説明

湯切り機能を備えた蓋体

【課題】湯切り機能を備えた蓋体であって、湯切り口の開口が容易で、内容物に刻みネギ等の小さな具が含まれていてもこれらを流出させず、迅速に湯切りを行える蓋体を低コストで提供する。
【解決手段】前記蓋体を、延伸ポリエステルフィルムに裏印刷を施し、その面に紙を貼合わせた外側シートと、アルミ箔にイージーピール性シーラントを積層した内側シートとを、その紙とアルミ箔との間にポリオレフィン系熱接着性樹脂を用いて押出しラミネートで貼合わせた積層シートで形成し、該蓋体の一端に湯切り口開口用摘み片を設け、その近傍に、裏側から紙層に入る深さに横長V字状の半切れ線と枠状の半切れ線とを順に設け、該積層シートの紙の裏面には、予め横長V字状の半切れ線から枠状の半切れ線迄を含み、枠状の半切れ線の内側は除く形状に易剥離性ニス層を設け、該蓋体の裏面には該枠状の半切れ線部を覆うようにプラスチック製のメッシュを熱接着して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯切り機能を備えた蓋体に関し、更に詳しくは、即席焼きそばに代表される湯戻しが必要な乾燥即席食品の密封包装に使用する容器の蓋体であって、乾燥した即席食品を柔らかく湯戻しするために、容器内に熱湯を注入した後に、不要となった熱湯を迅速に排出するための湯切り機能を備えた蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような湯切り機能を備えた蓋体としては、例えば、蓋体を、一方の面に剥離可能接着面を設けた表面基材と一方の面に熱接着性樹脂層を設けた湯切り基材とを、その剥離可能接着面と湯切り基材面とで剥離可能に接着した積層体で形成し、その蓋体の外周縁に少なくとも湯切り口開口用摘み部を設け、その湯切り口開口用摘み部側に前記熱接着性樹脂層側から前記湯切り基材を貫通するように規則性のある複数の湯切り口開口用ハーフカットを設けて構成し、使用時に前記湯切り口開口用摘み部を摘んで、前記表面基材をその剥離可能接着面で所望の面積だけ剥がす方法で、前記湯切り口開口用ハーフカットが設けられた湯切り基材を露出させて、そこから注入された熱湯を排出できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、カップ状容器の蓋材に用いる湯切り機能付き蓋材として、例えば、蓋材を、外側より少なくとも基材層/アルミニウム箔/シーラント層が順次積層された複合シートで構成し、その外形をカップ本体の開口部とほぼ同じ外形として、その一端に注湯口形成用つまみを設け、その反対側の端部に両端縁から内方に向けて先端部分が互いに重なるV字状の切れ目線を設けた排湯口形成用つまみを設けると共に、そのV字状の切れ目線を、斜歯状で、かつ、内方に行くにしたがい中央寄りに深くなり、V字部分の頂点では、左方の切れ目と右方の切れ目とが重なるように形成し、更に、そのV字状の切れ目線を、外側より基材層を経てアルミニウム箔にまでは達しない深さに設けて構成した湯切り機能付き蓋材がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−160757号公報(第2頁、第6頁〜第7頁、図2〜図5)
【特許文献2】特開2003−312750号公報(第2頁〜第4頁、図1〜図5)
【0004】
前記特許文献1に記載された発明の湯切り機能付き蓋体によれば、容器本体の上周縁に熱接着された蓋体を、その外周縁に設けられた湯切り口開口用摘み部を摘んで剥がすことにより、剥離可能に接着された表面基材が剥がされて、その下側の湯切り口開口用ハーフカットが設けられた湯切り基材が露出するようになるので、その湯切り基材の規則性のある複数の湯切り口開口用ハーフカットを通して、注入された熱湯を排出し、湯切りすることができる。
しかし、湯切り基材の規則性のある複数の湯切り口開口用ハーフカットは、規則性のある複数の切り目線で形成されているので、湯切りの際の内圧で切り目線が広がって、湯切りが可能になると記載されてはいるが、湯切りの際の内圧は、その取り扱い方法により必ずしも一定ではなく、内圧が低い場合は、切り目線の広がりが小さく湯切りに時間がかかる問題があり、内圧が高い場合は、切り目線の広がりが大きくなって湯切りを迅速に行えるが、その一方で、切り目線の両端が更に引き裂かれて湯切り口の開口が必要以上に大きくなり、熱湯と共に内容物が流出する問題があり、湯切り口の開口の安定性の面では問題があった。
更に、前記のような規則性のある多数のハーフカットの切り目線を設けるには、緻密で精巧な抜き型が必要であり、このような抜き型は製作に手間と時間を要し、費用も高くなるため、経済性の面でも不利となる問題があった。
【0005】
また、前記特許文献2に記載された発明の湯切り機能付き蓋材では、湯切り機能を有すると同時に、ガスバリヤー性に優れた蓋材の提供を目的としているので、排湯口形成用のV字状の切れ目線を、斜歯状で、かつ、内方に行くにしたがい中央寄りに深くなり、V字部分の頂点では、左方の切れ目と右方の切れ目とが重なるように形成すると共に、このV字状の切れ目線を前記複合シートの外側から基材層を経てアルミニウム箔にまでは達しない深さに設けた構成としている。
従って、ガスバリヤー性の点では、確かに優れた蓋材にできるが、湯切り機能に関しては、例えば、実施例1に記載されているように、図1に示すような形状のV字状の切れ目線(a)を左右の切れ目線の間隔が約10mmで深さが約8mmとし、一本の切れ目線の長さが3mm程度で、切れ目と切れ目の間隔を約1mm程度とし、片側ずつ9本程度で形成し、このようなV字状の切れ目線(a)を図では3個並べて設けた構成としており、湯切りを迅速に行うためには、上記のように個々のV字状の切れ目線(a)は比較的大きな形状にする必要がある。しかし、排湯口をこのような大きさで設けると、内容物が比較的太い麺の場合は問題ないが、焼きそばなど麺が細く、且つ、麺と共に乾燥刻みネギなどの小さな具が添付されている場合は、湯切りの際に、麺がV字状の穴から突き出したり、特に刻みネギなどの小さな具は熱湯と共に排出されてしまう問題があった。
また、この発明の場合も、前記V字状の切れ目線(a)は、細かい切れ目線を緻密に配列して形成しているので、その抜き型の製作には手間と時間を要し、費用も高くなるため、経済性の面でも不利となる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、即席焼きそばに代表される湯戻しが必要な乾燥即席食品の密封包装に使用する容器の蓋体であって、簡単な操作で蓋体に設けられた湯切り口を開口することができ、且つ、開口された湯切り口は、個々の湯切り穴を十分に小さく且つ安定した形状と寸法にすることができ、内容物として麺と共に乾燥刻みネギなどの小さな具が添付されている場合でも、湯切りの際に、これらの小さな具が熱湯と共に排出されることがなく、更に、蓋体に湯切り口を設ける際の加工も容易で製造コストも安くできるという性能及び経済性に優れた湯切り機能を備えた蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
即ち、請求項1に記載した発明は、上部の開口部周縁にフランジ部が設けられた容器のフランジ部に熱接着して該容器を密封する蓋体において、該蓋体が、少なくとも裏面に印刷が施された二軸延伸ポリエステルフィルムとその印刷面に紙を貼り合わせてなる外側シートと、アルミニウム箔の一方の面にイージーピール性シーラント層を積層してなる内側シートとを、その紙面とアルミニウム箔面との間にポリオレフィン系熱接着性樹脂を使用して押し出しラミネート法で貼り合わせた積層シートで形成され、少なくとも該蓋体の外周縁の一端には、容器内に注入された熱湯を排出する湯切り口を開口するための湯切り口開口用摘み片が設けられると共に、該蓋体の該湯切り口開口用摘み片が設けられた端部寄りの領域には、湯切り口を開口させる開口構造として、該蓋体の積層シートの裏側に、最内層のイージーピール性シーラント層から紙層に入る深さの湯切り口切り取り用の枠状のハーフカット線と、該枠状のハーフカット線と前記摘み片との間に前記深さに両側が広角に広がる横長V字状のハーフカット線とが設けられ、また、前記積層シートの紙層の前記ポリオレフィン系熱接着性樹脂層と接する側の面には、少なくとも前記横長V字状のハーフカット線部から前記枠状のハーフカット線部までを含む該蓋体全幅の領域で、且つ、前記枠状のハーフカット線の内側には僅かに入り込んだ部分を残してその内側を取り除いた形状に、予めパターンコートされた易剥離性ニス層が設けられ、更に、該蓋体の内側のイージーピール性シーラント層面には、前記枠状のハーフカット線で囲まれる部分を覆うようにプラスチック製のメッシュが、前記枠状のハーフカット線の外側周縁部に熱接着されて取り付けられていることを特徴とする湯切り機能を備えた蓋体からなる。
【0008】
本発明において、前記プラスチック製のメッシュは、蓋体の最内層のイージーピール性シーラント層に熱接着して用いるものであり、特に強接着は必要ではないが、イージーピール程度の接着性は必要である。そのためには、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂で作製されたメッシュであることが好ましい。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記プラスチック製のメッシュが、一辺の長さが1〜4mmの範囲の正方形または菱形を含む四辺形の網目であることを特徴とする請求項1記載の湯切り機能を備えた蓋体からなる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記蓋体の湯切り口開口用摘み片が設けらた端部と反対側の端部に、容器内に熱湯を注入する熱湯注入口を開口させるための熱湯注入口開口用摘み片が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の湯切り機能を備えた蓋体からなる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、湯切り機能を備えた蓋体を前記のように構成しているので、以下に列挙するような作用効果が得られる。
(1)内容物が収納された容器に熱湯を注入して内容物の湯戻しをした後、余分な熱湯を湯切りする際には、蓋体の外周縁の一端に設けられた湯切り口開口用摘み片を摘んで蓋体を引き剥がすことにより、前記横長V字状のハーフカット線と紙面にパターン状に設けられた易剥離性ニス層と枠状のハーフカット線とにより容易に前記枠状の湯切り口を開口させることができる。
(2)そして、開口された湯切り口には、湯切り用のプラスチック製のメッシュが熱接着により取り付けられているので、内容物として麺と共に乾燥刻みネギなどの小さな具が添加されている場合でも、メッシュ寸法を適するサイズに選定しておくことにより、不要な熱湯と共にこれらの小さな具を流出させることを防止でき、安全に且つ迅速に湯切りを行うことができる。
(3)また、前記プラスチック製のメッシュの湯切り口への取り付けは、熱接着により行えるので、多数の規則的な切れ目などを精密に設ける必要がなく、容易に且つ低コストで製造することができる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1に記載した発明の湯切り機能を備えた蓋体の構成において、前記プラスチック製のメッシュを、一辺の長さが1〜4mmの範囲の正方形または菱形を含む四辺形の網目とした構成としているので、請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、湯切りを行う際に、内容物中に前記刻みネギなどのような小さい具が含まれている場合でも、その流出を一層確実に防止して、迅速に湯切りすることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、請求項1または2に記載した発明の湯切り機能を備えた蓋体の構成において、前記蓋体の湯切り口開口用摘み片が設けらた端部と反対側の端部に、容器内に熱湯を注入する熱湯注入口を開口させるための熱湯注入口開口用摘み片が設けられた構成としているので、請求項1または2に記載した発明の作用効果に加えて、容器に収納された内容物の湯戻しを行うための熱湯注入口を開口させる際に、一層容易に熱湯注入口開口用摘み片を摘んで、蓋体を引き剥がして熱湯注入口を開口させることができる。
尚、前記熱湯注入口開口用摘み片は、内容物の湯戻しと、湯切りを行った後、蓋体全体を引き剥がして取り除く際にも利用できることはいうまでもないことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の湯切り機能を備えた蓋体は、前述したように、即席焼きそばに代表される湯戻しが必要な乾燥即席食品の密封包装に使用する容器の蓋体であって、乾燥した即席食品を柔らかく湯戻しするために、容器内に熱湯を容易に注入できると共に、湯戻しの後、不要となった熱湯のみを容易に且つ迅速に排出できるようにした蓋体であり、容器本体には、即席焼きそばの場合、発泡ポリスチレンシートの内面にポリスチレンフィルムを貼り合わせて成形された成形容器またはポリプロピレンシートを成形してなる二重容器が多用されているが、いずれの容器にも使用できるものである。
【0015】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
本発明の湯切り機能を備えた蓋体は、例えば、図1〜図3に示すように構成することができる。
即ち、図1は、本発明の湯切り機能を備えた蓋体の一実施例の構成を示す裏面図である。
また、図2は、図1に示した本発明の湯切り機能を備えた蓋体の裏面図において、横長V字状のハーフカット線および枠状のハーフカット線と、蓋体の紙層に設けられるパターン状の易剥離性ニス層の形状および位置関係を示す図である。従って、プラスチック製のメッシュ13およびメッシュ熱接着部14は省略して示した。
そして、図3は、図1のA−A線模式断面図であり、本発明の湯切り機能を備えた蓋体の積層構成の一例を示す模式断面図である。但し、蓋体は、表面が上で裏面が下になるように上下を逆転して示した。
また、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの図面に限定されるものではない。
【0016】
図1において、湯切り機能を備えた蓋体100は、外形が略矩形状に形成されており、その外周縁の一端(図において左下側の角部)に、湯切り口開口用摘み片9が設けられ、その反対側の端部(図において右上側の角部)には、容器内に熱湯を注入する熱湯注入口を開口させるための熱湯注入口開口用摘み片10が設けられている。
そして、蓋体100の湯切り口開口用摘み片9が設けられた端部寄りの領域の裏面には、蓋体100の外側から内部方向に、両側が広角に広がる横長V字状のハーフカット線11と湯切り口切り取り用の枠状のハーフカット線12とが、それぞれ適宜の間隔をおいて順に設けられ、更にその上に、該枠状のハーフカット線12で囲まれる部分を覆うようにプラスチック製のメッシュ13が、該枠状のハーフカット線12の外側周縁部にメッシュ熱接着部14で熱接着されて取り付けられている。
【0017】
尚、蓋体100の周縁部に破線で示した熱接着予定部15は、蓋体100を容器のフランジ部に熱接着する際の好ましい領域を示したものであり、特に、湯切り口開口用摘み片9の近辺では、図示したように、横長V字状のハーフカット線11の先端の折れ曲がり部が熱接着領域に含まれるように熱接着することが好ましく、それにより、蓋体100による密封が安全に保たれると共に、湯切り口開口用摘み片9を摘んで蓋体100を引き剥がした時に、確実に枠状のハーフカット線12による湯切り口を開口できるようになる。
【0018】
また、湯切り機能を備えた蓋体100は、図3(図1のA−A線模式断面図で上下を逆転して示した図)に示すように、外側(図において上側)から、二軸延伸ポリエステルフィルム1、印刷層2、接着剤層3、紙4、パターンコートされた易剥離性ニス層8、ポリオレフィン系熱接着性樹脂層5、アルミニウム箔6、イージーピール性シーラント層7を順に積層した積層シートで形成され、一方の側部(図において左側の側部)に湯切り口開口用摘み片9が設けられ、もう一方の側部(図において右側の側部)には熱湯注入口開口用摘み片10が設けられると共に、蓋体100の湯切り口開口用摘み片9が設けられた側の側部寄りの領域には、蓋体100の側部から中央部方向に、最内層のイージーピール性シーラント層7から紙4の層内に入る深さに、前記横長V字状のハーフカット線11と前記枠状のハーフカット線12とが、それぞれ適宜の間隔をおいて順に設けられ、更に、最内層のイージーピール性シーラント層7面には、前記枠状のハーフカット線12で囲まれる部分を覆うようにプラスチック製のメッシュ13が、該枠状のハーフカット線12の外側周縁部にメッシュ熱接着部14で熱接着されて取り付けられて構成されている。
【0019】
また、図2は、図1に示した湯切り機能を備えた蓋体の裏面図において、横長V字状のハーフカット線11および枠状のハーフカット線12と、蓋体の紙4のポリオレフィン系熱接着性樹脂層5と接する側の面にパターンコートされる易剥離性ニス層8の形状および位置関係を示す図であり、易剥離性ニス層8は、少なくとも前記横長V字状のハーフカット線11部から枠状のハーフカット線12部までを含む蓋体全幅の領域で、横長V字状のハーフカット線11側は、それよりも僅かに湯切り口開口用摘み片9側に入った位置で、枠状のハーフカット線12側は、枠状のハーフカット線12の蓋体中央部側の端部よりも3mmから10mm程度蓋体中央部側に延長した位置までとし、枠状のハーフカット線12の内側は、僅かに内側に入り込んだ部分を残してその内側を取り除いた形状に設けることが好ましい。
【0020】
このような構成の湯切り機能を備えた蓋体100の製造方法は、例えば、裏面に絵柄その他の印刷層2を設けた二軸延伸ポリエステルフィルム1の印刷面にドライラミネーション法で接着剤層3を介して紙4を貼り合わせた後、その紙4面に前記印刷層2と位置合わせして所定の形状の易剥離性ニス層8を印刷手段で設けて外側シートを作製し、また、アルミニウム箔6の一方の面にイージーピール性シーラント層7を押し出しコート法で積層して内側シートを作製し、前記外側シートの紙4面と内側シートのアルミニウム箔6面とを押し出しラミネート法でポリオレフィン系熱接着性樹脂層5を介して貼り合わせて蓋体用の積層シートを作製する。
次いで、上記蓋体用の積層シートの裏面側に、表面側の印刷層2と位置合わせして、前記横長V字状のハーフカット線11と枠状のハーフカット線12とを、イージーピール性シーラント層7から紙4層に入る深さに、所定の形状に設けると共に、蓋体を個々の形状に打ち抜いて枚葉の蓋体を作製する。
続いて、上記枚葉の蓋体の裏面側に、前記枠状のハーフカット線12で囲まれる部分を覆うように、プラスチック製のメッシュ13を枠状のハーフカット線12の外周縁部に熱接着することにより容易に製造することができる。
【0021】
上記湯切り機能を備えた蓋体100の製造において、プラスチック製のメッシュ13の蓋体への熱接着は、巻き取り状のプラスチック製のメッシュ13を個々の形状に打ち抜きながら熱接着することが可能であるため、予め個々の形状に打ち抜かれた蓋体とプラスチック製のメッシュ13とを用いて両者を熱接着してもよいが、例えば、個々の形状に打ち抜かれた蓋体に巻き取り状のプラスチック製のメッシュ13を引き出しながら打ち抜きと熱接着を行ってもよく、更に、両者を巻き取り状としてそれぞれを引き出しながら熱接着とそれぞれの打ち抜きを行う方法を採ることもできる。
【0022】
本発明の湯切り機能を備えた蓋体において、その積層シートに使用する二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのほか、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを使用することができる。
積層シートに使用する紙としては、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、特殊両更クラフト紙、晒クラフト紙などのほか、耐水性を高めたラベル用紙などを使用することができる。
【0023】
積層シートのイージーピール性シーラント層に使用するイージーピール性樹脂としては、蓋体を熱接着する容器の材質により多少異なるが、容器がポリスチレン製成形容器の場合は、スチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とをブレンドした樹脂、例えば、ポリプロピレンにスチレンをグラフト重合した樹脂と、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体とをブレンドした樹脂などを使用することができる。また、容器がポリプロピレン製成形容器の場合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体にハードレジン等の粘着付与剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。
【0024】
積層シートの製造の際に、押し出しラミネートに使用するポリオレフィン系熱接着性樹脂としては、低密度ポリエチレンのほか、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどを使用することができる。
また、積層シートの紙面にパターンコートして設ける易剥離性ニス層に使用する易剥離性ニスとしては、押し出しラミネートに使用される前記ポリオレフィン系熱接着性樹脂に対して易剥離性を有することが必要であり、例えば、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ニトロセルロース−ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコールなどの単独もしくは混合樹脂、またはこれらの樹脂にシリコーン樹脂を添加した樹脂を使用することができる。これらの樹脂を揮発性溶剤に溶解して塗布液を作製し、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷手段でパターン状に塗布、乾燥して易剥離性ニス層を形成することができる。また、易剥離性ニスには、その塗布形状を見やすくするため着色剤を添加することができる。
【0025】
次に、蓋体の最内層のイージーピール性シーラント層面に熱接着するプラスチック製のメッシュとしては、前述したように、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂で作製されたメッシュが好ましく、その網目は一辺の長さが1〜4mmの範囲の正方形または菱形を含む四辺形であればよく、形状自体は特に限定されない。また、網目線の太さは0.2〜1.0mmであればよい。
【0026】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1〜図3に示した構成の湯切り機能を備えた蓋体100を、以下の材料と寸法で作製して実施例1の湯切り機能を備えた蓋体とした。
(1)蓋体100の積層シートの構成(図3参照)
(a)二軸延伸ポリエステルフィルム1には、厚みが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと記載する)を使用し、その裏面にグラビア印刷により絵柄、文字、バーコードなどの印刷層2を設けた。
上記印刷層2は、個々の蓋体の外形寸法(但し、熱湯注入口開口用摘み片9の突出部を含む縦・横寸法)を、図1において、縦が169.5mm、横が189.5mmとして、その中に納まる寸法で設けたものである。
(b)紙4には、米坪量81.4g/m2 の上質紙を使用し、上記PETフィルムの印刷層2面と上記上質紙とを接着剤層3として二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で貼り合わせて外側シートを作製し、その上質紙面に、グラビア印刷により易剥離性ニス層8を、反対側の印刷層2と位置合わせして、図2の易剥離性ニス層8に示した形状に印刷して形成した。
尚、易剥離性ニス層8の易剥離性ニスには、ニトロセルロース樹脂にシリコーン樹脂を添加し、更にピンク色の着色剤を添加して作製したニスを使用した。
(c)また、アルミニウム箔6には、厚み7μmのアルミニウム箔を使用し、その一方の面に、イージーピール性シーラント層7を、線状低密度ポリエチレン30質量部、ハイインパクトポリスチレン30質量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体30質量部、スチレン−ブタジエンエラストマー10質量部をブレンドしてなるブレンド樹脂を厚み25μmに押し出しコートして形成し内側シートを作製した。
(d)前記外側シートの紙4側の面と内側シートのアルミニウム箔6側の面とを、ポリオレフィン系熱接着性樹脂層5として、低密度ポリエチレンを用いて押し出しラミネート法で貼り合わせて蓋体用積層シートを作製した。
【0028】
(2)上記のように作製した蓋体用積層シートの裏側に、最内層のイージーピール性シーラント層7から紙4層に入る深さに、図1、図3に示すように、表面側の印刷層2と位置合わせして横長V字状のハーフカット線11と湯切り口切り取り用の枠状のハーフカット線12とを設けた。
(3) 次いで、上記積層シートを、表面側の印刷層2と位置合わせして個々の蓋体の形状に打ち抜いた後、プラスチック製のメッシュ13として、網目が、一辺の長さが各2mmの四辺形で、太さが0.4mmのポリエチレン製のメッシュを使用して、それをイージーピール性シーラント層7面に、前記枠状のハーフカット線12で囲まれる部分を覆うように、枠状のハーフカット線12の外側周縁部にメッシュ熱接着部14で示されるように熱接着して実施例1の湯切り機能を備えた蓋体とした。
尚、上記湯切り機能を備えた蓋体の各部の寸法は、以下の通りとした。
蓋体の外形で、熱湯注入口開口用摘み片9の突出部を除いた部分の縦・横寸法は、縦が165mm、横が185mmである。
また、枠状のハーフカット線12で囲まれる湯切り口の形状は図示した通りで、その寸法は、湯切り口開口用摘み片9側から蓋体100の中心部側に向かって、その最大部の長さが33mmで、それと直交する幅方向の長さは35mmとした。
【0029】
以上のように作製した実施例1の湯切り機能を備えた蓋体を、発泡ポリスチレンシートの内面にポリスチレンフィルムを貼り合わせて成形したフランジ部付き容器本体の内部に、内容物として、市販の即席焼きそばの乾燥麺と乾燥刻みネギとを流用して充填し、そのフランジ部に、図1の熱接着予定部15に示したように熱接着して密封した後、蓋体の熱湯注入口開口用摘み片10を摘んで蓋体を1/3程度引き剥がしたところ、スムーズにイージーピールして熱湯注入口を開口させることができた。
【0030】
次いで、開口した熱湯注入口から熱湯を注入した後、剥がした蓋体を元に戻して3分間保持し、内容物の湯戻しを行った後、湯切り口開口用摘み片9を摘んで蓋体を徐々に引き剥がしたところ、最初はイージーピール性シーラント層7で開封が始まり、横長V字状のハーフカット線11に達すると、そこからは易剥離性ニス層8とポリオレフィン系熱接着性樹脂層5との界面で容易に剥離が進み、更に、枠状のハーフカット線12の先端部にさしかかった部分からは、枠状のハーフカット線12で囲まれた部分では易剥離性ニス層8が除かれているので、この部分では蓋体の全層が持ち上がり、その周囲では前記易剥離性ニス層8とポリオレフィン系熱接着性樹脂層5との界面で容易に剥離が進むので、枠状のハーフカット線12で囲まれた部分を湯切り口として容易に開口させることができた。
【0031】
そして、開口させた湯切り口には、前記ポリエチレン製のメッシュが、蓋体の内面の前記メッシュ熱接着部14で熱接着されているので、湯切り口が下になるように容器を傾けることにより、湯切り口から不要な熱湯を迅速に排出することができた。また、この時、ポリエチレン製のメッシュの網目が十分に小さいので麺と共に湯戻しされた刻みネギが熱湯と共に流出することもなく良好に湯切りすることができた。
また、湯切りを終了した後は、蓋体の熱湯注入口開口用摘み片10を再度摘んで蓋体全体を容易に引き剥がして容器を開封することができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の湯切り機能を備えた蓋体は、前述したように、即席焼きそばに代表される湯戻しが必要な乾燥即席食品の密封包装に使用する容器の蓋体として好適に使用できるものであるが、特に、湯切り口の大きさおよびそこに取り付けるプラスチック製のメッシュの網目寸法などは任意に設定できるので、同様な機能を利用できる用途であれば、内容物や用途などに関して特に制限はない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の湯切り機能を備えた蓋体の一実施例の構成を示す裏面図である。
【図2】図1に示した本発明の湯切り機能を備えた蓋体の裏面図において、横長V字状のハーフカット線および枠状のハーフカット線と、蓋体の紙層に設けられるパターン状の易剥離性ニス層の形状および位置関係を示す図である。
【図3】図1のA−A線模式断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 二軸延伸ポリエステルフィルム
2 印刷層
3 接着剤層
4 紙
5 ポリオレフィン系熱接着性樹脂層
6 アルミニウム箔
7 イージーピール性シーラント層
8 易剥離性ニス層
9 湯切り口開口用摘み片
10 熱湯注入口開口用摘み片
11 横長V字状のハーフカット線
12 枠状のハーフカット線
13 プラスチック製のメッシュ
14 メッシュ熱接着部
15 熱接着予定部
100 湯切り機能を備えた蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の開口部周縁にフランジ部が設けられた容器のフランジ部に熱接着して該容器を密封する蓋体において、該蓋体が、少なくとも裏面に印刷が施された二軸延伸ポリエステルフィルムとその印刷面に紙を貼り合わせてなる外側シートと、アルミニウム箔の一方の面にイージーピール性シーラント層を積層してなる内側シートとを、その紙面とアルミニウム箔面との間にポリオレフィン系熱接着性樹脂を使用して押し出しラミネート法で貼り合わせた積層シートで形成され、少なくとも該蓋体の外周縁の一端には、容器内に注入された熱湯を排出する湯切り口を開口するための湯切り口開口用摘み片が設けられると共に、該蓋体の該湯切り口開口用摘み片が設けられた端部寄りの領域には、湯切り口を開口させる開口構造として、該蓋体の積層シートの裏側に、最内層のイージーピール性シーラント層から紙層に入る深さの湯切り口切り取り用の枠状のハーフカット線と、該枠状のハーフカット線と前記摘み片との間に前記深さに両側が広角に広がる横長V字状のハーフカット線とが設けられ、また、前記積層シートの紙層の前記ポリオレフィン系熱接着性樹脂層と接する側の面には、少なくとも前記横長V字状のハーフカット線部から前記枠状のハーフカット線部までを含む該蓋体全幅の領域で、且つ、前記枠状のハーフカット線の内側には僅かに入り込んだ部分を残してその内側を取り除いた形状に、予めパターンコートされた易剥離性ニス層が設けられ、更に、該蓋体の内側のイージーピール性シーラント層面には、前記枠状のハーフカット線で囲まれる部分を覆うようにプラスチック製のメッシュが、前記枠状のハーフカット線の外側周縁部に熱接着されて取り付けられていることを特徴とする湯切り機能を備えた蓋体。
【請求項2】
前記プラスチック製のメッシュが、一辺の長さが1〜4mmの範囲の正方形または菱形を含む四辺形の網目であることを特徴とする請求項1記載の湯切り機能を備えた蓋体。
【請求項3】
前記蓋体の湯切り口開口用摘み片が設けらた端部と反対側の端部に、容器内に熱湯を注入する熱湯注入口を開口させるための熱湯注入口開口用摘み片が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の湯切り機能を備えた蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24328(P2008−24328A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197622(P2006−197622)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】