説明

溶剤再生装置及びその方法

【課題】純水との懸濁液を生成後に処理することにより、吸着フィルタの破過寿命を向上できる溶剤再生装置及びその方法を提供する。
【解決手段】回収タンク5内の回収溶剤に純水を供給した後に回収溶剤と純水との懸濁液を生成する。回収溶剤と純水との懸濁化により、溶剤よりも純水に溶けやすい酸や有機成分などが溶剤から引き出されて溶剤から分離する。回収溶剤と純水との懸濁液を所定時間の間、放置し沈静化させると、比重に応じて酸や有機成分などと溶剤成分とが分離するので、溶剤成分だけを一次調整溶剤として油水分離フィルタ7に通し、残っている純水等を除去して、二次調整溶剤としてバッファタンク9に貯留する。二次調整溶剤を吸着フィルタ11に通して貯留タンク13に溶剤成分を貯留するが、吸着フィルタ11にダメージを与える成分が除去されており、吸着フィルタ11の破過寿命が短くなるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して乾燥処理を行うために使用した液体の溶剤を再生する溶剤再生装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、液体の溶剤を貯留し、基板を収容する処理槽と、処理槽に対して、純水や溶剤などの処理液を供給するとともに、処理槽から排出された処理液を回収する配管とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。さらに、配管は、純水と溶剤とを混合するスタティックミキサと、純水を溶剤と分離する油水分離フィルタとを備え、スタティックミキサの上流から分岐した分岐管には吸着フィルタを備えている。この構成における処理槽と、分岐管を含む配管と、スタティックミキサと、油水分離フィルタと、吸着フィルタとが「溶剤再生装置」に相当する。
【0003】
このような構成を備えている溶剤再生装置は、少量のIPA(イソプロピルアルコール)をHFE(ハイドロフルオロエーテル)に混合させてなる溶剤を循環させることにより、基板に付着している純水を溶剤で置換し、さらに配管に溶剤を循環させる。その際に、スタティックミキサで純水を溶剤に混合し、水溶性のIPAを純水とともに油水分離フィルタでおおまかに除去した後に分岐管に切り換え、主としてHFEからなる溶剤に残留している微量の純水成分を吸着フィルタによって溶剤から吸着除去する。このようにして、溶剤を再生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−244086号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、油水分離フィルタでおおまかに純水を除去しているが、基板の処理中に溶剤に混入した酸や、IPAなどの有機成分を油水分離フィルタでは完全に除去しきれないことがある。したがって、酸や有機成分を含む溶剤が吸着フィルタに送られることがあるので、吸着フィルタにおける酸や有機成分の吸着量が多くなる。その結果、吸着フィルタの破過寿命が短くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、純水との懸濁液を生成後に処理することにより、吸着フィルタの破過寿命を向上できる溶剤再生装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、溶剤に含まれている純水成分を除去する溶剤再生装置において、基板の処理に使用した溶剤を回収溶剤として貯留する回収タンクと、回収溶剤に純水を供給する純水供給手段と、回収溶剤と純水との懸濁液を生成する懸濁化手段と、懸濁液から溶剤成分だけを一次調整溶剤として前記回収タンクから供給される油水分離フィルタと、前記油水分離フィルタで分離された溶剤成分だけを二次調整溶剤として貯留するバッファタンクと、前記バッファタンクから二次調整溶剤を供給され、二次調整溶剤から純水成分を吸着除去する吸着フィルタと、前記吸着フィルタで濾過された溶剤成分を再生溶剤として貯留する貯留タンクと、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、回収タンク内の回収溶剤に純水供給手段から純水を供給し、懸濁化手段により回収溶剤と純水との懸濁液を生成する。この懸濁化により、溶剤よりも純水に溶けやすい酸や有機成分などが溶剤から引き出されて溶剤から分離する。したがって、懸濁液を所定時間の間、放置することで沈静化させると、比重に応じて酸や有機成分などと溶剤成分とが分離するので、この溶剤成分だけを一次調整溶剤として油水分離フィルタに通し、残っている純水等を除去して、二次調整溶剤としてバッファタンクに貯留する。そして、二次調整溶剤を吸着フィルタに通して貯留タンクに溶剤成分を貯留するが、吸着フィルタにダメージを与える酸や有機成分が既に充分に除去されているので、吸着フィルタの破過寿命が短くなるのを防止できる。
【0009】
また、本発明において、前記懸濁化手段は、前記回収タンク内の回収溶剤を、前記回収タンクの外部を通して循環させる循環配管と、前記循環配管に設けられた循環ポンプと、を備えていることが好ましい(請求項2)。循環ポンプを作動させて回収溶剤と純水とを循環配管を通して循環させるだけで、回収溶剤と純水とを懸濁化できる。
【0010】
また、本発明において、前記懸濁化手段は、前記回収タンク内の流体を攪拌する攪拌手段を備えていることが好ましい(請求項3)。攪拌手段で回収タンク内を攪拌することにより、回収溶剤と純水とを懸濁化できる。
【0011】
また、本発明において、前記回収タンク内の底面から所定の高さ位置に設けられた比重計と、前記回収タンクの底部と、前記油水分離フィルタとを連通接続する配管と、前記配管に設けられたポンプと、前記ポンプを作動させた後、前記比重計の計測値が変動したことに基づき前記ポンプを停止させる制御部と、を備えていることが好ましい(請求項4)。懸濁化手段により生成された回収溶剤と純水との懸濁液を所定時間の間、放置することで沈殿化させると、回収タンク内では比重に応じて溶剤と、酸や有機成分を含む水とが分離するので、制御部がポンプを作動させた後、比重計の計測値が変動したことに基づきポンプを停止させると、比重が重い溶剤だけを油水分離フィルタに供給できる。
【0012】
また、本発明において、前記油水分離フィルタの底部と前記バッファタンクの上部とを連通接続する配管と、前記配管に設けられた開閉弁と、前記油水分離フィルタの底部から所定高さ位置に設けられた比重計と、前記開閉弁を開放した後、前記比重計の計測値が変動したことに基づき前記開閉弁を閉止する制御部と、を備えていることが好ましい(請求項5)。油水分離フィルタは比重に応じて成分を重力分離する。したがって、制御部が開閉弁を開放した後、比重計の計測値が変動したことに基づき開閉弁を閉止すると、比重が重い溶剤だけをバッファタンクに供給できる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、溶剤に含まれている純水成分を除去する溶剤再生方法において、基板の処理に使用した溶剤を回収溶剤として回収タンクに回収する過程と、回収溶剤と純水との懸濁液を回収タンク内に生成する過程と、回収タンク内の懸濁液を沈静化させる過程と、比重が相違する溶剤成分だけを一次調整溶剤として回収タンクから油水分離フィルタに供給する過程と、油水分離フィルタで分離された溶剤成分だけを二次調整溶剤としてバッファタンクに貯留する過程と、バッファタンクから二次調整溶剤を供給され、二次調整溶剤から純水成分を吸着フィルタで吸着除去する過程と、吸着フィルタで濾過された溶剤成分を再生溶剤として貯留タンクに貯留する過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、回収タンク内の回収溶剤に純水を供給し、回収溶剤と純水との懸濁液を生成する。この回収溶剤と純水との懸濁化により、溶剤よりも純水に溶けやすい酸や有機成分などが溶剤から引き出されて溶剤から分離するので、回収溶剤と純水との懸濁液を沈静化させると、比重に応じて酸や有機成分などと溶剤成分とが分離する。したがって、この溶剤成分だけを一次調整溶剤として油水分離フィルタに通し、残っている純水等を除去して、二次調整溶剤としてバッファタンクに貯留する。そして、二次調整溶剤を吸着フィルタに通して貯留タンクに溶剤成分を貯留するが、吸着フィルタにダメージを与える酸や有機成分が既に充分に除去されているので、吸着フィルタの破過寿命が短くなるのを防止できる。
【0015】
また、本発明において、前記懸濁液を生成する過程は、回収タンクに純水を供給するとともに、回収タンクの外部を通して回収溶剤と純水とを循環させる過程であることが好ましい(請求項7)。
【0016】
また、本発明において、前記懸濁液を沈静化させる過程は、回収溶剤と純水との循環を停止して所定時間にわたって放置する過程であることが好ましい(請求項8)。
【0017】
また、本発明において、前記懸濁液を生成する過程は、回収タンクに純水を供給するとともに、回収タンク内の回収溶剤と純水とを攪拌させる過程であることが好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る溶剤再生装置によれば、回収タンク内の回収溶剤に純水供給手段から純水を供給し、懸濁化手段により回収溶剤と純水との懸濁液を生成する。この回収溶剤と純水との懸濁化により、溶剤よりも純水に溶けやすい酸や有機成分などが溶剤から引き出されて溶剤から分離する。したがって、回収溶剤と純水との懸濁液を所定時間の間、放置することで沈静化させると、比重に応じて酸や有機成分などと溶剤成分とが分離するので、この溶剤成分だけを一次調整溶剤として油水分離フィルタに通し、残っている純水等を除去して、二次調整溶剤としてバッファタンクに貯留する。そして、二次調整溶剤を吸着フィルタに通して貯留タンクに溶剤成分を貯留するが、吸着フィルタにダメージを与える酸や有機成分が既に充分に除去されているので、吸着フィルタの破過寿命が短くなるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係る溶剤再生装置の概略構成を示す図である。
【図2】再生処理の動作を示すフローチャートである。
【図3】変形例に係る溶剤再生装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係る溶剤再生装置の概略構成を示す図である。
【0021】
溶剤再生装置1は、図示しない基板処理装置で使用した溶剤を回収して再生する機能を備えている。溶剤としては、例えば、少量のIPA(イソプロピルアルコール)とHFE(ハイドロフルオロエーテル)とを混合したものが挙げられる。その割合は、例えば、5%のIPAと、95%のHFEであるが、基板処理装置による乾燥等の処理によって、溶剤に純水や酸成分などが混入した状態となっている。そのような状態の溶剤を、以下の説明では「回収溶剤」と称する。溶剤再生装置1は、基板処理装置の貯留タンクに一端側が連通接続された回収配管3を備えている。回収配管3の他端側は、溶剤再生装置1の回収タンク5に連通接続されている。
【0022】
溶剤再生装置1は、基板処理装置に連通された回収配管3側から順に、上述した回収タンク5と、油水分離フィルタ7と、バッファタンク9と、吸着フィルタ11と、貯留タンク13とを備えている。
【0023】
回収タンク5は、純水供給源15に一端側が連通された純水供給管17の他端側が連通接続されている。この純水供給管17には、純水の流通及び遮断を制御する制御弁19が取り付けられている。回収タンク5の底部には、循環配管21の一端側が連通接続され、他端側が回収タンク5の上部に連通接続されている。循環配管21には、回収タンク5の底部から上部へと回収溶剤を圧送する循環ポンプ22が取り付けられている。また、回収タンク5の底面から所定の高さ位置には、比重計23が配置されている。この比重計23は、周囲の流体の比重が変動した際に信号を出力する。
【0024】
循環配管21には、分岐部24が設けられている。この分岐部24には、排水管25と配管27の一端側が連通接続されている。排水管25は、その他端側が排水部に連通接続されている。配管27は、その他端側が油水分離フィルタ7に連通接続されている。配管27は、後述する懸濁化後の比重が相違する成分(一次調整溶剤)を油水分離フィルタ7に送出する。循環配管21のうち分岐部24の下流側には制御弁29が取り付けられ、排水管25には制御弁31が取り付けられている。また配管27のうち分岐部24より下流側には制御弁33が取り付けられている。配管27は、制御弁33より下流側に、注入部35が設けられている。この注入部35には、一端側が純水供給源37に連通接続された注入管39の他端側が連通接続されている。また、注入管39には、純水の流通・遮断を制御する制御弁41が取り付けられている。
【0025】
油水分離フィルタ7は、配管27からの液体を濾過するフィルタ43と、フィルタ43を通過した液体のうち、比重が大きいものを貯留する第1貯留部45と、比重が小さいものを貯留する第2貯留部47と、第2貯留部47内の液体を排水部に排出する第1排出部49と、第2貯留部47内の液体(二次調整溶剤)を排出する第2排出部51とを備えている。また、油水分離フィルタ7の底部から所定の高さ位置に比重計53が取り付けられている。上述したフィルタ43は、微分散した遊離液を超極細繊維フィルタにより捕捉し、凝集して粗大化する機能を備え、ミクロンオーダに微分散した遊離液をミリメートルオーダに粗大化させて、比重差によって瞬時に完全二層系に分離する。なお、油水分離効率を向上させるために、油水分離フィルタ7の外壁に冷却パイプを付設してもよい。
【0026】
第2排出部51とバッファタンク9の上部とは、配管55によって連通接続されている。配管55には、液体の流通・遮断を制御する開閉弁57が取り付けられている。なお、重力により液体を移動させるので、第2排出部51よりも下方にバッファタンク9が配置されていることが好ましい。また、バッファタンク9内には、内部の液面レベルを検知するレベルセンサ59が取り付けられている。バッファタンク9の底部には、内部の液体を排出する排出部61が形成されている。
【0027】
バッファタンク9の排出部61は、配管63によって吸着フィルタ11に連通接続されている。吸着フィルタ11は、例えば、活性炭等で構成された第1のフィルタ65と、活性アルミナ等で構成された第2のフィルタ67との二段構成である。なお、吸着フィルタ11をいずれか一方のみの一段構成としてもよく、フィルタをモレキュラーシーブ(Molecular sieve)としてもよい。また、配管63は、バッファタンク9内の液体を圧送するポンプ69を備えている。
【0028】
吸着フィルタ11は、貯留タンク13の上部に対して配管71で連通接続されている。この配管71は、液体中のパーティクルを除去するフィルタ73が取り付けられている。貯留タンク13は、純水成分等が除去された再生溶剤を貯留するものである。貯留タンク13には、例えば、二つの補充配管75の一端側が連通接続され、それぞれの他端側が補充源77に連通接続されている。それぞれの補充配管75は、流量制御弁79が取り付けられている。例えば、一方の補充源77はIPAを貯留し、他方の補充源77はHFEを貯留している。また、貯留タンク13は、内部の液体濃度を検出する濃度計81が取り付けられているとともに、図示しない基板処理装置の貯留タンクに連通接続され、内部の液体を送出するための戻し配管83が取り付けられている。
【0029】
制御部85は、溶剤再生装置1の各部を統括的に制御する。具体的には、制御弁19,29,31,33,41及び開閉弁57の開閉操作、循環ポンプ22、ポンプ69の作動/非作動、比重計23,53の信号監視、レベルセンサ59の信号監視、濃度計81の濃度監視、流量制御弁79の流量制御等を行う。
【0030】
次に、上述した構成の溶剤再生装置1の動作について、図2を参照して説明する。なお、図2は、再生処理の動作を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1
基板処理装置において使用済みの溶剤を回収タンク5に回収溶剤として回収する。上述したように、ここでいう回収溶剤は、例えば、5%のIPA(イソプロピルアルコール)と、95%のHFE(ハイドロフルオロエーテル)とを混合したものであって、基板処理時にその組成比率が変動し、さらに純水成分や酸等を含んでいるものとする。また、制御弁19,29,31,33,41及び開閉弁57、流量制御弁79は閉止された状態であり、循環ポンプ22とポンプ69は停止されているものとする。
【0032】
ステップS2
制御部85は、制御弁19を開放して、所定量の純水を回収タンク5に供給して、回収溶剤に純水を混合させる。
【0033】
ステップS3〜S5
制御部85は、制御弁19を閉止するとともに、制御弁29を開放し、さらに循環ポンプ22を所定時間の間だけ作動させる(ステップS3)。これにより、純水と回収溶剤が循環配管21と回収タンク5を通って循環するので、水溶性のIPAや酸等が非水溶性のHFEから純水によって引き出され、分散系を形成して懸濁液となる。そして、所定時間の循環の後(ステップS4)、循環ポンプ22を停止する(ステップS5)。
【0034】
ステップS6
制御部85は、循環ポンプ22を停止するとともに制御弁29を閉止した後、図示しないタイマで計時を開始する。そして、所定時間(例えば、数分〜数十分)の間、放置する。すると、回収溶剤と純水との懸濁液が比重に応じて重力分離される。具体的には、最も比重が大きいHFE(約1.5)が回収タンク5の最下層に滞留し、その上に、純水(1.0)とIPA(約0.8)の混合液が滞留することになる。但し、完全に重力分離できるわけではなく、ある程度の純水やIPA、酸等がHFEには残留している。
【0035】
ステップS7〜S9
制御部85は、制御弁33を開放するとともに、循環ポンプ22を作動させる(ステップS7)。これにより、回収タンク5の底部に貯留している、主としてHFEからなる溶剤を一次調整溶剤として油水分離フィルタ7に送り出す。制御部85は、比重計23の出力を監視し(ステップS8)、その信号が変動した際に循環ポンプ22を停止する(ステップS9)。上述したように、回収タンク5内には、比重差によって層状に各種液体が滞留しているので、比重計23の出力信号に変動があったということは、異なる比重の液体が滞留している層が低下してきたことを示すからである。これにより、主としてHFEからなる溶剤だけを油水分離フィルタ7に送液することができる。その後、以下の処理に移行するのと並行して、制御弁33を閉止するとともに制御弁31を開放し、循環ポンプ22を作動させて、回収タンク5に残った液体(有機成分や酸等)を排出する。
【0036】
なお、循環ポンプ22で油水分離フィルタ7に一次調整溶剤を圧送する際に、制御部85が制御弁41を開放して、注入部35から一定量の純水を注入することが好ましい。これは、純水を混合しておくことにより、油水分離フィルタ7における純水等の除去性能が向上するからである。また、注入部35の下流側にスタティックミキサを取り付けておくことがより好ましい。なお、スタティックミキサは、駆動部がなく、流体を分解・転換・反転の作用によって順次に攪拌混合するものである。これにより、大半が非水溶性となっている一次調整溶剤と純水とを混合してから油水分離フィルタ7で処理するので、非水溶性である一次調整溶剤に残留している純水を、混合した純水で引き出すことができ、油水分離フィルタ7における純水の除去能力を向上できる。
【0037】
ステップS10
油水分離フィルタ7では、供給された一次調整溶剤がフィルタ43でHFEと純水等の成分とが分離され、一次調整溶剤のうち比重が大きいHFEが第1貯留部45に滞留し、比重が小さい純水等が第2貯留部47を介して第1排出部49から排出される。この処理により、一次調整溶剤に残留している純水や酸等の大半が除去される。
【0038】
ステップS11〜S13
制御部85は、開閉弁57を開放して、第1貯留部45に貯留している、僅かな純水等の成分が含まれているHFEを二次調整溶剤として、バッファタンク9に送液する(ステップS11)。なお、このとき制御部85は比重計53の出力を監視しており(ステップS12)、出力信号が変動した場合には開閉弁57を閉止する(ステップS13)。これにより、僅かな純水等の成分が残留しているHFE以外の液体がバッファタンク9に送液されるのを防止できる。
【0039】
ステップS14〜S17
制御部85は、ポンプ69を作動させてバッファタンク9内の二次調整溶剤を吸着フィルタ11に圧送する(ステップS14)。レベルセンサ59が作動(ステップS16)した場合には、バッファタンク9内の二次調整溶剤がほぼ全て圧送されたと判断して、ポンプ69を停止する(ステップS17)。吸着フィルタ11では、第1のフィルタ65と第2のフィルタ67によって二次調整溶剤に残留している極微量の純水等も吸着除去される(ステップS15)。
【0040】
ステップS18
これにより、貯留タンク13には、IPAや純水等が除去されたHFEが再生溶剤として貯留することになるが、基板の処理に使用する溶剤には、IPAが一定量含まれている。そこで、制御部85は、濃度計81を参照しつつ、流量制御弁79を操作してIPAが一定濃度となるように補充源77からIPAを補充する。また、揮発によりHFEも目減りしているので、必要に応じて流量制御弁79を操作して補充源77からHFEを補充する。
【0041】
なお、上記ステップS18は、基板処理装置の貯留タンクで実施するようにしてもよい。
【0042】
上述したように、本実施例によると、回収タンク5内の回収溶剤に純水を供給した後に回収溶剤と純水との懸濁液を生成する。この回収溶剤と純水との懸濁化により、溶剤よりも純水に溶けやすい酸や有機成分などが溶剤から引き出されて溶剤から分離する。したがって、回収溶剤と純水との懸濁液を所定時間の間、放置することで沈静化させると、比重に応じて酸や有機成分などと溶剤成分とが分離するので、この溶剤成分だけを一次調整溶剤として油水分離フィルタ7に通し、残っている純水等を除去して、二次調整溶剤としてバッファタンク9に貯留する。そして、二次調整溶剤を吸着フィルタ11に通して貯留タンク13に溶剤成分を貯留するが、吸着フィルタ11にダメージを与える酸や有機成分が既に充分に除去されているので、吸着フィルタ11の破過寿命が短くなるのを防止することができる。
【0043】
また、循環ポンプ22を作動させて回収溶剤と純水とを循環配管21を通して循環させるだけで、回収溶剤と純水とを懸濁化することができる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0045】
(1)上述した実施例では、懸濁化手段として循環配管21と循環ポンプ22を備えているが、例えば、図3に示すように構成してもよい。なお、図3は、変形例に係る溶剤再生装置の要部を示す図である。
【0046】
この変形例は、上述した実施例に加えて、回収タンク5内の回収溶剤を攪拌する攪拌プロペラ91と、攪拌プロペラ91を先端側に備えた回転軸93と、回転軸93を基端部側で回転駆動するモータ95とからなる攪拌手段を備えている。この構成によると、回収タンク5内の回収溶剤と純水とを攪拌プロペラ91によっても直接的に攪拌するので、より効率的に回収溶剤と純水との懸濁化を図ることができる。なお、循環による懸濁化手段と併用せず、攪拌手段だけを懸濁化手段として備えるようにしてもよい。
【0047】
(2)上述した実施例では、回収タンク5に直接的に純水を供給する構成としているが、循環配管21にて純水を注入する構成を採用してもよい。これにより循環中に純水を混合させやすくすることができる。
【0048】
(3)上述した実施例では、溶剤としてHFEとIPAの混合液を例にとって説明したが、本発明はこれらの溶剤に限定されるものではない。例えば、HFE以外のフッ素系溶剤としてHFC(ハイドロフルオロカーボン)を使用してもよい。
【0049】
(4)上述した実施例では、比重計23,53により送液時間を制御しているが、例えば、フロートスイッチのように、回収タンク75に貯留される比重が異なる液体の境界面位置を検出できるようなものであればよい。
【0050】
(5)上述した実施例では、比重計23,53により送液時間を制御しているが、例えば、回収溶剤の量と回収タンク5の容積、一次調整溶剤の量と油水分離フィルタ7の第1貯留部45の容積が分かっている場合には、時間で送液を制御するようにしてもよい。これにより比重計23,53を省略することができ、装置コストを低減することができる。
【0051】
(6)上述した実施例では、油水分離フィルタ7の第1排出部49から純水を排出して処分しているが、この純水を回収タンク5に戻すように構成してもよい。これにより純水の再利用ができ、純水供給源15における純水消費量を低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 … 溶剤再生装置
3 … 回収配管
5 … 回収タンク
7 … 油水分離フィルタ
9 … バッファタンク
11 … 吸着フィルタ
13 … 貯留タンク
22 … 循環ポンプ
23,53 … 比重計
19,29,31,33,41 … 制御弁
39 … 注入管
43 … フィルタ
45 … 第1貯留部
47 … 第2貯留部
49 … 第1排出部
51 … 第2排出部
81 … 濃度計
85 … 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤に含まれている純水成分を除去する溶剤再生装置において、
基板の処理に使用した溶剤を回収溶剤として貯留する回収タンクと、
回収溶剤に純水を供給する純水供給手段と、
回収溶剤と純水との懸濁液を生成する懸濁化手段と、
懸濁液から溶剤成分だけを一次調整溶剤として前記回収タンクから供給される油水分離フィルタと、
前記油水分離フィルタで分離された溶剤成分だけを二次調整溶剤として貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクから二次調整溶剤を供給され、二次調整溶剤から純水成分を吸着除去する吸着フィルタと、
前記吸着フィルタで濾過された溶剤成分を再生溶剤として貯留する貯留タンクと、
を備えていることを特徴とする溶剤再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶剤再生装置において、
前記懸濁化手段は、
前記回収タンク内の回収溶剤を、前記回収タンクの外部を通して循環させる循環配管と、
前記循環配管に設けられた循環ポンプと、
を備えていることを特徴とする溶剤再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の溶剤再生装置において、
前記懸濁化手段は、
前記回収タンク内の流体を攪拌する攪拌手段を備えていることを特徴とする溶剤再生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の溶剤再生装置において、
前記回収タンク内の底面から所定の高さ位置に設けられた比重計と、
前記回収タンクの底部と、前記油水分離フィルタとを連通接続する配管と、
前記配管に設けられたポンプと、
前記ポンプを作動させた後、前記比重計の計測値が変動したことに基づき前記ポンプを停止させる制御部と、
を備えていることを特徴とする溶剤再生装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の溶剤再生装置において、
前記油水分離フィルタの底部と前記バッファタンクの上部とを連通接続する配管と、
前記配管に設けられた開閉弁と、
前記油水分離フィルタの底部から所定高さ位置に設けられた比重計と、
前記開閉弁を開放した後、前記比重計の計測値が変動したことに基づき前記開閉弁を閉止する制御部と、
を備えていることを特徴とする溶剤再生装置。
【請求項6】
溶剤に含まれている純水成分を除去する溶剤再生方法において、
基板の処理に使用した溶剤を回収溶剤として回収タンクに回収する過程と、
回収溶剤と純水との懸濁液を回収タンク内に生成する過程と、
回収タンク内の懸濁液を沈静化させる過程と、
比重が相違する溶剤成分だけを一次調整溶剤として回収タンクから油水分離フィルタに供給する過程と、
油水分離フィルタで分離された溶剤成分だけを二次調整溶剤としてバッファタンクに貯留する過程と、
バッファタンクから二次調整溶剤を供給され、二次調整溶剤から純水成分を吸着フィルタで吸着除去する過程と、
吸着フィルタで濾過された溶剤成分を再生溶剤として貯留タンクに貯留する過程と、
を備えていることを特徴とする溶剤再生方法。
【請求項7】
請求項6に記載の溶剤再生方法において、
前記懸濁液を生成する過程は、回収タンクに純水を供給するとともに、回収タンクの外部を通して回収溶剤と純水とを循環させる過程であることを特徴とする溶剤再生用法。
【請求項8】
請求項7に記載の溶剤再生方法において、
前記懸濁液を沈静化させる過程は、回収溶剤と純水との循環を停止して所定時間にわたって放置する過程であることを特徴とする溶剤再生用法。
【請求項9】
請求項6に記載の溶剤再生方法において、
前記懸濁液を生成する過程は、回収タンクに純水を供給するとともに、回収タンク内の回収溶剤と純水とを攪拌させる過程であることを特徴とする溶剤再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−188322(P2010−188322A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38045(P2009−38045)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】