説明

測距装置、測距方法及び測距システム

【課題】パルス光を使用して測距する際に、外光成分を除去できるようにして、測距の精度を向上させる。
【解決手段】測距システム10は、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光28を出射する発光手段14と、パルス光28により照射された物体からの反射光34を受光し、基準時からパルス幅に相当する期間にわたる第1区間で蓄積した第1電荷量と、第1区間経過時点からパルス幅に相当する期間にわたる第2区間で蓄積した第2電荷量と、第2区間経過時点からパルス幅に相当する期間にわたる第3区間で蓄積した第3電荷量とを得る受光手段16と、受光手段16で得られた第1電荷量、第2電荷量及び第3電荷量に基づいて、物体までの距離を算出する演算手段18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置、測距方法及び測距システムに関するものであり、例えば出射された光により照射された物体からの反射光を撮像素子の各画素ごとに受光して物体の立体構造を検出する場合に好適な測距装置、測距方法及び測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体までの距離を測定する方法として、TOF(Time Of Flight)方式の光波測距方法が知られている。
【0003】
この方式による装置は、図15に示すように、例えばLEDアレイで構成され、強度変調された光(変調光)を出射する光源200と、該光源200から出射された変調光によって照射された物体202からの反射光を受光する撮像素子204と、反射光を撮像素子204に結像させる光学系206とを有する。
【0004】
光源200から物体202に照射される変調光が例えば20MHzの高周波で強度変調されている場合、その波長は15mとなるから、光が7.5mの距離を往復すれば1周期の位相の遅れが生じることになる。
【0005】
ここで、変調光に対する反射光の位相の遅れについて図16を参照しながら説明する。
【0006】
図16に示すように、変調光Wに対して、反射光Rはφだけ位相遅れが生じている。この位相遅れφを検出するために、変調光Wの1周期に例えば4回だけ等間隔に反射光Rをサンプリングする。例えば変調光Wの位相が0°、90°、180°、270°であるときの反射光Rのサンプリング値をそれぞれA0,A1,A2,A3とすると、位相の遅れφは次式で与えられる。
φ=arctan{(A3−A1)/(A0−A2)}
【0007】
物体202からの反射光は、光学系206を介して撮像素子204の受光面に結像される。撮像素子204の受光面には複数の画素(フォトダイオード)が2次元的に配列されており、各画素について上式による位相遅れφを求めることにより、物体202の立体的な構造を検出できる。
【0008】
そして、上述の原理を利用した測距装置として、例えば特許文献1及び2が提案されている。
【0009】
この特許文献1に係る測距装置は、物体からの反射光を、撮像素子の電荷掃き出しゲート(オーバーフロードレインゲート:OFDG)あるいは読出しゲートの開閉の位相をずらすことによって、複数のパターンの露光期間にて受光することで測距を行う、というものである。
【0010】
特許文献2に係る測距装置は、特許文献1と同様の原理であるが、濃淡画像と距離画像をほぼ同時刻に得られるようにしたものである。
【0011】
また、特許文献3には、物体にパルス光を照射して、パルス光の飛行時間(TOF)に比例するクロックパルス数を計数する、あるいは、2つの電荷蓄積部を交互に使用して電荷を蓄積し、その比から被物体までの距離を求める技術が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特許第3758618号公報
【特許文献2】特開2006−46959号公報
【特許文献3】特表2003−510561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した特許文献3は、外光成分を除去する機能がなく、外光下では、正確な測距ができないという問題がある。
【0014】
特許文献1及び2の測距方法は、照射光として変調光を使用することにより、外光成分を除去することが可能であるが、照射光の変調が不正確(正弦波変調で照射光の強度変化がサインカーブからずれている)場合には、測距演算における誤差となる。従って、精密な光源の変調が必要であるが、このような制御は困難が伴うという問題がある。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、パルス光を使用して測距する際に、外光成分を除去することができ、測距の精度を向上させることができる測距装置及び測距方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、測距によって得られた距離画像と同時に物体の濃淡画像も取得可能で、距離データから得られる三次元ポリゴン画像や、該三次元ポリゴン画像に濃淡画像による輝度データをマッピングした三次元モデル画像を表示することが可能となり、様々なアプリケーションに適用させることができる測距システムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の本発明に係る測距装置は、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光手段と、前記パルス光により照射された物体からの反射光を受光し、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で蓄積した第1電荷量と、前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で蓄積した第2電荷量と、前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で蓄積した第3電荷量とを得る受光手段と、前記受光手段で得られた前記第1電荷量、前記第2電荷量及び前記第3電荷量に基づいて、前記物体までの距離を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0018】
これにより、パルス光を使用して測距する際に、外光成分を除去することができ、測距の精度を向上させることができる。
【0019】
そして、第1の本発明において、前記演算手段は、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間を除いた2つの区間の各電荷量に基づいて前記物体までの距離を算出するようにしてもよい。
【0020】
また、第1の本発明において、前記演算手段は、前記2つの区間の各電荷量から前記最も電荷量の少ない区間の電荷量を差し引いてから、前記物体までの距離を算出するようにしてもよい。
【0021】
また、第1の本発明において、前記演算手段は、前記第1電荷量、前記第2電荷量及び前記第3電荷量を比較する比較部と、第1変数、第2変数及び第3変数に基づいて、前記第1区間又は前記第2区間に基づいた距離を演算する距離演算部と、前記第1区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間に応じて前記第1変数、第2変数及び第3変数と、前記第1電荷量、前記第2電荷量及び第3電荷量との対応関係を選択する選択部とを有し、前記距離演算部は、前記パルス幅で決まる設定距離をL、前記第1変数をXa、前記第2変数をXb、前記第3変数をXcとしたとき、
{(Xb−Xc)/(Xa+Xb−Xc×2)}×L
を演算して前記距離を求めるようにしてもよい。
【0022】
この場合、最も電荷量の少ない区間が前記第3区間の場合に、前記選択部は、前記第1変数に前記第1電荷量、前記第2変数に前記第2電荷量、前記第3変数に前記第3電荷量を選択するようにしてもよい。また、最も電荷量の少ない区間が前記第3区間の場合に、前記距離演算部で得られた前記距離に0を加算し、最も電荷量の少ない区間が前記第1区間の場合に、前記距離演算部で得られた前記距離に前記設定距離Lを加算する加算部を有するようにしてもよい。
【0023】
これらの構成においては、演算手段を構成する比較部、距離演算部、選択部等をハードウェアとして1つのブロックにて構成することができ、ソフトウエアの簡略化、演算処理の高速化を図ることができる。
【0024】
次に、第2の本発明に係る測距方法は、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光ステップと、前記パルス光により照射された物体からの反射光を前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で受光する第1受光ステップと、前記反射光を前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で受光する第2受光ステップと、前記反射光を前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で受光する第3受光ステップと、前記第1受光ステップ、前記第2受光ステップ及び前記第3受光ステップでの各受光積分強度を比較する比較ステップと、前記比較ステップにおいて検出された最も強度の小さい受光積分強度を基準強度とし、他の2つの受光積分強度からそれぞれ前記基準強度を減算して2つの補正積分強度を得るステップと、前記2つの補正積分強度に基づいて、前記物体までの距離を算出するステップとを有することを特徴とする。
【0025】
これにより、パルス光を使用して測距する際に、外光成分を除去することができ、測距の精度を向上させることができる。
【0026】
そして、第2の本発明において、前記第2受光ステップで受光した受光積分強度が前記基準強度とみなされた場合に、測定エラーとするようにしてもよい。
【0027】
次に、第3の本発明に係る測距方法は、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光ステップと、前記パルス光により照射された物体からの反射光を、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間毎に順番に配置されたn個の区間においてそれぞれ受光するn個の受光ステップと、前記n個の受光ステップでの各受光積分強度を比較して、強度の大きい2つの受光積分強度と、強度の小さい(n−2)個の受光積分強度を検出する比較ステップと、前記比較ステップにおいて検出された強度の小さい(n−2)個の受光積分強度をそれぞれ基準強度とし、(n−2)個の基準強度の時間変化を関数化するステップと、前記関数化された基準強度の分布から、前記比較ステップで検出された前記強度の大きい2つの受光積分強度に対応する2つの区間における基準強度を求めるステップと、前記強度の大きい2つの受光積分強度からそれぞれ対応する基準強度を減算して補正積分強度を得るステップと、前記2つの補正積分強度に基づいて、前記物体までの距離を算出するステップとを有することを特徴とする。
【0028】
パルス光を使用して測距する際に、時間的に変化する外光成分をも除去することができ、測距の精度をさらに向上させることができる。
【0029】
そして、第3の本発明において、前記基準強度よりも強度の大きい前記2つの受光積分強度に対応する前記2つの区間が時間的に連続していない場合に、測距エラーとするようにしてもよい。
【0030】
また、第3の本発明において、前記比較ステップは、区間毎の受光積分強度の差分を求め、差分が0よりも大きく最大である区間が反射光の受光開始区間と判定し、差分が0よりも小さく絶対値が最大である区間が反射光の受光終了区間と判定するようにしてもよい。この場合、反射光が到来した区間を確実に検出することが可能となる。
【0031】
次に、第4の本発明に係る測距システムは、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光手段と、複数の受光部を有する撮像素子を有し、各受光部において、前記パルス光により照射された物体からの反射光を受光し、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で蓄積した第1電荷量と、前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で蓄積した第2電荷量と、前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で蓄積した第3電荷量とを得る受光手段と、前記各受光部に対応して演算され、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間を除いた2つの区間の各電荷量に基づいて前記物体までの前記各受光部に対応した距離を算出して距離画像を得る距離画像取得手段と、前記各受光部に対応して検出された前記最も電荷量の少ない区間の電荷量に基づいて前記各受光部に対応した濃淡画像を得る濃淡画像取得手段とを有することを特徴とする。
【0032】
これにより、測距によって得られた距離画像と同時に物体の濃淡画像も取得可能で、距離データから得られる三次元ポリゴン画像や、該三次元ポリゴン画像に濃淡画像による輝度データをマッピングした三次元モデル画像を表示することが可能となり、様々なアプリケーションに適用させることができる。
【0033】
そして、第4の本発明において、前記距離画像と前記濃淡画像とを関連付けて記録媒体に記録する画像記録手段を有するようにしてもよい。
【0034】
また、第4の本発明において、前記距離画像における各受光部に対応した距離データと、前記濃淡画像における各受光部に対応した濃淡データとを、それぞれ各受光部に関連付けて記録媒体に記録するデータ記録手段を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係る測距装置及び測距方法によれば、パルス光を使用して測距する際に、外光成分を除去することができ、測距の精度を向上させることができる。
【0036】
また、本発明に係る測距システムによれば、測距によって得られた距離画像と同時に物体の濃淡画像も取得可能で、距離データから得られる三次元ポリゴン画像や、該三次元ポリゴン画像に濃淡画像による輝度データをマッピングした三次元モデル画像を表示することが可能となり、様々なアプリケーションに適用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る測距装置、測距方法及び測距システムの実施の形態例を図1〜図14を参照しながら説明する。
【0038】
本実施の形態に係る測距システム10は、図1に示すように、ほぼ直方体あるいは立方体の形状を有する筐体12と、該筐体12に設けられ、基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光手段14(図2参照)と、パルス光により照射された物体からの反射光を受光する受光手段16(図2参照)と、受光手段16で得られたデータに基づいて物体までの距離を算出する演算手段18(図2参照)とを有する。
【0039】
筐体12の前面12aには、照射光源20と撮影用の光学レンズ22が設けられている。光学レンズ22は筐体12の前面12aのほぼ中央部に設けられ、照射光源20は、筐体12の前面12aのうち、光学レンズ22の周囲に多数配置された赤外LED24を有する。
【0040】
筐体12の内部には、図2に模式的に示すように、CPU26と、該CPU26によって制御され、各赤外LED24からそれぞれ所定のパルス幅を有するパルス光28を出射するように制御する発光制御部30と、撮像素子32と、反射光34を撮像素子32の受光面に結像させる光学系36(光学レンズ22を含む)と、撮像素子32を駆動するための撮像素子制御部38と、撮像素子32からの撮像信号Sbをアナログの画像信号Scに信号処理するアナログ信号処理部40と、画像信号Scをデジタル変換して画像データDcにするA/D変換部42と、画像データDcが保存されるバッファメモリ44と、バッファメモリ44に格納された画像データDcに対してデータ整形やフォーマット変換(YC画像データ(Y:輝度信号、C:色差信号)に変換する等)を行うデータ処理回路46とを有する。
【0041】
筐体12の内部には、さらに、バッファメモリ44に格納された画像データDcあるいはフォーマット変換後の画像データDcを記憶装置48に記録するための保存部50と、前記画像データDcを二次元画像として第1表示器52に表示させたり、三次元画像として第2表示器54に表示させるための表示部56と、測距システム10内の各種パラメータや前記画像データDc等を通信ポート58を介して送信したり、外部からの各種データを受信するための通信部60とを有する。
【0042】
筐体12の外面には操作パネル62が設置されている。操作パネル62は、少なくとも操作ガイダンス用の液晶表示部64と、光学系36を制御するための操作部66と、モードダイヤルや十字キー、電源スイッチ等の各種スイッチ68とを有する。これら液晶表示部64、操作部66、各種スイッチ68とCPU26との信号のやりとりは入出力インターフェース70(I/F)を介して行われる。
【0043】
そして、発光手段14は、上述した発光制御部30と、照射光源20(多数の赤外LED24)とを有し、受光手段16は、上述した撮像素子32と、光学系36と、撮像素子制御部38と、アナログ信号処理部40と、A/D変換部42と、バッファメモリ44とを有する。
【0044】
発光手段14は、発光制御部30の制御によって、例えば図3に示すように、パルス幅Wが基準時t0から所定期間とされたパルス光28を出射するように構成されている。所定期間は、使用者が設定した測定可能な最大距離Lに基づいて設定されている。例えば物体が最大距離Lの地点に存在していると仮定したとき、パルス光28が出射されて物体に照射し、その反射光34が戻ってくるまでに光は距離2Lだけ進むことになる。従って、パルス光28が出射された時点から反射光34が戻るまでの時間は、光の速度をc(m/sec)とすると、2L/c(sec)となる。この時間をパルス光28のパルス幅Wに割り当てることによって、最大距離Lまでに存在する物体の距離を測定することができる。上述した基準時t0は、使用者が操作パネル62にあるスイッチ68(例えば測距開始スイッチ)を操作した時点等に設定することができる。
【0045】
一方、受光手段16の撮像素子32は、図4に示すように、例えばマトリクス状に配列された多数の受光部72を有する。受光部72は、入射光量に応じた量の電荷に光電変換する光電変換部74(フォトダイオード)と、光電変換部74に対応して配列された2つの蓄積部(第1蓄積部76a及び第2蓄積部76b)とを有する。また、撮像素子32には、列方向に配列された多数の第1蓄積部76aに対して共通とされた第1垂直転送路78aが多数本、行方向に配列され、列方向に配列された多数の第2蓄積部76bに対して共通とされた第2垂直転送路78bが多数本、行方向に配列されている。各第1垂直転送路78a並びに各第2垂直転送路78bの最終段にはそれぞれ出力部80が配置され、第1垂直転送路78a及び第2垂直転送路78bを転送してきた電荷がこれら出力部80を通じてそれぞれ電圧信号に変換されて出力されることになる。電圧変換された電荷はリセット信号の印加に伴ってそれぞれドレイン領域に掃き出される。
【0046】
また、受光部は、図5に示すように、各光電変換部74の中央部分に対応して開口82が設けられ、それ以外の部分は遮光膜84が形成されて光が進入しないようになっている。光電変換部74上のうち、開口82に対応した部分に例えば透明電極による中央電極86が形成され、第1蓄積部76a上に第1蓄積電極88aが形成され、第2蓄積部76b上に第2蓄積電極88bが形成され、中央電極86と第1蓄積電極88a間並びに中央電極86と第2蓄積電極88b間に、光電変換部74のポテンシャルを傾斜させるための第1調整電極90a及び第2調整電極90bが形成されている。さらに、第1蓄積部76aと第1垂直転送路78aとの間には、第1蓄積部76aに蓄積された電荷を第1垂直転送路78aに転送するための第1転送電極92aが形成されている。同様に、第2蓄積部76bと第2垂直転送路78bとの間にも、第2蓄積部76bに蓄積された電荷を第2垂直転送路78bに転送するための第2転送電極92bが形成されている。
【0047】
第1垂直転送路78a上及び第2垂直転送路78b上に形成される電極群については、例えばインターライン方式のCCD撮像素子と同様の構成を採用することができるため、ここではその詳細説明を省略する。
【0048】
ここで、1つの受光部72の動作について説明する。先ず、図5の実線Aで示すように、中央電極86、第1調整電極90a及び第2調整電極90bの各電圧を調整して、光電変換部74のポテンシャルを第1蓄積部76aに向かって下り傾斜にさせる。そして、光が受光部72に入射することによって、入射光量に応じた量の電荷が光電変換部74で発生すると共に、発生した電荷は、光電変換部74でのポテンシャル傾斜に沿って第1蓄積部76aに転送蓄積される(蓄積動作)。
【0049】
ある一定の期間が経過した時点で、中央電極86、第1調整電極90a及び第2調整電極90bの各電圧を調整して、光電変換部74のポテンシャルを今度は第2蓄積部76bに向かって下り傾斜にさせる。これによって、入射光量に応じた量の電荷が光電変換部74で発生すると共に、発生した電荷は、光電変換部74でのポテンシャル傾斜に沿って第2蓄積部76bに転送蓄積される(蓄積動作)。この第2蓄積部76bへの電荷の転送蓄積の期間において、第1転送電極92aに印加される電圧を調整して第1蓄積部76aと第1垂直転送路78a間のポテンシャル障壁94aを下げて、第1蓄積部76aの電荷を第1垂直転送路78aに転送する(読出し動作)。
【0050】
ある一定の期間が経過した時点で、中央電極86、第1調整電極90a及び第2調整電極90bの各電圧を調整して、光電変換部74のポテンシャルを再び第1蓄積部に向かって下り傾斜にさせる。これによって、入射光量に応じた量の電荷が光電変換部74で発生すると共に、発生した電荷は、光電変換部でのポテンシャル傾斜に沿って第1蓄積部76aに転送蓄積される(蓄積動作)。この第1蓄積部76aへの電荷の転送蓄積の期間において、第2転送電極92bに印加される電圧を調整して第2蓄積部76bと第2垂直転送路78b間のポテンシャル障壁94bを下げて、第2蓄積部76bの電荷を第2垂直転送路78bに転送する(読出し動作)。この読出し動作の期間において、第1垂直転送路78aの電荷が順番に出力部80に転送されて出力部80から電圧信号が出力され、電圧信号に変換された電荷は順次ドレイン領域に掃き出されてリセットされることになる(リセット動作)。これらの動作が順次繰り返されることになる。
【0051】
次に、この測距システム10に対応した撮像素子32の動作について図3を参照しながら説明する。
【0052】
先ず、基準時t0からパルス幅Wに相当する期間にわたる第1区間T1において、各光電変換部74は、入射光量に応じた電荷を発生し、第1蓄積部76aに蓄積していく(蓄積動作)。
【0053】
第1区間T1の経過時点からパルス幅Wに相当する期間にわたる第2区間T2において、第1蓄積部76aでの蓄積電荷を第1垂直転送路78aに読み出す(読出し動作)。また、この第2区間T2において、各光電変換部74は、入射光量に応じた電荷を発生し、今度は第2蓄積部76bに蓄積していく(蓄積動作)。
【0054】
第2区間T2の経過時点からパルス幅Wに相当する期間にわたる第3区間T3において、第2蓄積部76bでの蓄積電荷を第2垂直転送路78bに読み出す(読出し動作)。また、この第3区間T3において、各光電変換部74は、入射光量に応じた電荷を発生し、再び第1蓄積部76aに蓄積していく(蓄積動作)。さらに、この第3区間T3においては、第1垂直転送路78aに読み出されている電荷を出力部80に向けて転送し、出力部80においてそれぞれ電荷量に応じた電圧信号に変換すると共に、電圧信号に変換された電荷をリセットする(リセット動作)。複数の第1垂直転送路78aの出力部80から出力された電圧信号は、後段のアナログ処理回路40にて各受光部72における第1区間T1の撮像信号Sbとして変換する。第1区間T1の撮像信号Scは、A/D変換部42にてデジタル信号に変換されて第1区間T1の画像データ(各受光部72に対応した撮像データDcが配列されたデータ:第1画像データDc1)としてバッファメモリ44に記録される。
【0055】
第3区間T3の経過時点からパルス幅Wに相当する期間にわたる第4区間T4において、第1蓄積部76aでの蓄積電荷を第1垂直転送路78aに読み出す(読出し動作)。また、この第4区間T4においては、第2垂直転送路78bに読み出されている電荷を出力部80に向けて転送し、出力部80においてそれぞれ電荷量に応じた電圧信号に変換すると共に、電圧信号に変換された電荷をリセットする(リセット動作)。複数の第2垂直転送路78bの出力部80から出力された電圧信号は、上述と同様の処理が施されて、第2区間T2の画像データ(第2画像データDc2)としてバッファメモリ44に記録される。
【0056】
そして、第4区間T4の経過時点からパルス幅Wに相当する期間にわたる第5区間T5においては、第1垂直転送路78aに読み出されている電荷を出力部80に向けて転送し、出力部80においてそれぞれ電荷量に応じた電圧信号に変換すると共に、電圧信号に変換された電荷をリセットする(リセット動作)。複数の第1垂直転送路78aの出力部80から出力された電圧信号は、上述と同様の処理が施されて、第3区間T3の画像データ(第3画像データDc3)としてメモリバッファ44に記録される。
【0057】
一方、演算手段18は、図2に示すように、第1画像データDc1〜第3画像データDc3に基づいて、各受光部72に対応した物体までの距離を算出する距離演算部96を有する。
【0058】
この距離演算部96での演算アルゴリズム、特に、1つの受光部72における距離の演算手法(第1演算手法)について図6及び図7を参照しながら説明する。
【0059】
先ず、外光を考慮しない場合について図6を参照しながら説明する。
【0060】
基準時t0からパルス幅W(=2L/c)のパルス光28を出射し、該パルス光28により照射された物体からの反射光34が、第1区間T1と第2区間T2の間に到来した場合を想定する。なお、Lは、上述したように、設定した最大距離を示す。
【0061】
この場合、反射光強度をI、光電変換部74での光電変換効率をε、物体までの距離をkとしたとき、第1区間T1、第2区間T2及び第3区間T3に蓄積された第1電荷量d1(受光積分強度)、第2電荷量d2(受光積分強度)及び第3電荷量d3(受光積分強度)は、以下の関係を有する。
d1=εI(2L/c−2k/c)
d2=εI(2k/c)
d3=0
このとき、物体までの距離kは、次の演算式によって求められる。
距離k={d2/(d1+d2)}×L
={(2k/c)/(2L/c)}×L
=(2k/c)/(2/c)
=k
【0062】
次に、外光を考慮した場合について図7を参照しながら説明する。このとき、外光成分がない場合の反射光強度をI、外光成分をIoとする。
【0063】
外光成分Ioがある場合、蓄積電荷と演算により求められる距離kは、次のように書き換えることができる。
d1’=ε{I(2L/c−2k/c)+Io(2L/c)}
d2’=ε{I(2k/c)+Io(2L/c)}
d3’=ε{Io(2L/c)}
距離k={d2’/(d1’+d2’)}×L
={k+L(Io/I)}/{1+2(Io/I)}
【0064】
これは、反射光強度Iに対し、外光強度Ioが大きいほど、演算で求めた距離kと、実測による距離kとのずれが大きくなり、Io>>Iのとき、演算で求めた距離kはL/2となる。
【0065】
これを防ぐために、反射光成分を受光していない第3区間T3の第3電荷量d3(受光積分強度)を利用する。具体的には、以下の関係式を用いる。
d1’=d1−d3
d2’=d2−d3
距離k={d2’/(d1’+d2’)}×L ……(1)
【0066】
上述の演算手法は、反射光34が第1区間T1と第2区間T2の間に到来した場合を想定しているが、反射光34が第2区間T1と第3区間T3の間に到来した場合も同様の方法で距離kを求めることができる。この場合、外光成分Ioのみが存在しているのは第1区間T1であることと、第1区間T1に相当する距離Lを加算する必要から、以下の演算式にて求めることができる。
d2’=d2−d1
d3’=d3−d1
距離k={d3’/(d2’+d3’)}×L+L ……(2)
【0067】
上述の演算方法を使った演算手段での処理方法を図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
先ず、図8のステップS1において、受光部72を特定するためのカウンタnに初期値1を格納する。
【0069】
その後、ステップS2において、バッファメモリ44からn番目の受光部72に対応した第1電荷量d1〜第3電荷量d3を示すデータを取り込む。
【0070】
その後、ステップS3において、取り込んだ第1電荷量d1〜第3電荷量d3から最低の電荷量を探索する。つまり、第1区間T1〜第3区間T3のうち、外光成分だけの区間を探索する。
【0071】
ステップS4において、最低の電荷量が第3電荷量d3であるか否かが判別される。最低の電荷量が第3電荷量d3であれば、次のステップS5に進み、第3区間T3が外光成分のみの区間と認定し、他の区間の電荷量、すなわち、第1電荷量d1及び第2電荷量d2を以下のように補正する。
d1’=d1−d3
d2’=d2−d3
【0072】
その後、ステップS6において、以下の式によって当該受光部72における物体までの距離kを演算する。
距離k={d2’/(d1’+d2’)}×L
【0073】
一方、上述のステップS4において、最低の電荷量が第3電荷量d3でないと判別された場合は、ステップS7に進み、最低の電荷量が第1電荷量d1であるか否かが判別される。最低の電荷量が第1電荷量d1であれば、次のステップS8に進み、第1区間T1が外光成分のみの区間と認定し、他の区間の電荷量、すなわち、第2電荷量d2及び第3電荷量d3を以下のように補正する。
d2’=d2−d2
d3’=d3−d2
【0074】
その後、ステップS9において、以下の式によって当該受光部72における物体までの距離kを演算する。
距離k={d3’/(d2’+d3’)}×L+L
【0075】
上述のステップS7において、最低の電荷量が第1電荷量d1でないと判別された場合は、ステップS10に進み、距離演算をエラーと判定する。具体的には距離kを、エラーを示す例えば「−1」とする。
【0076】
上述したステップS6、ステップS9又はステップS10での処理が省略した段階で、ステップS11に進み、距離kの値と最低の電荷量の値を出力する。
【0077】
出力された距離kの値は、バッファメモリ44における距離画像を作成するための第1記録領域のうち、n番目の受光部72に対応したアドレスに記録される。出力された最低の電荷量の値はバッファメモリ44における濃淡画像を作成するための第2記録領域のうち、n番目の受光部72に対応したアドレスに記録される。
【0078】
次のステップS12において、カウンタnの値を+1更新する。その後、ステップS13において、全ての受光部72について処理を行ったか否かが判別される。この判別は、カウンタnの値が受光部72の全数を超えたか否かで行われる。
【0079】
全ての受光部72について処理が終了していなければ、ステップS2に戻り、次の受光部72に関する最低の電荷量を探索すると共に、物体までの距離を演算し、これらの値を第1記録領域及び第2記録領域に格納する。
【0080】
そして、ステップS13において、全ての受光部72について処理が完了したと判別された段階で、この演算処理が終了する。
【0081】
このように、測距システム10は、基準時t0から所定のパルス幅Wを有するパルス光28を出射し、パルス光28により照射された物体からの反射光34を受光することによって、第1区間T1で蓄積した第1電荷量d1と、第2区間T2で蓄積した第2電荷量d2と、第3区間T3で蓄積した第3電荷量d3とを取得し、さらに、これら第1電荷量d1〜第3電荷量d3から最も電荷量の少ない区間の電荷量(最低の電荷量)を差し引いてから、物体までの距離kを算出するようにしたので、パルス光28を使用して測距する際に、外光成分を除去することができ、測距の精度を向上させることができる。
【0082】
しかも、受光部72単位に距離を求めて受光部72全体に対応した距離画像を得ると共に、受光部72単位に取得した最低の電荷量に基づいて受光部72全体に対応した濃淡画像を得るようにしたので、距離データから得られる三次元ポリゴン画像や、該三次元ポリゴン画像に濃淡画像による輝度データをマッピングした三次元モデル画像を表示することが可能となり、様々なアプリケーションに適用させることができる。
【0083】
上述の例では、演算手段18、特に距離演算部96の構成をアルゴリズムにて示したが、図9に示す測距演算回路98のように、上述のアルゴリズムをハードウェアを主体に構成するようにしてもよい。
【0084】
この測距演算回路98は、図9に示すように、データ読出回路部100と、外光区間決定回路部102と、測距演算回路部104と、オフセット量決定回路部106と、オフセット量加算回路部108とを有する。
【0085】
データ読出回路部100は、バッファメモリ44の第1画像データDc1から各受光部72に対応した第1電荷量d1の値を順番に読み出す第1読出回路110aと、バッファメモリ44の第2画像データDc2から各受光部72に対応した第2電荷量d2の値を順番に読み出す第2読出回路110bと、バッファメモリ44の第3画像データDc3から各受光部72に対応した第3電荷量d3の値を順番に読み出す第3読出回路110cとを有する。
【0086】
外光区間決定回路部102は、比較回路部112と、外光区間指示部114とを有する。
【0087】
比較回路部112は、第1読出回路110aからの第1電荷量d1と第2読出回路110bからの第2電荷量d2とを比較して、第1電荷量d1≧第2電荷量d2のとき、高レベル信号(論理「1」)を出力し、それ以外のとき低レベル信号(論理「0」)を出力する第1比較器116aと、第2読出回路110bからの第2電荷量d2と第3読出回路110cからの第3電荷量d3とを比較して、第2電荷量d2>第3電荷量d3のとき、高レベル信号(論理「1」)を出力し、それ以外のとき低レベル信号(論理「0」)を出力する第2比較器116bと、第3読出回路110cからの第3電荷量d3と第1読出回路110aからの第1電荷量d1とを比較して、第3電荷量d3>第1電荷量d1のとき、高レベル信号(論理「1」)を出力し、それ以外のとき低レベル信号(論理「0」)を出力する第3比較器116cとを有する。
【0088】
外光区間指示部114は、第1比較器116aの出力の反転と第3比較器116cの出力との論理積を出力する第1AND回路118aと、第3比較器116cの出力の反転と第2比較器116bの出力との論理積を出力する第2AND回路118bとを有する。
【0089】
すなわち、第1区間T1が外光成分のみである場合、第3比較器116cの出力が高レベルとなり、第1比較器116aの出力が低レベルとなるため、第1AND回路118aの出力が高レベルとなり、外光区間が第1区間T1であることを示すことになる。また、第3区間T3が外光成分のみである場合、第2比較器116bの出力が高レベルとなり、第3比較器116cの出力が低レベルとなるため、第2AND回路118bの出力が高レベルとなり、外光区間が第3区間T3であることを示すことになる。
【0090】
測距演算回路部104は、第1選択回路120aと、第2選択回路120bと、第3選択回路120cと、上述した(1)式の演算を行う演算回路122とを有する。
【0091】
第1選択回路120a〜第3選択回路120cは、それぞれ5つの入力端子(第1端子φ1〜第5端子φ5)と1つの出力端子φ0とを有し、各第1端子φ1に第1読出回路110aの出力が接続され、各第2端子φ2に第2読出回路110bの出力が接続され、各第3端子φ3に第3読出回路110cの出力が接続されている。
【0092】
第1選択回路120aの第5端子φ5及び、第2選択回路120bの第5端子φ5及び第3選択回路120cの第4端子φ4には、それぞれ第1AND回路118aの出力が接続され、第1選択回路120aの第4端子φ4、第2選択回路120bの第4端子φ4及び第3選択回路120cの第5端子φ5には、それぞれ第2AND回路118bの出力が接続されている。
【0093】
そして、第1選択回路120aは、第4端子φ4に高レベル信号が入力されると、第1端子φ1に入力されている第1電荷量d1を選択して出力端子φ0を通じて出力し、第5端子φ5に高レベル信号が入力されると、第2端子φ2に入力されている第2電荷量d2を選択して出力するようになっている。
【0094】
第2選択回路120bは、第4端子φ4に高レベル信号が入力されると、第2電荷量d2を選択して出力し、第5端子φ5に高レベル信号が入力されると、第3電荷量d3を出力するようになっている。
【0095】
第3選択回路120cは、第4端子φ4に高レベル信号が入力されると、第1電荷量d1を選択して出力し、第5端子φ5に高レベル信号が入力されると、第3電荷量d3を出力するようになっている。
【0096】
一方、演算回路122は、第1選択回路120aの出力が入力される第1入力端子φaと、第2選択回路120bの出力が入力される第2入力端子φbと、第3選択回路120cの出力が入力される第3入力端子φcと、1つの出力端子φ0とを有する。
【0097】
この演算回路122は、第1入力端子φaに入力された値をXa、第2入力端子φbに入力された値をXb、第3入力端子φcに入力された値をXcとしたとき、以下の演算式を演算し、その演算結果を出力端子φ0から出力するようになっている。
{(Xb−Xc)/(Xa+Xb−Xc×2)}×L
【0098】
次に、オフセット量決定回路部106は、第1定数(=0)が格納された第1レジスタ124aと、第2定数(=L)が格納された第2レジスタ124bと、選択回路126とを有する。
【0099】
選択回路126は、4つの入力端子(第1端子φ1〜第4端子φ4)と1つの出力端子φ0とを有し、第1端子φ1に第1レジスタ124aの出力が接続され、第2端子φ2に第2レジスタ124bの出力が接続され、第3端子φ3に第2AND回路118bの出力が接続され、第4端子φ4に第1AND回路118aの出力が接続されている。
【0100】
そして、第3端子φ3に高レベル信号が入力されると、第1端子φ1に入力されている第1レジスタ124aの値(第1定数=0)を出力し、第4端子φ4に高レベル信号が入力されると、第2端子φ2に入力されている第2レジスタ124bの値(第2定数=L)を出力するようになっている。
【0101】
オフセット量加算回路部108は、加算回路128を有する。この加算回路128は、2つの入力端子(第1入力端子φ1及び第2入力端子φ2)と1つの出力端子φ0とを有し、第1入力端子φ1に入力された値と第2入力端子φ2に入力された値とを加算して、その加算値を出力端子φ0を介して出力する。
【0102】
第1入力端子φ1に演算回路122の出力が接続され、第2入力端子φ2に選択回路126の出力が接続されている。
【0103】
従って、この測距演算回路98は、第1AND回路118aの出力が高レベル(外光区間が第1区間T1)のとき、演算回路122の第1入力端子φaに第2電荷量d2、第2入力端子φbに第3電荷量d3、第3入力端子φcに第1電荷量d1が入力されることから、上述した(2)式が演算されてその結果が加算回路128から出力されることになる。
【0104】
同様に、第2AND回路118bの出力が高レベル(外光区間が第3区間T3)のとき、第1入力端子φaに第1電荷量d1、第2入力端子φ2に第2電荷量d2、第3入力端子φ3に第3電荷量d3が入力されることから、上述した(1)式が演算されてその結果が加算回路128から出力されることになる。
【0105】
この測距演算回路98を用いれば、演算手段18を構成するデータ読出回路部100と、外光区間決定回路部102と、測距演算回路部104と、オフセット量決定回路部106と、オフセット量加算回路部108をハードウェアとして1つのブロックにて構成することができ、測距システム10のソフトウエアの簡略化、演算処理の高速化を図ることができる。
【0106】
次に、測距システム10における演算手段18の他の演算手法(第2演算手法)について図10A〜図11を参照しながら説明する。
【0107】
第2演算手法は、上述した第1演算手法と同様の手法を用いるが、予め設定したサイクル数だけ、図3に示す一連の動作を行って、時間的に変化する外光成分を取得して、より精度よく反射光強度を検出する点で異なる。
【0108】
この第2演算手法では、サイクル数をNとしたとき、バッファメモリ44の記憶容量を、3N個分の画像データが記録できる程度の容量とする。説明を簡単にするために、サイクル数Nを3として説明する。
【0109】
第1サイクルC1〜第3サイクルC3の各第1区間T1で蓄積した第1電荷量d1をそれぞれ対応する第1画像データDc1、第4画像データDc4及び第7画像データDc7としてバッファメモリ44に記憶する。
【0110】
また、第1サイクルC1〜第3サイクルC3の各第2区間T2で蓄積した第2電荷量d2をそれぞれ対応する第2画像データDc2、第5画像データDc5及び第8画像データDc8としてバッファメモリ44に記憶する。
【0111】
同様に、第1サイクルC1〜第3サイクルC3の各第3区間T3で蓄積した第3電荷量d3をそれぞれ対応する第3画像データDc3、第6画像データDc6及び第9画像データDc9としてバッファメモリ44に記憶する。
【0112】
そして、1つの受光部72に関する処理を主体に説明すると、先ず、物体までの距離が3Lより遠いが、4Lよりは近い距離にあって、外光が徐々に明るくなっている場合を想定したとき、撮像した1つの受光部72での電荷量の変化は、図10Aに示すように、反射光34が第4区間T4と第5区間T6の間で到来し、その他の区間が外光成分のみであって、且つ、これら各区間の外光成分が例えば右上がりに増加した特性が得られる。各区間の電荷量をそれぞれ受光量の積分強度として見た場合、図10Bに示すような特性となる。
【0113】
そこで、この第2演算手法では、図11に示す処理を行う。ここでは、1つに受光部72を主体に説明する。
【0114】
先ず、ステップS101において、9個の画像データの対応する受光部72の電荷量を比較して、反射光34が到来した2つの区間(反射光区間)と、その他の区間(外光区間)を検出する。これは、強度の大きい2つの受光積分強度と、強度の小さい7個の受光積分強度を検出することと等価である。
【0115】
その後、ステップS102において、7個の外光区間における各受光積分強度をそれぞれ基準強度とし、これら7個の基準強度の時間変化を関数化する。図10Aの例では、外光区間の電荷量が時間の経過に伴って徐々に増加していることから、直線(一点鎖線)pに示すように、1つの一次関数として関数化することができる。
【0116】
その後、ステップS103において、関数化された基準強度の分布から、強度の大きい2つの受光積分強度に対応する2つの区間(反射光区間)における基準強度を求める。
【0117】
その後、ステップS104において、強度の大きい2つの受光積分強度からそれぞれ対応する基準強度を減算して補正積分強度を得る。
【0118】
そして、ステップS105において、上述した2つの補正積分強度に基づいて、物体までの距離kを算出する。つまり、図10A及び図10Bの例では、反射光34が第2サイクルC2の第1区間T1と第2区間T2の間に到来していることから、上述した測距演算の方法を利用して、
距離k={d2/(d1+d2)}×L+3L
にて求めることができる。
【0119】
なお、ステップS101において検出した受光積分強度の大きい2つの区間が時間的に連続していない場合は、反射光34の到来ではないとして、測距エラーとする。
【0120】
また、ステップS101において、受光積分強度の大きい2つの区間を検出する手法としては、例えば隣接する区間毎の受光積分強度の差分を求め、差分が0よりも大きく最大である区間が反射光34の受光開始区間と判定し、差分が0よりも小さく絶対値が最大である区間が反射光34の受光終了区間と判定する。このようにすれば、反射光34が到来した期間を早期に検出することが可能となる。
【0121】
ところで、本実施の形態に係る測距システム10は、図8のステップS11にも示すように、バッファメモリ44の第1記憶領域に距離画像を記憶し、第2記憶領域に濃淡画像を記憶するようにしている。
【0122】
そこで、この測距システム10は、これら距離画像と濃淡画像を保存部50によって記憶装置48に保存させる場合、距離画像と濃淡画像とを関連付けて保存するようにしている。
【0123】
関連付けの方法としては、図12に示すように、CPU26で動作するOS(オペレーションシステム)がデータをファイル管理する機能を有する場合、距離画像が記録されたファイルのファイル名と、濃淡画像が記録されたファイルのファイル名を連名にして管理する。これにより、例えばある距離画像のファイルへのアクセスが行われた場合に、その距離画像のファイルに関連する濃淡画像のファイルへも容易にアクセスでき、煩雑な画像ファイルの管理を容易に行うことができる。
【0124】
その他の関連付けの方法としては、距離画像と濃淡画像とをそれぞれ受光部単位に管理する方法がある。この方法は、図13に示すように、1つのファイルに受光部72単位の濃淡値と距離値を対応付けて登録するものである。
【0125】
そして、図14に示すように、測距システム10に接続される第1表示器52(二次元画像対応)に切替スイッチ130を設けて、切替スイッチ130を操作するたびに、距離画像の表示/濃淡画像の表示/OFFに切り替えられるようにしてもよい。この場合、上述のように距離画像と濃淡画像とが関連付けられて保存されているため、容易に画像表示を切り替えることができ、要求から応答までの処理時間を大幅に短縮させることができる。
【0126】
また、測距システム10に第2表示器54(三次元画像対応)を接続することによって、距離画像を三次元画像として表示することも可能である。この場合、三次元画像は、距離データのみから得られる三次元ポリゴン画像や、この三次元ポリゴン画像に濃淡画像による輝度データをマッピングした三次元モデル画像等から選択することができる。この場合も、上述のように距離画像と濃淡画像とが関連付けられて保存されているため、容易に三次元画像を切り替えることができ、要求から応答までの処理時間を大幅に短縮させることができる。
【0127】
なお、本発明に係る測距装置、測距方法及び測距システムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本実施の形態に係る測距システムの外形を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る測距システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る測距システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図4】撮像素子の概略構成を示す説明図である。
【図5】受光部のポテンシャルを主体にした構成を示す説明図である。
【図6】外光を考慮しない場合の第1演算手法を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】外光を考慮した場合の第1演算手法を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】第1演算手法のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】第1演算手法のアルゴリズムに基づいて構成された測距演算回路を示す回路図である。
【図10】図10Aは第2演算手法を説明するためのタイミングチャートであり、図10Bは各区間の電荷量をそれぞれ受光量の積分強度として見た場合の特性図である。
【図11】第2演算手法による処理動作を示すフローチャートである。
【図12】距離画像と濃淡画像をファイル名で関連付けて管理する場合の一例を示す説明図である。
【図13】1つのファイルに受光部単位の濃淡値と距離値を対応付けて登録する場合の一例を示す説明図である。
【図14】第1表示器(二次元画像対応)に距離画像と濃淡画像の切替スイッチを設けた例を示す説明図である。
【図15】TOF(Time Of Flight)方式の光波測距方法を示す説明図である。
【図16】変調光に対する反射光の位相の遅れを示す波形図である。
【符号の説明】
【0129】
10…測距システム 14…発光手段
16…受光手段 18…演算手段
20…照射光源 28…パルス光
32…撮像素子 34…反射光
48…記憶装置 50…保存部
52…第1表示器 54…第2表示器
56…表示部 72…受光部
74…光電変換部 76a…第1蓄積部
76b…第2蓄積部 78a…第1垂直転送路
78b…第2垂直転送路 96…距離演算部
98…測距演算回路 100…データ読出回路部
102…外光区間決定回路部 104…測距演算回路部
106…オフセット量決定回路部 108…オフセット量加算回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光手段と、
前記パルス光により照射された物体からの反射光を受光し、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で蓄積した第1電荷量と、前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で蓄積した第2電荷量と、前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で蓄積した第3電荷量とを得る受光手段と、
前記受光手段で得られた前記第1電荷量、前記第2電荷量及び前記第3電荷量に基づいて、前記物体までの距離を算出する演算手段とを有することを特徴とする測距装置。
【請求項2】
請求項1記載の測距装置において、
前記演算手段は、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間を除いた2つの区間の各電荷量に基づいて前記物体までの距離を算出することを特徴とする測距装置。
【請求項3】
請求項2記載の測距装置において、
前記演算手段は、前記2つの区間の各電荷量から前記最も電荷量の少ない区間の電荷量を差し引いてから、前記物体までの距離を算出することを特徴とする測距装置。
【請求項4】
請求項1記載の測定装置において、
前記演算手段は、前記第1電荷量、前記第2電荷量及び前記第3電荷量を比較する比較部と、
第1変数、第2変数及び第3変数に基づいて、前記第1区間又は前記第2区間に基づいた距離を演算する距離演算部と、
前記第1区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間に応じて前記第1変数、第2変数及び第3変数と、前記第1電荷量、前記第2電荷量及び第3電荷量との対応関係を選択する選択部とを有し、
前記距離演算部は、前記パルス幅で決まる設定距離をL、前記第1変数をXa、前記第2変数をXb、前記第3変数をXcとしたとき、
{(Xb−Xc)/(Xa+Xb−Xc×2)}×L
を演算して前記距離を求めることを特徴とする測距装置。
【請求項5】
請求項4記載の測距装置において、
最も電荷量の少ない区間が前記第3区間の場合に、
前記選択部は、前記第1変数に前記第1電荷量、前記第2変数に前記第2電荷量、前記第3変数に前記第3電荷量を選択することを特徴とする測距装置。
【請求項6】
請求項4記載の測距装置において、
最も電荷量の少ない区間が前記第3区間の場合に、前記距離演算部で得られた前記距離に0を加算し、
最も電荷量の少ない区間が前記第1区間の場合に、前記距離演算部で得られた前記距離に前記設定距離Lを加算する加算部を有することを特徴とす測距装置。
【請求項7】
基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光ステップと、
前記パルス光により照射された物体からの反射光を前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で受光する第1受光ステップと、
前記反射光を前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で受光する第2受光ステップと、
前記反射光を前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で受光する第3受光ステップと、
前記第1受光ステップ、前記第2受光ステップ及び前記第3受光ステップでの各受光積分強度を比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて検出された最も強度の小さい受光積分強度を基準強度とし、他の2つの受光積分強度からそれぞれ前記基準強度を減算して2つの補正積分強度を得るステップと、
前記2つの補正積分強度に基づいて、前記物体までの距離を算出するステップとを有することを特徴とする測距方法。
【請求項8】
請求項7記載の測距方法において、
前記第2受光ステップで受光した受光積分強度が前記基準強度とみなされた場合に、測定エラーとすることを特徴とする測距方法。
【請求項9】
基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光ステップと、
前記パルス光により照射された物体からの反射光を、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間毎に順番に配置されたn個の区間においてそれぞれ受光するn個の受光ステップと、
前記n個の受光ステップでの各受光積分強度を比較して、強度の大きい2つの受光積分強度と、強度の小さい(n−2)個の受光積分強度を検出する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて検出された強度の小さい(n−2)個の受光積分強度をそれぞれ基準強度とし、(n−2)個の基準強度の時間変化を関数化するステップと、
前記関数化された基準強度の分布から、前記比較ステップで検出された前記強度の大きい2つの受光積分強度に対応する2つの区間における基準強度を求めるステップと、
前記強度の大きい2つの受光積分強度からそれぞれ対応する基準強度を減算して補正積分強度を得るステップと、
前記2つの補正積分強度に基づいて、前記物体までの距離を算出するステップとを有することを特徴とする測距方法。
【請求項10】
請求項9記載の測距方法において、
前記基準強度よりも強度の大きい前記2つの受光積分強度に対応する前記2つの区間が時間的に連続していない場合に、測距エラーとすることを特徴とする測距方法。
【請求項11】
請求項9記載の測距方法において、
前記比較ステップは、
区間毎の受光積分強度の差分を求め、差分が0よりも大きく最大である区間が反射光の受光開始区間と判定し、差分が0よりも小さく絶対値が最大である区間が反射光の受光終了区間と判定することを特徴とする測距方法。
【請求項12】
基準時から所定のパルス幅を有するパルス光を出射する発光手段と、
複数の受光部を有する撮像素子を有し、各受光部において、前記パルス光により照射された物体からの反射光を受光し、前記基準時から前記パルス幅に相当する期間にわたる第1区間で蓄積した第1電荷量と、前記第1区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第2区間で蓄積した第2電荷量と、前記第2区間経過時点から前記パルス幅に相当する期間にわたる第3区間で蓄積した第3電荷量とを得る受光手段と、
前記各受光部に対応して演算され、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間のうち、最も電荷量の少ない区間を除いた2つの区間の各電荷量に基づいて前記物体までの前記各受光部に対応した距離を算出して距離画像を得る距離画像取得手段と、
前記各受光部に対応して検出された前記最も電荷量の少ない区間の電荷量に基づいて前記各受光部に対応した濃淡画像を得る濃淡画像取得手段とを有することを特徴とする測距システム。
【請求項13】
請求項12記載の測距システムにおいて、
前記距離画像と前記濃淡画像とを関連付けて記録媒体に記録する画像記録手段を有することを測距システム。
【請求項14】
請求項12記載の測距システムにおいて、
前記距離画像における各受光部に対応した距離データと、前記濃淡画像における各受光部に対応した濃淡データとを、それぞれ各受光部に関連付けて記録媒体に記録するデータ記録手段を有することを測距システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−249673(P2008−249673A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95083(P2007−95083)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】