説明

減速機構付モータ

【課題】ウォームホイールの強度を確保しつつ、減速機構付モータの小型化および軽量化を図ることにある。
【解決手段】ウォームホイール35は、ウォームホイール35を回転自在に支持する回転軸が挿通される円筒状のボス部35aと、ウォームに噛み合う複数のギヤ歯50が外周部に設けられた円筒状のギヤ部35bと、ボス部35aとギヤ部35bとを同軸上に連結する連結部35cとを有している。ギヤ部35bには、ギヤ歯50よりも径方向内側に位置させて環状の肉盗み54が形成されている。また、それぞれのギヤ歯50には、ギヤ歯50の軸方向中央部から軸方向一端側に向かうにつれて径方向外側へ円弧状に突出する円弧状歯部59が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ本体により回転されるウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイールとを備えた減速機構付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるリヤワイパ装置などの駆動源としては、モータ本体の回転駆動力を高出力化させる減速機構を備えた減速機構付モータが用いられる。減速機構は、モータ本体により回転されるウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイールとから構成されており、モータ本体の回転が減速機構により減速されてウォームホイールに伝達される。例えば、特許文献1の図1には、減速機構を備えた減速機構付モータが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−49552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような減速機構付モータにおいては、ウォームホイールが減速機構付モータの投影面積の大部分を占めており、減速機構付モータの小型化を図るためにはウォームホイールの小型化が重要となる。ウォームホイールの直径を小さくするためには、モジュールを同等とした状態で歯数を減少させるか、歯数を同等とした状態でモジュールを小さくすることが考えられるが、減速機構付モータのモータ特性を考慮して減速比を従来と同等とする場合には、減速比の関係から歯数を同等とした状態でモジュールを小さくすることが必要となる。しかしながら、ウォームホイールのモジュールを単に小さくすると、ウォームホイールの強度が低下するという問題が生ずることとなる。
【0005】
本発明の目的は、ウォームホイールの強度を確保しつつ、減速機構付モータの小型化および軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の減速機構付モータは、モータ本体により回転されるウォームと、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備えた減速機構付モータであって、前記ウォームホイールは、前記ウォームホイールを回転自在に支持する回転軸が挿通される円筒状のボス部と、前記ウォームに噛み合う複数のギヤ歯が外周部に設けられた円筒状のギヤ部と、前記ボス部と前記ギヤ部とを同軸上に連結する連結部と、前記ギヤ歯よりも径方向内側に位置させて前記ギヤ部に環状に形成される肉盗みと、前記ギヤ歯に設けられ、軸方向中央部から軸方向一端側に向かうにつれて径方向外側へ円弧状に突出する円弧状歯部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の減速機構付モータは、前記肉盗みは、前記円弧状歯部に隣接させて軸方向一端側に開口して形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の減速機構付モータは、前記ウォームホイールの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を有し、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を両反転位置の間で往復動するワイパモータに適用することを特徴とする。
【0009】
本発明の減速機構付モータは、前記ワイパ部材が前記両反転位置の中間位置付近に位置するときに前記ウォームと噛み合う前記ギヤ歯に少なくとも前記円弧状歯部を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウォームホイールのギヤ歯の軸方向中央部から軸方向一端側へ向かうにつれて径方向外側へ円弧状に突出する円弧状歯部を設けるようにしたので、ウォームのギヤ歯とウォームホイールのギヤ歯との噛合面積が大きくなり、ウォームホイールにおけるウォームとの噛合強度を向上させることができる。これにより、ウォームホイールの強度を十分に確保しつつ、ウォームホイールのモジュールを小さくすることが可能となり、ウォームホイールを小型化することで減速機構付モータの小型化および軽量化を図ることができる。また、環状の肉盗みをギヤ部に形成するようにしたので、ウォームホイールの軽量化を図ることができる。
【0011】
本発明によれば肉盗み部を円弧状歯部に隣接させて形成するようにしたので、ウォームから円弧状歯部に所定以上の負荷が加わった場合に円弧状歯部を径方向内側へ向けて撓ませることができ、円弧状歯部の破損を防止することが可能となる。
【0012】
本発明によれば、ワイパモータに適用する場合に、ワイパ部材が両反転位置の中間位置付近に位置するときにウォームと噛み合うウォームホイールのギヤ歯に少なくとも円弧状歯部を設けるようにした。つまり、ウォームとウォームホイールとの噛合反力が大きくなる位置において、ギヤ歯に円弧状歯部を設けることによりウォームホイールにおけるウォームとの噛合強度を向上させるようにした。これにより、全てのギヤ歯に円弧状歯部を設けなくとも、ウォームホイールの強度を十分に確保しつつ、ウォームホイールのモジュールを小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態であるワイパモータを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すウォームホイールの斜視図である。
【図4】図1に示すウォームホイールの平面図である。
【図5】図1に示すウォームホイールの底面図である。
【図6】ウォームとウォームホイールとの噛み合い状態を示す断面図である。
【図7】ウォームホイールを一部拡大して示す断面図である。
【図8】ウォームホイールの組付工程を説明する説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態であるワイパモータを示す平面図である。
【図10】図9に示すウォームホイールの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に示すワイパモータ(減速機構付モータ)10は、自動車等の車両に設けられるリヤウィンドガラスを払拭するためのリヤワイパ装置の駆動源として用いられる。このワイパモータ10は、モータ本体(電動モータ)11と、モータ本体11の回転を減速して伝達する減速機構が設けられたギヤユニット部12とを有している。
【0016】
モータ本体11にはブラシ付直流モータが用いられており、薄板鋼板等をプレス加工することにより有底筒状に形成されたモータケース(ヨーク)13を備えている。モータケース13の内周面には、それぞれ径方向内側に向けてN極、S極に着磁された複数の円弧状の永久磁石14が相互に対向して固着されている。また、モータケース13の内部には各永久磁石14に微小隙間を介して対向するアーマチュア15が回転自在に収容されており、アーマチュア15には複数のコイル16が巻装されている。このアーマチュア15の回転中心にはアーマチュア軸17が貫通して固定されており、アーマチュア軸17の軸方向一端部がモータケース13の底壁に回転自在に支持されている。
【0017】
アーマチュア軸17には、アーマチュア15に隣接させて円筒状のコンミテータ18が固定されており、コンミテータ18には各コイル16の端部が電気的に接続されている。コンミテータ18の外周面には一対のブラシ19がそれぞれ摺接されており、ブラシ19およびコンミテータ18を介してコイル16に駆動電流を供給することで、アーマチュア15に回転方向の電磁力トルクが発生し、アーマチュア軸17が所定の速度で回転駆動される。
【0018】
このモータ本体11には、モータケース13の開口側において、ギヤユニット部12のギヤフレーム21が取り付けられている。ギヤフレーム21はモータケース13側に開口しており、それぞれの開口端面を相互に突き当てた状態で締結ネジ22によりギヤフレーム21がモータケース13に固定されている。
【0019】
アーマチュア軸17の軸方向他端部はギヤフレーム21の内部に突出されており、アーマチュア軸17の軸方向他端部には連結部材23によりウォーム軸24が同軸上に連結され、ウォーム軸24がアーマチュア軸17と一体に回転されるようになっている。つまり、このモータ本体11のモータシャフト25は、アーマチュア軸17とウォーム軸24とに分割された分割シャフトとなっている。ウォーム軸24はギヤフレーム21の内部に回転自在に収容されており、ウォーム軸24の外周面には螺旋状の歯部を備えたウォーム24aが形成されている。なお、モータシャフト25としては分割シャフト構造に限られず、アーマチュア軸17とウォーム軸24とを一体に成形するようにしても良い。
【0020】
図2に示すように、ギヤフレーム21はアルミダイカストによりモータシャフト25の軸方向と直交する側に開口する有底状に形成されており、その開口部を閉塞するギヤカバー27とによりギヤケース28を形成している。ギヤカバー27はギヤフレーム21の底壁21aに対して所定の間隔を隔てて配置され、これらギヤフレーム21の底壁21aとギヤカバー27との間で収容スペースが形成されている。このギヤフレーム21の内部には、モータシャフト25の回転を減速して伝達する減速機構29と、減速機構29の回転運動を揺動運動に変換して出力軸30に伝達する運動変換機構31とが収容されている。
【0021】
なお、図1はギヤカバー27が取り外された状態におけるワイパモータ10の平面図であり、ギヤユニット部12の内部構造を示している。また、ギヤカバー27は鋼板等により所定形状に形成されており、ギヤカバー27に一体に設けられた図示しないブラケット部においてワイパモータ10が車体に固定されるようになっている。
【0022】
出力軸30は鋼鉄等の金属製の丸棒からなり、その軸方向をモータシャフト25の軸方向と直交する方向、つまりギヤフレーム21の底壁21aと直交する方向に向けて配置されている。出力軸30は基端側がギヤフレーム21の内部に収容されるとともに、先端側がギヤフレーム21の外方へ突出して延びており、ギヤフレーム21の底壁21aを貫通した状態で設けられている。ギヤフレーム21の底壁21aには、出力軸30の外周面に沿ってギヤフレーム21の外方へ突出する略円筒形状の軸保持部21bが一体に形成されており、出力軸30は軸保持部21bに挿通されて軸保持部21bにより回転自在に支持されている。この出力軸30の先端部はリヤウィンドガラスから車体外部へ突出されており、出力軸30の先端部には、リヤウィンドガラスの外側面を払拭するための図示しないワイパ部材が固定されている。
【0023】
軸保持部21bの内周面と出力軸30の外周面との間には樹脂製の軸受部材33が設けられ、軸受部材33を介して出力軸30が軸保持部21bに回転自在に支持されている。また、軸保持部21bの先端部にはシール材34が装着されており、ギヤケース28の内部に雨水や塵埃等が浸入することが防止されている。
【0024】
減速機構29は、モータ本体11により回転されるウォーム24aと、ウォーム24aに噛み合うウォームホイール35とを有している。ウォームホイール35は樹脂材料を射出成形することによって略円盤形状に形成されており、その外周部に設けられたギヤ歯によりウォーム24aに噛み合っている。ウォームホイール35の軸心には、底壁21aに固定されて出力軸30と平行に延びる回転軸36が挿通されており、回転軸36によりウォームホイール35がギヤフレーム21の内部で回転自在に支持されている。これらウォーム24aとウォームホイール35とを備える減速機構29により、モータシャフト25の回転が減速されてウォームホイール35に伝達される。
【0025】
運動変換機構31は、出力軸30の基端部に固定されたピニオンギヤ(出力ギヤ)40、ウォームホイール35の回転運動を揺動運動に変換してピニオンギヤ40に伝達する運動変換部材41、およびピニオンギヤ40と運動変換部材41とを相互に揺動自在に連結する保持プレート42を有している。運動変換部材41は、ピニオンギヤ40に噛み合うセクタギヤ部41aと、ウォームホイール35に連結されるアーム部41bとを備えており、鋼板等の金属材料により平板状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、運動変換部材41はウォームホイール35よりもギヤカバー27側に配置されている。この運動変換部材41のアーム部41bには連結軸43が固定されており、ウォームホイール35に形成された複数の連結孔44のいずれか1つに連結軸43が回転自在に組み付けられている。つまり、ウォームホイール35の軸中心から径方向にずれた位置に設けられる連結軸43により、運動変換部材41とウォームホイール35とが相互に回動自在に連結されている。また、ピニオンギヤ40は平歯車からなり、出力軸30の基端部に固定されて出力軸30と一体に回動される。ピニオンギヤ40は運動変換部材41と同一平面上に配置され、略扇形状の平歯車からなるセクタギヤ部41aに噛み合っている。
【0027】
保持プレート42は、鋼板等の金属材料により平板状に形成されている。保持プレート42はピニオンギヤ40および運動変換部材41よりもギヤカバー27側に配置されており、ピニオンギヤ40とセクタギヤ部41aとの間で延びている。この保持プレート42の一端部には出力軸30や連結軸43と平行に延びる歯車軸45が回転自在に挿通されており、歯車軸45がセクタギヤ部41aの軸中心に固定されている。一方、保持プレート42の他端部には出力軸30が回転自在に挿通されている。この保持プレート42により歯車軸45が出力軸30に対して揺動自在に連結され、ピニオンギヤ40とセクタギヤ部41aとが互いに噛み合った状態で保持されている。
【0028】
また、出力軸30、連結軸43、および歯車軸45の各軸の基端部には、ギヤカバー27の内面に摺動自在に突き当てられる摺接部材46がそれぞれ装着されている。摺接部材46はゴム等の弾性材料によりキャップ状に形成されており、各軸30,43,45の基端面とギヤカバー27の内面との間で圧縮された状態で組み付けられている。この摺接部材46の弾性力により、各軸30,43,45がギヤフレーム21の底壁21a側に向けて軸方向に付勢され、ギヤフレーム21の内部に収容された各部材の軸方向のガタが抑制されている。
【0029】
このワイパモータ10を作動させるためにワイパスイッチがON操作されると、モータ本体11によりウォームホイール35が回転され、運動変換部材41のアーム部41bに固定された連結軸43がウォームホイール35とともに回転軸36を中心として回転される。そして、運動変換部材41のセクタギヤ部41aに固定された歯車軸45が出力軸30を中心として揺動され、セクタギヤ部41aとピニオンギヤ40との噛み合いによって出力軸30が所定の揺動角度で往復揺動される。すなわち、差動ギヤ構造からなる広角タイプの運動変換機構31によりウォームホイール35の回転運動が揺動運動に変換されて出力軸30に伝達され、ワイパ部材が所定の揺動範囲つまり予め設定された両反転位置の間で往復揺動される。
【0030】
次に、ウォームホイール35の形状について詳細に説明する。図3は図1に示すウォームホイールの斜視図であり、図4は図1に示すウォームホイールの平面図であり、図5は図1に示すウォームホイールの底面図である。図6はウォームとウォームホイールとの噛み合い状態を示す断面図であり、図7はウォームホイールを一部拡大して示す断面図である。
【0031】
このウォームホイール35は、回転軸36により回転自在に支持される円筒状のボス部35aと、ウォーム24aと噛み合う複数のギヤ歯50が外周部に設けられた円筒状のギヤ部35bと、ボス部35aとギヤ部35bとを連結する連結部35cとを有している。
【0032】
ボス部35aの軸心には、回転軸36が挿通される軸孔51が形成されており、軸孔51に回転軸36が挿通されてボス部35aの内周面が回転軸36の外周面に摺接されている。図6に示すように、ボス部35aの軸方向他端側(図6における下側)の端部には、連結部35cよりも軸方向他端側へ向けて突出する環状の突き当て部52が設けられている。突き当て部52には軸方向他端側に開口する複数の円弧状の肉盗み53が軸孔51と同軸上に環状に形成されており、ウォームホイール35の軽量化が図られている。ウォームホイール35は、このボス部35aにおいて回転軸36により回転自在に支持されている。
【0033】
ギヤ部35bは、ボス部35aよりも軸方向寸法が短く形成されており、ボス部35aよりも径方向外側に位置させてボス部35aと同軸上に設けられている。ギヤ部35bの外周部にはウォーム24aに噛み合う複数のギヤ歯50が周方向全体に並べて設けられており、ウォーム24aのギヤ歯とウォームホイール35のギヤ歯50との噛み合いによって、モータシャフト25の回転がウォームホイール35に減速して伝達されるようになっている。
【0034】
ギヤ部35bの軸方向一端側(図6における上側)の端面には、ギヤ歯50よりも径方向内側つまりギヤ歯50と連結部35cとの間に位置させて軸方向一端側に開口する環状の肉盗み54が軸孔51と同軸上に形成されており、ウォームホイール35の軽量化が図られている。この肉盗み54は、ギヤ部35bの軸方向中央部から軸方向一端側へ向けて軸方向に延びて開口するとともに、その開口端部が径方向外側へ向けて延びる断面略L字形状に形成されている。なお、肉盗み54としては、複数の円弧状の肉盗みを環状に形成するようにしても良い。
【0035】
連結部35cは、ボス部35aとギヤ部35bとを同軸上に連結する円盤形状をしており、ボス部35aとギヤ部35bとの間で径方向に延びている。連結部35cの軸方向一端側の端面は、ボス部35aの軸方向一端側の端面と略同一平面上に設けられており、ギヤ部35bの軸方向一端側の端面よりも軸方向一端側に配置されている。また、連結部35cの軸方向他端側の端面はギヤ部35bの軸方向他端側の端面と略同一平面上に設けられており、ボス部35aの突き当て部52が連結部35cの軸方向他端側の端面よりも軸方向他端側に突出して設けられている。
【0036】
連結部35cには、複数(図示する場合においては4つ)の連結孔44が軸方向一端側に開口して形成されており、それぞれの連結孔44が周方向に所定の間隔をあけて配置されている。また、連結部35cには、軸方向一端側に開口する複数の肉盗み55が放射状に設けられており、ウォームホイール35の軽量化が図られている。連結部35cの軸方向他端側の端面には、ワイパスイッチがOFF操作されたときにワイパ部材を所定の停止位置に自動で停止させるための定位置停止機構を構成するリレープレート56が取り付けられており、略環状のリレープレート56がウォームホイール35と同軸上に配置されている。
【0037】
図7に示すように、それぞれのギヤ歯50は、ギヤ歯50の軸方向他端側に設けられる直線状歯部58と、ギヤ歯50の軸方向一端側に設けられる円弧状歯部59とを備えている。つまり、それぞれのギヤ歯50は、軸方向一端側に円弧状歯部59が設けられた片円弧形状をしている。直線状歯部58の歯先58aおよび歯底58bは、ギヤ歯50の軸方向中央部から軸方向他端側へ向けて軸方向に延びて形成されており、周方向に隣り合うギヤ歯50の相互間に形成される歯溝60が軸方向他端側へ開口されている。
【0038】
一方、円弧状歯部59は、ギヤ歯50の軸方向中央部から軸方向一端側へ向かうにつれて径方向外側へ円弧状に突出している。円弧状歯部59の歯先59aはウォーム24aの歯底24bに対応させて径方向外側へ湾曲して形成され、円弧状歯部59の歯底59bはウォーム24aの歯先24cに対応させて径方向外側へ湾曲して形成されている。したがって、それぞれギヤ歯50は円弧状歯部59の軸方向一端側の端部が相互に連結されており、歯溝60の軸方向一端側が閉塞されている。このように、それぞれのギヤ歯50には、所謂ノード形状としての円弧状歯部59がギヤ歯50の軸方向一端側に肉盗み54に隣接させて設けられており、ギヤ歯50の円弧状歯部59が直線状歯部58よりも径方向外側へ迫り出している。
【0039】
次に、ウォームホイール35の組付工程について説明する。図8はウォームホイールの組付工程を説明する説明図である。
【0040】
ウォームホイール35を組み付ける際には、予め、ウォーム軸24をギヤフレーム21の内部に回転自在に収容するとともに、回転軸36の先端部がギヤフレーム21内に突出するように回転軸36を底壁21aに固定する。ウォームホイール35は、図8に矢印で示すように、ウォームホイール35の軸方向他端側つまり歯溝60の開口側を底壁21a側に向けた状態で、ギヤフレーム21の開口部から軸方向他端側へ向けて組み付けられる。そして、軸孔51に回転軸36の先端部が挿通されるとともに、ウォーム24aのギヤ歯とウォームホイール35のギヤ歯50とが噛み合わされ、突き当て部52の軸方向他端側の端面が底壁21aの内面に突き当てられた状態で、ウォームホイール35がギヤフレーム21内に回転自在に収容される。
【0041】
このように、それぞれのギヤ歯50の軸方向一端側に円弧状歯部59を設けるようにしたので、ウォーム24aのギヤ歯とウォームホイール35のギヤ歯50との噛合面積が大きくなり、ウォームホイール35におけるウォーム24aとの噛合強度を向上させることができる。これにより、ウォームホイール35の強度を十分に確保しつつ、ウォームホイール35のモジュールを小さくすることが可能となり、ウォームホイール35を小型化することでワイパモータ10の小型化および軽量化を図ることができる。また、環状の肉盗み54をギヤ部35bに形成するようにしたので、ウォームホイール35の軽量化を図ることができる。また、肉盗み54を形成することにより、ウォーム軸24のウォーム24aから円弧状歯部59に所定以上の負荷が加わった場合に、円弧状歯部59は軸孔51側つまり径方向内側へ向けて撓むことができる。これにより、円弧状歯部59の破損を防止することが可能となる。
【0042】
さらに、それぞれのギヤ歯50の軸方向一端側のみに円弧状歯部59を設けるようにしたので、ウォーム軸24をギヤフレーム21内に収容した状態でウォームホイール35を組み付けることが可能となる。つまり、それぞれのギヤ歯50の軸方向他端側に直線状歯部58を設け、歯溝60がウォームホイール35の組付方向に開口するようにしたので、ウォームホイール35のギヤ歯50がウォーム24aのギヤ歯に干渉することなく、ギヤフレーム21内に収容されたウォーム24aに対してウォームホイール35を組み付けることが可能となる。したがって、それぞれのギヤ歯50に円弧状歯部59を設けない場合と比べてウォームホイール35の組付作業性を悪化させることなく、ウォーム軸24をギヤフレーム21内に収容した状態でウォームホイール35を容易に組み付けることができる。
【0043】
なお、前記実施の形態においては、それぞれのギヤ歯50の軸方向一端側のみに円弧状歯部59を設けるようにしたが、ギヤ歯50の軸方向両端側にそれぞれ円弧状歯部59を設けるようにしても良い。この場合には、ウォーム24aのギヤ歯とウォームホイール35のギヤ歯50との噛合面積がさらに大きくなり、ウォームホイール35をさらに小型化および軽量化することが可能となる。
【0044】
ただし、ギヤ歯50の軸方向両端側にそれぞれ円弧状歯部59を設けるようにした場合には、ウォーム24をギヤフレーム21内に収容した状態でウォームホイール25を組み付けようとすると、ギヤ歯50の円弧状歯部59がウォーム24aのギヤ歯に干渉することとなり、ウォームホイール35の組み付けが困難となる。したがって、この場合には、予めウォームホイール35をギヤフレーム21内に収容した状態で、ウォーム軸24をウォームホイール35の接線方向に移動させながら回転させて組み付ける必要があり、組付作業性が悪化することとなる。
【0045】
また、前記実施の形態においては、ウォームホイール35の外周部に設けられた複数のギヤ歯50の全てに円弧状歯部59を設けるようにしたが、これに限定されることはない。図9は本発明の他の実施形態であるワイパモータを示す平面図であり、図10は図9に示すウォームホイールの底面図である。図9および図10において、上述した部材と同様の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図9に示すように、広角タイプの運動変換機構31を備えたワイパモータ70においては、ワイパ部材が両反転位置の中間位置付近に位置するときに減速機構29の噛合反力が最も大きくなる傾向にある。つまり、減速機構29の噛合部とウォームホイール35の軸中心とを結ぶ第一仮想線L1に対して回転軸36を中心として所定角度ずれた第二仮想線L2上付近に連結軸43が位置するときに減速機構29の噛合部に掛かる負荷が大きくなる。そのため、連結軸43が第二仮想線L2上付近に位置するとき、つまりワイパ部材が両反転位置の中間位置に位置するときにウォーム24aのギヤ歯に噛み合うウォームホイール71のギヤ歯72に少なくとも円弧状歯部59を設けるようにすることで、ウォームホイール71の噛合強度を十分に確保することが可能となる。
【0047】
このウォームホイール71では、図10に示すように、連結軸43が第二仮想線L2上付近に位置するときにウォーム24aのギヤ歯に噛み合う角度領域α,βにおけるギヤ歯72を片円弧形状としている。すなわち、角度領域α,βにおけるギヤ歯72は、軸方向他端側に直線状歯部58が設けられるとともに、軸方向一端側に円弧状歯部59が設けられている。一方、その他(角度領域α,β以外)の角度領域におけるギヤ歯73は、軸方向両端側にそれぞれ直線状歯部58が設けられている。
【0048】
このように、ワイパ部材が両反転位置の中間位置に位置するときにウォーム24aのギヤ歯に噛み合うウォームホイール71のギヤ歯72に少なくとも円弧状歯部59を設けるようにすることで、減速機構29の噛合反力が大きくなる位置におけるウォームホイール71の噛合強度を向上させることができる。これにより、全てのギヤ歯に円弧状歯部59を設けなくとも、図5に示すウォームホイール35を用いた場合と同様の効果を奏することができる。なお、円弧状歯部59を備えたギヤ歯72が設けられる角度領域α,βは、減速機構29の噛合反力等を考慮して任意に変更可能である。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはもちろんである。例えば、前記実施の形態においては、差動ギヤ構造からなる広角タイプの運動変換機構31を用いたが、リンク構造からなる狭角タイプの運動変換機構を用いるようにしても良い。狭角タイプの運動変換機構は、出力軸30と一体に回動するレバー部材と、ウォームホイール35の回転運動を揺動運動に変換してレバー部材に伝達する連結ロッドとを有している。連結ロッドは、一端部がウォームホイール35の軸中心から径方向にずれた位置において連結軸43によりウォームホイール35に回動自在に連結され、他端部がレバー部材に回動自在に連結される。
【0050】
この狭角タイプの運動変換機構を備えたワイパモータにおいても、ワイパ部材が両反転位置の中間位置付近に位置するときに減速機構29の噛合反力が最も大きくなる傾向にある。つまり、減速機構29の噛合部とウォームホイールの軸中心とを結ぶ第一仮想線L1上付近に連結軸43が位置するときに減速機構29の噛合部に掛かる負荷が大きくなる。そのため、連結軸43が第一仮想線L1上付近に位置するとき、つまりワイパ部材が両反転位置の中間位置付近に位置するときにウォーム24aのギヤ歯に噛み合うウォームホイールのギヤ歯に少なくとも円弧状歯部59を設けるようにすることで、ウォームホイールの噛合強度を十分に確保することが可能となる。
【0051】
また、本発明の減速機構付モータとしてはワイパモータ10に限られず、パワーウィンドモータ等の他の減速機構付モータに適用するようにしても良い。また、モータ本体11としてはブラシ付モータに限らず、例えばブラシレスモータなどを用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 ワイパモータ(減速機構付モータ)
11 モータ本体
12 ギヤユニット部
13 モータケース
14 永久磁石
15 アーマチュア
16 コイル
17 アーマチュア軸
18 コンミテータ
19 ブラシ
21 ギヤフレーム
21a 底壁
21b 軸保持部
22 締結ネジ
23 連結部材
24 ウォーム軸
24a ウォーム
24b 歯底
24c 歯先
25 モータシャフト
27 ギヤカバー
28 ギヤケース
29 減速機構
30 出力軸
31 運動変換機構
33 軸受部材
34 シール材
35 ウォームホイール
35a ボス部
35b ギヤ部
35c 連結部
36 回転軸
40 ピニオンギヤ
41 運動変換部材
41a セクタギヤ部
41b アーム部
42 保持プレート
43 連結軸
44 連結孔
45 歯車軸
46 摺接部材
50 ギヤ歯
51 軸孔
52 突き当て部
53〜55 肉盗み
56 リレープレート
58 直線状歯部
58a 歯先
58b 歯底
59 円弧状歯部
59a 歯先
59b 歯底
60 歯溝
70 ワイパモータ(減速機構付モータ)
71 ウォームホイール
72,73 ギヤ歯
L1 第一仮想線
L2 第二仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体により回転されるウォームと、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備えた減速機構付モータであって、
前記ウォームホイールは、
前記ウォームホイールを回転自在に支持する回転軸が挿通される円筒状のボス部と、
前記ウォームに噛み合う複数のギヤ歯が外周部に設けられた円筒状のギヤ部と、
前記ボス部と前記ギヤ部とを同軸上に連結する連結部と、
前記ギヤ歯よりも径方向内側に位置させて前記ギヤ部に環状に形成される肉盗みと、
前記ギヤ歯に設けられ、軸方向中央部から軸方向一端側に向かうにつれて径方向外側へ円弧状に突出する円弧状歯部とを有することを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項2】
請求項1記載の減速機構付モータにおいて、前記肉盗みは、前記円弧状歯部に隣接させて軸方向一端側に開口して形成されることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の減速機構付モータにおいて、前記ウォームホイールの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を有し、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を両反転位置の間で往復動するワイパモータに適用することを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項4】
請求項3記載の減速機構付モータにおいて、前記ワイパ部材が前記両反転位置の中間位置付近に位置するときに前記ウォームと噛み合う前記ギヤ歯に少なくとも前記円弧状歯部を設けることを特徴とする減速機構付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−137114(P2012−137114A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287954(P2010−287954)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】