渦電流探傷センサ
【課題】磁性材の平板を検査する渦電流探傷試験装置の磁気ノイズを抑制し、ECT信号のS/N比を改善する。
【解決手段】検出コイル5は法線軸が試験体6の検査面(平面)に垂直となるように配置し、その上に、励磁コイル4は永久磁石3をコアとして法線軸が検査面に水平となるように配置する。励磁コイル4の縦横寸法は検出コイル5より十分に大きく構成される。永久磁石3の磁極(N/S)は検査面に向けられ、永久磁石3の磁場により、表層部の磁化方向を一様にする。
【解決手段】検出コイル5は法線軸が試験体6の検査面(平面)に垂直となるように配置し、その上に、励磁コイル4は永久磁石3をコアとして法線軸が検査面に水平となるように配置する。励磁コイル4の縦横寸法は検出コイル5より十分に大きく構成される。永久磁石3の磁極(N/S)は検査面に向けられ、永久磁石3の磁場により、表層部の磁化方向を一様にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷センサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントの熱交換器伝熱管等の鋼管を保守点検するために、渦電流探傷試験(Eddy Current Testing : ECT)が行われてきた。近年では、鋼管母材部だけでなく、溶接部の探傷技術としての開発が進められている。渦電流探傷試験では、検査箇所にセンサを近接させて機械的な走査が行われる。センサは励磁コイルと検出コイルで構成され、コイルの配置は検査対象・部位に応じて様々である。管形状の検査対象には、管の内側にコイルを挿入する内挿コイルあるいは管の外面にコイルを巻く貫通コイルと呼ばれるタイプのセンサが用いられている。平板形状の検査対象には、コイルの軸が平板に対して垂直となるように配置した上置コイルや一様渦電流センサが利用されている。
【0003】
特許文献1には、両端に磁極を有する永久磁石の回りに絶縁体を介してコイルを巻回した構造を持つECTセンサが開示されている。この永久磁石の磁場により管内表層部の磁化を一様にして磁気ノイズを低減している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−136509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、管形状の試験体を対象とする内層コイルあるいは貫通コイルを用いたタイプのECTセンサの構造である。しかしながら、磁性材の平板を検査対象とする場合、永久磁石(或いは電磁石)により磁気ノイズを抑制するセンサ構造は開発されておらず、管形状に適用するセンサ構造では対応できない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、平板を対象として磁気ノイズを抑制できる渦電流探傷センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、平板材の検査面に対し永久磁石または電磁石の磁極を向けて、検査範囲内の平板材の磁化方向が一様となるようにすることで達成される。
【0008】
本発明は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、前記励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が前記検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ前記励磁コイルのコアとして永久磁石を配置し、該永久磁石の磁極の向きを前記励磁コイルの法線軸方向となるように配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ、前記励磁コイルおよび前記検出コイルをアーチ状に覆う電磁石を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性材の平板を検査対象とする場合に、磁気ノイズを抑制できるのでECT信号のS/N比を改善する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、渦電流探傷センサの基本構成である一様渦電流センサについて説明する。図2は一様渦電流センサの構造を示している。一様渦電流センサは、フェライトコア等の磁性材の周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4とその下方に配置された平面型の検出コイル5で構成されている。
【0013】
図3は一様渦電流センサの渦電流分布を示している。検出コイル5の縦横寸法が励磁コイル4より相対的に小さいため、検出コイル5の直下の渦電流は大きさと向きの一様な分布となっている。
【0014】
励磁コイル4に任意周波数の交流電流を流すと、励磁コイル4と鎖交する磁束が発生する。この磁束が試験体6に侵入すると、電磁誘導により試験体6に渦電流8が生じる。渦電流8の分布は試験体6の導電率や透磁率等の材料特性に影響される。すなわち、欠陥(空隙)のある場所で、渦電流8の分布は大きく変化する。その変化分を検出コイル5との鎖交磁束量の変化として捕らえ、電気信号(ETC信号)に変換して観測する。
【0015】
渦電流探傷試験は上記の検査原理を用いるため、試験体6の物理状態が空間的にバラツキをもつ場合にもECT信号が観測される。検査対象が非磁性材である場合には材料特性のバラツキは無視できる程度に小さいが、炭素鋼等の磁性材を検査対象とした場合、試験体6の磁化状態にECT信号は強く影響される。これが、磁気ノイズと呼ばれる擾乱ノイズとなる。このため、本発明では検査面を永久磁石(または電磁石)により一様に磁化して磁気ノイズを低減する。
【0016】
本発明の最良の実施形態は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置である。検出コイルは法線軸が検査面に垂直となるように検査面側に配置し、励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように検出コイルの上に配置し、励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置する。また、検出コイルの法線軸からの視点で、励磁コイルの縦、横の寸法は検出コイルのそれより相対的に大きくされる。
(実施例1)
図4は本発明の実施例1に係る渦電流探傷システムの構成図である。渦電流探傷システムはECTセンサ14の位置制御駆動系と探傷制御系に大別できる。位置制御系は、ECTセンサ14を装着したXYZステージ12を位置制御回路11を介してコンピュータ10で制御する。XYZステージ12、位置制御回路11及びコンピュータ10は市販品で代用できる。探傷制御系では、ECTセンサ14と渦電流探傷器13が電気的に接続されており、コンピュータ10により制御する。コンピュータ10による制御の状態はモニタ9で監視される。
【0017】
次に、ECTセンサの構造を説明する。図1は実施例1によるECTセンサの構造を示している。永久磁石3をコアとしてその周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4と、その下方に配置された平面型の検出コイル5で構成されている。励磁コイル4の法線軸と検出コイル5の法線軸は垂直となる。励磁コイル4の縦横寸法は検出コイル5のそれより十分に大きく構成される。
【0018】
永久磁石3の磁束2の方向は平面型の検出コイル5の面に対して垂直な方向で、平面の試験体6に作用する。永久磁石3のN極とS極が反対向きの場合も同様である。永久磁石3及び励磁コイル4と検出コイル5は電磁的に遮蔽されたケース1に封入されており、励磁コイル4および検出コイル5の末端が外部入出力端子と接続されている。
【0019】
本渦電流探傷システムの動作について説明する。全ての制御は、モニタ9で状態を監視して、コンピュータ10で設定を変更する。コンピュータ10での設定情報(XYZ移動距離と移動速度等)が位置制御回路11に送信され、位置制御回路はその情報をもとにXYZステージ12を制御し、各方向にステージが移動する。探傷制御系においては、コンピュータ10での設定情報(送信周波数や電圧等)が渦電流探傷器13に送信される。渦電流探傷器13からECTセンサ14の励磁コイル4の外部入力端子に設定周波数の電圧が印加される。ECTセンサ14の検出コイル5の外部出力端子からの信号電圧は渦電流探傷器13に送られる。渦電流探傷器13は、コンピュータ10による設定情報(位相や利得等)をもとに信号処理を行い、デジタル信号(ECT信号)としてコンピュータ10に送信する。ECT信号はモニタ9で観測される。上記の位置制御系及び探傷制御系の制御は時間的に並行処理され、各移動位置でのECT信号がモニタされる。
【0020】
本実施例のECTセンサによる試験結果を説明する。図5は検査対象とする試験体の説明図である。SUS304材を母材とする試験体上にクラッド材16で肉盛溶接したものである。母材17にはスリット15が図示のように配置してある。この試験体上を従来の渦電流センサ及び本発明の一様渦電流センサで走査し、それぞれのECT信号を観測した。走査範囲は80mm×100mmである。
【0021】
図6に従来のECTセンサによるECT信号、図7に本実施例によるECT信号を示す。図6では、磁気ノイズの影響が大きくスリット15によるECT信号は明瞭には観測できなかった。一方、図7では磁気ノイズが抑制され、スリット15からのECT信号の観測が可能になっている。
(実施例2)
実施例1にあっては、永久磁石3の周囲に励磁コイル4を巻きつけた構造を持つ一様渦電流センサであったが、他の配置であってもよい。
【0022】
図8は実施例2によるECTセンサの構造を示している。空芯の励磁コイル4の上方に永久磁石3を配置し、励磁コイル4の下方には平面型の検出コイル5を配置している。永久磁石3による磁束2の方向は平面型の検出コイル5に対して垂直な方向で、N極とS極が反対向きとなる場合も同様である。永久磁石3、励磁コイル4及び検出コイル5は電磁的に遮蔽されたケース1に封入されている。その他の構成や作用は実施例1と同様である。
【0023】
図8の構成においても、永久磁石3による磁束2は試験体6内に浸透している。その結果、実施例1と同様の作用効果を発揮し、磁気ノイズが抑制できる。
(実施例3)
図9は実施例1を変形した実施例3によるECTセンサの構造を示す。永久磁石3の磁極の向きを励磁コイル4の軸方向とし、永久磁石3の両端部に磁性材のヨーク20を取り付け、試験体6との間に磁路を構成している。その他の構成や作用は実施例1と同様である。
【0024】
図9の構成によれば、永久磁石3の磁束2はヨーク20を介して試験体6内に浸透するので、浸透する磁束の効率が高い。その結果、実施例1よりも小容量の永久磁石でも同様の作用効果を発揮でき、ECTセンサを小型化できる。
(実施例4)
実施例1−3にあっては、永久磁石を用いたECTセンサであったが、電磁石を用いてもよい。図10は実施例4によるECTセンサの構造を示す。コア7の周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4とその下方に配置された矩形平面型の検出コイル5で構成された一様渦電流センサの上方に、馬蹄形状の電磁石18を配置している。この場合も電磁石18による磁束2の方向は試験体6の面に対して水平な方向で、磁極が反対向きとなる場合も同様である。
【0025】
図11は実施例4における渦電流探傷システムの構成を示す。実施例4では電磁石駆動装置19が追加され、センサの外部入出力端子を介して電磁石18の配線と接続されている。電磁石駆動装置19により電力が供給されると、電磁石18より磁束が発生する。電磁石18による磁束は図10のように試験体6の表層部に浸透して、磁気ノイズが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1による渦電流探傷センサの構造図。
【図2】一様渦電流センサの構造図。
【図3】一様渦電流センサによる渦電流分布を表す模式図。
【図4】実施例1による渦電流探傷システムの構成を示すブロック図。
【図5】試験体の構成図。
【図6】従来の渦電流探傷センサによる測定結果を表す観測図。
【図7】実施例1の渦電流探傷センサによる測定結果を表す観測図。
【図8】本発明の実施例2による渦電流探傷センサの構造図。
【図9】本発明の実施例3による渦電流探傷センサの構造図。
【図10】本発明の実施例4による渦電流探傷センサの構造図。
【図11】実施例4による渦電流探傷システムの構成を表すブロック図。
【符号の説明】
【0027】
1…ケース、2…磁束、3…永久磁石、4…励磁コイル、5…検出コイル、6…試験体、7…コア、8…渦電流、9…モニタ、10…コンピュータ、11…位置制御回路、12…XYZステージ、13…渦電流探傷器、14…ECTセンサ、15…スリット、16…クラッド材、17…母材、18…電磁石、19…電磁石駆動装置、20…ヨーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷センサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントの熱交換器伝熱管等の鋼管を保守点検するために、渦電流探傷試験(Eddy Current Testing : ECT)が行われてきた。近年では、鋼管母材部だけでなく、溶接部の探傷技術としての開発が進められている。渦電流探傷試験では、検査箇所にセンサを近接させて機械的な走査が行われる。センサは励磁コイルと検出コイルで構成され、コイルの配置は検査対象・部位に応じて様々である。管形状の検査対象には、管の内側にコイルを挿入する内挿コイルあるいは管の外面にコイルを巻く貫通コイルと呼ばれるタイプのセンサが用いられている。平板形状の検査対象には、コイルの軸が平板に対して垂直となるように配置した上置コイルや一様渦電流センサが利用されている。
【0003】
特許文献1には、両端に磁極を有する永久磁石の回りに絶縁体を介してコイルを巻回した構造を持つECTセンサが開示されている。この永久磁石の磁場により管内表層部の磁化を一様にして磁気ノイズを低減している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−136509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、管形状の試験体を対象とする内層コイルあるいは貫通コイルを用いたタイプのECTセンサの構造である。しかしながら、磁性材の平板を検査対象とする場合、永久磁石(或いは電磁石)により磁気ノイズを抑制するセンサ構造は開発されておらず、管形状に適用するセンサ構造では対応できない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、平板を対象として磁気ノイズを抑制できる渦電流探傷センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、平板材の検査面に対し永久磁石または電磁石の磁極を向けて、検査範囲内の平板材の磁化方向が一様となるようにすることで達成される。
【0008】
本発明は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、前記励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が前記検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ前記励磁コイルのコアとして永久磁石を配置し、該永久磁石の磁極の向きを前記励磁コイルの法線軸方向となるように配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ、前記励磁コイルおよび前記検出コイルをアーチ状に覆う電磁石を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性材の平板を検査対象とする場合に、磁気ノイズを抑制できるのでECT信号のS/N比を改善する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、渦電流探傷センサの基本構成である一様渦電流センサについて説明する。図2は一様渦電流センサの構造を示している。一様渦電流センサは、フェライトコア等の磁性材の周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4とその下方に配置された平面型の検出コイル5で構成されている。
【0013】
図3は一様渦電流センサの渦電流分布を示している。検出コイル5の縦横寸法が励磁コイル4より相対的に小さいため、検出コイル5の直下の渦電流は大きさと向きの一様な分布となっている。
【0014】
励磁コイル4に任意周波数の交流電流を流すと、励磁コイル4と鎖交する磁束が発生する。この磁束が試験体6に侵入すると、電磁誘導により試験体6に渦電流8が生じる。渦電流8の分布は試験体6の導電率や透磁率等の材料特性に影響される。すなわち、欠陥(空隙)のある場所で、渦電流8の分布は大きく変化する。その変化分を検出コイル5との鎖交磁束量の変化として捕らえ、電気信号(ETC信号)に変換して観測する。
【0015】
渦電流探傷試験は上記の検査原理を用いるため、試験体6の物理状態が空間的にバラツキをもつ場合にもECT信号が観測される。検査対象が非磁性材である場合には材料特性のバラツキは無視できる程度に小さいが、炭素鋼等の磁性材を検査対象とした場合、試験体6の磁化状態にECT信号は強く影響される。これが、磁気ノイズと呼ばれる擾乱ノイズとなる。このため、本発明では検査面を永久磁石(または電磁石)により一様に磁化して磁気ノイズを低減する。
【0016】
本発明の最良の実施形態は、励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置である。検出コイルは法線軸が検査面に垂直となるように検査面側に配置し、励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように検出コイルの上に配置し、励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置する。また、検出コイルの法線軸からの視点で、励磁コイルの縦、横の寸法は検出コイルのそれより相対的に大きくされる。
(実施例1)
図4は本発明の実施例1に係る渦電流探傷システムの構成図である。渦電流探傷システムはECTセンサ14の位置制御駆動系と探傷制御系に大別できる。位置制御系は、ECTセンサ14を装着したXYZステージ12を位置制御回路11を介してコンピュータ10で制御する。XYZステージ12、位置制御回路11及びコンピュータ10は市販品で代用できる。探傷制御系では、ECTセンサ14と渦電流探傷器13が電気的に接続されており、コンピュータ10により制御する。コンピュータ10による制御の状態はモニタ9で監視される。
【0017】
次に、ECTセンサの構造を説明する。図1は実施例1によるECTセンサの構造を示している。永久磁石3をコアとしてその周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4と、その下方に配置された平面型の検出コイル5で構成されている。励磁コイル4の法線軸と検出コイル5の法線軸は垂直となる。励磁コイル4の縦横寸法は検出コイル5のそれより十分に大きく構成される。
【0018】
永久磁石3の磁束2の方向は平面型の検出コイル5の面に対して垂直な方向で、平面の試験体6に作用する。永久磁石3のN極とS極が反対向きの場合も同様である。永久磁石3及び励磁コイル4と検出コイル5は電磁的に遮蔽されたケース1に封入されており、励磁コイル4および検出コイル5の末端が外部入出力端子と接続されている。
【0019】
本渦電流探傷システムの動作について説明する。全ての制御は、モニタ9で状態を監視して、コンピュータ10で設定を変更する。コンピュータ10での設定情報(XYZ移動距離と移動速度等)が位置制御回路11に送信され、位置制御回路はその情報をもとにXYZステージ12を制御し、各方向にステージが移動する。探傷制御系においては、コンピュータ10での設定情報(送信周波数や電圧等)が渦電流探傷器13に送信される。渦電流探傷器13からECTセンサ14の励磁コイル4の外部入力端子に設定周波数の電圧が印加される。ECTセンサ14の検出コイル5の外部出力端子からの信号電圧は渦電流探傷器13に送られる。渦電流探傷器13は、コンピュータ10による設定情報(位相や利得等)をもとに信号処理を行い、デジタル信号(ECT信号)としてコンピュータ10に送信する。ECT信号はモニタ9で観測される。上記の位置制御系及び探傷制御系の制御は時間的に並行処理され、各移動位置でのECT信号がモニタされる。
【0020】
本実施例のECTセンサによる試験結果を説明する。図5は検査対象とする試験体の説明図である。SUS304材を母材とする試験体上にクラッド材16で肉盛溶接したものである。母材17にはスリット15が図示のように配置してある。この試験体上を従来の渦電流センサ及び本発明の一様渦電流センサで走査し、それぞれのECT信号を観測した。走査範囲は80mm×100mmである。
【0021】
図6に従来のECTセンサによるECT信号、図7に本実施例によるECT信号を示す。図6では、磁気ノイズの影響が大きくスリット15によるECT信号は明瞭には観測できなかった。一方、図7では磁気ノイズが抑制され、スリット15からのECT信号の観測が可能になっている。
(実施例2)
実施例1にあっては、永久磁石3の周囲に励磁コイル4を巻きつけた構造を持つ一様渦電流センサであったが、他の配置であってもよい。
【0022】
図8は実施例2によるECTセンサの構造を示している。空芯の励磁コイル4の上方に永久磁石3を配置し、励磁コイル4の下方には平面型の検出コイル5を配置している。永久磁石3による磁束2の方向は平面型の検出コイル5に対して垂直な方向で、N極とS極が反対向きとなる場合も同様である。永久磁石3、励磁コイル4及び検出コイル5は電磁的に遮蔽されたケース1に封入されている。その他の構成や作用は実施例1と同様である。
【0023】
図8の構成においても、永久磁石3による磁束2は試験体6内に浸透している。その結果、実施例1と同様の作用効果を発揮し、磁気ノイズが抑制できる。
(実施例3)
図9は実施例1を変形した実施例3によるECTセンサの構造を示す。永久磁石3の磁極の向きを励磁コイル4の軸方向とし、永久磁石3の両端部に磁性材のヨーク20を取り付け、試験体6との間に磁路を構成している。その他の構成や作用は実施例1と同様である。
【0024】
図9の構成によれば、永久磁石3の磁束2はヨーク20を介して試験体6内に浸透するので、浸透する磁束の効率が高い。その結果、実施例1よりも小容量の永久磁石でも同様の作用効果を発揮でき、ECTセンサを小型化できる。
(実施例4)
実施例1−3にあっては、永久磁石を用いたECTセンサであったが、電磁石を用いてもよい。図10は実施例4によるECTセンサの構造を示す。コア7の周りに導線を縦巻きにした励磁コイル4とその下方に配置された矩形平面型の検出コイル5で構成された一様渦電流センサの上方に、馬蹄形状の電磁石18を配置している。この場合も電磁石18による磁束2の方向は試験体6の面に対して水平な方向で、磁極が反対向きとなる場合も同様である。
【0025】
図11は実施例4における渦電流探傷システムの構成を示す。実施例4では電磁石駆動装置19が追加され、センサの外部入出力端子を介して電磁石18の配線と接続されている。電磁石駆動装置19により電力が供給されると、電磁石18より磁束が発生する。電磁石18による磁束は図10のように試験体6の表層部に浸透して、磁気ノイズが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1による渦電流探傷センサの構造図。
【図2】一様渦電流センサの構造図。
【図3】一様渦電流センサによる渦電流分布を表す模式図。
【図4】実施例1による渦電流探傷システムの構成を示すブロック図。
【図5】試験体の構成図。
【図6】従来の渦電流探傷センサによる測定結果を表す観測図。
【図7】実施例1の渦電流探傷センサによる測定結果を表す観測図。
【図8】本発明の実施例2による渦電流探傷センサの構造図。
【図9】本発明の実施例3による渦電流探傷センサの構造図。
【図10】本発明の実施例4による渦電流探傷センサの構造図。
【図11】実施例4による渦電流探傷システムの構成を表すブロック図。
【符号の説明】
【0027】
1…ケース、2…磁束、3…永久磁石、4…励磁コイル、5…検出コイル、6…試験体、7…コア、8…渦電流、9…モニタ、10…コンピュータ、11…位置制御回路、12…XYZステージ、13…渦電流探傷器、14…ECTセンサ、15…スリット、16…クラッド材、17…母材、18…電磁石、19…電磁石駆動装置、20…ヨーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、前記励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項2】
請求項1において、前記検出コイルの法線軸からの視点で、前記励磁コイルの縦、横の寸法は前記検出コイルのそれより相対的に大きいことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記励磁コイルは前記永久磁石をコアとして導線を縦巻きにした構造を持つことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項4】
請求項3において、前記永久磁石の磁極の向きを前記検査面に対して垂直方向となるように配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項5】
請求項1または2において、前記励磁コイルは空心で導線を縦巻きにして構成され、該励磁コイルの上に前記永久磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項6】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が前記検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ前記励磁コイルのコアとして永久磁石を配置し、該永久磁石の磁極の向きを前記励磁コイルの法線軸方向となるように配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項7】
請求項6において、前記永久磁石の端部に前記検査面との磁路を構成する磁性材のヨークを設けたことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項8】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ、前記励磁コイルおよび前記検出コイルをアーチ状に覆う電磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項1】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、前記励磁コイルの法線軸と平行に永久磁石または電磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項2】
請求項1において、前記検出コイルの法線軸からの視点で、前記励磁コイルの縦、横の寸法は前記検出コイルのそれより相対的に大きいことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記励磁コイルは前記永久磁石をコアとして導線を縦巻きにした構造を持つことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項4】
請求項3において、前記永久磁石の磁極の向きを前記検査面に対して垂直方向となるように配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項5】
請求項1または2において、前記励磁コイルは空心で導線を縦巻きにして構成され、該励磁コイルの上に前記永久磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項6】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が前記検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ前記励磁コイルのコアとして永久磁石を配置し、該永久磁石の磁極の向きを前記励磁コイルの法線軸方向となるように配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項7】
請求項6において、前記永久磁石の端部に前記検査面との磁路を構成する磁性材のヨークを設けたことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【請求項8】
励磁コイルと検出コイルを有し、平面の検査面の欠陥を検査する渦電流探傷装置において、
前記検出コイルは法線軸が前記検査面に垂直となるように検査面側に配置し、前記励磁コイルは法線軸が検査面と水平となるように前記検出コイルの上に配置し、かつ、前記励磁コイルおよび前記検出コイルをアーチ状に覆う電磁石を配置したことを特徴とする渦電流探傷センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−183197(P2007−183197A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2207(P2006−2207)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月13日〜15日 社団法人日本原子力学会主催の「2005年秋の大会」において文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度革新的実用原子力技術開発提案公募事業、産業活力再生特別措置法30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(594132035)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月13日〜15日 社団法人日本原子力学会主催の「2005年秋の大会」において文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度革新的実用原子力技術開発提案公募事業、産業活力再生特別措置法30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(594132035)
【Fターム(参考)】
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