説明

測距装置及び撮像装置

【課題】視差算出にかかる処理時間を考慮して視差算出に用いる画素を適切に選択する。
【解決手段】対象物までの距離を測定する測距装置であって、2つの撮像手段と、2つの撮像手段のうち一方の撮像手段により撮像された画像に対し、視差算出の対象画像のサイズに応じて、視差算出画素を選択するための複数の処理から1つを決定する決定手段と、決定手段により決定された処理に基づき、対象画像から視差算出画素を選択する選択手段と、選択手段により選択された視差算出画素と、他の撮像手段により撮像された画像のうち、選択された視差算出画素に対応する画素とを用いて視差データを算出する算出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや車載カメラなどのリアルタイム処理が要求される組み込み環境で、ステレオカメラのような測距装置を利用することが実用化されてきている。例えば、デジタルカメラにおいて、ステレオカメラを高速オートフォーカスに利用するという技術がある。
【0003】
従来のデジタルカメラのオートフォーカスにおいては、少しずつフォーカスを変えてそのたびに画像を取得し、それらの画像のコントラストを比較して、最も高いコントラストを持つフォーカス位置を最適のフォーカス位置に決定していた。
【0004】
しかしながら、前述した方法では、フォーカス位置を変えて多くの画像を撮像しなければならないため、処理時間がかかるという問題がある。これに対して、ステレオカメラを測距装置としてオートフォーカス用に利用し、一度の撮像で被写体までの距離を取得することで、その距離にあわせたフォーカス位置を算出する方法がある。この方法を用いると、一度の撮像処理で最適のフォーカス位置を算出できるために、高速なオートフォーカス処理が可能になる。
【0005】
例えば、特許文献1(特開平7−225127)には、ステレオカメラとして測距精度を出しやすい縦に並んだ水平エッジ(以降、単に縦エッジと呼ぶ)を検出し、その縦エッジ部の視差データを算出する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2009−14444)には、エッジ検出部が検出したエッジ情報を用いて、処理領域設定部が、物体が存在する可能性のある候補領域を切出し、その切出した候補領域に対して、対応領域探索部がPOC法などで視差を算出するという方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術をデジタルカメラに適用すると、測距装置を利用する方法では、測距した結果でメインの撮像素子側を制御することになる。よって、デジタルカメラとしてのメインの撮像素子の撮像画角に、測距処理用の撮像画像の画角をあわせることが大きな課題になる。デジタルカメラでは、6°〜60°の大きな画角変動範囲をもつことが一般的である。このような画角変動(ズーム)は、筐体を動作させてレンズの焦点距離を動かす機械的な機構で実現される(光学ズーム)か、画像処理のような電子的処理によって実現される(電子ズーム)。
【0008】
しかしながら、オートフォーカス用の測距装置側に対しても光学ズーム機構を持たせようとすると、大きなコストアップにつながり、また筐体におけるスペースも必要になる。電子ズーム機構の場合は、処理時間がかかること、高速で実現しようとするとコストアップにつながることが問題になる。
【0009】
以上を踏まえると、オートフォーカス用の測距装置に対しては、ひとつの画角・焦点距離で、メインの撮像素子側の画角変動範囲全体をカバーできることが望ましい。ただし、そのような構成の場合、図1に示すように、メインの撮像画像のさまざまな画角に対して、対応するオートフォーカス撮像画像内の対応画像領域が大きく異なってしまう。
【0010】
図1は、オートフォーカス撮像画像内の対応画像領域が異なる例を示す図である。図1(A)は、オートフォーカス撮像画角<メイン撮像画角の場合のそれぞれの画像の例を示す。図1(A)に示すように、メイン撮像画角が大きい場合、つまり近傍撮影時には、メイン撮像画像は、オートフォーカス撮像画像の視差算出対象の対応画像よりも大きくなる。
【0011】
図1(B)は、オートフォーカス撮像画角=メイン撮像画角の場合のそれぞれの画像の例を示す。図1(B)に示すように、オートフォーカス撮像画像とメイン撮像画像とは同じ画像サイズになる。
【0012】
図1(C)は、オートフォーカス撮像画角>メイン撮像画角の場合のそれぞれの画像の例を示す。図1(C)に示すように、メイン撮像画角が小さい場合、つまり望遠撮影時には、オートフォーカス撮像画像の視差算出対象の対応画像領域は小さくなる。
【0013】
ここで、対応画像領域から視差データを高速に算出するために、対応画像領域から視差算出画素を間引く方法がある。しかし、画素を間引いて、視差データを計算する画素を選択する処理方法では、所定のアルゴリズムを利用して、閾値の値を変更することで画素を間引く率を変更している。このような手法では、図1(C)に示すように、オートフォーカス側の画像が小さく、画素をそれほど間引きたくないときの処理時間を効率化したい要求がある。また、図1(A)に示すように、オートフォーカス側の画像が大きすぎるために視差算出画素数を減らす必要があり、そのために画素を多く間引くが、その間引く方法には精度が高くテクスチャ特性の高い画素を選択したい、という要求がある。
【0014】
従来技術では、このような並列する異なる要求に対応できず、視差算出にかかる処理時間を考慮して視差算出に用いる画素を適切に選択することができないという問題点があった。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、視差算出にかかる処理時間を考慮して、視差算出に用いる画素を適切に選択することができる測距装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点における測距装置は、対象物までの距離を測定する測距装置であって、2つの撮像手段と、前記2つの撮像手段のうち一方の撮像手段により撮像された画像に対し、視差算出の対象画像のサイズに応じて、視差算出画素を選択するための複数の処理から1つを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された処理に基づき、前記対象画像から視差算出画素を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された視差算出画素と、他の撮像手段により撮像された画像のうち、前記選択された視差算出画素に対応する画素とを用いて視差データを算出する算出手段と、を備える。
【0017】
また、本発明の他の観点における撮像装置は、2つの撮像手段と、前記2つの撮像手段のうち一方の撮像手段により撮像された画像に対し、視差算出の対象画像のサイズに応じて、視差算出画素を選択するための複数の処理から1つを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された処理により、前記対象画像から視差算出画素を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された視差算出画素と、他の撮像手段により撮像された画像のうち、前記選択された視差算出画素に対応する画素とを用いて視差データを算出する視差算出手段と、前記視差算出手段により算出された視差データに基づく距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段により算出された距離に基づきオートフォーカスを制御する制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、視差算出にかかる処理時間を考慮して、視差算出に用いる画素を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】オートフォーカス撮像画像内の対応画像領域が異なる例を示す図。
【図2】測距装置の原理図。
【図3】本発明における測距装置の構成の一例を示すブロック図。
【図4】テクスチャ検出処理部の機能の一例を示すブロック図。
【図5】テクスチャ特性値(その1)を説明するための図。
【図6】テクスチャ特性値(その2)を説明するための図。
【図7】実施例1における視差データ算出処理の一例を示すフローチャート。
【図8】撮像装置の構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例について説明する。まず、測距装置における、画像内に含まれる対象物までの距離を検出する方法について説明する。測距装置は、例えばステレオカメラである。測距装置は、2つの撮像部により得られる2つの撮像画像に基づいて、撮像画像内に含まれる対象物までの距離を検出する装置である。
【0021】
図2は、測距装置の原理図である。図2に示すように、測距装置は、撮像部1と撮像部2とを有する。撮像部1,2は、例えばカメラである。図2では、ピンホールカメラを例に挙げて説明する。基線長(撮像部1と撮像部2の距離)をB、2つの撮像部の焦点距離をf、撮像部1,2から測定対象物3までの距離をZとする。
【0022】
2つの撮像部の光軸は、互いに平行であり、基線に対して垂直である。2つの撮像部の撮像面には測定対象物3がpだけずれた位置に映る。このpは、左右のカメラにおける対応する点間の距離であり視差と呼ぶ。視差の大きさは画素単位で表される事が多い。
【0023】
これらZ、B、f、pの値を用いて三角形の相似の関係から式(1)で撮像部1,2から測定対象物3までの距離Zが求まる。
Z=B×f/p ・・・式(1)
このとき、視差pは、視差を算出する画素ごとに1画素ずつずらして相関値を計算し、それを比較することによって算出される。そのため、処理に膨大な時間がかかることが知られている。例えば、1画素ごとに視差pを探索するための画素をずらして探索する長さ(探索幅)が64画素だとすると、ある画像を処理するための処理時間は、1画素分の視差を探索するために1クロックサイクルかかるとしても、1画像を処理するために64倍の処理時間がかかってしまう。
【0024】
一般に1画素分の相関値を計算するために1クロックサイクルで処理が実現されるということは不可能であり、これは相関をとるブロックサイズによって指数的にさらに増大する。このため、視差計算時間を短縮することは大きな課題となっている。この視差計算時間を算出する概算式を式(2)で表す。
1画像分の視差計算時間=視差算出画素数×(1画素の相関計算時間×探索幅)・・・式(2)
視差計算時間を減らす課題に対し、
・視差算出画素数を減らす
・1画素の相関計算時間を減らす
・探索幅を減らす
ことが考えられる。
【0025】
探索幅は、ターゲットとなる測距範囲によって決定されるものである。1画素の相関計算時間は、短縮するためにハードウェアのリソースが大きく必要となるためコストが高くなる。相関計算時間のアルゴリズムを短縮した場合は、精度が劣化する傾向にある。
【0026】
そこで、本発明では、視差算出画素数を効率よく減らすこと(視差算出画素を効率よく選択すること)を目的とする。この視差算出画素を選択するための処理を、以下ではテクスチャ検出処理、そのためのアルゴリズムを、テクスチャ検出アルゴリズムと呼ぶ。本発明は、このテクスチャ検出アルゴリズムを適宜切り替える。
【0027】
[実施例1]
<構成>
図3は、本発明における測距装置の構成の一例を示すブロック図である。図3に示す測距装置10は、撮像部1、撮像部2、画像取込部4、メモリ5、テクスチャ検出処理部6、視差算出部7、距離算出部8を含む。
【0028】
撮像部1,2は、予め基線間隔がBだけ離間し、かつ光軸が相互に平行になるように配置される。撮像部1,2は例えばカメラである。
【0029】
画像取込部4は、撮像部1,2により撮像された画像を取得し、メモリ5に出力する。メモリ5は、画像取込部4から入力された画像を記憶する。メモリ5は例えばRAM(Random Access Memory)などである。
【0030】
テクスチャ検出処理部6は、撮像部1により撮像された画像を取得する。本実施例では、撮像部1により撮像された画像を基準画像とする。テクスチャ検出処理部6は、基準画像の視差算出に用いる対象画像などに基づき、視差算出画素を効率よく選択する。テクスチャ検出処理部6の詳細は、図4を用いて説明する。
【0031】
図4は、テクスチャ検出処理部6の機能の一例を示すブロック図である。図4に示すテクスチャ検出処理部6は、決定部11、切替部12、第1検出処理部13、第2検出処理部14、選択部15を含む。
【0032】
決定部11は、基準画像を取得し、基準画像内における、視差を算出するための対象画像に基づき、視差を算出するための画素を選択するための処理(テクスチャ検出処理)を決定する。以下、視差を算出するための画素を視差算出画素という。
【0033】
決定部11は、視差を算出するための対象画像が所定のサイズ(サイズ閾値)よりも大きければ第1検出処理部13に決定し、対象画像が所定のサイズ以下であれば第2検出処理部14に決定する。サイズ閾値は、例えば200×100である。また、決定部11は、サイズ閾値を複数記憶し、3以上の検出処理部の中から1つの検出処理部を選択するようにしてもよい。
【0034】
決定部11は、視差算出画素数によりテクスチャ検出アルゴリズムを決定してもよい。例えば、決定部11は、視差算出にかかった過去の処理時間に基づく今回要求される処理時間(例えば数ミリセック)により視差算出画素数を決定し、この視差算出画素数が所定数(画素閾値)よりも大きければ第2検出処理部14、所定数以下であれば第1検出処理部13に決定してもよい。要求される処理時間は、アプリケーションとデバイスの処理能力により決まる。例えば、高速オートフォーカスによれば、0.1秒〜0.7秒の処理時間が要求され、そのうちの所定数の時間が視差算出にかかる処理時間として要求される。
【0035】
これは、視差算出画素数が所定数以下であれば、それだけ多くの画素を間引くことになるので第1検出処理部13を適用し、所定数よりも視差算出画素数が大きければ、それほど画素を間引く必要がないので第2検出処理部14を適用するという考えに基づく。
【0036】
また、決定部11は、対象画像のサイズと、決定される視差算出画素数とに基づいて、対象画像から多くの画素を間引く必要があると判断すれば第1検出処理部13に決定し、対象画像から画素を間引く数が少ないと判断すれば第2検出処理部14に決定してもよい。
【0037】
切替部12は、決定部11の決定内容により、いずれかの検出処理部に接続する。この切替部12は、説明の便宜上ハードウェア的に説明するが、プログラムの条件分岐による切り替えを行うソフトウェアで実装してもよい。
【0038】
第1検出処理部13は、視差を算出するための対象画像が大きい場合に適用されるテクスチャ特性の検出処理である。第1検出処理部13は、高度なテクスチャ検出アルゴリズムを適用し、テクスチャ特性値を算出する。
【0039】
図5は、テクスチャ特性値(その1)を説明するための図である。図5に示す例では、視差計算を行うブロックサイズを9×9とした場合、テクスチャを検出するブロックサイズも9×9とした例である。なお、視差計算を行うブロックサイズと、テクスチャを検出するブロックサイズとは必ずしも一致させる必要はない。
【0040】
第1検出処理部13は、図5に示す例によれば、テクスチャ特性値を式(3)により算出する。
【0041】
【数1】

ただし、(i,j):画素位置
x(i,j):(i,j)の輝度値
a:水平5TAP係数、a(0)が中心の係数とする
b:5×3ブロックフィルタ係数、b(0,0)が中心の係数とする
ω1:水平5TAP計算用重み係数
ω2:5×3ブロックフィルタ用重み係数
図5に示すテクスチャ特性値のテクスチャ検出アルゴリズムは、視差計算を行うブロック(9×9の画素ブロック)内で、水平エッジがどれくらい含まれているかという情報と、視差計算を行う中心の画素のまわりに縦ラインがどれくらい続くか(水平エッジがどれくらい縦に続いているか)という情報によって、テクスチャレベルを評価するアルゴリズムである。
【0042】
このアルゴリズムでは、たとえば5×3のブロックフィルタのパタンを変えることによって、縦エッジだけでなく、斜め線など、さまざまなパタンに対応することができる。対象画像のサイズが大きい場合は、多くの画素を間引く必要があるので、このようなアルゴリズムを使って、精度の高いテクスチャ特性値が算出される。これにより、視差算出を行うのに、精度の高いテクスチャ特性値に基づく理想的な画素を選択することができる。第1検出処理部13は、算出したテクスチャ特性値を対象画像と共に選択部15に出力する。
【0043】
第2検出処理部14は、視差を算出するための対象画像のサイズが小さい場合に適用されるテクスチャ特性の検出処理である。第2検出処理部14は、処理速度優先の簡易的なテクスチャ検出アルゴリズムを適用し、テクスチャ特性値を算出する。
【0044】
図6は、テクスチャ特性値(その2)を説明するための図である。図6に示す例では、対象画像の中の画素に対し、シンプルなテクスチャ検出アルゴリズムでテクスチャ特性値を算出する。
【0045】
第2検出処理部14は、図6に示す例によれば、テクスチャ特性値を式(4)により算出する。
【0046】
【数2】

ただし、(i,j):画素位置
x(i,j):(i,j)の輝度値
図6に示す例では、隣接する画素の輝度値の差分の絶対値を算出してテクスチャ特性値とする。対象画像のサイズが小さい場合には、それほど画素を間引く必要がないので、処理速度を優先して簡易的にテクスチャ特性値が算出される。第2検出処理部14は、算出したテクスチャ特性値を対象画像と共に選択部15に出力する。
【0047】
第1検出処理部13、第2検出処理部14は、1つの検出処理部16として構成されてもよい。この検出処理部16は、3つ以上の検出処理を備えてもよい。
【0048】
選択部15は、第1検出処理部13や第2検出処理部14により取得したテクスチャ特性値に基づいて、対象画像から視差算出画素を選択する。選択部15は、例えば、第1検出処理部13からテクスチャ特性値を取得した場合、取得したテクスチャ特性値が第1閾値(テクスチャ閾値)以上であれば、そのテクスチャ特性値に対応する画素を視差算出画素として選択する。選択されなかった画素は間引かれることになる。
【0049】
また、選択部15は、第1検出処理部13からテクスチャ特性値を取得した場合、選択する視差算出画素数を決めておき、取得したテクスチャ特性値の上位から視差算出画素数分のテクスチャ特性値に対応する画素を選択するようにしてもよい。これにより、一定数以上の画素を選択することができ、後処理でまとまった数の画素を用いることができる。
【0050】
選択部15は、例えば、第2検出処理部14からテクスチャ特性値を取得した場合、取得したテクスチャ特性値が第2閾値(テクスチャ閾値)以上であれば、そのテクスチャ特性値に対応する画素を視差算出画素として選択する。選択されなかった画素は間引かれることになる。
【0051】
選択部15は、第1閾値と第2閾値とをそれぞれに適するように異ならせてもよい。また、第1閾値及び第2閾値は、それぞれの対象画像または基準画像の輝度のヒストグラムに応じて適宜変更してもよい。対象画像が明るめの画像であれば閾値は高くなり、暗めの画像であれば閾値は低く設定される。この閾値は実験により最適な値に設定される。
【0052】
なお、選択部15は、視差算出にかかる処理時間に応じて、視差算出画素数に制限を加えてもよい。例えば視差算出にかかる処理時間が5msec(ミリセック)であれば、選択部15は、1200点の画素が選択されるようにする。選択部15は、5ミリセックで1200点を基準にし、視差算出にかかる処理時間に比例して視差算出画素数を決定するようにすればよい。選択部15は、選択した視差算出画素(又はその輝度値)を視差算出部7に出力する。
【0053】
図3に戻り、視差算出部7は、テクスチャ検出処理部6により選択された視差算出画素を取得する。視差算出部7は、取得した視差算出画素に対応する画素である、撮像部2により撮像された画像の画素をメモリ5から取得する。撮像部2により撮像された画像を比較画像という。
【0054】
視差算出部7は、基準画像の視差算出画素と、比較画像の視差算出画素に対応する画素とに基づいて、視差データを算出する。視差算出部7は、式(5)により視差データを算出する。式(5)では、図5に示す例に合わせて、視差計算を行うブロックサイズを9×9として視差データが算出される。
【0055】
【数3】

ただし、I(i,j):視差算出画素の輝度値
C(i,j):視差算出画素に対応する比較画像の画素の輝度値
なお、視差算出部7は、視差データ算出に用いるアルゴリズムは式(5)に示すようにSAD(Sum of Absolute Difference)に限らず、2つの画素ブロックの相関を比較するものであれば適用できる。視差算出部7は、算出した視差データを距離算出部8に出力する。
【0056】
距離算出部8は、視差算出部7から取得した視差データを視差pとし、式(1)により、距離Zを求める。この距離Zが、対象物までの距離を示す。
【0057】
<動作>
次に、実施例1における測距装置の動作について説明する。図7は、実施例1における視差データ算出処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すステップS101で、決定部11は、視差算出画素数及び/又は対象画像のサイズを取得する。決定部11は、視差算出画素数を自ら求めてもよいし、例えばメモリ5に記憶される場合は、メモリ5から視差算出画素数を取得してもよい。
【0058】
ステップS102で、決定部11は、取得した対象画像のサイズ及び/又は視差算出画素数からテクスチャ検出アルゴリズムを決定する。決定の仕方は前述した通りである。
【0059】
ステップS103で、検出処理部16は、決定されたテクスチャ検出アルゴリズムによりテクスチャ特性値を算出する。例えば、テクスチャ特性値は、式(3)や式(4)により算出される。
【0060】
ステップS104で、選択部15は、算出されたテクスチャ特性値に基づき、視差算出画素を選択する。例えば、選択部15は、対象画像のサイズが大きければ、多くの画素を間引くようにして視差算出画素を選択する。このとき用いるテクスチャ特性値は精度の高いアルゴリズムにより求められた値である。また、選択部15は、対象画像のサイズが小さければ、間引く画素を少なくして視差算出画素を選択する。このとき用いるテクスチャ特性値は処理時間を優先した簡易的なアルゴリズムにより求められた値である。
【0061】
ステップS105で、視差算出部7は、選択された視差算出画素の輝度値と、比較画像のうち、視差算出画素に対応する画素の輝度とを用いて、視差データを算出する。
【0062】
これにより、間引く数が多い場合は、精度の高いアルゴリズムにより求められたテクスチャ特性値により視差算出画素を選択できる。一方、間引く画素が少ない場合は、簡易的なアルゴリズムにより求められたテクスチャ特性値により視差算出画素を選択できる。
【0063】
以上、実施例1によれば、視差算出にかかる処理時間を考慮して視差算出に用いる画素を適切に選択することができる。また、利用する対象画像サイズに応じて(対応画角)、適用するテクスチャ検出アルゴリズムを切り替えることができるため、光学ズームや電子ズームなしで広い画角範囲に対応する視差算出を効率的に実行することが可能になる。また、視差計算の処理速度、コスト削減、距離検出精度を考慮した測距装置を提供することが可能になる。
【0064】
また、実施例1によれば、対象画像のサイズごとに、適用するテクスチャ検出アルゴリズムをあらかじめ規定しておくため、画像サイズが大きい場合には、数多くの画素を間引くことになり、テクスチャ検出アルゴリズムとして検出精度の高いアルゴリズムを採用することができる。一方、対象画像のサイズが小さい場合には、ほとんど画素を間引く必要がないため、シンプルなテクスチャ検出アルゴリズムで、すぐに視差計算の実効処理に移行することができる。
【0065】
また、実施例1によれば、前述した処理を実現することにより、大きな対象画像に対して視差を算出する場合でも、高精度を保ちつつ画素を多く間引くため膨大な処理時間がかかることを避けることができる。また、小さな対象画像に対して視差を算出する場合でも、情報量を減らすことなく高速に視差計算をすることができる。
【0066】
また、実施例1によれば、要求される処理時間を制約として、算出したい視差算出画素数の範囲を決定してもよい。本実施例の測距装置10は、決定された視差算出画素数と対象画像のサイズとに応じて複数のテクスチャ検出アルゴリズムの中から適切なアルゴリズムを決定することができる。上記実施例では、2つのテクスチャ検出アルゴリズムを用いて説明したが、例えばサイズ閾値を複数用意しておくことで、そのサイズ閾値に応じて複数のテクスチャ検出アルゴリズムの1つを適用してもよい。
【0067】
なお、テクスチャ検出処理部6、視差算出部7、及び距離算出部8は、例えば測拒装置10内の演算回路により実現されうる。
【0068】
[実施例2]
次に、実施例2における撮像装置について説明する。実施例2における撮像装置は、実施例1における測距装置10を内蔵する撮像装置である。
【0069】
<構成>
図8は、撮像装置30の構成の一例を示すブロック図である。図8に示す撮像装置30は、例えばデジタルカメラである。撮像装置30は、電源31、被写体32を撮像する撮影光学系33、撮像手段34、プロセッサ35、測距装置10、制御手段37、オートフォーカス手段38、フォーカス駆動手段39を有する。
【0070】
撮像手段34は、撮影光学系33により撮像された被写体像を像形成信号に変換してプロセッサ35とオートフォーカス手段38とに向けて出力する。
【0071】
プロセッサ35は、撮像手段34からの像形成信号に所定の処理を行って、モニターに出力する。測距装置10は、実施例1で説明したように、被写体32までの距離を三角測距の原理に基づき測定する。
【0072】
制御手段37は、測距装置10の測距結果に基づいて後述する制御を行う。オートフォーカス手段38は、撮像手段34の像形成信号に基づき後述する制御を行う。
【0073】
フォーカス駆動手段39は、撮影光学系33の一部を光軸方向に移動させて撮像手段34に形成される被写体像のピント状態を変化させる。
【0074】
オートフォーカス手段38は、フォーカス駆動手段39を制御してピント状態を順次変化させつつ、ピント状態ごとに得られた像形成信号を逐次評価し、この評価値に基づいて所定のピント状態を得る。
【0075】
制御手段37は、測距装置10によって得られた距離に対応するピント状態の近傍のピント範囲で評価を行うようにオートフォーカス手段38を制御する。
【0076】
測距装置10は、実施例1で説明したように、視差算出の対象となる対象画像のサイズなどに応じて、テクスチャ検出アルゴリズムを決定する。測距装置10は、決定したテクスチャ検出アルゴリズムに基づいて画素を間引き、視差算出画素に基づいて視差データを算出し、視差データに基づき距離を算出する。
【0077】
オートフォーカス手段38は、撮影光学系33のフォーカスレンズ群を可動させてズーム全域を走査範囲として移動させつつ、各フォーカスレンズ群の各レンズ位置における被写体像のコントラストを算出し、全域走査後に最大のコントラストが得られる位置を最適ピント状態の位置すなわち最適焦点位置(合焦位置)として決定している。
【0078】
この方法は、コントラストAF方式又は山登りAF方式と呼ばれ、実際に被写体像を見ながらフォーカス合わせを行うため、高精度で正確なフォーカス検出を行うことができる。
【0079】
しかし、その反面、全域走査後に最適ピント位置(合焦位置)を求めるため、合焦するまでに時間がかかるという欠点がある。とりわけ、高倍率のズーム機能を持つ撮像装置30においてはフォーカスが合焦するまでに時間がかかる。
【0080】
そこで、制御手段37は、測距装置10によって得られた被写体32までの距離に対応するフォーカスレンズ群のレンズ位置Aを算出し、そのレンズ位置を中心として±ΔBの走査範囲(A−ΔB〜A+ΔB)を近傍のピント範囲に設定し、この近傍のピント範囲を走査範囲とするように、オートフォーカス手段38を制御する。すなわち、制御手段37は、距離に対応するレンズ位置を含む近傍が合焦検出の走査範囲となるようにオートフォーカス手段38を制御する。
【0081】
これにより、フォーカスが合うまでの時間が短縮され、かつ正確なフォーカス合わせも実現する。もちろん、測距装置10の測距情報だけでフォーカスレンズ群を可動させ、コントラストAFを行わずにフォーカス合わせを行っても良い。
【0082】
また、実施例2に係る測距装置を用いた撮像装置では、小型でかつ低コスト化を図ることができ、しかも、高速で高精度にフォーカス合わせを行うことができることになり、シャッターチャンスを逃すことなく画像を取り込むことができる。
【0083】
本発明の測距装置10は、車載用測距装置やビデオカメラの測距装置、携帯機器搭載用カメラや3次元デジタルカメラや監視用カメラ等の用途に応用することが可能である。
【0084】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、実施例以外にも種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1、2 撮像部
4 画像取込部
5 メモリ
6 テクスチャ検出処理部
7 視差算出部
8 距離算出部
10 測距装置
11 決定部
12 切替部
13 第1検出処理部
14 第2検出処理部
15 選択部
16 検出処理部
30 撮像装置
35 プロセッサ
37 制御手段
38 オートフォーカス手段
39 フォーカス駆動手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開平7−225127
【特許文献2】特開2009−14444

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物までの距離を測定する測距装置であって、
2つの撮像手段と、
前記2つの撮像手段のうち一方の撮像手段により撮像された画像に対し、視差算出の対象画像のサイズに応じて、視差算出画素を選択するための複数の処理から1つを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された処理に基づき、前記対象画像から視差算出画素を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された視差算出画素と、他の撮像手段により撮像された画像のうち、前記選択された視差算出画素に対応する画素とを用いて視差データを算出する算出手段と、
を備える測距装置。
【請求項2】
前記処理は、前記対象画像の所定ブロック内の画素のテクスチャ特性を検出する検出処理であり、
前記選択手段は、
前記検出処理により検出されたテクスチャ特性の値に応じて視差算出画素を選択する請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
前記検出処理は、精度の高いテクスチャ特性を検出する第1検出処理、又は簡易的なテクスチャ特性を検出する第2検出処理である請求項2記載の測距装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記対象画像のサイズがサイズ閾値より大きい場合、前記第1検出処理に決定し、前記対象画像のサイズが閾値より小さい場合、前記第2検出処理に決定する請求項3記載の測距装置。
【請求項5】
前記選択手段は、
視差算出に要求される処理速度に応じて、選択する視差算出画素の数を決定する請求項1乃至4いずれか一項に記載の測距装置。
【請求項6】
前記選択手段は、
前記検出処理により検出されたテクスチャ特性の値がテクスチャ閾値以上である画素を選択する請求項2乃至4いずれか一項に記載の測距装置。
【請求項7】
前記選択手段は、
前記検出処理により検出されたテクスチャ特性の値が高い順に所定数選択する請求項2乃至4いずれか一項に記載の測距装置。
【請求項8】
2つの撮像手段と、
前記2つの撮像手段のうち一方の撮像手段により撮像された画像に対し、視差算出の対象画像のサイズに応じて、視差算出画素を選択するための複数の処理から1つを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された処理により、前記対象画像から視差算出画素を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された視差算出画素と、他の撮像手段により撮像された画像のうち、前記選択された視差算出画素に対応する画素とを用いて視差データを算出する視差算出手段と、
前記視差算出手段により算出された視差データに基づく距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段により算出された距離に基づきオートフォーカスを制御する制御手段と、
を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18013(P2012−18013A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154254(P2010−154254)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】