説明

溶媒含有顔料着色塗料組成物、および複層塗装系を製造するためのその使用、ならびに効果塗装系のフロップ値を向上させるための方法

本発明は、一次粒径が1〜800nmの少なくとも1つの無機粒子(N)と、少なくとも1つのバインダ(B)と、少なくとも1つの有色および/または効果顔料と、1つ以上の有機溶媒とを含み、無機粒子(N)が、無機粒子(N)の表面と相互作用することができる基(S1)、および1つ以上の疎水部構造を有する安定剤(S)で少なくとも部分的に改質された顔料着色塗料組成物であって、塗料が少なくとも1種の蝋または蝋様化合物(W)をさらに含むことを特徴とする顔料着色塗料組成物に関する。本発明は、また、複層塗装系を製造するための顔料着色塗料組成物、およびそれらの使用、ならびに顔料着色塗料組成物の使用を通じて複層塗装系のフロップ値を向上させるための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒系顔料着色塗料組成物に関し、複層塗装系を製造するためのそれらの使用に関する。
【0002】
本発明は、また、効果塗装系、特に複層塗装系のフロップ値を向上させる方法に関する。
【0003】
長年にわたって確立された溶媒系塗料材料、特に下塗材料、ならびにそれらを使用して製造された単一塗装もしくは複層塗装有色および/または効果塗装系は、非常に良好な性能特性を示す。
【0004】
しかし、市場の絶えず大きくなる技術的および美観的要求、ならびに特に自動車メーカーおよびそれらの顧客によって成される要求は、今日までに達成された技術的および美観的レベルを超えた絶え間ない前進的開発を必要としている。
【0005】
特に、とりわけ顕著な明/暗挙動(金属フロップ値)を示す下塗系を製造することを可能にする新しい塗料組成物を提供する必要がある。しかし、同時に、既知の下塗材料およびそれらから製造される下塗系によって達成される利点を失うべきでなく、少なくとも同程度に、好ましくはそれより高い程度に保持されるべきである。
【0006】
また、環境保護の理由により、溶媒含有量がさらに小さいため、固体含有量がさらに大きい塗料組成物を提供することが必要である。しかし、典型的には、溶媒含有量を小さくすると、特に、得られた塗装系の光学特性が低下し、特にフロップ値が低下する。
【0007】
したがって、文献には、フロップ値を向上させるために、固体含有量が増加したときに、アセト酪酸セルロース、および/またはアルミニウム顔料を固定する例えば蝋分散液などの添加剤を塗料組成物に添加することが推奨されている。しかし、これは、例えば研磨傷などの視覚的欠陥を出現させ得る。さらに、特に顕著な金属フロップ値を示す被覆を得るために、スプレー粘度で固体含有量の大きい塗料組成物が使用されるときは、際だって高量の蝋分散液を塗料組成物に添加する必要がある。しかし、これは、結果的に、泥割れと呼ばれるもの、換言すれば顔料着色下塗被膜における亀裂の形成をもたらす。
【0008】
米国特許第4,522,958号には、固体含有量が大きく、粒径が1〜150nmの無機粒子を含む溶媒系下塗材料が開示されている。これらの無機粒子は、化学結合された炭素含有分子で表面が改質されることによって、無機粒子が実質的に疎水性および有機親和性になる。特に、粒子がアルコール媒体に分散された有機ゾルが利用される。しかし、粒子に有機溶媒との相溶性を付与するために酸化ケイ素の表面がアルキルクロロシランで改質された無機粒子も開示されている。顔料着色塗料組成物において、これらの改質無機粒子は、得られた被覆の光沢性または貯蔵安定性を損なうことなく、金属効果の向上をもたらすと米国特許第4,522,958号に記載されている。
【0009】
改質無機粒子に加えて、米国特許第4,522,958号に開示されている塗料組成物は、典型的なバインダ、場合により架橋剤、有機溶媒、顔料および典型的な補助剤、ならびに触媒、流量調節剤、界面活性物質および微粒子等の添加剤を含むこともできる。
【0010】
しかし、米国特許第4,522,958号から公知の塗料組成物に伴う短所は、得られた被覆のフロップ値が十分であるが、ヘイズおよび平滑性が不十分であるか、またはヘイズが十分であるが、フロップ値が不十分であることである。さらに、米国特許第4,522,958号から公知の塗料組成物は、改善の必要がある透明被覆への接着性をしばしば有する。最後に、フロップ値を向上させるのに必要とされる多量の無機粒子を使用すると、概して、塗料組成物が貯蔵された後に、それらの粘度が増加し、それは、必要なスプレー粘度を設定するために、さらなる溶媒を添加すること、すなわち厳密には避けるべきであると考えられていたことが必要になることを意味する。
【0011】
また、米国特許第4,677,004号、米国特許第5,652,470号および米国特許第4,680,204号には、固体含有量が大きく、粒径が1〜150nmの無機粒子を含む溶媒系下塗材料が開示されている。これらの無機粒子は、場合により、被膜形成樹脂または溶媒との相溶性を向上させるために、表面改質されてもよい。その目的のために、粒子は、アルコール媒体またはポリアルコールに分散され、無機粒子の表面の少なくとも一部が、このアルコールまたはポリアルコールで改質される。無機粒子を添加した結果として、得られた下塗材料は、特に、非水平面上のたるみ挙動の向上とともに、透明被覆による初期溶解(内攻)に対する抵抗性の向上を示す。さらに、無機粒子の添加は、金属効果を向上させると記載されている。
【0012】
しかし、米国特許第4,677,004号、米国特許第5,652,470号および米国特許第4,680,204号から公知のこれらの下塗材料は、貯蔵安定性が不十分であり、ゲル斑点の形成をしばしば示す。さらに、得られた被覆は、十分なフロップ値と不十分なヘイズおよび平滑性、または十分なヘイズと不十分なフロップ値を併せもつ。
【0013】
また、欧州特許出願第1204701(B)号には、耐引掻性が向上しており、少なくとも1つの界面活性剤および多数の粒子を含む硬化被覆であって、被覆の表面領域内の粒子の濃度が粒子の1つの容量領域内の粒子の濃度より大きい硬化被覆が開示されている。それらの被覆は、顔料着色されてもよい。しかし、欧州特許出願第1204701(B)号には、顔料着色被覆の金属フロップ値をどのように向上させることができるかが記載されていない。
【0014】
最後に、ドイツ特許出願第10129899号には、バインダおよび顔料とともに、必須の構成要素として、他の構成要素に対して実質的に不活性であり、平均粒径が1.0〜10.0μmであり、それらの粒子の密度が0.8〜3.6gcm-3である少なくとも1つの無色透明または不透明な粉末を含み、結果として、曇りが有意に低減されていることを特徴とする被覆をもたらす溶媒系顔料着色塗料組成物が開示されている。
【0015】
しかし、ドイツ特許出願第10129899号に開示されているこれらの塗料組成物は、環境の観点でますます望ましくない決定的に高い比率の溶媒を有する。得られた被覆の金属フロップ値を向上させることも必要である。
【0016】
ドイツ特許出願第10129899には、下塗に、同時に、非常に良好な全体的な視覚的外観を持たせ、例えば、後続の透明被覆上の下塗における亀裂などの被膜欠陥をなくしながら、下塗の金属フロップ値をどのようにして向上させることができるかということに関する情報が含まれていない。
【0017】
ドイツ特許出願第10129899に開示されている塗料組成物は、添加剤として、一次粒径が50nm未満であるナノ粒子、特に親水性ナノ粒子をさらに含むことができる。しかし、ナノ粒子を改質しなければならないかどうか、またはそれらを使用する目的は何かということに関する詳細は、ドイツ特許出願第10129899に記載されていない。
【0018】
したがって、本発明の基礎となる課題は、特に顕著な明/暗挙動(金属フロップ値)を示す下塗の製造を可能にする顔料着色塗料組成物を提供するという課題である。これは、特に、スプレー粘度で比較的大きい固体含有量を有する塗料組成物の場合でも確保されるべきである。しかし、同時に、既知の下塗材料およびそれらから製造される下塗によって達成される利点を失うべきでなく、むしろ少なくとも同程度に、好ましくはそれより高い程度に保持されるべきである。
【0019】
したがって、対応する有色および/または効果下塗は、特に、良好なヘイズ、すなわちヘイズ0、効果的な平滑性、および非常に良好な全体的な視覚的外観を有するべきである。また、下塗は、亀裂(泥割れ)、明/暗陰影(曇り)およびゲル斑点などの被膜欠陥がないものでなければならない。さらに、得られた被覆は、例えば研磨傷などの光学的欠陥を示してはならず、透明被覆に対する十分な接着性をすべきである。
【0020】
加えて、塗料組成物は、効果的な貯蔵安定性を示すべきである。すなわち、塗料組成物を40℃で28日間貯蔵する際に、塗料組成物の特性もこれらの貯蔵された塗料組成物から製造された被覆の特性も顕著に低下してはならない。したがって、塗料組成物の流動学的特性の低下、特に粘度の増加も、ゲル斑点の形成もあってはならず、フロップ値が損なわれてはならない。
【0021】
最後に、該方法は、効果塗装系、特に複層塗装系の金属フロップ値の向上のために利用できなければならない。
【0022】
この目的は、驚いたことに、
(N)粒径が1〜800nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは4〜100nmの1つ以上の無機粒子(N)と、
(B)1つ以上のバインダ(B)と、
(D)1つ以上の顔料と、
(E)1つ以上の有機溶媒(E)と、
(V)場合により1つ以上の架橋剤(V)を含む顔料着色塗料組成物(P)であって、
無機粒子(N)は、
無機粒子(N)の表面と相互作用しうる少なくとも1つの基(S1)、および
1つ以上の疎水性部分構造を有する安定剤(S)で少なくとも部分的に改質され、
塗料組成物(P)は、少なくとも1種の蝋および/または少なくとも1つの蝋様化合物(W)をさらに含む顔料着色塗料組成物(P)によって達成される。
【0023】
本発明は、これらの顔料着色塗料組成物を使用して塗装系を製造するための方法、および塗装系の使用をさらに提供する。
【0024】
最後に、本発明は、また、効果的な塗装系、特に複層塗装系の金属フロップ値を向上させる方法を提供する。
【0025】
(I)安定剤(S)で少なくとも部分的に改質された1つ以上の無機粒子(N)と、(II)少なくとも1種の蝋および/または少なくとも1つの蝋様化合物(W)との組合せの本発明の使用を通じて、スプレー粘度で大きな固体含有量を有していても、既知の下塗材料、およびそれらから製造された下塗によって達成される利点を失わずに、むしろこれらの利点を同程度に、好ましくはより高い程度に保持しながら非常に良好なフロップ値を示す顔料着色塗料組成物を提供することが可能になることは、驚くべきことであり、予測不可能なことであった。
【0026】
したがって、本発明の複層塗装系は、また、良好なヘイズ、すなわちヘイズ0、効果的な平滑性および非常に良好な全体的な視覚的外観を有する。また、下塗は、亀裂(泥割れ)、明/暗陰影(曇り)およびゲル斑点などの被膜欠陥がなく、研磨傷を示さない。
【0027】
さらに、それらの塗料組成物は、良好な貯蔵安定性を有し、すなわち、40℃で28時間貯蔵した際に、塗料組成物の特性もこれらの貯蔵された塗料組成物から製造された被覆の特性も有意に低下しない。特に、それらは、塗料組成物の流動学的特性の低下を示さず、得られた被覆のフロップ値が損なわれない。
【0028】
最後に、本発明の複層塗装系は、典型的には自動車用被覆に課される要件を満たす。すなわち、特に、必要な透明被覆接着性を示す。
【0029】
顔料着色塗料組成物(P)
無機粒子(N)
顔料着色塗料組成物は、本発明に必須の構成要素として、粒径が1〜800nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは4〜100nmの1つ以上の無機粒子(N)を含む。この粒径は、概して、塗料組成物(P)に含められる前の分散粒子(N)の粒径を指す。
【0030】
この無機粒子(N)は、好ましくは、一次粒径が3〜200nm、特に3〜30nmである。
【0031】
本発明の塗料組成物に使用される無機粒子(N)は、特に、塗料組成物の明度に影響を与えないように、典型的には無色である。
【0032】
無機粒子(N)は、個別の粒子として存在してもよいし、または凝集物の形で存在してもよいが、個別の粒子を使用するのが好適である。特に、無機粒子(N)は、顔料着色塗料組成物の所望の使用を確保するために、とりわけ、顔料着色塗料組成物へ容易かつ安定的に含めることが可能である必要がある。したがって、無機粒子(N)は、比較的長時間(例えば、自動車仕上げの分野では、30℃までの温度で貯蔵されるときは12ヶ月までの期間)にわたって安定的に分散状態を維持する必要があり、さもなければ例えば撹拌機の利用などの従来の顔料混合手段により容易に再分散可能である必要がある。
【0033】
密度が0.8〜4.5gcm-3の無機粒子(N)を使用することが好ましい。
【0034】
無機粒子(N)は、典型的には、主族および遷移族の金属の化合物、好ましくは、元素周期表の主族3〜5、遷移族3〜6、また遷移族1および2の金属、またランタニドの化合物、特に、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、珪素、バリウム、ゲルマニウム、錫、砒素、アンチモン、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、モリブデン、タングステンおよびセリウム、とりわけアルミニウム、珪素、バリウム、銀、セリウム、チタンおよびジルコニウムの化合物の群から選択される。
【0035】
それらの金属の化合物は、好ましくは、酸化物、水酸化物、硫酸塩およびリン酸塩である。
【0036】
好適な無機粒子(N)は、好ましくは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ならびに遷移金属、好ましくはモリブデンおよびタングステンのポリ酸およびヘテロポリ酸を主成分とする親水性および疎水性、とりわけ親水性の粒子からなる群から選択される。酸化ケイ素および/または酸化アルミニウム、特にヒュームドまたはコロイダル酸化ケイ素を主成分とする粒子を使用することが特に好ましい。
【0037】
それらの凝集物および凝集体が、酸水素炎における四塩化珪素の火炎加水分解によって連鎖構造を有する親水性ヒュームド酸化ケイ素を使用することが極めて好ましい。これらの酸化ケイ素は、例えば、商品名Aerosil(登録商標)でDegussaによって販売されている。
【0038】
しかし、ゾル、特に有機ゾルも無機粒子(N)として有用である。この種のゾルは、例えば、米国特許第4,522,958号、第7欄26行目〜第11欄14行目に記載されている。ここでは、無機粒子がin situで形成され、それらの形成の最中および/または後に安定剤(S)で改質された、酸化ケイ素を主成分とするゾルが望ましいものとして特に挙げられている。当業者に周知の複数の異なる技術を利用してそれらの粒子を製造することができる。
【0039】
本発明によれば、無機粒子(N)がペーストの形態で含められると有利である。使用されるペースト樹脂または分散樹脂が、本発明の塗料材料に存在する以下に記載のバインダ(B)であれば、さらなる利点が得られる。粒子(N)のためのペースト樹脂または分散樹脂として、特に、顔料を分散させるのにも使用される同じ樹脂が利用される。
【0040】
粒子(N)は、それぞれ、顔料着色塗料組成物の全質量、および安定剤(S)を除く成分(N)の固体含有量に対して、好ましくは0.2質量%〜2.0質量%、より好ましくは0.5質量%〜1.5質量%の量で使用される。
【0041】
安定剤(S)
無機粒子(N)は、無機粒子(N)の表面と相互作用しうる少なくとも1つの基(S1)、および1つ以上の疎水性部分構造を含む安定剤(S)で少なくとも部分的に改質されることが本発明にとって不可欠である。
【0042】
安定剤(S)は、基(S1)によって無機粒子(N)と相互作用しうる。この文脈において、安定剤は、物理的な力によってのみ無機粒子と相互作用しうるが、基(S1)と、典型的には無機粒子の表面に位置する官能基との間に化学反応が少なくとも一部に生じうる。したがって、特に、親水性無機粒子は、化学的のみならず、例えば水素結合などを介して物理的にも基(S1)と相互作用しうるヒドロキシル基を(例えば、SiO2型の場合はSiOH基の形で)それらの表面に有する。
【0043】
安定剤(S1)の基(S1)は、好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基もしくはスルホネート基、または窒素含有親水性基、あるいはそれらの組合せの群から選択される。特に好適な安定剤(S)は、ヒドロキシル基ばかりでなく、カルボキシル基を含むものである。また、ヒドロキシル基ばかりでなく、カルボキシル基およびエーテル基を含む安定剤(S)が特に好ましい。使用される安定剤(S)は、特に、それぞれ、安定剤(S)の固体に対して、10〜150mgKOH/gのヒドロキシル価および2〜50mgKOH/gの酸価を有するものである。
【0044】
また、安定剤(S)は、1つ以上の疎水性部分構造をも有することが本発明にとって不可欠である。これらの疎水性基は、塗料組成物の有機構成要素、特に、溶媒、バインダおよび化合物(W)と相互作用することができる。
【0045】
したがって、安定剤(S)は、特に、疎水性部分構造を含む1つ以上の有機基(R1)を含むことができる。さらに、1つまたは複数の有機基(R1)は、場合により、親水性部分構造を有してもよく、かつ/または基(S1)は、少なくとも部分的または完全にこれらの有機基(R1)に結合されてもよい。
【0046】
安定剤(S)の疎水性部分構造は、少なくとも一部に、アルキル基またはアルケニル基、特に、5〜50個のC原子を有するアルキル基またはアルケニル基の群から選択されるのが好ましい。
【0047】
使用する特に好適な疎水性部分構造は、飽和および/または不飽和脂肪酸の基、特に、例えば、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリル酸、オレイン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、リノール酸、リシネン酸、リシノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、αエレオステアリン酸、αリカン酸、αパリナリン酸、リシノール酸およびイサノール酸、ならびにこれらの脂肪酸の混合物、および/または前記脂肪酸の対応するヒドロキシ酸あるいはそれらの混合物などの、分子中に5〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和脂肪酸の基である。
【0048】
ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリル酸、リノール酸またはそれらの混合物の基を含む安定剤を使用することが極めて好ましい。
【0049】
また、二量体および三量体脂肪酸、およびそれらの混合物の対応する基、ならびに二量体および/または三量体脂肪酸と記載の脂肪酸との対応する混合物の基も好適である。
【0050】
安定剤(S)として、前記(ヒドロキシ)脂肪酸/二量体脂肪酸/三量体脂肪酸のエステル、特にポリアルキレングリコールとのエステル、より好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびそれらの混合物などの、6〜20個のC原子を有するポリアルキレングリコールとのエステルを使用することが極めて好ましい。ここでは特に、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシステアリン酸とトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールとのエステル、およびこれらのヒドロキシル化合物の混合物、これらのエステルの混合物、ならびにそれらのエステルとそれらの酸との混合物を挙げることができる。
【0051】
好適な安定剤(S)の例としては、それらが必要な構造を有していることを条件として、対応する商業的に通例の化合物も挙げられる。それらの好適な例としては、Avecia GmbHからSolsperse(登録商標)という名称で市販されているもの、特にSolsperse(登録商標)39000、Th.GoldschmidtからのDispers(登録商標)、特にDispers(登録商標)652、およびDegussaからの対応する添加剤が挙げられる。
【0052】
安定剤(S)は、それぞれ、使用する粒子(N)の質量に対して、またそれぞれ、安定剤(S)および粒子(N)の固体含有量に対して、典型的には、3.0質量%〜40.0質量%、特に5.0質量%〜20.0質量%、極めて好ましくは8.0質量%〜12.0質量%の量で使用される。
【0053】
無機粒子(N)を安定剤(S)で改質することによって提供される保証の1つは、40℃で28時間貯蔵しても、塗料組成物の特性もこれらの貯蔵された塗料組成物から製造された被覆の特性も有意に低下しないことである。特に、塗料組成物の流動学的特性が低下せず、得られた被覆のフロップ値も損なわれない。
【0054】
化合物(W)
顔料着色塗料組成物は、1種または複数種の蝋および/または蝋様化合物(W)をさらに含むことが本発明にとって不可欠である。
【0055】
本発明に関連して、「蝋」および「蝋様化合物」という用語は、以下の特性を有するすべての天然および合成物質を指す。
1.20℃で混練可能、頑丈または脆くて堅い。
2.粗い結晶または微細結晶、透明または不透明であるが、ガラス状でない。
3.40℃を超える温度で分解せずに溶融する。
4.融点を少し上回る温度においても比較的低粘度である。
5.軟度および溶解度の温度依存性が極めて大きい。
6.緩やかな圧力の下で研磨可能。
【0056】
物質がこれらの特性のうちの2つ以上を示すことができなければ、それは、本発明の目的の「蝋」でなくなる(Ullmanns Enzyklpaedie der technischen Chemie;4th、revised and expanded edition;Verlag Chemie;Weinheim;Deerfield Beach,Florida;Basle,1983,page 3参照)。
【0057】
蝋または蝋様化合物(W)は、改質されていてもよく、かつ/または未改質であってもよい。既知のすべての典型的な蝋が本質的に好適であるが、合成蝋を使用するのが好適である。
【0058】
天然蝋の例は、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、エスパルト蝋、グアルマ蝋、ジャパン蝋、コルク蝋、モンタン蝋、オウリキュリー蝋、米胚芽油蝋、サトウキビ蝋などの植物蝋、蜜蝋、尾腺油、羊毛蝋、セラック蝋、鯨蝋などの動物蝋、セレシンおよびオゾケライトなどの鉱物蝋である。
【0059】
化学的に改質された蝋の例は、水素化ホホバ蝋、モンタンエステル蝋およびサゾール蝋である。
【0060】
例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン蝋、ポリエチレングリコール蝋ならびにポリアミド蝋などの改質および非改質ポリオレフィン蝋も好適である。また、蝋と同様に、有機溶媒への溶解度において顕著な温度依存性を示すポリアクリレートポリマーおよびポリアクリレートコポリマーも好適である。
【0061】
蝋、またはポリアクリレートポリマーおよびポリアクリレートコポリマーは、一般的には、300〜20000、好ましくは1000〜10000の数平均分子量を有し、好ましくは70〜180℃の滴点を有する。
【0062】
ポリエチレン蝋およびポリプロピレン蝋は、飽和または不飽和モノカルボン酸またはそれらのアミドもしくはエステルを起源とする典型的には0.5質量%〜40質量%のコモノマー単位を有する単独ポリマーまたはコポリマーである。当該コモノマー単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリルアミド、ステアリン酸もしくはステアラミド、または酢酸ビニルの基が挙げられる。ポリオレフィン蝋は、多様な商品名で市販されている。
【0063】
好適なポリアミド蝋としては、塗料組成物に典型的に使用されるすべてのポリアミド蝋が挙げられ、例えば、Disparlonの名称で市販されている脂肪酸含有ポリアミド蝋である。
【0064】
ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどの蝋様ポリシロキサン、またはポリエステル改質、ポリエーテル改質およびアクリレート改質シリコーンなどの改質シロキサンも好適である。
【0065】
化合物(W)は、それぞれ顔料着色塗料組成物の全質量、およびこの成分(W)のセルロース含有量に対して、好ましくは、0.2質量%〜2.0質量%、より好ましくは0.5質量%〜1.5質量%の量で使用される。
【0066】
無機粒子(N)に蝋および/または蝋様化合物(W)を加えた全量が、それぞれ、顔料着色塗料組成物の全量、ならびにこの成分(W)および安定剤の除く粒子(N)の固体含有量に対して、0.4質量%〜4.0質量%、より好ましくは1.0質量%〜3.0質量%になるような量で粒子(N)および化合物(W)が使用される場合に、有益な顔料着色塗料組成物が得られる。
【0067】
有利には、無機粒子(N)に蝋および/または蝋様化合物(W)を加えた全量が、顔料着色顔料の量から金属顔料の量を引いた量に合わせて調整される。フロップ値は、概して、顔料着色顔料含有量が低下するに従って重要になるため、塗料組成物(P)が顔料着色顔料を含有する程度が小さいほど、無機粒子(N)に蝋および/または蝋様化合物(W)を加えた全量が多くなる。金属または効果顔料を含有しない塗料組成物(P)の場合は、その場合に特定の安定化効果を有する無機粒子(N)と蝋および/または蝋様化合物(W)との発明の組合せが同様に利用されるが、ここでは概して、無機粒子(N)に蝋および/または蝋様化合物(W)を加えた全量がより少なくても十分である。
【0068】
顔料
塗料組成物(P)は、少なくとも1つの顔料をさらに含む。顔料は、好ましくは、有機および無機有色顔料、効果顔料、有色および効果顔料、磁気遮蔽顔料、導電性顔料、防食顔料、蛍光顔料ならびに燐光顔料からなる群から選択される。有色および/または効果顔料を使用することが好ましい。
【0069】
特に好ましくは、顔料着色塗料組成物は、少なくとも1つの効果顔料、特に少なくとも1つの金属片顔料を含む。1つ以上の効果顔料とともに、顔料着色塗料組成物は、場合により、少なくとも1つ以上の有色顔料を含む。
【0070】
有色性であってもよい好適な効果顔料の例は、商業的に通例のアルミニウム青銅およびステンレス鋼青銅などの金属片顔料、ならびに真珠箔顔料および干渉顔料などの非金属効果顔料、例えば、酸化鉄を主成分とするめっき成形効果顔料、または液晶効果顔料である。より詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1988,page 176,"Effect pigments",およびpages 380 and 381,"Metal oxide−micropigments"から"Metal pigments"を参照されたい。
【0071】
特に、商業的に通例のアルミニウム青銅が利用される。使用する型は、例えばEckartからStapa(登録商標)Metalluxの名称で市販されている未処理型、および処理型、特に、例えば国際特許出願第01/81483号に記載されており、例えばEckartからHydrolan(登録商標)の名称で市販されているシラン処理型の両方を含む。
【0072】
この文脈において、安定化無機粒子(N)および蝋または蝋様化合物(W)の組み合わせの発明の使用を通じて、固体含有量が大きくても、かつ特殊なアルミニウム顔料を使用しなくても、換言すれば、標準型を使用したときでも非常に良好なフロップ値を有する被覆を実現することが可能であることが有利である。
【0073】
金属片顔料は、好ましくは、200〜2000nm、特に500〜1500nmの厚さを有する。
【0074】
金属片顔料は、好ましくは、10〜50μm、特に13〜26μmの平均粒径を有する。
【0075】
好適な有機および/または無機有色顔料は、典型的には塗料工業で使用される顔料である。対応する染料を利用することもできる。
【0076】
塗料組成物(P)の顔料含有量は、極めて広く変動してもよく、主として、設定される色の濃さおよび/または効果の強度によって、また塗料組成物(P)中の顔料の分散性によって支配される。固体の有色上塗の場合は、それぞれ塗料組成物(P)の固体含有量に対する顔料含有量は、好ましくは0.5質量%〜70質量%、より好ましくは1.0質量%〜60質量%である。金属塗料材料の場合は、顔料含有量は、それぞれ塗料組成物(P)の固体含有量に対して、好ましくは0.5質量%〜40質量%、より好ましくは0.5質量%〜35質量%、特に好ましくは1質量%〜30質量%である。
【0077】
化合物(W)の量に対する無機粒子(N)の量
特に良好な特性のプロファイルを有する顔料着色塗料組成物は、安定剤(S)を除く無機粒子(N)と、化合物(W)との質量比が、それぞれこれらの成分(N)および(W)の固体含有量に対して、30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜60:40、極めて好ましくは50:50である場合に得られる。
【0078】
特に、例えば銀色の場合のように、塗料組成物が低量の顔料着色性顔料を含む場合は、研磨傷になる傾向に対して有益であるため、選択される無機粒子(N)の比率が有利により高い。同様に、特に、塗料組成物が高量の顔料着色性顔料を含むときは、選択される蝋または蝋様化合物(W)の比率がより高くなる。
【0079】
バインダ(B)
本発明の塗料組成物(P)は、物理的に硬化してもよい。
【0080】
本発明の目的では、「物理的硬化」という用語は、バインダのポリマー分子の環化を介して被覆内の結合が生じることによる塗料組成物からの溶媒の損失の結果としての被膜形成による塗料組成物の層の硬化を指す(該用語に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1988,"Binders",pages 73 and 74参照)。あるいは、被膜形成は、バインダ粒子の凝集によって生じる(Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thiem Verlag、Stuttgart、New York、1988、「Curing」、pages 274 and 275参照)。典型的には、この目的に架橋剤は必要とされない。物理的硬化を場合により、雰囲気酸素、加熱、または化学線への曝露によって適宜アシストすることができる。
【0081】
本発明の塗料組成物は、熱硬化性であってもよい。その場合、それは、自己架橋してもよいし、あるいは外因的に架橋してもよい。
【0082】
本発明の目的では、「自己架橋」という用語は、それ自体と架橋反応するバインダの能力を示す。このための前提条件は、バインダが、架橋に必要な両種類の相補的反応性官能基を既に含むか、あるいはバインダが、「それら自体と」反応しうる反応性官能基を含むことである。外因的架橋塗料組成物は、対照的に、相補的反応性官能基の一方の種類がバインダに存在し、他の種類が架橋剤に存在する塗料組成物である。より詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1988,"Curing",pages 274 to 276、特にpages 275,下部を参照されたい。
【0083】
好適なバインダ(B)は、典型的には、自動車工業部門における下塗材料に使用されるバインダであり、これらのバインダを製造するのに使用される合成成分の性質および量の選択は、それらの特性、つまりはバインダの本発明の塗料組成物に対する適性を制御するために、当業者が周知の方法で用いられる。
【0084】
一方では、チオール基、ヒドロキシル基、N−メチロールアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、イミノ基、カルバメート基、アロファネート基および/またはカルボキシル基、好ましくはヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むバインダ(B)を使用し、他方では、無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、ブロック化イソシアネート基、ウレタン基、メチロール基、メチロールエーテル基、シロキサン基、カルボネート基、アミノ基、ヒドロキシル基および/またはβ−ヒドロキシアルキルアミド基、好ましくはエポキシ基、β−ヒドロキシアルキルアミド基、ブロック化および非ブロック化イソシアネート基、ウレタン基またはアルコキシメチルアミノ基を含む架橋剤(V)を使用することが好適である。
【0085】
本発明の自己架橋塗料材料の場合は、バインダは、特に、メチロール基、メチロールエーテル基および/またはN−アルコキシ−メチルアミノ基を含む。
【0086】
本発明の塗料材料に使用するのに特に好適な相補的反応性官能基は、一方ではヒドロキシル基であり、他方では、ブロック化もしくは非ブロック化イソシアネート基、ウレタン基またはアルコキシメチルアミノ基である。
【0087】
上記反応性官能基に対するバインダ(B)の機能は、極めて広く変動してもよく、特に、それぞれ、目標の架橋密度および/または使用される架橋剤(V)の機能によって支配される。例えば、ヒドロキシル含有バインダ(B)の場合は、OH価は、好ましくは15〜300mgKOH/g、より好ましくは20〜250mgKOH/g、特に好ましくは25〜200mgKOH/g、極めて好ましくは30〜150mgKOH/g、特に35〜120mgKOH/gである。さらに、好ましくは、バインダは、5〜50mgKOH/g、特に15〜35mgKOH/gの酸価を有する。
【0088】
上記相補的官能基を慣例および既知のポリマー化学の方法に従ってバインダ(B)に含めることができる。例えば、対応する反応性官能基を担持するモノマーを含めることによって、かつ/またはポリマー類似反応によってこれを実施することができる。
【0089】
好適なバインダ(B)は、一般的には、400〜5000g/molの数平均分子量を有する。
【0090】
バインダ(B)は、好ましくは、それぞれ、塗料組成物(P)の固体含有量およびバインダ(B)の固体に対して15質量%〜60質量%、特に20質量%〜40質量%の量で使用される。
【0091】
好適なバインダ(B)の例としては、エチレン性不飽和モノマーのランダム、交互および/またはブロック直鎖状および/または分枝状および/または櫛状(コ)ポリマー、あるいは重付加樹脂および/または重縮合樹脂が挙げられる。これらの用語の詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1988,page 457,"Polyaddition"および"Polyaddition resins(polyadducts)"およびpages463 and 464,"Polycondensates","Polycondensations",および"Polycondensation resins"およびpages 73 and 74,"Binders"を参照されたい。
【0092】
好適な(コ)ポリマー(B)の例は、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは部分鹸化ポリビニルエーテルであり、特に(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0093】
好適な重付加樹脂および/または重縮合樹脂(B)の例は、ポリエステル、アルキド、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、ポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタンまたはポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタンであり、特にポリエステルである。
【0094】
これらのバインダ(B)のうち、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーおよびポリウレタン、特に(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、特別の利点を有するため、特に好ましく使用される。
【0095】
好適なポリエステル樹脂は、飽和または不飽和、特に飽和ポリエステル樹脂であってもよく、例えば、欧州特許出願第787159(B)号、第4頁26行目〜53行目に記載されている。
【0096】
反応性官能基を含むオレフィン性不飽和モノマーを、場合により、反応性官能基を含まないモノマーと併用して、当業者に周知の方法によって、好適なアクリレート樹脂(B)を製造することができる。
【0097】
反応性官能基を含む好適なオレフィン性不飽和モノマーの例は、
m1)
− 酸でエステル化されたアルキレングリコールに由来する、またはα‐、β−オレフィン性不飽和カルボン酸と酸化エチレンもしくは酸化プロピレンなどの酸化アルキレンとを反応させることによって得られるアクリル酸、メタクリル酸または別のα−、β−オレフィン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、特に、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸または2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの、ヒドロキシアルキル基が20個までの炭素原子を含むイタコン酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル;あるいは1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノー1H−インデンジメタノールまたはモノアクリル酸メチルプロパンジオール、モノメタクリル酸、モノエタクリル酸、モノクロトン酸、モノマレイン酸、モノフマル酸またはモノイタコン酸などのモノアクリル酸ヒドロキシシクロアルキルエステル;例えばε−カプロラクトンなどの環式エステルとこれらのヒドロキシアルキルまたはヒドロキシシクロアルキルとの反応生成物;
− アリルアルコールなどのオレフィン性不飽和アルコール;
− トリメチロールプロパンモノアリルもしくはジアリルエーテル、またはペンタエリスリトールモノアリル、ジアリルもしくはトリアリルエーテルなどのポリオール;
− アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1分子当たり5〜18個のC原子を有するα分枝状モノカルボン酸、特にVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応生成物、あるいは反応生成物の代わりに、重合反応の最中または後に、1分子当たり5〜18個のC原子を有するα分枝状モノカルボン酸、特にVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルと反応する1当量のアクリル酸および/またはメタクリル酸;
− アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、アリルアミンまたはアクリル酸N−メチルイミノエチル;
− アクリル酸もしくはメタクリル酸N,N−ジ(メトキシメチル)アミノエチル、またはアクリル酸もしくはメタクリル酸N,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピル;
− (メタ)アクリルアミド、N−メチル−、N−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−および/またはN,N−ジ(エトキシエチル)−(メタ)−アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;
− カルバミン酸またはアロファン酸アクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシ−エチル、−プロピルまたは−ブチル(カルバメート基を含む好適なモノマーの例は、米国特許第3,479,328号、米国特許第3,674,838号、米国特許第4,126,747号、米国特許第4,279,833号または米国特許第4,340,497号の特許に記載されている)などの、1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ−メチルアミノ基、カルバメート基、アロファネート基またはイミノ基を担持するモノマー;
m2)
− アクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸;
− オレフィン性不飽和スルホン酸もしくはホスホン酸またはそれらの部分エステル;
− マレイン酸、コハク酸またはフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル;
− ビニル安息香酸(すべての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(すべての異性体)またはビニルベンゼンスルホン酸(すべての異性体)などの、1分子当たり少なくとも1つの酸基を担持するモノマー;
m3)アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のグリシジルエステル、またはアリルグリシジルエーテルなどの、エポキシド基を含むモノマーである。
【0098】
上記の種類のより高次の多官能モノマーは、一般的には、少ない量で使用される。本発明の目的では、より高次の多官能モノマーの少ない量は、コポリマー(B)、特にメタ(アクリレート)コポリマー(B)の架橋またはゲル化をもたらさない量を指す。
【0099】
反応性官能基を含まない好適なオレフィン性不飽和モノマー(m4)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸または別のα−、β−オレフィン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、およびこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0100】
ポリウレタン樹脂もバインダとして好適である。ポリウレタン樹脂は、
−好ましくは400〜5000の数平均分子量を有するポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールと、
−少なくとも1つのポリイソシアネートと、
−場合により、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基および少なくとも1つの(潜在的に)アニオン性の基を分子中に含む少なくとも1つの化合物と、
−場合により、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基を含む少なくとも1つのさらなる化合物と、
−場合により、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を分子中に含む、60〜600ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1つの化合物を反応させることによって、当業者に周知の方法で得られる。
【0101】
この種のポリウレタン樹脂は、例えば、欧州特許出願第228003(B)号および欧州特許出願第574417(B)号に記載されている。
【0102】
この種のポリウレタン樹脂は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,4−もしくは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−もしくは1,3−もしくは1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−もしくは2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、DDI1410という名称でHenkelが販売している種類の二量体脂肪酸から誘導されるジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルヘプタンもしくは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、あるいはこれらのポリイソシアネートの混合物、好ましくはテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)および/またはイソホロンジイソシアネート、好ましくはイソホロンジイソシアネートなどの、典型的には塗料工業部門において使用するイソシアネートをイソシアネート成分として使用することによって得られる。
【0103】
ヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する連鎖延長剤としては、トリメチロールプロパンおよびジエタノールアミンを使用するのが好適である。
【0104】
顔料着色塗料組成物における好適なバインダは、記載したポリウレタン樹脂と一緒に、またはそれらの代わりに、ポリウレタン樹脂の存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合することによって、当業者に周知の方法で得られるアクリル化ポリウレタン樹脂として公知のものをも含む。この文脈において、二重結合を有さないポリウレタン樹脂および/または二重結合を有するポリウレタン樹脂を使用することが可能である。
【0105】
バインダ(B)として、ペンダントおよび/または末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂、特に、ペンダントおよび/または末端エテニルアリーレン基を有するアクリル化ポリウレタン樹脂を使用することも可能である。
【0106】
少なくとも1つの遊離イソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマー(I−1)と、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合および1つのNCO反応基、特にヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物(I−2)とを反応させることによって、ペンダントおよび/または末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0107】
少なくとも1つのNCO反応基、特に少なくとも1つのヒドロキシル基または1つのアミノ基を含むポリウレタンプレポリマー(II−1)と、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合および1つの遊離イソシアネート基を有する化合物(II−2)とを反応させることによって、ペンダントおよび/または末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂を得ることもできる。
【0108】
ペンダントおよび/または末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂の存在下で、オレフィン性不飽和モノマーを重合することによって得られるグラフトコポリマーもバインダ(B)として使用される。
【0109】
特に、少なくとも1つの共重合オレフィン性不飽和モノマーの疎水性コア、および少なくとも1つの親水性アクリル化ポリウレタンの親水性シェルを含むグラフトコポリマーが利用される。しかし、少なくとも1つの疎水性アクリル化ポリウレタンの疎水性コア、および少なくとも1つの共重合オレフィン性不飽和モノマーの親水性シェルを含むグラフトコポリマーも好適である。
【0110】
好適なアクリル化ポリウレタン樹脂、およびそれらから製造されるグラフトコポリマーは、例えば、国際特許出願第01/25307号、第5頁14行目〜第45頁4行目および欧州特許出願第787159(B)号、第2頁27行目〜第7頁13行目に記載されている。
【0111】
記載のポリウレタン樹脂を、場合により、1つ以上のポリアクリレート樹脂および/または1つ以上のポリエステル樹脂と併用することができる。
【0112】
ポリマー微小粒子
ポリマー微小粒子も本発明の塗料組成物(P)に有利に使用される。好適なポリマー微小粒子は、例えば、欧州特許出願第480959(A)号、第3頁36行目〜第4頁35行目、ならびに国際特許出願第96/24619号、国際特許出願第99/42529号、欧州特許出願第1173491(B)号、欧州特許出願第1185568(B)号、国際特許出願第03/089487号、国際特許出願第03/089477号、国際特許出願第01/72909号および国際特許出願第99/42531号に記載されている。ポリマー微小粒子を使用して、特に、流量、蒸発挙動、および透明被覆による初期溶解に対する傾向を制御することができる。
【0113】
好適なポリマー微小粒子は、典型的には、2000〜100000の数平均分子量を有する。
【0114】
好適なポリマー微小粒子は、また、典型的には0.01〜10μm、特に0.01〜5μm、極めて好ましくは0.02〜2μmの平均粒径を有する。
【0115】
特に好ましく使用されるポリマー微小粒子は、架橋剤の官能基と反応しうる反応性官能基を含む。特に、ポリマー微小粒子は、ヒドロキシル基を有する。この場合のポリマー微小粒子は、好ましくは、5〜150mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル基を含むポリマー微小粒子は、例えば、国際特許出願第01/72909号に記載されている。
【0116】
架橋ポリマー微小粒子は、例えば、
(a)1分子当たり1つのエチレン性不飽和基を含むエチレン性不飽和モノマー、または当該モノマーの混合物と、
(b)1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含むエチレン性不飽和モノマー、または当該モノマーの混合物と
の混合物を、場合により乳化剤の存在下で、または場合により担体樹脂の存在下で水相において重合し、次いでこのようにして得られた水性ポリマー微小粒子分散物を有機溶媒または有機溶媒の混合物に移すことによって得られる。
【0117】
イオン性および/または極性基、好ましくはヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含む成分を使用して製造されたポリマー微小粒子が好ましい。成分(a)および(b)は、概して、1質量%〜20質量%、好ましくは3質量%〜15質量%のイオン性および/または極性基を含むべきである。
【0118】
十分に架橋したポリマー微小粒子を得るために、一般的には、成分(a)1モル当たり0.25〜1.2mol、好ましくは0.3〜1molの成分(b)を使用するのが十分である。
【0119】
あるいは、本発明の塗料組成物(P)に使用されるポリマー微小粒子(M)を有機相において直接製造することができる。
【0120】
好ましく使用されるポリマー微小粒子は、例えば、
(c)1分子当たり少なくとも1つの反応基(G1)を含むエチレン性不飽和モノマー(mi)、または当該モノマー(mi)の混合物と、
(d)場合により、1分子当たり少なくとも1つの(G1)でない反応基(G2)を含むエチレン性不飽和モノマー(mii)、または当該モノマー(mii)の混合物と、
(e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー(miii)、または当該モノマー(miii)の混合物と
の混合物を、場合により担持体樹脂の存在下で有機溶媒において重合することによって得られる。
【0121】
好適なモノマー(mi)の例は、ヒドロキシル基、カルバメート基、アミノ基、アルコキシメチルアミノ基、アロファネート基またはイミノ基、特にヒドロキシル基を含むモノマーである。
【0122】
一方の化合物(a)が反応基(a)および少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含み、他方の化合物(b)が、基(a)との反応性を有する基(b)を含み、場合により、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含む2つの化合物を反応させることによって、反応基(G1)を含むモノマー(mi)を製造することもできる。
【0123】
好適なモノマー(mii)は、例えば、カルボキシル基を含むモノマーである。
【0124】
好適なモノマー(miii)は、典型的に使用されるいわゆる中性モノマー、換言すれば、反応基を含まないエチレン性不飽和モノマーである。
【0125】
好適なモノマー(mi)〜(miii)の例は、バインダの説明に関連して既に挙げたモノマー(m1)〜(m3)である。
【0126】
本発明の塗料組成物において、ポリマー微小粒子(M)は、典型的には、それぞれ塗料組成物(P)の固体含有量、およびポリマー微小粒子(M)の固体含有量に対して3質量%〜25質量%、特に10質量%〜20質量%の量で使用される。
【0127】
特に好適な塗料組成物(P)は、塗料組成物が無機粒子(N)、蝋または蝋様化合物(W)およびポリマー微小粒子(M)を、
それぞれ、塗料組成物(P)の固体含有量、安定剤(S)を含まない成分(N)の固体含有量、蝋または蝋様化合物(W)の固体含有量およびポリマー微小粒子(M)の固体含有量に対して、
(I)無機粒子(N)に蝋または蝋様化合物(W)を加えた量と、
(II)ポリマー微小粒子(M)の量と
の比が1.0:1.0〜1.0:6.0、より好ましくは1.0:2.0〜1.0:4.0になるような量で含む場合に得られる。
【0128】
有機溶媒(E)
塗料組成物(P)における溶媒(E)の量は、それぞれ塗料組成物(P)の全質量に対して、一般的には、30質量%〜70質量%、好ましくは38質量%〜65質量%である。
【0129】
(I)安定剤(S)で少なくとも部分的に改質された少なくとも1つの無機粒子(N)と(II)少なくとも1種の蝋および/または少なくとも1つの蝋様化合物(W)との発明の組合せを通じて、驚いたことに、スプレー粘度においても明らかに大きな固体含有量を有し、良好な特性、特に良好なフロップ値を有する被覆をもたらす顔料着色被覆が得られる。
【0130】
したがって、好適な顔料着色塗料組成物(P)は、23℃における粘度がフォード3カップによる流下時間で16s〜35s、好ましくは18s〜25sであり、固体含有量が少なくとも35質量%である。本明細書では、これを一般的に「スプレー粘度」と呼ぶ。
【0131】
好適な溶媒(E)は、塗料工業において典型的に使用されるすべての溶媒であり、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、3−ブトキシ−2−プロパノール、エトキシプロピオン酸エチル、ブチルグリコール、酢酸ブチルグリコール、ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グリコール酸ブチル、キシレン、トルエン、Shellsol(登録商標)T、パイン油90/95、Solventnaphtha(登録商標)、Shellsol(登録商標)A、Solvessoおよびベンジン135/180等のアルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステルおよびケトン、脂肪族および/または芳香族炭化水素である。
【0132】
架橋剤(V)
塗料組成物(P)における架橋剤(V)の量は、それぞれ塗料組成物(P)の固体含有量および架橋剤(V)の固形分に対して、一般的には60質量%まで、特に11.5質量%〜60質量%、好ましくは20質量%〜50質量%である。
【0133】
顔料着色塗料組成物は、適切な場合に使用される架橋剤として、遊離イソシアネートもしくはブロック化イソシアネートおよび/またはアミノ樹脂を含有することができる。
【0134】
この文脈における好適なイソシアネートは、基本的に、バインダ(B)として好適なポリウレタン樹脂の説明に関連して明記され、塗料工業部門で典型的に使用されるイソシアネート、好ましくはTACTおよびジメチルピラゾールブロック化三量体ヘキサメチレンジイソシアネート、および2成分塗料組成物の場合は三量体ヘキサメチレンジイソシアネートを包括する。
【0135】
好適なブロッキング剤としては、対応するアルコール、アミン、ケトン、ピラゾール等などの典型的に使用されるすべてのブロッキング剤、好ましくは、脱ブロッキング温度が130℃未満であるブロッキング剤が挙げられる。
【0136】
基本的には、塗料工業部門において典型的に使用されるアミノ樹脂が好適であり、アミノ樹脂の反応性によって顔料着色塗料組成物の特性を制御することが可能である。メタノール−および/またはブタノール−エーテル化アミノ樹脂が好ましく、例は、Cymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)およびLuwipal(登録商標)の名称で市販されている製品、特にMaprenal(登録商標)MF900およびResimene(登録商標)755である。
【0137】
さらなる補助剤および添加剤(Z)
塗料組成物(P)は、上記の成分に加えて、慣例および既知の補助剤および添加剤(Z)を慣例の量、好ましくは、塗料組成物(P)の全質量に対して0質量%〜40質量%、特に0.5質量%〜30質量%の量で含有することができる。好適な補助剤および添加剤の例は、タルクなどの有機および無機充填剤、および/または硬化触媒、光安定剤、酸化防止剤、脱蔵剤、湿潤剤、乳化剤、滑剤、重合防止剤、反応性希釈剤、流れ調整剤、難燃剤、接着促進剤、腐食防止剤、流動助剤、乾燥剤および殺生剤等のさらなる慣例の補助剤および添加剤である。
【0138】
発明の複層塗装系
透明塗料組成物(K)
例えば、1成分塗料組成物として、または2成分もしくは多成分塗料組成物として配合できる、典型的に使用される水性または溶媒系透明塗料組成物などの、典型的に使用されるすべての透明塗料組成物が、発明の複層塗装系を製造するのに好適である。また、粉末状スラリー透明塗料材料も好適である。使用される透明塗料組成物は、熱かつ/または放射線によって、特にUV放射線によって硬化可能であってもよい。
【0139】
透明塗料組成物は、典型的には、官能基を有する少なくとも1つのバインダ、およびバインダの官能基に対して相補的な官能基を有する少なくとも1つの架橋剤を含む。当該相補的な官能基の例は、特に、カルボキシル/エポキシ、アミンまたはチオールまたはヒドロキシル/ブロック化もしくは遊離イソシアネートまたはアルコキシ化アミノ基またはエステル交換可能基、(メタ)アクリロイル/CH−酸またはアミンまたはヒドロキシルまたはチオール、カルバメート/アルコキシ化アミノ基および(メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイルである。
【0140】
好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、カルバメート基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基および/またはチオール基を対応する架橋剤と組み合わせて、特にイソシアネート、アミノ樹脂および無水物と組み合わせて有する、ポリウレタン樹脂および/またはポリアクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂を主成分とする透明塗料組成物が特に利用される。
【0141】
透明塗料組成物は、バインダおよび架橋剤に加えて、例えば、文献"Lack−additive"[Additives for coatings] by Johan Bieleman,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1988に詳細に記載されている架橋触媒、脱泡剤、接着促進剤、基材湿潤性を向上させるための添加剤、表面平滑性を向上させるための添加剤、艶消剤、光安定剤、好ましくは370nm未満に最大吸収を有する上記のUV吸収剤および/またはHALS、腐食防止剤、殺生剤、難燃剤あるいは重合防止剤などの典型的な補助剤および添加剤を含む。
【0142】
塗装系を製造するための方法
本発明の塗装系、特に複層塗装系を任意の所望の基材に塗布することができる。基材は、非常に多様な材料および材料の組合せのいずれかから構成されていてもよい。好ましくは、それらは、金属、プラスチック、ガラス、木材、革、織物、セラミックまたは天然石、好ましくは、金属、プラスチックおよびガラス、特に金属およびプラスチックで構成されている。
【0143】
基材は、典型的には、電気塗装、浸漬、ナイフコーティング、吹付またはロール塗り等の慣例の方法で塗布されるプライマーおよび場合によりサーフェーサーを担持する。好ましくは、プライマーは、顔料着色塗料組成物が塗布される前に少なくとも部分的または完全に硬化される。プライマーおよびサーフェーサーの硬化は、典型的には、3〜30分間にわたって80〜170℃の温度に加熱することによって生じる。
【0144】
場合により塗布される透明塗料組成物(K)は、顔料着色塗料組成物(P)と同様に、浸漬、ナイフコーティング、吹付またはロール塗り等の、液体塗料組成物を塗布する典型的な方法によって、特に吹付によって塗布される。例えば、圧縮空気吹付、無気吹付、高速回転、静電吹付(ESTA)などの吹付塗布方法を単独で、または例えば熱風吹付などの高温吹付塗布と併用して使用することが好ましい。顔料着色塗料組成物をESTAによる第1の塗布および空圧による第2の塗布で塗布することも可能である。
【0145】
透明塗料組成物(K)が塗布される場合には、顔料着色塗料組成物は、簡潔にフラッシュオフされるか、または一般的には1〜15分間にわたって30℃〜100℃未満の温度で簡潔に乾燥される。その後、透明塗料組成物が塗布される。
【0146】
塗布された顔料着色被膜、および望ましい場合、透明被膜は一緒に熱硬化される。透明塗料組成物(K)が化学線によっても硬化可能である場合には、化学線に曝露することによって後硬化が行われる。
【0147】
硬化は、一定の静止時間後に行われてもよい。これは、30秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間、特に1〜45分の持続時間を有することができる。静止時間は、例えば、塗料層の流動および脱ガス、または揮発性構成要素の蒸発に向けられる。静止時間は、例えば早発的な完全架橋などのダメージまたは変化を塗料層に生じさせないことを条件として、90℃までの高温を加えることによって、かつ/または空気湿度を空気1kg当たり水分10g未満に低下させることによってアシストおよび/または短縮されてもよい。
【0148】
硬化は、典型的には、15分〜90分の時間にわたって90〜160℃の温度で行われる。
【0149】
湿性の顔料着色被覆、および場合により湿性の透明被覆の乾燥および/または調湿には、熱的方法および/または対流方法を用いるのが好適であり、貫通型加熱炉、放射NIRおよびIRヒータ、ファンおよび吹込トンネルなどの慣例および既知の装置を使用することが可能である。これらの装置を互いに組み合わせることもできる。
【0150】
本発明の複層塗装系において、顔料着色被覆は、一般的に3〜40μm、好ましくは5〜30μm、特に7〜20μmの乾燥膜厚を有し、透明被覆(K)は、存在する場合は、一般的に10〜120μm、好ましくは30〜80μm、特に40〜70μmの乾燥膜厚を有する。
【0151】
複層塗装系の使用
本発明の塗装系、特に複層塗装系は、特に、自動車の量産仕上げの分野に使用されるが、具体的には電動車両の車体または内部もしくは外部の車体構造部品を塗装するための商用車両および自動車の修復仕上げの分野にも使用される。しかし、それらは、船舶建造物および航空機建造物のための部品の塗装、家庭用具および電気器具またはそれらの部品の塗装、成形品またはフィルムの塗装、建物の内装および外装の塗装、家具、窓および扉の塗装、小さな工業部品の塗装、コイルの塗装、容器および包装材の塗装、光学部品、電気部品および機械部品の塗装、ならびに日常生活用の製品の塗装などの他の部門にも好適である。
【0152】
効果複層塗装系のフロップ値を向上させる方法
本発明は、また、
I.溶媒系顔料着色塗料組成物(P)を基材に塗布し、
II.I)において塗布された塗料組成物から被膜を形成し、
III.場合により、I)から形成された被膜に透明塗料組成物を塗布し、
IV.塗布された顔料着色塗料組成物および場合により、透明塗料組成物を個別に、または一緒に焼成して、基材上に硬化被膜を設ける、効果複層塗装系のフロップ値を向上させる方法であって、
顔料着色塗料組成物は、1〜800nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは4〜100nmの粒径を有する1つ以上の無機粒子(N)を含み、無機粒子(N)は、無機粒子(N)の表面と相互作用しうる少なくとも1つの基(S1)、および1つ以上の有機疎水性部分構造を有する安定剤(S)で少なくとも部分的に改質され、
塗料組成物は、少なくとも1種の蝋および/または1つの蝋様化合物(W)をさらに含む方法を提供する。
【0153】
得られた本発明の効果被覆および有色効果被覆、特に本発明の複層塗装系は、それぞれX−Rite社の式:
FLX-Rite=2.69(L*15°−L*110°1.11/(L*45°0.86
に従って計算されたフロップ値指数FLX-Riteが、好ましくは、8を超え、より好ましくは10を超える。
【0154】
実施例
1.1.アクリレートバインダ(B)の製造
反応器に13.239質量部のSolvesso100を充填し、この初期充填物を167℃(333°F)に加熱する。反応器を0.35バール(5psi)の圧力下に配置し、2.149質量部のアクリル酸、10.765質量部のアクリル酸ヒドロキシエチル、11.484質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル、11.484質量部のアクリル酸ブチルおよび14.353質量部のスチレンからなるモノマー混合物、ならびに0.719質量部の過酸化ジ−tert−ブチルおよび11.120質量部の過酸化ジクミルのSolvesso100溶液(50%濃度)で構成される開始剤混合物を同時に4時間にわたって供給する。続いて、反応混合物を上記温度および圧力に1時間維持して21.530質量部のε−カプロラクトンを1時間にわたって添加する。反応混合物を150℃(302°F)まで冷却し、0.35バール(5psi)の圧力に1.5時間保持する。それを冷却し、Solvesso100で固形分75%に調整する。得られたアクリレート樹脂は、それぞれ固形分に対して、23mgKOH/gの酸価および73mgKOH/gのOH価を有する。
【0155】
1.2.担持体樹脂1の製造
反応器に5.762質量部のキシレン、5.762質量部のトルエンおよび0.179質量部のメタンスルホン酸を充填し、この初期充填物を104℃に加熱する。次いで、80.615質量部の12−ヒドロキシステアリン酸を反応器に流し込み、反応器を還流下で171℃にて煮沸し、反応の水を除去する。反応は、35の酸価が達成されたときに終了する。冷却後、溶媒ナフサで固形分を80質量部に調整する。
【0156】
1.3.ポリマー微小粒子(M)の製造
反応器に43.16質量部の溶媒ナフサ、0.08質量部のN,N−ジメチルココサミンおよび1.00質量部の酢酸エチルを充填し、この初期充填物を104℃に加熱する。反応器を0.69バール(10psi)の圧力下に配置し、27.63質量部のメタクリル酸メチル、3.85質量部のメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、0.83質量部のメタクリル酸グリシジル、12.81質量部の上記担持体樹脂(1)、1.51質量部のメタクリル酸および1.52質量部のオクチルメルカプタンからなるモノマー混合物、ならびに2.28質量部のtert−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエートおよび5.13質量部の溶媒ナフサで構成される開始剤混合物を同時に2時間にわたって供給する。続いて、反応混合物を上記温度および圧力に3時間保持してから、冷却し、溶媒ナフサで固形分41%に調整する。得られたポリマー微小粒子は、それぞれ固形分に対して、10mgKOH/gの酸価および48mgKOH/gのOH価を有する。
【0157】
1.4.安定化無機粒子(N)の製造
受け器の中で、10.00質量部の1.1に記載のアクリレートバインダ(B)と、6.00質量部のDegussa Aerosil(登録商標)380(比表面積(BET)が380m2/gであり、平均一次粒径が7nmであり、SiO2含有量が、焼成物質に対して99.8質量%以上であるDegussa AGからの市販の親水性ヒュームド酸化ケイ素)と、41.7質量部の溶媒ナフサと、41.7質量部の酢酸ブチルと、それぞれ130℃の固体含有量に対して、2時間130℃における非揮発分が96.2%であり、OH価が50mgKOH/gであり、酸価が17.2mgKOH/gであり、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、ラウリン酸およびポリエチレングリコールを含有する0.6質量部の脂肪酸エステル安定剤(S)(例として、Th.Goldschmidtからの市販の脂肪酸エステル系湿潤添加剤Solsperse(登録商標)39000)とを混合し、分散させる。
【0158】
1.5.蝋分散液(W)の製造
BASF AGからの6.00質量部のポリエチレン蝋EVA1(融点が87〜92℃であり、ウベローデ滴点が約95℃であり、質量平均分子量(粘度測定)が約6500g/molである、エチレン/酢酸ビニルコポリマーを主成分とする市販のポリエチレン蝋)および40.00質量部のキシレンを100℃でゆっくり撹拌しながら溶解させる。さらに撹拌しながら、この溶液を70℃まで冷却し、54.00質量部の酢酸ブチル(工業用、純度約85%)を徐々に添加し、所望の蝋の析出を開始させる。さらに撹拌しながら、分散液を35℃までさらに冷却する。
【0159】
1.6.アルミニウム効果顔料のペーストの製造
平均粒径が14μmである40質量部の1ドル銀貨型の市販のノンリーフィーングアルミニウム効果顔料ペースト(EckartからのMetallux2192)、45質量部の酢酸ブチルグリコールおよび15質量部の1.1に記載のアクリレートバインダ(B)から、撹拌しながら、ペーストを製造する。
【0160】
1.7.非安定化無機粒子(NC)の製造(比較)
受け器の中で、10.00質量部の1.1に記載のアクリレートバインダ(B)と、6.00質量部のDegussa Aerosil(登録商標)380(比表面積(BET)が380m2/gであり、平均一次粒径が7nmであり、SiO2含有量が、焼成物質に対して99.8質量%以上であるDegussa AGからの市販の親水性ヒュームド酸化ケイ素)と、41.7質量部の溶媒ナフサと、41.7質量部の酢酸ブチルとを混合し、分散させる。
【0161】
2.1.金属下塗材料P1の製造
以下の構成要素を記載の順に混合し、得られた混合物を均質化することによって本発明の下塗材料P1を製造した。
【0162】
19質量部の1.5に記載の蝋分散物
18質量部の1.3に記載のポリマー微小粒子(M)
15.0質量部の1.4に記載の安定化無機粒子(N)
11.0質量部の1.1に記載のバインダ(B)
13.2質量部の市販のモノマーヘキサメトキシメチルメラミン樹脂(Surface Specialities Germany GmbH & Co.KGからの製品Maprenal(登録商標)MF900)
23℃における粘度が150〜280mPa.s(円錐/平板、剪断速度25s-1)であり、活性物質の含有量が70%である、シリコーンが添加されていないアミン樹脂改質アクリルコポリマーを主成分とする0.5質量部の市販の湿潤添加剤(Cytec Surface Specialitiesからの製品Additol XL480)
ドデシルベンゼンスルホン酸を主成分とする1.5質量部の市販の酸性アミン中性化触媒(King Industries Speciality Chemicalsからの製品Nacure(登録商標)5225)
18質量部の1.6に記載のアルミニウム効果顔料ペースト
3.8質量部のブタノール
下塗材料P1は、塗装が容易であり、フォードカップ3による粘度が23秒であり、固体含有量(1時間、120℃)が39.8%である。
【0163】
2.2.金属下塗材料PV1の製造(比較)
以下の構成要素を記載の順に混合し、得られた混合物を均質化することによって発明外の下塗材料PV1を製造した。
【0164】
32質量部の1.5に記載の蝋分散液
18質量部の1.3に記載のポリマー微小粒子(M)
13.0質量部の1.1に記載のバインダ(B)
13.2質量部の市販のモノマーヘキサメトキシメチルメラミン樹脂(Surface Specialities Germany GmbH & Co.KGからの製品Maprenal(登録商標)MF900)
23℃における粘度が150〜280mPa.s(円錐/平板、剪断速度25s-1)であり、活性物質の含有量が70%である、シリコーンが添加されていないアミン樹脂改質アクリルコポリマーを主成分とする0.5質量部の市販の湿潤添加剤(Cytec Surface Specialitiesからの製品Additol XL480)
ドデシルベンゼンスルホン酸を主成分とする1.5質量部の市販の酸性アミン中性化触媒(King Industries Speciality Chemicalsからの製品Nacure(登録商標)5225)
18質量部の1.6に記載のアルミニウム効果顔料ペースト
3.8質量部のブタノール
下塗材料PV1は、塗装が容易であり、フォードカップ3による粘度が20秒であり、固体含有量(1時間、120℃)が42.3%である。
【0165】
2.3.金属下塗材料PV2の製造(比較)
以下の構成要素を記載の順に混合し、得られた混合物を均質化することによって発明外の下塗材料PV2を製造した。
【0166】
26質量部の1.3に記載のポリマー微小粒子(M)
11質量部の1.4に記載の安定化無機粒子(N)
15.0質量部の1.1に記載のバインダ(B)
15.0質量部の市販のモノマーヘキサメトキシメチルメラミン樹脂(Surface Specialities Germany GmbH & Co.KGからの製品Maprenal(登録商標)MF900)
23℃における粘度が150〜280mPa.s(円錐/平板、剪断速度25s-1)であり、活性物質の含有量が70%である、シリコーンが添加されていないアミン樹脂改質アクリルコポリマーを主成分とする0.5質量部の市販の湿潤添加剤(Cytec Surface Specialitiesからの製品Additol XL480)
ドデシルベンゼンスルホン酸を主成分とする1.5質量部の市販の酸性アミン中性化触媒(King Industries Speciality Chemicalsからの製品Nacure(登録商標)5225)
18質量部の1.6に記載のアルミニウム効果顔料ペースト
3.8質量部のブタノール
下塗材料PV2は、塗装が容易であり、フォードカップ3による粘度が21秒であり、固体含有量(1時間、120℃)が40.9%である。
【0167】
2.4.金属下塗材料PV3の製造(比較)
15.0質量部の1.4に記載の安定化粒子(N)の代わりに、15.0質量部の1.7に記載の非安定化粒子(NC)を使用したことを唯一の相違点として、下塗材料P1と同様にして発明外の下塗材料PV3を製造した。下塗材料PV3は、塗装が容易であり、フォードカップ3による粘度が23秒であり、固体含有量(1時間、120℃)が39.6%である。
【0168】
2.5.金属下塗材料P1、PV1、PV2およびPV3の試験
金属下塗材料P1、PV1、PV2およびPV3を40℃の温度で1週間貯蔵し、貯蔵前後に、23℃におけるフォードカップ3による流下粘度を測定することによって、これらの下塗材料の貯蔵安定性を測定した。それらの結果を第1表に示す。
【0169】
第1表 40℃の温度で1週間貯蔵した前後の金属下塗材料P1、PV1、PV2およびPV3の粘度
【表1】

【0170】
3.1.複層塗装系1、V1、V2およびV3の製造
下塗材料P1、PV1、PV2およびPV3の性能特性を試験するために、寸法が30×70cmの試験パネルを従来の方法で製造した。この目的のために、商業的に通例で既知の焼成された陰極析出電気塗装塗料(BASF Coatings AGからのCathoguard(登録商標)300)が塗布された鋼パネル(車体構造パネル)にBASF Coatings AGからの商業的に通例の従来のポリエステル系サーフェーサーを塗布した後、得られた表面または被膜を20℃および65%の相対湿度で5分間にわたってフラッシュオフし、通風加熱炉にて140℃で30分間焼成した。
【0171】
試験パネルを20℃まで冷却した後、下塗材料P1またはPV1またはPV2またはPV3を二重ESTA塗布によって18μmの乾燥膜厚で塗布した。続いて、下塗被膜を5分間にわたってフラッシュオフし、BASF Coatings AGからの市販の1成分透明塗料材料Uregloss(登録商標)を45μmの乾燥膜厚で上塗りした。その後、下塗被膜および透明塗料被膜を140℃で10分間焼成して、実施例1の発明の効果複層塗装系ならびに比較例V1、V2およびV3の発明外の複層塗装系を得た。
【0172】
3.2.得られた複層塗装系1、V1、V2およびV3の試験
X−Riteからのスペクトルフォトメータ(例えば、MA48 Multi−Angle Spectrophotometer)を使用して、複層塗装系1、V1、V2およびV3の測定を行った。2つの複層塗装系について、15°、45°および110°の視角で測定された輝度値から、以下の式:
FLX-Rite=2.69(L*15°−L*110°1.11/(L*45°0.86
に従って、X−Riteフロップ値指数を計算することが可能である。
【0173】
複層塗装系1ならびに複層塗装系V1、V2およびV3は、それぞれFLX-Rite=12を与えた。したがって、金属フロップ値は、すべての被覆について非常に明確であった。
【0174】
加えて、DIN 67530に従って光沢度およびヘイズ(20°)を測定し、Byk/Gardner波形スキャンプラス装置(長波=LW;短波=SW)を使用して流動性を測定した。亀裂を目視評価した。測定の結果を第2表に示す。
【0175】
第2表に集計された結果は、本発明の複層塗装系が、存在したとしても非常にわずかなスパークル鉱化を伴う際だったフロップ値効果を示すことを強調している。これは、非常に鮮やかな視覚的印象を有する有色金属効果をもたらした。基本的に、曇りが観察されなかった。光沢度、ヘイズおよび平滑性も同様に際だっていた。特に、本発明の複層塗装系は、下塗に亀裂を示さなかった。
【0176】
第2表 複層塗装系1、V1、V2およびV3の結果
【表2】

【0177】
加えて、複層塗装系1、V1、V2およびV3について、視覚的欠陥の様子、特に研磨傷の様子を以下のように試験した。
【0178】
800〜1000の等級を有するPlochmannからの研磨紙を使用して、丸形研磨点および円形研磨点の両方を試験パネルに加えた。これらの研磨点を下塗材料P1またはPV1またはPV2またはPV3および3.1に記載の透明塗料材料で被覆し、3.1に記載したように乾燥させた。それぞれの陰影の差を目視評価した。加えて、曇りも目視評価した。得られた結果を第3表に示す。
【0179】
評価の基準
1 欠陥または曇りが見られない
2 欠陥または曇りが非常にわずかに見られる
3 欠陥または曇りがわずかに見られる
4 欠陥または曇りがはっきりと見られる
5 欠陥または曇りが非常にはっきりと見られる
【0180】
第3表 視覚的欠陥および曇りの評価
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(N)1〜800nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは4〜100nmの粒径を有する1つ以上の無機粒子(N)と、
(B)1つ以上のバインダ(B)と、
(D)1つ以上の顔料と、
(E)1つ以上の有機溶媒(E)と、
(V)場合により、1つ以上の架橋剤(V)と
を有し、
前記無機粒子(N)が、無機粒子(N)表面と相互作用しうる少なくとも1つの基(S1)、および1つ以上の疎水性部分構造を有する安定剤(S)で少なくとも部分的に改質されている顔料着色塗料組成物(P)であって、
該塗料組成物は、少なくとも1種の蝋および/または少なくとも1つの蝋様化合物(W)をさらに含むことを特徴とする顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項2】
蝋および/または蝋様化合物(W)として、改質および/または非改質ポリオレフィン蝋、特に、ポリエチレン蝋、ポリプロピレン蝋、およびポリエチレングリコール蝋、および/またはポリアミン蝋および/またはポリアクリレートポリマーおよび/またはポリアクリレートコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項3】
安定剤の基(S1)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基もしくはスルホネート基または窒素含有親水性基、あるいはそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項4】
安定剤(S)が、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項5】
安定剤(S)が、それぞれ安定剤(S)の固形分に対して、10〜150mgKOH/gのヒドロキシル価および2〜50mgKOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項6】
安定剤(S)の疎水性部分構造が、アルキル基またはアルケニル基、特に、5〜50個のC原子を有するアルキル基またはアルケニル基の群から少なくとも部分的に選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項7】
疎水性部分構造が、飽和および/または不飽和脂肪酸の基、特に、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリン酸およびそれらの混合物の群から特に好ましく選択される、分子中に5〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和脂肪酸の基の群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項8】
安定剤(S)が、脂肪酸のエステルおよび/または二量体脂肪酸のエステルおよび/または三量体脂肪酸のエステル、好ましくは、ポリアルキレングリコール、特に、6〜20個のC原子を有するポリアルキレングリコールとの脂肪酸のエステルおよび/または二量体脂肪酸のエステルおよび/または三量体脂肪酸のエステルを含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項9】
無機粒子(N)が、酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの群から選択される請求項1から8までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項10】
粒子(N)が、0.2質量%〜2.0質量%、好ましくは0.5質量%〜1.5質量%の量で使用され、かつ/または蝋および/または蝋様化合物(W)は、それぞれ顔料着色塗料組成物の全量ならびにこれらの成分(N)および(W)の固体含有量に対して、かつ安定剤(S)を含まない成分(N)の質量に対して、0.2質量%〜2.0質量%、好ましくは0.5質量%〜1.5質量%の量で使用され、かつ/または安定剤(S)は、それぞれ粒子(N)の質量に対して、かつ安定剤(S)および粒子(N)の固体含有量に対して、3質量%〜40質量%、特に5質量%〜20質量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項11】
粒子(N)および化合物(W)が、無機粒子(N)に蝋および/または蝋様化合物(W)を加えた全量が、それぞれ顔料着色塗料組成物の全量に対して、かつこの成分(W)、および安定剤を含まない粒子(N)の固体含有量に対して、0.4質量%〜4.0質量%、より好ましくは1.0質量%〜3.0質量%になるような量で使用されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項12】
粒子(N)ならびに蝋および/または蝋様化合物(W)が、安定剤(S)を含まない無機粒子(N)と化合物(W)との質量比が、それぞれこれらの成分(N)および(W)の固体含有量に対して、70:30〜30:70、好ましくは40:60〜60:40になるような量で使用されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項13】
1つ以上の効果顔料を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項14】
ポリマー微小粒子(M)を、それぞれ塗料組成物(P)の固体含有量、およびポリマー微小粒子(M)の固体含有量に対して、好ましくは3質量%〜25質量%、特に10質量%〜20質量%の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項15】
固体含有量が、少なくとも35質量%であり、塗料組成物(P)が、フォードカップ3による流下時間としての23℃における粘度が16s〜35s、好ましくは18s〜25sであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の顔料着色塗料組成物(P)。
【請求項16】
少なくとも1つの顔料着色被覆と、場合によりその上に透明塗装系とを含む効果および/または有色塗装系であって、顔料着色被覆が、請求項1から15までのいずれか一項に記載の塗料組成物(P)から製造された効果および/または有色塗装系。
【請求項17】
少なくとも1つの顔料着色被覆(P)を塗布し、場合により、少なくとも1つの透明被覆(K)を該顔料着色被覆(P)上に塗布する、請求項16に記載の塗装系を製造するための方法。
【請求項18】
自動車量産仕上げおよび/または商用車両仕上げおよび/または修復仕上げ、内部もしくは外部車体構造部品、または船舶構造および航空機構造のための部品、または家庭用具および電気器具のための部品の塗装に用いられることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
I. 溶媒系顔料着色塗料組成物を基材に塗布し、
II. I)において塗布された塗料組成物から被膜を形成し、
III. 場合により、I)から形成された被膜に透明塗料組成物を塗布し、
IV. 顔料着色塗料組成物および場合により、塗布された透明塗料組成物を個別に、または一緒に焼成して、基材上に硬化被膜を設け、
前記顔料着色塗料組成物が、1〜800nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは4〜100nmの粒径を有する1つ以上の無機粒子(N)を含み、前記無機粒子(N)が、無機粒子(N)の表面と相互作用しうる少なくとも1つの基(S1)、および1つ以上の有機疎水性部分構造を有する安定剤(S)で少なくとも部分的に改質されている、効果塗装系のフロップ値を向上させる方法であって、
前記塗料組成物は、少なくとも1種の蝋および/または1つの蝋様化合物(W)をさらに含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2010−509471(P2010−509471A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536616(P2009−536616)
【出願日】平成19年9月22日(2007.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008262
【国際公開番号】WO2008/058590
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】