹脂としては好ましくなく、また液状硬化性樹脂組成物の粘度が6.0Pa・sを超えてしまうため作業性も低下し、また硬化物の耐水性も悪化する。35質量%未満では破断強度が悪化してしまう。
【0024】
本発明の液状硬化性樹脂組成物に使用される(B)成分は、(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物であり、典型的には、反応性希釈剤である。(B)成分としては、例えば(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物(以下、「重合性単官能性化合物」という。)、(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(以下、「重合性多官能性化合物」という。)が挙げられる。
【0025】
(B1)重合性単官能性化合物としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、下記一般式で表される化合物等が挙げられる。
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、R1は、水素原子又はメチル基である。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。nは、0〜10である。]
【0028】
これら(B1)重合性単官能性化合物のうち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物、および炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を有する単官能性(メタ)アクリレートが好ましい。ここで炭素数10以上の脂肪族炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖および脂環式のいずれも含まれ、炭素数は10〜24のものが好ましい。これらのうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよび/またはイソデシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これら(B1)重合性単官能性化合物の市販品としては、IBXA(大阪有機化学工業社製)、アロニックスM−110、M−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成社製)、エポキシエステルM−600A(共栄社化学社製)等を使用することができる。
【0029】
(B2)重合性多官能性化合物としては、光ファイバ用樹脂組成物として使用できるものであれば特に制限はないが、好ましい例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドを付加させたビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イアオシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)等が挙げられる。これら(B2)重合性多官能性化合物の市販品としては、例えば、ライトアクリレート9EG−A、4EG−A(以上、共栄社化学社製)、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学社製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上、東亞合成社製)等が挙げられる。
【0030】
これらの(B1)重合性単官能性化合物と(B2)重合性多官能性化合物を併用して用いることもできる。
【0031】
これらの(B)成分は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に1〜60質量%、特に2〜45質量%配合することが好ましい。1質量%未満であると硬化性を損ねる可能性があり、60質量%を超えると低粘度による塗布形状の変化が起き、塗布が安定しない。
【0032】
本発明の(C)成分であるアミン系光増感剤は、光増感剤であるアミン系化合物であれば、特に限定されず、公知のアミン系光増感剤を使用することができる。ここで、光増感剤とは、後述の(D)光重合開始剤の硬化を補助して光硬化性を向上させる添加剤である。本発明で用いる(C)成分は、光増感機能の他にも光安定剤としての機能等をも有するので、特に光増感機能を目的として配合された場合に限定されるものではなく、例えば、光安定剤として配合されたアミン系化合物であっても、その化合物が光増感剤としての機能を潜在的に有するものであれば、(C)成分に該当する。
(C)成分の好ましい具体例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。市販品としては、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0033】
(C)成分のアミン系光増感剤は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%配合することが好ましい。0.01質量%未満であると、硬化速度が低下する場合があり、1質量%を超えると、光ファイバ被覆層の耐温水浸漬特性が低下する場合がある。
【0034】
本発明の(D)成分は、光重合開始剤である。(D)光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの市販品としては、イルガキュア184、369、651、500、907、819、Irgacure1700、Irgacure1850、CGI1870、CG2461、ダロキュア1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LUCIRIN TPO(BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0035】
(D)重合開始剤は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%配合することが好ましい。
【0036】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に各種添加剤、例えば着色剤、(C)成分以外の光増感剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。ここで光増感剤としては、例えばチヌビン 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS770(三共社製)、TM−061(住友化学工業社製)、SEESORB101、SEESORB103、SEESORB709(以上、シプロ化成社製)、Sumisorb130(住友化学社製)等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品として、SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウ・コーニングシリコーン社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばSumilizer GA−80(住友化学社製)、Irganox1010、Irganox1035(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0037】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、亜鉛及びコバルト元素の合計含有量が0.5〜10ppm、好ましくは1〜8ppm、さらに好ましくは2〜5ppmであることが必要である。これらの元素の含有量は、高周波プラズマ発光・質量分析法(Inductively coupled plasma mass spectroscopy;ICP−MS)により求められる。これらの金属元素は、主に、(A)成分の原料であるポリエーテルポリオール標品中に含まれる錯体触媒に由来する。これらの元素の合計含有量が、0.5ppm未満であると、(C)成分の化合物とこれらの金属元素の錯体との錯形成が不十分となるため、親水性の高い(C)成分を核として吸水が進行し、耐温水浸漬特性が低下する場合がある。また、これらの元素の含有量が、10ppmを超えると、ポリエーテルポリオール標品中に含まれる錯体触媒として存在するこれらの元素の化合物が、通常、イオン性物質であるため、本発明の液状硬化性樹脂組成物の製造時に帯電フィルターを使用して濾過をより厳密に行う必要を生じ、生産性を低下させることがある。
【0038】
本発明の液状硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、1.0〜6.0Pa・sが好ましい。また、光ファイバプライマリ層として用いる場合、硬化物のヤング率は0.1〜2.0MPaが好ましい。
【0039】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、放射線によって硬化される。ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等であるが、特に紫外線が好ましい。
【0040】
本発明の別の態様は、以上述べた液状硬化性樹脂組成物を、ガラスファイバ素線または他の光ファイバ被覆層の上に塗布して、放射線により硬化せしめることに得られる光ファイバ被覆層である。放射線として紫外線を用いる場合における、好ましい照射条件は、50〜300J/cm2である。本発明の光ファイバ被覆層は、光ファイバの被覆層の任意の一部の層又は全部の層を成すものであるが、好ましくは、光ファイバの一次被覆層を成す。
【0041】
本発明のさらに別の態様は、上記の光ファイバ被覆層を有する光ファイバである。本発明の光ファイバは、上記光ファイバ被覆層を有していれば、その被覆層がいずれの層であるかによって限定されるものではないが、好ましくは、上記光ファイバ被覆層が一次被覆層であって、さらに二次被覆層を有する光ファイバ、又は、複数本の光ファイバをテープ材で結束した光ファイバテープを挙げることができる。本発明の光ファイバは、石英母材を溶融して得られるガラスファイバ素線に、例えば、一次被覆材を塗布し放射線を照射して硬化させた後に、さらに、二次被覆材を塗布し放射線を照射して硬化させることによって得られる。本発明の光ファイバは、高い耐温水浸漬特性を有している。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
合成例1(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
撹拌機を備えた反応容器に、亜鉛及びコバルト化合物を6〜8ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール50.968部、イソホロンジイソシアネート7.920部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.015部、フェノチアジン0.005部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.49部を添加した後、攪拌しながら液温度を1時間かけて35℃まで徐々に上げた。その後、液温度を50℃に上げて反応させた。残留イソシアネート基濃度が1.45質量%(仕込量に対する割合)以下となった後、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.365部を添加し、液温度約60℃にて撹拌し、反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートオリゴマーをオリゴマーAとする。
【0044】
合成例2(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
撹拌機を備えた反応容器に、亜鉛及びコバルト化合物を6〜8ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール66.78部、2,4−トリレンジイソシアネート8.141部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.019部、フェノチアジン0.005部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.62部を添加した後、攪拌しながら液温度を1時間かけて35℃まで徐々に上げた。その後、液温度を50℃に上げて反応させた。残留イソシアネート基濃度が1.52質量%(仕込量に対する割合)以下となった後、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.102部を添加し、液温度約60℃にて撹拌し、反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートオリゴマーをオリゴマーDとする。
【0045】
比較合成例1(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
亜鉛及びコバルト化合物を6〜8ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコールに替えて、亜鉛及びコバルト化合物を1〜2ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。得られたウレタンアクリレートオリゴマーをオリゴマーBとする。
【0046】
比較合成例2(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
亜鉛及びコバルト化合物を6〜8ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコールに替えて、亜鉛及びコバルト化合物を15〜25ppm含んだ数平均分子量が2000のポリプロピレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。得られたウレタンアクリレートオリゴマーをオリゴマーCとする。
【0047】
合成例3(二次被覆材の調製)
撹拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート15.4部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.013部、ジブチル錫ジラウレート0.047部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら11.32g滴下した後、さらに、1時間撹拌し、反応させた。次に数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール25.4gおよび数平均分子量400のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール9.36gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。液温度50〜60℃に冷却し、イソボニルアクリレート9.7g、SA−1002(三菱化学社製)14.55g、N−ビニルカプロラクタム9.7g、Irgacure184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)2.91gおよびスミライザー GA−80(住友化学社製)0.3gを加え、均一になるまで撹拌して、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0048】
合成例4(二次被覆材の調製)
攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール180.88g、数平均分子量10000のポリプロピレングリコール9.02g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.182g、トリレンジイソシアネート257.22g、2−エチルヘキシルアクリレート95.80gを仕込み、これらを攪拌しながら、液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.605gを添加した後、温度が40℃以上にならないように注意しながら、1時間ほど攪拌した。室温になるまで攪拌した後、2−ヒドロキシプロピルアクリレート88.89gを、液温度が30℃を越えないように調節しながら滴下した。滴下終了後、液温度40℃で1時間撹拌した。次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート220.77gを、液温度が60℃を越えないように調節しながら滴下した。滴下終了後、液温度60℃で撹拌した。残留イソシアネート基濃度が0.1重量%以下になった時を反応終了とし、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得た(これを重合性オリゴマーとする)。液温度を50〜60℃に冷却し、2−エチルへキシルアクリレート114.95g、Irganox245(チバスペシャリティーケミカルズ社製)2.90g、Irgacure184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)29.03gを加え、均一な樹脂液になるまで撹拌して、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0049】
実施例1〜2、比較例1〜3(一次被覆材の調製)
撹拌機を備えた反応容器に表1に示す配合比(質量部)で化合物を仕込み、均一な溶液になるまで液温度50℃で攪拌し、実施例及び比較例の液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0050】
製造例1(光ファイバ素線の製造)
光ファイバ線引き装置(吉田工業製)を使用して、石英ガラスファイバ上に一次被覆材として、実施例又は比較例の組成物を塗布硬化させた後、二次被覆材を塗布し硬化させた。光ファイバの製造条件は以下のように行った。
光ファイバの線径は、ガラスファイバは直径125μmであったが、これに実施例又は比較例で得られた一次被覆材を塗布硬化させ、直径が200μmになるように調整した。さらに形成された一次被覆層の上に、合成例3で得られた二次被覆材を塗布し、硬化した時点で245μmになるように調節して塗布した。紫外線照射装置はORC社製UVランプ(SMX3.5kw)を使用した。光ファイバの線引き速度は200m/minとした。
【0051】
製造例2(光ファイバ素線の製造)
合成例2で得られた液状硬化性樹脂組成物を一次被覆材とし、合成例4で得られた液状硬化性樹脂組成物を二次被覆材として、それぞれ用いた他は製造例1と同様にして、光ファイバ素線を製造した。
【0052】
試験例
(1)硬化性:
実施例および比較例で得られた液状硬化性樹脂組成物の硬化性を測定した。200μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で20mJ/cm2および500mJ/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルム二種類を得た。この硬化フィルム二種類からそれぞれ延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう、短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%下で引張り試験機AGS−1KND(島津製作所社製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。20mJ/cm2で硬化させた試験用フィルムのヤング率と500mJ/cm2で硬化させた試験用フィルムのヤング率の比を式(1)より算出して、組成物の硬化速度を評価した。
硬化性 =(20mJ/cm2時のヤング率)/(500mJ/cm2時のヤング率)(1)
【0053】
(2)耐温水浸漬特性:
実施例および比較例で得られた液状硬化性樹脂組成物の温水浸漬試験を行った。70μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に合成例3で調製した二次被覆材を塗布し、これを空気中で100mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させた。次に、作製した硬化フィルム上に130μm厚のアプリケーターバーを用いて実施例及び比較例で調製した一次被覆材を塗布し、これを窒素中で500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。さらに、200μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に合成例3で調製した二次被覆材を塗布し、これを窒素中で500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。この硬化フィルムからそれぞれ幅10mm、長さ30mmとなるよう、短冊状サンプルを作成した。短冊サンプルを温度60℃の温水に浸漬させ、光学顕微鏡で観察した。720時間温水に浸漬した後に、10μm以上の発泡が認められない場合を「○」、10μm以上の発泡が認められる場合を「×」と評価した。
【0054】
(3)濾過性:
実施例および比較例で得られた液状硬化性樹脂組成物の濾過性試験を行った。組成物100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、PTFEメンブレンフィルター(1.0μm、47mm:ADVANTEC社製)を使用し濾過した。30分の濾過で得られた濾液量を測定した。
【0055】
(4)判定:
硬化性が0.80以上で、耐温水浸漬試験が「○」評価であり、濾過性試験で100g以上の場合を合格と判定した。
【0056】
以上の結果を表1に併せて示す。表中の各成分の配合量を示す数値は、質量部である。
【0057】
【表1】

【0058】
表1中、
アロニックスM−113:ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、東亞合成社製
Irganox1035:チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)SEESORB101:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(シプロ化成社製)
SH6062:γ−メルカプトキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全量を100質量%として、
(A)ポリエーテルポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート 35〜85質量%、
(B)(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物 1〜60質量%、
(C)アミン系光増感剤 0.01〜1質量%、及び
(D)光重合開始剤 0.01〜10質量%
を含有する液状硬化性樹脂組成物であって、高周波プラズマ発光・質量分析法(ICP−MS)により求めた組成物中の亜鉛及びコバルト元素の合計含有量が0.5〜10ppmである、液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(C)アミン系光増感剤が、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、および4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルからなる群から選択される一種以上の化合物である請求項1記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、ポリプロピレングリコール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1又は2記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の液状硬化性樹脂組成物を、放射線により硬化せしめることにより得られる光ファイバ被覆層。
【請求項5】
請求項4記載の被覆層を有する光ファイバ。

【公開番号】特開2007−119705(P2007−119705A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354761(P2005−354761)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】