説明

混成回路の基板実装構造

【課題】配置面積の増大抑制とショートの発生防止との両立を図る上で有用な高圧回路と低圧回路との混成回路の実装構造を提供する。
【解決手段】高圧回路の一部であるメインICチップ52とバックアップ回路53の各構成要素をサブ基板51に実装し防湿剤58でコーティングしてハイブリッドIC5化することで、メインICチップ52やバックアップ回路53の各端子間のピッチを小さくし、防湿剤58の使用量を減らす。また、メインICチップ52やバックアップ回路53の実装スペースが不要となり、高圧回路の残りである高圧総電圧処理回路33や高圧側制御回路34が実装されるメイン基板3の高圧回路実装エリア3aに、ハイブリッドIC接続用端子36,37を、メインICチップ52やバックアップ回路53の各端子間の絶縁距離よりも広い絶縁距離で設ける。そして、ハイブリッドIC5をメイン基板3の高圧回路実装エリア3aの上方に重ねて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いの電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路との混成回路の基板に対する実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いの電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路との混成回路を基板に実装する場合においては、従来から、基板の配置面積の増大を抑制する目的で、高圧回路と低圧回路とを別々の基板に実装し階層状に重ねて配置することが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−257865号公報
【特許文献2】特開2006−9687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように高圧回路と低圧回路との混成回路が使用される分野の一例として、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV、エンジンとモータ−ジェネレータとの併用車)が挙げられる。これらの車両では、従来のエンジンを動力源とする車両と同じ電圧(例えば実効電圧12V)で作動する低圧回路が、制御系や車内電装品に関連して設けられる。また、低圧回路よりも高い(例えば実効電圧200V)で作動する高圧回路が、動力源であるモータ(又はモータジェネレータ)やその周辺機器に関連して設けられる。
【0005】
上述した電気自動車やハイブリッド車の混成回路においては、回路及び基板の設計上、ショートによる異常放電を防止するための対策が特に重要となる。それは、車両に搭載されるバッテリが鉛蓄電池から電圧の高いリチウムイオン電池に移行することに起因する。つまり、リチウムイオン電池では、異常放電により生じる電池機能のダメージが鉛蓄電池に比べて大きく、また、異常放電時の自身や配線の発熱も鉛蓄電池の場合に比べて高いからである。
【0006】
また、車両以外の分野でも、高圧回路と低圧回路との混成回路を基板に実装する場合には、低圧回路を単独で基板に実装する場合に比べて、回路及び基板の設計において、より一層ショートを防止できるように留意することが必要となる。それは、ショート時に大きな損傷を受けるリチウムイオン電池を電源としているか否かに関係なく重要なことである。特に、結露を生じやすい環境で使用される商品分野では、結露した水滴によるショートの発生防止に十分な注意を払わなければならない。
【0007】
その点、先に挙げた先行技術文献(特許文献1,2)は、基板の配置面積を抑制する設計上の方策が提示されているだけで、上述したようなショート対策については何ら解決策が示されていない。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、配置面積の増大抑制とショートの発生防止との両立を図る上で有用な高圧回路と低圧回路との混成回路の基板に対する実装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、互いの電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路と含む混成回路を基板に実装するための構造であって、前記低圧回路の構成要素が少なくとも実装されたメイン基板と、前記高圧回路の構成要素の少なくとも一部が実装されたサブ基板を防湿剤によりコーティングして構成され、前記メイン基板に重ねて配置されたハイブリッドICとを備えており、前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子の端子間絶縁距離と、前記ハイブリッドICにおける前記メイン基板の接続用端子の端子間絶縁距離とが、前記サブ基板に実装された前記各構成要素の最小の端子間絶縁距離よりも少なくとも大きい寸法とされていることを特徴とする。
【0010】
混成回路の構成要素の各端子間絶縁距離、特に、電源電圧が高い高圧回路の構成要素の各端子間絶縁距離は、原則的に、結露水の付着や導体接触による隣接端子間のショートが発生しない程度に、広い寸法とする必要がある。そのため、混成回路を実装する基板にはそれ相応の実装面積が必要となる。よって、基板を配置する場所の面積も、それに応じた大きさが必要となる。
【0011】
ところで、請求項1に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、高圧回路の少なくとも一部の構成要素がサブ基板に実装されて、低圧回路が少なくとも実装されるメイン基板に重ねて配置される。そのため、混成回路の基板を配置するのに要する面積は、メイン基板に混成回路の全構成要素を実装する場合に比べて大きくなることはない。
【0012】
そして、請求項1に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、サブ基板に実装される構成要素がメイン基板に実装されない分だけ、メイン基板に混成回路の全構成要素を実装する場合よりは、メイン基板の面積を広げずにメイン基板の各端子間絶縁距離を広げられるようになる。
【0013】
したがって、ハイブリッドICのメイン基板に対する接続用端子や、メイン基板に存在するハイブリッドICに対する接続用端子のように、外部に露出する接続用端子については、端子間絶縁距離を十分に確保して、結露水の付着や導体接触による隣接端子間のショートを端子間絶縁距離の広さによって防止することができる。
【0014】
また、サブ基板上の各構成要素はサブ基板と共に防湿剤によってコーティングされてハイブリッドIC化されることから、サブ基板に実装される各構成要素によって構成される高圧回路の少なくとも一部については、端子間絶縁距離を短くしても、隣接端子間の結露水付着や導体接触によるショートの発生を心配する必要がない。
【0015】
以上により、基板の配置面積の増大を抑制しつつ、混成回路におけるショートの発生防止を的確に図ることができる。
【0016】
しかも、混成回路の結露によるショートの防止対策に使用する防湿剤を大幅に減らすことができるので、近年盛んなVOC(揮発性有機化合物)の低減対策にも寄与することができる。
【0017】
また、請求項2に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、請求項1に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、前記メイン基板に、前記混成回路とその外部要素との接続用端子が全て設けられており、前記メイン基板における前記外部要素の接続用端子の端子間絶縁距離が、前記最小の端子間絶縁距離よりも少なくとも大きい寸法とされていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、請求項1に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、混成回路とその外部要素との接続用端子がメイン基板に全て設けられている場合に、外部に露出するメイン基板の外部要素に対する接続用端子についても端子間絶縁距離を十分に確保されることになる。
【0019】
そのため、メイン基板の外部要素に対する接続用端子についても、メイン基板のハイブリッドICに対する接続用端子と同様に、メイン基板の面積を広げることなく、結露水の付着や導体接触による隣接端子間のショートを端子間絶縁距離の広さによって防止できる構成とすることができる。
【0020】
また、請求項3に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、請求項1又は2に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、前記ハイブリッドICが、前記高圧回路中のメイン回路の機能をバックアップするバックアップ回路を含んでいることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、請求項1又は2に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、防湿剤によりコーティングされてハイブリッドIC化されるバックアップ回路の端子部分には、結露水の付着や導体の接触が物理的に不可能な状態となる。
【0022】
このため、バックアップ回路においてショートが発生してバックアップ回路が故障してしまうのを、メイン基板にバックアップ回路を実装するよりも高い確度で防止することができる。これにより、メイン回路の機能をバックアップ回路によってバックアップしなければならない状況が発生した際に、バックアップ回路が確実に機能するようにしておくことができる。
【0023】
さらに、請求項4に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、請求項3に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、前記ハイブリッドICが前記メイン回路を含んでいることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、請求項3に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、バックアップ回路と共に防湿剤によりコーティングされてハイブリッドIC化されるメイン回路の端子部分にも、バックアップ回路と同じく結露水の付着や導体の接触が物理的に不可能な状態となる。
【0025】
このため、バックアップ回路ど同様にメイン回路においても、ショートが発生して回路が故障してしまうのを、メイン基板にメイン回路を実装するよりも高い確度で防止することができる。これにより、メイン回路が確実に機能するようにしておくことができる。
【0026】
また、請求項5に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、請求項1、2、3又は4に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、前記ハイブリッドICが、前記メイン基板のうち前記低圧回路の実装部分を除く部分に少なくとも重ねて配置されていることを特徴とする。
【0027】
請求項5に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、請求項1、2、3又は4に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、メイン基板に高圧回路の一部が実装されていれば、その一部の高圧回路が実装されたメイン基板部分にハイブリッドICが重ねて配置されることになる。したがって、混成回路の高圧回路が実装された基板部分に外部から物理的ストレスがかかったとしても、その物理的ストレスが直接かかるのは、メイン基板の高圧回路実装部分とハイブリッドICとのどちらか一方だけである。
【0028】
このため、外部からの物理的ストレスが高圧回路の実装部分にかかった場合に、メイン基板のメイン回路とハイブリッドICのバックアップ回路とのどちらかを、直接の物理的ストレスから保護し、その後も機能し続けるようにすることができる。例えば、メイン回路をメイン基板に実装し、バックアップ回路をハイブリッドICに含める構成とすれば、混成回路が外部からの物理的ストレスによりダメージを受けても、メイン回路とバックアップ回路とのどちらかが引き続き機能する確率の高い構造とすることができる。
【0029】
また、メイン基板のうちハイブリッドICが重ねて配置される部分に実装されている、低圧回路以外の混成回路の各構成要素にとっては、メイン基板に加えてハイブリッドICによって、外来ノイズから遮蔽されることになる。一方、ハイブリッドICのサブ基板に実装された各構成要素にとっては、メイン基板が外来ノイズの遮蔽体として機能することになる。
【0030】
したがって、混成回路のうち外来ノイズによる悪影響を特に受け易い高圧回路の、メイン基板に実装された構成要素について、従前では遮蔽できなかった実装先の基板以外の方向からの外来ノイズをさらに遮蔽することができる。また、サブ基板に実装されてハイブリッドIC化された構成要素についても、メイン基板側からの外来ノイズの遮蔽度を高めることができる。これにより、基板の配置面積の増大抑制と混成回路におけるショートの発生防止と同時に、高圧回路の耐ノイズ性の向上を図ることができる。
【0031】
しかも、メイン基板のうちハイブリッドICが重ねて配置される部分に実装されている、低圧回路以外の混成回路の各構成要素が、ハイブリッドICに実装された構成要素を除く高圧回路の他の一部を含んでいる場合は、メイン基板上で外部に露出している高圧回路の導電部分(接続用端子、配線パターン等)が、ハイブリッドICによって覆われることになる。そのため、高圧回路の露出した導電部分に作業員が接触して高圧感電してしまうのを抑制し、感電に対する安全性を高めることができる。
【0032】
請求項6に記載した本発明の混成回路の基板実装構造は、請求項1、2、3、4又は5に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、前記メイン基板に実装された前記構成要素は発熱部品を含んでおり、前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子は放熱機能を有しており、前記発熱部品は前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子の近傍箇所に配置されていることを特徴とする。
【0033】
請求項6に記載した本発明の混成回路の基板実装構造によれば、請求項1、2、3、4又は5に記載した本発明の混成回路の基板実装構造において、メイン基板上の発熱部品において発生した熱が、発熱部品の近傍に存在するハイブリッドICの接続用端子に伝わる。そして、放熱機能を有するハイブリッドICの接続用端子からその周辺の雰囲気に、発熱部品から伝わった熱が放出されることになる。
【0034】
したがって、ハイブリッドICの接続用端子を、発熱部品で発生した熱の放熱体として活用し、混成回路の熱による作動不良等の予防を図ることができる。なお、発熱部品とハイブリッドICの接続用端子とが、メイン基板上で導電パターン等により電気的に接続されている構成とすれば、その導電パターン等を熱伝導媒体として、発熱部品からハイブリッドICの接続用端子に熱を効率良く伝導し、ハイブリッドICの接続用端子から効率良く放出させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の混成回路の基板実装構造によれば、基板の配置面積の増大を抑制しつつ、混成回路におけるショートの発生防止を的確に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による混成回路の基板実装構造を採用した本発明の一実施形態に係る混成回路の一部分解平面図である。
【図2】図1に示す混成回路の側面図である。
【図3】図1に示すハイブリッドICの側面図である。
【図4】(a),(b)は本発明の一実施形態の変形例に係る混成回路における要部を一部断面で示す説明図である。
【図5】本発明による混成回路の基板実装構造を採用した本発明の他の実施形態に係る混成回路の一部分解平面図である。
【図6】本発明による混成回路の基板実装構造を採用した本発明のさらに他の実施形態に係る混成回路の一部分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による混成回路の基板実装構造の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1は本発明による混成回路の基板実装構造を採用した本発明の一実施形態に係る混成回路の一部分解平面図、図2は図1に示す混成回路の側面図、図3は図1に示すハイブリッドICの側面図である。
【0039】
図1中引用符号1で示す本実施形態の混成回路は、複数のセルからなるリチウムイオン電池B(外部要素に相当)の負荷(図示せず)に対する放電を制御する放電制御装置に設けられるもので、メイン基板3とハイブリッドIC5とを有している。
【0040】
前記メイン基板3には、電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路とをそれぞれ実装するための高圧回路実装エリア3aと低圧回路実装エリア3bとが設けられている。また、両エリア3a,3bの境界部分には、非接触信号伝送カプラ(以下、「非接触カプラ」と略記する。)31が実装されている。この非接触カプラ31は、高圧回路実装エリア3aに実装された素子と低圧回路実装エリア3bに実装された素子との間で、信号を非接触で伝送するものである。この非接触カプラ31は、例えば、光結合方式や電磁結合方式等の公知のものを利用することができる。
【0041】
前記高圧回路実装エリア3aには、リチウムイオン電池Bの各セルに接続するための入力コネクタ32と、入力コネクタ32に接続された高圧総電圧処理回路33と、ハイブリッドIC5が接続されるインターフェース及び高圧側制御回路(以下、高圧側制御回路と略記する。)34とが実装されている。高圧総電圧処理回路33と高圧側制御回路34は、非接触カプラ31の高圧回路側に接続されている。高圧総電圧処理回路33は、入力コネクタ32を通じてリチウムイオン電池Bから取り込まれる全セルの総電圧に応じたレベルの信号を、非接触カプラ31に出力する回路である。高圧側制御回路34は、ハイブリッドIC5の出力を取り込んで非接触カプラ31に出力する回路である。
【0042】
前記ハイブリッドIC5は、メイン基板3の高圧回路実装エリア3a上に重ねて配置される。このハイブリッドIC5は、サブ基板51と、サブ基板51に実装されるメインICチップ52、バックアップ回路53、及び、それらのインターフェース回路54,55と、サブ基板51上の導電パターン(図示せず)によって各インターフェース回路54,55にそれぞれ接続された入力側と出力側の各接続用ピン56,57とを有している。
【0043】
メインICチップ52とバックアップ回路53はいずれも、充放電に伴い電位が変化するリチウムイオン電池Bの各セルの電圧監視を行うためのものである。バックアップ回路53はディスクリート部品で構成されており、メインICチップ52に故障が生じた場合にメインICチップ52に代わって機能する。
【0044】
上述したハイブリッドIC5において、図3に示すメインICチップ52の各リード52aは、例えばリフロー処理によって、サブ基板51上のランド51aに半田付けされる。メインICチップ52を除くハイブリッドIC5他の構成要素は、例えばフロー処理によって、サブ基板51の対応する導電パターン上の端子に半田付けされる。図3には、サブ基板51上の端子のうち、バックアップ回路53の各構成要素が半田付けされる端子51bのみを、代表して図示している。その上で、入力側と出力側の各接続用ピン56,57の先端を除く部分が全て防湿剤58によりコーティングされることで、ハイブリッドIC5が形成されている。防湿剤58は公知の材料を用いることができる。
【0045】
そして、防湿剤58によってコーティングされるメインICチップ52の隣り合うリード52a間のピッチや、対応するサブ基板51の隣り合うランド51a間のピッチ、バックアップ回路53の各構成要素に対応するサブ基板51上の端子51b間のピッチ、及び、各インターフェース回路54,55に対応するサブ基板51上の不図示の端子間のピッチは、いずれも同等の小さい寸法とされている。
【0046】
これに対して、防湿剤58の外側に露出する入力側と出力側の各接続用ピン56,57の隣り合う端子間のピッチは、防湿剤58でコーティングされるメインICチップ52の隣り合うリード52a間のピッチや、対応するサブ基板51の隣り合うランド51a間のピッチ、バックアップ回路53の各構成要素に対応するサブ基板51上の端子51b間のピッチ、及び、各インターフェース回路54,55に対応するサブ基板51上の不図示の端子間のピッチよりも、大きい寸法とされている。
【0047】
なお、各接続用ピン56,57の端子間ピッチは、結露による水滴が発生して付着しても、あるいは、周辺の導体に接触しても、その水滴の付着や導体の接触により隣り合う各接続用ピン56,57間がショートしない程度とすることが望ましい。
【0048】
上述した入力側と出力側の各接続用ピン56,57は、例えばフロー処理によって、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aに設けられた図1のハイブリッドIC接続用端子36,37に半田付けされる。入力側の各接続用ピン56が半田付けされる各ハイブリッドIC接続用端子36は、入力コネクタ32を介してリチウムイオン電池Bの各セルに接続される。出力側の各接続用ピン57が半田付けされる各ハイブリッドIC接続用端子37は、高圧側制御回路34のインターフェースに接続される。
【0049】
なお、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aに設けられるハイブリッドIC接続用端子36,37の隣り合う端子間のピッチは、ハイブリッドIC5の各接続用ピン56,57の端子間ピッチに対応している。したがって、ハイブリッドIC接続用端子36,37の隣り合う端子間のピッチは、メインICチップ52の隣り合うリード52a間のピッチや、サブ基板51の隣り合うランド51a及び端子51b間の各ピッチよりも、大きい寸法とされている。
【0050】
前記低圧回路実装エリア3bには、例えば、車両(図示せず)に搭載されたECU(Electronic Control Unit、外部要素に相当)7からのハーネス71を接続するための出力コネクタ38と、この出力コネクタ38に接続された低圧側制御回路39とが実装されている。低圧側制御回路39は、高圧総電圧処理回路33と高圧側制御回路34との各出力を非接触カプラ31を介して取り込み、必要な処理を加えた後、リチウムイオン電池Bの電圧監視の結果を示す信号を、出力コネクタ38及びハーネス71を介してECU7に低電圧で出力する。
【0051】
このように構成された本実施形態の混成回路1では、ハイブリッドIC5のメインICチップ52とバックアップ回路53とにおいて、リチウムイオン電池Bの各セルの電圧監視が行われ、この電圧監視により得られた各セルの電位を示す信号がメイン基板3の高圧側制御回路34に入力される。そして、メインICチップ52から入力された信号のレベルに基づいてメインICチップ52における故障の有無が高圧側制御回路34において判断される。メインICチップ52に故障がないと判断された場合は、メインICチップ52からの入力信号が選択的に高圧側制御回路34から非接触カプラ31に出力される。一方、メインICチップ52に故障があると判断された場合は、バックアップ回路53からの入力信号が選択的に高圧側制御回路34から非接触カプラ31に出力される。
【0052】
また、本実施形態の混成回路1では、高圧総電圧処理回路33において、リチウムイオン電池Bの全セルの総電圧に応じたレベルの信号が生成され、この信号が非接触カプラ31に出力される。
【0053】
非接触カプラ31では、高圧総電圧処理回路33や高圧側制御回路34からの出力信号の電圧レベルが、光結合方式や電磁結合方式等の非接触伝達方式によって高電圧から低電圧に変換されて、低圧側制御回路39に出力される。低圧側制御回路39では、非接触カプラ31において低電圧化された高圧総電圧処理回路33からの出力信号によって示される、リチウムイオン電池Bの全セルの総電圧と所定の閾値との比較が行われる。また、低圧側制御回路39では、非接触カプラ31において低電圧化された高圧側制御回路34からの出力信号によって示される、リチウムイオン電池Bの各セルの電圧と所定の閾値との比較が行われる。そして、それぞれの比較結果を示す信号が、低圧側制御回路39から出力コネクタ38及びハーネス71を介してECU7に出力される。
【0054】
以上のような動作を行う本実施形態の混成回路1では、高圧回路の一部であるメインICチップ52とバックアップ回路53とがサブ基板51に実装され、防湿剤58によりコーティングされてハイブリッドIC5とされている。このため、防湿剤58によりコーティングされたメインICチップ52のリード52aや対応するサブ基板51のランド51a、及び、バックアップ回路53の各構成要素が半田付けされるサブ基板51の端子51bが、結露により生じた水滴の付着から保護される。したがって、隣り合うランド51aや端子51b、リード52aどうしのピッチを、結露による水滴の付着でショートするほど短くしても支障がない。
【0055】
そのため、サブ基板51の面積を小さくしてコーティングのための防湿剤58の使用量を減らすことができ、仮に防湿剤58中に揮発性有機化合物が含まれていてもその周辺空気への揮発量を抑制して、VOCの拡散に関する環境対策を向上させることができる。
【0056】
しかも、サブ基板51上のメインICチップ52とバックアップ回路53の各構成要素とが防湿剤58によりコーティングされてハイブリッドIC5とされるので、それらの部分においてショートが発生して回路が故障してしまうのを、それらをメイン基板3に実装する場合に比べて、高い確度で防止することができる。これにより、メインICチップ52やバックアップ回路53が確実に機能するようにしておくことができる。よって、メインICチップ52やバックアップ回路53によるリチウムイオン電池Bの各セルの電圧監視を、高い信頼性で継続的に実施することができる。
【0057】
一方、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aにおいては、サブ基板51に実装されるメインICチップ52とバックアップ回路53の分だけ、実装する高圧回路の構成要素が少なくなる。そのため、高圧回路実装エリア3aの面積を広げなくても、ハイブリッドIC接続用端子36,37の隣り合う端子間のピッチを、メインICチップ52の隣り合うリード52a間のピッチや、サブ基板51の隣り合うランド51a及び端子51b間の各ピッチよりも、大きい寸法とすることができる。これにより、結露による水滴が発生して付着しても、あるいは、周辺の導体に接触しても、その水滴の付着や導体の接触によって隣り合う各接続用端子36,37間がショートしないようにすることができる。
【0058】
また、本実施形態の混成回路1によれば、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とが重ねて配置された部分に、外部から物理的ストレスがかかったとしても、その物理的ストレスが直接かかるのは、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とのどちらか一方だけである。
【0059】
このため、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とが重ねて配置された部分に、外部からの物理的ストレスがかかった場合に、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aに実装された高圧総電圧処理回路33及び高圧側制御回路34と、ハイブリッドIC5のメインICチップ52及びバックアップ回路53(並びにそれらのインタフェース回路54,55)とのどちらかを、直接の物理的ストレスから保護し、その後も機能し続けるようにすることができる。
【0060】
さらに、本実施形態の混成回路1によれば、高圧回路実装エリア3aの上方に配置されるハイブリッドIC5のサブ基板51が、高圧回路実装エリア3aに実装された高圧総電圧処理回路33や高圧側制御回路34に対するメイン基板3の上方からの外来ノイズの遮蔽板として機能することになる。
【0061】
したがって、混成回路1のうち外来ノイズによる悪影響を特に受け易い高圧回路の、メイン基板3に実装された高圧総電圧処理回路33や高圧側制御回路34について、従前では遮蔽できなかった実装先の基板以外の方向からの外来ノイズをさらに遮蔽することができる。また、サブ基板51に実装されてハイブリッドIC5化されたメインICチップ52とバックアップ回路53、及び、それらのインターフェース回路54,55についても、メイン基板3側からの外来ノイズの遮蔽度を高めることができる。これにより、基板の配置面積の増大抑制と混成回路1におけるショートの発生防止と同時に、高圧回路の耐ノイズ性の向上を図ることができる。
【0062】
ちなみに、図4(a)は、上述した実施形態の変形例に係る混成回路における要部を一部断面で示す説明図である。この図4(a)に示す変形例の混成回路1では、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aに抵抗等の発熱部品40が実装されている。そして、この発熱部品40が、ハイブリッドIC5の入力側の各接続用ピン56の半田付け対象であるハイブリッドIC接続用端子36と、導電パターン36aによって電気的に接続されている。この導電パターン36aは、メイン基板3よりも熱伝導率の高い材料で構成されている。
【0063】
この変形例においては、発熱部品40において発生した熱が、導電パターン36aを介してハイブリッドIC接続用端子36に伝わる。そして、このハイブリッドIC接続用端子36が一種の放熱体として機能して、発熱部品40から伝わった熱をハイブリッドIC接続用端子36から周辺の雰囲気に放出する。即ち、ハイブリッドIC接続用端子36は放熱機能を有しているわけである。
【0064】
この変形例のような構成とすれば、ハイブリッドIC接続用端子36(ハイブリッドIC接続用端子37でもよい)を活用して、発熱部品40が発する熱による混成回路1の作動不良等の予防を図ることができる。
【0065】
なお、図4(a)に示した変形例では、発熱部品40とハイブリッドIC接続用端子36とが導電パターン36aによって電気的に接続されている構成とした。しかし、図4(b)に示す他の変形例のように、発熱部品40とハイブリッドIC接続用端子36とが電気的に接続されていない構成であっても良い。この場合でも、メイン基板3が熱伝導媒体となって、発熱部品40において発生した熱をハイブリッドIC接続用端子36に伝え、ハイブリッドIC接続用端子36から周辺の雰囲気に放出する。このような図4(b)の変形例でも、図4(a)の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、メイン基板3上に高圧総電圧処理回路33を実装する場合について説明したが、メインICチップ52やバックアップ回路53によるリチウムイオン電池Bの各セルの電圧監視が高い信頼度で継続実施できるのであれば、図5に示すように、高圧総電圧処理回路33を省略する構成としてもよい。これは、メインICチップ52やバックアップ回路53が正常に機能している限り、それらのどちらかによって監視される各セルの電圧から、リチウムイオン電池Bの全セルの総電圧を計算で割り出すことができるからである。
【0067】
また、上述した実施形態では、メインICチップ52とそのインターフェース回路54を、バックアップ回路53とそのインターフェース回路55と共にサブ基板51に実装して、ハイブリッドIC5の一部とする場合の構成について説明した。しかし、バックアップ回路53とそのインターフェース回路55のみをサブ基板51に実装してハイブリッドIC5とする構成としてもよい。その場合には、インターフェース回路54と共にメイン基板3の高圧回路実装エリア3aに実装されることになるメインICチップ52を、端子間ピッチの広げやすい、バックアップ回路53と同様のディスクリート回路によって構成することが望ましい。
【0068】
そのように構成したのが、図6に示す混成回路1である。この混成回路1では、上述した実施形態においてメインICチップ52で構成していた回路を、ディスクリート回路によるメイン回路52Aに変更している。そうすることで、メイン回路52Aの構成要素やインターフェース回路54に対応するメイン基板3の高圧回路実装エリア3a上の端子(図示せず)間のピッチを、ハイブリッドIC接続用端子36,37の隣り合う端子間のピッチと同様に、サブ基板51の隣り合う端子51b間のピッチよりも大きい寸法とすることができる。
【0069】
このように構成した図6の混成回路1の実施形態によればハイブリッドIC5として防湿剤58により端子間ショートから守ることのできる対象が、バックアップ回路53の各構成要素(とそのインターフェース回路54)に限定されることを除けば、基本的には、図1乃至図3を参照して説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、このように構成する場合は、図6にも示しているように、ハイブリッドIC5を、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aの全体を覆う大きさとする必要は、必ずしもない。その場合でも、高圧回路実装エリア3aのうちハイブリッドIC5が重ねて配置される部分の外来ノイズの遮蔽性を、ハイブリッドIC5の存在によって高めることができる。
【0071】
しかも、混成回路1を図6のように構成した場合にも、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とが重ねて配置された部分に、外部から物理的ストレスがかかった場合には、その物理的ストレスが、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とのどちらか一方にしか、直接かからない。
【0072】
このため、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aとハイブリッドIC5とが重ねて配置された部分に、外部からの物理的ストレスがかかった場合に、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aに実装されたメイン回路52Aと、ハイブリッドIC5のバックアップ回路53とのどちらかが、直接の物理的ストレスから保護される。したがって、物理的ストレスがかかった後も、充放電に伴い電位が変化するリチウムイオン電池Bの各セルの電圧監視機能を、メイン回路52Aかバックアップ回路53のどちらかで維持し続けるようにすることができる。
【0073】
また、図6に示した実施形態の混成回路1においても、図5に示した実施形態の混成回路1と同じく、高圧総電圧処理回路33を省略する構成とすることもできる。
【0074】
ちなみに、ハイブリッドIC5を重ねて配置するのは、メイン基板3の高圧回路実装エリア3aの上方に限定されない。例えば、高圧回路実装エリア3aと低圧回路実装エリア3bとに跨ってハイブリッドIC5を重ねて配置しても良く、低圧回路実装エリア3bの上方にハイブリッドIC5を重ねて配置しても良い。
【0075】
また、上述した実施形態では、リチウムイオン電池Bの各セルの電圧を監視する混成回路1を例に取って説明したが、本発明は、電源電圧が高い高圧回路と電源電圧が低い低圧回路とが混在する混成回路を基板に実装する場合の構造として、広い分野に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
互いの電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路との混成回路を基板に実装する際に用いて好適である。
【符号の説明】
【0077】
1 混成回路
3 メイン基板
3a 高圧回路実装エリア
3b 低圧回路実装エリア
5 ハイブリッドIC(高圧回路)
7 ECU(外部要素)
31 非接触カプラ
32 入力コネクタ(混成回路とその外部要素との接続用端子)
33 高圧総電圧処理回路(高圧回路)
34 高圧側制御回路(高圧回路)
36,37 ハイブリッドIC接続用端子(メイン基板におけるハイブリッドICの接続用端子)
38 出力コネクタ(混成回路とその外部要素との接続用端子)
39 低圧側制御回路(低圧回路)
51 サブ基板
51a ランド
51b 端子
52 メインICチップ(高圧回路)
52A メイン回路(高圧回路)
52a リード
53 バックアップ回路(高圧回路)
54,55 インターフェース回路
56,57 接続用ピン(ハイブリッドICにおけるメイン基板の接続用端子)
58 防湿剤
71 ハーネス
B リチウムイオン電池(外部要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの電源電圧が異なる高圧回路と低圧回路と含む混成回路を基板に実装するための構造であって、
前記低圧回路の構成要素が少なくとも実装されたメイン基板と、
前記高圧回路の構成要素の少なくとも一部が実装されたサブ基板を防湿剤によりコーティングして構成され、前記メイン基板に重ねて配置されたハイブリッドICとを備えており、
前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子の端子間絶縁距離と、前記ハイブリッドICにおける前記メイン基板の接続用端子の端子間絶縁距離とが、前記サブ基板に実装された前記各構成要素の最小の端子間絶縁距離よりも少なくとも大きい寸法とされている、
ことを特徴とする混成回路の基板実装構造。
【請求項2】
前記メイン基板には、前記混成回路とその外部要素との接続用端子が全て設けられており、前記メイン基板における前記外部要素の接続用端子の端子間絶縁距離が、前記最小の端子間絶縁距離よりも少なくとも大きい寸法とされていることを特徴とする請求項1記載の混成回路の基板実装構造。
【請求項3】
前記ハイブリッドICは、前記高圧回路中のメイン回路の機能をバックアップするバックアップ回路を含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の混成回路の基板実装構造。
【請求項4】
前記ハイブリッドICは前記メイン回路を含んでいることを特徴とする請求項3記載の混成回路の基板実装構造。
【請求項5】
前記ハイブリッドICは、前記メイン基板のうち前記低圧回路の実装部分を除く部分に少なくとも重ねて配置されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の混成回路の基板実装構造。
【請求項6】
前記メイン基板に実装された前記構成要素は発熱部品を含んでおり、前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子は放熱機能を有しており、前記発熱部品は前記メイン基板における前記ハイブリッドICの接続用端子の近傍箇所に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の混成回路の基板実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−183039(P2010−183039A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27813(P2009−27813)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】