説明

測距システム及び測距方法

【課題】測定精度を向上することが可能な測距システム及び測距方法を提供する。
【解決手段】環境光Lsのみが入射する期間P1、P2において第1スイッチング素子60a、60bのゲートG11、G12を開いて電荷量Q1、Q2を求める。環境光Ls及び反射光Lrが入射する期間P3、P4(それぞれ期間P1、P2と同じ長さである。)において第1スイッチング素子60c、60dのゲートG13、G14を開いて電荷量Q3、Q4を求める。差Q4−Q2と差Q3−Q1との比と、往復期間ΔP(パルス光Lpが測距システム10と対象物Wの間を往復する期間)と期間P3との比が等しいことを利用して往復期間ΔPを演算する。往復期間ΔPと光速cに基づき、測距システム10と対象物Wとの距離Dを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイム・オブ・フライト(TOF)法を用いる測距システム及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物への距離を非接触に測定する測距システムとしてタイム・オブ・フライト(TOF)法を用いたものが知られている。TOF法は、対象物に対して光を放射し、光が放射されてから対象物に当たってはねかえって来るまでの期間を測定し、この期間と光速に基づいて対象物までの距離を測定する(特許文献1、2、非特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1では、測距システムにおけるパルス光の放射タイミングや2つの受光素子の動作タイミングが具体的に説明されている。すなわち、パルス光の放射と放射停止を同じ長さ(発光素子の駆動デューティが50%)で繰り返すと共に、パルス光の放射と放射停止に同期させて、交互に2つの方向に電荷を転送させる(非特許文献1の図1参照)。そして、2つの出力電圧の相違に基づきパルス光が対象物で反射して戻って来るまでの期間を判定する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−281336号公報
【特許文献2】特開平08−313215号公報
【非特許文献1】宮川良平、金出武雄、「CCD-Based Range-Finding Sensor」、IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 44, NO. 10、1997年10月、p.1648〜1652
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載された測距システムは、測定精度の点で未だ改良の余地がある。例えば、同測距システムの受光素子は、反射光に加え、太陽光等の環境光をも受光するが、環境光の影響を考慮した処理がなされていない。反射光と共に環境光が受光された場合、受光素子から出力される電荷は、反射光と環境光に対応するものとなる。このため、反射光に対応する電荷が相対的に少なくなり、信号/ノイズ比(S/N比)が低下してしまう。また、光の強度は、距離の二乗に比例する。このため、非特許文献1の測距システムでは、測定レンジ(測定可能な距離の範囲)を大きくしようとすると、距離の二乗に対応させて受光素子の検出感度(ダイナミックレンジ)を大きくする必要が生じてしまう。
【0006】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、測定精度を向上することが可能な測距システム及び測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る測距システムは、対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置とを有するものであって、前記受光装置は、前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子からの前記光電子を蓄積する第1乃至第4キャパシタと、前記光電変換素子からの前記光電子を排出する光電子排出部と、前記光電変換素子と前記第1乃至第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1乃至第4キャパシタに対して振り分ける第1乃至第4ゲート電極と、前記光電変換素子と前記光電子排出部との間に配置され、前記光電変換素子から前記光電子排出部への前記光電子の供給を制御する第5ゲート電極とを備え、前記パルス光の放射開始時点を時点Teu、前記パルス光の放射終了時点を時点Ted、前記光電変換素子に対する前記反射光の入射終了時点を時点Trd、前記第1乃至第4ゲート電極を開く時点を時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4u、前記第1乃至第4ゲート電極を閉じる時点を時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4d、前記時点Tg1uから前記時点Tg1dまでの期間を期間P1、前記時点Tg2uから前記時点Tg2dまでの期間を期間P2、前記時点Tg3uから前記時点Tg3dまでの期間を期間P3、前記時点Tg4uから前記時点Tg4dまでの期間を期間P4、前記時点Tg4uから前記時点Trdまでの期間を期間Psr、前記期間P1の間に前記第1キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q1、前記期間P2の間に前記第2キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q2、前記期間P3の間に前記第3キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q3、前記期間P4の間に前記第4キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q4、前記パルス光が放射されてから前記対象物で反射して前記反射光として戻ってくるまでの期間を往復期間ΔP、及び前記測距システムと前記対象物との距離を距離Dとするとき、前記制御装置は、(1)P1=P3、(2)P2=P4、及び(3)Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d≦Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d、又は、Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d<Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2dとなるように、前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1乃至第4ゲート電極の開閉を制御し、前記第1乃至第4ゲート電極が全て閉じているとき、前記第5ゲート電極を開いて前記光電子を外部に排出させ、前記演算装置は、前記第3キャパシタに蓄積され、環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q3と、前記第1キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q1との差に基づいて、前記期間P3における前記反射光の光量情報を取得し、前記第4キャパシタに蓄積され、前記環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q4と、前記第2キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q2との差に基づいて、前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報を取得し、前記期間P3における前記反射光の光量情報及び前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報の比と、前記期間P3及び前記期間Psrの比とに基づいて前記往復期間ΔPを演算し、前記往復期間ΔPに基づいて前記距離Dを測定することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、測距システムのダイナミックレンジを向上させることができると共に、環境光の影響を軽減又は排除することが可能となる。その結果、測距システムの測定精度を向上することが可能となる。
【0009】
すなわち、この発明では、光電変換素子に環境光のみが入射する期間P1に蓄積される電荷量Q1と、光電変換素子に環境光と反射光の両方が入射する期間P3に蓄積される電荷量Q3を求める。期間P1と期間P3とは同じ長さに設定されることから、電荷量Q3と電荷量Q1の差(Q3−Q1)から、期間P3における反射光に対応する電荷量(期間P3における反射光の光量[J]に対応する)を求めることができる。
【0010】
また、光電変換素子に環境光のみが入射する期間P2に蓄積される電荷量Q2と、期間P4に蓄積される電荷量Q4を求める。期間P4には、環境光と反射光の両方が光電変換素子に入射していた期間(期間Psr)と、環境光のみが光電変換素子に入射していた期間(期間Ps)が含まれる。期間P2と期間P4は同じ長さに設定されることから、電荷量Q4と電荷量Q2の差(Q4−Q2)から、期間P4のうち期間Psrに対応する電荷量(期間Psrにおける反射光の光量に対応する)を求めることができる。
【0011】
ここで、反射光が光電変換素子に入射している間、反射光の強度(単位時間当たりの光量[W])が一定であるとすると、電荷量Q4及び電荷量Q2の差と電荷量Q3及び電荷量Q1の差との比(Q4−Q2:Q3−Q1)は、期間Psrと期間P3との比(Psr:P3)と等しい。このため、期間Psrは、下記の式で求めることができる。
Psr={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3
【0012】
ここで、時点Tedと時点Tg4uが等しいとき、期間Psrは往復期間ΔPと等しい。また、時点Tedが時点Tg4uよりも後であるとき、期間Psrは、往復期間ΔPと時点Tedから時点Tg4uまでの期間との差{ΔP−(Ted−Tg4u)}と等しい。時点Tedと時点Tg4uは、設定値とすることができるため、この場合も往復期間ΔPを求めることができる。従って、いずれの場合も往復期間ΔPを演算することが可能であり、その結果、往復期間ΔPと光速(約30万キロメートル毎秒)に基づき距離Dを求めることができる。
【0013】
そして、上記測距システムでは、環境光によって生じる電荷量を取り除くため、環境光の影響を排除又は軽減することができる。
【0014】
また、距離Dが短くなる程、反射光の入射期間(往復期間ΔP)が短くなり、距離Dが長くなる程、反射光の入射期間が長くなる。一般に、同じ対象物であれば、距離Dが短い程、反射光の強度[W]は大きくなり、距離Dが長い程、反射光の強度は小さくなる。このため、距離Dが短い場合、強度の大きい反射光を短期間入射させ、距離Dが長い場合、強度の小さい反射光を長期間入射させることとなる。その結果、距離Dの変化量と比較して、期間Psrに入射する反射光の累積光量の変化量は小さくなる。このことは、測距システムのダイナミックレンジを狭くすることが可能であることを意味する。従って、測距システムのダイナミックレンジを向上させることができる。
【0015】
上記において、前記制御装置は、測定周期毎に前記発光装置に前記パルス光を複数回放射させ、前記演算装置は、前記第1乃至第4キャパシタそれぞれに前記光電子を複数回蓄積した後の前記電荷量Q1乃至Q4を用いて前記往復期間ΔPを演算してもよい。一般に、環境光(例えば、太陽光)の強度は常に変化している。各測定周期にパルス光を複数回放射し、これに応じた回数だけ前記光電子を蓄積した後の電荷量Q1乃至Q4を用いて往復期間ΔPを演算することで、環境光の強度を平均化することができる。その結果、環境光によって生じる電荷量を取り除く精度を高め、測定精度を向上させることができる。
【0016】
前記発光装置は、前記パルス光の放射期間を各測定周期の1パーセント以下に設定し、且つ前記受光装置は、前記第1乃至第4ゲート電極を開く期間を各測定周期の1パーセント以下に設定してもよい。これにより、他の測距システムとの干渉(他の測距システムからのパルス光を当該測距システムからのパルス光と誤認識すること)の可能性を低くすることができる。また、ノイズ成分としての環境光の影響を小さくし、信号/ノイズ比(S/N比)を向上することができる。さらに、エイリアシング現象(前回以前の測定周期で放射したパルス光が今回の測定周期で検出される現象)の発生を防止することができる。
【0017】
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4キャパシタにそれぞれのゲートが接続され、前記第1乃至第4キャパシタの電位に応じた電圧を出力する第1乃至第4増幅器を有してもよい。
【0018】
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4キャパシタの電位をリセットするための電源及び第6ゲート電極を有してもよい。
【0019】
前記光電変換素子は、例えば、フォトダイオード、埋込フォトダイオード又はフォトゲートとすることができる。前記第1乃至第4キャパシタは、例えば、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込フォトダイオード又はPN接合部とすることができる。
【0020】
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4ゲート電極及び前記第1乃至第4キャパシタを遮光する遮光部を有してもよい。
【0021】
前記発光装置は、発光ダイオード、レーザダイオード又は半導体レーザバーである発光素子を有してもよい。さらに、前記半導体レーザバーを複数備え、複数の前記半導体レーザバーを配列させてもよい。
【0022】
前記受光装置は、前記光電変換素子、前記第1乃至第4キャパシタ、前記光電子排出部及び前記第1乃至第5ゲート電極を備える複数の画素が設けられたラインセンサ又はイメージセンサを有してもよい。
【0023】
この発明に係る測距方法は、対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置とを有する測距システムを用いるものであって、基準期間における反射光の累積光量である反射光基準光量を求める工程と、測定期間における前記反射光の累積光量である反射光測定光量を求める工程と、前記測定期間のうち、前記受光装置の光電変換素子に対して前記反射光が入射していた期間である反射光入射期間を、前記反射光測定光量及び前記反射光基準光量の比と前記反射光入射期間及び前記基準期間の比とに基づいて演算する工程と、前記反射光入射期間に基づいて前記測距システムと前記対象物との距離を算出する工程とを有することを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、測距システムのダイナミックレンジを向上させ、測定精度を向上することが可能となる。すなわち、この発明では、測定期間のうち、受光装置の光電変換素子に対して反射光が入射していた期間である反射光入射期間を、反射光測定光量及び反射光基準光量の比と反射光入射期間及び基準期間の比とに基づいて演算する。測距システムと対象物との距離が短くなる程、反射光入射期間が短くなり、前記距離が長くなる程、反射光入射期間が長くなる。一般に、同じ対象物であれば、前記距離が短い程、反射光の強度は大きくなり、前記距離が長い程、反射光の強度は小さくなる。このため、前記距離が短い場合、強度の大きい反射光を短期間入射させ、前記距離が長い場合、強度の小さい反射光を長期間入射させることとなる。その結果、前記距離の変化量と比較して、反射光入射期間に入射する反射光の累積光量の変化量は小さくなる。このことは、測距システムのダイナミックレンジを狭くすることが可能であることを意味する。従って、測距システムのダイナミックレンジを向上させることができる。
【0025】
前記反射光基準光量を求める工程は、第1基準期間における環境光の累積光量である環境光基準光量を求める工程と、前記第1基準期間と同じ長さの第2基準期間における前記環境光及び前記反射光の累積合成光量である合成光基準光量を求める工程と、前記合成光基準光量から前記環境光基準光量を差し引いて前記第2基準期間における前記反射光基準光量を算出する工程とを含み、前記反射光測定光量を求める工程は、第1測定期間における前記環境光の累積光量である環境光測定光量を求める工程と、前記第1測定期間と同じ長さの第2測定期間における前記環境光及び前記反射光の累積合成光量である合成光測定光量を求める工程と、前記合成光測定光量から前記環境光測定光量を差し引いて前記第2基準期間における前記反射光測定光量を算出する工程とを含んでもよい。これにより、環境光の累積光量を取り除くため、環境光の影響を排除又は軽減することができる。
【0026】
各測定周期に前記第1基準期間、前記第2基準期間、前記第1測定期間及び前記第2測定期間をそれぞれ複数設定し、前記環境光基準光量を、各第1基準期間における前記環境光の累積光量の合計値として求め、前記合成光基準光量を、各第2基準期間における前記累積合成光量の合計値として求め、前記環境光測定光量を、各第1測定期間における前記環境光の累積光量の合計値として求め、前記合成光測定光量を、各第2測定期間における前記累積合成光量の合計値として求めてもよい。一般に、ノイズ成分としての環境光(例えば、太陽光)の強度は常に変化している。各測定周期に第1基準期間、第2基準期間、第1測定期間及び第2測定期間をそれぞれ複数設定し、環境光基準光量を、各第1基準期間における環境光の累積光量の合計値として求め、合成光基準光量を、各第2基準期間における累積合成光量の合計値として求め、環境光測定光量を、各第1測定期間における環境光の累積光量の合計値として求め、合成光測定光量を、各第2測定期間における累積合成光量の合計値として求めることで、環境光の強度を平均化することができる。その結果、環境光によって生じる電荷量を取り除く精度を高め、測定精度を向上することができる。
【0027】
前記パルス光の放射期間、前記基準期間及び前記測定期間それぞれが占める割合を各測定周期の1パーセント以下に設定してもよい。これにより、他の測距システムとの干渉(他の測距システムからのパルス光を当該測距システムからのパルス光と誤認識すること)の可能性を低くすることができる。また、ノイズ成分としての環境光の影響を小さくし、信号/ノイズ比(S/N比)を向上することができる。さらに、エイリアシング現象(前回以前の測定周期で放射したパルス光が今回の測定周期で検出される現象)の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、測距システムのダイナミックレンジを向上させることができると共に、環境光の影響を軽減又は排除することが可能となる。その結果、測距システムの測定精度を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
A.一実施形態
以下、この発明の一実施形態に係る測距システムについて図面を参照して説明する。
【0030】
1.測距システム10の構成
(1)測距システム10の全体構成
図1は、この発明の一実施形態に係る測距システム10の構成図である。測距システム10は、後述するイメージセンサ30の各画素32の出力に基づき測定した距離を用いた三次元画像を取得するものであり、発光装置12と、受光装置14と、制御装置16と、演算装置17とを有する。測距システム10では、制御装置16からの指令に応じて発光装置12の発光部18から出射されたパルス光Lpが対象物Wで反射し、受光装置14に入射する。受光装置14には、太陽光等の環境光Lsも入射する。受光装置14は、制御装置16からの指令に基づき受光量に応じた電荷を示す信号(蓄積電荷信号Sc)を演算装置17に出力する。演算装置17は、パルス光Lpが発光装置12から受光装置14まで到達する期間(往復期間ΔP)[s]を算出し、この往復期間ΔPに基づいて測距システム10と対象物Wとの距離D[m]を演算する。演算装置17の演算結果は、例えば、図示しない表示装置に出力される。説明の便宜のため、発光装置12から対象物Wまでのパルス光Lpを放射光Leと、対象物Wから受光装置14までのパルス光Lpを反射光Lrと呼ぶ。
【0031】
(2)発光装置12
発光装置12は、制御装置16からの指令に基づきパルス光Lpを出力する発光部18を有する。本実施形態において、発光装置12の発光部18は、発光点(エミッタ)を直線状に設けた半導体レーザバーを積層(直列接続)して、面発光が可能とされたものである。
【0032】
本実施形態の発光部18は、波長が870ナノメートル(nm)の赤外光を100ワット(W)の出力で放射可能である。また、本実施形態では、各測定周期Cm(測定値を求める周期)において、複数回の露光処理(電荷蓄積処理)が行われる(図5参照)。露光処理の周期(露光周期又は電荷蓄積周期Tca2)が100マイクロ秒(μs)であるところ、発光部18は、パルス光Lpを100ナノ秒(ns)の出力時間(パルス幅)で出力する。換言すると、発光部18の駆動デューティは、0.1パーセント(%)である。
【0033】
なお、発光部18は、リニアアレイ状の発光点を有していてもよく、或いは、マトリックス状に並べられた複数の発光点を有するものであってもよい。発光素子としてレーザダイオードや発光ダイオード(LED)等のその他の発光素子を用いてもよい。また、発光部18が放射するパルス光Lpは、その他の波長でもよく、例えば、700nmより長く1050nm以下としてもよい。さらに、発光部18の出力は、その他の値でもよく、例えば、20Wより大きく10kW以下としてもよい。さらにまた、パルス光Lpのパルス幅は、その他の長さでもよく、例えば、10ナノ秒以上1ミリ秒以下としてもよい。加えて、発光部18の駆動デューティは、その他の値でもよく、例えば、0.01%以上1%以下としてもよい。
【0034】
(3)受光装置14
(a)受光装置14の全体構成
図1に示すように、受光装置14は、レンズ20と、受光部22とを有する。レンズ20を通過した反射光Lr及び環境光Lsは、受光部22に集光される。レンズ20は、直線状又はマトリックス状に配列された複数のレンズであってもよい。
【0035】
図2に示すように、受光部22は、マトリックス状に画素32が配置されたイメージセンサ30と、第1電源34と、第2電源36と、ゲート駆動回路38と、垂直選択回路40と、サンプルホールド回路41と、水平選択回路42と、出力バッファ43と、A/Dコンバータ44とを有する。
【0036】
イメージセンサ30は、各画素32の受光量に応じた蓄積電荷信号Scを水平選択回路42を介して出力する。第1電源34は、イメージセンサ30に対して電源電圧VDD[V]を印加し、第2電源36は、イメージセンサ30に対して基準電圧Vref[V]を印加する。ゲート駆動回路38は、ゲート駆動信号Sdg(後述するゲート駆動信号Sdg1〜Sdg4、リセット信号Sreset1〜Sreset4及び光電子排出信号Sdeの総称)を出力することによりイメージセンサ30の第1スイッチング素子60a〜60d(図3)、第3スイッチング素子68a〜68d及び第4スイッチング素子70のゲートを選択的に駆動する。垂直選択回路40は、マルチプレクサ(図示せず)を有し、読出しを行う画素32が属する行に対して選択的に読出信号Sread1〜Sread4を出力し、当該画素32から蓄積電荷信号Scを出力させる。水平選択回路42は、別のマルチプレクサ(図示せず)を有し、読出しを行う画素32が属する列を選択する。画素32から読み出された蓄積電荷信号Scは、定電流回路58a、58b(図3)によりセンサ出力が出力電圧Vout1、Vout2に変換され、サンプルホールド回路41に一旦蓄積された後、水平選択回路42から出力される。そして、蓄積電荷信号Scは、出力バッファ43及びA/Dコンバータ44を介して演算装置17に送信される。この蓄積電荷信号Scを受信した演算装置17は、蓄積電荷信号Scから反射光Lrの光量(光量Ar)を判定して、測距システム10と対象物Wとの距離Dを演算する(詳細は後述する。)。
【0037】
(b)画素32
図3には、1つの画素32の回路図が示されている。図3に示すように、画素32は、光電変換素子50と、第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dと、光電子排出部54と、出力線56a、56bとを備える。また、画素32の列毎に、定電流回路58a、58bが配置されている。
【0038】
(i)光電変換素子50
本実施形態の光電変換素子50は、埋込型フォトダイオード(pinned photodiode)であり、反射光Lrの光量Arに応じた光電子を発生する。光電変換素子50は、埋込型以外のフォトダイオードやフォトゲート等の別の光電変換素子であってもよい。
【0039】
(ii)第1〜第4電荷蓄積部52a〜52d
第1電荷蓄積部52aは、第1スイッチング素子60aと、キャパシタ62aと、増幅器64aと、第2スイッチング素子66aと、第3スイッチング素子68aとを有する。同様に、第2〜第4電荷蓄積部52b〜52dは、第1スイッチング素子60b〜60dと、キャパシタ62b〜62dと、増幅器64b〜64dと、第2スイッチング素子66b〜66dと、第3スイッチング素子68b〜68dとを有する。本実施形態において、第1スイッチング素子60a〜60d、増幅器64a〜64d、第2スイッチング素子66a〜66d及び第3スイッチング素子68a〜68dはいずれもNMOS型トランジスタである。
【0040】
第1スイッチング素子60a〜60dは、光電変換素子50で発生した光電子を第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dのいずれに供給するかを選択する。すなわち、第1スイッチング素子60a〜60dでは、ソースS11〜S14が光電変換素子50に接続され、ドレインD11〜D14が第1〜第4キャパシタ62a〜62dに接続され、ゲートG11〜G14がゲート駆動回路38に接続されている。ゲートG11〜G14に対するゲート駆動回路38からのゲート駆動信号Sdg1〜Sdg4に応じて第1スイッチング素子60a〜60dのオン・オフを選択的に制御することにより、光電変換素子50で発生した光電子が、第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dのいずれかに振り分けられる。例えば、第1スイッチング素子60aをオンにしたとき、第1電荷蓄積部52aに光電子が移動される。なお、後述するように、本実施形態では、第1スイッチング素子60a〜60dの全てがオフの場合、光電変換素子50で発生した光電子は、光電子排出部54を介して排出される。
【0041】
キャパシタ62aは、第1スイッチング素子60aがオンのとき、光電変換素子50で発生した光電子を蓄積する。同様に、キャパシタ62b〜62dは、第1スイッチング素子60b〜60dがオンのとき、光電変換素子50で発生した光電子を蓄積する。
【0042】
増幅器64aは、第2スイッチング素子66aのゲートG31がオンになっているとき、キャパシタ62aに蓄積された電荷量(電荷量Q1)[C]に応じた蓄積電荷信号Scを出力線56aに対して出力する。なお、増幅器64aのドレインD21が第1電源34の正の電源電圧VDDに接続され、ゲートG21がキャパシタ62aに接続されて、ソースS21が第2スイッチング素子66aを介して、出力線56aに接続されている。このため、電荷量Q1に応じた電圧(電圧V1)[V]である蓄積電荷信号Scが増幅器64aから出力される。
【0043】
同様に、増幅器64b〜64dは、第2スイッチング素子66b〜66dのゲートG32〜G34がオンになっているとき、キャパシタ62b〜62dに蓄積された電荷量(電荷量Q2〜Q4)[C]に応じた蓄積電荷信号Scを出力線56a、56bに対して出力する。すなわち、増幅器64b〜64dでは、ソースS22〜S24が第2スイッチング素子66b〜66d及び出力線56a、56bを介して第1電源34の負側の電源電圧VSSに接続され、ドレインD22〜D24が第1電源34の正側の電源電圧VDDに接続され、ゲートG22〜G24がキャパシタ62b〜62dに接続されている。このため、電荷量Q2〜Q4に応じた電圧(電圧V2〜V4)[V]である蓄積電荷信号Scが増幅器64b〜64dから出力される。
【0044】
第2スイッチング素子66a〜66dは、増幅器64a〜64dからの電圧V1〜V4を出力線56a、56bに供給するかどうかを切り替える。すなわち、第2スイッチング素子66a〜66dでは、ソースS31〜S34が出力線56a、56bに接続され、ドレインD31〜D34が増幅器64a〜64dのソースS21〜S24に接続され、ゲートG31〜G34が垂直選択回路40に接続されている。このため、垂直選択回路40からゲートG31〜G34にゲート駆動信号(読出信号Sread1〜Sread4)を選択的に送信すること(ゲートG31〜G34に印加される電圧を選択的にハイにすること)により、ゲートG31〜G34を選択的にオンにし、キャパシタ62a〜62dからの蓄積電荷信号Scを出力線56a、56bに対して選択的に出力することができる。出力線56a、56bに供給された蓄積電荷信号Scは、サンプルホールド回路41、水平選択回路42、出力バッファ43及びA/Dコンバータ44を介して演算装置17に供給される。
【0045】
反対に、ゲートG31〜G34に読出信号Sread1〜Sread4の送信がないとき(ゲートG31〜G34に印加される電圧が全てローであるとき)、ゲートG31〜G34はオンにならず(増幅器64a〜64dのドレインD21〜D24からソースS21〜S24に電流は流れず)、キャパシタ62a〜62dからの蓄積電荷信号Scは出力線56a、56bに対して出力されない。
【0046】
第3スイッチング素子68a〜68dは、キャパシタ62a〜62dに蓄積されている電荷量Q1〜Q4をリセットする。すなわち、第3スイッチング素子68a〜68dでは、ソースS41〜S44がキャパシタ62a〜62dに接続され、ドレインD41〜D44が第2電源36の正側の基準電圧Vrefに接続され、ゲートG41〜G44がゲート駆動回路38に接続されている。このため、ゲートG41〜G44に対するゲート駆動回路38からのゲート駆動信号(リセット信号Sreset1〜Sreset4)に応じて第3スイッチング素子68a〜68dを選択的に又は一斉にオンすることにより、キャパシタ62a〜62dに蓄積されている光電子を第2電源36に移動させ、キャパシタ62a〜62dの電荷量Q1〜Q4をリセットすることができる。
【0047】
(iii)光電子排出部54
光電子排出部54は、光電子排出用の第4スイッチング素子70を有する。第4スイッチング素子70は、第1スイッチング素子60a〜60dの全てがオフにされているとき(すなわち、光電変換素子50で発生した光電子を第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dに振り分けないとき)に当該光電子を排出する。すなわち、第4スイッチング素子70では、ソースS5が光電変換素子50に接続され、ドレインD5が第1電源34の正側の電源電圧VDDに接続され、ゲートG5がゲート駆動回路38に接続されている。このため、ゲート駆動回路38からゲートG5にゲート駆動信号(光電子排出信号Sde)を送信すること(ゲートG5に供給される電圧をハイにすること)により、ゲートG5をオンにし、光電変換素子50で発生した光電子を、第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dに振り分けることなく、排出することができる。これにより、第1〜第4電荷蓄積部52a〜52dには、ゲートG11〜G14がオンしている期間に光電変換素子50で発生した光電子のみを振り分けることが可能となる。その結果、後述する方法により、測距システム10と対象物Wとの距離Dを測定することが可能となる。
【0048】
(iv)画素32の構成例
図4には、画素32の一部縦断面図が示されている。図4に示すように、本実施形態の画素32は、P型の基板80と、P型の第1半導体領域82と、N型の第2半導体領域84と、N型の第3半導体領域86と、ポリシリコン層からなる転送ゲート88と、遮光部90とを有する。
【0049】
第1半導体領域82の上面全体は、外部に露出し、反射光Lr及び環境光Lsが入射可能である。
【0050】
本実施形態では、第1半導体領域82と第2半導体領域84とで光電変換素子50を構成する。上述のように、本実施形態の光電変換素子50は、埋込型フォトダイオードである。また、基板80と、第2半導体領域84と、第3半導体領域86と、転送ゲート88とで、第1スイッチング素子60aを構成する。さらに、第3半導体領域86は、フローティング・ディフュージョンとしても機能し、本実施形態のキャパシタ62aを構成する。
【0051】
遮光部90は、第3半導体領域86の上面と転送ゲート88とを覆うように配置される。これにより、第3半導体領域86及び転送ゲート88に対する反射光Lr及び環境光Lsが遮られる。
【0052】
2.測距システム10と対象物Wとの距離Dの測定方法
次に、測距システム10と対象物Wとの距離D[m]を測定する方法について説明する。
【0053】
(1)測定周期Cm
図5に示すように、測距システム10では、各測定周期Cm(測定値を求める周期)[回/s]は、キャパシタ62a〜62dに電荷を累積的に蓄積する累積的電荷蓄積期間Tca1[s]と、キャパシタ62a〜62dに累積的に蓄積された電荷を読み出す読出し期間Tr[s]とからなる。さらに、累積的電荷蓄積期間Tca1は、画素32にパルス光Lpを露光し、キャパシタ62a〜62dに電荷を蓄積する処理(電荷蓄積処理)を1回行うための電荷蓄積期間Tca2を複数含む。本実施形態において、累積的電荷蓄積期間Tca1及び読出し期間Trは、10ミリ秒である。また、各電荷蓄積期間Tca2は、100マイクロ秒である。さらに、各電荷蓄積期間Tca2におけるパルス光Lpの出力時間(パルス幅)は、100ナノ秒である。従って、各電荷蓄積期間Tca2における発光部18の駆動デューティは、0.1パーセントである。
【0054】
なお、上述したように、測距システム10は、測定結果を三次元画像として出力可能であるため、各測定周期Cmは、三次元画像のフレームレート[フレーム/s]としても定義可能である。
【0055】
本実施形態では、累積的電荷蓄積期間Tca1において電荷蓄積処理を100回行い、これに伴ってキャパシタ62a〜62dに蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを測定する。
【0056】
(2)測定方法の概要(1つの電荷蓄積期間Tca2を対象とした場合)
上記のように、本実施形態では、累積的電荷蓄積期間Tca1全体でキャパシタ62a〜62dに蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを測定するが、発明の理解を容易化するため、以下では、まずは、1つの電荷蓄積期間Tca2のみでキャパシタ62a〜62dに蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを求める場合を説明する。
【0057】
図6には、電荷蓄積期間Tca2における放射光Le、反射光Lr、第1スイッチング素子60a〜60dのゲートG11〜G14及び第4スイッチング素子70のゲートG5のタイミングチャートが示されている。
【0058】
詳細は後述するが、本実施形態では、反射光Lrの強度Ir[W]が一定であれば、反射光Lrが光電変換素子50に入射した期間(反射光入射期間Pri)[s]と、反射光入射期間Priにおける反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)[J]とが比例関係にあることを利用して、距離Dを測定する。
【0059】
すなわち、第1基準期間としての期間P1において、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射しているときの累積光量(環境光基準光量Ars)[J](キャパシタ62aの電荷量Q1)を求め、第2基準期間としての期間P3(=P1)において、環境光Ls及び反射光Lrが光電変換素子50に入射しているときの累積光量(合成光基準光量Ari)[J](キャパシタ62cの電荷量Q3)を求める。また、第1測定期間としての期間P2において、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射しているときの累積光量(環境光測定光量Ams)[J](キャパシタ62aの電荷量Q2)を求め、第2測定期間としての期間P4(=P2)において、環境光Ls及び反射光Lrが光電変換素子50に入射しているときの累積光量(合成光測定光量Ami)[J](キャパシタ62cの電荷量Q3)を求める。期間P4では、環境光Ls及び反射光Lrの両方が入射する期間(期間Psr)[s]と、環境光Lsのみが入射する期間(期間Ps)[s]が存在する。期間Psrは、対象物Wまでの距離Dに比例する。
【0060】
ここで、合成光基準光量Ariと環境光基準光量Arsとの差(反射光基準光量Arr)[J]と合成光測定光量Amiと環境光測定光量Amsとの差(反射光測定光量Amr)[J]との比(Ari―Ars:Ami―Ams)と、期間P3(=P1)と反射光入射期間Priとの比(P3:Pri)とが等しい。これを利用して、測距システム10から出射されたパルス光Lpが対象物Wに当たって測距システム10に戻って来るまでの期間(往復期間ΔP)を求める。そして、往復期間ΔPに基づいて測距システム10と対象物Wとの距離Dを測定する。
【0061】
(3)測定方法の詳細(1つの電荷蓄積期間Tca2を対象とした場合)
(a)タイミングチャートの説明
図6において、時点Teuは、放射光Leの放射開始時点を、時点Tedは、放射光Leの放射終了時点を、期間Peは、時点Teuから時点Tedまでの期間を示す。時点Truは、光電変換素子50に対する反射光Lrの入射開始時点を、時点Trdは、光電変換素子50に対する反射光Lrの入射終了時点を、期間Prは、時点Truから時点Trdまでの期間を示す。
【0062】
時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4uは、第1スイッチング素子60a〜60dのゲートG11〜G14を開く時点を、時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4dは、ゲートG11〜G14を閉じる時点を、期間P1は、時点Tg1uから時点Tg1dまでの期間を、期間P2は、時点Tg2uから時点Tg2dまでの期間を、期間P3は、時点Tg3uから時点Tg3dまでの期間を、期間P4は、時点Tg4uから時点Tg4dまでの期間を示す。期間Psrは、時点Tg4uから時点Trdまでの期間を、期間Psは、時点Trdから時点Tg4dまでの期間を示す。
【0063】
時点Td1u、Td2uは、第4スイッチング素子70のゲートG5を開く時点を、時点Td1d、Td2dは、ゲートG5を閉じる時点を、期間P5は、時点Td1uから時点Td1dまでの期間を、期間P6は、時点Td2uから時点Td2dまでの期間を示す。
【0064】
反射光Lrが光電変換素子50に入射している期間Prは、時点Teuから時点Truまで又は時点Tedから時点Trdまでの遅れ(往復期間ΔP)が発生するものの、期間Peと等しく(Pe=Pr)、例えば、10ナノ秒以上1マイクロ秒以下に設定可能であり、本実施形態では、100ナノ秒である。また、制御装置16において、期間P1と期間P3及び期間P2と期間P4はそれぞれ等しく設定される(P1=P3及びP2=P4)。期間P1、P3は、例えば、10ナノ秒以上90ナノ秒以下に設定可能であり、本実施形態では、30ナノ秒である。期間P2は、例えば、10ナノ秒以上90ナノ秒以下に設定可能であり、本実施形態では、70ナノ秒である。また、期間P5は、例えば、0秒以上90ナノ秒以下に設定可能であり、本実施形態では、70ナノ秒である。期間P6は、例えば、10マイクロ秒以上1ミリ秒以下に設定可能であり、本実施形態では、約100マイクロ秒である。このため、期間P1〜P6のうち期間P6が非常に長い。
【0065】
図6からわかるように、測距システム10の電荷蓄積期間Tca2[s]では、まず、ゲートG11を開き(期間P1)、ゲートG11を閉じるのと同時にゲートG12を開く(期間P2)。ゲートG12を閉じるのと同時に対象物Wに対して放射光Leを出射し、ゲートG5を開く(期間P5)。放射光Leの出力中(期間Pe)、光電変換素子50に対する反射光Lrの入射が開始する(時点Tru)。放射光Leの出射開始(時点Teu)から期間P5経過後にゲートG5を閉じると共にゲートG13を開く(期間P3)。期間Peの経過後に、放射光Leの出射を終了すると共にゲートG13を閉じ、ゲートG14を開く(期間P4)。ゲートG14を開いている間(期間P4)、光電変換素子50に対する反射光Lrの入射が終了する(時点Trd)。換言すると、期間P4が、測距システム10の測定レンジ(測定可能な距離の範囲)[m]を規定する。ゲートG14を閉じるのと同時にゲートG5を開く(期間P6)。期間P6が経過するとゲートG5を閉じ、1回の電荷蓄積期間Tca2を終了する(時点Td2d)。それと同時に、次の電荷蓄積期間Tca2が開始され、ゲートG11が開かれる(時点Tg1u)。なお、発光装置12及び受光装置14の各部位の制御は、制御装置16において行われる。また、制御装置16は、受光部22に対し同一シリコン基板上にCMOSプロセスで作成されることが望ましい。
【0066】
(b)測定原理の説明
(i)反射光基準光量Arrの演算
測距システム10と対象物Wとがそれぞれ固定されていれば、対象物Wで反射して測距システム10に戻って来る反射光Lrは、一定の強度(単位時間当たりの光量)であると言える。また、期間P1は、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射する期間に設定されるため、第1電荷蓄積部52aのキャパシタ62aには、環境光Lsのみに伴う光電子が蓄積される。一方、期間P3は、環境光Lsと反射光Lrの両方が光電変換素子50に入射する期間に設定されるため、第3電荷蓄積部52cのキャパシタ62cには、環境光Lsと反射光Lrの両方に伴う光電子が蓄積される。さらに、期間P1と期間P3は同じ長さである。
【0067】
このため、キャパシタ62cに蓄積されている電荷量Q3とキャパシタ62aに蓄積されている電荷量Q1との差は、期間P3(=期間P1)における反射光Lrの累積光量(反射光基準光量Arr)を示す。
【0068】
(ii)反射光測定光量Amr及び往復期間ΔPの演算
測距システム10と対象物Wとがそれぞれ固定されていれば、対象物Wで反射して測距システム10に戻って来る反射光Lrは、一定の強度であると言える。また、期間P2は、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射する期間に設定されるため、第2電荷蓄積部52bのキャパシタ62bには、環境光Lsのみに伴う光電子が蓄積される。一方、期間P4は、環境光Lsと反射光Lrが光電変換素子50に入射する期間(期間Psr)と環境光Lsのみが光電変換素子50に入射する期間(期間Ps)の両方を含む期間に設定されるため、第4電荷蓄積部52dのキャパシタ62dには、環境光Lsと反射光Lrの両方に伴う光電子が蓄積される。さらに、期間P2と期間P4は同じ長さである。
【0069】
このため、キャパシタ62dに蓄積されている電荷量Q4とキャパシタ62bに蓄積されている電荷量Q2との差は、期間P4(=期間P2)における反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)を示す。ここで、本実施形態では、期間P4は、放射光Leの出射を終了する時点Tedと同時に開始される。このため、期間P4では、パルス往復期間ΔPに対応する反射光Lrが光電変換素子50に入射し、キャパシタ62dに光電子が蓄積される。従って、キャパシタ62dに蓄積されている電荷量Q4は、期間P4全体における環境光Lsの累積光量(環境光測定光量Ams)と、往復期間ΔPにおける反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)との和(合成光測定光量Ami)に対応するものである。このため、電荷量Q4と電荷量Q2との差は、反射光測定光量Amrに対応する電荷量を示す。ここで、往復期間ΔPは、測距システム10と対象物Wとの距離Dに依存する。このため、反射光測定光量Amr(電荷量Q4と電荷量Q2の差に対応)と反射光基準光量Arr(電荷量Q3と電荷量Q1の差に対応)との比は、往復期間ΔPと期間P3(=期間P1)との比に等しい(Amr:Arr=Q4−Q2:Q3−Q1=ΔP:P3)。従って、下記の式(1)により往復期間ΔPを演算することができる。
ΔP={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ・・・(1)
【0070】
(iii)距離Dの演算
往復期間ΔPがわかれば、測距システム10と対象物Wとの距離Dは、下記の式(2)により演算することができる。なお、式(2)において、cは、光速(約30万キロメートル毎秒)を示す定数であり、また、c×ΔPを2で割っているのは、往復期間ΔPにおいて、パルス光Lpは、測距システム10と対象物Wとの間を往復し、距離Dの2倍の距離を進んでいるためである。
D=c×ΔP/2 ・・・(2)
【0071】
(iv)その他
画素32の初期設定(リセット動作)としては、下記のような処理がなされる。すなわち、まずゲートG41〜G44に対してリセット信号Sreset1〜Sreset4を送信すること(ゲートG41〜G44に供給される電圧をハイにすること)に応じて第3スイッチング素子68a〜68dを一斉にオンにする。同時に、ゲートG5に光電子排出信号Sdeを送信すること(ゲートG5に供給される電圧をハイにすること)により、第4スイッチング素子70をオンにする。この時、ゲートG11〜G14に対してゲート駆動信号Sdg1〜Sdg4は送信されず(ゲートG11〜G14に供給される電圧をローにし)、第1スイッチング素子60a〜60dをオフにしておく。この処理により、キャパシタ62a〜62dは、基準電圧Vrefに設定される。この後、ゲートG41〜G44に対するリセット信号Sreset1〜Sreset4の送信を停止し(ゲートG41〜G44に供給される電圧をローにし)、キャパシタ62a〜62dは、基準電圧Vrefに設定される。その後、上述した図6に示すタイミングでの処理が行われる。
【0072】
(4)測定方法の詳細(累積的電荷蓄積期間Tca1を対象とした場合)
上記項目(2)(3)では、1個の電荷蓄積期間Tca2を対象とした場合を説明したが、本実施形態では、100個の電荷蓄積期間Tca2(すなわち、累積的電荷蓄積期間Tca1)においてキャパシタ62a〜62dに蓄積した電荷量Q1〜Q4(ここでは、「電荷量Q1a〜Q4a」と称する。)を用いて、上記と同様に往復期間ΔPを演算する。
【0073】
電荷量Q1aは、第1番目から第100番目までの各電荷蓄積期間Tca2でキャパシタ62aに蓄積された電荷量Q1の合計である。同様に、電荷量Q2a〜Q4aは、第1番目から第100番目までの各電荷蓄積期間Tca2でキャパシタ62b〜62dに蓄積された電荷量Q2〜Q4の合計である。
【0074】
(5)その他
なお、本実施形態では、複数の画素32それぞれにおいて電荷量Q1〜Q4(電荷情報)を用いて、距離Dを測定する。これにより、各画素32の距離情報を組み合わせることにより3次元画像を得ることができる。
【0075】
3.本実施形態の効果
以上のような本実施形態では、測距システム10のダイナミックレンジを向上させることができると共に、環境光Lsの影響を軽減又は排除することが可能となる。その結果、測距システムの測定精度を向上することが可能となる。
【0076】
すなわち、本実施形態では、光電変換素子50に環境光Lsのみが入射する期間P1に蓄積される電荷量Q1と、光電変換素子50に環境光Lsと反射光Lrの両方が入射する期間P3に蓄積される電荷量Q3を求める。期間P1と期間P3とは同じ長さに設定されることから、電荷量Q3と電荷量Q1の差(Q3−Q1)から、期間P3における反射光Lrに対応する電荷量(期間P3における反射光Lrの基準光量Arrに対応する)を求めることができる。
【0077】
また、光電変換素子50に環境光Lsのみが入射する期間P2に蓄積される電荷量Q2と、期間P4に蓄積される電荷量Q4を求める。期間P4には、環境光Lsと反射光Lrの両方が光電変換素子50に入射していた期間(期間Psr)と、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射していた期間(期間Ps)が含まれる。期間P2と期間P4は同じ長さに設定されることから、電荷量Q4と電荷量Q2の差(Q4−Q2)から、期間P4のうち期間Psrに対応する電荷量(期間Psrにおける反射光Lrの光量に対応する)を求めることができる。
【0078】
ここで、反射光Lrが光電変換素子50に入射している間、反射光Lrの強度Irが一定であるとすると、電荷量Q4及び電荷量Q2の差と電荷量Q3及び電荷量Q1の差との比(Q4−Q2:Q3−Q1)は、期間Psrと期間P3との比(Psr:P3)と等しい。このため、期間Psrは、下記の式(3)で求めることができる。
Psr={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ・・・(3)
【0079】
ここで、時点Tedと時点Tg4uが等しいため、期間Psrは往復期間ΔPと等しい。従って、上記式(3)より往復期間ΔPを演算することが可能であり、その結果、往復期間ΔPと光速に基づき距離Dを求めることができる。
【0080】
このように、測距システム10では、環境光Lsによって生じる電荷量Q2を取り除くため、環境光Lsの影響を排除又は軽減することができる。
【0081】
また、距離Dが短くなる程、反射光Lrの入射期間(すなわち、期間Psr)が短くなり、距離Dが長くなる程、期間Psrが長くなる。一般に、同じ対象物Wであれば、距離Dが短い程、反射光Lrの強度Irは大きくなり、距離Dが長い程、強度Irは小さくなる。このため、距離Dが短い場合、強度Irの大きい反射光Lrを短期間入射させ、距離Dが長い場合、強度Irの小さい反射光Lrを長期間入射させることとなる。その結果、距離Dの変化量と比較して、期間Psrに入射する反射光Lrの光量Arの変化量は小さくなる。このことは、測距システム10のダイナミックレンジを狭くすることが可能であることを意味する。従って、測距システム10のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0082】
本実施形態では、各測定周期Cmにパルス光Lpを100回放射し、キャパシタ62a〜62dそれぞれに100回光電子を蓄積した後の電荷量Q1〜Q4を用いて往復期間ΔPを演算する。一般に、環境光Ls(例えば、太陽光)の強度は常に変化している。各測定周期Cmにパルス光Lpを100回放射し、これに応じた回数だけ光電子を蓄積した後の電荷量Q1〜Q4を用いて往復期間ΔPを演算することで、環境光Lsの強度を平均化することができる。その結果、環境光Lsによって生じる電荷量を取り除く精度を高め、測定精度を向上させることができる。
【0083】
本実施形態では、パルス光Lpのパルス幅(出力期間)は、10マイクロ秒(=100ナノメートル×100回)であり、各測定周期Cm(20ミリ秒)の0.05パーセントとしている。これに合わせて、ゲートG11〜G14を開く期間P1〜P4も短く設定している。このため、仮に同じ周波数のパルス光を用いている他の測距システムが周囲に存在した場合でも、他の測距システムがパルス光を出力するタイミングと測距システム10がパルス光Lpを出力するタイミングとが被る可能性が低くなる。その結果、他の測距システムとの干渉(他の測距システムからのパルス光を測距システム10からのパルス光Lpと誤認識すること)の可能性を低くすることができる。
【0084】
加えて、ゲートG11〜G14を開く期間P1〜P4も短く設定しているため、期間P1〜P4において光電変換素子50に環境光Lsが入射する期間を短くすることができる。これにより、ノイズ成分としての環境光Lsの影響を小さくし、信号/ノイズ比(S/N)を向上することができる。特に、環境光Lsが太陽光の場合、太陽光のショットノイズを低減することができる。
【0085】
本実施形態では、測定周期Cmに対してゲートG11〜G14を開く期間P1〜P4を非常に短く設定している。このため、前回以前の測定周期Cmで放射したパルス光Lpが今回の測定周期Cmで検出される現象(エイリアシング現象)が生じる可能性を減少させることができる。すなわち、本実施形態の各電荷蓄積期間Tca2は100マイクロ秒であり、パルス光Lpの放射期間Peが短いため、パルス光Lpの放射間隔も約100マイクロ秒となる。光速cは、約30万キロメートル毎秒であるため、対象物Wの実際の位置が、測距システム10が出力した距離Dよりも15キロメートル(=100[μs]×30[Mm/s]/2)遠い位置に存在すれば、エイリアシング現象が発生している可能性が存在する。しかし、発光部18により対象物Wに照射されるパルス光Lpの強度は、距離Dの二乗に応じて減少するため、距離Dよりも15キロメートル遠い位置からの反射光Lrの強度Irは、距離Dに対象物Wがある場合の強度Irと比べて非常に小さくなり、光電変換素子50ではほとんど検出できない。よって、本実施形態の測距システム10では、エイリアシング現象の発生を防止することができる。
【0086】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限られず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0087】
上記実施形態では、図6のタイミングチャートによりゲートG11〜G14を制御したが、これに限られない。例えば、図6の期間P3、P4を期間P1、P2より前に位置させてもよい。また、時点Tg1dと時点Tg2uを同時にしたが、時点Tg2uを時点Tg1dよりも後にすることもできる。時点Tg2dと時点Teuの関係、時点Tg3dと時点Tg4uの関係も同様である。さらに、時点Tg4uは、時点Tedとの相関関係がわかっていれば、時点Tedと同時でなくてもよい。
【0088】
図7には、時点Tedを時点Tg4uより後にしたタイミングチャートが示されている。この場合、往復期間ΔPは下記の式(4)により演算することができる。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3―(Ted−Tg4u) ・・・(4)
【0089】
或いは、時点Tedを時点Tg4uより前にすることもできる。この場合、往復期間ΔPは下記の式(5)により演算することができる。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3+(Tg4u―Ted) ・・・(5)
【0090】
上記実施形態では、環境光Lsの影響を排除又は軽減するために期間P1、P2を設けたが、例えば、暗室等の環境光Lsが存在しない場所又は反射光Lrに対して環境光Lsが小さく、環境光Lsの影響が小さい場合であれば、期間P3、P4のみから往復期間ΔPを求めることもできる。すなわち、下記の式(6)により往復期間ΔPを演算する。
ΔP=(Q4/Q3)×P3 ・・・(6)
【0091】
上記実施形態では、光電変換素子50として埋込フォトダイオード(図4)を用いたが、これに限られず、埋込フォトダイオード以外のフォトダイオードやフォトゲート等その他の光電変換素子を用いることもできる。
【0092】
図8には、光電変換素子としてフォトゲートを用いた画素32aの一部縦断面図が示されている。図8に示すように、画素32aは、P型の基板100と、フォトゲート102と、N型の半導体領域104と、ポリシリコン層からなる転送ゲート106と、遮光部108とを有する。
【0093】
画素32aでは、フォトゲート102が光電変換素子50aを構成する。また、基板100と、フォトゲート102と、半導体領域104と、転送ゲート106とで、第1スイッチング素子60a1を構成する。さらに、半導体領域104は、フローティング・ディフュージョンとしても機能し、キャパシタ62a1を構成する。なお、画素32aは、第1スイッチング素子60a1と同様の構成の第1スイッチング素子60b1〜60d1及びキャパシタ62a1と同様の構成のキャパシタ62b1〜62d1を有する。
【0094】
遮光部108は、半導体領域104と転送ゲート106とを覆うように配置される。これにより、半導体領域104及び転送ゲート106に対する反射光Lr及び環境光Lsが遮られる。
【0095】
図9には、画素32aを用いて距離Dを測定するための放射光Le、反射光Lr、第1スイッチング素子60a1〜60d1のゲートG11〜G14、第4スイッチング素子70のゲートG5及びフォトゲート102のタイミングチャートが示されている。
【0096】
図9のタイミングチャートは、フォトゲート102のタイミングを除き、図6のタイミングチャートと同様である。図9では、期間P1〜P6におけるフォトゲート102を開く時点を時点Tp1u〜Tp6uとし、フォトゲート102を閉じる時点を時点Tp1d〜Tp6dとしている。フォトゲート102は、期間P1〜P6が終了する時点Tg1d〜Tg4d、Td1d、Td2dよりも期間Ppだけ前に閉じている。これにより、フォトゲート102において光電変換した光電子をフォトゲート102に残すことなく高速に半導体領域104に転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の一実施形態に係る測距システムの構成図である。
【図2】上記実施形態の受光部のブロック図である。
【図3】上記受光部のイメージセンサにおける画素の回路図である。
【図4】前記画素の一部縦断面図である。
【図5】上記実施形態における測定周期のタイミングチャートである。
【図6】前記測定周期における電荷蓄積期間のタイミングチャートである。
【図7】図6のタイミングチャートの変形例である。
【図8】画素の変形例の一部縦断面図である。
【図9】図8の画素における放射光、反射光、複数のゲート及びフォトゲートのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0098】
10…測距システム 12…発光装置
14…受光装置 16…制御装置
17…演算装置 18…発光部
32、32a…画素 34…第1電源
36…第2電源 50、50a…光電変換素子
54…光電子排出部
60a〜60d、60a1〜60d1…第1スイッチング素子
62a〜62d、62a1〜62d1…キャパシタ
64a〜64d…増幅器 68a〜68d…第3スイッチング素子
70…第4スイッチング素子 90、108…遮光部
102…フォトゲート Cm…測定周期
G21〜G24…増幅器のゲート Ir…反射光の強度
Le…放射光 Lp…パルス光
Lr…反射光 Ls…環境光
P1…期間(第1基準期間) P2…期間(第1測定期間)
P3…期間(第2基準期間) P4…期間(第2測定期間)
W…対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、
前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、
前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、
前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置と
を有する測距システムであって、
前記受光装置は、
前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子からの前記光電子を蓄積する第1乃至第4キャパシタと、
前記光電変換素子からの前記光電子を排出する光電子排出部と、
前記光電変換素子と前記第1乃至第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1乃至第4キャパシタに対して振り分ける第1乃至第4ゲート電極と、
前記光電変換素子と前記光電子排出部との間に配置され、前記光電変換素子から前記光電子排出部への前記光電子の供給を制御する第5ゲート電極と
を備え、
前記パルス光の放射開始時点を時点Teu、
前記パルス光の放射終了時点を時点Ted、
前記光電変換素子に対する前記反射光の入射終了時点を時点Trd、
前記第1乃至第4ゲート電極を開く時点を時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4u、
前記第1乃至第4ゲート電極を閉じる時点を時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4d、
前記時点Tg1uから前記時点Tg1dまでの期間を期間P1、
前記時点Tg2uから前記時点Tg2dまでの期間を期間P2、
前記時点Tg3uから前記時点Tg3dまでの期間を期間P3、
前記時点Tg4uから前記時点Tg4dまでの期間を期間P4、
前記時点Tg4uから前記時点Trdまでの期間を期間Psr、
前記期間P1の間に前記第1キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q1、
前記期間P2の間に前記第2キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q2、
前記期間P3の間に前記第3キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q3、
前記期間P4の間に前記第4キャパシタに蓄積される電荷量を電荷量Q4、
前記パルス光が放射されてから前記対象物で反射して前記反射光として戻ってくるまでの期間を往復期間ΔP、及び
前記測距システムと前記対象物との距離を距離D
とするとき、
前記制御装置は、
(1)P1=P3、
(2)P2=P4、及び
(3)Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d≦Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d、又は、Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d<Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d
となるように、前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1乃至第4ゲート電極の開閉を制御し、
前記第1乃至第4ゲート電極が全て閉じているとき、前記第5ゲート電極を開いて前記光電子を外部に排出させ、
前記演算装置は、
前記第3キャパシタに蓄積され、環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q3と、前記第1キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q1との差に基づいて、前記期間P3における前記反射光の光量情報を取得し、
前記第4キャパシタに蓄積され、前記環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q4と、前記第2キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q2との差に基づいて、前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報を取得し、
前記期間P3における前記反射光の光量情報及び前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報の比と、前記期間P3及び前記期間Psrの比とに基づいて前記往復期間ΔPを演算し、
前記往復期間ΔPに基づいて前記距離Dを測定する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項2】
請求項1記載の測距システムにおいて、
前記時点Tedと前記時点Tg4uが等しいとき、下記の式(1)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算し、
ΔP={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ・・・(1)
前記時点Tedが前記時点Tg4uよりも後であるとき、下記の式(2)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算する
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3―(Ted−Tg4u) ・・・(2)
ことを特徴とする測距システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の測距システムにおいて、
前記制御装置は、測定周期毎に前記発光装置に前記パルス光を複数回放射させ、
前記演算装置は、前記第1乃至第4キャパシタそれぞれに前記光電子を複数回蓄積した後の前記電荷量Q1乃至Q4を用いて前記往復期間ΔPを演算する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記発光装置は、前記パルス光の放射期間を各測定周期の1パーセント以下に設定し、且つ
前記受光装置は、前記第1乃至第4ゲート電極を開く期間を各測定周期の1パーセント以下に設定する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4キャパシタにそれぞれのゲートが接続され、前記第1乃至第4キャパシタの電位に応じた電圧を出力する第1乃至第4増幅器を有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4キャパシタの電位をリセットするための電源及び第6ゲート電極を有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記光電変換素子は、フォトダイオード、埋込フォトダイオード又はフォトゲートである
ことを特徴とする測距システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記第1乃至第4キャパシタは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込フォトダイオード又はPN接合部である
ことを特徴とする測距システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記受光装置は、さらに、前記第1乃至第4ゲート電極及び前記第1乃至第4キャパシタを遮光する遮光部を有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記発光装置は、発光ダイオード、レーザダイオード又は半導体レーザバーである発光素子を有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記発光装置は、複数の半導体レーザバーを配列させた発光素子を有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の測距システムにおいて、
前記受光装置は、前記光電変換素子、前記第1乃至第4キャパシタ、前記光電子排出部及び前記第1乃至第5ゲート電極を備える複数の画素が設けられたラインセンサ又はイメージセンサを有する
ことを特徴とする測距システム。
【請求項13】
対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置とを有する測距システムを用いる測距方法であって、
基準期間における反射光の累積光量である反射光基準光量を求める工程と、
測定期間における前記反射光の累積光量である反射光測定光量を求める工程と、
前記測定期間のうち、前記受光装置の光電変換素子に対して前記反射光が入射していた期間である反射光入射期間を、前記反射光測定光量及び前記反射光基準光量の比と前記反射光入射期間及び前記基準期間の比とに基づいて演算する工程と、
前記反射光入射期間に基づいて前記測距システムと前記対象物との距離を算出する工程と
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項14】
請求項13記載の測距方法において、
前記反射光基準光量を求める工程は、
第1基準期間における環境光の累積光量である環境光基準光量を求める工程と、
前記第1基準期間と同じ長さの第2基準期間における前記環境光及び前記反射光の累積合成光量である合成光基準光量を求める工程と、
前記合成光基準光量から前記環境光基準光量を差し引いて前記第2基準期間における前記反射光基準光量を算出する工程と
を含み、
前記反射光測定光量を求める工程は、
第1測定期間における前記環境光の累積光量である環境光測定光量を求める工程と、
前記第1測定期間と同じ長さの第2測定期間における前記環境光及び前記反射光の累積合成光量である合成光測定光量を求める工程と、
前記合成光測定光量から前記環境光測定光量を差し引いて前記第2基準期間における前記反射光測定光量を算出する工程と
を含む
ことを特徴とする測距方法。
【請求項15】
請求項14記載の測距方法において、
各測定周期に前記第1基準期間、前記第2基準期間、前記第1測定期間及び前記第2測定期間をそれぞれ複数設定し、
前記環境光基準光量を、各第1基準期間における前記環境光の累積光量の合計値として求め、
前記合成光基準光量を、各第2基準期間における前記累積合成光量の合計値として求め、
前記環境光測定光量を、各第1測定期間における前記環境光の累積光量の合計値として求め、
前記合成光測定光量を、各第2測定期間における前記累積合成光量の合計値として求める
ことを特徴とする測距方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の測距方法において、
前記パルス光の放射期間、前記基準期間及び前記測定期間それぞれが占める割合を各測定周期の1パーセント以下に設定する
ことを特徴とする測距方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−96730(P2010−96730A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270200(P2008−270200)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】