説明

液状食品加熱装置

【課題】 加熱前の液状食品の温度に拘わらず、且つ、加熱途中の液状食品の温度を直接温度センサによって検出することなく、液状食品を目標温度に加熱できる液状食品加熱装置を提供する。
【解決手段】 シスターン12に設けた温度センサ12cを通じてシスターン12内の貯留水の温度Twを検出し、該温度Twを蒸気噴出時間決定用の各演算式1,2の投入水温Twとして使用して蒸気噴出時間thsを決定し、該蒸気噴出時間thsに基づいて液状食品AFに蒸気を噴出することにより該液状食品AFを目標温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を利用して液状食品を目標温度に加熱する液状食品加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液状食品加熱装置は、水を加熱気化して蒸気を生成する蒸気生成機と、蒸気生成機の出口に管路を介してその入口を接続された蒸気噴出ノズルとを備える。この液状食品加熱装置によれば、蒸気噴出ノズルを液状食品に挿入した後、蒸気生成機で生成された蒸気を蒸気噴出ノズルに送り込むことにより、蒸気噴出ノズルから噴出される蒸気によって液状食品を加熱する。
【0003】
噴出蒸気によって加熱される液状食品の温度は蒸気噴出時間によってコントロールできることから、一般には、加熱対象となる液状食品の量や種類等に応じて蒸気噴出時間を予め定め、蒸気噴出開始から該蒸気噴出時間が経過したときに蒸気噴出を停止させる方法が採用されている。
【0004】
この方法とは別に、液状食品に蒸気噴出ノズルと共に温度センサを挿入して、蒸気噴出開始後に温度センサの検出温度が目標温度に達したときに蒸気噴出を停止させる方法も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−70644
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予め定めた蒸気噴出時間が経過したときに蒸気噴出を停止させる前者の方法は、温度センサ及びその設置パーツが不要であるためメカニズムを簡略化でき、且つ、温度検出に係るデバイス及び処理が不要であるためコントロールシステム及びプログラムフローを簡素化できる利点を有する反面、予め定めた蒸気噴出時間で得られる熱量が一定であるが故に外気温度の影響によって変動する加熱前の液状食品の温度に依存して加熱後の液状食品の温度にばらつきを生じる不具合がある。
【0006】
温度センサの検出温度に基づいて蒸気噴出を停止させる後者の方法は、加熱前の液状食品の温度に拘わらず温度センサの検出温度に基づいて該液状食品を目標温度に加熱できる利点を有する反面、温度センサの表面に付着した液状食品によってセンシング機能が損なわれることを防止するために該温度センサを加熱後の液状食品から引き抜いた後に洗浄するための機構及び処理が必要となるためメカニズムが複雑化すると共に該メカニズムを動作させるためにコントロールシステム及びプログラムフローが複雑化する不具合がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたものであり、その目的とするところは、加熱前の液状食品の温度に拘わらず、且つ、加熱途中の液状食品の温度を直接温度センサによって検出することなく、液状食品を目標温度に加熱できる液状食品加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、カップ内に投入された固形物と水とから成る液状食品内に蒸気噴出ノズルから蒸気を噴出して該噴出蒸気によって液状食品を目標温度に加熱する液状食品加熱装置であって、カップ内に投入される水の温度を検出する投入水温検出手段と、検出された投入水温に基づいて蒸気噴出時間を決定する蒸気噴出時間決定手段とを備える、ことをその特徴とする。
【0009】
この液状食品加熱装置によれば、カップ内に投入される水の温度が投入水温検出手段によって検出され、検出された投入水温に基づいて蒸気噴出時間決定手段によって蒸気噴出時間が決定される。つまり、加熱前の液状食品の温度に拘わらず、且つ、加熱途中の液状食品の温度を直接温度センサによって検出することなく、投入水温に応じて決定された蒸気噴出時間に基づいて液状食品に蒸気を噴出することにより該液状食品を目標温度に加熱できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱前の液状食品の温度に拘わらず、且つ、加熱途中の液状食品の温度を直接温度センサによって検出することなく、液状食品を目標温度に加熱できる。
【0011】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[本発明の一実施形態]
図1〜図9は本発明の一実施形態を示す。図1は液状食品加熱装置の構成図、図2は図1に示した液状食品加熱装置の電気回路図、図3は図1に示した液状食品加熱装置で実行される蒸気生成機加熱のフローチャート、図4は図1に示した液状食品加熱装置で実行される液状食品調理のフローチャート、図5は図4中の蒸気噴出時間の決定ステップで行われる決定方法の説明図、図6〜図9は図1に示した液状食品加熱装置の動作説明図である。
【0013】
まず、図1を参照して、液状食品加熱装置のメカニズムについて説明する。
【0014】
図1中の符号11は水タンク、12はシスターン、13は軟水フィルタ、14は殺菌フィルタ、15は蒸気生成機、16は水供給ノズル、17は蒸気噴出ノズル、18は蒸気噴出ノズル用昇降機構、19〜24は材料貯蔵庫、25はカップ用移動機構、26はカップ、27は電磁式の第1ポンプ、28は電磁式の第2ポンプ、29は電磁式の第3ポンプ、30は第1逆止弁、31は第2逆止弁、32は流量センサ、33は流量調整弁、34は電磁式の第1開閉弁、35は電磁式の第2開閉弁、36は電磁式の第3開閉弁、37は電磁式の第4開閉弁である。
【0015】
また、P1は蒸気生成機15の出口と蒸気噴出ノズル17の入口とを結ぶ第1管路であり、該第1管路P1には第1開閉弁34が介装されている。P2は第1管路P1における第1開閉弁34の上流側とシスターン12の第1入口とを結ぶ第2管路であり、該第2管路P2には第2開閉弁35が介装されている。P3はシスターン12の第1出口と蒸気生成機15の入口とを結ぶ第3管路であり、該第3管路P3には第3ポンプ29と流量調整弁33が順に介装されている。P4は第3管路P3における流量調整弁33の下流側とシスターン12の第2入口とを結ぶ第4管路であり、該第4管路P4には第3開閉弁36が介装されている。P5は第3管路P3における第3ポンプ29と流量調整弁33の間と第4管路P4における第3開閉弁36の下流側とを結ぶ第5管路であり、該第5管路P5には第4開閉弁37が介装されている。P6は水タンク11の出口と軟水フィルタ13の入口とを結ぶ第6管路であり、該第6管路P6には第1ポンプ27が介装されている。P7は軟水フィルタ13の出口と殺菌フィルタ14の入口とを結ぶ第7管路である。P8は殺菌フィルタ14の出口とシスターン12の第3入口とを結ぶ第8管路であり、該第8管路P8には第1逆止弁30が介装されている。P9はシスターン12の第2出口と水供給ノズル16の入口とを結ぶ第9管路であり、該第9管路P9には流量センサ32と第2ポンプ28と第2逆止弁31が順に介装されている。
【0016】
因みに、第5管路P5及び第4開閉弁37は第3ポンプ29のエア抜き用のものであり、第4開閉弁37はエア抜きを行うとき以外は閉じている。
【0017】
水タンク11は原料水となる水道水を貯留するためのもので、手動補給のための補給口(図示省略)と、貯留水の水位を検出するためのフロートスイッチ等の水位センサ11aとを有する。水位センサ11aは水タンク11内の貯留水の水位を検出して報知することで水補給を促すためのものであるが、水タンク11を透明或いは半透明な材料から形成して貯留水の水位を目視できるようにすれば、水位センサ11aは必ずしも必要なものではない。また、水タンク11に電磁式開閉弁が介装された水道管を接続し、該開閉弁を水位センサ11aの検出信号に基づいて開閉させるようにすれば、水タンク11への水補給を自動的に行うこともできる。
【0018】
シスターン12は水道水を電気分解して塩素濃度を高める役割を果たすもので、電気分解用の陽極12a及び陰極12bと、貯留水の温度Twを検出するためのサーミスタ等の温度センサ12cと、貯留水の水位を検出するためのフロートスイッチ等の水位センサ12dを有する。尚、本実施形態では前記シスターン12が請求範囲で言うところの「水貯留部」に該当し、前記温度センサ12c及び後述のディテクタ59が請求範囲で言うところの「投入水温検出手段」に該当し、前記温度センサ12cで検出された貯留水の温度Twが請求範囲で言うところの「投入水温」に該当する。
【0019】
軟水フィルタ13は水タンク11から送り込まれた水道水からミネラル分を除去する役目を果たし、殺菌フィルタ14は軟水フィルタ13から送り込まれた水道水から雑菌や不純物を除去する役目を果たす。
【0020】
蒸気生成機15は、アルミニウム等の良伝熱性金属から成る本体ブロック(符号無し)と、本体ブロック内に埋設されたステンレス等の耐水性金属から成る螺旋管15aと、熱源たる電熱式のヒータ15bと、本体ブロックの温度(蒸気生成機15の温度)Thを検出するためのサーミスタ等の温度センサ15cとを有する。螺旋管15aの一端は蒸気生成機15の入口となっていて他端は蒸気生成機15の出口となっている。この蒸気生成機15は、入口から螺旋管15a内に送り込まれた所定流量の水をその通過過程で加熱気化して蒸気(過熱蒸気を含む)を生成し、生成された蒸気を出口から送り出すことができる。
【0021】
蒸気噴出ノズル17はポリプロピレン等の撥水性材料から有底の円筒状に形成されており、カップ26内に挿入される下部に複数の蒸気噴出孔17aを有する。
【0022】
蒸気噴出ノズル用昇降機構18は、メインフレーム18aと、複数のガイドロッド18cを介してメインフレーム18aに設けられたサブフレーム18bと、ガイドロッド18cに沿って昇降可能なスライダ18dと、スライダ18dを上方に付勢する複数のコイルバネ18eと、メインフレーム18aに設けられた上下1対のプーリ18fと、両プーリ18fに巻き付けられた無端ベルト18gと、一方のプーリ18fを回転駆動するモータ18hと、スライダ18d(蒸気噴出ノズル17)の上昇位置を検出するマイクロスイッチ等の位置センサ18iと、スライダ18d(蒸気噴出ノズル17)の下降位置を検出するマイクロスイッチ等の位置センサ18jとを有する。スライダ18dはブラケット等を介して無端ベルト18gに連結されており、該スライダ18dには蒸気噴出ノズル17が縦向きに取り付けられている。
【0023】
材料貯蔵庫19〜24は、加熱前の液状食品AF、例えば具材入りスープや具材入りみそ汁等を調合する際に用いられる固形物、詳しくは粉材と具材を種別に貯蔵している。粉材は水及び湯による溶解を前提としたコンソメスープ用粉やクリームスープ用粉やみそ汁用粉等であり、具材は水及び湯による戻しを前提とした乾燥野菜や乾燥肉等である。各材料貯蔵庫19〜24は前面下部に供給口(符号無し)を有すると共に、所定量の材料を供給口から送出するための機構(図示省略)と、該機構を動作させるためのモータ(19a〜24a,図2参照)を有する。
【0024】
カップ用移動機構25は、フレーム25aと、左右1対のプーリ25bと、両プーリ25bに巻き付けられた無端ベルト25cと、一方のプーリ25bを回転駆動するモータ25dと、ブラケット等を介して無端ベルト25cに連結された逆円錐台状のカップホルダ25eと、カップホルダ25eの左右位置を検知するマイクロスイッチ等の複数の位置センサS21〜S2n(図2参照)とを有する。各位置センサS21〜S2nは材料貯蔵庫19〜24と水供給ノズル16と蒸気噴出ノズル17に対応して配置されており、材料供給,水供給及び蒸気噴出(液状食品AFの加熱)を行う際のカップホルダ25e(カップ26)の停止位置を定める役目を果たす。
【0025】
カップ26は紙或いはプラスチックから逆円錐台状に形成されており、カップホルダ25eへの嵌め込み及び取り出しを可能としている。
【0026】
次に、図2を参照して、図1に示した液状食品加熱装置のコントロールシステムについて説明する。
【0027】
図2中の51はコントローラ、52はシスターン用ドライバ、53は蒸気生成機用ドライバ、54はモータ用ドライバ、55は材料貯蔵庫用ドライバ、56はポンプ用ドライバ、57は開閉弁用ドライバ、58は水位センサ用ディテクタ、59は温度センサ用ディテクタ、60は位置センサ用ディテクタ、61は流量センサ用ディテクタ、62はメニュー選択器である。
【0028】
コントローラ51はマイクロコンピュータを内蔵し、各ディテクタ58〜60とメニュー選択器62からの信号に基づき、メモリに格納されている各種プログラムに従って各ドライバ52〜57に制御信号を送出する。
【0029】
シスターン用ドライバ52は、コントローラ51からの制御信号に基づいてシスターン12の陽極12a及び陰極12bに所定の電力を供給する。蒸気生成機用ドライバ53は、コントローラ51からの制御信号に基づいて蒸気生成機15のヒータ15aに所定の電力を供給する。モータド用ライバ54は、コントローラ51からの制御信号に基づいて蒸気噴出ノズル用昇降機構18のモータ18hとカップ用移動機構25のモータ25dのそれぞれに所定の電力を供給する。材料貯蔵庫用ドライバ55は、コントローラ51からの制御信号に基づいて各材料貯蔵庫19〜24のモータ19a〜24aに所定の電力を供給する。ポンプド用ライバ56は、コントローラ51からの制御信号に基づいて第1〜第3ポンプ27〜29のそれぞれに所定の電力を供給する。開閉弁用ドライバ57は、コントローラ51からの制御信号に基づいて第1〜第4開閉弁34〜37のそれぞれに所定の電力を供給する。
【0030】
水位センサ用ディテクタ58は、水タンク11の水位センサ11aとシスターン12の水位センサ12dからの信号を変換してコントローラ51に送出する。温度センサ用ディテクタ59は、シスターン12の温度センサ12cと蒸気生成機15の温度センサ15cからの信号を変換してコントローラ51に送出する。位置センサ用ディテクタ60は、蒸気噴出ノズル用昇降機構18の位置センサ18i,18jとカップ用移動機構25の位置センサS21〜S2nからの信号を変換してコントローラ51に送出する。流量センサ用ディテクタ61は、流量センサ32からの信号を変換してコントローラ51に送出する。
【0031】
メニュー選択器62は、液状食品のメニュー(具材入りスープや具材入りみそ汁等)を選択するためメニューボタン群と調理開始ボタンとを少なくとも有する。各メニューに対応する材料種類や水量等の調合用データはコントローラ51のメモリに格納されている。
【0032】
次に、図3〜図9を参照して、図1に示した液状食品加熱装置の動作について説明する。
【0033】
装置の電源が投入されると、図示省略の検出フローに従って、水タンク11の水位センサ11aによって該水タンク11内の貯留水の水位が検出され、水位が所定レベル以下のときには水タンク11への水補給を促すための報知、例えばランプ点滅等が行われる。
【0034】
また、装置の電源が投入されると、図示省略の検出フローに従って、シスターン12の水位センサ12dによって該シスターン12内の貯留水の水位が検出され、水位が所定レベル以下のときには第1ポンプ27の運転が開始されて水タンク11の貯留水が第6管路P6を通じて軟水フィルタ13に送り込まれ、該軟水フィルタ13から第7管路P7を通じて殺菌フィルタ14に送り込まれ、該殺菌フィルタ14から第8管路P8及び第1逆止弁30を通じてシスターン12に送り込まれる。つまり、電源投入後はシスターン12内の貯留水の水位に基づいて第1ポンプ27が断続的に運転され、これによりシスターン12内の貯留水の水位がほぼ一定に保たれる。
【0035】
さらに、装置の電源が投入されると、図示省略の電解フローに従って、シスターン12内の陽極12a及び陰極12bに所定の電力が所定時間供給されて該シスターン12内の貯留水の電気分解が実施される。つまり、電源投入後は陽極12a及び陰極12bへの電力供給が断続的に実施され、これによりシースターン12内の貯留水が電気分解されてその塩素濃度が高められて安全性が向上する。
【0036】
さらに、装置の電源が投入されると、図3の蒸気生成機加熱フローに従って蒸気生成機15の加熱が開始される。詳しくは、電源投入後は蒸気生成機15の温度Thが温度センサ15cによって検出され、検出温度Thが蒸気生成に適した温度、例えば180℃に満たないときにはヒータ15bに所定の電力が供給され、また、検出温度Thが設定温度以上のときにはヒータ15bへの電力供給が停止される(図3のステップSS1〜SS4参照)。つまり、電源投入後はヒータ15bへの電力供給が断続的に実施され、これにより蒸気生成機15の温度Thが蒸気生成に適した温度(約180℃)に維持される。
【0037】
装置の電源が投入された後に、所期の液状食品調理を行うときには、カップ用移動機構25のカップホルダ25eに空のカップ26を嵌め込むと共に、メニュー選択器62のメニューボタン群を選択的に押して調理開始ボタンを押す。このボタン操作によって選択メニューの内容(後述する液状食品AFの調合に必要な材料及び水量)を含む調理指令がメニュー選択器62からコントローラ51に入力される(図4のステップST1参照)。
【0038】
調理指令が入力された後は、シスターン12内の温度センサ15cによって該シスターン12内の貯留水の温度Twが検出され、該検出温度Tw及び選択メニューの内容等に基づいて蒸気噴出時間thsが決定される(図4のステップST2,ST3参照)。この蒸気噴出時間thsは、シスターン12内の貯留水を蒸気生成機15に送り込むための第3ポンプ29の運転時間として用いられる。
【0039】
ここで、ステップST3で行われる蒸気噴出時間thsの第1の決定方法とこれの代用となる第2の決定方法について説明する。
【0040】
[第1の決定方法]
第1の決定方法は、蒸気噴出時間ths(sec)=〔{投入水量(g)×(目標温度(℃)−投入水温Tw(℃))}/(水の気化熱(cal/g)×水の流量(g/sec))〕/加熱効率ηの演算式1を用いて蒸気噴出時間ths(sec)を決定する方法である。
【0041】
前記演算式1における投入水量(g)は後述する調合のステップST4で水供給ノズル16からカップ26内に投入される水の量である。投入水温Tw(℃)は後述する調合のステップST4で水供給ノズル16からカップ26内に投入される水の温度であり、本実施形態では該投入水温Tw(℃)として前記ステップST2で検出された貯留水の温度Twが使用される。目標温度(℃)は液状食品AFの加熱後の温度である。水の流量(g/sec)は第3ポンプ29の運転によって流量調整弁33を通じて蒸気生成機15の入口に送り込まれる水の流量である。加熱効率ηは蒸気生成機15の入口に送り込まれた水をその通過過程で加熱気化させる際の熱効率である。
【0042】
例えば、投入水量(g)が155g、目標温度(℃)が80℃、投入水温Tw(℃)が20℃、水の気化熱(cal/g)が539cal/g、水の流量(g/sec)が2g/sec、加熱効率ηが0.9のときに前記演算式1で求められる蒸気噴出時間thsは9.6secとなる。
【0043】
図5は蒸気噴出時間ths(sec)の演算結果を示すもので、図中のVOW1は投入水量(g)が130gの場合の演算結果、VOW2は投入水量(g)が155gの場合の演算結果、VOW3は投入水量(g)が180gの場合の演算結果である。
【0044】
前記演算式1における水の気化熱(cal/g)と加熱効率ηは固定値として扱うことができるので、投入水量(g)と目標温度(℃)と水の流量(g/sec)が同じ場合には投入水温Tw(℃)に依って蒸気噴出時間ths(sec)を決定できることになる。
【0045】
[第2の決定方法]
第2の決定方法は、蒸気噴出時間ths(sec)=基準時間thb(sec)+{(基準水温Twb(℃)−投入水温Tw(℃))×時間係数C(sec)}の演算式2を用いて蒸気噴出時間ths(sec)を決定する方法であり、該演算式2における基準時間thb(sec)と基準水温Twb(℃)は投入水量毎に定められコントローラ51のメモリに格納されている。因みに、前記演算式2における時間係数C(sec)は、例えば、時間係数C(sec)=投入水量(g)/(水の気化熱(cal/g)×水の流量(g/sec)×加熱効率η)の式によって求めることができる。
【0046】
前記演算式2における投入水温Tw(℃)は後述する調合のステップST4で水供給ノズル16からカップ26内に投入される水の温度であり、本実施形態では該投入水温Tw(℃)として前記ステップST2で検出された貯留水の温度Twが使用される。時間係数C(sec)は時間を単位とする係数である。
【0047】
例えば、投入水量(g)が155gの場合の基準時間thb(sec)が9.6sec、基準水温Twb(℃)が20℃の場合、投入水温Tw(℃)が22℃、時間係数C(sec)が0.15secのときに前記演算式2で求められる蒸気噴出時間thsは9.3secとなる。
【0048】
前記演算式2における基準水温Twb(℃)と時間係数C(sec)は固定値として扱うことができるので、投入水量が同じ場合には投入水温Tw(℃)に依って蒸気噴出時間ths(sec)を決定できることになる。
【0049】
蒸気噴出時間thsが決定された後は、図6に矢印で示すように、材料貯蔵庫(19〜24)から選択メニューの内容に応じた所定量の固形物(粉材のみ或いは粉材及び具材)がカップ26内に投入され、続いて、シスターン12から選択メニューの内容に応じた所定量の水がカップ26内に投入され、以上によりカップ26内で加熱前の液状食品AFが調合される(図4のステップST4参照)。
【0050】
カップ26内への固形物の投入は、カップ用移動機構25のカップホルダ25eが所定の材料貯蔵庫(19〜24)の供給口の下側に移動して停止するように位置センサ(S21〜S2n)の検出信号に基づいてモータ25dを動作させ、各停止位置で材料貯蔵庫(19〜24)の材料供給機構のモータ(19a〜24a)を動作させることによって行われる。また、カップ26内への水投入は、カップ用移動機構25のカップホルダ25eが水供給ノズル16の下側に移動して停止するように位置センサ(S21〜S2n)の検出信号に基づいてモータ25dを動作させ、該停止位置で流量センサ32の検出信号に基づいて第2ポンプ28を所定時間運転させることによって行われる。
【0051】
液状食品AFの調合が完了した後は、図7に矢印で示すように、蒸気噴出ノズル17の下部がカップ26内の液状食品AFに挿入される(図4のステップST5,ST6参照)。
【0052】
液状食品AFへの蒸気噴出ノズル17の下部の挿入は、カップ用移動機構25のカップホルダ25eが蒸気噴出ノズル17の下側に移動して停止するように位置センサ(S21〜S2n)の検出信号に基づいてモータ25dを動作させ、該停止位置で蒸気噴出ノズル用昇降機構18のスライダ18dが下降して停止するように位置センサ18jの検出信号に基づいてモータ18hを動作させることによって行われる。
【0053】
蒸気噴出ノズル17の液状食品AFへの挿入が完了した後は、図7に示すように、第1開閉弁34が開けられ、且つ、第2開閉弁35と第3開閉弁36が閉じられると共に、第3ポンプ29の運転が開始されて蒸気噴出ノズル17から液状食品AF内への蒸気噴出が開始される(図4のステップST7,ST8参照)。
【0054】
蒸気噴出ノズル17から液状食品AF内への蒸気噴出は、第3ポンプ29の運転によってシスターン12内の貯留水を流量調整弁33で定められた流量下で蒸気生成機15の入口に送り込むことによって行われる。先に述べたように蒸気生成機15は蒸気生成に適した温度(約180℃)に維持されているので、蒸気生成機15の入口に送り込まれた水は螺旋管15aを通過する過程で加熱気化して蒸気(過熱蒸気を含む)となり、生成された蒸気がその出口から第1管路P1及び第1開閉弁34を通じて蒸気噴出ノズル17に送り込まれる。
【0055】
蒸気噴出ノズル17に送り込まれた蒸気はその下部に設けられた複数の蒸気噴出孔17aから液状食品AF内に噴出されるため、噴出に伴う撹拌作用によって液状食品AFに含まれる粉材の溶解と具材の戻しが効果的に行われると共に全体が均一に加熱される。また、液状食品AF内への蒸気噴出は前記ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsだけ継続して行われるため、液状食品AFの温度は目標温度、例えば80℃に達する。
【0056】
蒸気噴出が開始されてから前記ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsが経過した後は、換言すれば第3ポンプ29の運転が開始されてから同時間thsが経過した後は、第3ポンプ29の運転が停止される(図4のステップST9,ST10参照)。
【0057】
第3ポンプ29の運転を停止しても蒸気生成機15の螺旋管15a内には多少の水が残存しているため実際上では蒸気生成はしばらくの間、具体的には数秒程度続く。そのため、ここでは蒸気生成機15における蒸気生成量がある程度減少するまでの時間を考慮して遅延時間tdを予め設定しておき、該遅延時間tdが経過した後に第2開閉弁35が開かれる(図4のステップST11,ST12参照)。
【0058】
遅延時間tdが経過すると蒸気生成機15における蒸気生成量は減少するが、蒸気生成機15の螺旋管15a内,第1管路P1内,第1開閉弁34内及び蒸気噴出ノズル17内には未だ蒸気が存在していてその内圧は高いため、遅延時間tdが経過した直後に蒸気噴出ノズル17を加熱後の液状食品AFhから引き抜くときと、ノズル引き抜き時に蒸気噴出ノズル17から残存の蒸気が噴き出し、該噴出圧力によって加熱後の液状食品AFhが飛散してカップ26や周囲機器等を汚してしまう。
【0059】
つまり、遅延時間tdが経過した後にすぐさま蒸気噴出ノズル17を加熱後の液状食品AFhから引き抜くのではなく、遅延時間tdが経過した後に第2開閉弁35を開いて第2管路P2を第1管路P1と連通させることによって、図8に矢印で示すように、蒸気生成機15の螺旋管15a内,第1管路P1内,第1開閉弁34内及び蒸気噴出ノズル17内に残存する蒸気を第2管路P2に導いて第1管路P1の内圧を低減させる処理を行う。第2開閉弁35の開放によって第2管路P2に導かれた蒸気は該第2管路P2及び第2開閉弁35を通じてシスターン12に戻されて再利用される。前記遅延時間tdは必ずしも必要なものではないが、蒸気生成量が減少してから第2開閉弁35を開けたほうが前記内圧低減を瞬時に行うことができる。
【0060】
また、内圧低減後の蒸気噴出ノズル17の内圧は大気圧と同じか大気圧よりも僅かに大きな圧力となり、蒸気生成が完全に停止する時間まで放置しない限りは大気圧よりも低くなることはないため、ノズル引き抜き時に蒸気噴出ノズル17内に加熱後の液状食品AFhが吸い込まれることはない。
【0061】
第2開閉弁35を開いた後は、図9に矢印で示すように、蒸気噴出ノズル17がカップ26内の加熱後の液状食品AFhから引き抜かれる(図4のステップST13参照)。
【0062】
加熱後の液状食品AFhからの蒸気噴出ノズル17の引き抜きは、蒸気噴出ノズル用昇降機構18のスライダ18dが上昇して停止するように位置センサ18iの検出信号に基づいてモータ18hを動作させることによって行われる。
【0063】
蒸気噴出ノズル17の加熱後の液状食品AFhからの引き抜きが完了した後は、第1開閉弁34が閉じられると共に、第3開閉弁36が開けられて、一連の加熱調理動作が終了する(図4のステップST14,ST15参照)。
【0064】
前記ステップST10で第3ポンプ29の運転が停止された状態では第3管路P3における第3ポンプ29の下流側及び流量調整弁33内には多少の水が停滞し、該停滞水は汚損や雑菌繁殖の恐れがあるため衛生上で好ましいとは言えない。そのため、前記ステップST15では加熱後の液状食品AFhから蒸気噴出ノズル17を引き抜いた後に第3開閉弁36を開けて第4管路P4を第3管路P3と連通させることによって、図9に矢印で示すように、第3管路P3内における第3ポンプ29の下流側及び流量調整弁33内に存する水を第4管路P4に導いてシスターン12に戻す水抜き処理を行う。シスターン12に戻された水は前記残存蒸気と同様に再利用される。
【0065】
前述の液状食品加熱装置によれば、シスターン12に設けた温度センサ12cを通じてシスターン12内の貯留水の温度Twを検出し、該温度Twを蒸気噴出時間決定用の各演算式1,2の投入水温Twとして使用して蒸気噴出時間thsを決定するので、加熱前の液状食品AFの温度に拘わらず、且つ、加熱途中の液状食品AFの温度を直接温度センサによって検出することなく、投入水温Twに応じて決定された蒸気噴出時間thsに基づいて液状食品AFに蒸気を噴出することにより該液状食品AFを目標温度に加熱できる。
【0066】
また、前述の液状食品加熱装置によれば、シスターン12に温度センサ12cを設けて該温度センサ12cを通じて検出されるシスターン12内の貯留水の温度Twを蒸気噴出時間決定用の各演算式1,2の投入水温Twとして使用しているので、カップ26内に投入される水の温度を正確に検出できると共に、温度センサ12cの設置対象がシスターン12であるので該温度センサ12cの設置も容易に行える。
【0067】
さらに、前述の液状食品加熱装置によれば、決定された蒸気噴出時間thsはシスターン12内の貯留水を蒸気生成機15に送り込むための第3ポンプ29の運転時間として用いられるので、蒸気噴出時間thsに従って第3ポンプ29の運転の開始及び停止を行うことにより液状食品AFへの蒸気噴出の時間管理を的確に行える。
【0068】
さらに、前述の液状食品加熱装置によれば、蒸気噴出時間thsは投入水温Twを変数として含む蒸気噴出時間決定用の各演算式1,2によって演算されるため、投入水温Twに応じて、液状食品AFを目標温度に加熱するために必要な蒸気噴出時間thsを的確に定めることができる。
【0069】
尚、前述の実施形態では、シスターン12に温度センサ15cを設けて該温度センサ15cを通じて検出されるシスターン12内の貯留水の温度TwをステップST3で説明した各演算式1,2の投入水温Twとして使用したが、
(a1)シスターン12と水供給ノズル16とを結ぶ第9管路P9に前記温度センサ15cの代用となる温度センサを設けて、該温度センサを通じて検出される第9管路P9内の流通水の温度をステップST3で説明した各演算式1,2の投入水温Twとして使用する方式
(a2)水供給ノズル16に前記温度センサ15cの代用となる温度センサを設けて、該温度センサを通じて検出される水供給ノズル16内の流通水の温度をステップST3で説明した各演算式1,2の投入水温Twとして使用する方式
を代わりに採用してもよい。水供給ノズル16に温度センサを設ける方式のほうが投入直前の水の温度をより正確に検出できるため、より的確に蒸気噴出時間thsを決定できる。
【0070】
勿論、前記以外の方式として、
(a3)水タンク11(請求範囲で言うところの「水貯留部」に該当)に前記温度センサ15cの代用となる温度センサを設けて該温度センサを通じて検出される水タンク11内の貯留水の温度をステップST3で説明した各演算式1,2の投入水温Twとして使用する方式
(a4)水タンク11とシスターン12とを結ぶ第6管路P6,第7管路P7及び第8管路P8の何れかに前記温度センサ15cの代用となる温度センサを設けて、該温度センサを通じて検出される第6管路P6内,第7管路P7内及び第8管路P8内の何れかの流通水の温度をステップST3で説明した各演算式1,2の投入水温Twとして使用する方式
を代わりに採用してもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、蒸気噴出時間決定用の各演算式1,2によって蒸気噴出時間thsを演算により決定したが、
(b1)演算式1または演算式2の演算結果に基づいて投入水温を少なくともそのパラメータとする投入水量毎等の蒸気噴出時間決定用のデータテーブルを予め作成してコントローラ51のメモリに格納しておき、該データテーブルを用いて投入水温から蒸気噴出時間を決定する方式
(b2)前記の演算式1または演算式2の演算結果に依らず、事前実験等で得た結果に基づいて投入水温を少なくともそのパラメータとする投入水量毎等の蒸気噴出時間決定用のデータテーブルを予め作成してコントローラ51のメモリに格納しておき、該データテーブルを用いて投入水温から蒸気噴出時間を決定する方式
を採用してもよい。
【0072】
[本発明の他の実施形態]
図10は本発明の他の実施形態を示す液状食品調理のフローチャートである。図10の液状食品調理フローが図4の液状食品調理フローと異なるところは、ステップST7とステップST8との間に、補正時間taを決定するステップST16と、ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsにステップST16で決定された補正時間taを加算したものを新たな蒸気噴出時間thsとするステップST17を設けた点にある。
【0073】
ステップST16で決定される補正時間taは、蒸気生成機15で生成された蒸気が第1管路P1及び第1開閉弁34を通じて蒸気噴出ノズル17に送り込まれるときに該蒸気生成機15から送出される蒸気の総熱量の一部が第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17に奪われることを考慮したものである。
【0074】
要するに、蒸気生成機15から送出される蒸気の総熱量の一部が第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17に奪われるような状況にあるときには、ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsに基づいて第3ポンプ29を運転させても加熱後の液状食品AFhの温度が目標温度、例えば80℃よりも低くなってしまう。
【0075】
従って、このような状況にあるときには第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17に奪われ得る熱量を補うに足りる補正時間taをステップST3で決定された蒸気噴出時間thsに加算してこれを新たな蒸気噴出時間thsとすれば、同状況にあるときでも液状食品AFを目標温度、例えば80℃に確実に加熱することができる。
【0076】
ここで、ステップST16で行われる補正時間taの第1の決定方法とこれの代用となる第2の決定方法について説明する。
【0077】
[第1の決定方法]
第1の決定方法は、前回の調理完了時点から今回の調理開始時点までの経過時間に基づいてステップST16で決定された蒸気噴出時間thsに加算すべき補正時間taを決定する方法である。
【0078】
この第1の決定方法を実施する場合には、前回の調理完了時点から今回の調理開始時点までの時間をコントローラ51によって計測できるようにする。また、図1に示した液状食品加熱装置を用いて事前実験等で得た結果に基づいて経過時間を少なくともそのパラメータとする補正時間決定用のデータテーブルを予め作成してコントローラ51のメモリに格納しておく。因みに、前回の調理完了時点は具体的には蒸気噴出完了時点(第3ポンプ29の運転を停止した時点(ステップST9))を指し、今回の調理開始時点は具体的には蒸気噴出開始時点(第3ポンプ29の運転を開始する時点(ステップST8))を指す。
【0079】
補正時間taの決定は計測された経過時間をもとに前記データテーブルから補正時間taを選択することにより行う。電源投入後の最初の調理のときは前記データテーブルの中で最も長い経過時間をもとに補正時間taを選択するようにする。
【0080】
例えば、経過時間(min)が15min以上のとき及び電源投入後の最初の調理のときは補正時間taとして1.5secを設定し、また、経過時間(min)が15min未満10min以上のときは補正時間taとして1.0secを設定し、さらに、経過時間(min)が10min未満5min以上のときは補正時間taとして0.5secを設定し、さらにまた、経過時間(min)が5min未満のときは補正時間taとして0secを設定する。
【0081】
つまり、ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsが例えば10.0secのときには、経過時間(min)が15min以上のとき及び電源投入後の最初の調理のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは11.5secとなり、また、経過時間(min)が15min未満10min以上のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは11.0secとなり、さらに、経過時間(min)が10min未満5min以上のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは10.5secとなり、さらにまた、経過時間(min)が5min未満のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは10.0secとなる。
【0082】
前記例よりも経過時間を細分化して補正時間を割り当てたデータテーブルを用いれば、経過時間に基づく補正時間taの決定並びに新たな蒸気噴出時間thsの設定をより正確に行うことができる。勿論、前記データテーブルは投入水量毎に用意されていてもよく、全ての投入水量に対して兼用のものであってよい。また、第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17に奪われる熱量はこれらの周囲温度の影響で変動するため、補正時間taと周囲温度を少なくともそのパラメータとする補正時間調整用のデータテーブルを予め作成しておいて、決定した補正時間taを周囲温度に基づいて調整するようにしてもよい。さらに、前記補正時間taの決定は前記データテーブルを用いずに経過時間(min)を変数とした補正時間決定用の演算式を予め定めて該演算式を用いて決定することも可能である。
【0083】
[第2の決定方法]
第2の決定方法は、蒸気生成機15から送出された蒸気が流通する配管、即ち、第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17の温度(以下、配管温度と言う)に基づいてステップST16で決定された蒸気噴出時間thsに加算すべき補正時間taを決定する方法である。
【0084】
この第2の決定方法を実施する場合には、第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17のうちの少なくとも1つにサーミスタ等の温度センサを付設して該温度センサで検出した配管温度を温度センサ用ディテクタ59を通じてコントローラ51に取り込めるようにする。また、図1に示した液状食品加熱装置を用いて事前実験等で得た結果に基づいて配管温度を少なくともそのパラメータとする補正時間決定用のデータテーブルを予め作成してコントローラ51のメモリに格納しておく。
【0085】
補正時間taの決定は検出された配管温度をもとに前記データテーブルから補正時間taを選択することにより行う。第1管路P1,第1開閉弁34及び蒸気噴出ノズル17のうちの2以上に温度センサを設けた場合にはその平均値を配管温度として利用する。
【0086】
例えば、配管温度(℃)が50℃未満のときは補正時間として1.5secを設定し、また、配管温度(℃)が50℃以上70℃未満の補正時間taとして1.0secを設定し、さらに、配管温度(℃)が70℃以上90℃未満のときは補正時間taとして0.5secを設定し、さらにまた、配管温度(℃)が90℃以上のときは補正時間taとして0secを設定する。
【0087】
つまり、ステップST3で決定された蒸気噴出時間thsが例えば10.0secのときには、配管温度(℃)が50℃未満のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは11.5secとなり、また、配管温度(℃)が50℃以上70℃未満のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは11.0secとなり、さらに、配管温度(℃)が70℃以上90℃未満のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは10.5secとなり、さらにまた、配管温度(℃)が90℃以上のときにステップST17で求められる新たな蒸気噴出時間thsは10.0secとなる。
【0088】
前記例よりも配管温度を細分化して補正時間を割り当てたデータテーブルを用いれば、配管温度に基づく補正時間taの決定並びに新たな蒸気噴出時間thsの設定をより正確に行うことができる。勿論、前記データテーブルは投入水量毎に用意されていてもよく、全ての投入水量に対して兼用のものであってよい。また、前記補正時間taの決定は前記データテーブルを用いずに配管温度(℃)を変数とした補正時間決定用の演算式を予め定めて該演算式を用いて決定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態を示す液状食品加熱装置の構成図である。
【図2】図1に示した液状食品加熱装置の電気回路図である。
【図3】図1に示した液状食品加熱装置で実行される蒸気生成機加熱のフローチャートである。
【図4】図1に示した液状食品加熱装置で実行される液状食品調理のフローチャートである。
【図5】図4中の蒸気噴出時間の決定ステップで行われる決定方法の説明図である。
【図6】図1に示した液状食品加熱装置の動作説明図である。
【図7】図1に示した液状食品加熱装置の動作説明図である。
【図8】図1に示した液状食品加熱装置の動作説明図である。
【図9】図1に示した液状食品加熱装置の動作説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す液状食品調理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
11…水タンク、12…シスターン、12c…温度センサ、15…蒸気生成機、16…水供給ノズル、17…蒸気噴出ノズル、19〜24…材料貯蔵庫、28…第2ポンプ、29…第3ポンプ、P1…第1管路、P3…第3管路、P6…第6管路、P7…第7管路、P8…第8管路、P9…第9管路、51…コントローラ、59…温度センサ用ディテクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ内に投入された固形物と水とから成る液状食品内に蒸気噴出ノズルから蒸気を噴出して該噴出蒸気によって液状食品を目標温度に加熱する液状食品加熱装置であって、
カップ内に投入される水の温度を検出する投入水温検出手段と、検出された投入水温に基づいて蒸気噴出時間を決定する蒸気噴出時間決定手段とを備える、
ことを特徴とする液状食品加熱装置。
【請求項2】
カップ内に投入する水を貯える水貯留部と、カップ内に水を投入する水供給ノズルと、水貯留部と水供給ノズルとを結ぶ管路と、管路途中に介装されたポンプとを備え、
前記投入水温検出手段は水貯留部と水供給ノズルと管路の何れかに設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液状食品加熱装置。
【請求項3】
水を加熱して蒸気を生成する蒸気生成機と、蒸気生成機の入口と水貯留部とを結ぶポンプ介装の管路と、蒸気生成機の出口と蒸気噴出ノズルとを結ぶ管路とを備え、
前記蒸気噴出時間は水貯留部内の水を蒸気生成機の入口に送り込むポンプの運転時間として用いられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の液状食品加熱装置。
【請求項4】
前記蒸気噴出時間決定手段は、投入水温を変数として含む演算式に基づいて蒸気噴出時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液状食品加熱装置。
【請求項5】
前記演算式は、蒸気噴出時間(sec)=〔{投入水量(g)×(目標温度(℃)−投入水温(℃))}/(水の気化熱(cal/g)×水の流量(g/sec))〕/加熱効率である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液状食品加熱装置。
【請求項6】
前記演算式は、蒸気噴出時間(sec)=基準時間(sec)+{(基準水温(℃)−投入水温(℃))×時間係数(sec)}であり、基準時間は投入水量毎に定められている、
ことを特徴とする請求項4に記載の液状食品加熱装置。
【請求項7】
前記蒸気噴出時間決定手段は、投入水温を少なくともそのパラメータとして予め作成された蒸気噴出時間決定用のデータテーブルを用いて投入水温から蒸気噴出時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液状食品加熱装置。
【請求項8】
前記データテーブルに含まれる蒸気噴出時間の値は、請求項5または6に記載の演算式に依る演算結果に基づくものである、
ことを特徴とする請求項7に記載の液状食品加熱装置。
【請求項9】
前回の調理完了時点から今回の調理開始時点までの経過時間に基づいて前記蒸気噴出時間に加算すべき補正時間を決定する補正時間決定手段と、
補正時間決定手段で決定された補正時間を前記蒸気噴出時間に加算したものを新たな蒸気噴出時間とする蒸気噴出時間調整手段とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の液状食品加熱装置。
【請求項10】
前記補正時間決定手段は、経過時間を少なくともそのパラメータとして予め作成された補正時間決定用のデータテーブルを用いて経過時間から補正時間を決定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液状食品加熱装置。
【請求項11】
蒸気噴出ノズルを含む蒸気流通配管の温度に基づいて前記蒸気噴出時間に加算すべき補正時間を決定する補正時間決定手段と、
補正時間決定手段で決定された補正時間を前記蒸気噴出時間に加算したものを新たな蒸気噴出時間とする蒸気噴出時間調整手段とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の液状食品加熱装置。
【請求項12】
前記補正時間決定手段は、蒸気流通配管の温度を少なくともそのパラメータとして予め作成された補正時間決定用のデータテーブルを用いて蒸気流通配管の温度から補正時間を決定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の液状食品加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−17829(P2008−17829A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301318(P2006−301318)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】