説明

減圧弁

【課題】一次室を構成するバルブ構成部材の強度低下を来すことなく、一次室を減圧する。
【解決手段】一次室11と、弁口16を介して一次室11と連通可能な二次室12と、弁口16の開度を変化させるように移動可能な弁体27とを備え、一次室11を構成するバルブ構成部材10が合成樹脂製とされている減圧弁であって、弁体27が弁口16を閉塞する閉弁状態において、一次室11内の圧力がバルブ構成部材10の耐圧を超えない範囲内で上昇したときには、一次室11内の流体が弁体27を貫通する連通路30を通って二次室12側へ流出することを許容するが、常には連通路30を閉止状態に保持するリリーフ弁35を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一次室と、弁口を介して一次室と連通可能な二次室と、二次室の圧力に応じて弁口の開度を変化させるように移動可能な弁体とを備え、一次室を構成するバルブ構成部材が合成樹脂製である減圧弁が開示されている。この減圧弁では、バルブ構成部材が、金属に比べて強度の低い合成樹脂製である点に鑑み、一次室の圧力が高くなった場合に、一次室の流体を排出して一次室内の圧力を下げるためのリリーフ弁(第2弁機構)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−186106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リリーフ弁は、バルブ構成部材のうち一次室と二次室とを区画する隔壁に設けられており、一次室内の流体がリリーフ弁を通って二次室側へ流出するようになっている。そのため、バルブ構成部材の隔壁には、リリーフ弁を設けるための開口部を貫通させなければならず、貫通部を形成することが原因となってバルブ構成部材の強度低下を来すことが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一次室を構成するバルブ構成部材の強度低下を来すことなく、一次室を減圧することのできる減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、一次室と、弁口を介して前記一次室と連通可能な二次室と、前記弁口の開度を変化させるように移動可能な弁体とを備え、前記一次室を構成するバルブ構成部材が合成樹脂製とされている減圧弁であって、前記弁体が前記弁口を閉塞する閉弁状態において、前記一次室内の圧力が前記バルブ構成部材の耐圧を超えない範囲内で上昇したときには、前記一次室内の流体が前記弁体を貫通する連通路を通って前記二次室側へ流出することを許容するが、常には前記連通路を閉止状態に保持するリリーフ弁を備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記弁体は、前記二次室側から前記弁口の開口縁に当接可能なリング状の当接部材と、前記一次室内に臨む受圧体と一体的に移動可能であり、前記当接部材に対し貫通状態で相対移動可能に設けられた可動体とを備え、前記可動体の外周と前記当接部材の内周との隙間が前記連通路として機能し得るようになっており、前記可動体には、前記一次室側から前記連通路の開口を閉塞可能であって、前記一次室に臨む受圧面積が前記受圧体よりも小さい閉止部が形成されており、前記可動体と前記当接部材との間には、前記閉止部に対し前記連通路の開口を閉止する方向への付勢力を付与するバネ部材が設けられている
ところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
弁体が弁口を閉塞する閉弁状態において一次室内の圧力が上昇した場合には、その一次室内の圧力がバルブ構成部材の耐圧を超えないうちに、一次室内の流体が弁体を貫通する連通路を通って二次室側へ流出して一次室内が減圧されるので、バルブ構成部材が破損する虞はない。リリーフ弁において流体の流路となる連通路は、バルブ構成部材を貫通するのではなく、弁体を貫通する形態となっているので、リリーフ弁を設けたことが原因となってバルブ構成部材の強度が低下する虞はない。
【0009】
<請求項2の発明>
一次室に臨む受圧面積は閉止部よりも受圧体の方が大きいので、一次室内の圧力が上昇すると、可動体と受圧体はバネ部材の付勢に抗して受圧体側へ移動する。この移動の方向は、閉止部が連通路の一次室側の開口から離れる方向なので、連通路を介して一次室と二次室とが連通し、リリーフ弁が開弁状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1の減圧弁とリリーフ弁が閉弁している状態をあらわす断面図
【図2】減圧弁が開弁し、リリーフ弁が閉弁している状態をあらわす部分拡大断面図
【図3】図1の部分拡大断面図
【図4】減圧弁が閉弁し、リリーフ弁が開弁している状態をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の減圧弁は、バルブ構成部材10と、可動部材20と、ダイヤフラム36と、付勢バネ37とを備えている。バルブ構成部材10は、合成樹脂製であって、バルブ構成部材10の内部には、流体の流路である一次室11と二次室12とが形成されている。バルブ構成部材10には、その側面に開口するとともに一次室11に連通する流入口13と、流入口13とは反対側の側面に開口するとともに二次室12に連通する流出口14と、一次室11に連通するとともに上面側に開口するガイド筒部15と、ガイド筒部15の下方に配されて一次室11と二次室12とを上下に連通させる弁口16とが形成されている。
【0012】
弁口16の上方は一次室11となっており、弁口16の下方は二次室12となっている。弁口16の二次室12側(下側)の開口縁は、弁シート17となっている。バルブ構成部材10の上面は、二次室12に連通しているとともにバルブ構成部材10の外へ大きく開口した形態であり、この開口部はダイヤフラム36で閉塞されている。二次室12のうちダイヤフラム36の下面に臨む空間は、受圧室18となっている。また、ダイヤフラム36は、付勢バネ37によって下方(後述する弁体27を弁シート17から離間させて減圧弁を開弁させる方向)へ付勢されている。また、ダイヤフラム36が下方へ変位すると、二次室12の容積が減少する。
【0013】
可動部材20は、ガイド筒部15内に液密状に嵌合されて上下方向に移動可能な受圧体21と、受圧体21の上面からガイド筒部15よりも上方へ延出してダイヤフラム36に固着された連結部22と、受圧体21の下面からガイド筒部15よりも下方へ延出した弁棒23と、弁棒23の下端に連なる可動体24とを一体形成したものである。かかる可動部材20は、ガイド筒部15に案内されることにより上下方向に移動し得るようになっている。受圧体21の下面は、一次室11に臨む受圧面となっている。
【0014】
可動体24は、弁棒23の下端に連なる閉止部25と、閉止部25の下面から下方へ突出する貫通部26とからなる。閉止部25は、弁棒23と同心であって上から下に向かって次第に拡径する円錐状をなしている。貫通部26は、弁棒23及び閉止部25と同心であって、外径が閉止部25の最大外径よりも小さい円柱状をなしている。閉止部25のテーパ状をなす上面は、一次室11に臨む受圧面となっている。
【0015】
可動体24は、当接部材28とともに弁体27を構成する。当接部材28は、ゴム等の弾性部材からなり、可動体24と同心の円環形をなす。当接部材28の上面は、弁シート17に対し、二次室12側(下側)から液密状に当接し得るようになっている。当接部材28の中心孔29の内径は、可動体24の貫通部26の外径りも少し大きく、閉止部25の最大外径よりも小さい。中心孔29には貫通部26が貫通されており、中心孔29の内周と貫通部26の外周との隙間は、一次室11と二次室12とを連通させるための連通路30となっている。
【0016】
貫通部26における当接部材28よりも下方の領域には、円環形の第1バネ受け部材31が取り付けられているとともに、第1バネ受け部材31よりも下方に位置する円環形の第2バネ受け部材32が取り付けられている。そして、貫通部26の下端部にはナット33が螺合され、ナット33の上面に第2バネ受け部材32が当接されている。第1バネ受け部材31は、当接部材28に対しその下面と外周面とを覆うようにして嵌合されている。そして、第1バネ受け部材31の下面と第2バネ受け部材32の上面との間には、ウェーブワッシャからなる円環形のバネ部材34が装着されている。
【0017】
上記の可動部材20、当接部材28、連通路30及びバネ部材34は、リリーフ弁35を構成する。リリーフ弁35は、常には、バネ部材34の付勢により閉弁状態に保たれている(図1〜図3を参照)。即ち、バネ部材34は、両バネ受け部材31,32に対しその上下間隔を広げる方向の付勢力を付与し、換言すると、可動体24が当接部材28に対して相対的に下方へ移動する方向へ付勢する手段として機能する。そして、バネ部材34の付勢により、閉止部25が当接部材28の上面に当接して連通路30の上面側(一次室11に臨む側)の開口を液密状に閉塞するのである。
【0018】
リリーフ弁35が閉弁し、当接部材28が弁シート17の当接して減圧弁が閉弁している状態(図1及び図3を参照)では、弁体27の上面のうち一次室11に臨む領域(閉止部25の上面全体と当接部材28の上面の一部)は、受圧面となっている。この弁体27の受圧面積は、上記した受圧体21の受圧面積よりも小さい。したがって、閉止部25の受圧面積も、受圧体21の受圧面積より小さい面積となっている。
【0019】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。流出口14には、下流側流路(図示省略)を介して図示しない機器(例えば、給湯器の吐水装置)が接続されているが、この機器が閉鎖され、下流側流路における流体(例えば、水やお湯)の流動が停止しているときには、減圧弁は閉弁状態に保たれている。付勢バネ37は、ダイヤフラム36に対して減圧弁を開弁させる方向に付勢し、二次室12の圧力は、弁体27とダイヤフラム36に対して減圧弁を閉弁させる方向の付勢力として作用する。ここで、付勢バネ37の弾力は、下流側流路の流れが停止しているときに、閉弁方向の付勢力よりも小さくなるように設定されているので、減圧弁は閉弁状態に保たれるのである。
【0020】
また、このときに一次室11内の圧力が正常の範囲内であれば、リリーフ弁35も閉弁状態に保たれる(図1及び図3を参照)。可動部材20には、受圧体21と閉止部25の受圧面積の差違に起因する上向きの力と、バネ部材34により当接部材28に対して相対的に下向きの力とが作用している。ここで、バネ部材34の付勢力は、一次室11の圧力が正常であるときの受圧面積の差違に起因する上向きの力よりも大きくなるように設定されているので、リリーフ弁35は閉弁状態に保持されるのである。
【0021】
さて、機器の流路が開放されて下流側流路に流体が流れ、二次室12内の圧力が低下すると、二次室12側からダイヤフラム36と弁体27に作用する閉弁方向の付勢力が弱まるので、ダイヤフラム36とともに弁体27が下方へ移動して弁シート17から離間し、減圧弁が開弁される(図2を参照)。これに伴い、一次室11内の流体が弁口16を通って二次室12側へ流れる。
【0022】
減圧弁が開弁している状態において、何らかの原因で二次室12の圧力が上昇すると、ダイヤフラム36とともに弁体27が上方へ移動するので、弁口16の開度が小さくなる。すると、流体が弁口16を通過する際の圧力損失が増大するので、二次室12の圧力が下降する。このような減圧弁の作用により、二次室12側の圧力は所定値以下に維持される。尚、減圧弁が開弁している間は、当接部材28は、弁シート17から離間していて可動体24と一緒に上下動し得る状態に保たれているので、リリーフ弁35は、バネ部材34の付勢により閉弁状態に保持される。
【0023】
機器が流路を開放している状態から閉鎖する状態に切り替わると、減圧弁(一次室11及び二次室12)内における流体の流動が停止し、二次室12内の圧力が上昇する。すると、この二次室12内の圧力によりダイヤフラム36が上昇し、ダイヤフラム36と一体となって弁体27が上昇するので、当接部材28が弁シート17に当接し、減圧弁が開弁状態から閉弁状態に切り替わる。
【0024】
減圧弁が閉弁している状態において、ウォーターハンマーや、減圧弁よりも上流側の水道配管(図示省略)の凍結等により、一次室11の圧力が正常範囲を超えて上昇すると、受圧体21の受圧面積と閉止部25の受圧面積の差違に起因して可動部材20に作用する上向きの力が増大する。一方、当接部材28は、下から弁シート17に当接しているので、上方へ移動することはできない。したがって、可動部材20に付与される上向きの力がバネ部材34の付勢力を上回ると、図4に示すように、可動部材20が当接部材28に対して相対的に上方へ移動し、閉止部25が当接部材28の上面から離間する。
【0025】
これにより、連通路30の上面側(一次室11側)の開口が開放され、リリーフ弁35が閉弁状態から開弁状態へ切り替わる。このときの一次室11の圧力は、合成樹脂製のバルブ構成部材10の耐圧を超えない値である。リリーフ弁35が開弁すると、一次室11内の流体が連通路30を通過して二次室12内に流出するので、一次室11内の圧力が低下する。そして、一次室11内の圧力が正常範囲値まで低下すると、バネ部材34の付勢により可動部材20が下降して閉止部25が連通路30の開口を塞ぐので、リリーフ弁35が閉弁状態に切り替わる。
【0026】
本実施形態においては、弁体27が弁口16を閉塞する閉弁状態において一次室11内の圧力が上昇した場合には、その一次室11内の圧力がバルブ構成部材10の耐圧を超えないうちに、一次室11内の流体が弁体27を貫通する連通路30を通って二次室12側へ流出して一次室11内が減圧されるので、バルブ構成部材10が破損する虞はない。
【0027】
本実施形態の減圧弁では、リリーフ弁35において流体の流路となる連通路30は、バルブ構成部材10を貫通するのではなく、弁体27を貫通する形態となっているので、リリーフ弁35を設けたことが原因となってバルブ構成部材10の強度が低下する虞はない。
【0028】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、可動体と当接部材との間の連通路を開閉するための手段として、可動体に閉止部を形成したが、これに限らず、当接部材をゴム製とした上で、当接部材の内周に可動体の外周に当接する弾性撓み可能な弾性閉止片を形成してもよい。この構成によれば、一次室の圧力が低い状態では、弾性閉止片が可動体に当接することにより連通路が連通不能に遮断され、一次室の圧力が上昇すると、弾性閉止片が弾性撓みして可動体の外周から離間することにより、連通路が連通可能な状態となる。
(2)上記実施形態では、閉止部を閉止方向へ付勢するためのバネ部材としてウェーブワッシャを用いたが、これに限らず、皿ばねをバネ部材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…バルブ構成部材
11…一次室
12…二次室
16…弁口
21…受圧体
24…可動体
25…閉止部
27…弁体
28…当接部材
30…連通路
34…バネ部材
35…リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次室と、
弁口を介して前記一次室と連通可能な二次室と、
前記弁口の開度を変化させるように移動可能な弁体とを備え、
前記一次室を構成するバルブ構成部材が合成樹脂製とされている減圧弁であって、
前記弁体が前記弁口を閉塞する閉弁状態において、前記一次室内の圧力が前記バルブ構成部材の耐圧を超えない範囲内で上昇したときには、前記一次室内の流体が前記弁体を貫通する連通路を通って前記二次室側へ流出することを許容するが、常には前記連通路を閉止状態に保持するリリーフ弁を備えていることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
前記弁体は、
前記二次室側から前記弁口の開口縁に当接可能なリング状の当接部材と、
前記一次室内に臨む受圧体と一体的に移動可能であり、前記当接部材に対し貫通状態で相対移動可能に設けられた可動体とを備え、
前記可動体の外周と前記当接部材の内周との隙間が前記連通路として機能し得るようになっており、
前記可動体には、前記一次室側から前記連通路の開口を閉塞可能であって、前記一次室に臨む受圧面積が前記受圧体よりも小さい閉止部が形成されており、
前記可動体と前記当接部材との間には、前記閉止部に対し前記連通路の開口を閉止する方向への付勢力を付与するバネ部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−257235(P2010−257235A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106710(P2009−106710)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000108557)タイム技研株式会社 (15)
【Fターム(参考)】