説明

測位システム

【課題】複数の移動局間の距離が測定可能とする場合に、測定された複数の移動局間の距離を用いて移動局の測位の精度の向上する。
【解決手段】測位部による測位結果に基づいて移動局の位置に対する存在確率を算出する存在確率算出部と、第1の測距部よりも高い測距精度を有し複数の移動局間の距離を測定する第2の測距部と、第2の測距部により測定される複数の移動局間の距離に基づいて複数の移動局の位置の組み合わせを抽出する移動局位置抽出部と、前記存在確率に基づいて前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い複数の移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置選択部と、測位部による測位結果である複数の移動局位置を移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなる様に補正する移動局位置補正部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発信し所定の移動可能領域を移動する複数の移動局の位置を検出するシステムに関するものであって、特に電波以外の手段により検出した複数の移動局間相互の距離を考慮することにより精度の高い位置検出を行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信を利用することにより、人や物の位置を検出し、追跡するシステムが提案されている。例えば、全地球測位システム(Global Positioning System;GPS)と呼ばれるシステムがそれである。このGPSは、例えば非特許文献1に示す様に、複数の衛星から送信される電波を一の移動可能な受信機によりそれぞれ受信し、該受信した複数の電波の到来時間差等に基づいて、前記受信機の位置を検出するシステムである。
【0003】
このGPSにおいては、既知の位置にある衛星からの電波を受信機が受信することによって位置の検出が行われたが、逆に移動可能な一の発信機から発信された電波を複数の既知の位置に固定された受信機に受信させ、これらの複数の受信機によって受信された電波に基づいて発信機の位置を検出することも同様に可能である。例えば特許文献1には、位置が既知である無線機である複数の基準局と、位置の不明な無線機である検出対象局との間の無線信号を、上記複数の基準局もしくは検出対象局の一方が受信し、距離に関する物理量を計測することで該基準局と該検出対象局との絶対距離もしくは相対距離をそれぞれ測定し、上記各測定された距離である測距結果と、上記各基準局との位置とに基づいて該検出対象局の位置を算出する方法が開示されている。
【0004】
ところで、複数の移動局が相互に通信可能であると同時に、これら複数の移動局間の距離が測定可能とする場合において、これらの複数の移動局の位置の算出すなわち測位を行う技術が特許文献2に開示されている。
【0005】
【非特許文献1】GPS技術入門 坂井丈泰著 東京電機大学出版局 (2003年2月)
【特許文献1】特開2006−090913号公報
【特許文献2】特開2002−152798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示の技術は、相互に通信可能であると同時に相互の距離が測定可能である移動局のうち一部の移動局が基地局との通信が困難であり、基地局との通信に基づいて測位が実行できない場合において用いられるものであって、基地局との通信に基づいて測位を実行できる移動局の測位結果と、その測位を実行できる移動局と前記測位が実行できない移動局との相対的な位置関係とに基づいて、前記測位が実行できない移動局の測位を行うものである。したがって、移動局間の距離の測定を移動局の測位の精度の向上のために用いるものではない。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、複数の移動局間の距離が測定可能とする場合において、測定されたこれらの複数の移動局間の距離を用いて移動局の測位の精度の向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明の発明者が種々の実験や検討を重ねたところ、前記複数の移動局間の距離の測定に通信以外の手段、例えば発信された超音波の往復に要する時間等を用いれば近距離の測距は電波を用いた測距よりも正確な結果が得られ、この複数の移動局間の正確な距離に基づいて前記移動局と前記基地局との通信に基づいて行われた測位の結果を補正することにより、より正確な測位が可能となること見いだした。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a1)所定の移動可能領域を移動可能であって電波を発信する発信部を有する複数の移動局と、(a2)該複数の移動局によって発信された電波を受信する受信部と、前記受信した電波に基づいて前記複数の移動局との距離をそれぞれ測定する第1の測距部とを有し、既知の位置に固定された複数の基地局と、(a3)該複数の基地局によって測定された距離データに基づいて前記複数の移動局の位置をそれぞれ測位する測位部を有する測位サーバとを、有する測位システムにおいて、(b)前記測位部による測位結果を、前記移動可能領域における前記複数の移動局の位置に対する存在確率としてそれぞれ算出する存在確率算出部と、(c)前記第1の測距部よりも高い測距精度を有し、前記複数の移動局間の距離を測定する第2の測距部と、(d)前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出する移動局位置抽出部と、(e)前記存在確率算出部において算出された存在確率に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置選択部と、(f)前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置を、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなる様に補正する移動局位置補正部とを、有することを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、前記測位システムにおいて、前記存在確率算出部によって、前記測位部による測位結果に基づいて、前記移動可能領域における前記複数の移動局の位置に対する存在確率がそれぞれ算出され、前記第2の測距部によって、前記複数の移動局間の距離が第1の測距部よりも高い測距精度において測定され、前記移動局位置抽出部によって、前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせが抽出され、前記移動局位置選択部によって、前記存在確率算出部において算出された存在確率に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値が算出されるとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせが選択され、前記移動局位置補正部によって、前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置が、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなる様に補正されるので、精度の高い測位が実行される。
【0011】
好適には、前記移動局は前記第2の測距部を有し、前記第2の測距部による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部に伝達される。このようにすれば、前記移動局は前記第2の測距部を有するので、自己の移動局が他の移動局との間隔が測距され、その測距結果は前記移動局の有する発信部により電波を解して前記移動局抽出部に伝達されることができる。
【0012】
また好適には、前記測位サーバは、前記存在確率算出部、前記移動局位置抽出部、移動局位置選択部及び前記移動局位置補正部とを有する。このようにすれば、移動局の位置に必要な計算を測位サーバで集約して実行することができる。
【0013】
また好適には、前記第2の測距部は、音波、好ましくは超音波を用いて測距を行うことを特徴とする。このようにすれば、特定の移動局と他の移動局との間の間隔が電波よりも速度が遅い音波を用いて測距されるので、電波を用いるよりも正確な測距が可能となる。
【0014】
また好適には、前記第2の測距部は、画像認識用カメラを有し、該画像認識用カメラによって撮像された画像に基づいて測距を行うことを特徴とする。このようにすれば、画像認識用カメラによって撮像された画像に基づいて複数の移動局間の距離が測距されるので、前記移動局はセンサ等を備える必要がない。
【0015】
また好適には、前記第2の測距部は、前記複数の移動局のうち、位置の補正を正確に実行しようとする1の移動局である特定移動局と、前記測位部により該特定移動局に最も近い位置に存在するとされた他の移動局との距離を測距することを特徴とする。このようにすれば、前記第2の測距部は、前記特定移動局と該特定移動局に最も近い位置に存在するとされた他の移動局との距離を測距するので、その際の測距誤差が小さくなる。
【0016】
また好適には、前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部の実行前までにおける前記移動局の移動履歴に基づいて、前記移動局の位置の組み合わせを選択するようにされている。このようにすれば、前記確率評価値が所定の範囲にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合であっても、前記移動局の移動履歴に基づいて前記移動局の位置の組み合わせが選択されるので、実際の移動局の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【0017】
また好適には、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部の実行前における前記移動局の位置に関する情報である。このようにすれば、前記移動局の移動履歴として前記移動局位置選択部の実行前における前記移動局の位置に関する情報が用いられるので、実際の移動局の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【0018】
また好適には、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部の実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報である。このようにすれば、前記移動局の移動履歴として前記移動局位置選択部の実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報が用いられるので、実際の移動局の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【0019】
また好適には、前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部によって算出された前記特定移動局の存在確率が高い前記移動局の位置の組み合わせを選択することを特徴とする。このようにすれば、前記確率評価値が所定の範囲にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合であっても、前記存在確率算出部によって算出された前記特定移動局の存在確率が高い前記移動局の位置の組み合わせが選択されるので、前記特定移動局の位置がより精度よく補正される様にされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の測位システム8の構成の一例を示した図である。図1には、平面上の任意の形状に設けられる移動可能領域50として一辺30(m)の正方形からなる移動可能領域50が設けられている。また、前記移動可能領域50には、後述する移動局10と無線による通信を行う機能を有する基地局12として4つの基地局である第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12Dがそれぞれ設けられる。基地局としては後述するように電波の伝播到達時間により移動局の位置を求める場合には、平面上における移動局10の位置の算出のためには少なくとも3個の基地局が必要である。従って、前記移動可能領域の何れの地点においても、少なくとも移動局が3個の基地局と通信可能となるように基地局を配置されている。また、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行うことができる。本図1においては、正方形の移動可能領域50の4隅にそれぞれ第1基地局12A乃至第4基地局12Dが1つづつ配置されており、この要件を満たす。また、前記移動可能領域50内には複数の移動局10が配置され、その移動可能領域50内を移動可能とされている。本図1においては一例として2つの移動局10A、10Bが配置されている。なお、移動局の個数は2つ以上であれば特に限定されない。また、基地局12と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記移動可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の移動局10A、10Bを区別しない場合には移動局10と表記し、個々の基地局12A乃至12Dを区別しない場合には基地局12と表記する。
【0022】
このとき、移動可能領域50は、便宜上図2に示す様にx軸およびy軸が定義され、移動可能領域50上の点はこの軸に基づいて座標が規定される。すなわち、第1基地局12Aは座標(0,0)上に、第2基地局12Bは座標(0,30)上に、第3基地局12Cは座標(30,30)上に、第4基地局12Dは座標(30,0)上にそれぞれ配置されている。
【0023】
図3は移動局10の構成の概要を示す機能ブロック線図である。アンテナ部20は電波を送受信するために用いられ、平衡不平衡変換部22はバラン(Balun)であり、送受信切換部24の不平衡線路をアンテナ部20に適合するように平衡線路に変換する。コントローラ401は周知のマイコンおよびその周辺回路からなる制御回路であり、後述の送受信切換部24を制御して移動局10の動作を制御するものである。
【0024】
送受信切換部24は、図3においては移動局10の送信状態と受信状態とを切り換える。すなわち、送受信切換部24が移動局10を送信状態に切り換える場合には、移動局10は送信機として機能させられ、受信状態に切り換える場合には受信機として機能させられる。また、送信アンプ部26は、前記送受信切換部24によって移動局10が送信機として機能させられる場合に、後述する無線部28によって生成された信号波を増幅する。
【0025】
無線部28は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、後述する制御部32によって生成される信号を無線通信を行うための形式に変換し、移動局10が受信機として機能させられる場合には、またアンテナ部20によって受信された受信波から制御部32によって処理されるための信号に変換するものであって、例えばICなどによって実装される。この無線部28は具体的にはコントローラ401からの指令により所定の周波数の搬送波を発生させるPLL回路(phase lock loop)回路、VCO(voltage controlled oscillator)回路及びデジタル変調復調部30などからなり、このデジタル変調復調部30は、制御部32によって生成される信号をデジタル変調、および受信された受信信号の復調を行い、生成されたデジタルデータを制御部32に出力することにより移動局10と基地局12との間の無線通信がデジタル通信によってなされる。
【0026】
制御部32は、スペクトラム拡散部34、逆拡散処理部341、ベースバンド信号生成復元部36、および拡散符号発生部38などからなり、例えばこれらのブロックを制御し拡散符号を発生する機能を有するゲートアレイやマイコンなどによって実装される。このうち、ベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、伝送したい情報を符号化しベースバンド信号を生成する。また、移動局10または基地局12が受信機として機能させられる場合には、後述する逆拡散処理部341によって復号されたベースバンド信号から、伝送された情報を取りだす。
【0027】
拡散符号発生部38は、後述するスペクトラム拡散部34によってスペクトラム拡散を行うための拡散符号を発生させる。この拡散符号としては、自己相関関数に高いピークを持つ、すなわち位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さく、かつ、符号間における相関が全ての位相差において十分小さい、すなわち相互相関が小さいことという条件を満たす符号列が用いられる。具体的には例えば、M系列符号やGPSにおいても使用されているGold系列符号が用いられる。このGold系列符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN信号)とも呼ばれる。
【0028】
スペクトラム拡散部34は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、ベースバンド信号生成復元部36において生成されたベースバンド信号を、拡散符号発生部38において発生させられた拡散符号を用いてスペクトラム拡散を行い、送信のための信号を生成する。具体的には例えば、前記ベースバンド信号と前記拡散符号との排他的論理和を結果として用いる直接拡散(direct spread)方式が用いられる。また、逆拡散処理部341は、移動局10が受信機として機能させられる場合に、前記デジタル変調復調部30によって復調された受信波に対し前記拡散符号を用いてスペクトラム逆拡散を行い、ベースバンド信号を取りだす。この受信の場合も送信の場合と同じ拡散符号が用いられる。このようなスペクトラム拡散を利用すれば、ある特定の移動局と基地局との通信がある特定の拡散符号を用いて行われている場合に、同じ時刻および同じ周波数において他の移動局と基地局との通信が別の拡散符号を用いて行われる場合であっても、相互の通信が影響を受けることがない。
【0029】
これらのアンテナ部20、平衡不平衡切換部22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32などの電波の発信のためのブロックが発信部および受信部に相当する。
【0030】
第2の測距部に対応する第2測距部70は、少なくとも音波発信機および音波センサ72または画像認識用カメラ76のいずれかを備え、自己の移動局10と、自己以外の他の移動局10との距離を測定、すなわち測距する。例えば、第2測距部70が音波発信機および音波センサ72を用いる場合には、自己の移動局10の前記音波発信機により発信された音波が、前記他の移動局10によって反射され自己の移動局10の前記音波センサによって検出されるまでの時間と、音波の空気中における伝播速度とに基づいて自己の移動局10と自己以外の他の移動局10との距離が算出される。具体的には、自己の移動局10の前記音波発信機により発信された音波が、前記他の移動局10によって反射され自己の移動局10の前記音波センサによって検出されるまでに要した時間の半分に音波の伝播速度を乗ずることによって、自己の移動局10と自己以外の他の移動局10との距離が算出される。このとき、音波を好適に反射するために、移動局10は音波発信機および音波センサ72に加え、図示しない音波反射のための部材を有していてもよい。また音波発信機および音波センサ72としては、正確な測距を行うことができるという性質を考慮して、特に超音波発信機および超音波センサが用いられる。
【0031】
また、第2測距部70が画像認識用カメラ76を用いる場合には、画像認識用カメラ76によって撮像された画像中における前記他の移動局10の大きさと、予め記憶された前記他の移動局10の大きさについての情報と、レンズの倍率や曲率についての情報とに基づいて、自己の移動局10と自己以外の他の移動局10との距離が測定される。
【0032】
図4は第2測距部70が画像認識用カメラ76を用いる場合における移動局10の取り得る形状の一例である。このように、移動局10が略球状の形状を有すれば、何れの方向から画像認識用カメラ76によって撮像された場合であっても略同様の画像が得られることから、画像上において移動局10を容易に認識することができると同時に、その画像を用いて撮像された移動局10との距離が容易に算出される。なお、ここで略球状とは、後述する距離の算出方法において影響を及ぼさない程度の凹凸や突起物を有することを問題としない趣旨である。
【0033】
図5および図6は、第2測距部70が画像認識用カメラ76を用いて他の移動局10との距離を算出する様子を説明する図である。図5においては、ある移動局10Aが他の移動局10Bとの距離を算出しようとしている。このとき、移動局は上述の通り略球状であって、その半径はrである。図6は、移動局10Aにおける画像認識用カメラ76によって撮像される画像の一例を示したものであり、縦方向の総ピクセル数がp1の画像において、移動局10Bは縦方向にピクセル数が最大でp2の円状の像となっている。また、画像における縦方向の総ピクセル数p1に相当する実際の高さ方向の長さはhであるとすると、前記高さ方向の長さhと移動局10Bの直径2rとの比は、画像状における縦方向の総ピクセル数p1と移動局10Bに対応する画像の縦方向のピクセル数の最大値p2との比に等しい。すなわち、h:2r=p1:p2である。一方、画像認識用カメラ76と対象物体との距離Lは、前記高さ方向の長さhと、レンズの仕様とによって定まり、この仕様は予め与えられる。従って、画像上の縦方向の総ピクセル数p1と、移動局10Bに対応する像の縦方向の最大ピクセル数p2と、移動局10Bの半径rと、レンズの仕様とから、移動局10Aと移動局10Bとの距離Lを算出することができる。なお、本説明においては縦方向を例としたが、画像の横方向であっても同様に適用可能である。
【0034】
また、電源部40は、上述した送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41などに対し、必要な電力を供給する。時計41は、制御部の動作の指令や、電波の発信時や受信時において参照される時刻情報を供給するもので、例えばリファレンスクロックのようなものである。。
【0035】
図7は、基地局12の構成の概要を示す機能ブロック線図である。アンテナ部20、平衡不平衡変換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41、電源部40など、符号の共通する機能ブロックについては、その機能についても移動局10と共通するものであるので、説明を省略する。すなわち、基地局12も、上述の移動局10と同様に、送信機および受信機としての両方の機能を有する。
【0036】
第1の測距部に対応する第1測距部42は、移動局10によって電波が発信された時刻と基地局12が電波が受信された時刻との時刻差、すなわち電波の到達に要する時間に基づいて、移動局10と基地局12との距離を測定する。この第1測距部42は例えばマッチドフィルタを含んで構成され、具体的には例えばレプリカ符号発生部44、遅延回路46および相関計算部50などによって構成される。レプリカ符号発生部44においては、移動局10において、拡散符号発生部38により発生され、スペクトラム拡散部34において用いられた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号が発生させられる。そして、周知のシフトレジスタにより構成される遅延回路46においては、移動局10によって発信され基地局12によって受信された電波における信号波が入力され、予め定められた複数の所定の間隔ごとに遅延させられる。そして、相関計算部50においては、遅延回路46によって遅延させられた受信はとレプリカ符号との相関係数が算出される。この結果、算出された相関係数が最大となった際の受信時刻を移動局10からの電波の到来時刻とする。移動局10による送信時刻はベースバンド信号作成復元部36によりベースバンド信号を復元することにより得られるので、電波の到来時刻と送信時刻との時刻差を計算し、電波の速度c(2.997×108(m/s))を乗ずることにより移動局10との距離が算出される。
【0037】
また、基地局12には後述する測位サーバ14との通信を行うための有線通信部43が設けられ、例えばLANケーブルなどの有線ケーブル52によって接続された測位サーバ14との間で、第1の測距部42によって測定された移動局10との距離である測距データや、ベースバンド信号作成復元部36によって受信波から復号されたベースバンド信号を含むデータや基地局12の動作に関する情報などの送受信が可能とされる。この有線通信部43が基地局情報送信部に対応する。
【0038】
図1に戻って、測位サーバ14は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、移動局10の位置の算出すなわち測位を実行する。
【0039】
図8は、測位サーバ14の制御作動を説明する機能ブロック線図である。測位サーバ14は、測位部56、移動局選択部104、存在確率算出部102、移動局位置抽出部106、移動局位置選択部108、移動局位置補正部110、測位結果記憶部112、測位結果出力部60などから構成される。
【0040】
まず、測位部56においては、例えば複数の基地局12によって算出された基地局と移動局の距離に基づいて、移動可能領域50中の移動局10の位置を算出する。具体的には、例えば移動可能領域50が前記図1に示す様な平面である場合において、第1基地局12Aの座標を(x1,y1)、第2基地局12Bの座標を(x2,y2)、第3基地局12Cの座標を(x3,y3)、また、第1基地局12Aが測定した第1基地局12Aと移動局10との距離をr1、第2基地局12Bが測定した第2基地局12Bと移動局10との距離をr2、第3基地局12Cが測定した第2基地局12Cと移動局10との距離をr、とし、移動局の座標を(x,y)、移動局10と基地局12とがそれぞれ有する時計41の時刻のずれに基づく誤差sとすると、図9に示す様に、
(x−x12+(y−y12=(r1+s)2
(x−x22+(y−y22=(r2+s)2 (1)
(x−x32+(y−y32=(r3+s)2
で表される関係がある。なお、このとき、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cのそれぞれが有する時計41の時計は例えば後述する方法により同期されており、誤差sは各基地局に共通である。このとき変数はx,yおよびsの3つであり、方程式は上記3つであるから、これらの3つの式を例えばニュートンラフソン法などにより解くことにより、x、yおよびsの値を算出することが可能である。なお、上述の様に、第1基地局12A乃至第3基地局12Cのそれぞれが有する測距部42が測定して得られる第1基地局12A乃至第3基地局12Cと移動局10との距離r1、r2、およびr3はそれぞれ、移動局10と基地局12とがそれぞれ有する時計41の時刻のずれに基づく誤差sが考慮されていない、いわゆる疑似距離と呼ばれるものであるが、これらに代えて距離r1、r2、およびr3として、前記時計のずれに基づく誤差sが補正された正確な距離が用いられてもよい。
【0041】
このように移動可能領域50が平面である場合には変数が3つとなることから、少なくとも3つの式があればこれらの変数の値が算出されることになり、これは少なくとも3つの基地局12があれば移動局10の位置の算出が可能であることを意味している。一方、基地局が4つ以上存在する場合には、算出における誤差を最小化する最小二乗法を用いることなどにより、より精度の良い移動局10の位置の算出が可能となる。
【0042】
図10は4つの基地局12の有する時計41を同期させるための手順の一例を示したタイムチャートである。この図において、縦線で表された第1基地局12A乃至第4基地局12Dと測位サーバ14との間を横方向に結ぶ矢印によって各基地局および測位サーバ間の通信の様子が示されている。なお矢印の向きは通信の方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど時間の経過を表している。
【0043】
まず時刻t1において、測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、無線通信における空きチャンネルの探索命令がされる。これをうけ、第1基地局12Aはチャンネルスキャンを実行し、発見した空きチャンネルについての情報を時刻t2において測位サーバ14に対し送信する。続いて時刻t3において測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、時刻情報を無線により送信する命令がされる。更に時刻t4乃至時刻t6において、測位サーバ14から前記任意の1の基地局以外の基地局(本図においては第2基地局12B乃至第4基地局12D)のそれぞれに対し、順次時刻情報を無線により受信する命令がされる。続いて時刻t7において、第1基地局12Aから時刻情報、すなわち第1基地局12Aの時計41の時刻t情報が無線により送信され、第2基地局12B乃至第4基地局12Dによってこれが無線により受信される。更に時刻t8乃至時刻t10において、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれが受信した時刻情報、すなわち第1基地局12Aによって発信された発信時の第1基地局の時刻と第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれが受信した時刻とからなる情報が有線通信部43により測位サーバに順次送信される。
【0044】
ここで、各基地局12の位置は既知であることから、前記第1基地局12Aから発信された電波が第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれへ到達するのに要する伝播時間は予め算出される。従って、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれについて、受信した時刻と第1基地局12Aが発信した時刻との時間から前記伝播時間を引いたものが第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計41と第1基地局12Aの時計41との時間ずれとなる。このようにして算出された時間ずれがなくなるように時刻t11乃至時刻t13において第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計41が補正されることにより、各基地局12の時計は同期される。
【0045】
図11は、測位部56によって用いられる各基地局12と移動局10との距離rを算出するためのタイムチャートである。この図において、縦線で表された第1基地局12A乃至第4基地局12Dと測位サーバ14および移動局10との間を横方向に結ぶ矢印によって各基地局および測位サーバ間の通信の様子が示されている。なお矢印の向きは通信の方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど時間の経過を表している。
【0046】
まず時刻t1において、測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、無線通信における空きチャンネルの探索命令がされる。これをうけ、第1基地局12Aはチャンネルスキャンを実行し、発見した空きチャンネルについての情報を時刻t2において測位サーバ14に対し送信する。続いて時刻t3において測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、移動局10に対し時刻情報を無線により送信させる命令を無線により送信させる命令がされる。これを受け、時刻t4において、第1基地局12Aは移動局10に対し、時刻情報を無線により送信させる命令を無線により送信する。更に時刻t5乃至時刻t8において、測位サーバ14から全ての基地局(本図においては第1基地局12A乃至第4基地局12D)のそれぞれに対し、順次時刻情報を無線により受信する命令がされる。続いて時刻t9において、移動局10から時刻情報、すなわち移動局10の時計41の時刻情報が無線により送信され、第1基地局12A乃至第4基地局12Dによってこれが無線により受信される。この受信信号に基づいて各基地局12の測距部42は各基地局12と移動局10との距離を算出し、時刻t10乃至時刻t13において、第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれが算出した基地局12のそれぞれと移動局10との距離rが有線通信部43により測位サーバ14に送信される。
【0047】
このようにして得られた第1基地局12A乃至第4基地局12Dと移動局10との距離r1乃至r4と、各基地局の位置情報とが前記式(1)に代入され、式(1)がニュートンラフソン法もしくは最小二乗法により解かれる結果、移動局10の位置座標(x,y)が算出される。
【0048】
図8に戻って、移動局選択部104は、例えば操作者の指示に基づいて、精度よく測位結果を補正したい移動局10を選択する。このようにして移動局選択部104において選択された移動局10が特定移動局とされる。本実施例においては第1移動局10Aが特定移動局として選択される。また、測位部56によって実行された測位の結果に基づいて、例えば前記特定移動局10Aに最も近いとされた他の移動局10Bを選択し、前記第2測距部による測距の対象とする。
【0049】
存在確率算出部102は、基地局12に設けられた測位部56によって行われた測位の結果に基づいて、その測位誤差を算出するとともに、算出された測位誤差に基づいて座標中における移動局10の位置とその存在位置に対応する存在確率を算出する。ここで、前記測位誤差としては、例えば所定回数以上実行された測位結果の標準偏差が用いられる。また、前記所定回数とは、少なくとも前記標準偏差を算出するのに十分な回数である。図12は、x軸方向についてのみに着目した場合の例である。まず、存在確率算出部102は既に行われた測位結果に基づいて、標準偏差σを算出する。例えばσ=3であったとする。続いてこの測位結果の標準偏差σを用いて、測位結果の真値μからのずれxと、そのずれxに対応する発生確率fを算出する。具体的には次式数1のように表される。
【数1】

このようにして算出された発生確率を縦軸に、横軸に測位結果の真値μからのずれをとって描いた図が図12である。このように、測位結果には誤差が発生するので、移動局10の測位が行われ移動局の存在する位置のx座標がμであるとされた場合であっても、実際には測位結果μを中心とした範囲において図12において表された確率で移動局10が存在し、必ずしも測位結果μの位置に存在するわけではないのである。
【0050】
移動局位置抽出部106は、第2測距部70によって測定された特定移動局10Aと他の移動局10Bとの距離Lに基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと他の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。具体的には、特定移動局10Aに対し、第2測距部70を用いて他の移動局10Bとの距離を測距させることにより得られた測距データLに基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと他の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。簡単のため、特定移動局10Aおよび他の移動局10Bが直線で規定された移動可能領域50内を移動する場合を例に考えると、特定移動局10Aの座標xaと他の移動局10Bの座標xbとの差が距離Lとなる組み合わせを全て抽出する。例えば、Lが11であった場合には、特定移動局10Aと他の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを、(xa,xb)=(0,11),(1,12),(2,13),…のように抽出する。
【0051】
移動局位置選択部108は、移動局位置抽出部106において抽出された特定移動局10Aと他の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせに対して、測位部56による測位の結果と、存在確率算出部102で算出された各基地局10ごとの存在確率に基づいて、前記抽出された組み合わせの確率評価値をそれぞれ算出するとともに、算出された組み合わせの確率評価値のうち最も高い確率評価値に対応する組み合わせを選択する。具体的には、まず、前記組み合わせを構成する各基地局について、各基地局の測位結果とのずれに基づいて例えば図12に示す関係に基づいてその存在確率をそれぞれ算出する。そして、算出された前記組み合わせを構成する特定移動局10Aの存在確率と他の移動局10Bのそれぞれの存在確率を乗ずることによって得られた数を、前記組み合わせの確率評価値とする。すなわち、前記組み合わせ(xa,xb)に対し、測位結果が(μa,μb)であり、その場合の各移動局の存在確率を(fa,fb)、前記組み合わせの確率評価値をfとすると、faは特定移動局10Aの測位結果からのずれ(μa−xa)の関数であるから、fa(μa−xa)と書き表され、fbは同様に他の移動局10Bの測位結果からのずれfb(μb−xb)で書き表される。このとき、前記組み合わせの確率評価値は
f=fa(μa−xa)×fb(μb−xb)
となる。このようにして前記組み合わせの複数について確率評価値fを算出し、その中で最大の値fmaxとなった確率評価値に対応する組み合わせ(xamax,xbmax)を選択する。
【0052】
図13は、この様子を前記直線で規定された移動可能領域50の例で示したものである。図中横軸(x軸)が移動可能領域50を、縦軸が存在確率を表している。測位部56による測位の結果、特定移動局10Aはx=8の点A1に、他の移動局10Bはx=18の点B1に存在すると算出されたとする。これらの測位結果に対して、存在確率算出部102によって算出された測位結果とのずれと存在確率との関係が適用される。図中、10Aの存在確率fa、10Bの存在確率fbとして記載された曲線がそれである。
【0053】
一方、第2測位部70によって測位された特定移動局10Aから他の移動局10Bまでの距離がLであったとする。このとき、移動局位置抽出部106によって抽出される特定移動局10Aと他の移動局10Bとの組み合わせは、図中A21とB21、A22とB22あるいはA23とB23など、その間隔がLである組み合わせが無数に抽出される。そして、このようにして抽出された特定移動局10Aと他の移動局10Bとの組み合わせのそれぞれについて、その特定移動局10Aの位置に対応する存在確率faと他の移動局10Bの位置に対応する存在確率fbとが算出され、算出されたfaとfbとが乗ぜられて、前記組み合わせの確率評価値fがそれぞれ算出される。
【0054】
このようにして算出された各組み合わせに対応する確率評価値fが比較され、これらのうち最も高い値となるfmaxとなる組み合わせが選択される。例えば、図13において、特定移動局10AがA21、他の移動局10BがB21であるときに組み合わせの確率評価値fが最大となる場合には、特定移動局10AがA21と他の移動局10BがB21とからなる組み合わせが選択される。
【0055】
なお、移動局選択部108によって算出された各組み合わせに対応する確率評価値fを比較した際に、前記最も高い値fmaxを上限として予め定められた所定の範囲内に他の組み合わせに対応する確率評価値fが存在する場合には、移動局選択部108は、特定移動局10Aの存在確率を考慮した移動局の選択を行う。図13の例を用いて具体的に説明する。例えば、特定移動局10AがA21であり他の移動局10BがB21である組み合わせに対応する確率評価値f21と、特定移動局10AがA22であり他の移動局10BがB22である組み合わせに対応する確率評価値f22とが予め定められた範囲Δfに属する、すなわち|f11−f22|<Δfである場合には、特定移動局10Aの存在確率を考慮する。
【0056】
具体的には、特定移動局10AがA21であり他の移動局10BがB21である組み合わせと、特定移動局10AがA22であり他の移動局10BがB22である組み合わせとについて、それぞれの特定移動局10Aの存在確率を参照する。そして、存在確率がより高い特定移動局10Aの組み合わせを移動局10の位置の組み合わせとして選択する。図13の例で言えば、特定移動局10Aの存在確率は、A21における存在確率のほうがA22における存在確率よりも高いものであるから、特定移動局10AがA21であり他の移動局10BがB21である組み合わせが選択される。このようにすれば、位置を精度よく算出したい移動局である特定移動局10Aの位置の精度を優先して考慮した移動局の位置の算出が実行できる。
【0057】
図8に戻って、移動局位置補正部110は、測位部56によって測位された各移動局10の位置が、移動局位置選択部108において選択された移動局の組み合わせを構成する移動局の位置となるように補正される。具体的には、図13の例では、測位部56によって測位された測位結果が、特定移動局10AがA1、他の移動局が10BがB1であり、移動局位置選択部108によって選択された特定移動局10Aと他の移動局10Bとの組み合わせが、A21とB21であったので、A1とA21は一致するので特定移動局10Aの位置は補正されない一方、他の移動局10Bの位置はB1からB21に補正される。この補正の結果が特定移動局10Aおよび他の移動局10Bのそれぞれの測位結果とされる。
【0058】
また、測位結果出力部60は測位結果すなわち算出された移動局10の位置情報を例えば図示しないモニタ装置に出力したり、あるいは他のプログラムに伝達したりする。また、測位結果記憶部112は、前記移動局位置補正部110によって補正された移動局10の測位結果を、過去所定回数分記憶し、移動局10の移動履歴情報とする。
【0059】
図14は、本発明の測位システムの制御作動の概要を説明するためのフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)S1においては、基地局12から移動局10に対し、移動局10が有効に作動しているかを確認するため移動局の応答を求めて電波の発信が行われる。これを受けて自身が正常に作動している移動局10からはその旨の応答が行われる。
【0060】
続くS2においては、S1における移動局10からの応答が、2以上の移動局からあったか否かが判断される。2以上の移動局からの応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、S3以降が実行される。一方、1の移動局から応答があった場合あるいは何れの移動局からも応答がなかった場合には、本フローチャートの前提となる複数の移動局10が存在していないとして、再度S1が実行され、複数の移動局が有効に作動するのを待つ。
【0061】
測位部56に対応するS3においては、S1において応答した複数の移動局10に対して位置の検出が実行される。続く移動局選択部104に対応するS4においては、S3において測位された複数の移動局10のうち、操作者が正確な測位を実行したいとする1の移動局が特定移動局10Aとして選択される。また、特定移動局10Aの第2測距部70により測距の対象となる1の基地局が他の基地局10Bとして選択される。この他の基地局10Bは、S1において応答した基地局が2つであった場合には、特定移動局10A以外の基地局が自動的に決定する。また、S1において応答した基地局が3以上であった場合には、例えば、S3において検出された位置が特定移動局10Aに最も近い移動局が選択される。
【0062】
特定移動局10Aの第2測距部70に対応するS5においては、特定移動局10Aから他の移動局10Bまでの距離が測定される。上述の様に、第2の測距部70には少なくとも音波センサ72または画像認識用カメラ76が設けられており、これを用いた測距が実行される。
【0063】
S6においては、前記S5において実行された測距の結果が、特定移動局10Aから無線通信により基地局12に送信され、更に基地局12とケーブル52で接続された測位サーバに送信される。
【0064】
存在確率算出部102に対応するS7においては、各基地局10のS3における測位結果と実際の存在位置のずれに対応する存在確率が算出される。この存在確率はこれまでの測位システム8の測位の結果に基づいて算出された測位誤差としての標準偏差に基づいた正規分布に基づいて算出される。
【0065】
続くS8およびS9は移動局位置抽出部106に対応する。このうち、S8においては、S3において算出された移動局10の位置と、S7において算出された存在確率とに基づいて、例えば13に示す様に各移動局の位置に対する存在確率を表す分布図が作成される。
【0066】
S9においては、例えばS8において作成された分布図と、前記S5において測距された特定移動局10Aから他の移動局10Bまでの距離とに基づいて、特定移動局10Aの存在位置と他の移動局10Bとの組み合わせを抽出する。
【0067】
S10乃至S12は移動局位置選択部108に対応する。まず、S10においては、S9において抽出された組み合わせに対し、各組み合わせを構成する特定移動局10Aの存在確率と他の移動局10Bの存在確率とに基づいて前記組み合わせの確率評価値をそれぞれ算出するとともに、算出された確率評価値が最も高くなる前記組み合わせを移動局の位置の組み合わせであるとして選択する。
【0068】
続くS11においては、S10において最も高い確率評価値を上限とする所定の範囲Δfに、他の組み合わせに対応する確率評価値が含まれていないかが判断される。本判断が肯定される場合は、S10において選択された組み合わせがそのまま選択されてS13が実行される。一方、本判断が否定される場合は、前記他の組み合わせを考慮すべくS12が実行される。
【0069】
S12においては、特定移動局10Aの存在確率に基づいて、S10で選択された最も高い確率評価値となる組み合わせと、S11で前記範囲Δfにその確率評価値が含まれた前記他の組み合わせとの何れを移動局の位置の組み合わせであるとして選択するかを決定する。具体的には、上述の通り、特定移動局10Aの存在確率がより高い特定移動局10Aを含む組み合わせが選択される。
【0070】
移動局位置補正部110に対応するS13においては、S10またはS12において移動局の位置の組み合わせであるとして選択された組み合わせとなるように、S3において算出された特定移動局10Aおよび他の移動局10Bの存在位置が補正される。
【0071】
上述の実施例によれば、測位システム8において、存在確率算出部に対応する存在確率算出部102によって、測位部に対応する測位部56による測位結果が、移動可能領域50における複数の移動局10の位置に対する存在確率としてそれぞれ算出され、第2の測距部に対応する第2測距部70によって、前記複数の移動局10間の距離が第1の測距部に対応する第1測距部42よりも高い測距精度において測定され、移動局位置抽出部に対応する移動局位置抽出部106によって、第2測距部70により測定される複数の移動局10間の距離に基づいて複数の移動局10の移動可能領域50内における位置の組み合わせが抽出され、移動局位置選択部に対応する移動局位置選択部108によって、前記存在確率算出部102において算出された存在確率に基づいて、移動局位置抽出部106により抽出された複数の移動局10の位置の組み合わせに対応する確率評価値が算出されるとともに、最も確率評価値が高い複数の移動局10の位置の組み合わせが選択され、移動局位置補正部に対応する移動局位置補正部110によって、測位部56による測位結果である複数の移動局10の位置が、移動局位置選択部108によって選択された移動局10の位置の組み合わせとなる様に補正されるので、精度の高い測位が実行される。
【0072】
また、上述の実施例によれば、移動局10は第2測距部70を有し、第2測距部70による測距の結果は、発信部としての無線部28などによって発信される電波を介して移動局位置抽出部106に伝達される。このようにすれば、移動局10は前記第2測距部70を有するので、自己の移動局10が他の移動局10との間隔が測距され、その測距結果は移動局10の有する発信部により電波を解して移動局位置抽出部106に伝達されることができる。
【0073】
また、上述の実施例によれば、測位サーバ14は、存在確率算出部102、移動局位置抽出部106、移動局位置選択部108及び移動局位置補正部110とを有するので、移動局の位置に必要な計算を測位サーバ14で集約して実行することができる。
【0074】
また上述の実施例によれば、第2測距部70は、音波発信機および音波センサ72を有し、超音波を用いて測距を行うことを特徴とする。このようにすれば、特定移動局10Aと他の移動局10Bとの間の間隔が電波よりも速度が遅い音波を用いて測距されるので、電波を用いるよりも正確な測距が可能となる。
【0075】
また上述の実施例によれば、第2測距部70は、画像認識用カメラ76を有し、画像認識用カメラ76によって撮像された画像に基づいて測距を行うことを特徴とする。このようにすれば、画像認識用カメラ76によって撮像された画像に基づいて複数の移動局10間の距離が測距されるので、移動局10はセンサ等を備える必要がない。
【0076】
また上述の実施例によれば、第2測距部70は、複数の移動局10のうち、位置の補正を正確に実行しようとする1の移動局である特定移動局10Aと、測位部56により特定移動局10Aに最も近い位置に存在するとされた他の移動局10Bとの距離を測距することを特徴とする。このようにすれば、前記第2測距部70は、特定移動局10Aと特定移動局10Aに最も近い位置に存在するとされた他の移動局10Bとの距離を測距するので、その際の測距誤差が小さくなる。
【0077】
また上述の実施例によれば、移動局位置選択部108は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、存在確率算出部102によって算出された特定移動局10Aの存在確率が高い移動局の位置の組み合わせを選択することを特徴とする。このようにすれば、確率評価値が所定の範囲にある複数の移動局の位置の組み合わせが存在する場合であっても、存在確率算出部102によって算出された特定移動局10Aの存在確率が高い移動局の位置の組み合わせが選択されるので、前記特定移動局10Aの位置がより精度よく補正される様にされる。
【0078】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0079】
図15は、移動局位置選択部108における別の方法による移動局の位置の組み合わせの選択を説明するための図であって、図13に相当する図である。本実施例は、移動局位置選択部108における移動局の位置の組み合わせの選択の方法が異なるものであって、移動局位置選択部108以外の構成およびその作動については、上述の実施例1、すなわち図1乃至図14と共通するものであるので説明を省略する。
【0080】
移動局位置選択部108は、移動局位置抽出部106において抽出された特定移動局10Aと他の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせに対して、測位部56による測位の結果と、存在確率算出部102で算出された各基地局10ごとの存在確率に基づいて、前記抽出された組み合わせの確率評価値をそれぞれ算出するとともに、算出された組み合わせの確率評価値のうち最も高い確率評価値に対応する組み合わせを選択する。具体的には、まず、前記組み合わせを構成する各基地局について、各基地局の測位結果とのずれに基づいて例えば図12に示す関係に基づいてその存在確率をそれぞれ算出する。そして、算出された前記組み合わせを構成する特定移動局10Aの存在確率と他の移動局10Bのそれぞれの存在確率を乗ずることによって得られた数を、前記組み合わせの確率評価値とする。すなわち、前記組み合わせ(xa,xb)に対し、測位結果が(μa,μb)であり、その場合の各移動局の存在確率を(fa,fb)、前記組み合わせの確率評価値をfとすると、faは特定移動局10Aの測位結果からのずれ(μa−xa)の関数であるから、fa(μa−xa)と書き表され、fbは同様に他の移動局10Bの測位結果からのずれfb(μb−xb)で書き表される。このとき、前記組み合わせの確率評価値は
f=fa(μa−xa)×fb(μb−xb)
となる。このようにして前記組み合わせの複数について確率評価値fを算出し、その中で最大の値fmaxとなった確率評価値に対応する組み合わせ(xamax,xbmax)を選択する。
【0081】
図15は、この様子を前記直線で規定された移動可能領域50の例で示したものである。図中横軸(x軸)が移動可能領域50を、縦軸が存在確率を表している。測位部56による測位の結果、特定移動局10Aはx=8の点A1に、他の移動局10Bはx=18の点B1に存在すると算出されたとする。これらの測位結果に対して、存在確率算出部102によって算出された測位結果とのずれと存在確率との関係が適用される。図中、10Aの存在確率fa、10Bの存在確率fbとして記載された曲線がそれである。
【0082】
一方、第2測位部70によって測位された特定移動局10Aから他の移動局10Bまでの距離がLであったとする。このとき、移動局位置抽出部106によって抽出される特定移動局10Aと他の移動局10Bとの組み合わせは、図中A21とB21、A22とB22、あるいはA23とB23など、その間隔がLである組み合わせが無数に抽出される。そして、このようにして抽出された特定移動局10Aと他の移動局10Bとの組み合わせのそれぞれについて、その特定移動局10Aの位置に対応する存在確率faと他の移動局10Bの位置に対応する存在確率fbとが算出され、算出されたfaとfbとが乗ぜられて、前記組み合わせの確率評価値fがそれぞれ算出される。
【0083】
このようにして算出された各組み合わせに対応する確率評価値fが比較され、これらのうち最も高い値となるfmaxとなる組み合わせが選択される。例えば、図15において、特定移動局10AがA21、他の移動局10BがB21であるときに組み合わせの確率評価値fが最大となる場合には、特定移動局10AがA21と他の移動局10BがB21とからなる組み合わせが選択される。
【0084】
なお、移動局選択部108によって算出された各組み合わせに対応する確率評価値fを比較した際に、前記最も高い値fmaxを上限として予め定められた所定の範囲内に他の組み合わせに対応する確率評価値fが存在する場合には、移動局選択部108は、移動局の移動履歴を考慮した移動局の選択を行う。図15の例を用いて具体的に説明する。例えば、特定移動局10AがA21であり他の移動局10BがB21である組み合わせに対応する確率評価値f21と、特定移動局10AがA22であり他の移動局10BがB22である組み合わせに対応する確率評価値f22とが予め定められた範囲Δfに属する、すなわち|f11−f22|<Δfである場合には、移動局の移動履歴を考慮する。
【0085】
前記移動局の移動履歴とは、具体的には例えば、特定移動局10Aの前回の測位実行時における位置情報である。測位システム8によって前回に算出された特定移動局10Aの位置は、後述する測位結果記憶部112によって記憶されている。この前回算出された特定移動局10Aの位置がA0であった場合、移動局選択部108は、A21およびA22のうち、前回の特定移動局10Aの位置に近いA22を含む組み合わせを選択する。
【0086】
あるいは、前記移動局の移動履歴とは、特定移動局10Aの前回までの複数回の測位実行結果に基づく移動情報であってもよい。すなわち、測位システム8によって測位が複数回反復して実行されている場合には、前回以前の複数回の位置情報から特定移動局10Aの移動速度を算出するともに、前回の測位実行時に算出された特定移動局10Aの位置と算出された移動情報とに基づいて今回の測位実行時における特定移動局10Aの位置を予測し、予測された特定移動局10Aの存在位置に近い特定移動局位置10Aを含む組み合わせを選択するようにしてもよい。図15の例で説明すると、前回の測位実行時に特定移動局10Aの位置がA0であり、更にその前の測位実行時に特定移動局10Aの位置がA’sであった場合には、これらの情報に基づいて今回の測位実行時には特定移動局10AはA22近辺に存在すると予測し、その結果A22を含む組み合わせが選択される。一方、前回の測位実行時に特定移動局10Aの位置がA0であり、更にその前の測位実行時に特定移動局10Aの位置がA’fであった場合には、これらの情報に基づいて今回の測位実行時には特定移動局10AはA21近辺に存在すると予測し、その結果A21を含む組み合わせが選択される。
【0087】
図14のフローチャートについても、移動局位置選択部108に対応するS10乃至S12のうち、特にS12について、その作動が異なる。
【0088】
S12においては、特定移動局10Aの移動履歴に基づいて、S10で選択された最も高い確率評価値となる組み合わせと、S11で前記範囲Δfにその確率評価値が含まれた前記他の組み合わせとの何れを移動局の位置の組み合わせであるとして選択するかを決定する。なお、上述の通り、前記移動履歴としては、前回の測位システム8の実行結果としての特定移動局10Aの存在位置や、あるいは測位システム8の前回までの複数回の実行結果に基づく特定移動局10Aの移動情報すなわち過去の存在位置の変化に基づいて予測される今回の存在位置などが用いられる。
【0089】
なお、本実施例2は、上述の実施例1に代えて、あるいは上述の実施例1に加えて実行され得るものである。
【0090】
上述の実施例によれば、移動局位置選択部108は、算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲Δf内にある複数の移動局10の位置の組み合わせが存在する場合には、移動局位置選択部108実行前までにおける移動局10の移動履歴に基づいて、移動局10の位置の組み合わせを選択するようにされている。このようにすれば、前記確率評価値が所定の範囲にある複数の移動局10の位置の組み合わせが存在する場合であっても、移動局10の移動履歴に基づいて移動局10の位置の組み合わせが選択されるので、実際の移動局10の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【0091】
また上述の実施例によれば、移動局10の移動履歴は、移動局位置選択部108実行前における移動局10の位置に関する情報である。このようにすれば、移動局10の移動履歴として移動局位置選択部108実行前における前記移動局の位置に関する情報が用いられるので、実際の移動局10の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【0092】
また上述の実施例によれば、移動局10の移動履歴は、移動局位置選択部108実行前までにおける移動局10の移動に関する情報である。このようにすれば、移動局10の移動履歴として移動局位置選択部108実行前までにおける前記移動局10の移動に関する情報が用いられるので、実際の移動局10の位置に則した移動局の位置の組み合わせを選択することができる。
【実施例3】
【0093】
上述の実施例1乃至実施例2は、説明を簡単にするため、移動可能領域50を直線状に設けた場合を例とした。本実施例は、移動可能領域50が平面で設けられる場合の例である。本実施例は、先の実施例1乃至2において説明した移動可能領域50が直線状すなわち1次元であった場合を、移動可能領域50が平面状すなわち2次元に拡張するものであって、測位システム8の構成およびその作動については、上述の実施例1乃至2、すなわち図1乃至図14と共通するものであるので説明を省略する。
【0094】
図16は、移動局位置選択部108における別の方法による移動局の位置の組み合わせの選択を説明するための図であって、図13または図15に相当する図である。
【0095】
図16においては、図中黒丸で表されたA1およびB1が、それぞれ測距部56による特定移動局10Aおよび他の移動局10Bの測位結果である。また、移動局位置抽出部106によって、この測位結果とされた座標を中心に、図15において縦軸方向に表されていた存在確率が等高線状に表現されている。
【0096】
また、第2測距部70によって測定された特定移動局10Aと他の移動局10Bとの距離はL(m)であって、測距部56によって算出された距離Dよりも短いものとなっている。ここで、移動局位置抽出部106は移動可能領域50中に距離がLとなる移動局10の位置の組み合わせを無数に抽出する。例えば図16において線90で相互に結ばれた特定移動局10Aの位置A23と他の移動局10Bの位置B21、B22、B23、B24、およびB25のそれぞれの組み合わせや、特定移動局10Aの位置A21、A22、A23、A24、およびA25のそれぞれと他の移動局10Bの位置B23の組み合わせなどが抽出される。
【0097】
そして、移動局位置選択部108によって前記線90によって表される移動局の組み合わせのうち、最も確率評価値の高い組み合わせが移動局10の位置の組み合わせとして選択される。図16においては太線90bで表された移動局の位置の組み合わせ、すなわちA23およびB23が選択される。そして、移動局位置補正部110により、測位部56によって測位された位置であるA1およびB1から、それぞれ特定移動局10AはA23の位置に、他の移動局10BはB23の位置にその存在位置が補正される。
【0098】
このように、本発明は移動可能領域50が平面で与えられる場合であっても適用が可能であり、さらには移動可能領域50が3次元空間で与えられる場合であっても同様に適用が可能である。
【0099】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0100】
例えば、上述の実施例においては、移動局10が移動しうる領域である移動可能領域50は一辺30mの正方形の平面として設けられたが、これに限られない。具体的には、移動可能領域50が平面である場合にその形状が限定されることはなく、また移動可能領域50が平面ではなく空間として設けられてもよく、その場合の形状も限定されない。なお、移動可能領域50が空間として設けられる場合には、上述の様に測位に必要な基地局の個数は最低4個となる。
【0101】
上述の実施例においては、測位サーバ14と各基地局12とは有線ケーブル52で接続されて通信を行ったが、測位サーバ14と各基地局12との間の通信は有線に限定されず、例えば電波や赤外線等によっても可能である。
【0102】
上述の実施例において、移動局10および基地局12に設けられた平衡不平衡変換部22は、必ずしも必要ではなく、機器の構成状態によっては整合器としての機能のみを有すればよい場合がある。
【0103】
上述の実施例においては、スペクトラム拡散部34の手法として直接拡散方式が採用されたがこれに限られず、UWB(Ultra Wide Band)などその他の方式が用いられても良い。
【0104】
上述の実施例においては、位置計算部56においては、上記式(1)を連立方程式としてニュートンラフソン法などを用いて解くこととされたが、これに限られず、例えば測距結果と状態遷移に基づいて最適解を導出するようにしてもよい。
【0105】
上述の実施例においては、測距部40は基地局12の機能として設けられたが、これに限られず、例えば測位サーバ14内に設けられても良い。この場合、基地局12から測位サーバ14へは、例えば、基地局12が受信した信号波がそのまま送信される様にすればよい。
【0106】
また、上述の実施例においては、第2測距部70は少なくとも音波発信機および音波センサ72あるいは画像認識用カメラ76を用いて測距を行ったが、これ以外の手段によって測距を行ってもよい。また、上述の実施例においては、前記複数の移動局10間の相互の通信は必要とされなかったが、音波発信機および音波センサ72あるいは画像認識用カメラ76に代えて用いられる測距方法が複数の移動局10間の相互の通信を必要とする場合には、これを設ける様にすればよい。
【0107】
上述の実施例においては、移動局位置抽出部106は、(xa,xb)=(0,11),(1,12),(2,13),…のようにxaが1(m)刻みで抽出されたが、これに限られず、例えば第2測距部70によって測定される前記特定移動局10Aと他の移動局10Bとの距離の精度に基づいて決定される様にしてもよい。
【0108】
また、上述の実施例1および2において、移動局位置選択部108は、移動局の組み合わせに対応する確率評価値が最大の値を上限として所定の範囲Δf内に他の移動局の組み合わせに対応する確率評価値がある場合にはそれを考慮したが、これは必ずしも必要でなく、確率評価値が最大である移動局10の組み合わせがそのまま移動局位置選択部108により移動局の位置の組み合わせとして選択されてもよい。
【0109】
また、図14のフローチャートにおいて、存在確率算出部102に対応するステップS7はS6とS8との間に実行される様にされたが、これに限られず、本ステップにおいて実行される存在確率の算出はS8の前に実行されていればよい。また、本ステップにおいて算出される標準偏差の値は、適宜更新されてもよいし、予め算出された値が変更されず使用されてもよい。
【0110】
また、上述の実施例においては、測位部56、移動局選択部104、存在確率算出部102、移動局位置抽出部106、移動局位置選択部108、移動局位置補正部110、測位結果記憶部112、および測位結果出力部60は測位サーバ14の機能として設けられたが、これに限られず、これらの機能の一部あるいは全部を測位サーバ14以外の機器、例えば基地局12が有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明が適用される測位システムの一例の概観を表した図である。
【図2】移動可能領域に定義される座標を説明する図である。
【図3】移動局の機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図4】移動局の取り得る形状の一例を説明した図である。
【図5】移動局に設けられた画像認識用カメラを用いた場合の第2の測距部による測距を説明する図である。
【図6】移動局に設けられた画像認識用カメラを用いた場合の第2の測距部による測距を説明する図である。
【図7】基地局の機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図8】測位サーバの機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図9】測位サーバによる測位の原理を説明するための図である。
【図10】基地局の有する時計の同期を行う手順の一例を説明するタイムチャートである。
【図11】各基地局と移動局との距離を測定する手順の一例を説明するタイムチャートである。
【図12】測位された移動局位置からのずれと存在確率の関係を表す図である。
【図13】複数の移動局の移動可能領域における位置と存在確率との関係を表す図であって、移動局位置選択部による特定移動局の存在確率に基づいた移動局の組み合わせの選択を説明する図である。
【図14】本発明の測位システムの作動の概要を表すフローチャートである。
【図15】複数の移動局の移動可能領域における位置と存在確率との関係を表す図であって、移動局位置選択部による移動履歴に基づいた移動局の組み合わせの選択を説明する図である。
【図16】複数の移動局の平面上に設けられた移動可能領域における位置と存在確率との関係を表す図であって、移動局位置選択部による移動局の組み合わせの選択を説明する図である。
【符号の説明】
【0112】
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
14:測位サーバ
42:第1の測距部(第1測距部)
56:測位部
70:第2の測距部(第2測距部)
72:音波センサ
76:画像認識用カメラ
102:存在確率算出部
104:基地局選択部
106:移動局位置抽出部
108:移動局位置選択部
110:移動局位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動可能領域を移動可能であって電波を発信する発信部を有する複数の移動局と、
該複数の移動局によって発信された電波を受信する受信部と、前記受信した電波に基づいて前記複数の移動局との距離をそれぞれ測定する第1の測距部とを有し、既知の位置に固定された複数の基地局と、
該複数の基地局によって測定された距離データに基づいて前記複数の移動局の位置をそれぞれ測位する測位部を有する測位サーバとを、有する測位システムにおいて、
前記測位部による複数回の測位結果に基づいて、前記移動可能領域における前記複数の移動局の位置に対する存在確率分布をそれぞれ算出する存在確率算出部と、
前記第1の測距部よりも高い測距精度を有し、前記複数の移動局間の距離を測定する第2の測距部と、
前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出する移動局位置抽出部と、
前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置選択部と、
前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置を、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなる様に補正する移動局位置補正部とを、
有することを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記移動局は、
前記第2の測距部を有し、
前記第2の測距部による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部に伝達されること
を特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記測位サーバは、
前記存在確率算出部、前記移動局位置抽出部、移動局位置選択部及び前記移動局位置補正部とを有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記第2の測距部は、音波を用いて測距を行うこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の測位システム。
【請求項5】
前記第2の測距部は、画像認識用カメラを有し、該画像認識用カメラによって撮像された画像に基づいて測距を行うこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の測位システム。
【請求項6】
前記第2の測距部は、前記複数の移動局のうち、位置の補正を正確に実行しようとする1の移動局である特定移動局と、前記測位部により該特定移動局に最も近い位置に存在するとされた他の移動局との距離を測距すること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の測位システム。
【請求項7】
前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動履歴に基づいて、前記移動局の位置の組み合わせを選択すること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の測位システム。
【請求項8】
前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前における前記移動局の位置に関する情報であること、
を特徴とする請求項7に記載の測位システム。
【請求項9】
前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報であること、
を特徴とする請求項7に記載の測位システム。
【請求項10】
前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部によって算出された前記特定移動局の存在確率が高い前記移動局の位置の組み合わせを選択すること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−249670(P2008−249670A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95057(P2007−95057)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】