説明

温湿度調整装置

【課題】吐出された温度調整された空気の湿度が未調整の従来の温度調整装置の課題を解決する。
【解決手段】圧縮機18で圧縮されて加熱された熱媒体を、加熱器14を具備する加熱回路側と、自動膨張弁28で断熱膨張されて冷却された熱媒体が供給される冷却器16を具備する冷却回路側と、ヒートポンプ手段とを備えた温湿度調整装置であって、加熱回路側と冷却回路側とに分配する分配する二方弁20a,20bを制御し、温湿度調整対象の空気を目標温度に調整する温度調整制御部22と、気体流路10内に配設した加熱器14及び冷却器16を通過した空気を目標湿度に調整するように、二流体ノズル15から噴霧する噴霧水量を制御し、且つ二流体ノズル15の飽和効率を超える水分量を供給するとき、二流体ノズル15と水蒸気供給装置60とを併用し、二流体ノズル15からの噴霧水量を飽和効率以下に抑制すると共に、不足する水分量を水蒸気供給手段60によって補うように制御する湿度制御部22とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温湿度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体装置の製造工程等の精密加工分野では、その殆どが温度及び湿度が調整されたクリーンルーム内に設置されている。
しかし、近年、精密加工分野でも、従来よりも更に加工精度の高い精密加工等が要求される工程が出現しつつある。
かかる高い精密加工等が要求される工程では、通常、クリーンルームの温度変化よりも更に小さな温度変化の環境であることが要求される。このため、高い精密加工等が要求される工程は、精密な温度管理がなされている空間ユニット内に設けられる。
この様な空間ユニットの温度調整に用いられる温度調整装置として、例えば下記特許文献1には、図9に示す温度調整装置が提案されている。
図9に示す温度調整装置は、圧縮機100で圧縮されて加熱された高温の熱媒体の一部が冷却器102に供給される加熱流路と、高温の熱媒体の残余部が凝縮器104で冷却されてから第1膨張弁106で断熱的に膨張して更に冷却されて加熱器108に供給される冷却流路とが設けられ、ファン112によって空気流路110内に吸引された温度調整対象の空気が冷却器102と加熱器108とを通過して所定温度に調整されるように、高温の熱媒体が加熱流路と冷却流路とに分配され、且つ加熱流路と冷却流路との各々を通過した熱媒体が圧縮機100に再供給される温度調整装置である。
この温度調整装置では、圧縮機100から吐出された高温の熱媒体の一部を加熱流路側に分配すると共に、高温の熱媒体の残余部を冷却流路側に分配し、且つ加熱流路と冷却流路とに分配される高温の熱媒体の分配比率を変更可能な比例三方弁114と、加熱流路の加熱能力が向上するように、冷却器102で熱を放出して冷却されてから第2膨張弁116で断熱的に膨張されて更に冷却された熱媒体が、外部熱源である水から吸熱する吸熱器118を具備するヒートポンプ手段と、比例三方弁114を制御し、加熱流路と冷却流路とに分配される高温の熱媒体の分配比率を調整して、冷却器102と加熱器108とを通過する温度調整対象の空気を所定温度に制御する制御部120とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/078525号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示す温度調整装置では、空気流路110から吐出される空気の温度を目標温度に対して±0.1℃の精度で制御でき、省エネルギーも図ることができる。
ところで、図9に示す温度調整装置では、温度調整対象の空気が冷却器102を通過するため、温度調整装置から空気流路110から吐出される空気は、温度調整装置に吸引された空気よりも除湿されている。
しかし、温度調整装置から吐出される空気の湿度は未調整である。このため、温度調整装置から吐出される空気の湿度には、バラツキが存在する。
そこで、本発明の課題は、吐出された温度調整された空気の湿度が未調整の従来の温度調整装置の課題を解決し、温度と湿度とが調整された空気を吐出できる温湿度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、冷却器102と加熱器108との間に、水を圧縮空気によって噴霧する水噴霧ノズルを設けた温湿度調整装置によれば、温度調整された空気を所定湿度に調湿できることを知った。
しかしながら、冷却器102と加熱器108とは、一台の圧縮機100から供給される熱媒体によって冷却・加熱されており、常に、冷却器102に熱媒体の一部を供給することが必要である。
従って、加熱器108の加熱能力には、制限が存在するため、外気温が低く且つ乾燥している冬季等には、水噴霧ノズルから噴霧した噴霧水の全量が蒸発できず、空気出口のダクト近傍に水滴が発生し、吐出する空気を所定湿度に調整できないことが判明した。
かかる現象は、水噴霧ノズルから噴霧した噴霧水量の全量が、加熱器108からの熱によって蒸発できる飽和効率を超えていることに起因する。
このため、本発明者らは、湿度調整対象の空気を所定湿度に調湿する際に、水噴射ノズルの飽和効率を超えた水分量が必要な場合には、水噴射ノズルと水蒸気発生装置とを併用することによって、水噴射ノズルからの噴霧水量を飽和効率以下に抑制しつつ、空気を所定湿度に調湿でき、且つ空気出口のダクト近傍に水滴が発生することを防止できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決する手段として、圧縮機で圧縮されて加熱された高温の第1熱媒体の一部が加熱手段に供給される加熱流路と、前記高温の第1熱媒体の残余部が凝縮手段で冷却されてから第1膨張手段で断熱的に膨張して更に冷却されて冷却手段に供給される冷却流路と、空気入口から吸引されて前記加熱手段及び冷却手段を通過する空気を所定の温度に調整するように、前記圧縮機から吐出された高温の第1熱媒体の一部を前記加熱流路側に分配すると共に、前記高温の第1熱媒体の残余部を冷却流路側に分配し、且つ前記加熱流と冷却流路とに分配される高温の第1熱媒体の分配比率を変更可能な分配手段と、前記加熱流路の加熱能力が向上するように、前記加熱手段で熱を放出して冷却されてから第2膨張手段で断熱的に膨張されて更に冷却された第1熱媒体が、外部熱源である第2熱媒体から吸熱する吸熱手段を具備するヒートポンプ手段と、前記加熱手段及び冷却手段を通過して空気出口から吐出される空気を所定湿度に調湿する調湿手段とが設けられ、且つ前記加熱流路、冷却流路及びヒートポンプ手段の各々を通過した第1熱媒体が圧縮機に再供給される温湿度調整装置であって、前記分配手段を制御し、前記加熱流路と冷却流路とに分配される高温の第1熱媒体の分配比率を調整して、前記加熱手段と冷却手段とを通過する温度調整対象の空気を所定温度に制御する温度制御部と、前記調湿手段には、湿度調整対象の空気に対し、水を噴霧して加湿する水噴霧手段と水蒸気を供給して加湿する水蒸気供給手段とが設けられ、前記加熱手段及び冷却手段を通過した空気を所定湿度に調湿するように前記水噴霧手段を制御し、且つ前記水噴霧手段の飽和効率を超える水分量を供給して調湿するとき、前記水噴霧手段と水蒸気供給手段とを併用し、前記水噴霧手段からの噴霧水量を前記飽和効率以下に抑制すると共に、不足する水分量を前記水蒸気供給手段によって補うように、前記水噴霧手段及び水蒸気供給手段を制御する湿度制御部とが設けられている温湿度調整装置を提供できる。
【0007】
本発明者らが提供した課題を解決する手段において、下記の好ましい態様を上げることができる。
水噴霧手段及び水蒸気供給手段として、水を圧縮空気によって噴霧する水噴霧ノズル及び加熱ヒータによって水を加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生装置を用い、前記水噴霧ノズルから供給する噴霧水量が飽和効率の近傍に到達したとき、前記水蒸気発生装置の加熱ヒータによる水の予熱を開始するように、前記水蒸気発生装置を温度制御部によって制御することにより、水噴霧ノズルから供給する噴霧水量が飽和効率に到達したとき、直ちに水蒸気発生装置から水蒸気を発生させることができる。
また、温湿度調整対象の空気の入口側から冷却手段、水噴霧手段、加熱手段及び水蒸気発生手段の順序で設けることによって、水噴霧手段からの水分と水蒸気発生手段からの水分とを充分に拡散混合し、空気の湿度の偏りを解消して均一化できるため、空気の温湿度を精度よく調整できる。
この水蒸気発生手段としては、浅容器内に貯留された水を電気ヒータによって加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生装置であって、前記水蒸気発生装置を、冷却手段、水噴霧手段及び加熱手段を通過した空気が水蒸気を発生する水面に沿って流れる位置に載置することによって、空気と水蒸気とを充分に接触できる。
更に、第1膨張手段に自動膨張弁を用い、冷却手段に供給する熱媒温度と圧縮機の過熱度とが所定範囲となるように、前記自動膨張弁の開度を制御する膨張弁制御部とを設けることによって、圧縮機の安定運転を図り且つ冷却器の着霜を防止して、温湿度調整対象の空気の温度及び湿度を所望値に調整できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らが提案した温湿度調整装置によれば、水噴霧手段の飽和効率を超える水分量を供給することが必要となったとき、水噴霧手段と水蒸気発生手段とを併用する。このため、水噴霧手段から供給される噴霧水量を全量が蒸発できる飽和効率以下に抑制しつつ、不足する水分量を水蒸気発生手段によって補うことによって、吐出する空気を所定湿度に調湿できる。
更に、かかる温湿度調整装置には、ヒートポンプ手段が設けられており、加熱手段の加熱能力を向上できる。
尚、水蒸気発生手段は、水噴霧手段の飽和効率を超える水分量を供給することが必要となったとき、すなわち加湿量が不足するときのみに用いるため、常時、水蒸気発生手段を用いる場合に比較して、その省エネルギーを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明者らが提案した温湿度調整装置の一例について、その概略を説明する説明図である。
【図2】図1に示す温湿度調整装置の概略図である。
【図3】図2に示すコントロール部38を説明するブロック図である。
【図4】図2に示す二方弁20a,20bの流量特性を示すグラフである。
【図5】図1及び図2に示す水蒸気発生装置60による効果を説明するためのグラフである。
【図6】図2に示す制水弁40の内部構造を説明する概略断面図である。
【図7】図2に示す加熱器14、冷却器16及び二流体ノズル15の配置を説明する説明図である。
【図8】本発明者らが提案した温湿度調整装置の他の例についての概略図である。
【図9】従来の温度調整装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らが提案した温湿度調整装置の一例を説明する概略図を図1に示す。図1に示す温湿度調整装置では、空気流路10内に、空気入口10aから空気出口10bの方向に、冷却手段としての冷却器16、水噴霧手段としての二流体ノズル15、加熱手段としての加熱器14、水蒸気発生手段としての水蒸気発生装置60及びファン12が順次設けられている。かかる空気流路10の空気出口10bの外側には、吐出する空気の温度と湿度とを測定する温度センサー24と湿度センサー29とが設けられている。
図1に示す二流体ノズル15には、圧縮空気と水とが供給され、冷却器16と加熱器14との間に、噴霧水を供給する。
また、水蒸気発生装置60は、浅容器62内に貯留された水を電気ヒータ64によって70〜95℃程度に加熱して水蒸気を発生させる。かかる水蒸気発生装置60は、冷却器16、二流体ノズル15及び加熱器14を通過した空気が水蒸気を発生する水面に沿って流れる位置に載置する。
更に、図1に示す様に、加熱器14の出側に誘導プレート14aを設け、加熱器14を通過した空気流を、水蒸気発生装置60の水蒸気が発生する水面に沿って流れるように誘導することが好ましい。
【0011】
図1に示す温湿度調整装置の構成を図2に示す。図2に示す温湿度調整装置には、ファン12によって温湿度調整対象の空気を空気入口から吸い込んだ空気流を空気出口から吐出する空気流路10が設けられている。かかる空気流路10内には、加熱流路を形成する加熱器14と、冷却流路を形成する冷却器16とが設けられている。この加熱器14と冷却器16とには、空気流路10内にファン12によって空気入口から吸込んだ温湿度調整対象の空気が通過する。
加熱器14及び冷却器16には、例えばプロパン、イソブタンやシクロペンタン等の炭化水素、フロン類、アンモニア、炭酸ガス等の第1熱媒体が供給される。かかる第1熱媒体の蒸発・液化によって、加熱器14及び冷却器16を通過する空気流を加熱・冷却して所定の温度に調整する。
この様な第1熱媒体は、圧縮機18によって圧縮・加熱されて高温(例えば70℃)の気体状となって吐出される。圧縮機18から吐出された高温の第1熱媒体を、分配手段として二方弁20a,20bによって、加熱器14が設けられた加熱流路側と冷却器16が設けられた冷却流路側とに分配される。
【0012】
二方弁20a,20bによって加熱流路側に分配された高温の第1熱媒体は、加熱器14に直接供給され、空気流路10内に吸引されて冷却器16で冷却された空気流を加熱して所定温度に調整する。その際に、高温の第1熱媒体は放熱して冷却されて凝縮液を含む第1熱媒体となる。
一方、冷却流路側に分配された高温の第1熱媒体は、凝縮手段としての凝縮器26によって冷却されてから第1膨張弁としての自動膨張弁28によって断熱的に膨張して更に冷却(例えば、10℃に冷却)される。冷却された第1熱媒体は、冷却器16に供給され、空気流路10内に吸込まれた空気流を冷却する。
かかる凝縮器26には、加熱器14側に分配された高温の第1熱媒体を冷却する冷却用として配管30を経由して、外部から加熱又は冷却されることなく供給された第2熱媒体として冷却水が供給されている。かかる冷却水は、凝縮器26内で70℃程度の第1熱媒体によって30℃程度に加熱されて配管31から吐出される。この配管31から吐出される冷却水は、ヒートポンプ手段の吸熱手段としての吸熱器32に加熱源として供給される。
【0013】
この吸熱器32には、加熱器14で放熱した第1熱媒体を、第2膨張弁34によって断熱的に膨張して更に冷却した10℃程度の第1熱媒体が供給されている。このため、吸熱器32では、凝縮器26で吸熱して30℃程度に昇温された冷却水と10℃程度に冷却された第1熱媒体との温度差に基づいて、第1熱媒体が冷却水から吸熱できる。
吸熱器32で冷却水から吸熱して昇温された第1熱媒体は、アキュームレータ36を経由して圧縮機18に供給される。このアキュームレータ36には、冷却器16に供給されて空気流路10内の空気流から吸熱した第1熱媒体も供給される。かかるアキュームレータ36は、液体成分を貯めてガス成分のみを圧縮機18に再供給できるタイプのアキュームレータであるため、確実に第1熱媒体のガス成分のみを圧縮機18に供給できる。
このアキュームレータ36としては、蓄圧器用タイプのアキュームレータを用いることができる。
尚、アキュームレータ36を設置しなくても、吸熱器32で空気流から吸熱して昇温された熱媒体と、冷却器16に供給されて空気流路10内に吸込まれた気体から吸熱した熱媒体とを合流して、圧縮機18に再供給できればよい。
【0014】
図1及び図2に示す温湿度調整装置では、圧縮機18から吐出された高温の第1熱媒体を加熱流路側と冷却流路側とに分配する二方弁20a,20bは、コントロール部38に設けられた温度制御部22によって制御されている。
温度制御部22では、図3に示す様に、ファン12から吐出される温湿度調整された空気の温度を測定する温度センサー24によって測定された測定温度と設定された設定温度とを温度到達判定部22aで比較する。測定温度と設定温度とが相違していたとき、測定温度が設定温度と一致するように、温度到達判定部22aからの情報を受けた熱媒分配制御部22bは、二方弁20a,20bの各開度を実施的に連続して変更する。
かかる二方弁20a,20bの各開度の変更によって、加熱流路側と冷却流路側とに分配する高温の第1熱媒体の分配比率を実質的に連続して変更され、空気流路10内に吸込まれた空気を所定温度に調整できる。
この二方弁20a,20bの各々は、図4に示す様に、バルブ開度と流量との関係は直線状でない。このため、温度制御部22の熱媒分配制御部22bには、図4に示す二方弁20a,20bの各々についての流量特性データを保持している。従って、熱媒分配制御部22bからは、二方弁20a,20bの各流量特性に基づいて各二方弁20a,20bへの開度信号を発信する。
【0015】
ここで、「実質的に連続して変更」するとは、二方弁20a,20bの開度をステップ制御によって調整し、高温の第1熱媒体を加熱流路と冷却流路とに分配する際に、二方弁20a,20bの開度が、微視的にはステップ的に変更されているものの、全体として高温の第1熱媒体の加熱流路と冷却流路とへの分配率を連続して変更している場合を含むことを意味する。
かかる温度制御部22に設定する設定温度は、任意に設定できるようにしてもよい。更に、図1及び図2に示す温度センサー24は、ファン12の吐出側に設置されているが、ファン12の吸入側に設置してもよく、ファン12の吐出側及び吸入側に設けてもよい。
尚、二方弁20a,20bの各開度の変更によっても、測定温度と設定温度とが依然として相違しているときは、図3に示す様に、後述する湿度制御部27の圧縮機回転数制御部27bからの信号によって圧縮機18の回転数を変更することもある。
【0016】
また、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、冷却器16と加熱器14との間に、二流体ノズル15が配設されており、冷却器16によって除湿された空気に、所定量の水を噴霧する。この二流体ノズル15には、水タンク17に貯留されている純水がポンプ19及び水供給配管21に設けられた制御弁23を経由して供給される。更に、供給された純水を噴霧するための圧縮空気も、配管25を経由して二流体ノズル15に供給される。
かかる水タンク17には、配管33を経由して供給された通常水を純水器35に供給して得た純水が貯留されている。この水タンク17の純水の貯留量は、純水供給配管37に設けられた制御弁39によって一定に保持されている。
二流体ノズル15から噴霧される噴霧水量は、湿度制御部27によって制御されている。この湿度制御部27では、図3に示す様に、湿度到達判定部27aからの情報に基づいて水分供給制御部27cからの信号によって制御弁23,50を所定開度に開き、所定量の水を二流体ノズル15から冷却器16と加熱器14との間に噴霧して、ファン12から吐出される空気流を所定湿度に調整する。
【0017】
冷却器16と加熱器14との間に噴霧された水滴は、冷却器16,16を通過してきた空気流を調湿し、加熱器14によって蒸発される。
かかる加熱器14は、前述したヒートポンプ手段によって加熱能力が向上されているため、噴霧中の水滴は加熱器14内で蒸発でき、空気中に所定量の水分を確実に供給できる。
ところで、二流体ノズル15は、通常、広い空間の調湿用として使用されているものであり、温湿度調整装置等の狭い空間での使用は、噴霧された水滴の蒸発が困難である。
この点、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、ヒートポンプ手段によって加熱力が強化された加熱器14と、応答性が良好な分配手段とを組み合わせることによって、温湿度調整装置等の狭い空間であっても、二流体ノズル15から噴霧された水滴を充分に蒸発させることができる。
尚、二流体ノズル15からの噴霧水のみでは、湿度調整不可能と判断されたときは、湿度到達判定部27aからの情報に基づいて圧縮機回転数制御部27bから圧縮機18の回転数を変更する信号を発信する。
【0018】
図1及び図2に示す温湿度調整装置には、図5に示す様に、二流体ノズル15からの噴霧水の全量が加熱器14によって蒸発して空気流の調湿が可能の領域は、飽和効率以下の領域である。
かかる飽和効率を超えて二流体ノズル15から噴霧水を供給しても、供給した噴霧水量が相対湿度100%未満であっても、噴霧水の全量が加熱器14によって蒸発しない。このため、空気流を所望湿度に調湿することができず、且つ空気流路10の内壁面に水滴が付着する。この飽和効率は、二流体ノズル15から噴射された噴霧水中の水粒子の大きさ等に起因して発生するものであって、水噴射手段特有の特性である。飽和効率は、水噴射手段として採用する噴霧方式、噴霧の噴出方向等によって異なるため、実験的に求めておくことが好ましい。
図1及び図2に示す温湿度調整装置では、加熱器14とファン12との間に水蒸気供給装置60を配設した。ファン12は、冷却器16及び加熱器14よりも上方に設けられており、加熱器14からファン12に至る空気流路10は、カギ状に曲折されている。
【0019】
また、水蒸気発生装置60は加熱器14のファン12側の近傍に位置し、加熱器14を通過した空気は水蒸気発生装置60を通過してから上昇してファン12に吸引される。
この様に、加熱器14からファン12に至る空気流路10を複雑に曲折して長くすることによって、二流体ノズル15からの水分と水蒸気発生装置60からの水分とを充分に拡散混合でき、空気の湿度の偏りを解消して均一化できる。
更に、水蒸気発生装置60を加熱器14のファン12側の近傍に設置することによって、水蒸気発生装置60からの熱によって上昇気流が発生する。このため、空気通路10の下方に滞留気流が生じることに因って水分が再凝縮することを防止できる。
かかる水蒸気発生装置60は、図5に示す様に、二流体ノズル15の飽和効率を超える水分量を供給することが必要となったとき、二流体ノズル15と併用され、二流体ノズル15の飽和効率を超える水分量を水蒸気供給装置60からの蒸気によって補っている。
従って、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、図5に示す様に、二流体ノズル15の飽和効率を超える水分量を供給することが必要となったとき、二流体ノズル15による噴霧水量を飽和効率以下に抑制しつつ、不足する水分を水蒸気供給装置60によって補うことによって、必要な水分量を供給できる。
この水蒸気供給装置60は、図3に示す様に、湿度制御部27の水分供給制御部27cによって制御されている。かかる水分供給制御部27cでは、二流体ノズル15への水の供給量を、例えば制御弁23の開度によって把握できる。このため、制御弁23の開度が所定開度に到達したとき、二流体ノズル15から供給する噴霧水が飽和効率に到達したものと判断し、制御弁23の開度を飽和効率以下となるように抑制しつつ、不足する水分を水蒸気供給装置60からの水蒸気によって供給する。
水分供給制御部27cでは、制御弁23の開度が、飽和効率の噴霧水量に到達しないが、その近傍(例えば、飽和効率の70〜90%程度)に到達したとき、図5に示す様に、水蒸気供給装置60の電気ヒータ64をONして予熱開始することが好ましい。
この様に、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、図5に示す様に、水蒸気供給装置60は、二流体ノズル15の飽和効率を超える水分量を供給することが必要となったとき、すなわち加湿量が不足するときのみに用いる。このため、常時、水蒸気供給装置60を用いる場合に比較して、その省エネルギーを図ることができる。
【0020】
ところで、圧縮機18の回転数及び二方弁20a,20bによって、加熱流路と冷却流路とに分配してファン12から吐出される空気流の温湿度を調整していると、設定温度や設定湿度を変更し、圧縮機18の回転数が急激に増加した場合には、冷却器16,16に供給される熱媒体量が急増し、冷却器16,16で熱媒体が蒸発できず液バック現象が発生したり、冷却器16,16の熱媒体の出口温度が低下して着霜現象が発生するおそれがある。
他方、圧縮機18の回転数が急減した場合には、冷却器16,16に供給される熱媒体量が急減し、冷却器16,16への熱媒体温度が低下してファン12から吐出される空気流の温湿度が大幅に乱れる現象が発生し、安定するまでに時間がかかるおそれがある。
かかる現象を防止すべく、圧縮機18の回転数を変更する際には、目標とする回転数までに回転数をステップ的に徐々に変更しているが、圧縮機18の回転数変更による影響を更に一層少なくすべく、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、自動膨張弁28をコントロール部38の膨張弁制御部42によって制御している。
【0021】
この膨張弁制御部42では、冷却器16への供給配管に設けられた入口熱媒温度センサー44によって測定された冷却器入口熱媒温度が予め設定された所定温度範囲内にあるか否か入口熱媒温度判定部42aで判断する。
ここで、冷却器入口熱媒温度が所定温度範囲よりも高い場合には、入口熱媒温度判定部42aからの情報に基づいて開度調整部42cから自動膨張弁28の開度を減少する信号を発信し、冷却器入口熱媒温度が所定温度範囲よりも低い場合には、開度調整部42cから自動膨張弁28の開度を増加する信号を発信する。
また、膨張弁制御部42では、過熱度判定部42bにおいて、圧縮機18の入口側(吹込側)に設けられた入口熱媒温度センサー46によって測定された圧縮機入口熱媒温度と、入口熱媒温度センサー44によって測定された冷却器入口熱媒温度との温度差に基づく過熱度を算出し、予め設定された所定過熱度範囲内にあるか否か判断する。
ここで、算出された過熱度が所定過熱度範囲よりも高い場合には、過熱度判定部42bからの情報に基づいて開度調整部42cから自動膨張弁28の開度を減少する信号を発信し、算出された過熱度が所定過熱度範囲よりも低い場合には、開度調整部42cから自動膨張弁28の開度を増加する信号を発信する。
尚、図2に示す様に、冷却器16の出口側に出口熱媒温度センサー48を設け、出口熱媒温度を測定し、出口熱媒温度が着霜するおそれのない2℃以上となるように、自動膨張弁28の開度を調整してもよい。
【0022】
図1及び図2に示す温湿度調整装置では、加熱器14で放熱した第1熱媒体を、膨張弁34によって断熱的に膨張して冷却しているが、膨張弁34での断熱膨張による冷却では、第1熱媒体と外部との間での熱の遣り取りはない。このため、断熱的に冷却された第1熱媒体は、外部から凝縮器26を経由して吸熱器32に供給された第2熱媒体としての冷却水から吸熱できる。
従って、圧縮機18から吐出される高温の第1熱媒体には、圧縮機18による圧縮動力エネルギーに、ヒートポンプ手段の吸熱器32によって外部から供給された冷却水より吸熱したエネルギーを加えることができる。
更に、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、外部から供給された冷却水が凝縮器26を経由して吸熱器32に供給されており、凝縮器26で除去した高温の第1熱媒体から除去したエネルギーの一部も、圧縮機18から吐出される高温の第1熱媒体に加えることができ、加熱流路の加熱能力を向上できる。
【0023】
この様に、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、その加熱流路の加熱能力をヒートポンプ手段の設置によって向上でき、且つ二方弁20a,20bによって加熱流路側に分配する高温の第1熱媒体と冷却流路側に分配する高温の第1熱媒体との分配比率を、空気流路10から吐出される空気の温度に応じて実質的に連続して変更できる。
また、ファン12から吐出される空気の湿度は、二流体ノズル15の噴霧水によって調整できる。しかも、二流体ノズル15の噴霧水量が、飽和効率を超えて供給することが必要な場合には、水蒸気発生装置60からの水蒸気によって補うことができる結果、二流体ノズル15のみでは調整できなかった領域の調湿を可能にできる。
更に、図1及び図2に示す温湿度調整装置では、加熱流路及び冷却流路に高温の第1熱媒体が常時供給されており、加熱流路の加熱器14と冷却流路の冷却器16とを通過する温湿度調整対象の空気流の微小な負荷変動は、二方弁20a,20bによる加熱流路と冷却流路とに分配する高温の第1熱媒体の分配比率及び圧縮機18の回転数の微小調整によって迅速に対応でき、応答性を向上できる。
かかる圧縮機18の回転数の調整の際に、膨張弁制御部42によって自動膨張弁28を制御して、圧縮機18の回転数調整による温湿度調整装置に対する影響やファン12から吐出される空気流の温湿度に対する影響を可及的に小さくできる。
【0024】
以上、説明してきた図1及び図2に示す温湿度調整装置では、凝縮器26に冷却水を供給する配管30に、冷水制御手段としての制水弁40が設けられている。この制水弁40は、圧縮機18の吐出圧が一定となるように制御されている。かかる制水弁40は、図6に示す様に、冷却水の流路内に設けられた弁部40aの開口部を開閉する弁体40bを具備する棒状部が設けられている。この棒状部は、その先端面が当接するバネ40cによって弁体40bが弁部40aの開口部を閉じる方向に付勢されている。また、棒状部の他端面は、圧縮機18から吐出された第1熱媒体の圧力が供給されるベローズ40dに当接し、棒状部をバネ40cの付勢力に抗して弁部40aの開口部を開放する方向に弁体40bを付勢している。
このため、圧縮機18の吐出圧がバネ40cの付勢力以上となったとき、ベローズ40dによって弁体40dが弁部40aの開口部を開放する方向に移動し、凝縮器26に供給される冷却水量が増加して、凝縮器26の冷却能力が向上される。この様に、凝縮器26の冷却能力が向上されて、圧縮機18の吐出圧が低下する。
他方、圧縮機18の吐出圧がバネ40cの付勢力以下となったとき、弁体40dが弁部40aの開口部を閉じる方向に移動し、凝縮器26に供給される冷却水量が減少して、凝縮器26の冷却能力が低下する。このため、圧縮機18の吐出圧が高くなる。
この様に、圧縮機18の吐出圧を一定に保持することによって、温湿度調整装置を安定して運転できる。また、凝縮器26に冷却水量が必要以上に供給され、系外に排出されないように調整できる。
【0025】
図1及び図2に示す温湿度調整装置で用いる二流体ノズル15は、加熱器14と冷却器16との間に設けているが、図7(a)に示す様に、加熱器14の空気の出口側に二流体ノズル15を配設してもよい。この様に、二流体ノズル15を加熱器14の空気の出口側に配設しても、二流体ノズル15から噴霧された水滴は加熱器14で加熱された空気流によって加熱されて蒸発できる。
また、冷却器16と加熱器14とを、図7(b)に示す様に、空気が加熱器14に供給された後、冷却器16に供給されるように配設し、冷却器16と加熱器14との間に二流体ノズル15を配設してもよい。この場合も、二流体ノズル15から噴霧された水滴は加熱器14で加熱された空気流によって加熱されて蒸発できる。
更に、図7(b)に示す加熱器14と冷却器16との配設であって、図7(c)に示す様に、加熱器14の空気の入口側に二流体ノズル15を配設してもよい。この場合、二流体ノズル15から噴霧された水滴は加熱器14で直接加熱されて蒸発できる。
但し、例えば、図7(a)に示す加熱器14と冷却器16との配設であって、図7(d)に示す如く、冷却器16の空気の入口側に二流体ノズル15を配設した場合には、二流体ノズル15から噴霧された水滴は、冷却器16内で凝縮されて空気流から除去されるため、空気流を所定の湿度に調整することが困難となる。
尚、図7(b)及び図7(c)の様に、二流体ノズル15が加熱器14又は冷却器16の上流側に設けられている場合には、二流体ノズル15よりも下流側の加熱器14又は冷却器16が、二流体ノズル15から噴霧された水滴のエリミネータとしても機能し、下流側の加熱器14又は冷却器16を通過した空気流に含有される水滴の大きさを一定にできる。
【0026】
図1及び図2に示す温湿度調整装置では、凝縮器26及び吸熱器32には、外部からの水を用いた水冷方式であった、図8に示す様に、凝縮器26及び吸熱器32にファン52からの空気流を用いる空冷方式であってもよい。
また、図1、図2及び図8に示す温湿度調整装置では、分配手段として二方弁20a,20bを用いたが、比例三方弁を用いてもよく、膨張弁34としては、キャピラリーチューブを用いてもよい。
更に、二流体ノズル15に代えて、水の圧力のみで噴霧する一流体ノズルや遠心式水噴射装置、或いは超音波調湿装置を用いることができる。これらの噴霧手段では、噴霧方式によって飽和効率が異なるため、採用する噴霧方式についての飽和効率を予め求めておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
10 空気流路
10a 空気入口
10b 空気出口
12 ファン
14 加熱器
15 二流体ノズル
16 冷却器
18 圧縮機
20a,20b 二方弁
22 温度制御部
24 温度センサー
26 凝縮器
27 湿度制御部
28 自動膨張弁
32 吸熱器
34 膨張弁
38 コントロール部
40 制水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機で圧縮されて加熱された高温の第1熱媒体の一部が加熱手段に供給される加熱流路と、
前記高温の第1熱媒体の残余部が凝縮手段で冷却されてから第1膨張手段で断熱的に膨張して更に冷却されて冷却手段に供給される冷却流路と、
空気入口から吸引されて前記加熱手段及び冷却手段を通過する空気を所定の温度に調整するように、前記圧縮機から吐出された高温の第1熱媒体の一部を前記加熱流路側に分配すると共に、前記高温の第1熱媒体の残余部を冷却流路側に分配し、且つ前記加熱流と冷却流路とに分配される高温の第1熱媒体の分配比率を変更可能な分配手段と、
前記加熱流路の加熱能力が向上するように、前記加熱手段で熱を放出して冷却されてから第2膨張手段で断熱的に膨張されて更に冷却された第1熱媒体が、外部熱源である第2熱媒体から吸熱する吸熱手段を具備するヒートポンプ手段と、
前記加熱手段及び冷却手段を通過して空気出口から吐出される空気を所定湿度に調湿する調湿手段とが設けられ、
且つ前記加熱流路、冷却流路及びヒートポンプ手段の各々を通過した第1熱媒体が圧縮機に再供給される温湿度調整装置であって、
前記分配手段を制御し、前記加熱流路と冷却流路とに分配される高温の第1熱媒体の分配比率を調整して、前記加熱手段と冷却手段とを通過する温度調整対象の空気を所定温度に制御する温度制御部と、
前記調湿手段には、湿度調整対象の空気に対し、水を噴霧して加湿する水噴霧手段と水蒸気を供給して加湿する水蒸気供給手段とが設けられ、前記加熱手段及び冷却手段を通過した空気を所定湿度に調湿するように前記水噴霧手段を制御し、且つ前記水噴霧手段の飽和効率を超える水分量を供給して調湿するとき、前記水噴霧手段と水蒸気供給手段とを併用し、前記水噴霧手段からの噴霧水量を前記飽和効率以下に抑制すると共に、不足する水分量を前記水蒸気供給手段によって補うように、前記水噴霧手段及び水蒸気供給手段を制御する湿度制御部とが設けられていることを特徴とする温湿度調整装置。
【請求項2】
水噴霧手段及び水蒸気供給手段が、水を圧縮空気によって噴霧する水噴霧ノズル及び加熱ヒータによって水を加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生装置であって、
前記水噴霧ノズルから供給する噴霧水量が飽和効率の近傍に到達したとき、前記水蒸気発生装置の加熱ヒータによる水の予熱を開始するように、前記水蒸気発生装置が温度制御部によって制御されている請求項1記載の温湿度調整装置。
【請求項3】
温湿度調整対象の空気の入口側から冷却手段、水噴霧手段、加熱手段及び水蒸気発生手段の順序で設けられている請求項1又は請求項2記載の温湿度調整装置。
【請求項4】
水蒸気発生手段が、浅容器内に貯留された水を電気ヒータによって加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生装置であって、前記水蒸気発生装置が、冷却手段、水噴霧手段及び加熱手段を通過した空気が水蒸気を発生する水面に沿って流れる位置に載置されている請求項1〜3のいずれか一項記載の温湿度調整装置。
【請求項5】
第1膨張手段に自動膨張弁が用いられ、冷却手段に供給される熱媒温度と圧縮機の過熱度とが所定範囲となるように、前記自動膨張弁の開度を制御する膨張弁制御部とが設けられている請求項1〜4のいずれか一項記載の温湿度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21830(P2011−21830A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167858(P2009−167858)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】