説明

測距装置

【課題】 本発明は、測定分解能を変更することのできる測距装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の測距装置は、測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部(110)と、前記測距対象物の方向から戻る信号を受信する受信部(120)と、前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知すると共に、前記受信部が信号を受信する際の分解能を可変にする制御部(100’)とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物に向けて信号を発信し、その測定対象物で反射した信号が戻るまでの時間から、その測距対象物までの距離を測定する測距装置に関する。本発明は、特に、その信号が戻るタイミングを有限周期で検知するような測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来の測距装置(特許文献1,特許文献2など)の概略構成図である。
従来の測距装置には、発信部110、受信部120、メモリ130、制御部100などが備えられる。なお、符号141,142はレンズ、符号110aは半導体レーザ、符号110bはレーザ駆動回路、符号120aは光検出器、符号120bは増幅器、符号120cは二値化回路、符号120dは発光検出回路、符号120eは閾値設定回路、符号120fはサンプリング回路、符号120gはカウンタ、符号120hは発信器である。
【0003】
発信部110は、測距対象物に向けてパルス状のレーザ光(測定用光信号)を発信する。
受信部120は、測距対象物の方向から戻る光信号を繰り返し周期的に受信する。受信された光信号は、メモリ130にそれぞれ格納される。
この受信は、所定のクロック(発信器120hから発信されるクロック)に同期している。
【0004】
このクロックの周波数は、測定用光信号を確実に受信できるよう、その測定用光信号のパルス幅と比較して十分に高い所定値に予め設定されている(例えば、パルス幅30nsecで80MHz)。
制御部100は、メモリ130に格納された各光信号の中から測定用光信号を識別し、その測定用光信号の発信から受信までの時間を、受信の周期を1単位として認識し、それを距離に換算する。
【0005】
この測距装置において測距分解能を向上させるためには、受信の周期が短くなるようクロックの周波数を予め高く設定しておけばよい。光信号の速度c(光速)は一定なので、例えば、クロックの周波数を80MHzに設定しておけば測距分解能は約2mであるが、クロックの周波数を160MHzにしておけば測距分解能は約1mになる。
【特許文献1】米国特許第5760887号明細書
【特許文献2】特開平7−12935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、測距装置に要求される測距分解能は、測距の状況(測距対象物の種類、測距対象物までの距離、測距目的など)により変化することが多い。
そこで本発明は、測定分解能を変更することのできる測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の測距装置は、測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、 前記測距対象物の方向から戻る信号を受信する受信部と、前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知すると共に、前記受信部が信号を受信する際の分解能を可変にする制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の測距装置は、請求項1に記載の測距装置において、前記受信部での信号の受信は、サンプルクロックに同期しており、前記制御部は、前記サンプルクロックを変更することで前記分解能を可変にすることを特徴とする。
請求項3に記載の測距装置は、請求項2に記載の測距装置において、前記制御部は、外部からの指示又は前記検知した前記時間に応じて前記サンプルクロックの周波数を変更すると共に、前記サンプルクロックの回数が所定値に保たれるようその周波数の変更に連動して前記サンプルクロックのサンプリングの期間長を変更することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の測距装置は、請求項2に記載の測距装置において、前記制御部は、最初に前記サンプルクロックの周波数を相対的に低い所定値に設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の受信タイミングを認識し、前記認識した受信タイミングが前記サンプルクロックの周波数での受信期間でカバーできる範囲内あれば、前記サンプルクロックの周波数を前記所定値よりも相対的に高く設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記時間を検知することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の測距装置は、測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、前記測距対象物の方向から戻る信号を、サンプルクロックに同期して受信する受信部と、前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知する制御部とを備えた測距装置において、前記サンプルクロックの周波数は可変であり、前記制御部は、最初に前記サンプルクロックの周波数を相対的に低い所定値に設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の受信タイミングを認識し、前記認識した受信タイミングが前記サンプルクロックの周波数での受信期間でカバーできる範囲内であれば、その受信の開始タイミングをオフセットすると共に前記サンプルクロックの周波数を前記所定値よりも相対的に高く設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記時間を検知することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の測距装置は、測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、前記測距対象物の方向から戻る信号を、サンプルクロックに同期して受信する受信部と、前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知する制御部とを備えた測距装置において、前記サンプルクロックの周波数は可変であり、前記制御部は、外部からの指示又は前記検知した前記時間に応じて前記サンプルクロックの周波数を変更すると共に、そのサンプルクロックのサンプリングの期間長を所定値に保ちながら前記周波数の変更に連動して前記サンプルクロックの回数を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定分解能を変更することのできる測距装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
以下、図1、図2、図3、図4、図5、図6を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態は、本発明を適用した測距装置の実施形態である。
【0014】
先ず、本実施形態の測距装置の構成について図1に基づき説明する。なお、図1において、図14に示した従来の測距装置と同じ要素については、同一の符号を付した。
本実施形態の測距装置には、図1に示すように、発信部110、受信部120’、メモリ130、MPU(制御部に対応。)100’、操作部12が備えられる。また、この測距装置には、操作者に対し情報を表示する表示部(不図示)なども備えられる。
【0015】
発信部110は、レンズ141、半導体レーザ110a、レーザ駆動回路110bなどからなる。
受信部120’は、レンズ142、光検出器120a、増幅器120b、二値化回路120c、発光検出回路120d、閾値設定回路120e、サンプリング回路120f、カウンタ120g、発信器120h、分周・逓倍回路11などからなる。
【0016】
次に、本実施形態の測距装置による測距(測定処理、演算処理からなる。)について図1、及び図2、図3に基づき説明する。なお、操作者からの測距の指示は、操作部12から入力される。MPU100’は、その指示に応じて各部を駆動することで測距を行う。
(測定処理)
発信器120hは、所定の周波数でクロックを生成する。分周・逓倍回路11は、そのクロックの周波数を分周又は逓倍する。その分周又は逓倍の比率は、MPU100’によって予め設定される。その比率により、分周・逓倍回路11から出力されるクロックの周波数は、値fa,fb,fcの間で切り換え可能である(以下、fa=160MHz,fb=80MHz,fc=40MHzとする。)。つまり、この測距装置内の後述する受信に用いられるクロック(以下、「サンプルクロック」という。)の周波数fは、値fa,fb,fcの間で切り換え可能である。
【0017】
閾値設定回路120eは、閾値(予め測定された背景光の強度と発信部110が発信する測定用光信号の強度との中間強度に相当する閾値)を生成し、その閾値を二値化回路120cに設定する(図1(1))。
MPU100’は、カウンタ120gを駆動する(図1(2))。つまり、カウンタ120gに対しカウント値の上限値N(ここでは、N=250とする。)を指定してカウントを開始させる。また、MPU100’は、レーザ駆動回路110bに対し、パルス状の測定用光信号の発光を指示する(図1(3))。
【0018】
カウンタ120gは、サンプルクロックに同期してカウントを開始すると共にサンプリング回路120fに対し受信開始の合図(サンプルイネーブル信号)を与える。
レーザ駆動回路110bは半導体レーザ110aを駆動する。これによって、測定用光信号がレンズ141を介して測距対象物に向けて発信される。
発光検出回路120dは、この発信のタイミングを検知し、スタートパルス信号をサンプリング回路120fに与える(図1(4))。
【0019】
測距対象物の方向からレンズ142に入射する光は、光検出器120aに導光され、電気信号に変換される。
電気信号は、増幅器12bを介して二値化回路120cに入力される。二値化回路120cは、電気信号を閾値判別して二値化信号に変換する。
サンプリング回路120fは、サンプルイネーブル信号が与えられると、この二値化信号をサンプルクロックに同期して繰り返し受信し(図1(5))、受信された信号(検出信号)をメモリ130に格納する(なお、信号の検出方法は、エッジサンプリング、レベルサンプリングの何れでもよい。)。
【0020】
カウンタ120gは、カウント値が上限値Nになった時点で、受信終了の合図をサンプリング回路120fに対し与える。
よって、サンプリング回路120fは、サンプルクロックの周波数fで検出信号の受信をN回行う。このとき受信されたN個の検出信号は、図2に示すとおり、メモリ130上のN個の記憶領域mem1,mem2,・・・,memNに個別に格納される。
【0021】
なお、図2には、以上のサンプリング回路120f、カウンタ120g、メモリ130の各動作を可視化したブロック図を示した。また、図3には、或る測距における測定用光信号の発信タイミング、受信のタイミング、検出信号の受信タイミングを可視化したタイミングチャートを示した。
ここで、測距精度を向上させるため、以上の発信及び受信は、図3にも示すように間隔を置いて複数回(発信回数m、ここでは、m=250回とする。)行われる。このとき、検出信号は(N×m)個取得される。
【0022】
これら(N×m)個の検出信号は、受信タイミング毎にメモリ130の各記憶領域mem1,mem2,・・・,memN上にそれぞれ積算される(図2参照)。
よって、メモリ130の各記憶領域mem1,mem2,・・・,memNには、検出信号のm個分の積算値S0,・・・,S(N-1)がそれぞれ格納される。
ところで、二値化信号である検出信号の情報量は1bitであり、発信回数m=250であるので、メモリ130の各記憶領域mem1,mem2,・・・,memNのそれぞれ容量はそれぞれ8bitずつ必要となる。よって、ここでは、メモリ130の全体の容量を、8bit×250=250byteとする(以上、測定処理)。
【0023】
(演算処理)
以上の測定処理で得られた各積算値S0,・・・,S(N-1)の中には、図3の下部に示すように、スタートパルス信号の積算値S0と、測定用光信号の積算値Siとが含まれる他、ノイズ信号の積算値も含まれる。
但し、ノイズ信号の積算値は一般に、スタートパルス信号の積算値S0や測定用光信号の積算値Siと比較すると十分に小さな値になる。また、スタートパルス信号の受信タイミングのカウント値は所定値(ここでは0とする。)である。
【0024】
そこで、MPU100’は、積算値S1,・・・,S(N-1)の中の最大値を求め、その最大値Siを与えるような検出信号を測定用光信号とみなし、その測定用光信号の受信タイミングのカウント値iを認識する。
測定用光信号の受信タイミングのカウント値iと、スタートパルス信号の受信タイミングのカウント値(ここでは0)とのカウント差Δ(ここではΔ=i)が、測定用光信号の発信から受信までの時間Δt、つまり測距対象物までの距離を表す。
【0025】
MPU100’は、このカウント差Δを距離に換算し(距離=Δ・(c/f)・(1/2),但し、c:光速)、不図示の表示部に表示する。
なお、サンプルクロックの周波数fが高い値fa(ここでは160MHz)であるときには、受信の周期(=カウントの1単位)が小さくなるので、測距分解能は高くなる(ここでは約1m)。
【0026】
また、サンプルクロックの周波数fが中程度の値fb(80MHz)であるときには、測距分解能は中程度となる(ここでは約2m)。
また、サンプルクロックの周波数fが低い値fc(ここでは40MHz)であるときには、測距分解能は低くなる(ここでは約4m)(以上、演算処理)。
次に、本実施形態の測距装置の各モードについて図3、図4、図5、図6に基づき説明する。
【0027】
本実施形態の測距装置は、操作者によって、2種類のモード、すなわち手動モード、自動モードの間で切り換わる。また、測距装置が自動モードにあるときには、自動的に測距分解能が3種類の測距分解能(「低」、「中」、「高」)の間で切り換わる。操作者からのモード切り換えの指示、及び測距分解能の切り換えの指示は、それぞれ図1に示した操作部12から入力される。
【0028】
(手動モード)
図3、図4、図5は、手動モード中の測距装置のタイミングチャート(概略)である。図3は、測距分解能が「高」、図4は測距分解能が「中」、図5は測距分解能が「低」に設定されたときの各タイミングチャートである。各図において、上段が測定用光信号の発信タイミング、中段が受信のタイミング、下段が検出信号の受信タイミングである。また、各図の下部には、各積算値S0,・・・,S(N-1)をグラフ化したものを示した。なお、図3、図4、図5では、各タイミングの概略のみを示し、受信の周波数などは簡単のために実際よりも粗く記載した。
【0029】
操作者が測距分解能「高」を指定したときには、MPU100’は、図3に示すように、サンプルクロックの周波数fをfaに設定して高い測距分解能(ここでは約1m)を設定する。
操作者が測距分解能「中」を指定したときには、MPU100’は、図4に示すように、サンプルクロックの周波数fをfbに設定して中程度の測距分解能(ここでは約2m)を設定する。
【0030】
操作者が測距分解能「低」を指定したときには、MPU100’は、図5に示すように、サンプルクロックの周波数fをfcに設定して低い測距分解能(ここでは約4m)を設定する。
そして、MPU100’は、図3、図4、図5に示すように、測距分解能が「高」,「中」,「低」の何れであるかに拘わらず、カウント値の上限値N(ここでは250)を固定する。このとき、サンプルクロックの周波数fがfa,fb,fcの間で変更されるのに連動して、受信期間長(サンプリングの期間長)TがTa,Tb,Tcの間で変更され、最大測距長はLa,Lb,Lc(ここでは250m,500m,1000m)の間で変更される(図3、図4、図5参照)。
【0031】
よって、検出信号の受信個数(サンプリングの回数、つまり演算量)は、メモリ130の容量一杯分(ここでは250byte)のまま変化しない。
したがって、手動モードでは、操作者が測距分解能を高、中、低(約1m,約2m,約4m)の間で変更しても、測距装置内の演算量はメモリ130の容量一杯分(ここでは250byte)に自動的に保たれ、測距時間も自動的に保たれる。
【0032】
言い換えると、手動モードでは、メモリ130の容量が少なく(ここでは250byte)測距時間が短い割には、高い測距分解能(ここでは約1m)で測距することができ(測距分解能「高」のとき。)、また、メモリ130の容量が少なく(ここでは250byte)測距時間が短い割には、長い最大測距長(ここでは1000m)で測距することもできる(測距分解能「低」のとき。)。
【0033】
なお、この手動モードでは、高い測距分解能(ここでは約1m)を設定すると受信期間長Tが短くなるので、最大測距長が短く(ここでは250m)なってしまう(図3参照)。しかし、高い測距分解能が要求されるのは一般に近距離の測定であることが多いので、不都合はあまり生じない。
(自動モード)
図6は、自動モード中の測距装置の動作フローチャートである。
【0034】
先ず、MPU100’は、サンプルクロックの周波数fを低い値fc(ここでは40MHz)に、カウント値の上限値NをN(ここでは250)にそれぞれ設定し、その状態で測定処理を実行する。
つまり、最初に、測距対象物の距離は、最長の最大測距長(ここでは1000m)、かつ最低の測距分解能(ここでは約4m)で相対的に粗く測定される。
【0035】
そして、MPU100’は、その測定処理によって得られた各積算値S0,・・・,S(N-1)に基づき、測定用光信号の受信タイミングのカウント値iを求める(以上、ステップS1)。
次に、MPU100’は、このカウント値iに基づき、測定用光信号の受信タイミングが受信期間長Taが以下の範囲に収まっていた場合には、カウント値の上限値Nはそのままでサンプルクロックの周波数fを高い値fa(ここでは160MHz)に変更し、その状態で測距をする。
【0036】
つまり、測距対象物の距離が短い(ここでは250m以内)と判断されたときには(ステップS2YES)、最大測距長を最短(ここでは250m)にまで短縮し、最高の測距分解能(約1m)で密に測距をする(ステップS3)。
また、MPU100’は、測定用光信号の受信タイミングが受信期間長Ta〜Tbの範囲に収まっていた場合には、カウント値の上限値Nはそのままでサンプルクロックの周波数fを中程度の値fb(ここでは80MHz)に変更し、その状態で測距をする。
【0037】
つまり、測距対象物の距離が中程度(ここでは250〜500m)と判断されたときには(ステップS4YES)、最大測距長を中程度(500m)にまで短縮し、中程度の測距分解能(約2m)で測距をする(ステップS5)。
また、MPU100’は、測定用光信号の受信タイミングが受信期間長Tbよりも後であった場合には、その受信タイミングに基づき演算処理を実行する。
【0038】
つまり、測距対象物の距離が長い(ここでは500〜1000m)と判断されたときには(ステップS4NO)、最大測距長の短縮はできないので、ステップS1における測定の結果(i)から測距対象物までの距離を求めて表示する(ステップS6)。
したがって、自動モードでは、メモリ130の少ない容量(ここでは250byte)が不足しない範囲で最高の測距分解能(約1m,約2m,約4m)が自動的に設定される。
【0039】
なお、この自動モードでは、測定対象物の距離によって測距分解能が自動的に変化するので、設定中の測距分解能をMPU100’が(「約1m」,「約2m」,「約4m」などと)不図示の表示部に表示してもよい。
[第2実施形態]
以下、図7、図8、図9、図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態は、本発明を適用した測距装置の実施形態である。ここでは、第1実施形態の測距装置との相違点についてのみ説明する。
本実施形態の測距装置の構成は、図7に示すとおりである。なお、図7において、図1に示した第1実施形態の測距装置と同じ要素については、同一の符号を付した。
図7に明らかなように、本実施形態の測距装置のカウンタ21は、2つのカウンタ21a,21cを有する。
【0041】
分周・逓倍回路11’からは、図8に示すように、互いに同期した周波数fa,fcの2種類のクロックが出力される(以下、fa=160MHz,fc=40MHzとする。)。
カウンタ21aに与えられるサンプルクロックの周波数fは高い値faであり、カウンタ21cに与えられるサンプルクロックの周波数fは低い値fcである。
次に、本実施形態の測距装置における測距について図9、図10に基づき説明する。
【0042】
図9、図10は、本実施形態の測距装置のタイミングチャートで(概略)ある。各図において、上段が測定用光信号の発信タイミング、中段が受信のタイミング、下段が検出信号の受信タイミングである。また、各図の下部には、各積算値S0,・・・,S(N-1)をグラフ化したものを示した。なお、図9、図10では、各タイミングの概略のみを示し、受信の周波数などは簡単のために実際よりも粗く記載した。
【0043】
先ず、MPU100”は、カウンタ21cを駆動し、図9に示すように、カウント値の上限値NをN(ここでは250)とし、低い周波数fc(ここでは40MHz)のサンプルクロックで受信を行う。MPU100”は、この受信によって得られた積算値S0,・・・に基づき、測定用光信号の受信タイミングのカウント値i(測定光信号の発信から受信までのカウント差Δi)を認識する(図9下部参照。)。
【0044】
つまり、最初に、測距対象物までの距離は、最長の最大測距長(ここでは1000m)、かつ最低の測距分解能(ここでは約4m)で粗く測定される。
次に、MPU100”は、カウンタ21cを駆動し、図10に示すように、受信をすぐには開始せずにカウント値が(i−1)になるまでカウントのみを続ける。そして、そのカウント値が(i−1)になった時点でカウンタ21aを駆動し(図8(1)参照)、高い周波数fa(ここでは160MHz)のサンプルクロックで受信を行う。MPU100”は、この受信によって得られた積算値(S0,・・・)に基づき、測定用光信号の受信タイミングのカウント値j(カウンタ21aのカウント開始から測定用光信号の受信までのカウント差Δj)を認識する(図10下部参照)。
【0045】
つまり、測距対象物までの距離は、高い測距分解能(ここでは約1m)で再測定(密に再測定)される。
ここで、カウンタ21aのカウント値の上限値(受信回数)Nは、大きい必要は無く、カウンタ21cのカウント値(i−1)〜(i+1)の期間に相当する値以上(ここでは8とする。)であればよい。
【0046】
次に、MPU100”は、1回目の測定で認識したカウント差Δi、再測定で認識したカウント差Δjに基づき、測距対象物までの距離を高い測距分解能で求める。
但し、上述したように、1回目の測定の測距分解能は低く(ここでは約4m)、再測定の測距分解能は高い(ここでは約1m)。また、再測定の受信の開始タイミングはオフセットされている。
【0047】
よって、MPU100”は、それら単位の相違とオフセット分とを考慮した上で、距離を、例えば、距離=(Δi−1)・(c/fc)+Δj・(c/fa)(但し、c:光速)などの式により求める。そして、求めた距離を、不図示の表示部に表示する。
以上、1回目の測定では、測距分解能が低く(ここでは約4m)設定されたので、演算量は最小限に抑えられる。
【0048】
また、再測定では、受信の開始タイミングがオフセットされ、また、その受信の期間が、1回目の測定で認識した受信タイミングの前後の数カウント分(ここでは8カウント分)だけに限定されたので、演算量は最小限に抑えられる。
よって、メモリ130の容量は少なく抑えられる(ここでは250byte)。
したがって、本実施形態の測距装置では、メモリ130の容量が少ない(ここでは250byte)割には、高い測距分解能(ここでは約1m)、しかも長い最大測距長(ここでは1000m)で測距が行われる。
【0049】
[第3実施形態]
以下、図11、図12、図13を参照して本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は、本発明を適用した測距装置の実施形態である。ここでは、第1実施形態の測距装置との相違点についてのみ説明する。
本実施形態の測距装置の構成は、図1に示した第1実施形態の構成と同じである。但し、ここでは、メモリ130の容量は、500byteとする。
【0050】
また、この測距装置は、第1実施形態の手動モードとは異なるタイプの手動モードで動作する。また、測距装置は、操作者によって、測距分解能が3種類の測距分解能(低、中、高)の間で切り替わる。操作者からの切り替えの指示は、図1に示した操作部12から入力される。
図11、図12、図13は、第3実施形態の測距装置のタイミングチャート(概略)である。図11は、測距分解能が「高」、図12は測距分解能が「中」、図13は測距分解能が「低」に設定されたときの各タイミングチャートである。各図において、上段が測定用光信号の発信タイミング、中段が受信のタイミング、下段が検出信号の受信タイミングである。また、各図の下部には、各積算値S0,・・・,S(N-1)をグラフ化したものを示した。なお、図11、図12、図13では、各タイミングの概略のみを示し、受信の周波数などは簡単のために実際よりも粗く記載した。
【0051】
操作者が測距分解能「高」を指定したときには、MPU100’は、図11に示すように、サンプルクロックの周波数fをfaに設定して高い測距分解能(ここでは約1m)を設定する。
操作者が測距分解能「中」を指定したときには、MPU100’は、図12に示すように、サンプルクロックの周波数fをfbに設定して中程度の測距分解能(ここでは約2m)を設定する。
【0052】
操作者が測距分解能「低」を指定したときには、MPU100’は、図13に示すように、サンプルクロックの周波数fをfcに設定して低い測距分解能(ここでは約4m)を設定する。
そして、MPU100’は、図11、図12、図13に示すように、測距分解能が「高」,「中」,「低」の何れであるかに拘わらず受信期間長Tが固定されるよう、サンプルクロックの周波数fがfa,fb,fcの間で変更されるのに連動して、カウント値の上限値NをNa,Nb,Nc(ここでは500,250,125)の間で変更する。このとき、演算量は、Ma,Mb,Mc(ここでは500byte、250byte、125byte)の間で変更される(図11、図12、図13参照)。
【0053】
よって、最大測距長は、受信期間長Tに相当する距離(ここでは1000m)のまま変化しない。
したがって、第3実施形態の測距装置では、操作者が測距分解能を高、中、低(約1m,約2m,約4m)の間で変更しても、最大測長は受信期間長Tに相当する距離(ここでは1000m)に自動的に保たれる。
【0054】
言い換えると、第3実施形態の測距装置では、最大測距長が長い(ここでは1000m)割には、高い測距分解能(約1m)で測距することができ(測距分解能「高」のとき。)、また、最大測距長が長い(ここでは1000m)割には、少ない演算量(ここでは125byte)、つまり短い測距時間で測距することもできる(測距分解能「低」のとき。)。
【0055】
なお、この第3実施形態の測距装置では、高い測距分解能(ここでは約1m)を設定すると演算量が多くなるので(ここでは500byte)測距時間が長くなってしまう。しかし、高い測距分解能を要求したときに待ち時間が増えることは、多くの操作者にとって許容できるものであるので、不都合はあまり生じない。
[その他]
なお、上記各実施形態の測距装置の分周・逓倍回路11,11’としては、複数種類の周波数のサンプルクロックを生成できるのであれば分周回路、逓倍回路のどちらが適用されてもよい。
【0056】
また、第1実施形態、第3実施形態の測距装置におけるサンプルクロックの種類は、4種類以上に増加してもよい。
また、第2実施形態の測距装置の機能は、第1実施形態の測距装置や第3実施形態の測距装置に組まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態の測距装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の測距装置のサンプリング回路120f、カウンタ120g、メモリ130の各動作を可視化したブロック図である。
【図3】第1実施形態の測距装置のタイミングチャートである(手動モード、測距分解能「高」の場合。)。
【図4】第1実施形態の測距装置のタイミングチャートである(手動モード、測距分解能「中」の場合。)。
【図5】第1実施形態の測距装置のタイミングチャートである(手動モード、測距分解能「低」の場合。)。
【図6】第1実施形態の測距装置の動作フローチャートである(自動モードの場合)。
【図7】第2実施形態の測距装置の概略構成図である。
【図8】第2実施形態の測距装置のサンプリング回路120f、カウンタ21a,21c、メモリ130の各動作を可視化したブロック図である。
【図9】第2実施形態の測距装置のタイミングチャートである(1回目の測定)。
【図10】第2実施形態の測距装置のタイミングチャートである(再測定)。
【図11】第3実施形態の測距装置のタイミングチャートである(測距分解能「高」の場合。)。
【図12】第3実施形態の測距装置のタイミングチャートである(測距分解能「中」の場合。)。
【図13】第3実施形態の測距装置のタイミングチャートである(測距分解能「低」の場合。)。
【図14】従来の測距装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0058】
11,11’ 分周・逓倍回路
12 操作部
110 発信部
120,120’ 受信部
130 メモリ
100,100’,100” MPU
141,142 レンズ
110a 半導体レーザ
110b レーザ駆動回路
120a 光検出器
120b 増幅器
120c 二値化回路
120d 発光検出回路
120e 閾値設定回路
120f サンプリング回路
120g,21,21a,21c カウンタ
120h 発信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、
前記測距対象物の方向から戻る信号を受信する受信部と、
前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知すると共に、前記受信部が信号を受信する際の分解能を可変にする制御部と
を備えたことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
前記受信部での信号の受信は、
サンプルクロックに同期しており、
前記制御部は、
前記サンプルクロックを変更することで前記分解能を可変にする
ことを特徴とする測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置において、
前記制御部は、
外部からの指示又は前記検知した前記時間に応じて前記サンプルクロックの周波数を変更すると共に、前記サンプルクロックの回数が所定値に保たれるようその周波数の変更に連動して前記サンプルクロックのサンプリングの期間長を変更する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項4】
請求項2に記載の測距装置において、
前記制御部は、
最初に前記サンプルクロックの周波数を相対的に低い所定値に設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の受信タイミングを認識し、
前記認識した受信タイミングが前記サンプルクロックの周波数での受信期間でカバーできる範囲内あれば、前記サンプルクロックの周波数を前記所定値よりも相対的に高く設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記時間を検知する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項5】
測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、
前記測距対象物の方向から戻る信号を、サンプルクロックに同期して受信する受信部と、
前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知する制御部と
を備えた測距装置において、
前記サンプルクロックの周波数は可変であり、
前記制御部は、
最初に前記サンプルクロックの周波数を相対的に低い所定値に設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の受信タイミングを認識し、
前記認識した受信タイミングが前記サンプルクロックの周波数での受信期間でカバーできる範囲内であれば、その受信の開始タイミングをオフセットすると共に前記サンプルクロックの周波数を前記所定値よりも相対的に高く設定して前記測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記時間を検知する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項6】
測距対象物に向けて所定の測定用信号を発信する発信部と、
前記測距対象物の方向から戻る信号を、サンプルクロックに同期して受信する受信部と、
前記発信部及び前記受信部を駆動する測定処理を実行し、前記受信部で受信された信号に基づいて前記測定用信号の発信から受信までの時間を検知する制御部と
を備えた測距装置において、
前記サンプルクロックの周波数は可変であり、
前記制御部は、
外部からの指示又は前記検知した前記時間に応じて前記サンプルクロックの周波数を変更すると共に、そのサンプルクロックのサンプリングの期間長を所定値に保ちながら前記周波数の変更に連動して前記サンプルクロックの回数を変更する
ことを特徴とする測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−53076(P2006−53076A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235537(P2004−235537)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501439264)株式会社 ニコンビジョン (86)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】