説明

減圧低温乾燥装置

【課題】 農産物、これらの残渣または海産物を、変色、変形および変質させず、内部まで十分、かつ短時間で効率的に水分調整または乾燥できる。
【解決手段】 乾燥庫1内に収納した水平棚4上にりんごの皮9を載せ、ボイラー6からの温湯で温めたヒートパイプ5で約60℃に均一加温する。乾燥庫1内の空気は、真空ポンプで約150mmHgに減圧し、さらに凝縮器32等を循環させて連続的に除湿して乾燥を促進する。除湿した加熱空気は乾燥庫1に還流されるので、熱の損失が少なく大幅に省エネルギー化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物、これらの残渣および海産物を、色調、形状、栄養、ミネラルおよび香り等を保全しつつ、短時間で効率的に水分調整または乾燥できる減圧低温乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、果実類や野菜類等の農産物、または魚介類や海草類等の海産物の水分調整や乾燥においては、乾燥時間を短くし、かつ内部まで十分乾燥させる等の目的で、比較的高温に加熱して、脱水や乾燥を行なう場合が多い。しかるに高温で加熱すると、被乾燥物によっては、その被乾燥物特有の色調、形状、香り、栄養分、あるいはミネラル等が損なわれたり、焦げたり、あるいは乾燥にむらが出たりすることもある。
【0003】
またりんご、みかん、ぶどう、あるいはトマト等の果物や野菜は、ジュースや菓子用の素材等に加工して利用される場合も多いが、この加工の際に多量の皮や芯や絞り滓等の残渣が出る。この残渣は、多量の水分が含まれており、再利用を図るためには、十分乾燥脱水して、例えば乾燥粉末にすることが必要となる。そこで例えば回転ドラム等で攪拌しつつ、熱風を吹き付けて乾燥脱水する手段が試みられている。
【0004】
ところが、これらの果物や野菜の残渣には、水分の他に多量な糖分が含まれているため、乾燥中に飴状になって回転ドラム等にくっつき、攪拌等が困難になるという問題がある。また残渣の内部まで十分乾燥するためには、ある程度高温で加熱する必要があるところ、高温で加熱すると変色や焦げが生じて、食用の素材としての利用価値が無くなってしまうという問題もある。このため果物や野菜の残渣は、大部分、変色が問題とならない家畜用の餌や堆肥に加工され、あるいは廃棄処分とされていた。
【0005】
しかるに、果物や野菜の残渣には、三大栄養素であるたんぱく質、脂質、および糖質の他、植物繊維やポリフェノール等が、多量に含まれているため、家畜の餌や廃棄するのではなく、食用の素材として、高い利用価値を有する。そこで乾燥脱水中に、飴状になって機器にくっつかず、内部まで十分乾燥でき、かつ変色しない、かつ効率的な乾燥手段が望まれる。
【0006】
そこで従来から、ヒートパイプを使用して、海産物や農産物自体を、比較的低い加熱温度で、かつ均一に乾燥する乾燥手段が提案されている(例えば特許文献1参照。)。すなわちこの特許文献1には、断熱パネルで囲んだベルトコンベア上に、桜海老やホタテ等の海産物、あるいはにんにく等の農産物を搭載し、上部からヒートパイプで加熱して、乾燥脱水する手段が開示されている。
【0007】
このヒートパイプは、公知の技術であり、冷媒をパイプ容積の何割かを占める程度まで満たして密閉したものであって、この冷媒を加熱手段で加熱気化させて冷媒蒸気を発生させ、この冷媒蒸気をパイプの内周面で放熱凝縮させて、パイプの周壁を加熱するものであるが、更にパイプ内面での急速な熱移動により波動が放射される。したがってヒートパイプを水平に設置した場合には、冷媒蒸気がパイプ全長に迅速に広まり、ヒートパイプ全長に渡って、ほぼ均一に加熱できる。
【特許文献1】特開2004−15688号公報(6〜7頁、図4〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに上述した乾燥手段には、次のような改良すべき問題があった。すなわち水分が、例えば80重量%前後と多量に含まれている農産物、これらの残渣、あるいは水産物を、変色、変形、または変質等しないように、あまり温度を上げずに加熱して、かつ内部まで十分、例えば10重量%前後まで乾燥させるためには、極めて長い乾燥時間が必要となり、乾燥処理時間と加熱に要するエネルギーコストとが増大して、実用性が大幅に低下してしまう。したがって実用性を高めるためには、温度を高くしない条件、望ましくは60℃以下で、内部まで十分かつ均一に乾燥しつつ、一方では乾燥時間を短くし、かつ加熱エネルギーコストを低減するという、相反する条件を満たすことが不可欠となる。
【0009】
そこで本発明の目的は、各種栄養分、香りおよび色彩等を有する被乾燥物を、色調、形状、栄養、ミネラルおよび香り等を保全しつつ、短時間で効率的に被乾燥物の水分調整または乾燥を行なうことができる、実用性の高い減圧低温乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、次の要件を全て満たすことによって、上述した課題である、各種栄養分、香りおよび色彩等を有する被乾燥物を、色調、形状、栄養、ミネラルおよび香り等を保全しつつ、内部まで十分、かつ短時間で効率的に、水分調整または乾燥できることを見出した。すなわち第1に、被乾燥物を、水平棚に載せることによって、多量の被乾燥物を薄く広い面積に敷設して、静止状態で熱が通りやすくする。第2に、水平棚の下側に、ヒートパイプを設けることによって、広い面積に敷設した多量の被乾燥物を、あまり高くない温度、望ましくは60℃以下で均一に加熱する。
【0011】
第3に、水平棚を乾燥庫に収納して、この乾燥庫内を減圧することによって、高くない温度における乾燥時間を短縮する。第4に、乾燥庫内の空気と水分とを分離することによって、被乾燥物の水分調整または乾燥によって発生する水蒸気等を除去して、乾燥庫内の湿度の上昇を抑えて乾燥を促進し、これにより更に乾燥時間を短縮する。第5に、水分を分離除去した空気を乾燥庫内に還流させることによって、供給熱エネルギーの消費を大幅に削減する。
【0012】
すなわち本発明による減圧低温乾燥装置の特徴は、乾燥庫と、この乾燥庫内を減圧する減圧手段と、この乾燥庫内の空気の水分を分離する気液分離手段とを備えることにある。上記乾燥庫は、被乾燥物を載せる水平棚を収納し、この水平棚の下側には、ヒートパイプが設けてある。上記ヒートパイプは、冷媒を密閉したパイプと、この冷媒を加熱する加熱手段とを備えている。そして上記冷媒は、上記加熱手段によって気化され、この気化した冷媒は、上記パイプの内周面に放熱して凝縮する。
【0013】
上記被乾燥物は、農産物または海産物のいずれかであることが望ましい。さらに上記被乾燥物は、果物または野菜のいずれかの残渣であることが、より望ましい。そして上記加熱手段は、上記パイプ内を軸方向に貫通する加熱パイプと、加熱源とを備え、この加熱パイプ内は、この加熱源で加熱された液体が循環するように構成することが望ましい。
【0014】
ここで「乾燥庫」とは、後述する「水平棚」と「ヒートパイプ」とを収納し、減圧や除湿のときには密閉できるものであれば、大きさ、形状、材質は問わない。「減圧手段」とは、乾燥庫内の気圧を低下させる全ての手段を意味し、例えば真空ポンプが該当する。「気液分離手段」とは、乾燥庫内の空気の水分を分離する全ての手段を意味し、例えば除湿剤に含有水分を吸収させる手段や、乾燥庫内の空気を低温機材に触れさせて、含有する水分を凝縮させて除去する手段が該当する。
【0015】
「被乾燥物」とは、水分調整または乾燥させる対象物を意味し、例えば果実類や野菜等の農産物、これらの搾汁残渣、並びに魚貝類や海草等の海産物が該当する。「水平棚」とは、「被乾燥物」をその上面に載せることができる、ほぼ水平な棚を意味し、その大きさ、形状、および材質を問わない。また単段に限らず、所定の高さ方向間隔を隔てた複数段の場合も含む。「ヒートパイプ」とは、上述したように公知の技術であって、冷媒をパイプ容積の何割かを占める程度まで満たして密閉したものであって、この冷媒を加熱手段で加熱気化させて冷媒蒸気を発生させ、この冷媒蒸気をパイプの内周面で放熱凝縮させて、パイプの周壁を加熱するものを意味する。
【0016】
またここで「冷媒」とは、あまり高くない温度、たとえば100℃以下で液体から気体に相変化する媒体を意味し、例えばエタノール、メタノール、水等が該当する。またここで「水平棚の下側には、ヒートパイプが設けてあり」とは、水平棚の下側面から所定の間隔を隔てて、この水平棚にほぼ沿うように、「ヒートパイプ」を配置することを意味し、水平棚に載せた果物の残渣を、ほぼ均一に加熱できるものであれば、「ヒートパイプ」の配置構造は問わない。
【0017】
「加熱手段」とは、パイプに密閉された冷媒を加熱できる全ての手段を含み、例えばこのパイプ内に、より径の小さい加熱パイプを軸方向に貫通させ、この加熱パイプ内に加熱用の液体を循環させるものや、このパイプに発熱体を挿入して、この発熱体に電気を供給するものが該当する。また「果物または野菜の残渣」とは、りんご、みかん、あるいはぶどう等の果物や、トマト等の野菜の加工の際に出る、多量の皮や芯や絞り滓等を意味する。「加熱源」とは、上述した加熱パイプを循環する液体を加熱できる全ての手段を意味し、例えば固体燃料、液体燃料または気体燃料の燃焼熱、電熱器による熱、あるいは他の機器等からの排熱が該当する。「液体」とは、上述した加熱パイプを循環する液状流体を意味し、例えばお湯や油が該当する。
【発明の効果】
【0018】
多量の農産物、これらの残渣、あるいは農産物を、変色、変形、および変質等させず、内部まで十分、かつ短時間で効率的に乾燥脱水できる。すなわち水分が多量に含まれているこれらの被乾燥物を、変色、変形、および変質等させず、かつ内部まで十分乾燥するためには、温度を高くしないで長時間乾燥させることが不可欠であるところ、一方では生産性を向上し、かつ乾燥処理コストの上昇も抑えるためには、乾燥時間を短くしなければならないという相反する条件を満たすことができるので、高い実用性を発揮することができる。また多量に糖分を含む果物や野菜の残渣の乾燥中に、焦げたり乾燥装置やトレイ等に飴状にくっついたりすることを防止できる。
【0019】
ヒートパイプ内に密閉した冷媒の加熱手段として、パイプ内を軸方向に貫通する加熱パイプに、加熱源で加熱された液体を循環させることによって、ヒートパイプが長くなっても、ヒートパイプの温度の均一化が容易になり、加熱源における消費エネルギーの低減化が可能となり、温度調整も容易な加熱手段を、低コストで製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図2を参照しつつ、本発明による減圧低温乾燥装置の構成を説明する。すなわち図1に示すように、本発明による減圧低温乾燥装置は、箱型の乾燥庫1と、この乾燥庫の上方に設けた減圧手段2と、この乾燥庫の右側に設けた気液分離手段3とを備えている。乾燥庫1には、正面から見て、横2列、縦6段からなる、合計12個の水平棚4が収納してあり、それぞれのこの水平棚の下側には、ヒートパイプ5が配置してある。以下これらの構造について詳述する。
【0021】
さて乾燥庫1は、高さ約160cm、幅約330cm、奥行き約120cmの、断熱パネルからなる密閉容器になっており、図1の正面の壁は、水平棚4を出し入れできるように、左右両開きの密閉可能な扉(図示せず。)が取り付けてある。減圧手段2は、乾燥庫1の天井に連通する第1ダクト21と、この第1ダクトの上端部左側に連通する吸引ダクト22と、この吸引ダクトの左端近傍に連通する真空ポンプ23とを備えている。なお吸引ダクト22には、真空ポンプ23の上流側位置に電磁弁24が設けてある。
【0022】
気液分離手段3は、第1ダクト21の上端部右側に連通する第2ダクト31と、この第2ダクトの他端に設けた凝縮器32と、この凝縮器で分離された水分を回収する凝縮水回収器33と、水分を分離した空気を、この凝縮水回収器から乾燥庫1に戻す第3ダクト34とを備えている。なお第2ダクト31には、乾燥庫1内の空気を循環させるための送風ファン35が設けてある。
【0023】
凝縮器32は、密閉された凝縮容器321と、この凝縮容器内に右側から連通する冷却パイプ322と、この冷水パイプに冷水を循環させる冷凍ユニット323とを備えている。凝縮容器321の底部は、ダクトを介して凝縮水回収器33に連通しており、この凝縮水回収器の上部左側に、上述した除湿空気を乾燥庫1に戻す第3ダクト34が連通している。また凝縮水回収器33の底部には、この凝縮水回収器に溜まった分離水を適時排出するためのドレンバルブ332が設けてある。なお凝縮水回収器33の右側には、この凝縮水回収器に溜まった分離水の量を計測するためのレベルセンサー331が取り付けてある。
【0024】
さて乾燥庫1内に収納した水平棚4は、合成樹脂製の浅いトレイであって、それぞれこの乾燥庫に設けたガイドレール(図示せず。)に支持されており、図1の手前方向に出し入れ可能になっている。なお水平棚4は、空気の流通をよくするために、多数の細かい穴やスリット等を設けることが望ましい。
【0025】
図1と図2とに示すように、ヒートパイプ5は、水平棚4の下側に、この水平棚の左右方向全長にわたって、奥行き方向にそれぞれ7列配置してある。ヒートパイプ5は後述するように、冷媒を密閉したパイプ51と、このパイプを長手方向に貫通する加熱パイプ52とからなる。そしてそれぞれの水平棚4の下側には、冷媒を密閉したパイプ51が設けてあり、加熱パイプ52が、これらの全てのパイプを直列状に連結している。なお加熱パイプのうち垂直部分は、ゴムホース等のフレキシブルチューブによって接続すれば、高さ方向の移動や調整が容易になる。
【0026】
加熱パイプ52の両端部に位置する入口部Aと、出口部Bとは、乾燥庫1の左側に設置したボイラー6と、それぞれ断熱材を巻いた(図示せず。)給湯パイプ53と排湯パイプ54とで、この乾燥庫の側壁を貫通して連結してある。そしてボイラー6で暖められた温湯は、給湯パイプ53を介して加熱パイプ52の入口部Aに流入し、流入した温湯は、直列状に連結した全てのパイプ51を経由して、この加熱パイプの出口部Bから、排湯パイプ54を介して、このボイラーに還流する。
【0027】
なお乾燥庫1の天井には、この乾燥庫内の圧力と温度を計測する、圧力計7と、温度計8とが設置してある。
【0028】
次に図3と図4とを参照しつつ、ヒートパイプ5の構成と作用とを説明する。図3に示すように、ヒートパイプ5は、それぞれステンレス管からなる直径約5cmのパイプ51と、このパイプを軸方向に貫通する直径約1cmの加熱パイプ52とから構成される。そして図4のヒートパイプ5の断面に示すように、パイプ51には、加熱パイプ52をほぼ埋没させる量の冷媒、例えばエタノール55が密閉収納してある。なお加熱パイプ52には、上述したようにボイラーで暖められた温湯56が循環する。
【0029】
さてボイラーで暖められた温湯56が加熱パイプ52に供給されると、この加熱パイプの温度が上がり、外側を取り巻くエタノール55を暖めて気化させる。気化したエタノール55の蒸気は、温度の低いパイプ51の内周に触れて放熱し、このパイプを温めると共に、液状のエタノールに凝縮して滴下する。なお気化したエタノール55の蒸気は、パイプ51の全長にわたって、速やかに混合拡散するため、ほぼ均一温度でこのパイプを暖めることができる。
【0030】
次に本発明による減圧低温乾燥装置の使用について説明する。まず図1に示す水平棚4上に、被乾燥物として、果物の残渣である例えばりんごの皮9を、約150Kg、数センチ程度の厚さに搭載し、乾燥庫1内に収納する。次に乾燥庫1の扉を密閉し、ボイラー6に点火し、送風ファン35と真空ポンプ23とを駆動する。乾燥庫1内の温度は約60℃、圧力は100〜150mmHgに設定し、この温度に乾燥庫内を加温するために、ボイラー6からの給湯温度を70℃、給湯量を3.3リットル/分程度に設定する。なお乾燥庫1内の温度と圧力とは、温度計8と圧力計7とで計測され、上述した温度と圧力とに維持するように、それぞれ真空ポンプ23の回転数と、ボイラー6への燃料供給量とを自動制御される。
【0031】
水平棚4上に登載したりんごの皮9は、その下側に設けたヒートパイプ5によって、60℃前後に加温され、水分が徐々に蒸発して脱水される。乾燥庫1内の湿った空気は、送風ファン35によって、乾燥庫1の天井に連通する第1ダクト21と第2ダクト31とを経由して、凝縮器32に送られる。凝縮器32に送られた湿った空気は、この凝縮器を構成する凝縮容器321内において、冷却パイプ322に接触し、含有する水分が凝縮して、空気と水とに気液分離される。
【0032】
凝縮器32において凝縮した分離水は、下方に落下し、凝縮水回収器33の底部に溜まり、一方水分を分離した空気は、この凝縮水回収器の上部に連通する第3ダクト34を経由して乾燥庫1に還流する。なお凝縮水回収器33の底部に溜った分離水の量は、レベルセンサー331で計測され、所定の量になると、ドレンバルブ332が開いて排出される。なお本実施の態様における乾燥時間は、約3時間で足りる。
【0033】
以上のようして、水平棚4上に搭載されたりんごの皮9は、ヒートパイプ5によって、あまり高温でない60℃に均一に加温されるので、変色せず、かつ多量に含まれる糖分によって飴状になることなく、むら無く乾燥脱水される。また約3時間かけて加温するため、りんごの皮9の内部まで、十分乾燥脱水される。一方乾燥庫1の内部は、大気圧の1/5程度まで減圧することによって、りんごの皮9に含まれている水分の蒸発が大幅に促進され、かつ蒸発した水分は、凝縮器32等によって常に除去されるために、さらに乾燥脱水が加速される。また加温された乾燥庫1内の空気は、気液分離後に還流されるため、供給した熱量は殆ど外部に逃げない。
【0034】
したがって、60℃というあまり高温でない加熱によっても、りんごの皮9の内部まで十分乾燥脱水でき、さらに乾燥雰囲気の減圧と除湿とによって乾燥が促進されるので、乾燥時間を大幅に短縮できる。また除湿した加温空気は、乾燥庫1内に還流されるので、加温熱エネルギーの損失が少なく、乾燥熱エネルギーコストを大幅に削減できる。
【0035】
なお被乾燥物によっては、乾燥庫1内の温度と圧力を、上述したものと異なる組み合わせにすることも可能である。すなわち減圧の程度を増減した場合には、温度も低下または上昇させればよい。検討の結果から、例えば100mmHgに減圧した場合には、温度は約50℃で足り、一方200mmHgに減圧した場合には、温度は約70℃に設定し、また350mmHgに減圧した場合には、温度は約80℃に設定する。また本発明による減圧低温乾燥装置は、上述した被乾燥物に限らず、高温に加熱すると変色、変形あるいは変質等が生じる恐れのある化学薬品や肥料、または合成樹脂等の素材の乾燥脱水にも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
農産物、これらの残渣、または海産物を、変色、変形、および変質させず、内部まで十分、かつ短時間で効率的に乾燥脱水できるため、これらの水分調整や乾燥処理に関する産業に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】減圧低温乾燥装置を正面から見た概略構成図である。
【図2】乾燥庫を右側面から見た概略構成図である。
【図3】ヒートパイプの斜視図である。
【図4】ヒートパイプの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 乾燥庫
2 減圧手段
23 真空ポンプ
3 気液分離手段
35 送風ファン
32 凝縮器
323 冷凍ユニット
33 凝縮水回収器
4 水平棚
5 ヒートパイプ
6 ボイラー(加熱源)
9 りんごの皮(果物の残渣)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥庫と、この乾燥庫内を減圧する減圧手段と、この乾燥庫内の空気の水分を分離する気液分離手段とを備え、
上記乾燥庫は、被乾燥物を載せる水平棚を収納し、
上記水平棚の下側には、ヒートパイプが設けてあり、
上記ヒートパイプは、冷媒を密閉したパイプと、この冷媒を加熱する加熱手段とを備え、
上記冷媒は、上記加熱手段によって気化され、この気化した冷媒は、上記パイプの内周面に放熱して凝縮する
ことを特徴とする減圧低温乾燥装置。
【請求項2】
請求項1において、上記被乾燥物は、農産物または海産物のいずれかであることを特徴とする減圧低温乾燥装置。
【請求項3】
請求項1において、上記被乾燥物は、果物または野菜のいずれかの残渣であることを特徴とする減圧低温乾燥装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの1において、上記加熱手段は、上記パイプ内を軸方向に貫通する加熱パイプと、加熱源とを備え、
上記加熱パイプ内は、上記加熱源で加熱された液体が循環する
ことを特徴とする減圧低温乾燥装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−85600(P2007−85600A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273155(P2005−273155)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】