説明

測量方法及び測量システム及び測量データ処理プログラム

【課題】レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、簡便にデータが得られ、データの欠落箇所のない点群データの取得を可能にする。
【解決手段】パルスレーザ光線を所定の測定エリアに走査し、パルスレーザ光線の反射光を受光し、パルス毎にパルスレーザ光線照射点の3次元位置データを測距し、測定エリアの主点群データを取得するレーザスキャナと、レーザスキャナとは分離し、任意の方向から補足画像データを取得可能な副撮像装置と、記憶部、制御演算部、表示部を備えた測量データ処理装置とを具備し、主点群データと、補足画像データとが記憶部に登録され、制御演算部が補足データよりステレオ画像を作成すると共に未取得データ範囲の補足点群データを取得し、補足点群データと主点群データとを関連付け、補足点群データにより主点群データの未取得データ範囲を補う様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要範囲の3次元データを取得する測量方法及び測量システム及び測量データ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体物の3次元測量が行われ、又電子地図用の3次元データ付き画像が要求される等から、測量に求められるデータ量は飛躍的に増加している。
【0003】
短時間で詳細且つ大量の3次元データを測定できる測量装置として、レーザスキャナがある。
【0004】
レーザスキャナは、パルスレーザ光線を所定の測定エリアに走査し、前記パルスレーザ光線の反射光を受光し、パルス毎にパルスレーザ光線照射点の3次元位置データを測距し、前記測定エリアの点群データを取得する測量機である。
【0005】
前記レーザスキャナは、短時間で大量の点群データを得ることができるが、測定エリアに、障害物、例えば車両、樹木等が存在すると、陰(オクルージョン)が生じ、データの欠落部分が生じる。又、パルスレーザ光線の反射により測距を行っている為、照射点の反射率が悪い場合、例えば使用するレーザ光線が、緑である場合、反射点が黒色、或は補色の赤である場合は、反射光は得られず、やはりデータ欠落部分となる。
【0006】
更に、水平方向から測定エリアを走査した場合、例えば建築物、構造物の上面側の点群データは取得できない。
【0007】
この為、陰となった部分の点群データを得る為、レーザスキャナを移動し、陰の部分のデータを取得し、又建築物、構造物の上面側の点群データを取得する為、レーザスキャナをレーザ光線により上面を照射できる位置迄、移動させ上面の点群データを取得している。
【0008】
従って、陰の部分がある度にレーザスキャナを移動させ、或はやぐらの設置、昇降機等大掛りな装置を用いてレーザスキャナを上方位置に設置する等、現地での作業は大変な労力と時間を要していた。
【0009】
又、反射率の悪い測定個所については、点群データは得られないという不具合があった。
【0010】
【特許文献1】特開2004−163292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は斯かる実情に鑑み、レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、簡便にデータが得られる様にし、データの欠落箇所のない点群データの取得を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、レーザスキャナで所定の測定範囲についての主点群データを取得する工程と、未取得データ範囲を検出する工程と、副撮像装置により未取得データ範囲の補足画像をデータ取得する工程と、前記副撮像装置により得た補足画像データによりステレオ画像を作成する工程と、該ステレオ画像から補足点群データを取得する工程と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングにより前記主点群データの未取得範囲を補充する工程とを有する測量方法に係り、又前記レーザスキャナは、点群データと共に該点群データに関連付けられた主画像データを取得する測量方法に係り、又前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主点群データから適宜選択された基準点と前記補足点群データの前記基準点に対応する点との関連付けによってなされる測量方法に係り、又前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主画像データと前記補足画像データとの画像マッチングでなされる測量方法に係り、又前記未取得データ範囲は、測定範囲に隣接する範囲である測量方法に係り、又前記未取得データ範囲は、レーザスキャナで点データが得られなかったデータ欠落部分である測量方法に係り、又前記未取得データ範囲は、主点群データを画像表示させることで判別される測量方法に係り、更に又前記未取得データ範囲は、主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別される測量方法に係るものである。
【0013】
又本発明は、パルスレーザ光線を所定の測定エリアに走査し、前記パルスレーザ光線の反射光を受光し、パルス毎にパルスレーザ光線照射点の3次元位置データを測距し、前記測定エリアの主点群データを取得するレーザスキャナと、該レーザスキャナとは分離し、任意の方向から補足画像データを取得可能な副撮像装置と、記憶部、制御演算部、表示部を備えた測量データ処理装置とを具備し、前記レーザスキャナにより取得された主点群データと、前記副撮像装置により前記レーザスキャナの未取得データ範囲を少なくとも2方向から撮像して得られた補足画像データとが前記記憶部に登録され、前記制御演算部が前記補足データよりステレオ画像を作成すると共に前記未取得データ範囲の補足点群データを取得し、該補足点群データと前記主点群データとを関連付け、前記補足点群データにより前記主点群データの未取得データ範囲を補う様構成した測量システムに係り、又前記レーザスキャナは、パルスレーザ光線の照射光軸と同一の撮像光軸により前記測定エリアを撮像して主画像データを取得する主撮像装置を具備する測量システムに係り、又前記補足点群データと前記主点群データとの関連付けは、該主点群データから選択した基準点と前記補足点群データの前記基準点と対応する点との関連付けでなされる測量システムに係り、又前記主撮像装置で撮像された主画像データは前記主点群データと関連付けられ、該主点群データと共に前記測量データ処理装置に登録され、該測量データ処理装置は前記主点群データと前記補足点群データとを、前記主画像データと前記副画像データとの画像マッチングを介して関連付ける測量システムに係り、更に又前記演算制御部は、前記主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に前記表示部に表示させる様にした測量システムに係るものである。
【0014】
又本発明は、レーザスキャナで得られた所定の測定範囲についての主点群データから未取得データ範囲を検出する機能と、副撮像装置により撮像された未取得データ範囲の少なくとも2方向からの補足画像データに基づき未取得データ範囲の補足点群データを演算する機能と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングを行う機能と、前記主点群データの未取得範囲を前記補足点群データにより補充とを実現する測量データ処理プログラムに係り、又前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データから適宜基準点を選択する機能と、前記補足点群データの前記基準点に対応する点を選択する機能と、選択された該基準点と対応する点との関連付けを行う機能によって実行される測量データ処理プログラムに係り、又前記未取得データ範囲の判別を、前記主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別する測量データ処理プログラムに係り、又前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データに関連付けられた測定エリアの画像データと前記未取得データ範囲の補足画像との画像マッチング機能によって実行される測量データ処理プログラムに係り、更に又前記レーザスキャナに具備された主撮像装置により測定光軸と同軸で測定範囲を取得した主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に表示させる測量データ処理プログラムに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザスキャナで所定の測定範囲についての主点群データを取得する工程と、未取得データ範囲を検出する工程と、副撮像装置により未取得データ範囲の補足画像をデータ取得する工程と、前記副撮像装置により得た補足画像データによりステレオ画像を作成する工程と、該ステレオ画像から補足点群データを取得する工程と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングにより前記主点群データの未取得範囲を補充する工程とを有するので、レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、簡便にデータが得られ、データの欠落箇所のない点群データが取得可能である。
【0016】
又本発明によれば、前記レーザスキャナは、点群データと共に該点群データに関連付けられた主画像データを取得するので、主画像データと点群データとを併せて表示することで、データの未取得範囲を視覚的に判別できる。
【0017】
又本発明によれば、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主点群データから適宜選択された基準点と前記補足点群データの前記基準点に対応する点との関連付けによってなされるので、主点群データは3次元データを有しており、補足点群データについては測量を実施する必要がない。
【0018】
又本発明によれば、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主画像データと前記補足画像データとの画像マッチングでなされるので、簡便なマッチングが可能となる。
【0019】
又本発明によれば、前記未取得データ範囲は、主点群データを画像表示させることで判別されるので、データの未取得範囲を視覚的に判別できる。
【0020】
又本発明によれば、前記未取得データ範囲は、主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別されるので、データ操作による自動的な検出が可能となる。
【0021】
又本発明によれば、パルスレーザ光線を所定の測定エリアに走査し、前記パルスレーザ光線の反射光を受光し、パルス毎にパルスレーザ光線照射点の3次元位置データを測距し、前記測定エリアの主点群データを取得するレーザスキャナと、該レーザスキャナとは分離し、任意の方向から補足画像データを取得可能な副撮像装置と、記憶部、制御演算部、表示部を備えた測量データ処理装置とを具備し、前記レーザスキャナにより取得された主点群データと、前記副撮像装置により前記レーザスキャナの未取得データ範囲を少なくとも2方向から撮像して得られた補足画像データとが前記記憶部に登録され、前記制御演算部が前記補足データよりステレオ画像を作成すると共に前記未取得データ範囲の補足点群データを取得し、該補足点群データと前記主点群データとを関連付け、前記補足点群データにより前記主点群データの未取得データ範囲を補う様構成したので、レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、簡便にデータが得られ、データの欠落箇所のない点群データが取得可能である。
【0022】
又本発明によれば、前記レーザスキャナは、パルスレーザ光線の照射光軸と同一の撮像光軸により前記測定エリアを撮像して主画像データを取得する主撮像装置を具備するので、主画像データと主点群データとの関連付けが、簡単に行える。
【0023】
又本発明によれば、前記補足点群データと前記主点群データとの関連付けは、該主点群データから選択した基準点と前記補足点群データの前記基準点と対応する点との関連付けでなされるので、補足点群データについて測定を実施することなく簡単に実行できる。
【0024】
又本発明によれば、前記主撮像装置で撮像された主画像データは前記主点群データと関連付けられ、該主点群データと共に前記測量データ処理装置に登録され、該測量データ処理装置は前記主点群データと前記補足点群データとを、前記主画像データと前記補足画像データとの画像マッチングを介して関連付けるので、点データ同士のマッチングを行う必要がなく、簡単に実施できる。
【0025】
又本発明によれば、前記演算制御部は、前記主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に前記表示部に表示させる様にしたので、主点群データと主画像データとを重合させた状態で表示でき、データの未取得範囲を視覚的に判別できる。
【0026】
又本発明によれば、レーザスキャナで得られた所定の測定範囲についての主点群データから未取得データ範囲を検出する機能と、副撮像装置により撮像された未取得データ範囲の少なくとも2方向からの補足画像データに基づき未取得データ範囲の補足点群データを演算する機能と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングを行う機能と、前記主点群データの未取得範囲を前記補足点群データにより補充とを実現するので、レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、簡便にデータが得られ、データの欠落箇所のない点群データが取得可能である。
【0027】
又本発明によれば、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データから適宜基準点を選択する機能と、前記補足点群データの前記基準点に対応する点を選択する機能と、選択された該基準点と対応する点との関連付けを行う機能によって実行されるので、補足点群データが3次元データを有していなくても、補足点群データについて測定を実施することなく簡単に実行できる。
【0028】
又本発明によれば、前記未取得データ範囲の判別を、前記主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別するので、データ操作による自動的な検出が可能となる。
【0029】
又本発明によれば、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データに関連付けられた測定エリアの画像データと前記未取得データ範囲の補足画像との画像マッチング機能によって実行されるので、点データ同士のマッチングを行う必要がなく、簡単に実施できる。
【0030】
更に又本発明によれば、前記レーザスキャナに具備された主撮像装置により測定光軸と同軸で測定範囲を取得した主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に表示させるので、レーザスキャナによりデータが得られなかった未取得データ範囲について、視覚的な判断が可能となる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0032】
先ず、図1に於いて、本発明で使用されるレーザスキャナについて説明する。
【0033】
本発明に係る測量システムは、図1に示される様に、レーザスキャナ1、デジタルカメラ等に代表される撮像装置81、測量データ処理装置91によって概略構成される。
【0034】
先ず、図2〜図17に於いて、本発明で使用されるレーザスキャナについて説明する。
【0035】
図2、図3はレーザスキャナの第1の例を示している。
【0036】
レーザスキャナ1は主に、整準部2、該整準部2に設置された回転機構部3、該回転機構部3に支持され、測距部4、撮像部5、制御部6等を含む測定装置本体部7、該測定装置本体部7の上部に設けられた回転照射部8から構成されている。尚、図2は便宜上、図1に対して前記回転照射部8のみ側方から見た状態を示している。
【0037】
前記整準部2について、説明する。
【0038】
台盤11にピン12が立設され、該ピン12の上端は曲面に形成され、下部ケーシング13の底面に形成された凹部に傾動自在に嵌合している。又、前記底面の他の2カ所には、調整螺子14が螺合貫通しており、該調整螺子14の下端部には脚部材15が固着されており、該脚部材15の下端は、尖端又は曲面に形成され、前記台盤11に当接している。前記調整螺子14の上端には整準従動ギア16が嵌着されている。前記下部ケーシング13は前記ピン12と2つの前記調整螺子14により3点で前記台盤11に支持され、前記ピン12の先端を中心に傾動可能となっている。尚、前記台盤11と前記下部ケーシング13とは離反しない様に、前記台盤11と前記下部ケーシング13との間にはスプリング19が設けられている。
【0039】
前記下部ケーシング13の内部には、2個の整準モータ17が設けられ、該整準モータ17の出力軸に整準駆動ギア18が嵌着され、該整準駆動ギア18は前記整準従動ギア16に噛合している。前記整準モータ17は前記制御部6によって独立して駆動され、前記整準モータ17の駆動により前記整準駆動ギア18、前記整準従動ギア16を介して前記調整螺子14が回転され、該調整螺子14の下方への突出量が調整される様になっている。又、前記下部ケーシング13の内部には傾斜センサ56(図4参照)が設けられており、該傾斜センサ56の検出信号に基づき2個の前記整準モータ17が駆動されることで、前記整準部2の整準がなされる。
【0040】
前記回転機構部3について説明する。
【0041】
前記下部ケーシング13は、前記回転機構部3のケーシングを兼ねており、内部には水平回動モータ20が設けられ、該水平回動モータ20の出力軸には水平回動駆動ギア21が嵌着されている。
【0042】
前記下部ケーシング13の上端には、軸受22を介して回転基盤23が設けられ、該回転基盤23の中心には、下方に突出する回転軸24が設けられ、該回転軸24には水平回動ギア25が設けられ、該水平回動ギア25に前記水平回動駆動ギア21が噛合されている。
【0043】
又、前記回転軸24には水平角検出器26、例えばエンコーダが設けられ、該水平角検出器26により、前記下部ケーシング13に対する前記回転軸24の相対回転角が検出され、検出結果(水平角)は前記制御部6に入力され、該検出結果に基づき前記制御部6により前記水平回動モータ20の駆動が制御される様になっている。
【0044】
前記測定装置本体部7について説明する。
【0045】
前記回転基盤23に本体部ケーシング27が固着され、該本体部ケーシング27の内部に鏡筒28が設けられる。該鏡筒28は、前記本体部ケーシング27の回転中心と同心の中心線を有し、該本体部ケーシング27に所要の手段で取付けられる。例えば、前記鏡筒28の上端にフランジ29が形成され、該フランジ29が前記本体部ケーシング27の天井部に固着される。
【0046】
前記鏡筒28は軸心と合致する発光光軸32を有し、該発光光軸32上に光学的分離手段であるビームスプリッタ74が設けられる。該ビームスプリッタ74は、可視光を透過し、赤外光を反射するものであり、前記ビームスプリッタ74により、前記発光光軸32から反射光軸38と撮像光軸44に分離されている。
【0047】
該反射光軸38上に前記測距部4が設けられる。
【0048】
前記反射光軸38上に発光素子31が設けられ、前記反射光軸38上に孔明きミラー33が配設されている。前記孔明きミラー33は前記反射光軸38を分岐し、該分岐光軸上には測距受光部39が設けられている。
【0049】
前記発光素子31からはパルスビームが発せられる。該発光素子31は、例えば半導体レーザ等であり、測距光37としての赤外光のパルスレーザ光線を発し、前記制御部6によって所要の状態でパルスレーザ光線が発光される様に制御される。該パルスレーザ光線は前記孔明きミラー33を通過し、前記ビームスプリッタ74により高低回動ミラー35に向け反射され、該高低回動ミラー35を経て測定対象物に照射される様になっている。該高低回動ミラー35は偏向光学部材であり、前記発光光軸32上に配設され、該発光光軸32には集光レンズ34が配設されている。前記高低回動ミラー35は鉛直方向の前記発光光軸32を水平方向の投光光軸36に偏向する。
【0050】
前記測距受光部39には測定対象物からの反射測距光が前記高低回動ミラー35、前記孔明きミラー33を経て入射される。又、前記測距受光部39には、前記測距光37の分割された一部が内部参照光(図示せず)として入射する様になっており、反射測距光と内部参照光とに基づき測定対象物迄の距離を測定する様になっている。
【0051】
前記発光素子31、前記孔明きミラー33、前記集光レンズ34、前記高低回動ミラー35、前記反射光軸38等は前記測距部4を構成する。
【0052】
前記発光光軸32の前記ビームスプリッタ74を貫通した前記撮像光軸44上には画像受光部43が設けられ、該画像受光部43は前記鏡筒28の底部に位置する。
【0053】
前記画像受光部43は多数の画素が平面上に集合されたもの、例えばCCDであり、各画素は前記分岐光軸を中心として位置が特定されている。又画素の位置の特定は、例えば光軸を原点としたX−Y座標が想定され、X座標、Y座標によって特定される。更に、前記測距受光部39に入射する光線の角度は前記画像受光部43の画素の位置によって特定され、画角として表される。
【0054】
前記高低回動ミラー35、前記集光レンズ34、前記画像受光部43等は、前記撮像部5を構成する。
【0055】
測定対象物からの撮像光は、前記投光光軸36と一致する撮像光軸44に沿って前記高低回動ミラー35に入射され、該高低回動ミラー35により反射された後、前記集光レンズ34、前記ビームスプリッタ74を透過して前記画像受光部43に受光され、画像が取得される。
【0056】
前記回転照射部8について説明する。
【0057】
前記本体部ケーシング27の上側に上部ケーシング41が設けられ、該上部ケーシング41の側壁の一部は投光窓42となっている。前記回転照射部8は前記上部ケーシング41の内部に収納される。
【0058】
前記フランジ29の上端にミラーホルダ47が設けられ、該ミラーホルダ47に回動軸48を介して前記高低回動ミラー35が回転自在に設けられ、該高低回動ミラー35の一方の軸端に高低回動ギア51が嵌着され、前記高低回動ミラー35の他方の軸端には高低角検出器52が設けられている。該高低角検出器52は前記高低回動ミラー35の回動角(回動位置)を検出し、前記制御部6に検出結果を送出する様になっている。
【0059】
前記ミラーホルダ47には高低回動モータ53が取付けられ、該高低回動モータ53の出力軸に高低回動駆動ギア54が嵌着され、該高低回動駆動ギア54は前記高低回動ギア51に噛合している。前記高低回動モータ53は、前記高低角検出器52の検出結果に基づき前記制御部6により駆動が制御される様になっている。又、該制御部6は、前記水平回動モータ20及び前記高低回動モータ53を独立して駆動、或は同期して駆動制御可能となっている。
【0060】
図4に於いて、前記レーザスキャナ1の制御系の構成について説明する。
【0061】
前記制御部6には前記水平角検出器26、前記高低角検出器52、前記傾斜センサ56からの検出信号が入力されると共に操作部57から作業者が前記レーザスキャナ1を測定を開始するのに必要な条件、測定開始の指令等を入力できる様になっている。尚、前記操作部57は前記本体部ケーシング27等の筐体に設けられても、或は別途独立して設けられてもよい。
【0062】
前記制御部6は前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ53、前記整準モータ17を駆動すると共に作業状況、測定結果等を表示する表示部58を駆動する。又、前記制御部6には、メモリカード、HDD等の外部記憶装置59が設けられ、或は着脱可能に設けられている。
【0063】
前記制御部6の概略を説明する。
【0064】
該制御部6は、CPUで代表される演算部61と、測距、高低角の検出、水平角の検出をする為に必要な測量データを得る為、前記発光素子31の発光を制御し、又前記整準モータ17、前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ53等を制御するシーケンスプログラム、得られたデータを演算し、距離、3次元データを求める等する演算プログラム、距離データを処理する距離データプログラム、画像処理をする画像処理プログラム、データを前記表示部58に表示させる為の画像表示プログラム等のプログラム、或はこれらプログラムを統合管理するプログラム等を格納し、更に測定データ、画像データ等のデータを格納する記憶部62と、前記水平回動モータ20を駆動制御する為の水平駆動部63と、前記高低回動モータ53を駆動制御する為の高低駆動部64と、前記整準モータ17を駆動制御する為の整準駆動部65、及び前記測距部4により得られた距離データを処理する為の距離データ処理部66と、前記撮像部5により得られた画像データを処理する画像データ処理部67等を具備している。
【0065】
前記演算部61は、前記シーケンスプログラム、前記演算プログラム、前記距離データプログラム、前記画像処理プログラム、前記画像表示プログラムに基づき、必要な処理を実行する。
【0066】
尚、前記距離データ処理部66、前記画像データ処理部67の機能を前記演算部61に実行させてもよく、この場合前記距離データ処理部66と前記画像データ処理部67は省略できる。又、前記距離データ処理部66、前記画像データ処理部67を個別に具備することで、距離データ処理と、画像データ処理とを平行して実行でき、高速処理が可能となる。
【0067】
又、前記距離データ処理部66と前記画像データ処理部67とを別途設けてもよい。例えば、別途PC68(図5参照)を具備し、該PC68に前記距離データ処理部66と前記画像データ処理部67の機能を実行させる様にしてもよい。この場合、距離データ、画像データを前記外部記憶装置59に格納し、格納後、該外部記憶装置59を前記PC68に接続し、該PC68で距離データ処理、画像データ処理を実行する様にしてもよい。尚、無線LAN等所要の通信手段で、前記レーザスキャナ1で取得したデータを前記PC68に送信する様にすれば、前記外部記憶装置59は省略できる。
【0068】
次に、図5〜図10に於いて、前記レーザスキャナ1による測定作動、データ作成処理について説明する。
【0069】
前記レーザスキャナ1を既知点に設置し、測定対象物71を含む測定エリア72を概略設定する。図示の場合は、前記測定対象物71は建造物を含む自然の地形となっている。
【0070】
前記レーザスキャナ1を前記測定エリア72に正対させ、前記操作部57より整準を実行させる。
【0071】
前記整準駆動部65を介して前記整準モータ17が駆動され、前記レーザスキャナ1の傾斜は前記傾斜センサ56によって検出され、該傾斜センサ56の検出結果が前記制御部6にフィードバックされる。前記傾斜センサ56が水平を検出する様に、前記整準モータ17により前記調整螺子14が回転される。
【0072】
整準が完了すると、前記表示部58に整準完了の表示がなされ、或は警告音等によって告知される。
【0073】
整準が終了すると、前記測定エリア72の撮像を行う。又、該測定エリア72の広さが、画角(1回の撮像範囲)を超える場合は、分割して撮像を行う。
【0074】
先ず、図5、図6により前記測定エリア72が1回の撮像範囲内に収まる場合を説明する。
【0075】
前記測定エリア72を撮像し、該測定エリア72のデジタル画像データを取得し、デジタル画像データ及び該画像データを取得した際の視準方向、即ち前記撮像光軸44の方向(水平角、高低角)を前記記憶部62に格納する。
【0076】
尚、デジタル画像データは、前記画像受光部43の画素それぞれの信号の集合であり、又画素それぞれの信号は、前記画像受光部43内での位置を特定する信号を有している。又、該画像受光部43内での位置は前記撮像光軸44に対して方向が特定される。従って、前記測定エリア72の画像を取得した際の前記撮像光軸44の方向に基づいて各画素の水平角、高低角が求められる。又、前記記憶部62に格納される画像データにより、各画素毎に水平角データ、高低角データ(番地データ)が算出可能である。
【0077】
前記測定エリア72の画像を前記表示部58に表示させ、画像上で詳細測定エリア72′を設定する。尚、前記シーケンスプログラムによって前記詳細測定エリア72′が予め設定されている場合は、別途詳細測定エリア72′を設定する必要はない。
【0078】
前記操作部57より測距の実行を指令し、或は前記シーケンスプログラムによって測距の実行が指令される。
【0079】
前記高低回動ミラー35の反射面が前記発光素子31に対峙する様に前記高低回動ミラー35の姿勢が設定されると共に前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ53が駆動され、前記測定装置本体部7が水平方向に回転され、前記高低回動ミラー35が高低方向に回転される。
【0080】
前記発光素子31から測距光がパルス発光され、前記孔明きミラー33の孔を通過し、前記高低回動ミラー35で偏向され、前記投光光軸36上に投射される。又、前記測定対象物71で反射された反射測距光は前記高低回動ミラー35により前記発光光軸32上に偏向され、前記孔明きミラー33により反射されて前記測距受光部39に受光される。
【0081】
前記水平回動モータ20と前記高低回動モータ53が同期駆動され、パルス発光された前記測距光37により、前記測定エリア72の範囲が走査される。前記測距部4に於いて反射測距光に基づき各パルス毎に距離測定がなされる。
【0082】
各パルス毎に測距された距離データが取得される。又、パルス発光された時の前記水平角検出器26の検出水平角、前記高低角検出器52の検出高低角も同時に取得され、各距離データは高低角データ、水平角データと関連付けられて前記記憶部62に格納される。尚、各画素に関する水平角と距離データに関する水平角とは等しく対応し、各画素に関する高低角と距離データに関する高低角の関係は、(画素高低角−90°)=(距離データ高低角)となる。
【0083】
ここで、前記測定エリア72の広さにもよるが、取得する距離データの数は、数百万〜数千万に及ぶ。取得された距離データと高低角データ、水平角データとを関連付けることで、測定点の3次元データが得られる。
【0084】
又、前記測距部4と前記撮像部5とは前記測定装置本体部7に一体に設けられ、前記回転機構部3により一体に水平回転されるので、距離データと画像データ間で回転による位置ずれは生じない。更に、前記画像データの各画素毎の水平角データ、高低角データは、前記距離データに関連付けられた高低角データ、水平角データと1対1に対応するので、前記距離データと前記画像データとは高低角データ、水平角データに基づき、直ちに関連付けが可能である。
【0085】
前記測距光37による前記詳細測定エリア72′全域の走査が完了することで、画像データ、距離データ、高低角データ、水平角データを含む3次元データ群(点群データ)の取得が完了する。
【0086】
次に、前記測定エリア72の広さが前記撮像部5の画角、即ち1回の撮像範囲を超える場合は、図7〜図9に示される様に分割して撮像を行う。図7では、前記測定エリア72を8分割した例を示している。
【0087】
分割して撮像する場合は、第1分割エリア73a、第2分割エリア73b、…、第8分割エリア73h、それぞれについて、撮像方向の設定を行う。撮像方向の設定は、前記各分割エリア73a〜73h毎に、視準方向の設定、即ち水平角の設定、高低角の設定を行う。ここで、水平角、高低角とは、撮像光軸即ち前記投光光軸36の水平角、高低角を意味する。
【0088】
又、隣接する分割エリアは、所要範囲、オーバラップする様に設定される。
【0089】
前記操作部57より測距の実行を指令し、或は前記シーケンスプログラムによって測距の実行が指令される。
【0090】
前記高低回動ミラー35の反射面が前記画像受光部43に対峙する様に前記高低回動ミラー35の姿勢が設定されると共に前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ53が駆動され、前記測定装置本体部7が水平方向に回転され、前記高低回動ミラー35が高低方向に回転される。
【0091】
前記水平角検出器26で検出した水平角、前記高低角検出器52により検出した高低角が前記制御部6にフィードバックされ、前記投光光軸36が前記各分割エリア73a〜73hの水平角、高低角に合致する様に制御される。
【0092】
前記各分割エリア73a〜73h毎に、設定した水平角、高低角と前記水平角検出器26、前記高低角検出器52が検出した水平角、高低角とが合致した状態で、前記各分割エリア73a〜73hの撮像が行われる。
【0093】
該各分割エリア73a〜73hに対応する分割画像はデジタル分割画像データとして、それぞれ水平角、高低角と関連付けられ前記記憶部62に格納される。又、前記分割エリア73a〜73hに対応する分割画像は、オーバラップ部分を重合させることで合成され、合成画像は前記測定エリア72の画像として前記記憶部62に格納される。
【0094】
尚、前記分割エリア73a〜73hに対応するデジタル分割画像データは、ぞれぞれ前記撮像光軸44の方向(水平角、高低角)に関連付けられているので、前記分割画像の各画素は前記撮像光軸44の方向に基づいて各画素の水平角、高低角が求められる。従って、前記測定エリア72全域の、各画素毎に水平角データ、高低角データ(番地データ)が算出可能である。
【0095】
前記測定エリア72の画像を前記表示部58に表示させ、画像上で前記詳細測定エリア72′を設定する。尚、前記シーケンスプログラムによって前記測定エリア72に対する前記詳細測定エリア72′が予め設定されている場合は、別途詳細測定エリア72′を設定する必要はない。
【0096】
前記操作部57より測距の実行を指令し、或は前記シーケンスプログラムによって測距の実行が指令され、又前記シーケンスプログラムによって測距が実行されることで前記測定エリア72′の点群データが取得される。
【0097】
尚、前記詳細測定エリア72′の測距については、分割しない場合の測距と同様であるので説明を省略する。
【0098】
更に、画像付き3次元データの作成の処理について説明する。
【0099】
尚、前記測定エリア72が1回の撮像範囲より小さい場合と、該測定エリア72を分割して撮像し、分割画像を合成する場合とは略同様に処理される。
【0100】
STEP:01 分割エリアの画像付き3次元データ作成を前記操作部57より指令すると、前記記憶部62より測定シーケンスプログラム、演算プログラム、画像処理プログラム等、画像付き3次元データ作成をする為の必要なプログラムが起動される。
【0101】
STEP:02 前記操作部57より前記測定エリア72を概略設定する。
【0102】
STEP:03 前記撮像部5により前記測定エリア72の画像が撮像される。前記撮像部5の画角が前記測定エリア72より大きい場合は、1回の撮像により得られた画像が前記測定エリア72の画像として前記記憶部62に格納される。又、前記撮像部5の画角が前記測定エリア72より小さい場合は、該測定エリア72が所要分割されて前記分割エリア73毎に撮像が実行され、該分割エリア73の画像が取得され、得られた分割画像データは、撮像方向(前記投光光軸36即ち撮像光軸44の水平角、高低角)に関連付けられて前記記憶部62に格納される。更に、分割画像データが合成され、前記測定エリア72の画像として前記記憶部62に格納される。
【0103】
STEP:04 前記測定エリア72の画像が前記表示部58に表示され、前記測定エリア72の画像上で測定エリア(詳細測定エリア72′)が詳細設定される。
【0104】
STEP:05 次に、前記詳細測定エリア72′内の測量が実行される。測量の実施は前記詳細測定エリア72′の範囲で、パルス測距光が前記測定対象物71を走査することで、各パルス毎(各測定点毎)に測距が実行され、各測定点毎の距離データが取得される。又、1パルス毎の高低角、水平角が、前記水平角検出器26、前記高低角検出器52によって検出され、検出結果は前記水平角検出器26、前記高低角検出器52から取込まれ、各距離データ毎に関連付けられ、前記記憶部62に格納される。
【0105】
STEP:06 全ての前記測定点の距離データと、各距離データに関連付けられた高低角、水平角によって測定点の3次元位置データ群が演算され、前記詳細測定エリア72′についての3次元位置データ群(点群データ)が作成される。
【0106】
STEP:07 前記測定エリア72′の画像に関する前記撮像光軸44の方向(水平角、高低角)は既知となっており、前記画像データの各画素の水平角、高低角は前記撮像光軸44に関して演算によって求められる。従って、前記画像データの各画素と前記点群データの個々との関連付けは、画素の高低角に基づき関連付けが行える。又、前記撮像部5の撮像光軸44と前記測距部4の測距光軸(即ち投光光軸36)とは同一であり、又該測距部4と前記撮像部5とは一体に水平回転するので、前記画像データと前記点群データとの位置関係にずれは生じない。従って、前記画像データと前記3次元データとの関連付けに於いて、光軸合せ、画像の回転等の画像処理を必要としない。又、別途測定対象物の基準点等の設定をする必要がなく、又画像から対応する基準点の抽出を行う必要がない。更に、画像から基準点の抽出を行う必要がないので、抽出時に生じる誤差もない。
【0107】
STEP:08 上記した様に、点群データのデータ数は、数百万点から数千万点に及ぶ。点群データをTIN化(不定形三角網化)されるが、TIN化の態様によりデータの圧縮、データの省略が可能であり、前記演算部61の負担を軽減する。
【0108】
尚、不定形三角網は3次元データを頂点とする3角形で構成されるが、頂点とする為に選択する3次元データを粗く選択するか、細かく選択するかで不定形三角の大きさが異なる。図11(A)は粗く3次元データを選択した場合、図11(D)は細かく3次元データを選択した場合を示し、図11(B)〜図11(C)はその中間を示している。
【0109】
TIN化することで、演算処理が実行される場合に不定形三角内に含まれる3次元データが省略される(データが圧縮される)。尚、不定形三角面内の位置データの算出については、上記した特許文献1に示されている。
【0110】
而して、TIN化する場合のパターンを幾つか準備することで、取得した点群データを保持したまま、データの圧縮率を大きくして高速処理を実施する態様と、データの圧縮率を小さくして細密処理を実施する態様等、状況に応じた処理態様を選択することができる。
【0111】
STEP:09 TIN化した点群データと画像データとのテクスチャマッピングが行われる。ここで、TIN化する場合の不定形三角頂点のデータについての高低角、水平角は既に取得され、又画像データ中の各画素の高低角、水平角は既知であるので、前記不定形三角頂点は、高低角、水平角を基に画像データ中の画素を直ちに特定でき、点群データと画像データとのテクスチャマッピングは容易に実施される。
【0112】
STEP:10 点群データと画像データとのテクスチャマッピングにより、画像付き3次元データが作成される。
【0113】
尚、STEP:07で関連付け、作成された前記画像データ、点群データ及び各画素と前記点群データの個々との関連付けはデータファイルとして前記記憶部62或は前記外部記憶装置59に格納され、以後のデータの連結等、後処理に利用される(STEP:21)。
【0114】
次に、前記レーザスキャナ1により複数の測定エリア72について測定し、各測定エリア72について画像付き3次元データを作成した場合に、複数の測定エリア72の画像付き3次元データを連結する場合を説明する。尚、複数の測定エリア72の画像付き3次元データを連結する場合、前記測定エリア72の画像は一部オーバラップして取得されている。
【0115】
図12により、複数の測定エリア72について作成した画像付き3次元データを連結する場合を説明する。尚、以下の場合は、前記レーザスキャナ1の設置位置を変更しないで複数の測定エリア72に画像付き3次元データを作成した場合を示している。
【0116】
STEP:11 各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nについて、図10で示したSTEP:01〜STEP:07を実行して、それぞれ画像データ、3次元データの取得を行い、更に3次元データと画像データとの関連付けを行う。
【0117】
尚、各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nについての画像データの撮像範囲は、隣接する画像データ同士が所要量オーバラップする様に設定される。
【0118】
STEP:12 各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72n毎に、画像データ、3次元データ群、3次元データと画像データとの関連付け情報等を含むデータファイルを作成し、前記記憶部62に格納する。
【0119】
STEP:13 前記隣接する各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nについて連結する。
【0120】
STEP:14 前記隣接する各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nの連結は、画像データを連結することで、実行される。画像データの連結は、オーバラップ部分を重合させ、重合部分のマッチングにより画像データの連結を行う。尚、重合部分のマッチングは、前記レーザスキャナ1の設置位置を変更していない場合は、直ちにマッチングが可能である。
【0121】
STEP:15 画像の各画素毎に、3次元データが関連付けられているので、画像の連結を行うことで、点群データの連結も実行される。更に、全ての各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nについて画像の連結を実行することで、複数の測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nの点群データの連結が完了する。
【0122】
STEP:16 全ての各測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72nについて、画像データの連結、点群データの連結を行うことで、複数の測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72n全域での画像データの取得、点群データの取得、更に測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72n全域について画像データと点群データの関連付けが行われる。
【0123】
STEP:17 前記測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72n全域についての点群データのTIN化が行われる。
【0124】
点群データのTIN化は、上記STEP:08と同様に実施され、データの圧縮、データの省略が行われて、前記演算部61の負担が軽減される。
【0125】
STEP:18 上記STEP:09と同様にして、TIN化した点群データと画像データとのテクスチャマッピングが行われる。
【0126】
STEP:19 上記STEP:10と同様に、点群データと画像データとのテクスチャマッピングにより、前記測定エリア72a、測定エリア72b、…、測定エリア72n全域についての画像付き3次元データが作成される。
【0127】
尚、STEP:16で関連付け、作成された前記画像データ、点群データ及び各画素と前記点群データの個々との関連付けはデータファイルとして前記記憶部62或は前記外部記憶装置59に格納され、以後のデータの連結等、後処理に利用される(STEP:21)。
【0128】
次に、図13、図14に於いて、前記レーザスキャナ1の設置位置を変更して取得した、複数の3次元データ付き画像の連結について説明する。
【0129】
前記レーザスキャナ1がA点に設置され、A点から第1測定エリア72-1について画像データ、点群データ取得が行われる。又、前記レーザスキャナ1が移動され、B点に設置され、B点から第2測定エリア72-2について画像データ、点群データ取得が行われる。
【0130】
ここで、前記第1測定エリア72-1、前記第2測定エリア72-2が、図6に示される様に、前記レーザスキャナ1の前記撮像部5の画角より小さい場合は、前記測定エリアの画像データが1回の撮像で取得され、又前記第1測定エリア72-1、前記第2測定エリア72-2が、図7〜図9に示される様に、前記測定エリアが前記撮像部5の画角より大きい場合は、前記測定エリア72が分割され、画像データが取得される。
【0131】
尚、前記第1測定エリア72-1の画像データと前記第2測定エリア72-2の画像データとは所要部分がオーバラップして取得される。
【0132】
STEP:21 前記第1測定エリア72-1、前記第2測定エリア72-2についての測定エリアのデータファイルは、図10に示されるSTEP:01〜STEP:07の過程を経て作成される。
【0133】
STEP:22 前記第1測定エリア72-1のデータファイルと前記第2測定エリア72-2のデータファイルを基に前記第1測定エリア72-1のデータと前記第2測定エリア72-2のデータとの合成が行われる。
【0134】
STEP:23 上記した様に前記第1測定エリア72-1の画像データと前記第2測定エリア72-2の画像データとは一部オーバラップする様に取得されているので、オーバラップ部分に基づき画像データによるマッチングが行われる。
【0135】
画像データのマッチングは、オーバラップした部分での両画像中の共通点を抽出し、一方の画像を基準として共通点が重合する様に他方の画像を座標変換する。更に高精度な画像マッチングを行うには、座標変換後投影歪みに有効なマッチング手法である、最小2乗マッチング:LSM(Least Squares Matching)を用いてマッチングを実施する。
【0136】
STEP:24 前記第1測定エリア72-1の画像データと前記第2測定エリア72-2の画像データとをマッチングさせることで、前記第1測定エリア72-1の画像データと前記第2測定エリア72-2の画像データとが連結される。又画像同士の連結により、前記第1測定エリア72-1の画像データと対応する点群データ、前記第2測定エリア72-2の画像データと対応する点群データも連結され、同時に前記第1測定エリア72-1、前記第2測定エリア72-2の連結された画像データと同時に前記第1測定エリア72-1、前記第2測定エリア72-2の連結された点群データとの関連付けもなされる。
【0137】
図15は点群データ(A)と点群データ(B)とが連結され、点群データ(C)に合成された状態を示している。
【0138】
関連付けされた連結画像データ、連結点群データは前記第1測定エリア72-1と前記第2測定エリア72-2との合成データファイルとして前記記憶部62、又は前記外部記憶装置59に格納される。格納された合成データファイルは以後のデータの連結等、後処理に利用される(STEP:31)。
【0139】
STEP:25 点群データをTIN化してデータの圧縮、データの省略をして前記演算部61の負担を軽減する。
【0140】
STEP:26 TIN化した点群データと画像データとのテクスチャマッピングが行われる。ここで、TIN化する場合の不定形三角頂点のデータについての高低角、水平角は既に取得され、又画像データ中の各画素の高低角、水平角は既知であるので、前記不定形三角頂点は、高低角、水平角を基に画像データ中の画素を直ちに特定でき、点群データと画像データとのテクスチャマッピングは容易に実施される。
【0141】
STEP:27 点群データと画像データとのテクスチャマッピングにより、画像付き3次元データが作成される。
【0142】
尚、図12のSTEP:21で得られた測定エリア全域のデータファイルを複数用いて、或は図14のSTEP:31で得られた合成データファイルを複数用いてデータの連結を行い、更に広範囲の画像付き3次元データを作成することが可能である。
【0143】
図16、図17は本発明に係るレーザスキャナ1の第2の例を示している。尚、図16と図17は、図2と図3と同様の関係にある。又、図16、図17中、図2と図3中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0144】
第1の例のレーザスキャナ1では、発光光軸32と撮像光軸44とを高低回動ミラー35によって切替える様にしたが、第2の例のレーザスキャナでは、前記発光光軸32と前記撮像光軸44とを光学的に分離したものである。撮像光学系、測距光学系を除き、整準部2、回転機構部3、回転照射部8等の機構については第1の例と同様である。
【0145】
測距光としては赤外光が使用され、発光素子31は赤外光のパルスレーザ光線を発する。
【0146】
鏡筒28の内部、前記発光光軸32上に光学的分離手段であるビームスプリッタ74が設けられる。該ビームスプリッタ74は、可視光を透過し、赤外光を反射するものであり、前記ビームスプリッタ74により、前記発光光軸32から反射光軸38が分離されている。
【0147】
前記発光素子31から射出された測距光37は前記ビームスプリッタ74で前記発光光軸32上に反射され、更に前記高低回動ミラー35によって投光光軸36上に照射される。
【0148】
該投光光軸36に反射された反射測距光は前記高低回動ミラー35、前記ビームスプリッタ74、孔明きミラー33で反射され、測距受光部39で受光され、距離測定が行われる。
【0149】
又、測定対象物からの撮像光は、前記高低回動ミラー35で反射され、前記ビームスプリッタ74を透過して画像受光部43に受光され、画像が取得される。
【0150】
第2の例のレーザスキャナ1に於いても、撮像光軸と測距光軸が同一であり、又測距部4と撮像部5とが一体に回転するので、点群データと画像データの関連付けが容易である。又、前記高低回動ミラー35による光軸の切換えをしないので、点群データと画像データの関連付けは更に容易である。
【0151】
尚、上記したレーザ光線として赤外光を使用したが、照射点の視認が必要とされる場合は、赤色、又は緑色のレーザ光線が用いられてもよい。
【0152】
前記撮像装置81(図1参照)は、撮像した画像がデジタルデータとして得られるものが好ましく、例えばデジタルカメラが用いられる。尚、フィルム等に撮像した画像をデジタルデータに変換してもよい。
【0153】
前記撮像装置81は、画像データを格納でき、運搬可能な記憶媒体が装脱可能となっており、記憶媒体としては例えばメモリカードが挙げられ、該メモリカードを介して画像データを前記測量データ処理装置91に入力できる。
【0154】
図18に於いて、該測量データ処理装置91の概略について説明する。
【0155】
該測量データ処理装置91は、演算制御部(CPU)92、主記憶部93、入出力制御部94、表示部95、補助記憶部96、操作部97によって概略構成されている。
【0156】
前記主記憶部93にはプログラム格納域、データ格納域が形成され、前記プログラム格納域には、画像処理プログラム、所要の演算を実行する演算プログラム、データ処理を管理進行するシーケンスプログラム等から構成される測量データ処理プログラム、画像表示プログラム等のプログラムが格納され、前記データ格納域にはレーザスキャナ1で取得した点群データ、該点群データに関連付けられた主画像データ、前記撮像装置81により取得された補足画像データ等が格納される。
【0157】
前記補助記憶部96は、メモリカードリーダライタ、DVDドライブ、FDドライブ、或は着脱可能な可搬なHDD等であり、前記レーザスキャナ1で取得された点群データ、主画像データは、メモリカード、DVD、FD等の記録媒体に書込まれ、記録媒体が前記補助記憶部96に装填され、読込まれることで前記主記憶部93に書込みがされ、或は前記可搬なHDDにデータが書込まれ、該可搬なHDDが前記主記憶部93に接続され、前記演算制御部92を介して前記可搬なHDDのデータが前記主記憶部93にに書込まれる様になっている。
【0158】
又、前記撮像装置81が、デジタルカメラ等の撮像画像を電子データとして取得可能な場合、撮像され取得された補足画像はデジタルデータとしてメモリカードに記録され、該メモリカードが前記補助記憶部96に装着されることで、前記主記憶部93に補足画像データを格納することができる。
【0159】
前記撮像装置81が、感光フィルムに画像を記録するアナログ式のカメラ等であった場合は、画像をイメージスキャナ等で電子データに変換し、変換した電子データをメモリカード、DVD等に書込み、メモリカード、DVD等を前記補助記憶部96に装填することで、同様にして前記主記憶部93に補足画像データを格納することができる。
【0160】
又、前記レーザスキャナ1と前記測量データ処理装置91とを無線LAN等で接続することにより、無線通信を記録媒体とし物理的な記録媒体の授受なく、前記レーザスキャナ1と前記測量データ処理装置91間でデータの授受が可能となる。
【0161】
前記操作部97は、例えばキーボード、マウス等に代表され、測定者が測量の条件の入力、測定開始等所要の指示を前記演算制御部92に与えるものである。
【0162】
図19に於いて、本発明に於ける測量データ処理の基本的な流れを説明する。
【0163】
STEP:31 レーザスキャナ1によりパルスレーザ光線を照射して、測定エリアを走査し、測定エリアの主点群データを取得する。更に、前記撮像部5により測定エリアの主画像データを取得する。前記主点群データはTIN化され、該主点群データに前記主画像データがテクスチャマッピングされる。
【0164】
取得された主点群データは、主画像データ、主点群データに主画像がテクスチャマッピングされたデータは、前記外部記憶装置59を介して記憶媒体、例えばメモリカードに記録される。該メモリカードは前記外部記憶装置59から取出され、前記補助記憶部96に装填される。前記メモリカードから主点群データ等のデータが読取られ、前記主記憶部93に格納される。
【0165】
STEP:32 主点群データを前記表示部95に表示させ、主点群データの未取得データ範囲を判別する。例えば、未取得データ範囲は、車両、樹木等で陰になった欠落部分98(図20参照)であり、主点群データを表示させることで、目視で直ちに判別できる。尚、主点群データの表示は主画像データと共に表示してもよい。
【0166】
又、主点群データの点データの内、隣接する点データが欠けている境界点データを検出し、境界点データを結線し、ポリラインを作成するデータ処理を実行することで、前記未取得データ範囲が自動的に判別される。以下、前記未取得データ範囲が欠落部分98であった場合を説明する。
【0167】
STEP:33 前記撮像装置81により、未取得データ範囲をステレオ撮影する。ステレオ撮影は、前記欠落部分98を左右、上下の少なくとも2方向から撮影し、画像を取得する。方向を変えて撮像する場合、一部をオーバラップさせる。使用する撮像装置81としては、撮像画像を電子データとして記録するデジタルカメラ等が好ましい。取得された画像データは、補足画像データとしてメモリカード等の記録媒体に格納される。
【0168】
尚、前記欠落部分98が大きい場合は、全体がカバーできる様に多数枚の補足画像データを取得する。
【0169】
STEP:34 メモリカードを前記補助記憶部96に装填し、補助画像データを前記主記憶部93に格納する。前記補助画像データは、例えば左画像、右画像の順に格納し、ステレオペアとして登録する。又、前記補助画像データの登録に併せて、撮像方向、撮像位置、撮像光軸に関する傾き等、撮像条件(キャリブレーションデータ)も登録する。
【0170】
STEP:35 ステレオペアとなっている補足画像データが選択され、ステレオ画像を作製する為の標定処理が行われる。ステレオペアの補足画像データの標定は、主点群データから選択した点に基づき行われる。従って、取得画像中の標定の為の基準点設定、測定は省略される。尚、標定処理については、後で詳述する。
【0171】
STEP:36 STEP:35の標定結果に基づき、任意に撮影された画像からステレオ画像(偏位修正画像)を作成する。
【0172】
該ステレオ画像は、左右画像の相対的な傾きを補正した縦視差のない画像であり、立体視をすることも可能である。前記ステレオ画像上に前記主点群データを表示し、前記ステレオ画像が前記欠落部分98を抜けなく覆っているかどうかが確認される。同時にスキャンデータの整合性(測定データの異常がないかどうか)等がチェックされる。
【0173】
補足画像データの抜けや、点群データの整合性に異常のある部分について、再計測部分とする。補足画像データの抜けに関しては、抜け部分について再度画像を取得し、ステレオ画像を作成する。又点群データの整合性に異常のある部分については、画像上をマウス等を用いてマニュアルで再測定範囲を指定するか、上記した様にポリラインを自動で作成し、測定範囲とし、前記レーザスキャナ1によって再度測定し、再測定点群データを取得する。再測定点群データは前記主点群データに合成する。
【0174】
STEP:37 STEP:36で作成したステレオ画像から、補足画像取得範囲の補足点群データをデータ処理により、自動測定を行う。
【0175】
補足点群データの点間の間隔は、前記レーザスキャナ1で測定した点間の間隔と同じになる様に点間の間隔を設定する。自動測定により得られた補足点群データは前記主記憶部93に格納される。
【0176】
STEP:38 主点群データから所定数の基準点を選択し、又前記補足点群データから前記基準点に対応する対応点を選択し、基準点と対応点に基づき前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングを行う。
【0177】
STEP:37で取得した前記補足点群データを前記主点群データに合成する。尚、ステレオ画像の標定は、主点群データを用いて標定しており、ステレオ画像にて測定された補足点群データは主点群データと同じ座標系として計算されている。従って、主点群データの前記欠落部分98の補足点群データによる補充は、複雑な処理をすることなく直ちに実行される。
【0178】
次に、上記測量データ処理の基本的な流れのうち、主要なデータ処理について個別に説明する。
【0179】
先ず、図21を参照して、ステレオ画像の標定について説明する。
【0180】
STEP:41 レーザスキャナ1で取得した主点群データの欠落部分98を判別、又は検出し、該欠落部分98をデジタルカメラで撮影し、該欠落部分98の補足画像データを取得する。補足画像データを前記主記憶部93に格納し、補足画像データに基づき前記欠落部分98の画像を表示させる。
【0181】
STEP:42 登録した画像の内、ステレオペアとなる画像を所定の順序(例えば、右画像、左画像)で指定する。ステレオペアの指定は、画像上でマウス等で指定してもよく、プログラムに欠落部分98を検出させ、該欠落部分98に該当する補足画像データを検索させる様にしてもよい。
【0182】
STEP:43 欠落部分が複数ある場合、或は欠落した部分が大きい場合、欠落部分に該当するステレオペア画像、或は該当する複数のステレオペア画像を標定処理用として登録する。
【0183】
STEP:44 STEP:43で登録した補足画像及び主点群データを前記表示部95に表示させる。尚、主点群データの表示は、該主点群データに画像をテクスチャマッピングした状態で表示させてもよい。
【0184】
STEP:45 表示させた主点群データ、補足画像を対比させ、補足画像による充足が不完全である場合は、不足部分を前記撮像装置81により更に撮像して画像データの追加を行う。補足画像が完全に前記欠落部分98を充足している場合は、標定点を選択し、座標を計測する。
【0185】
標定点とは、ステレオ画像の場合、左右画像上の対応点(同一点)の画像上の座標(x,y)であり、パスポイントとも呼ばれる。
【0186】
相互標定では、パスポイントを6点以上計測する必要がある。又、これらのパスポイントの内、基準点として3点以上の地上座標(X,Y,Z)を与えると、ステレオ画像の絶対標定を行う事ができる。
【0187】
STEP:46 左画像又は右画像上にて、標定点を測定したい部分をマウスで指定し左右画像のマッチングを行う。マッチングの処理としては、相関処理、SSDA(差分)、最小2乗相関(LSM)等を用いる。
【0188】
マッチングが正常にできない部分(テクスチャがない等)は、マニュアルで正確に左右画像の対応点を測定する。
【0189】
例えば、左画像から右画像へのマッチングを行う場合、左画像で指定した概略の位置を中心として、指定した左画像上にウィンドウと呼ばれる正方領域のテンプレートを設定し、そのテンプレートと同じ大きさのウィンドウを右画像上で動かして、左画像と右画像との画像の濃度値が最も類似している位置を探索し、対応点を決定する。ここで類似度とは、正規化した相関処理の場合、最大1であり、SSDA(差分)の場合、最小値(0)が最も類似している値となる。
【0190】
ここでは一例として、テンプレートの大きさは左画像で15×15画素(左画像のテンプレート101とする)、探索幅はその倍以上とし、右画像でのウィンドウの大きさは31×31画素(右画像のウィンドウ102とする)程度を設定する。又、左画像から右画像への探索を行った後、その結果を使って右画像から左画像のバックマッチングを行う事により、求められた対応点の一致を評価して信頼性を高めることもできる。
【0191】
更に、ここでは測定対象物の凹凸形状や投影歪みに有効なマッチング手法として、最小2乗マッチング:LSM(Least Squares Matching)を用い、画像間のマッチングを高精度に行う。最小2乗マッチングは、図22に示される様に、右画像上の前記ウィンドウ102の形状をアフィン変形させながらマッチング(パターン比較)を行い、対応点をサブピクセル単位で計測する手法である。
【0192】
パターン比較を行う際の前記テンプレート101をf1(i,j)、変形された前記ウィンドウ102をf2(x,y)とし、該ウィンドウ102の変形を次式のアフィン変換によって近似する。
【0193】
x=a1 i+a2 j+a3
y=a4 i+a5 j+a6
【0194】
又、各々比較する画素に於ける濃度差は、以下の式で与えられる。
Σd(i,j)→min
d(i,j)=f1 (i,j)−f2 (x,y)
=f1 (i,j)−f2 (a1 i+a2 j+a3 ,a4 i+a5 j+a6 )
【0195】
次に、Σd(i,j)→minを満たす様な、a1 〜a6 を決定する。
【0196】
ここで、a1,a2,a4,a5は前記ウィンドウ102の変形を表し、a3,a6が求めるべき検出位置の座標となり、サブピクセル精度で求める事ができる。相互標定では、この左右の対応点(パスポイント)を6点以上、計測する必要がある。
【0197】
STEP:47 補足画像データに関して左右画像との対応付けをマッチングにより求めた後、その左右画像中の位置と同一の位置を主点群データから求め、補足画像データと主点群データとのマッチングを行う。
【0198】
主点群データと補足画像データとのマッチングの一方法としては、主画像データと補足画像データとの画像マッチングにより実行する。
【0199】
即ち、主点群データにテクスチャマッピングした主画像データを前記表示部95に表示し、又補足画像データ(STEP:46で得られたステレオ画像の右画像又は左画像)を前記欠落部分98を覆う様に重ねて表示し、補足画像データと主画像データとのマッチングを行う。而して、補足画像データと主画像データとのマッチングを介して主点群データと補足画像データとのマッチングが実行される。
【0200】
尚、主点群データと補足画像データとのマッチングができない場合には、マニュアルにて対応点を測定する。
【0201】
左右画像(補足画像データ)中の位置と主点群データの同一の位置との対応付けが求まると、その位置での主点群データから座標(X,Y,Z)を取得し、座標を取得した点を測定点、例えば測定点:01と設定して、測定が完了する。主点群データとの補足画像データ対応は、全てのパスポイントを対応付けする必要はなく、絶対標定を行う為には基準点として3点以上の座標(X,Y,Z)があればよい。
【0202】
STEP:48 標定点のチェックを行う。標定点を6点以上、又点群データから選択した基準点3点以上の点数チェックを行う。OKであればSTEP:49に進み、NGならばSTEP:45に戻る。
【0203】
STEP:49 前記撮像装置81で撮影した時の左右画像の相対的な位置と傾きを求める相互標定計算とステレオ画像の基準点に対する位置と傾きを求める絶対標定を計算する。
【0204】
計算結果は、相互標定の場合には左右画像のモデル座標の縦視差の標準偏差によりチェックされ、又絶対標定の場合には、基準点X、Y、Zと計算して得られた座標X′、Y′、Z′との残差の標準偏差等でチェックされ、いずれも基準値を満たす場合には標定を終了する。基準値を満たさない場合には、STEP:45に戻り、標定点の修正(再測定)、追加等を行う。
【0205】
次に、図23を参照して点群データを用いたステレオマッチングについて説明する。
【0206】
STEP:51 STEP:35、及びSTEP:41〜STEP:50の処理で得られた標定結果に基づき、補足画像データの左右画像の相対的な傾きを補正して、補足画像データに基づきステレオ画像(偏位修正画像)を作成する。該偏位修正画像は、左右画像の縦視差を補正した画像であり、左右画像の同一箇所の縦方向(Y座標)は完全に一致する。その為、以降の左右画像のステレオマッチングの1次元探索を可能にする。
【0207】
STEP:52 ステレオ画像上に主点群データを表示する。
【0208】
レーザスキャナ1によりパルスレーザ光線を照射して、測定エリアをレーザースキャンした際に、測定エリア内に車が止まっていたとすると、車部分が陰となって主点群データに欠落部分98(図20参照)が生じる。
【0209】
STEP:53 主点群データの欠落部分98をチェックし、ステレオ画像内で補足計測範囲を設定する。補足計測範囲は、ポリゴン(連続で結線した線)で指定する。
【0210】
補足計測範囲の設定は、マウス等を用いて、マニュアルで指定するか、穴あき部分を自動的に認識して、周囲の点群データを自動的に結線して指定する。
【0211】
STEP:54 ステレオ画像より補足点群データを測定する場合の測定間隔を入力する。測定間隔を特に指定しない場合は、レーザースキャンで得られた主点群データの平均の測定間隔が表示される。主点群データと同じ密度で画像計測により補足点群データを取得する場合、前記測定間隔にてそのまま測定を行う。
【0212】
STEP:55 主点群データと同じ密度で画像計測により補足点群データを取得する場合は、指定した範囲内に入力した前記測定間隔にて、ステレオ画像の一方の画像、例えば左画像上に測定点を設定する。
【0213】
STEP:56 STEP:55で設定した測定点のマッチングを行う前に、画像を1/2ずつに縮小して作成したピラミッド画像を作成する。ピラミッド画像の段階は、最も小さい画像のサイズが256×256サイズ程度になる迄作成し、これは処理する画像のサイズに依存する。
【0214】
図24では、1/16まで画像を縮小した例を示している。
【0215】
マッチングは粗密探索法により、最も粗い段階の1/16から始め、1/8、1/4、1/2、そして等倍画像へと収束させる。粗密探索法は、繰返しパターンや投影歪み等の影響を少なくし、マッチングの信頼性を高めると共に、高速な処理を可能とする。
【0216】
STEP:57 STEP:53にてステレオ画像内で測定範囲を設定したポリラインの内部を3角形で結び、TINを作成する。ポリラインの頂点は3次元データであり、TINを形成する事により、最初の段階のマッチングの初期値、視差を3角形から内挿する事ができる。又、この視差の初期値を与えることにより、マッチングの信頼性を高めることができる。
【0217】
STEP:58 左右画像の対応付けを最小2乗マッチング(LSM)にて行う。
【0218】
STEP:57で作成したTINより、測定点を内挿しマッチングの初期値(粗画像)として利用する。この場合も、マッチングは粗密探索法にて行う。
【0219】
STEP:59 ステレオマッチングにて求めた左右画像の対応点から、STEP:53で指定した補足計測範囲全ての測定点の3次元座標を計算する。
【0220】
STEP:60 3次元座標計算された補足点群データは、前記レーザスキャナ1で取得した元の主点群データに自動的に合成される。
【0221】
ステレオ画像は、予めレーザスキャナの主点群データで標定している場合には、画像計測で得られた補足点群データと同じ座標系で変換されるので、位置合せの必要がない。更に、レーザスキャナの点群データと同じ間隔で計測する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】本発明の実施の形態の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の例のレーザスキャナの断面図である。
【図3】本発明の第1の例のレーザスキャナの一部を回転した位置測定装置の断面図である。
【図4】本発明の第1の例のレーザスキャナの構成ブロック図である。
【図5】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第1の態様を示す説明図である。
【図6】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第1の態様を示す説明図である。
【図7】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第2の態様を示す説明図である。
【図8】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第2の態様を示す説明図である。
【図9】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第2の態様を示す説明図である。
【図10】第1の例のレーザスキャナに於ける画像付き3次元データの作成の流れを示すフローチャートである。
【図11】(A)(B)(C)(D)は、第1の例のレーザスキャナに於ける点群データのTIN化の態様を示す説明図である。
【図12】複数の測定エリアの画像データ、点群データの連結を示すフローチャートである。
【図13】第1の例のレーザスキャナに於けるデータ取得の第3の態様を示す説明図である。
【図14】データ取得の第3の態様に於ける画像データ、点群データの連結を示すフローチャートである。
【図15】データ取得の第3の態様に於ける点群データの連結を示す説明図である。
【図16】本発明の第2の例のレーザスキャナの断面図である。
【図17】本発明の第2の例のレーザスキャナに係る一部を回転した位置測定装置の断面図である。
【図18】本発明に係る測量データ処理装置概略ブロック図である。
【図19】本発明の実施の形態に於ける測量データ処理の基本的な流れを示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態に於いてレーザスキャナによる主点群データ取得で生じた欠落部分を示す説明図である。
【図21】本発明の実施の形態に於けるステレオ画像の標定についての流れを示すフローチャートである。
【図22】最少2乗マッチングについての説明図である。
【図23】本発明の実施の形態に於いて点群データを用いたステレオマッチングの流れを示すフローチャートである。
【図24】本発明の実施の形態に於ける粗密探索法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0223】
1 レーザスキャナ
2 整準部
3 回転機構部
4 測距部
5 撮像部
6 制御部
7 測定装置本体部
8 回転照射部
17 整準モータ
20 水平回動モータ
26 水平角検出器
31 発光素子
32 発光光軸
33 孔明きミラー
35 高低回動ミラー
36 投光光軸
37 測距光
38 反射光軸
39 測距受光部
43 画像受光部
44 撮像光軸
52 高低角検出器
59 外部記憶装置
61 演算部
62 記憶部
72 測定エリア
73 分割エリア
81 撮像装置
91 測量データ処理装置
92 演算制御部
93 主記憶部
95 表示部
96 補助記憶部
97 操作部
98 欠落部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナで所定の測定範囲についての主点群データを取得する工程と、未取得データ範囲を検出する工程と、副撮像装置により未取得データ範囲の補足画像をデータ取得する工程と、前記副撮像装置により得た補足画像データによりステレオ画像を作成する工程と、該ステレオ画像から補足点群データを取得する工程と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングにより前記主点群データの未取得範囲を補充する工程とを有することを特徴とする測量方法。
【請求項2】
前記レーザスキャナは、点群データと共に該点群データに関連付けられた主画像データを取得する請求項1の測量方法。
【請求項3】
前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主点群データから適宜選択された基準点と前記補足点群データの前記基準点に対応する点との関連付けによってなされる請求項1の測量方法。
【請求項4】
前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングは、前記主画像データと前記補足画像データとの画像マッチングでなされる請求項2の測量方法。
【請求項5】
前記未取得データ範囲は、測定範囲に隣接する範囲である請求項1の測量方法。
【請求項6】
前記未取得データ範囲は、レーザスキャナで点データが得られなかったデータ欠落部分である請求項1の測量方法。
【請求項7】
前記未取得データ範囲は、主点群データを画像表示させることで判別される請求項1の測量方法。
【請求項8】
前記未取得データ範囲は、主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別される請求項1の測量方法。
【請求項9】
パルスレーザ光線を所定の測定エリアに走査し、前記パルスレーザ光線の反射光を受光し、パルス毎にパルスレーザ光線照射点の3次元位置データを測距し、前記測定エリアの主点群データを取得するレーザスキャナと、該レーザスキャナとは分離し、任意の方向から補足画像データを取得可能な副撮像装置と、記憶部、制御演算部、表示部を備えた測量データ処理装置とを具備し、前記レーザスキャナにより取得された主点群データと、前記副撮像装置により前記レーザスキャナの未取得データ範囲を少なくとも2方向から撮像して得られた補足画像データとが前記記憶部に登録され、前記制御演算部が前記補足データよりステレオ画像を作成すると共に前記未取得データ範囲の補足点群データを取得し、該補足点群データと前記主点群データとを関連付け、前記補足点群データにより前記主点群データの未取得データ範囲を補う様構成したことを特徴とする測量システム。
【請求項10】
前記レーザスキャナは、パルスレーザ光線の照射光軸と同一の撮像光軸により前記測定エリアを撮像して主画像データを取得する主撮像装置を具備する請求項9の測量システム。
【請求項11】
前記補足点群データと前記主点群データとの関連付けは、該主点群データから選択した基準点と前記補足点群データの前記基準点と対応する点との関連付けでなされる請求項9の測量システム。
【請求項12】
前記主撮像装置で撮像された主画像データは前記主点群データと関連付けられ、該主点群データと共に前記測量データ処理装置に登録され、該測量データ処理装置は前記主点群データと前記補足点群データとを、前記主画像データと前記補足画像データとの画像マッチングを介して関連付ける請求項10の測量システム。
【請求項13】
前記演算制御部は、前記主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に前記表示部に表示させる様にした請求項9の測量システム。
【請求項14】
レーザスキャナで得られた所定の測定範囲についての主点群データから未取得データ範囲を検出する機能と、副撮像装置により撮像された未取得データ範囲の少なくとも2方向からの補足画像データに基づき未取得データ範囲の補足点群データを演算する機能と、前記主点群データと前記補足点群データとのマッチングを行う機能と、前記主点群データの未取得範囲を前記補足点群データにより補充とを実現することを特徴とする測量データ処理プログラム。
【請求項15】
前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データから適宜基準点を選択する機能と、前記補足点群データの前記基準点に対応する点を選択する機能と、選択された該基準点と対応する点との関連付けを行う機能によって実行される請求項14の測量データ処理プログラム。
【請求項16】
前記未取得データ範囲の判別を、前記主点群データの内隣接する点データが欠けている境界を検出することによって判別する請求項14の測量データ処理プログラム。
【請求項17】
前記主点群データと前記補足点群データとのマッチング機能は、前記主点群データに関連付けられた測定エリアの画像データと前記未取得データ範囲の補足画像との画像マッチング機能によって実行される請求項14の測量データ処理プログラム。
【請求項18】
前記レーザスキャナに具備された主撮像装置により測定光軸と同軸で測定範囲を取得した主画像データ、前記主点群データ、前記補足画像データ、前記補足点群データの内、少なくとも前記主点群データを個別に表示させる請求項14の測量データ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−82707(P2008−82707A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259607(P2006−259607)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】