説明

減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置

【課題】第2の軸受に対して潤滑油を十分に供給することができる減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を提供する。
【解決手段】減速伝達機構5は、中心孔50a及び複数のピン挿通孔50bを有し、所定の偏心量をもって円運動を行う外歯歯車からなる入力部材50と、入力部材50に噛合し、外歯歯車の歯数よりも大きい歯数をもつ内歯歯車からなる自転力付与部材52と、自転力付与部材52によって入力部材50に付与された自転力を受けて出力し、複数のピン挿通孔50bを挿通する出力部材53とを備え、出力部材53は、複数のピン挿通孔50bの内周面に接触可能な部位に針状ころ軸受55が取り付けられ、入力部材50は、中心孔50aから複数のピン挿通孔50bに至る第3の油供給路642を有し、モータ軸42の回転に伴い発生する遠心力によって第3の油供給路642が針状ころ軸受55に潤滑油を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駆動源として電動モータを有する電気自動車に用いて好適な減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ回転力伝達装置には、モータ回転力を発生させる電動モータ、及びこの電動モータのモータ回転力を減速して駆動力を差動機構に伝達する減速伝達機構を備え、自動車に搭載されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
電動モータは、車載バッテリの電力によって回転するモータ軸を有し、減速伝達機構の軸線上に配置されている。モータ軸の外周面には、その軸線に所定の偏心量をもって偏心する軸線を中心軸線とする偏心部が一体に設けられている。
【0004】
減速伝達機構は、その軸線の周囲に一対の減速伝達部、及び一対の減速伝達部を収容するハウジングを有し、電動モータと差動機構との間に介在して配置され、かつモータ軸及び差動機構(デフケース)に連結されている。一方の減速伝達部はモータ軸に、また他方の減速伝達部はデフケースにそれぞれ連結されている。
【0005】
以上の構成により、電動モータのモータ軸が車載バッテリの電力によって回転し、これに伴いモータ回転力が電動モータから減速伝達機構を介して差動機構に伝達され、この差動機構で左右の車輪に配分される。
【0006】
ところで、この種のモータ回転力伝達装置の減速伝達部は、電動モータのモータ軸の回転によって公転運動を行う円板状の一対の公転部材、これら公転部材に自転力を付与する複数の外ピン、及びこれら外ピンの内側で公転部材の自転力を差動機構に駆動力(回転力)として出力する複数の内ピンを有している。
【0007】
一対の入力部材は、モータ軸の偏心部の軸線を中心軸線とする中心孔、及びこの中心孔の中心軸線の回りに等間隔をもって並列する複数のピン挿通孔を有し、モータ軸の偏心部に軸受(カム側の軸受)を介して回転可能に支持されている。
【0008】
複数の外ピンは、モータ軸の軸線回りに等間隔をもって配置され、かつ減速伝達機構のハウジングに取り付けられている。
【0009】
複数の内ピンは、公転部材における複数のピン挿通孔を挿通し、モータ軸の軸線回りに等間隔をもって配置され、かつデフケースに取り付けられている。複数の内ピンには、一対の入力部材における複数のピン挿通孔の内周面との間の接触抵抗を低減するための軸受(ピン側の軸受)が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−218407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示すモータ回転力伝達装置によると、電動モータの高速回転に伴いハウジング内の潤滑油が攪拌される。この結果、ピン側の軸受への潤滑油量が減少し、ピン側の軸受に潤滑油を十分に供給することができないという問題があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、第2の軸受への潤滑油量を増大させることができ、もって第2の軸受に対して潤滑油を十分に供給することができる減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)〜(5)の減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を提供する。
【0014】
(1)回転軸の軸線から偏心する軸線を中心軸線とする中心孔、及び前記中心軸線の回りに等間隔をもって並列する複数の貫通孔を有するとともに、前記中心孔の内周面と前記回転軸の外周面との間に第1の軸受を介在させ、前記回転軸の軸線と前記中心軸線との間の寸法に対応する偏心量をもって円運動を行う外歯歯車からなる入力部材と、前記入力部材に噛合し、前記外歯歯車の歯数よりも大きい歯数をもつ内歯歯車からなる自転力付与部材と、前記自転力付与部材によって前記入力部材に付与された自転力を受けて出力し、前記複数の貫通孔を挿通する出力部材とを備え、前記出力部材は、前記複数の貫通孔の内周面に接触可能な部位に第2の軸受が取り付けられ、前記入力部材は、前記中心孔から前記複数の貫通孔に至る油供給路を有し、前記回転軸の回転に伴い発生する遠心力によって前記油供給路が前記第2の軸受に潤滑油を供給する減速機構。
【0015】
(2)上記(1)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記複数の貫通孔のうち互いに隣り合う2つの貫通孔に連通する連通路を有する。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)に記載の減速機構において、前記入力部材は、その外周面及び前記複数の貫通孔のうち少なくともいずれかの貫通孔の内周面に開口する油流出路を有する。
【0017】
(4)モータ回転力を発生させる電動モータと、前記電動モータの前記モータ回転力を減速して駆動力を駆動力伝達対象に伝達する減速伝達機構とを備えたモータ回転力伝達装置において、前記減速伝達機構は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の減速機構であるモータ回転力伝達装置。
【0018】
(5)上記(4)に記載のモータ回転力伝達装置において、前記減速伝達機構は、前記駆動力伝達対象としての差動機構に前記駆動力を伝達する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、第2の軸受への潤滑油量を増大させることができ、第2の軸受に対して潤滑油を十分に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置が搭載された車両の概略を説明するために示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置を説明するために示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置の減速伝達機構の要部を説明するために模式化して示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置の減速伝達機構における入力部材及び出力部材と第2の軸受とを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は四輪駆動車の概略を示す。図1に示すように、四輪駆動車101は、駆動源をエンジンとする前輪側の動力系、及び駆動源を電動モータとする後輪側の動力系が用いられ、モータ回転力伝達装置1,エンジン102,トランスアクスル103,一対の前輪104及び一対の後輪105を備えている。
【0023】
モータ回転力伝達装置1は、四輪駆動車101における後輪側の動力系に配置され、かつ四輪駆動車101の車体(図示せず)に支持されている。
【0024】
そして、モータ回転力伝達装置1は、電動モータ4(後述)のモータ回転力に基づく駆動力を一対の後輪105に伝達し得るように構成されている。これにより、電動モータ4のモータ回転力が減速伝達機構5及びリヤディファレンシャル3(共に後述)を介してリヤアクスルシャフト106に出力され、一対の後輪105が駆動される。モータ回転力伝達装置1等の詳細については後述する。
【0025】
エンジン102は、四輪駆動車101における前輪側の動力系に配置されている。これにより、エンジン102の駆動力がトランスアクスル103を介してフロントアクスルシャフト107に出力され、一対の前輪104が駆動される。
【0026】
(モータ回転力伝達装置1の全体構成)
図2はモータ回転力伝達装置の全体を示す。図2に示すように、モータ回転力伝達装置1は、リヤアクスルシャフト106(図1に示す)の軸線を回転軸線Oとするハウジング2と、モータ回転力に基づく駆動力を後輪105(図1に示す)に配分するリヤディファレンシャル3と、リヤディファレンシャル3を作動させるためのモータ回転力を発生させる電動モータ4と、電動モータ4のモータ回転力を減速して駆動力を駆動力伝達対象としてのリヤディファレンシャル3に伝達する減速伝達機構5とから大略構成されている。
【0027】
(ハウジング2の構成)
ハウジング2は、後述する自転力付与部材52の他、リヤディファレンシャル3を収容する第1のハウジングエレメント20、電動モータ4を収容する第2のハウジングエレメント21、及び第2のハウジングエレメント21の片側開口部(第1のハウジングエレメント20側の開口部とは反対側の開口部)を閉塞する第3のハウジングエレメント22を有し、車体に配置されている。
【0028】
第1のハウジングエレメント20は、ハウジング2の一方側(図2の左側)に配置され、全体が第2のハウジングエレメント21側に開口する段状の有底円筒部材によって形成されている。第1のハウジングエレメント20の底部には、リヤアクスルシャフト106(図1に示す)を挿通させるシャフト挿通孔20aが設けられている。第1のハウジングエレメント20の開口端面には、第2のハウジングエレメント21側に突出する円環状の凸部23が一体に設けられている。凸部23の外周面は、第1のハウジングエレメント20の最大外径よりも小さい外径をもち、かつ回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。第1のハウジングエレメント20の内周面は、リヤアクスルシャフト106の外周面との間にシャフト挿通孔20aを封止するシール部材24が介在して配置されている。
【0029】
第2のハウジングエレメント21は、ハウジング2の軸線方向中間部に配置され、全体が回転軸線Oの両方向に開口する無底円筒部材によって形成されている。第2のハウジングエレメント21の片側開口部(第1のハウジングエレメント20側の開口部)には、電動モータ4と減速伝達機構5との間に介在する段状の内フランジ21aが一体に設けられている。内フランジ21aの内周面には、レース取付用の円環部材25が円環状のスペーサ26を介して取り付けられている。第2のハウジングエレメント21の片側開口端面(第1のハウジングエレメント20側の開口端面)には、第1のハウジングエレメント20側に突出する円環状の凸部27が一体に設けられている。凸部27の外周面は、第2のハウジングエレメント21の最大外径よりも小さく、かつ凸部23の外径と略同一の外径をもち、回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。
【0030】
第3のハウジングエレメント22は、ハウジング2の他方側(図2の右側)に配置され、全体が第2のハウジングエレメント21側に開口する段状の有底円筒部材によって形成されている。第3のハウジングエレメント22の底部には、リヤアクスルシャフト106を挿通させるシャフト挿通孔22aが設けられている。シャフト挿通孔22aの内側開口周縁には、電動モータ4側に突出するステータ取付用の円筒部22bが一体に設けられている。第3のハウジングエレメント22の内周面は、リヤアクスルシャフト106の外周面との間にシャフト挿通孔22aを封止するシール部材28が介在して配置されている。
【0031】
(リヤディファレンシャル3の構成)
リヤディファレンシャル3は、デフケース30,ピニオンギヤシャフト31,一対のピニオンギヤ32及び一対のサイドギヤ33を有するベベルギヤ式の差動機構からなり、モータ回転力伝達装置1の一方側に配置されている。
【0032】
これにより、デフケース30の回転力がピニオンギヤシャフト31からピニオンギヤ32を介してサイドギヤ33に配分され、さらにリヤアクスルシャフト106(図1に示す)から左右の後輪105(図1に示す)に伝達される。
【0033】
一方、左右の後輪105間に駆動抵抗差が発生すると、デフケース30の回転力がピニオンギヤ32の自転によって左右の後輪105に差動配分される。
【0034】
デフケース30は、回転軸線O上に配置され、かつ第1のハウジングエレメント20に玉軸受34を介して、また電動モータ4のモータ軸(回転軸)42に玉軸受35を介してそれぞれ回転可能に支持されている。そして、デフケース30は、電動モータ4のモータ回転力に基づく駆動力を減速伝達機構5から受けて回転軸線Oの回りに回転するように構成されている。
【0035】
デフケース30には、差動機構部(ピニオンギヤシャフト31,ピニオンギヤ32及びサイドギヤ33)を収容する収容空間30a、及び収容空間30aに連通して左右のリヤアクスルシャフト106をそれぞれ挿通させる一対のシャフト挿通孔30bが設けられている。
【0036】
また、デフケース30には、減速伝達機構5に対向する円環状のフランジ30cが一体に設けられている。フランジ30cには、回転軸線Oの回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン取付孔300cが設けられている。
【0037】
ピニオンギヤシャフト31は、デフケース30の収容空間30aで回転軸線Oに直交する軸線L上に配置され、かつ軸線L回りの回転及び軸線L方向の移動がピン36によって規制されている。
【0038】
一対のピニオンギヤ32は、ピニオンギヤシャフト31に回転可能に支持され、かつデフケース30の収容空間30aに収容されている。
【0039】
一対のサイドギヤ33は、リヤアクスルシャフト106をスプライン嵌合によって連結するシャフト挿通孔33aを有し、デフケース30の収容空間30aに収容されている。そして、一対のサイドギヤ33は、そのギヤ軸を一対のピニオンギヤ32のギヤ軸に直交させ、一対のピニオンギヤ32に噛合するように構成されている。
【0040】
(電動モータ4の構成)
電動モータ4は、ステータ40,ロータ41及びモータ軸42を有し、回転軸線O上でリヤディファレンシャル3に減速伝達機構5を介して連結され、かつステータ40がECU(Electronic Control Unit:図示せず)に接続されている。そして、電動モータ4は、ステータ40がECUから制御信号を入力してリヤディファレンシャル3を作動させるためのモータ回転力をロータ41との間で発生させ、ロータ41をモータ軸42と共に回転させるように構成されている。
【0041】
ステータ40は、電動モータ4の外周側に配置され、かつ第2のハウジングエレメント21における内フランジ21aに取付ボルト43によって取り付けられている。
【0042】
ロータ41は、電動モータ4の内周側に配置され、かつモータ軸42の外周面に取り付けられている。
【0043】
モータ軸42は、回転軸線O上に配置され、かつ一方側端部が円環部材25の内周面に玉軸受44及びスリーブ45を介して、また他方側端部が第3のハウジングエレメント22の内周面に玉軸受46を介してそれぞれ回転可能に支持され、全体がリヤアクスルシャフト106(図1に示す)を挿通させる円筒状(中空)の軸部材によって形成されている。
【0044】
モータ軸42の一方側端部には、その軸線(回転軸線O)に偏心量δをもって偏心する軸線Oを中心軸線とする平面円形状の偏心部42a、及び回転軸線Oに偏心量δ(δ=δ=δ)をもって偏心する軸線Oを中心軸線とする平面円形状の偏心部42bが一体に設けられている。そして、一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとは、回転軸線Oの回りに等間隔(180°)をもって並列する位置に配置されている。すなわち、一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとは、軸線Oから回転軸線Oまでの距離と軸線Oから回転軸線Oまでの距離とを等しく、かつ軸線Oと軸線Oとの間の回転軸線O回りの距離を等しくするようにモータ軸42の外周囲に配置されている。また、偏心部42aと偏心部42bとは、回転軸線Oの方向に沿って並列する位置に配置されている。
【0045】
モータ軸42の他方側端部には、その外周面と円筒部22bの内周面との間に介在する回転角度検出器としてのレゾルバ47が配置されている。レゾルバ47は、ステータ470及びロータ471を有し、第3のハウジングエレメント22内に収容されている。ステータ470は円筒部22bの内周面に、ロータ471はモータ軸42の外周面にそれぞれ取り付けられている。
【0046】
モータ軸42の内周面には、その回転によってレゾルバ47側開口部(図2の右側)からリヤディファレンシャル3側開口部(図2の左側)に潤滑油を供給可能な螺旋状の凹溝42cが設けられている。
【0047】
(減速伝達機構5の構成)
図3は減速伝達機構を示す。図4は油供給路の一部を示す。図2及び3に示すように、減速伝達機構5は、減速部A及び潤滑油供給部Bを有し、リヤディファレンシャル3と電動モータ4との間に介在して配置されている。
【0048】
減速部Aは、一対の入力部材50・51,自転力付与部材52及び出力部材53を有し、電動モータ4のモータ回転力を減速して駆動力をリヤディファレンシャル3に伝達するように構成されている。
【0049】
一方の入力部材50は、軸線Oを中心軸線とする中心孔50aを有する外歯歯車からなり、他方の入力部材51のリヤディファレンシャル3側に配置され、かつ中心孔50aの内周面と偏心部42aとの間に第1の軸受(入力側の軸受)としての玉軸受(深溝玉軸受)54を介在させてモータ軸42に回転可能に支持されている。そして、一方の入力部材50は、電動モータ4からモータ回転力を受けて偏心量δをもつ矢印m,m方向の円運動(回転軸線O回りの公転運動)を行うように構成されている。玉軸受54は、その内外に配置された2つのレースとしての内輪540,外輪541、及び内輪540と外輪541との間で転動する転動体542を有する。
【0050】
一方の入力部材50には、軸線O回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン挿通孔(貫通孔)50bが設けられている。ピン挿通孔50bの孔径は、出力部材53の外径に第2の軸受としての針状ころ軸受55の外径を加えた寸法よりも大きい寸法に設定されている。一方の入力部材50の軸線Oを中心軸線とする外周面には、インボリュート歯形をもつ外歯50cが設けられている。外歯50cの歯数Zは例えばZ=195に設定されている。針状ころ軸受55の外径は、玉軸受54の外径よりも小さい寸法に設定されている。
【0051】
他方の入力部材51は、軸線Oを中心軸線とする中心孔51aを有する外歯歯車からなり、一方の入力部材50の電動モータ4側に配置され、かつ中心孔51aの内周面と偏心部42bとの間に第1の軸受(入力側の軸受)としての玉軸受56を介在させてモータ軸42に回転可能に支持されている。そして、他方の入力部材51は、電動モータ4からモータ回転力を受けて偏心量δをもつ矢印m,m方向の円運動(回転軸線O回りの公転運動)を行うように構成されている。玉軸受56は、その内外に配置された2つのレースとしての内輪560,外輪561、及び内輪560と外輪561との間で転動する転動体562を有する。
【0052】
他方の入力部材51には、軸線Oの回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン挿通孔(貫通孔)51bが設けられている。ピン挿通孔51bの孔径は、出力部材53の外径に第2の軸受としての針状ころ軸受57の外径を加えた寸法よりも大きい寸法に設定されている。他方の入力部材51の軸線Oを中心軸線とする外周面には、インボリュート歯形をもつ外歯51cが設けられている。外歯51cの歯数Z(Z=Z)は例えばZ=195に設定されている。針状ころ軸受57の外径は、玉軸受56の外径よりも小さい寸法に設定されている。
【0053】
自転力付与部材52は、回転軸線Oを中心軸線とする内歯歯車からなり、第1のハウジングエレメント20と第2のハウジングエレメント21との間に介在して配置され、全体が回転軸線Oの両方向に開口してハウジング2の一部を構成する無底円筒部材によって形成されている。そして、自転力付与部材52は、一対の入力部材50,51に噛合し、電動モータ4のモータ回転力を受けて公転する一方の入力部材50に矢印n方向の自転力を、また他方の入力部材51に矢印l方向の自転力をそれぞれ付与するように構成されている。
【0054】
自転力付与部材52の内周面には、凸部23の外周面に嵌合する第1の嵌合部52a、及び凸部27の外周面に嵌合する第2の嵌合部52bが回転軸線Oの方向に所定の間隔をもって設けられている。また、自転力付与部材52の内周面には、第1の嵌合部52aと第2の嵌合部52bとの間に介在して一方の入力部材50の外歯50c及び他方の入力部材51の外歯51cに噛合するインボリュート歯形の内歯52cが設けられている。内歯52cの歯数Zは例えばZ=208に設定されている。これにより、減速伝達機構5の減速比αがα=(Z−Z)/Zから算出される。
【0055】
出力部材53は、一方側端部にねじ部53aを有するとともに、他方側端部に頭部53bを有する複数(本実施の形態では6個)のボルトからなり、一方の入力部材50のピン挿通孔50b及び他方の入力部材51のピン挿通孔51bを挿通してデフケース30のピン取付孔300cにねじ部53aが取り付けられている。また、出力部材53は、頭部53bと他方の入力部材51との間に介在する円環状のスペーサ58を挿通して配置されている。そして、出力部材53は、自転力付与部材52によって付与された自転力を一対の入力部材50,51から受けてデフケース30にその回転力として出力するように構成されている。
【0056】
出力部材53の外周面であって、ねじ部53aと頭部53bとの間に介在する部位には、一方の入力部材50におけるピン挿通孔50bの内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受55が、また他方の入力部材51におけるピン挿通孔51bの内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受57がそれぞれ取り付けられている。
【0057】
針状ころ軸受55は、一方の入力部材50における複数のピン挿通孔50bの内周面に接触可能なレース550、及びこのレース550と出力部材53の外周面との間で転動する針状ころ551を有する。針状ころ軸受57は、他方の入力部材51における複数のピン挿通孔51bの内周面に接触可能なレース570、及びこのレース570と出力部材53の外周面との間で転動する針状ころ571を有する。
【0058】
一方、潤滑油供給部Bは、オイルタンク(図示せず),油導出路61・62,油導入路63,油供給路64及び油流出路65,66を有し、ハウジング2に配置されている。そして、潤滑油供給部Bは、モータ軸42の回転に伴い発生する遠心力によって油供給路64が玉軸受54,56等に供給するように構成されている。
【0059】
油導出路61,62は、ハウジング2内外に開口し、かつオイルタンクに管部材(図示せず)を介して連通し、回転軸線Oの回りに等間隔をもって第1のハウジングエレメント20に設けられている。そして、油導出路61,62は、ハウジング2内の潤滑油をハウジング2外に導出し、例えばポンプ等を用いてオイルタンクに向かって流動させるように構成されている。
【0060】
油導入路63は、オイルタンクから油供給路64に至る油路として機能し、ハウジング2外に一部を露出させて第3のハウジングエレメント22に設けられている。そして、油導入路63は、オイルタンクの潤滑油を流動させて油供給路64に導入するように構成されている。
【0061】
油供給路64は、第1の油供給路640,第2の油供給路641及び第3の油供給路642を有し、モータ軸42及び入力部材50,51に設けられている。
【0062】
第1の油供給路640は、モータ軸42の凹溝42cに連通して油導入路63から第2の油供給路641に至る油路として機能し、モータ軸42に設けられている。
【0063】
第2の油供給路641は、例えば油流路641a〜641dを有し、偏心部42a,42b及びモータ軸42に設けられている。油流路641a,641bはモータ軸42及び偏心部42aに、また油流路641c,641dはモータ軸42及び偏心部42bにそれぞれ設けられている。
【0064】
油流路641aはモータ軸42から玉軸受54に向かって潤滑油を流動させる流路によって、また油流路641bは油流路641aから玉軸受35,56に向かってそれぞれ潤滑油を流動させる流路によって形成されている。
【0065】
油流路641cはモータ軸42から玉軸受56に向かって潤滑油を流動させる流路によって、また油流路641dは油流路641cから玉軸受44,56に向かってそれぞれ潤滑油を流動させる流路によって形成されている。
【0066】
第3の油供給路642は、例えば油流路642a,642bを有し、入力部材50,51に設けられている。油流路642aが一方の入力部材50に、また油流路642bが他方の入力部材51にそれぞれ設けられている。
【0067】
油流路642aは中心孔50aから複数のピン挿通孔50bに至る流路によって、また油流路642bは中心孔51aから複数のピン挿通孔51bに至る流路によってそれぞれ形成されている。複数のピン挿通孔50bの内周面と針状ころ軸受55との間には、モータ軸42の回転に伴い発生する遠心力によって油流路642aを潤滑油が流動して供給される。複数のピン挿通孔51bの内周面と針状ころ軸受57との間には、モータ軸42の回転に伴い発生する遠心力によって油流路642bを潤滑油が流動して供給される。
【0068】
油流路642aは、複数のピン挿通孔50bを介して連通路642cに連通し、一方の入力部材50に設けられている。連通路642cは、複数のピン挿通孔50bのうち隣り合う2つのピン挿通孔に連通する油路によって形成されている。
【0069】
油流路642bは、複数のピン挿通孔51bを介して連通路642dに連通し、他方の入力部材51に設けられている。連通路642dは、複数のピン挿通孔51bのうち隣り合う2つのピン挿通孔に連通する油路によって形成されている。
【0070】
油流出路65は、一方の入力部材50の外周面及びピン挿通孔50bの内周面に開口し、一方の入力部材50に設けられている。そして、油流出路65は、出力部材53の回転に伴い発生するポンプ作用によってピン挿通孔50b内の潤滑油を一方の入力部材50の径方向外側に流動させて自転力付与部材52の内歯52cに、延いては内歯52cと一方の入力部材50の外歯50cとの間の噛合部に向かって流出するように構成されている。本実施の形態では、油流出路65が単一のピン挿通孔50bに連通する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、2個以上又は全てのピン挿通孔に油流出路を連通させてもよい。
【0071】
油流出路66は、他方の入力部材51の外周面及びピン挿通孔51bの内周面に開口し、一方の入力部材51に設けられている。そして、油流出路66は、出力部材53の回転に伴い発生するポンプ作用によってピン挿通孔51b内の潤滑油を他方の入力部材51の径方向外側に流動させて自転力付与部材52の内歯52cに、延いては内歯52cと他方の入力部材51の外歯51cとの間の噛合部に向かって流出するように構成されている。本実施の形態では、油流出路66が単一のピン挿通孔51bに連通する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、2個以上又は全てのピン挿通孔に油流出路を連通させてもよい。
【0072】
(モータ回転力伝達装置1の動作)
次に、本実施の形態に示すモータ回転力伝達装置の動作につき、図1〜図4を用いて説明する。
図2において、モータ回転力伝達装置1の電動モータ4に電力を供給して電動モータ4を駆動すると、この電動モータ4のモータ回転力がモータ軸42を介して減速伝達機構5に付与され、減速伝達機構5が作動する。
【0073】
このため、減速伝達機構5において、入力部材50,51が例えば図3に示す矢印m方向に偏心量δをもって円運動を行う。
【0074】
これに伴い、入力部材50が外歯50cを自転力付与部材52の内歯52cに噛合させながら軸線Oの回り(図3に示す矢印n方向)に、また入力部材51が外歯51cを自転力付与部材52の内歯52cに噛合させながら軸線Oの回り(図3に示す矢印l方向)にそれぞれ自転する。この場合、入力部材50,51の自転によってピン挿通孔50bの内周面が針状ころ軸受55のレース550に、またピン挿通孔51bの内周面が針状ころ軸受57のレース570にそれぞれ当接する。
【0075】
このため、出力部材53には入力部材50,51の公転運動が伝達されず、入力部材50,51の自転運動のみが伝達され、この自転運動による自転力が出力部材53からデフケース30にその回転力として出力される。
【0076】
これにより、ディファレンシャル3が作動し、電動モータ4のモータ回転力に基づく駆動力が図1におけるリヤアクスルシャフト106に配分され、左右の後輪105に伝達される。
【0077】
ここで、モータ回転力伝達装置1においては、電動モータ4(モータ軸42)が回転すると、この回転に伴い油導入路63から導入されたモータ軸42内(第1の油供給路640)の潤滑油が第2の油供給路641側に供給されるとともに、第1の油供給路640の潤滑油に遠心力が発生する。
【0078】
このため、第1の油供給路640から第2の油供給路641の油流路641a,641bを介して玉軸受35,54,56に潤滑油が供給され、さらに玉軸受54,56から第3の油供給路642の油流路642a,642bを介して複数のピン挿通孔50b内の針状ころ軸受55に潤滑油が供給される。
【0079】
同様に、第1の油供給路640から第2の油供給路641の油流路641c,641dを介して玉軸受44,54,56に、さらに玉軸受54,56から第3の油供給路642の油流路642a,642bを介して複数のピン挿通孔51b内の針状ころ軸受57に潤滑油が供給される。
【0080】
これにより、本実施の形態においては、モータ軸42の回転に伴い発生する遠心力によって潤滑油を針状ころ軸受55,57に供給し、これら針状ころ軸受55,57に対する潤滑油量を増大させることができる。この場合、複数のピン挿通孔50bのうち互いに隣り合う2つのピン挿通孔が連通路642cによって、また複数のピン挿通孔51bのうち互いに隣り合う2つのピン挿通孔が連通路642dによってそれぞれ連通しているため、これら互いに隣り合う2つのピン挿通孔間を潤滑油が各連通路を介して流動することが可能となり、各ピン挿通孔で余剰する潤滑油をその隣りのピン挿通孔に流動させることができる。
【0081】
一方、出力部材53の回転時には、この回転に伴い針状ころ軸受55,57の外輪の外周面と複数のピン挿通孔50b,51bの内周面との間に出力部材53の回転によるポンプ作用が生じる。
【0082】
このため、針状ころ軸受55(複数のピン挿通孔50b)に供給された潤滑油が油流出路65を流動して一方の入力部材50と自転力付与部材52との間に流出し、自転力付与部材52の内歯52cを、延いては自転力付与部材52の内歯52cと一方の入力部材50の外歯50cとの間の噛合部に供給される。
【0083】
同様に、針状ころ軸受57(複数のピン挿通孔51b内)に供給された潤滑油が油流出路66を流動して他方の入力部材51と自転力付与部材52との間に流出し、自転力付与部材52の内歯52cを、延いては自転力付与部材52の内歯52cと他方の入力部材51の外歯51cとの間の噛合部に供給される。
【0084】
これにより、本実施の形態においては、自転力付与部材52の内歯52cと入力部材50,51との間の噛合部を潤滑することができる。
【0085】
なお、上記実施の形態においては、入力部材50,51を矢印m方向に円運動させてモータ回転力伝達装置1を作動させる場合について説明したが、入力部材50,51を矢印m方向に円運動させてもモータ回転力伝達装置1を上記実施の形態と同様に作動させることができる。この場合、入力部材50の自転運動は矢印n方向に、また入力部材51の自転運動は矢印l方向にそれぞれ行われる。
【0086】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0087】
(1)針状ころ軸受55,57への潤滑油量を増大させることができ、針状ころ軸受55,57に対して潤滑油を十分に供給することができる。
【0088】
(2)自転力付与部材52の内歯52cと入力部材50,51の外歯50c,51cの間の噛合部に複数のピン挿通孔50b,51bから潤滑油を供給することができ、これら噛合部を潤滑することができる。
【0089】
以上、本発明の減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0090】
(1)上記実施の形態では、中心孔50aの軸線Oから回転軸線Oまでの距離と中心孔51aの軸線Oから回転軸線Oまでの距離とを等しく、かつ中心孔50aの軸線Oと中心孔51aの軸線Oとの間の回転軸線O回りの距離を等しくするように一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとがモータ軸42の外周面に設けられているとともに、電動モータ4のモータ軸42にその軸線(回転軸線O)回りに互いに等間隔(180°)をもって離間する部位で一対の入力部材50,51が配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、入力部材の個数は適宜変更することができる。
【0091】
すなわち、入力部材がn(n≧3)個の場合には、電動モータ(モータ軸)の軸線に直交する仮想面において、第1の偏心部の軸線,第2の偏心部の軸線,…,第nの偏心部の軸線がモータ軸の軸線回りの一方向に順次配置されているものとすると、各偏心部の軸線からモータ軸の軸線までの距離を等しく、かつ第1の偏心部,第2の偏心部,…,第nの偏心部のうち互いに隣り合う2つの偏心部の軸線とモータ軸の軸線とを結ぶ線分でつくる挟角を360°/nとするように各偏心部がモータ軸の外周囲に配置されるとともに、n個の入力部材がモータ軸にその軸線回りに360°/nの間隔をもって離間する部位で配置される。
【0092】
例えば、入力部材が3個の場合には、モータ軸の軸線に直交する仮想面において、第1の偏心部の軸線,第2の偏心部の軸線,第3の偏心部の軸線がモータ軸の軸線回りの一方向に順次配置されているものとすると、各偏心部の軸線からモータ軸の軸線までの距離を等しく、かつ第1の偏心部,第2の偏心部,第3の偏心部のうち互いに隣り合う2つの偏心部の軸線とモータ軸の軸線とを結ぶ線分でつくる挟角を120°とするように各偏心部がモータ軸の外周囲に配置されるとともに、3個の入力部材がモータ軸にその軸線回りに120°の間隔をもって離間する部位で配置される。
【0093】
(2)上記実施の形態では、駆動源としてエンジン102及び電動モータ4を併用した四輪駆動車101に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、電動モータのみを駆動源とした四輪駆動車又は二輪駆動車である電気自動車にも適用することができる。また、本発明は、エンジン,電動モータによる第1の駆動軸と電動モータによる第2の駆動軸とを有する四輪駆動車にも上記実施の形態と同様に適用可能である。
【0094】
(3)本実施の形態では、入力部材50,51に対する自転力の付与が外歯50c,51cと内歯52cとの噛合によって行われる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、特開2007−218407号公報(特許文献1)に示すように入力部材としての曲線板(公転部材)の曲線波形部と外ピンとの係合によって入力部材に対する自転力の付与を行うものでもよい。
【0095】
(4)上記実施の形態では、入力部材50,51の中心孔50a,51aの内周面と偏心部42a,42bの外周面との間にそれぞれ深溝玉軸受である玉軸受54,56を第1の軸受として用い、偏心部42a,42bに対して入力部材50,51が回転可能に支持されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、深溝玉軸受に換えて深溝玉軸受以外の玉軸受やころ軸受を第1の軸受として用いてもよい。このような玉軸受やころ軸受は、例えばアンギュラ玉軸受,針状ころ軸受,棒状ころ軸受,円筒ころ軸受,円錐ころ軸受,自動調心ころ軸受などが挙げられる。また、本発明の第1の軸受としては、転がり軸受に代えて滑り軸受を用いてもよい。
【0096】
(5)上記実施の形態では、出力部材53の外周面であって、ねじ部53aと頭部53bとの間に介在する部位には、入力部材50のピン挿通孔50bの内周面に接触可能な第2の軸受としての針状ころ軸受55が、また入力部材51のピン挿通孔51bの内周面に接触可能な第2の軸受としての針状ころ軸受57がそれぞれ取り付けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、針状ころ軸受に代えて針状ころ軸受以外のころ軸受や玉軸受を用いてもよい。このような玉軸受やころ軸受は、例えば深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸受,棒状ころ軸受,円錐ころ軸受,自動調心ころ軸受などが挙げられる。また、本発明の第2の軸受としては、転がり軸受に代えて滑り軸受を用いてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…モータ回転力伝達装置、2…ハウジング、20…第1のハウジングエレメント、20a…シャフト挿通孔、21…第2のハウジングエレメント、21a…内フランジ、22…第3のハウジングエレメント、22a…シャフト挿通孔、22b…円筒部、23…凸部、24…シール部材、25…円環部材、26…スペーサ、27…凸部、28…シール部材、3…リヤディファレンシャル、30…デフケース、30a…収容空間、30b…シャフト挿通孔、30c…フランジ、300c…ピン取付孔、31…ピニオンギヤシャフト、32…ピニオンギヤ、33…サイドギヤ、33a…シャフト連結孔、34,35…玉軸受、36…ピン、4…電動モータ、40…ステータ、41…ロータ、42…モータ軸、42a,42b…偏心部、42c…凹溝、43…取付ボルト、44…玉軸受、45…スリーブ、46…玉軸受、47…レゾルバ、470…ステータ、471…ロータ、5…減速伝達機構、50,51…入力部材、50a,51a…中心孔、50b,51b…ピン挿通孔、50c,51c…外歯、52…自転力付与部材、52a…第1の嵌合部、52b…第2の嵌合部、52c…内歯、53…出力部材、53a…ねじ部、53b…頭部、54…玉軸受、540…内輪、541…外輪、542…転動体、55…針状ころ軸受、550…レース、551…針状ころ、56…玉軸受、560…内輪、561…外輪、562…転動体、57…針状ころ軸受、570…レース、571…針状ころ、58…スペーサ、61,62…油導出路、63…油導入路、64…油供給路、640…第1の油供給路、641…第2の油供給路、641a〜641d…油流路、642…第3の油供給路、642a,642b…油流路、642c,642d…連通路、65,66…油流出路、101…四輪駆動車、102…エンジン、103…トランスアクスル、104…前輪、105…後輪、106…リヤアクスルシャフト、107…フロントアクスルシャフト、A…減速部、B…潤滑油供給部、O…回転軸線、L,O,O…軸線、δ,δ,δ…偏心量、C,C´…空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸線から偏心する軸線を中心軸線とする中心孔、及び前記中心軸線の回りに等間隔をもって並列する複数の貫通孔を有するとともに、前記中心孔の内周面と前記回転軸の外周面との間に第1の軸受を介在させ、前記回転軸の軸線と前記中心軸線との間の寸法に対応する偏心量をもって円運動を行う外歯歯車からなる入力部材と、
前記入力部材に噛合し、前記外歯歯車の歯数よりも大きい歯数をもつ内歯歯車からなる自転力付与部材と、
前記自転力付与部材によって前記入力部材に付与された自転力を受けて出力し、前記複数の貫通孔を挿通する出力部材とを備え、
前記出力部材は、前記複数の貫通孔の内周面に接触可能な部位に第2の軸受が取り付けられ、
前記入力部材は、前記中心孔から前記複数の貫通孔に至る油供給路を有し、前記回転軸の回転に伴い発生する遠心力によって前記油供給路が前記第2の軸受に潤滑油を供給する
減速機構。
【請求項2】
前記入力部材は、前記複数の貫通孔のうち互いに隣り合う2つの貫通孔に連通する連通路を有する請求項1に記載の減速機構。
【請求項3】
前記入力部材は、その外周面及び前記複数の貫通孔のうち少なくともいずれかの貫通孔の内周面に開口する油流出路を有する請求項1又は2に記載の減速機構。
【請求項4】
モータ回転力を発生させる電動モータと、
前記電動モータの前記モータ回転力を減速して駆動力を駆動力伝達対象に伝達する減速伝達機構とを備えたモータ回転力伝達装置において、
前記減速伝達機構は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減速機構である
モータ回転力伝達装置。
【請求項5】
前記減速伝達機構は、前記駆動力伝達対象としての差動機構に前記駆動力を伝達する請求項4に記載のモータ回転力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7443(P2013−7443A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140613(P2011−140613)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】