説明

測位装置、測位システム、測位方法および測位プログラム

【課題】 記憶容量の増大を抑制しつつ、地球中心を1個のGPS衛星と見立てて測位計算を精度よく行えるようにする。
【解決手段】 動端末107a、107bからGPSサーバ102への接続が確立すると、移動端末107a、107bが接続したアクセスポイントの情報を専用プロトコルによって送信パケットに付加し、GPSサーバ102に伝達し、GPSサーバ102は、移動端末107a、107bが接続したアクセスポイントの情報に基づいて高度テーブル103aを検索することにより、現在の移動端末107a、107bの位置に対応した高度情報を取得し、移動端末107a、107bに送信し、測位手段108a、108bは、現在の移動端末107a、107bの位置に対応した高度情報を取得すると、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測位装置、測位システム、測位方法および測位プログラムに関し、特に、GPS(グローバルポジショニングシステム)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車載型端末装置や携帯型端末装置では、GPSを搭載することにより車両や歩行者の現在位置を把握することが行われている。さらに、車載型端末装置や携帯型端末装置に地図情報を持たせ、GPSによる測位結果を地図上に表示することにより、ナビゲーション機能を実現することも行われている。そして、GPSにより現在の位置情報を精度よく算出するためには、少なくとも4つの衛星からの電波を受信する必要がある。
【0003】
特許文献1には、GPS受信機により捕捉されているn個のGPS衛星からの受信電波より擬似距離riをそれぞれ測定し、擬似距離riを表すGPS受信機の座標(x,y,z)および時計誤差tを変数とするn個の関数に対して、マルチパスの発生が検出された場合には、地球中心を1個のGPS衛星とみたてた擬似距離rn+1を表す受信機の座標を変数とする1個の関数を追加し、これらの合計(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、マルチパスの影響による測位精度の劣化を抑制する方法が開示されている。
【0004】
ここで、地球中心を1個のGPS衛星と見立てて測位計算を行う方法では、GPS受信機の高度情報が必要となる。このため、GPS受信機に気圧センサを搭載することにより、GPS受信機の高度を計測する方法があった。
【特許文献1】特開2002−333472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPS受信機に気圧センサを搭載する方法では、コストアップを招くとともに、大気が不安定な時は、気圧センサで計測された気圧値が変動する。このため、GPS受信機の高度の計測値に誤差が発生し、地球中心を1個のGPS衛星とみたてた時の測位精度に劣化を招くという問題があった。
一方、高度情報をGPS受信機に持たせると、GPS受信機が移動可能な全てのエリアの高度情報が必要になることから、膨大な記憶容量が必要となり、GPS受信機の携帯性が損なわれるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、記憶容量の増大を抑制しつつ、地球中心を1個のGPS衛星と見立てて測位計算を精度よく行うことが可能な測位装置、測位システム、測位方法および測位プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る測位装置によれば、衛星から電波を受信するとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行う測位手段と、通信ネットワークを介して前記測位計算に用いる高度情報を取得する通信手段とを備えることを特徴とする。
これにより、必要なエリアの高度情報を必要な時だけ取得することが可能となり、全てのエリアの高度情報を測位装置に持たせることなく、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、測位装置の記憶容量の増大を抑制しつつ、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位計算の精度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る測位装置によれば、前記測位手段は、捕捉したn個の衛星からの受信電波より擬似距離をそれぞれ測定し、擬似距離を表す現在地の座標および時計誤差を変数とするn個の関数に対して、地球中心を1個の衛星とみたてた擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を追加し、これらの合計(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として現在地の座標および時計誤差を算出することを特徴とする。
【0009】
これにより、衛星の捕捉数を増大させることなく、測位計算に用いる関数の個数を1個分だけ増加させることが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位に必要な数の衛星が捕捉できる場合においても、衛星の配置状態を改善することが可能となり、測位計算の精度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る測位システムによれば、衛星から電波を受信するとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行う移動端末と、前記移動端末に搭載され、移動体通信網を介して基地局と通信を行う通信手段と、前記測位計算に用いられる高度情報を前記移動体通信網信を介して前記移動端末に送信するサーバとを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、移動端末が現在存在するエリアの高度情報を必要な時だけサーバから取得することが可能となり、全国あるいは全世界の高度情報を移動端末に持たせることなく、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、移動端末の記憶容量の増大を抑制しつつ、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位計算の精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る測位システムによれば、前記サーバ側に設けられ、前記基地局が受け持つ通信エリアごとに高度情報が登録された高度テーブルをさらに備えることを特徴とする。
これにより、あらゆる高度情報を移動端末に持たせることなく、移動端末の移動位置に応じて高度情報を更新することが可能となる。このため、移動端末の記憶容量の増大を抑制しつつ、高度情報の精度を向上させることが可能となり、移動端末の携帯性を損なうことなく、移動端末の測位計算の精度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る測位システムによれば、前記通信手段は、互いに接続が確立している基地局を特定する情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記基地局に対応した高度情報を前記移動端末に送信することを特徴とする。
これにより、移動端末側で測位を行うことなく、移動端末の大体の位置をサーバ側で把握することが可能となる。このため、移動端末に送られる高度情報の精度を向上させることが可能となり、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、移動端末の測位を精度よく行うことができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る測位システムによれば、前記移動端末は、今回の測位計算の高度情報として前回の測位結果を用いることを特徴とする。
これにより、移動端末はサーバにアクセスすることなく、地球中心を衛星と見立てて今回の測位計算を行うことが可能となるとともに、高度情報の精度の劣化を抑制することが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、測位精度の劣化を抑制しつつ、短時間で測位を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る測位方法によれば、n個の衛星を捕捉するステップと、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うための高度情報を通信ネットワークを介して取得するステップと、前記捕捉したn個の衛星からの受信電波より擬似距離をそれぞれ測定するステップと、前記擬似距離を表す現在地の座標および時計誤差を変数とするn個の関数を生成するステップと、前記地球中心を1個の衛星とみたてた擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を生成するステップと、前記生成された(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として現在地の座標および時計誤差を算出するステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位に必要な数の衛星が捕捉できる場合においても、衛星の配置状態を改善することが可能となり、測位計算の精度を向上させることができる。
また、本発明の一態様に係る測位プログラムによれば、衛星から電波を受信させるとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うステップと、通信ネットワークを介して前記測位計算に用いる高度情報を取得するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0017】
これにより、測位プログラムをコンピュータに実行させることで、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、コストアップを抑制しつつ、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位計算の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る測位装置および測位方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、通信ネットワーク105には、処理センタ101および基地局106a〜106cが接続されている。そして、移動端末107a、107bは基地局106a〜106cと接続を確立することにより、移動端末107a、107bは基地局106a〜106cなどのアクセスポイントとの間で通信を行うことができる。また、処理センタ101には、GPSサーバ102、データベース103および処理端末104が設けられている。ここで、データベース103には、基地局エリアごとの高度情報が登録された高度テーブル103aが格納されている。
【0019】
また、移動端末107a、107bには、移動端末107a、107bの現在位置をそれぞれ測位する測位手段108a、108bがそれぞれ設けられている。ここで、測位手段108a、108bは、衛星から電波を受信するとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことができる。そして、移動端末107a、107bは、測位手段108a、108bにて測位計算が行われる場合、基地局106a〜106cと接続を確立することによりGPSサーバ102にアクセスし、高度テーブル103aに登録されている移動端末107a、107bの所在エリアの高度テーブルを取得することができる。
【0020】
ここで、移動端末107a、107bからGPSサーバ102への接続が確立すると、移動端末107a、107bが接続したアクセスポイントの情報を専用プロトコルによって送信パケットに付加し、GPSサーバ102に送出することができる。なお、移動端末107a、107bが接続したアクセスポイントの情報としては、例えば、携帯電話またはPHSと交信した基地局、無線電話の基地局、あるいは有線電話の電話番号などを挙げることができる。
【0021】
そして、GPSサーバ102は、移動端末107a、107bが接続したアクセスポイントの情報に基づいて高度テーブル103aを検索することにより、現在の移動端末107a、107bの所在エリアの高度テーブルを取得し、移動端末107a、107bに送信することができる。
そして、測位手段108a、108bは、高度テーブルから現在の移動端末107a、107bの位置に対応した高度情報を取得すると、捕捉したn個の衛星からの受信電波より擬似距離をそれぞれ測定し、擬似距離を表す現在地の座標および時計誤差を変数とするn個の関数を構築するとともに、地球中心を1個の衛星とみたてた擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を追加することができる。そして、これらの合計(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として現在地の座標および時計誤差を算出することができる。
【0022】
これにより、必要なエリアの高度情報を必要な時だけ移動端末107a、107bに持たせることが可能となり、全国あるいは全世界の高度情報を移動端末107a、107bに持たせることなく、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、移動端末107a、107bの記憶容量の増大を抑制しつつ、測位計算を行うことが可能となるとともに、測位計算の精度を向上させることができる。
【0023】
なお、通信ネットワーク105としては、IP通信を行う公衆通信網を用いることができ、インターネットであってもよい。あるいは、固定電話通信網、移動体通信網やLANなどであってもよい。また、移動端末107a、107は、ノート型パーソナルコンピュータあるいはデスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話端末やPDA(Personal Data Assistant)などでもよい。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る高度テーブルの構成例を示す図である。
図2において、基地局ごとの高度テーブルは、ヘッダおよび高度データから構成され、各基地局106a〜106cと通信できるエリアにおいて、細分化されたセルの高度値が格納されている。ここで、ヘッダには、基地局番号と基地局106a〜106cの座標値(Lat_b,Lon_b,Alt_b)が登録されている。なお、基地局106a〜106cの座標値(Lat_b,Lon_b,Alt_b)は、(緯度,経度,高度)で表すことができる。また、ヘッダには、細分化されたセルの幅Widthおよび長さLengthが格納されるとともに、各エリアの左上セルの座標(Lat_1,Lon_1)および右下セルの座標(Lat_2,Lon_2)などが格納されている。また、高度データは、左上セルから右下セルまでに順番に配置された各セルの高度値Altitudeから構成することができる。
【0025】
そして、与えられた座標値(Lat,Lon)の高度を高度テーブルから検索する場合、与えられた座標値(Lat,Lon)を左上セルの座標(Lat_1,Lon_1)および右下セルの座標(Lat_2,Lon_2)と比較し、このエリアを越えたら基地局の高度値Alt_bを移動端末107a、107bに返すことができる。
一方、与えられた座標値(Lat,Lon)がエリア内にあるなら、与えられた座標値(Lat,Lon)が存在するセルIndexを以下の式で計算する。
【0026】

【0027】
そして、セルIndexに対応した高度値Altitudeを基地局エリア高度テーブルから検索し、その高度値Alt_iを移動端末107a、107bに返すことができる。
図3は、図1のGPS受信機の概略構成を示すブロック図である。
図3において、GPS衛星から送信されたGPS信号は、アンテナ1を介して受信される。そして、アンテナ1にて受信されたGPS信号はローノイズアンプ2に入力され、ローノイズアンプ2にて増幅される。そして、ローノイズアンプ2にて増幅されたGPS信号は、バンドパスフィルタ3に入力され、バンドパスフィルタ3にて所望の周波数が抽出された後、混合器4に出力される。
【0028】
一方、基準発振器16から出力される基準信号はPLL回路17に入力され、基準発振器16から出力された基準信号がPLL回路17にて分周または逓倍されて、一定の周波数を持つ周波数信号が生成される。なお、PLL回路17はCPU14により制御され、PLL回路17における分周比などを制御することで、PLL回路17にて生成される周波数信号の周波数を変化させることができる。
【0029】
そして、PLL回路17にて生成された周波数信号は混合器4に出力され、PLL回路17にて生成された周波数信号がバンドパスフィルタ3から出力されたGPS信号に混合されることで、所定の周波数(1.5GHz帯)のGPS信号が第1中間周波数信号にダウンコンバート(周波数変換)される。
そして、混合器4から出力された第1中間周波数信号はオートゲインコントロールアンプ5に入力され、所定の振幅に増幅される。なお、オートゲインコントロールアンプ5はCPU14により制御され、復調回路10の状況に応じてオートゲインコントロールアンプ5の増幅率を調整することができる。そして、オートゲインコントロールアンプ5にて増幅された第1中間周波数信号はバンドパスフィルタ6に入力され、バンドパスフィルタ6にて所望の周波数が抽出された後、混合器7に出力される。
【0030】
そして、PLL回路17にて生成された周波数信号が混合器7に出力され、PLL回路17にて生成された周波数信号がバンドパスフィルタ6から出力された第1中間周波数信号に混合されることで、第1中間周波数信号が第2中間周波数信号にダウンコンバートされる。なお、PLL回路17は、混合器4に出力した基準信号よりも周波数の低い基準信号を混合器7に出力することができる。
【0031】
そして、混合器7から出力された第2中間周波数信号はローパスフィルタ8に入力され、ローパスフィルタ8にて高周波成分が除去された後、A/Dコンバータ9に出力される。そして、ローパスフィルタ8から出力された第2中間周波数信号がA/Dコンバータ9にてデジタル化された後、復調回路10に出力される。そして、復調回路10は、第2中間周波数信号が入力されると、CPU14からの制御に基づいて、GPS信号の復調処理を行うことができる。
【0032】
この復調回路10では、デジタル化された第2中間周波数信号にPN符号(擬似ランダム符号)を乗算して、スペクトラム逆拡散処理を行うとともに、このスペクトラム逆拡散処理された信号をBPSK復調して、GPS信号の復調処理を行うことにより、GPS衛星から送信されたアルマナックデータ、エフェメリスデータおよびGPSタイムデータなどを得ることができる。
【0033】
ここで、スペクトラム逆拡散処理に使用されるPN符号は、各GPS衛星ごとに決められた値をとり、このPN符号を選択することでGPS信号を受信するGPS衛星を選択することができる。なお、GPS信号を受信するGPS衛星は、CPU14からの制御に基づいて選択することができる。また、復調回路10は、8チャンネルから最大16チャンネルまで同時に復調処理を行うことができ、複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を同時に復調することができる。
【0034】
次に、復調回路10にて復調された伝送データは演算処理部11に送られ、各GPS衛星から送られたGPS信号の伝播時間が計算されるとともに、各GPS衛星の位置および各GPS衛星とGPS受信機との間の距離を計算するために必要な補正値(対流圏補正値、電離層補正値、GPSタイム補正値)に関する情報を得る。そして、演算処理部11は、これら得られた情報に基づいてGPS受信機(移動端末)の現在位置とGPS受信機のGPSタイムの補正時間とを求めることができる。
【0035】
この場合、GPS受信機の位置には、(x、y、z)の3つの未知数があるため、GPS受信機のGPSタイムの補正時間tと合わせて4つの未知数を求める必要がある。このため、GPS受信機の測位計算を行うためには、通常は4個以上のGPS衛星から送られたGPS信号が必要となる。なお、測位計算に用いられるGPS衛星が4個の場合、各GPS衛星とGPS受信機との間の補正された距離データと、各GPS衛星の位置データに基づいて、4個の連立方程式が作成される。そして、これら4個の連立方程式を解くことにより、GPS受信機の現在位置とGPS受信機のGPSタイムの補正時間(GPS時に対するオフセット値)とを求めることができる。
【0036】
また、地球中心を1個の衛星と見立てることで、擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を追加することができ、合計で5個の連立方程式を作成することができる。そして、これら5個の連立方程式を解くことにより、GPS受信機の現在位置とGPS受信機のGPSタイムの補正時間とを求めることができ、測位精度を向上させることができる。また、地球中心を1個の衛星と見立てることで、GPS衛星が3個しか捕捉できない場合においても、GPS受信機の測位を行うことができ、測位時間を短縮することが可能となる。
【0037】
一方、CPU14は、測位計算を行う場合、基地局106a〜106cと通信を確立することによりGPSサーバ102にアクセスし、移動端末107a、107bと接続が確立した基地局106a〜106cの位置を特定するための情報が付加された送信データをベースバンド信号処理部23に送る。そして、ベースバンド信号処理部23は、CPU14から送信データを受け取ると、送信データのベースバンド信号処理を行った後、無線部22に送る。そして、ベースバンド信号処理部23から出力された送信データの変調処理が無線部22にて行われ、通信アンテナ21を介して外部に送出される。そして、通信アンテナ21を介して外部に送出された送信データは、基地局106a〜106cにて受信され、通信ネットワーク105を介してGPSサーバ102に送信される。そして、GPSサーバ102は、基地局106a〜106cの位置を特定するための情報を移動端末107a、107bから受信すると、基地局106a〜106cの位置を与えられた座標値(Lat_b,Lon_b)として高度テーブル103aを検索することにより、現在の移動端末107a、107bの位置に対応した基地局エリアの高度テーブル12aを取得し、通信ネットワーク105を介して基地局106a〜106cに送出する。そして、基地局106a〜106cが高度テーブル12aを受信すると、その高度テーブル12aは移動端末107a、107bに送信される。
【0038】
そして、移動端末107a、107bの位置に対応した高度テーブル12aが基地局106a〜106cから送信されると、その高度テーブル12aが通信アンテナ21にて受信される。そして、通信アンテナ21を介して受信された高度テーブル12aが無線部22に送られ、無線部22にて復調処理が行われる。そして、無線部22から出力された高度テーブル12aがベースバンド信号処理部23に送られ、ベースバンド信号処理部23にてベースバンド信号処理が行われた後、CPU14に出力される。そして、CPU14は高度テーブル12aを受け取ると、その高度テーブル12aをメモリ12に記憶させることができる。
【0039】
そして、高度テーブル12aがメモリ12に記憶されると、高度テーブル12aを用いることにより、地球中心を1個の衛星と見立てた時の擬似距離を表す現在地の座標を変数とする関数を構築することができる。そして、地球中心を1個の衛星と見立てた時の関数を構築すると、捕捉した衛星について構築した関数を加えた連立方程式の解として移動端末107a、107bの現在位置を算出することができる。そして、CPU14は、演算処理部11にて移動端末107a、107bの現在位置が算出されると、その測位結果12bをメモリ12に記憶することができる。
【0040】
これにより、移動端末107a、107bが現在存在するエリアの高度情報を必要な時だけGPSサーバ102から取得することが可能となり、全国あるいは全世界の高度情報を移動端末107a、107bに持たせることなく、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うことが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、移動端末107a、107bの記憶容量の増大を抑制しつつ、測位計算を行うことが可能となるとともに、捕捉された衛星の配置が悪い場合においても、測位計算の精度を向上させることができる。
【0041】
なお、今回の測位結果12bがメモリ12に記憶されている場合、次回の測位を行う時に、次回の測位計算の高度情報12aとして今回の測位結果12bを用いるようにしてもよい。これにより、移動端末107a、107bはGPSサーバ102アクセスすることなく、地球中心を衛星と見立てて次回の測位計算を行うことが可能となるとともに、高度情報12aの精度の劣化を抑制することが可能となる。このため、測位に必要な数の衛星が捕捉できない場合においても、測位精度の劣化を抑制しつつ、測位計算を短時間で行うことが可能となる。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態に係るGPSの測位方法を説明する図である。
図4において、任意の時刻における各GPS衛星SV1〜SV4の位置は、衛星SV1〜SV4が絶えず地球に送信する航法メッセージから正確に求めることができる。
各GPS衛星SV1〜SV4から送信されるナビゲーション信号には、アルマナックおよびエフェメリスを含む天体暦データの他に、その信号の精密な送信時刻が含まれている。移動端末107aから各GPS衛星SV1〜SV4までの距離は、各ナビゲーション信号内に含まれるこの送信時刻から決定することができる。すなわち、ナビゲーション信号の送信時刻と、移動端末107aがナビゲーション信号を受信した受信時刻を用いることにより、ナビゲーション信号の伝播遅延時間を計算することができる。そして、ナビゲーション信号の伝播遅延時間にナビゲーション信号の伝播速度を乗じることにより、ナビゲーション信号を送信中のGPS衛星SV1〜SV4から移動端末107aまでの擬似距離を求めることができる。
【0043】
ここで、移動端末107aの時計はGPS時に完全に同期されていないため、ナビゲーション信号の伝播遅延時間には一定のオフセット時間が含まれている。また、ナビゲーション信号が大気圏を通ることにより、信号伝播時間が遅延する。このため、擬似距離には、GPS衛星SV1〜SV4から移動端末107aまでの真の距離に、移動端末107aのオフセット時間、ナビゲーション信号伝播遅延時間および各GPS衛星SV1〜SV4に搭載された時計のGPS時からの誤差が含まれている。
【0044】
ここで、ナビゲーション信号をデコードすると、対流圏補正値、電離層補正値、GPSタイム補正値が得られる。残りの移動端末107aの時計誤差tu及び地球の中心に対する移動端末107aの3次元的な位置(x、y、z)をあわせて、4個の未知数があるため、移動端末107aの3次元的な位置を求めるためには、少なくとも4個のGPS衛星SV1〜SV4を捕捉する必要がある。そして、これら少なくとも4個のGPS衛星SV1〜SV4からの2つの情報(GPS衛星SV1〜SV4の位置情報と擬似距離)を用いることにより、移動端末107aの位置を三角測量法にて決定することができる。
【0045】
この三角測量法を用いて移動端末107aの現在の位置を決定するには、以下の3つのステップが必要である。第1に、地球の周囲を周回している24個のGPS衛星SV1〜SV4の中から、移動端末107aの視野内の少なくとも4個のGPS衛星SV1〜SV4の位置を決定する。第2に、移動端末107aから各GPS衛星SV1〜SV4までの距離を決定する。第3に、第1および第2のステップで得られた情報から、地球の中心に対する移動端末107aの位置を幾何学的に決定する。
【0046】
移動端末107aの位置の推定精度は、選択するGPS衛星SV1〜SV4の数および天空でのGPS衛星SV1〜SV4の幾何学的な配置によって左右される。このため、より多くのGPS衛星SV1〜SV4を移動端末107aの位置計算に使用することで、地球の中心に対する移動端末107aの位置の推定精度を高めることができる。ここで、GPS衛星SVjと移動端末との擬似距離measPRjは、以下の(1)式で表すことができる。
【0047】

・・・(1)
【0048】
ただし、

:衛星SVjの座標
(x,y,z):移動端末107aの座標

:移動端末107aの時計バイアス
である。
【0049】
そして、

と仮定し、非線形方程式(1)をテーラー展開によって

で近似すると、以下の(2)式が得られる。
【0050】

・・・(2)
【0051】
従って、(2)式を変形すると、以下の(3)式が得られる。
【0052】

・・・(3)
ここで、擬似距離とユークリッド距離との差分を、
【0053】

とし、







と仮定すると、
【0054】


・・・(4)
【0055】
となる。従って、(4)式を変形すると、以下の(5)式が得られる。
【0056】


・・・(5)
【0057】
受信している各衛星SVjについて(5)式が成り立つので、(5)式は以下の(6)式のような行列で表すことができる。
【0058】

・・・(6)
【0059】
一方、地球中心を1個の衛星と見立てて測位を行うものとすると、以下の(7)式を得ることができる。
【0060】

・・・(7)
【0061】
ただし、Aは地球楕円体(GPSの場合はWGS−84)の長半径(=6378137.0m)、Bは地球楕円体の短半径(=6356752.314m)である。そして、(7)式にABを掛けると、以下の(8)式を得ることができる。
【0062】

・・・(8)
【0063】
ここで、(8)式をテーラー展開し、
【0064】

をGPS受信機の高度値とすると、以下の(9)式を得ることができる。
【0065】

・・・(9)
【0066】
ただし、

である。
【0067】
そして、地球中心を一個の衛星と見立てて求めた(9)式の関数を(6)式のn個の関数に加えた合計(n+1)個の関数に対して収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として移動端末107aの位置と時計バイアスを近似的に算出することができる。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態に係る高度誤差と位置誤差の関係を示す図である。なお、P1は、地球中心を測位に利用した場合の高度誤差と位置誤差との関係を示し、P2は、地球中心を測位に利用しない場合の高度誤差と位置誤差との関係を示す。
図5において、地球中心を測位に利用しない場合には、移動端末107aの位置の誤差は144.10mとなっている。これに対し、地球中心を測位に利用する場合には、移動端末107aの高度値が正しければ、移動端末107aの位置の誤差はわずか7.87mになる。ただし、移動端末107aの高度値が正しくないと、高度値の誤差に比例して測位結果の誤差も増加する。このため、高度情報の精度が測位精度に影響を与え、正しい高度値を利用すればするほど、測位精度を向上させることができる。
【0069】
図6は、本発明の一実施形態に係るサーバアシストを用いた測位方法を示すフローチャートである。
図6において、図1の測位手段108a、108bは、移動端末107a、107bの測位を行う場合、測位に必要な衛星を捕捉できたか、あるいは捕捉した衛星の配置が良いかどうかを判断する(ステップS1)。そして、測位に必要な数だけ衛星が捕捉でき、かつ捕捉した衛星の配置が良い場合、それらの衛星についての(6)式の方程式を解くことにより、測位計算を行う(ステップS5)。
【0070】
一方、測位に必要な数だけ衛星が捕捉できないか、または捕捉した衛星の配置が悪い場合、測位手段108a、108bは、高度テーブル12aがメモリ12に記憶されているかどうかを判断する(ステップS2)。そして、高度テーブル12aがメモリ12に記憶されていない場合、移動端末107a、107bの所在エリアの高度テーブル12aをGPSサーバ102から取得する(ステップS6)。そして、高度テーブル12aから移動端末107a、107bの高度値を求め、地球中心を一個のGPS衛星と見立てることにより、(9)式の関数を構築する(ステップS7)。そして、(9)式を(6)式に追加することにより、測位計算を行う(ステップS5)。
【0071】
一方、高度テーブル12aがメモリ12に記憶されている場合、移動端末107a、107bは、別の基地局106a〜106cのエリアに入ったかどうか判断する(ステップS3)。そして、移動端末107a、107bが別の基地局106a〜106cのエリアに入った場合、高度テーブル12aをGPSサーバ102から取得し(ステップS6)、地球中心を一個のGPS衛星と見立てることにより測位計算を行う(ステップS7、S5)。
【0072】
一方、移動端末107a、107bが別の基地局106a〜106cのエリアに入っていない場合、メモリ12に既に記憶されている高度テーブル12aから移動端末107a、107bの高度値を求め、地球中心を一個のGPS衛星と見立てることにより、(9)式の関数を構築する(ステップS4)。そして、(9)式を(6)式に追加することにより、測位計算を行う(ステップS5)。
【0073】
図7は、本発明の一実施形態に係る高度情報の取得方法を示すフローチャートであり図7の左側に示すステップS11〜S16は移動端末107a、107bによる動作フローであり、右側に示すステップS21〜S24はGPSサーバ102による動作フローである。
図7において、高精度測位において高度テーブルがないあるいは移動端末107a、107bが別の基地局106a〜106cのエリアに入った時、移動端末107a、107bは正確な高度情報が必要と判断して(ステップS11)、専用プロトコルを用いてGPSサーバ102との間で接続を確立する(ステップS12)。そして、移動端末107a、107bは、GPSサーバ102との間で接続を確立すると、高度テーブル12aを要求する送信パケットをGPSサーバ102に送出する(ステップS13)。
【0074】
そして、GPSサーバ102は、高度テーブル12aを要求する送信パケットを移動端末107a、107bから受信すると(ステップS21)、受信パケットから基地局番号を検出する(ステップS22)。そして、GPSサーバ102は、その基地局番号に基づいて高度テーブル103aを検索することにより、移動端末107a、107bと接続が確立した基地局106a〜106cが受け持つエリアの高度テーブル12aを取得する(ステップS23)。そして、GPSサーバ102は、その高度テーブル12aを送信パケットに組み込み、通信ネットワーク105を介して送信パケットを移動端末107a、107bに送出する(ステップS24)。
【0075】
そして、移動端末107a、107bは、GPSサーバ102から送られた返信パケットを受け取ると(ステップS14)、その返信パケットに含まれる高度テーブル12aを抽出して図3のメモリ12に保存する(ステップS15)。そして、メモリ12に記憶された高度テーブル12aから移動端末107a、107bの高度値を求め、地球中心を一個のGPS衛星と見立てることにより、(9)式の関数を構築する。そして、(9)式を(6)式に追加することにより、測位計算を行う(ステップS16)。
【0076】
図8は、本発明の一実施形態に係るサーバアシストを用いない測位方法を示すフローチャートである。
図8において、図1の測位手段108a、108bは、移動端末107a、107bの測位を行う場合、測位に必要な衛星を捕捉できたか、あるいは捕捉した衛星の配置が良いかどうかを判断する(ステップS31)。そして、測位に必要な数だけ衛星が捕捉でき、かつ捕捉した衛星の配置が良い場合、それらの衛星についての(6)式の方程式を解くことにより、測位計算を行う(ステップS33)。
【0077】
一方、測位に必要な数だけ衛星が捕捉できないか、または捕捉した衛星の配置が悪い場合、メモリ12に記憶されている前回の測位結果12bから移動端末107a、107bの高度値を求め、地球中心を一個のGPS衛星と見立てることにより、(9)式の関数を構築する(ステップS32)。そして、(9)式を(6)式に追加することにより、測位計算を行う(ステップS33)。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る測位システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る高度テーブルの構成例を示す図。
【図3】図1の移動端末の概略構成を示すブロック図。
【図4】GPSの測位方法を説明する図。
【図5】高度誤差と位置誤差の関係を示す図。
【図6】サーバアシストを用いた測位方法を示すフローチャート。
【図7】高度情報の取得方法を示すフローチャート。
【図8】サーバアシストを用いない測位方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
101 処理センタ、102 GPSサーバ、103 データベース、103a 高度テーブル、104 処理端末、105 通信ネットワーク、106a〜106c 基地局、107a、107b 移動端末、108a、108b 測位手段、1 GPSアンテナ、2 ローノイズアンプ、3、6 バンドパスフィルタ、4、7 混合器、5 オートゲインコントロールアンプ、8 ローパスフィルタ、9 A/Dコンバータ、10 復調回路、11 演算処理部、12 メモリ、12a 高度情報、12b 測位結果、16 基準発信器、17 PLL回路、21 通信アンテナ、22 無線部、23 ベースバンド処理部、SV1〜SV4 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から電波を受信するとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行う測位手段と、
通信ネットワークを介して前記測位計算に用いる高度情報を取得する通信手段とを備えることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記測位手段は、捕捉したn個の衛星からの受信電波より擬似距離をそれぞれ測定し、擬似距離を表す現在地の座標および時計誤差を変数とするn個の関数に対して、地球中心を1個の衛星とみたてた擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を追加し、これらの合計(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として現在地の座標および時計誤差を算出することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
衛星から電波を受信するとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行う移動端末と、
前記移動端末に搭載され、移動体通信網を介して基地局と通信を行う通信手段と、
前記測位計算に用いられる高度情報を前記移動体通信網信を介して前記移動端末に送信するサーバとを備えることを特徴とする測位システム。
【請求項4】
前記サーバ側に設けられ、前記基地局が受け持つ通信エリアごとに高度情報が登録された高度テーブルをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の測位システム。
【請求項5】
前記通信手段は、互いに接続が確立している基地局を特定する情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記基地局に対応した高度情報を前記移動端末に送信することを特徴とする請求項4記載の測位システム。
【請求項6】
前記移動端末は、今回の測位計算の高度情報として前回の測位結果を用いることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の測位システム。
【請求項7】
n個の衛星を捕捉するステップと、
地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うための高度情報を通信ネットワークを介して取得するステップと、
前記捕捉したn個の衛星からの受信電波より擬似距離をそれぞれ測定するステップと、 前記擬似距離を表す現在地の座標および時計誤差を変数とするn個の関数を生成するステップと、
前記地球中心を1個の衛星とみたてた擬似距離を表す現在地の座標を変数とする1個の関数を生成するステップと、
前記生成された(n+1)個の関数について収束計算を行うことにより、(n+1)元連立方程式の解として現在地の座標および時計誤差を算出するステップとを備えることを特徴とする測位方法。
【請求項8】
衛星から電波を受信させるとともに、地球中心を衛星と見立てて測位計算を行うステップと、
通信ネットワークを介して前記測位計算に用いる高度情報を取得するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする測位プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−119006(P2006−119006A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307742(P2004−307742)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】