説明

測位支援装置

【課題】本発明は、衛星航法に基づく測位系において、航行衛星の位置、速度、加速度の何れかに生じる欠落を補完する測位支援装置に関し、地形や地物の分布に柔軟に適応し、かつ精度よく安定にリアルタイムによる測位を可能とすることを目的とする。
【解決手段】軌道データで時系列tの順に定まる航行衛星の速度Vt を蓄積するログ手段と、前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る候補取得手段と、前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和の前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtに対する偏差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する補完手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星航法が適用された測位系において、測位の基準となる航行衛星の位置、速度、加速度の何れかに生じる欠落を補完する測位支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、地球の周りを周回する所定の数のGPS衛星から無線信号が到来する地点であれば、安定に確度高くその地点の測位が実現されるため、航空機、船舶、自動車等の移動体のナビゲーションだけではなく、例えば、ゲーム機器やスポーツ機器、様々な科学技術分野の系や装置にも広範に利用されつつある。
【0003】
このようなGPSでは、個々のGPS衛星の軌道を示す軌道データは「エフェメリス」と呼ばれ、その有効期限は、一般に、達成されるべき測位の精度の制約により4時間程度となっている。
【0004】
しかし、個々のエフェメリスは、伝送に所要する時間が30秒と長いために、特に、都市部や市街地では、GPS衛星からGPS受信機に至る伝搬路が地形や地物によって遮られる可能性が高い。このような可能性は、4時間以上の長時間に亘って軌道データの更新が行われない状況に陥ることによって測位の精度が許容されない程度まで低下し、さらに、GPSを応用したシステムや装置の実現性や性能の確保が妨げられる要因となっていた。
【0005】
従来、このような要因を緩和し、あるいは軽減する技術としては、例えば、以下の項目に基づく積分を時系列の順に行うことにより、GPS衛星の軌道を予測する技術(以下、「第一の技術」という。)があった。
(1) 最新のエフェメリスに基づいて得られたGPS衛星の位置(以下、「初期位置」という。)および速度(以下、「初期速度」という。)
(2) GPS受信機内に記憶され、かつ該当するGPS衛星に作用して軌道に何らかの誤差を生じる要因である外力(例えば、地球重力の歪などに起因する。)
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1〜特許文献3がある。
(1) 「測位演算において、測位可能であった場合は現在位置を決定し、測位できなくなった場合は、測位可能であった地点と2衛星測位により現在位置の予測値を求めるナビゲーションシステムを実現し、また、測位演算において測定誤差を評価すると共に、移動誤差評価において誤差の増加を評価し、位置の測定誤差を変更する」ことによって、「測位出来なくなった場合に求めた現在位置の予測値の信憑性が不明となる課題を解決し、予測値の誤差を評価することで、利用者が予測結果を正しく判断できる」点に特徴がある位置検出装置および位置測定方法…特許文献1
【0007】
(2) 「測位演算において、通常の測位で位置の決定に十分な精度が得られるような衛星が揃っている場合は測位演算を行い、測位ができない場合で2個以上の衛星が揃っている場合は、2つの衛星を選択し、その2つの衛星の測定結果から移動体が存在する領域と速度成分を求め、さらに、車速センサからの移動体の移動距離をもとに、現在位置を推測する」ことによって、「衛星の測定結果により現在位置が特定できなくなった場合でも、誤差の評価値が最小となる衛星を選択し、これらの測定結果より現在位置が存在する領域と速度成分を算出する」点に特徴がある位置測定方法…特許文献2
【0008】
(3) 「受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合には測定した疑似距離変化率から移動体の速度ベクトルを算出する第1の移動体速度ベクトル算出部と、受信可能なGPS衛星数が3個未満の場合には1または2個のGPS衛星についての疑似距離変化率、及び上記3個以上のときに確定した速度ベクトルから求めたGPS方位にジャイロセンサより求めた移動体回転角を加えて求まる移動体の現在方位から移動体の速度ベクトルを算出する第2の移動体速度ベクトル算出部と、各々得られた速度ベクトルから移動体の位置を推定する移動体位置推定部とを有する」ことによって、「受信可能なGPS衛星数に依らず、最低1個以上受信できる状態であれば、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることができる」点に特徴があるGPSナビゲーション装置…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−91978号公報
【特許文献2】特開平7−332990号公報
【特許文献3】特開平8−160119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した「第一の技術」では、既述の初期速度は、予測時間が長いほど測位結果に大きな誤差を及ぼすため、例えば、7日後におけるGPS衛星の位置の予測誤差が10m以下に抑えられるべき場合には、2×10−5(≒10/(7×24×60×60))[m/sec]以下の誤差で得られなければならなかった。
しかし、このような小さな誤差は、エフェメリスから本来的に得られるGPS衛星の位置の誤差が1m程度であり、かつエフェメリスから得られるGPS衛星の速度の誤差が10−2(m/sec)程度であるために、実際には適用され難かった。
【0011】
なお、初期速度は、従来、所定の公的機関等からインターネットを経由して事後に公表される精密軌道データを用いて算出することが可能である。しかし、このような精密軌道データは、以下の制約があるため、利用され難かった。
(1) 所望の装置、システム、あるいはGPS受信機に引き渡されるべき精密な軌道データを得るために、通信回線およびサーバが設けられなければならない。
(2) 軌道データが数日遅れて公表されるため、実時間性の確保が困難である。
【0012】
また、上記予測誤差を軽減(圧縮)する技術としては、例えば、以下の技術(以下、「第二の技術」という。)が考えられる。
(1) 最古のエフェメリスより初期速度を求める。
(2) その初期速度を初期値として未来に向かって「外力」とGPS衛星の質量との比を積分することにより、最新のエフェメリスの時刻における位置を求める。
【0013】
(3) このようにして求められた位置と最新のエフェメリスから得られた位置の差が最小となるように初期速度を修正するすることにより、最新のエフェメリスの時刻における速度を「次の予測の基点となる時刻の初期速度」とする。
【0014】
しかしながら、第二の技術では、GPS衛星の軌道の推定が未来に向かって行われるため、得られた初期速度や速度は、最新のエフェメリスの時刻あるいは現在におけるGPS衛星の位置の予測の精度に関する保証を何ら与えるものではない。
【0015】
本発明は、ハードウェアの構成が変更されることなく、地形や地物の多様な分布に柔軟に適応し、かつ精度よく安定にリアルタイムによる測位を可能とする測位支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の特許請求の範囲に記載された請求項1〜9の相違点は、以下に列記するように、「ログ手段による蓄積の対象(以下、「ログ対象」という。)」と、「補完手段によって行われる補完の対象(以下、「補完対象」という。)」との組み合わせにある。
(1) 請求項1 ログ対象:速度,補完対象:速度
(2) 請求項2 ログ対象:位置,補完対象:位置
(3) 請求項3 ログ対象:加速度,補完対象:加速度
(4) 請求項4 ログ対象:位置,補完対象:速度
(5) 請求項5 ログ対象:加速度,補完対象:速度
(6) 請求項6 ログ対象:速度,補完対象:位置
(7) 請求項7 ログ対象:加速度,補完対象:位置
(8) 請求項8 ログ対象:位置,補完対象:加速度
(9) 請求項9 ログ対象:速度,補完対象:加速度
【0017】
請求項1に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る。補完手段は、前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtとの差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する。
【0018】
すなわち、航行衛星の速度は、所望の時点で予測により得られた速度vt0、vt1〜vtnの内、これらの速度vt0、vt1〜vtnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の積分結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された速度との差が小さい特定の速度で補完される。
【0019】
請求項2に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の位置pt0と、前記位置pt0に対する誤差が所定の範囲内にある位置pt1〜ptnとを得る。補完手段は、前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptとの差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の位置で前記航行衛星の位置を補完する。
【0020】
すなわち、航行衛星の位置は、所望の時点で予測により得られた位置pt0、pt1〜ptnの内、これらの位置pt0、pt1〜ptnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の二重積分の結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された位置との差が小さい特定の速度で補完される。
【0021】
請求項3に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る。補完手段は、前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atに対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の加速度で前記航行衛星の加速度を補完する。
すなわち、航行衛星の加速度は、所望の時点で予測により得られた加速度at、at1〜atnの内、先行して航行衛星の軌道データに基づいて時系列tの順に求められ、かつログ手段に蓄積された所定の数Nの加速度Atに対する偏差が小さな特定の加速度で補完される。
【0022】
請求項4に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る。補完手段は、前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和の積分の結果と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptとの偏差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する。
【0023】
すなわち、航行衛星の速度は、所望の時点で予測により得られた速度vt0、vt1〜vtnの内、これらの速度vt0、vt1〜vtnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の二重積分の結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された位置との差が小さい特定の速度で補完される。
【0024】
請求項5に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る。補完手段は、前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atの積分の結果との差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する。
【0025】
すなわち、航行衛星の速度は、所望の時点で予測により得られた速度vt0、vt1〜vtnの内、これらの速度vt0、vt1〜vtnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の積分結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された加速度の積分の結果との差が小さい特定の速度で補完される。
【0026】
請求項6に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の位置pt と、前記位置pt0に対する誤差が規定の値域内にある位置pt1〜ptnとを得る。補完手段は、前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtの積分の結果との差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の位置で前記位置を補完する。
【0027】
すなわち、航行衛星の位置は、所望の時点で予測により得られた位置pt0、pt1〜ptnの内、これらの位置pt0、pt1〜ptnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の二重積分の結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された速度の積分の結果との差が小さい特定の速度で補完される。
【0028】
請求項7に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の位置pt0と、前記位置pt0に対する誤差が所定の範囲内にある位置pt1〜ptnとを得る。補完手段は、前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atの二重積分の結果との差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の位置で前記位置を補完する。
【0029】
すなわち、航行衛星の位置は、所望の時点で予測により得られた位置pt0、pt1〜ptnの内、これらの位置pt0、pt1〜ptnをそれぞれ初期値として時系列の逆順に行われる外力Ftと質量mとの比(加速度を意味する)の二重積分の結果と、過去に軌道データに基づいて求められて蓄積された加速度の二重積分の結果との差が小さい特定の速度で補完される。
【0030】
請求項8に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る。補完手段は、前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptの前記時系列の逆順における二階微分の結果に対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の加速度で前記前記航行衛星の加速度を補完する。
【0031】
すなわち、航行衛星の加速度は、所望の時点で予測により得られた加速度at0、at1〜atnの内、先行して航行衛星の軌道データに基づいて時系列tの順に求められ、かつログ手段に蓄積された所定の数Nの位置Ptの二階微分の結果との和に対する偏差が小さな特定の加速度で補完される。
【0032】
請求項9に記載の発明では、ログ手段は、航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積する。候補取得手段は、前記航行衛星の予測加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る。補完手段は、前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtの前記時系列の逆順における微分の結果に対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の加速度で前記前記航行衛星の加速度を補完する。
【0033】
すなわち、航行衛星の加速度は、所望の時点で予測により得られた加速度at0、at1〜atnの内、先行して航行衛星の軌道データに基づいて時系列tの順に求められ、かつログ手段に蓄積された所定の数Nの速度Vtの微分の結果に対する偏差が小さな特定の加速度で補完される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、従来例に比べてハードウェアの構成が基本的に変更されないにもかかわらず、正常に受信できなかった軌道データの送信源である航行衛星の速度、加速度、位置の何れもが精度よく補完され、その航行衛星に基づく測位の精度が安定に高く維持される。
【0035】
また、本発明では、地形や地物の多様な分布に対する柔軟な適応が可能となり、かつ実時間性が損なわれることなく、精度よく安定に測位の継続が可能となる。
【0036】
したがって、本発明が適用された衛星航法系は、コストが増加することなく、多様な分野に対する柔軟な応用の可能性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】ログバッファの構成を示す図である。
【図3】本実施形態の動作フローチャートである。
【図4】本実施形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【0039】
図において、GPS衛星(図示されない。)から無線信号が到来するアンテナ11の給電点には無線部12のアンテナ端子が接続され、その無線部12の出力は信号処理部13の対応するアナログポートに接続される。信号処理部13の第一の出力は無線部12の局発入力に接続され、その信号処理部13の第二の出力には上記GPS衛星の位置(以下、「衛星位置」という。)、速度(以下「衛星速度」という。)、加速度(以下、「衛星加速度」という。)の全てまたは一部が出力される。信号処理部13の主記憶の特定の記憶領域には、図1に点線で示すように、ログバッファ13LBが配置される。このログバッファ13LBは、図2示すように、個々のGPS衛星に対応する所定数Nのレコードであるセグメント13S-1〜13S-kの集合として構成され、これらのセグメント(レコード)には、以下の2つの情報がそれぞれ保持されるフィールドを有する。
【0040】
(1) 該当するGPS衛星の位置Pt
(2) 該当するGPS衛星に作用し、そのGPS衛星の軌道が変化する要因となり得る外力Ft
【0041】
図3は、本実施形態の動作フローチャートである。
図4は、本実施形態の動作を説明する図である。
図において、縦軸は所望のGPS衛星の位置を示し、横軸は時間(時系列)tを示す。
【0042】
以下、図1〜図4を参照して本実施形態の動作を説明する。
本実施形態の各部の基本的な動作は、以下の通りである。
無線部12は、GPS衛星からアンテナ11に到来した受信波を取り込み、信号処理部13によって与えられる局発信号に基づいてその受信波をヘテロダイン検波することにより中間周波信号を生成し、その中間周波信号をA/D変換することにより、ディジタル信号を生成する。
【0043】
信号処理部13は、以下の処理を行う。
(1) 所定のアルゴリズムに基づいてGPS衛星を順次選択し、選択された個々のGPS衛星について、受信波のドプラシフトを推定し、そのドップラシフトの中心値を含む所定の周波数帯域における受信波との相関をとる。
(2) 並行してGPS衛星から受信され得るC/Aコードの内、該当するGPS衛星から受信されたC/Aコードとの相関が最大となる周波数と、C/Aコードの位相とを検出してGPS衛星を捕捉する。
【0044】
(3) 何れのGPS衛星についても、捕捉した後には、搬送波とC/Aコードの位相との追尾を継続して行う。
(4) GPS衛星から受信されるC/Aコードの位相を測定することにより、受信波が送信された時刻(以下、「送信時刻」という。)を求める。
【0045】
(5) 「本実施形態に係るGPS受信機(以下、単に「受信機」という。)に内蔵された時計(以下、「内蔵時計」という。)が与える時刻」の上記「送信時刻」に対する偏差を該当するGPS衛星から到来する受信波の伝搬所要時間Tとして求める。
(6) この伝搬所要時間Tと上記受信波の伝搬速度の公称値Cとの積として、GPS衛星の擬似距離を求める。
【0046】
(7) 受信波を復調することにより、アルマナック(軌道上の全てのGPS衛星の大まかな軌道情報を含む。)と、エフェメリス(受信波の送信元であるGPS衛星のクロック補正係数および軌道情報を含む。)とを取得する。
(8) 地球の中心を原点とする3次元座標系における個々のGPS衛星の衛星位置を上記エフェメリスに基づいて求める。
【0047】
(9) これらのGPS衛星の内、4個以上のGPS衛星について、上記「送信時刻」における「衛星位置」および「擬似距離」に対して成立する連立方程式の解として、地球上における受信機の位置(X,Y,Z)と、その受信機の「内蔵時計」が与える時刻の偏差とを求め、これらの位置および偏差を出力する。
【0048】
本実施形態の特徴は、上記(8)項に示すように「地球の中心を原点とする3次元座標系における個々のGPS衛星の衛星位置をエフェメリスに基づいて求める処理」が以下の手順に基づいて行われる点にある。
【0049】
信号処理部13は、正常に受信されたエフェメリスに基づいてGPS衛星の衛星位置を算出する過程では、以下の処理を並行して行う。
【0050】
(1) 該当するGPS衛星毎に、時刻tに対応し、かつ軌道が変化する要因である外力Ftを求める(図3ステップS1)。ここに、外力Ftは、例えば、所望のGPS衛星の識別子と時刻tとに対応したレコードの列として予め与えられる。なお、このようなレコードの列は、例えば、GPS衛星の識別子と時刻tとを含む問い合わせに応答するウェブサービスによって適宜もしくは始動時に生成され、または更新されてもよい。さらに、このようなレコードの列は、何れのGPS衛星についても、周回の軌道や周期の変動および偏差が許容される程度に短い期間に亘ってサイクリックに参照されることにより、更新される頻度が小さな値に抑えられてもよい。
【0051】
(2) ログバッファ13LBのセグメント13S-1〜13S-kの内、該当するGPS衛星に対応したセグメントに、そのGPS衛星に関して算出された衛星位置Ptと、上記外力Ftとの対をサイクリックに蓄積する。(図3ステップS2,図4(1))。
【0052】
なお、以下では、時刻tについては、一定の周期Δtと整数iとの積(=Δt・i)として与えられると仮定し、既述の衛星位置Ptおよび外力Ftについては、上記整数iを用いることにより、それぞれ「Pi」、「外力Fi」と表記する。
【0053】
また、信号処理部13は、最新のエフェメリス(以下、「最新エフェメリス」という。)が正常に受信できなかった(図4(2))場合には、該当するGPS衛星に関して以下の処理を行う(図4(3))。
【0054】
(1) この時点(以下、「現時点」という。)以前に正常に求められた最新の衛星速度vi0(=vt0)を識別する(図3ステップS3)。
【0055】
(2) この衛星速度vi0を示すベクトル空間上において、その衛星速度vi0の近傍を示す所定数n個の予測速度vi1(=vt1)〜vin(=vtn)を求める(図3ステップS4)。なお、以下では、これらの予測速度vi1〜vinについては、上記定数nを個別に示すサフィックスj(=1〜n)を用いることにより、「vij」と表記する。
【0056】
(3) ログバッファ13LBを時系列tの逆順((整数iの降順)に遡って参照することによって外力Ft(Fi)を識別し(図3ステップS5)、その外力Ft(Fi)に併せて、既述の時刻t(=Δt.i)、サフィックスj(=0〜n)、所定の数N、GPS衛星の質量mおよび初期値Pt(=P0)に対して下式で示されるように、上記「現時点」から時系列tの逆順(整数iの降順)に該当するGPS衛星の加速度を二重積分することにより、時間軸上でT(=Δt・N)前の時点における衛星位置Ptj(=Pij)を求める(図3ステップS6、図4(4))。
【数1】

【数2】

【0057】
(4) このようにして求められた衛星位置Pij(j=0〜n)の内、ログバッファ13LB上で該当するGPS衛星に対応するセグメントに蓄積されている最古の衛星位置Pi(=Pt)に対する偏差δが最小であり、あるいは所定の値域内にある特定の衛星位置PiJを特定する(図3ステップS7)。
【0058】
(5) 既述の予測速度vi0、vi1〜vinの内、上記衛星位置PiJに対応する特定の予測速度viJを特定し(図3ステップS8)、「最新エフェメリス」が正常に受信できなかったために得ることができなかった衛星速度を上記特定の予測速度viJで補完する(図3ステップS9、図4(4))。
【0059】
すなわち、本実施形態によれば、エフェメリスが正常に受信できなかった場合であっても、GPS受信機のハードウェアの構成が基本的に変更されることなく、衛星速度が精度よく補完される。
【0060】
このように本実施形態に係るGPS受信機は、コストが大幅に増加することなく、かつ実時間性が損なわれることなく、多様な地形や地物の分布に対する柔軟な適応が可能となり、GPSの多様な分野に対する適用が可能となる。
【0061】
したがって、本実施形態に係るGPS受信機は、多数の高層ビルが乱立する都市部や市街地においても、高い精度による安定な測位の継続と、多様な分野に対するGPSの応答の拡大とを可能とする。
【0062】
なお、本実施形態では、予測速度viJを求める処理の手順は、既述の手順に限定されず、例えば、ログバッファ13LBに外力Ft(=Fi)と共に蓄積される量(以下、「蓄積対象」という。)と、上記補完の対象となる量(以下、「補完対象」という。)とが以下の何れである場合であっても、ログバッファ13LBに蓄積されている最古の「蓄積対象」と「補完対象」との間における(双方または何れか一方の)ディメンジョンの差が適切な回数に亘る微分や積分の下で揃えられた後に、上記偏差が評価されることにより、同様に適用可能である。
【0063】
〔蓄積対象〕
過去に正常に受信されたエフェメリスに基づいて得られた衛星速度vt(=vi)または衛星加速度at(=ai)
【0064】
〔補完対象〕
衛星加速度または衛星位置
また、本発明は、GPS衛星に限定されず、軌道が静止軌道以外であり、かつ外力Ft(Fi)に応じて軌道が変化し得るならば、例えば、構築や開発が進められているグロナス、ガリレオ、コンパスその他の多様な航行衛星にも同様に適用可能である。
【0065】
さらに、本実施形態では、外力Ft(Fi)は、GPS衛星の軌道に影響を及ぼす力の内、衛星位置、衛星速度、衛星加速度の何れかの精度の低下が許容される限度において、以下の要素が如何なる組み合わせで反映された外力であってもよい。
EOP、歳差運動、章動運動、極運動、天体暦、地球重力ポテンシャル、潮汐対象天体、固体地球潮汐、海洋潮汐、固体地球極潮汐、惑星重力対象天体、食(地球)、食(月)、太陽輻射圧、地球アルベド、相対論
【0066】
また、本実施形態では、GPS衛星およびこれに代わる航行衛星の位置は、如何なる座標系で与えられてもよい。
【0067】
さらに、本実施形態では、既述のインターバルΔtと、二重積分が行われる期間の長さTとについては、所望の精度が確保され、かつ処理量の増加が許容されるならば、如何なる値に設定されてもよく、例えば、上記Tは、「最新エフェメリス」が正常に受信できなかったために衛星速度が得ることができない可能性がある場合には、測位の精度の低下が許容される程度に短い時間に設定されてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、外力Ft(=Fi)は、既述のウェブサービス(XMLデータ)として提供されなくてもよく、例えば、RSS(RDF Site Summary)やJSON(Java(登録商標)Script Object Notation) として提供されてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、ログバッファ13LBに含まれるセグメント13S-1〜13S-kの何れについても、該当するGPS衛星に関して蓄積される外力Ft(=Fi)は、例えば、上記ウェブサービスの応答性が十分に高い場合には、その蓄積の対象から除外され、かつ所定のウェブサービスによって与えられてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、既述の所定の数N(セグメント13S-1〜13S-kに個別に含まれるレコードの数)は、複数でなくてもよく、「1」であってもよい
さらに、本実施形態では、既述の偏差δは、衛星位置Pij(j=0〜n)の内、ログバッファ13LB上で該当するGPS衛星に対応するセグメントに蓄積されている最古の衛星位置Pi(=Pt)のみを基準として求められている。
【0071】
しかし、このような偏差δは、以下の何れかとして評価されてもよい。
(a) 「上記最古の衛星位置Pi(=Pt)およびこれに先行する所定の総数(≦N(=T/Δt))の衛星位置のそれぞれに対する偏差」と、「時系列t(整数i)の逆順に大きい重みw1」との積和PS1
(b) 「上記最古の衛星位置Pi(=Pt)およびこれに先行する所定の総数(≦N(=T/Δt))の衛星位置のそれぞれに対する偏差」と、「該当する衛星位置を示す座標系の所定の成分(の絶対値)が大きいほど大きな重みw2」との積和PS2
【0072】
また、本実施形態では、ログバッファ13LBのセグメント13S-1〜13S-kの内、該当するGPS衛星に対応したセグメントには、そのGPS衛星に関して算出された衛星位置Ptと、上記外力Ftとの対が蓄積されている。
【0073】
しかし、このような衛星位置Ptとしては、例えば、「エフェメリスが正常に受信されない場合に既述の通りに補完される予測速度viJが先行する衛星速度と共に積分される」ことによって得られる予測衛星位置PiJも蓄積され、かつ偏差δが既述の積和PS1、PS2の何れとして評価される場合にも、「正常に受信されたエフェメリスに基づいて得られた衛星位置Pt」に比べて、重みw1、w2が小さめの値(「0」であってもよい。)に設定されてもよい。
【0074】
さらに、衛星速度vi0を示すベクトル空間上において、その衛星速度vi0の近傍を示す所定数n個の予測速度vi1(=vt1)〜vin(=vtn)を求める処理(図3ステップS4)については、単に最新の衛星速度vi0を基準として求めるのではなく、例えば、以下の何れの処理で代替されてもよい。
【0075】
(1) 衛星速度vi0およびこれに先行する衛星速度の列に基づいてその衛星速度vi0に代わる衛星速度vi0′が求められ、その衛星速度vi0′を基準として予測速度vi1(=vt1)〜vin(=vtn)が求められる。
【0076】
(2) 衛星速度vi0およびこれに先行する衛星速度の列に基づく(n+1)通りの予測値として、その衛星速度vi0に代わる衛星速度vi0′および既述の予測速度vi1(=vt1)〜vin(=vtn)が求められる。
【0077】
また、本実施形態では、本発明は、GPS受信機の測位の精度を高め、かつ高く維持するために適用されている。
【0078】
しかし、本発明は、このような用途や目的だけではなく、例えば、以下に列記するように、GPS受信機の始動や起動に要する時間の短縮のためにも、同様に適用可能である。
【0079】
(1) GPS受信機内にアルマナックがない場合(先に記憶されているアルマナックの有効期限が過ぎた後、アルマナックを蓄積するメモリの不揮発性が保証されない状態)におけるコールドスタート
【0080】
(2) GPS受信機内に有効なアルマナックが蓄積されているが、エフェメリスが記憶されてなく、あるいは先に記憶されているエフェメリスの有効期限が過ぎた後におけるウォームスタート
(3) GPS受信機内に有効なアルマナックおよびエフェメリスが蓄積されている状態におけるホットスタート
【0081】
さらに、本実施形態の演算対象や演算手順は、既述の形態に限らず、所望の精度や応答性が達成されるならば、如何なるものであってもよい。
また、本実施形態では、既述の処理は、信号処理部13によって単独で行われている。
しかし、このような処理は、情報処理や信号処理を行う複数のプロセッサに如何なる形態で機能分散や負荷分散が図られてもよい。
【0082】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0083】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」対する記載の対象から除外した発明を整理し、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0084】
[請求項10] 請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記ログ手段は、前記時系列tの順に前記外力Ftを蓄積する。前記候補取得手段は、前記時系列tの順に前記ログ手段を参照することにより前記外力Ftを得る。
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記ログ手段は、前記時系列tの順に前記外力Ftを蓄積する。前記候補取得手段は、前記時系列tの順に前記ログ手段を参照することにより前記外力Ftを得る。
【0085】
すなわち、補完される速度、加速度、位置の何れを特定する処理の過程でも、演算対象に該当する「過去に航行衛星に作用した外力」は、外部のデータベースやウェブサイトに対する問い合わせが行われることなく、速やかに得られる。
【0086】
したがって、請求項1ないし請求項9の何れに係る測位支援装置も、応答性の向上に併せて、性能の安定化が図られる。
【0087】
[請求項11] 請求項1、4、5の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記候補取得手段は、前記時系列t上で先行して求められた複数pの予測速度に基づく予測の結果として前記予測速度vt0を求める。
【0088】
このような構成の測位支援装置では、請求項1、4、5の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記候補取得手段は、前記時系列t上で先行して求められた複数pの予測速度に基づく予測の結果として前記予測速度vt0を求める。
【0089】
このような予測速度vt0は、単に、「先行して正常に得られた軌道データに基づいて得られた速度」、あるいは「ベクトル空間上におけるその速度の近傍の速度」ではなく、これらの速度の履歴に基づく予測により得られる。
【0090】
したがって、補完される速度、加速度、位置の何れの精度も平均的に高められ、かつ安定に維持される。
【0091】
[請求項12] 請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが「1」である。
【0092】
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが「1」である。
【0093】
すなわち、航行衛星の速度、加速度、位置の何れについても、補完のために行われるべき処理の演算対象が少なく抑えられる。
【0094】
したがって、所望の精度が確保されるのであれば、応答性が高められ、かつ所要する処理量の削減により、消費電力の節減と、ハードウェアの実装や熱設計にかかわる制約の緩和とが図られる。
【0095】
[請求項13] 請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数であり、前記補完手段は、前記時系列tの順に小さな重みによる重み付けにより前記偏差を得る。
【0096】
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数に設定され、かつ前記補完手段は、前記時系列tの順に小さな重みによる重み付けにより前記差を得る。
【0097】
すなわち、速度、加速度、位置の何れの補完の過程でも、先行して正常な軌道データに基づいて得られた速度、加速度、位置の何れもが古いほど大きく重み付けられて参照される。
【0098】
したがって、速度、加速度、位置の何れについても、補完の精度が高められ、かつ安定に維持される。
【0099】
[請求項14] 請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数であり、前記補完手段は、前記偏差の基準となる量が大きいほど大きな重みによる重み付けにより前記偏差を得る。
【0100】
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数に設定され、かつ前記補完手段は、前記差の基準となる量が大きいほど大きな重みによる重み付けにより前記偏差を得る。
【0101】
すなわち、補完手段によって行われる演算の過程では、上記偏差の基準となる量の大きさの如何にかかわらず共通の重みが採用される場合に比べて、誤差の圧縮が図られる。
【0102】
したがって、速度、加速度、位置の何れについても、補完の精度が高められ、かつ安定に維持される。
【0103】
[請求項15] 請求項1ないし請求項14の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数であり、前記ログ手段は、前記補完手段によって補完された量を前記時系列tの順に蓄積する。前記補完手段は、前記ログ手段に先行して蓄積された量の内、前記補完された量を基準として求められる偏差を小さく重み付け、あるいは「0」と見なす。
【0104】
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項14の何れか1項に記載の測位支援装置において、前記所定の数Nが複数に設定される。前記ログ手段は、前記補完手段によって補完された量を前記時系列tの順に蓄積する。前記補完手段は、前記ログ手段に先行して蓄積された量の内、前記補完された量を基準として求められる偏差を小さく重み付け、あるいは「0」と見なす。
【0105】
すなわち、速度、加速度、位置の何れの補完も、正常に得られた軌道データに基づいて得られた量(速度、加速度、位置の何れか)だけではなく、請求項1ないし請求項14に記載の測位支援装置によって先行して補完された量にも基づいて行われる。また、その補完の過程では、「正常に得られた軌道データに基づいて得られた量」よりも、「先行して補完された量」が小さく重み付けられて参照され、あるいは無視される。
【0106】
したがって、ログ手段、候補取得手段および補完手段の何れによって行われる処理も手順の共通化が図られ、かつ設計、デバッグおよび保守の容易性に併せて、利便性が高められる。
【0107】
[請求項16] 請求項1ないし請求項15の何れか1項に記載の測位支援装置において、外力取得手段は、外部のデータベースから取得されるデータとして、または前記データに基づいて前記外力Ftを得る。
このような構成の測位支援装置では、請求項1ないし請求項15の何れか1項に記載の測位支援装置において、外力取得手段は、外部のデータベースから取得されるデータとして、または前記データに基づいて前記外力Ftを得る。
【0108】
すなわち、外力Ftは、時系列tの逆順に参照されるべき処理の過程であっても、上記データベースとの連係により得られる。
したがって、本発明は、上記データベースの共用の下で構成の簡略化が図られる。
【符号の説明】
【0109】
11 アンテナ
12 無線部
13 信号処理部
13LB ログバッファ
13S セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある予速度vt1〜vtnとを得る候補取得手段と、
前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtとの差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項2】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の位置pt0と、前記位置pt0に対する誤差が所定の範囲内にある位置pt1〜ptnとを得る候補取得手段と、
前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptとの差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である位置で前記航行衛星の位置を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項3】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積するログ手段と、
加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る候補取得手段と、
前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atに対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である加速度で前記航行衛星の加速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項4】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る候補取得手段と、
前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和の積分結果と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptとの差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の速度で前記航行衛星の速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項5】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の速度vt0と、前記速度vt0に対する誤差が所定の範囲内にある速度vt1〜vtnとを得る候補取得手段と、
前記速度vt0、vt1〜vtnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atの積分の結果との差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である速度で前記航行衛星の速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項6】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の位置pt0と、前記位置pt0に対する誤差が規定の値域内にある位置pt1〜ptnとを得る候補取得手段と、
前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtの積分の結果との差が規定の範囲内にあり、あるいは最小である位置で前記位置を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項7】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の加速度At を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の位置pt0と、前記位置pt0に対する誤差が所定の範囲内にある位置pt1〜ptnとを得る候補取得手段と、
前記位置pt0、pt1〜ptnの内、前記時系列tの順に前記航行衛星に作用する外力Ftと前記航行衛星の質量mとの比の前記時系列tの逆順における二重積分の結果との和と、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの加速度Atの二重積分の結果との差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の位置で前記位置を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項8】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の位置Pt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る候補取得手段と、
前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの位置Ptの前記時系列tの逆順における二階微分の結果に対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である加速度で前記前記航行衛星の加速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。
【請求項9】
航行衛星の軌道データで時系列tの順に定まる前記航行衛星の速度Vt を蓄積するログ手段と、
前記航行衛星の加速度at0と、前記加速度at0に対する誤差が所定の範囲内にある加速度at1〜atnとを得る候補取得手段と、
前記加速度at0、at1〜atnの内、前記ログ手段に先行して蓄積された所定の数Nの速度Vtの前記時系列tの逆順における微分の結果に対する偏差が既定の範囲内にあり、あるいは最小である特定の加速度で前記前記航行衛星の加速度を補完する補完手段と
を備えたことを特徴とする測位支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13506(P2012−13506A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149427(P2010−149427)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】